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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02D |
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管理番号 | 1042868 |
審判番号 | 審判1999-16349 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-01-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-10-07 |
確定日 | 2001-08-13 |
事件の表示 | 平成6年特許願第190047号「杭穴の掘削方法及び掘削機」拒絶査定に対する審判事件〔平成8年1月30日出願公開、特開平8-27776、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年7月20日の出願であつて、原審において拒絶の査定がなされたところ、平成11年10月7日付けで本件審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の特許を受けようとする発明は、平成11年1月21日付け手続補正書により補正された明細書、及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】大径のメイン掘削ドリルと小径のサブ掘削ドリルとを相互に平行且つサブ掘削ドリルがメイン掘削ドリルより下方に突出するように結合した掘削機を使用し、既設の杭をガイドとして、上記2つの掘削ドリルを互いに逆向きに駆動回転させて掘り進むことにより、小径のサブ掘削ドリルに掘削の先導をさせると同時にメイン掘削ドリルに作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させながら、上記メイン掘削ドリルで杭穴を掘削することを特徴とする杭穴の掘削方法。 【請求項2】杭穴を掘削するための大径のメイン掘削ドリルと、該メイン掘削ドリルに作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させるための小径のサブ掘削ドリルと、これらの掘削ドリルに取り付けられ、既設の杭をガイドとして該杭の軸線方向に移動可能な保護案内部材とを備え、上記メイン掘削ドリルとサブ掘削ドリルとが、相互に平行且つサブ掘削ドリルがメイン掘削ドリルより下方に突出するように結合され、互いに逆向きに駆動回転される構成であることを特徴とする掘削機。 【請求項3】大径のメイン掘削ドリルと小径のサブ掘削ドリルとを等速で逆回転させながら掘削することを特徴とする請求項1に記載の掘削方法。 【請求項4】大径のメイン掘削ドリルと小径のサブ掘削ドリルとを等速で逆回転させる構成であることを特徴とする請求項2に記載の掘削機。 (以下、請求項1ないし4に記載された発明を、本願発明1ないし4という。) 3.引用例 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由において引用された実願昭52-49812号(実開昭53-144203号)のマイクロフイルム(以下、「引用例1」という。)には、掘削機に関する考案が記載されており、明細書1頁4行ないし4頁8行、及び第1、2図の記載からみて、引用例1には、次の(a)及び(b)の発明が記載されているものと認められる。 (a)「下端近傍に大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2と、下端近傍に小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4とを相互に平行且つ補助ビット3を備えた補助ロッド4がメーンビット1を備えたメーンロッド2より上方に位置するように結合した掘削機を使用し、既設の先行鋼管矢板9をガイドとして、上記メーンビット1を備えたメーンロッド2と補助ビット3を備えた補助ロッド4を互いに逆向きに駆動回転させて掘り進むことにより、大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2に掘削の先導をさせて鋼管矢板建て込み用の孔を掘削すると同時に小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4で鋼管矢板のジャンクション部10用の孔を掘削する掘削方法。」 (b)「鋼管矢板建て込み用の孔を掘削するための下端近傍に大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2と、鋼管矢板のジャンクション部10用の孔を掘削するための下端近傍に小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4と、上記メーンビット1を備えたメーンロッド2と補助ビット3を備えた補助ロッド4とが、相互に平行且つ補助ビット3を備えた補助ロッド4がメーンビット1を備えたメーンロッド2より上方に位置するように結合され、互いに逆向きに駆動回転される構成である掘削機。」 (2)同じく、原査定の拒絶の理由において引用された特開平4-143310号公報(以下、「引用例2」という。)には、地下連続壁の施工方法に関する発明が記載されており、特に、公報2頁右上欄5行ないし左下欄8行、及び第1、2、4図の記載からみて、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。 「一方向に並列する三本の同径の掘削ロッド1を持つ掘削装置であって、各掘削ロッド1は相互間の間隔を保持する連結金具2により互いに平行に結合され、各掘削ロッド1の下端に掘削ビット1aが接続され、一側端に位置する掘削ロッド1の掘削ビット1aの先端下方には掘進を先導する小径のパイロットヘッド1cを接続し、かつ、このパイロットヘッド1cは他の二本の掘削ビット1aより下方に突出するように形成され、パイロットヘッド1cにより鉛直の安定性を高めた掘削装置。」 (3)同じく、原査定の拒絶の理由において引用された特公平4-63167号公報(以下、「引用例3」という。)には、地中柱列壁の構築方法に関する発明が記載されており、特に、公報2頁左欄5ないし6行、同2頁右欄2ないし8行、同2頁右欄19ないし22行、及び第11ないし13図の記載からみて、引用例3には、次の発明が記載されているものと認められる。 「ソイルセメントで充満された掘削孔に鋼管6を建て込み、この建て込まれた鋼管6をガイドとして地表から地中に向けて孔を掘削する掘削機(アースオーガー3)において、掘削機(アースオーガー3)の軸線方向側面部に、鋼管6の雄結合条7の外側に嵌装してガイドする平面C字状の溝型材10と当て板11を設けたもの。」 4.対比、判断 (1)本願発明1について 本願発明1と引用例1の(a)の発明とを対比すると、引用例1の(a)の発明の 「大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2」、「小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4」、「既設の先行鋼管矢板9」、及び「鋼管矢板建て込み用の穴」は、それぞれ、本願発明1の「大径のメイン掘削ドリル」、「小径のサブ掘削ドリル」、「既設の杭」、及び「杭穴」に対応するから、両発明は次の点で一致し、相違していると認められる。 一致点: 大径のメイン掘削ドリルと小径のサブ掘削ドリルとを相互に平行に結合した掘削機を使用し、既設の杭をガイドとして、上記2つの掘削ドリルを互いに逆向きに駆動回転させて掘り進むことにより、上記メイン掘削ドリルで杭穴を掘削する杭穴の掘削方法。 相違点: 本願発明1は、小径のサブ掘削ドリルが大径のメイン掘削ドリルより下方に突出するように結合され、小径のサブ掘削ドリルに掘削の先導をさせると同時にメイン掘削ドリルに作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させながら、メイン掘削ドリルで杭穴を掘削するのに対して、引用例1の(a)の発明では、小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4が大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2より上方に位置するように結合され、大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2に掘削の先導をさせて鋼管矢板建て込み用の穴を掘削しており、小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4の駆動回転によって、大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2に作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させるのか否かについては明記されていない点。 そこで、この相違点について検討する。 引用例1の(a)の発明において、小径の補助ビット3は大径のメーンビット1と逆方向に回転するから、この小径の補助ビット3はメーンビット1に作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させる作用を有すると考える余地もあるが、本願発明1は、小径のサブ掘削ドリルを大径のメイン掘削ドリルより下方に突出するようにしたことにより、引用例1の(a)の発明の小径の補助ビット3よりも、位置ずれ方向の作用力を大きく吸収させることができると考えられる。 一方、引用例2記載の発明は、三本の掘削ロッド1が互いに平行に結合され、一側端に位置する掘削ロッド1の先端下方に突出させた小径のパイロットヘッド1cは、3つの掘削ビット1aより下方に突出するように形成されており、その上部に設けられた掘削ビット1aを先導するが、この小径のパイロットヘッド1cが掘削ビット1aに作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させることは記載されていない。 したがって、引用例2には、一側端に位置する掘削ロッド1の先端下方に突出させた小径のパイロットヘッド1cが、掘削ビット1aより下方に突出するように形成された構成が記載されているものの、当該パイロットヘッド1cの機能はその上部に設けられた掘削ビット1aを先導するものであると考えられ、この構成を引用例1の小径の補助ビット3に適用して本願発明1の上記相違点に係る構成とする合理的な理由が見当たらない。 また、前記引用例3には、掘削機(アースオーガー3)の軸線方向側面部に、鋼管6の雄結合条7の外側に嵌装してガイドする平面C字状の溝型材10と当て板11を設けたものが記載されているものの、本願発明1の前記相違点に係る構成はもちろん、それを示唆する記載もない。 そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成としたことによって、「メイン掘削ドリルに作用する位置ずれ方向の作用力を逆回転するサブ掘削ドリルで吸収させるようにしたことにより、メイン掘削ドリルの位置ずれを確実に防止し、所定の位置に杭穴を精度よく掘削することができる。」(明細書段落番号0021の発明の効果の項)という、引用例1ないし3に記載された発明からは予測し得ない作用効果を奏することから、本願発明1は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本願発明2について 本願発明2と引用例1の(b)の発明とを対比すると、引用例1の(b)の発明の「鋼管矢板建て込み用の穴」、「大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2」、「小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4」、及び「既設の先行鋼管矢板9」は、それぞれ、本願発明2の「杭穴」、「大径のメイン掘削ドリル」、「小径のサブ掘削ドリル」、及び「既設の杭」に対応するから、両発明は次の点で一致し、相違していると認められる。 一致点: 杭穴を掘削するための大径のメイン掘削ドリルと、小径のサブ掘削ドリルと、上記メイン掘削ドリルとサブ掘削ドリルとが、相互に平行に結合され、互いに逆向きに駆動回転される構成である掘削機。 相違点: 本願発明2は、大径のメイン掘削ドリルに作用する位置ずれ方向の作用力を小径のサブ掘削ドリルが吸収し、掘削ドリルには、既設の杭をガイドとして該杭の軸線方向に移動可能な保護案内部材を備え、相互に平行なサブ掘削ドリルがメイン掘削ドリルより下方に突出するように結合される構成であるのに対して、引用例1の(b)の発明では、大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2に作用する位置ずれ方向の作用力を小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4が吸収するのか否かについては明記されておらず、大径のメーンビット1を備えたメーンロッド2や小径の補助ビット3を備えた補助ロッド4には保護案内部材が取り付けられておらず、補助ビット3がメーンビット1より上方に位置するように結合される構成である点。 そこで、この相違点について検討する。 引用例1の(b)の発明において、小径の補助ビット3は大径のメーンビット1と逆方向に回転するから、この小径の補助ビット3はメーンビット1に作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させる作用を有すると考える余地もあるが、本願発明2は、小径のサブ掘削ドリルを大径のメイン掘削ドリルより下方に突出するようにしたことにより、引用例1の(a)の発明の小径の補助ビット3よりも、位置ずれ方向の作用力を大きく吸収させることができると考えられる。 一方、引用例2記載の発明は、三本の掘削ロッド1が互いに平行に結合され、一側端に位置する掘削ロッド1の先端下方に突出させた小径のパイロットヘッド1cは、3つの掘削ビット1aより下方に突出するように形成されており、その上部に設けられた掘削ビット1aを先導するが、この小径のパイロットヘッド1cが掘削ビット1aに作用する位置ずれ方向の作用力を吸収させることは記載されていない。 したがって、引用例2には、一側端に位置する掘削ロッド1の先端下方に突出させた小径のパイロットヘッド1cが、掘削ビット1aより下方に突出するように形成された構成が記載されているものの、当該パイロットヘッド1cの機能はその上部に設けられた掘削ビット1aを先導するものであると考えられ、この構成を引用例1の小径の補助ビット3に適用して本願発明1の上記相違点に係る構成とする合理的な理由が見当たらない。 また、前記引用例3には、掘削機(アースオーガー3)の軸線方向側面部に、鋼管6の雄結合条7の外側に嵌装してガイドする平面C字状の溝型材10と当て板11を設けたものが記載されているから、前記相違点の本願発明2の構成のうち、掘削ドリルに、既設の杭をガイドとして該杭の軸線方向に移動可能な保護案内部材を取り付けた点は引用例3に記載されているものの、引用例3には、相互に平行なサブ掘削ドリルがメイン掘削ドリルより下方に突出するように結合される構成は記載されていないし、そのような構成を示唆する記載もない。 そして、本願発明2は、引用例1ないし3に記載された発明から予測し得ない明細書記載の作用効果を奏することから、本願発明2は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (3)本願発明3について 本願発明3は、本願発明1を「大径のメイン掘削ドリルと小径のサブ掘削ドリルとを等速で逆回転させながら掘削する」と技術的に限定したものであるから、本願発明3についても、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (4)本願発明4について 本願発明4は、本願発明2を「大径のメイン掘削ドリルと小径のサブ掘削ドリルとを等速で逆回転させる構成である」と技術的に限定したものであるから、本願発明4についても、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1ないし4は特許法第29条第2項に該当しない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-07-12 |
出願番号 | 特願平6-190047 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E02D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ 鈴木 公子 |
発明の名称 | 杭穴の掘削方法及び掘削機 |
代理人 | 林 宏 |
代理人 | 内山 正雄 |