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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1042941
審判番号 不服2000-4352  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-29 
確定日 2001-08-22 
事件の表示 平成7年特許願第344864号「宅配ボックス装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成9年6月17日出願公開、特開平9-156694、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の請求項1〜3に係る発明は、特許すべきものとする。 
理由 <1>手続の経緯と本願発明
本願は、平成7年12月5日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成12年4月17日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、次のとおりのものである。
「【請求項1】 建物の外壁部の屋外面に設けられる捺印部を有する自動捺印手段と、該屋外面に設けられる屋外荷物投入口部と、該屋外荷物投入口部に連通連結される荷物収納部と、該荷物収納部 ら室内 側へ荷物を取り出すために該室内側に設けられる室内荷物取出口部と、を備え、上記屋外荷物投入口部が荷物投入用屋外扉を有し、かつ、上記室内荷物取出口部が荷物取出用室内扉を有し、上記荷物収納部内に、荷物の有無を検知するセンサーを設け、さらに、該センサーからの荷物収納部内に荷物がある収納状態を検出した信号により、荷物収納部から室内へ荷物を送り出す荷物送り出し装置と、
上記室内荷物取出口部から排出された荷物の通過を確認すると、上記荷物送り出し装置を停止させるための信号を送出する荷物通過感知器と、を設け、
かつ、上記センサーからの荷物収納部内に荷物が無い空状態を検出した信号により、荷物投入用屋外扉を開き可能とするロック解除手段を、設けたことを特徴とする宅配ボックス装置。
【請求項2】 荷物投入用屋外扉と荷物取出用室内扉の両方が同時に開かないように、その屋外扉と室内扉の少なくとも一方を閉状態とする扉開閉制御手段を、有している請求項1記載の宅配ボックス装置。
【請求項3】 荷物取出用室内扉が、昇降開閉扉とされている請求項1又は2記載の宅配ボックス装置。」

<2>原査定の引用例等
本願の請求項1に係る発明に対して、原査定の拒絶の理由には、下記の刊行物1〜4が引用されている。なお、拒絶査定後の前置報告において周知例として刊行物5〜6も追加引用されている。
刊行物1:特開平2-252882号公報
刊行物2:実開平6-59565号公報(周知技術Aの例)
刊行物3:特開平5-208724号公報(周知技術Bの例)
刊行物4:実願昭59-185095号(実開昭61-98721号)のマイクロフィルム(周知技術Bの例)
刊行物5:実願昭62-62782号(実開昭63-169981号)のマイクロフィルム(周知技術Cの例)
刊行物6:実願平3-110792号(実開平6-76587号)のCD-ROM(周知技術Cの例)

刊行物1〜6には、図面を引用して、例えば次の記載がある。
<刊行物1>特開平2-252882号公報
a:
「2.特許請求の範囲 (1)外部より開閉することができ、宅内で施錠およびその解除の切換自在な外扉と、開閉自在な内扉および挿入宅配物を宅内に押し出す駆動底板とを有する収納箱体に、宅配物の挿入を検知して外扉を施錠し、内扉を開いて底板を駆動させる検知指示装置を備えてなることを特徴とする宅配物受取設備」
b:
「第3図および第4図は、第1図に例示した収納箱体(2)の縦断面図および横断面図である。
第3図に例示したように、収納箱体(2)の内部には宅配物(9)を乗せ、これを矢印(A)で示した宅内に押し出す底版(10)を配備しており、底板(10)はスライド自在なスライドアーム(11)とその駆動機構によって水平方向に自動的にスライドするようにしている。この底板(10)のスライドによって、宅配物(9)の宅内への押し出しが可能となる。
この場合、たとえば第4図に例示したように収納箱体(2)の内側壁の適宜な位置には、宅配物(9)の挿入を検知するセンサ(12)を配備することができる。センサ(12)の種類については特に制限はなく、超音波センサ、光電管等の任意のものを用いることができる。
第5図は、たとえば以上の構成からなる宅配物受取設備の動作状態を例示した縦断面図である。
外扉(3)を開けて宅配物(9)を挿入し底板(10)に乗せ外扉(3)を閉めると、センサ(12)によって宅配物(9)が検知される。その検知信号の指示により、外扉(3)に設けている電気錠(15)が作動し、外扉(3)はロックされ、また収納箱体(2)が動作している旨を表示装置(7)に表示する。次いで、たとえばこの第5図に示したように内扉(8)が指示装置の指示で上方へスライドして開き、センサ(12)と連結した指示装置によって駆動装置が作動し、スライドアーム(11)が伸張し、所定の位置まで底板(10)を移動させる。スライドアーム(11)を所定の位置まで移動させた後に、スイングアーム(13)を上昇させる。底板(10)はシャフト(14)でスライドアーム(11)に支持することにより、このスイングアーム(13)の動きにともなって傾斜する。この後、内扉(8)が宅配物(9)の背面付近まで降り、スイングアーム(13)が降下して底板(10)を水平にし、さらにスライドアーム(11)が短縮して底板(10)をもとの位置まで戻す。これによって、宅配物(9)はその後端部を底板(10)で持ち上げられ、かつ内扉(8)で背面を押えられながら、宅内へと押し出される。宅配物(9)の宅内への押し出しが終了すると、内扉(8)は、さらに降下し、閉じた後に電気錠でロックされる。これと同時に、第1図に例示したスタンバイ表示装置(6)が点灯し、外扉(3)のロック状態は解除される。・・・また、宅配物(9)の押し出しは、以上の例に限られることなく様々な機構が採用できる。内扉(8)も、上下スライドでなく上縁を支点としての回動、あるいは左右への回動としてもよい。
以上のように、この発明の設備では宅配物を挿入すると直ちに宅内への宅配物の送り込みが行われるため、複数の宅配物を受け取ることが可能となる。また、宅配物の宅内への送り込み終了後、内扉はロックされるために、宅配物の盗難を防止することもできる。さらには、玄関ユニットと一体化することによって、スペースを有効に利用することができ、比較的大きな宅配物をも宅内へ自動的に送り込むことがでる。」(第3頁左上欄第17行〜右下欄第19行)


<刊行物2>実開平6-59565号公報
c:
「【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 ロッカーの荷物収納部(10)内における荷物の存在を確認する荷物確認手段(11)と、ロッカーの扉(12)の開閉を確認する扉確認手段(13)とを有し、荷物の発送又は受領に際し、荷物配送者等が単独で荷物の受け渡しをすることが出来る自動ロッカーにおいて、扉(12)の施錠条件となる扉施錠作動手段(17)がロッカー外部に設けられ、荷物確認手段(11)により確認された荷物の存在と、扉確認手段(13)により確認された扉(12)の閉鎖と、扉施錠作動手段(17)の作動とを条件として扉(12)が施錠され、更に、非常脱出のための扉開錠用の発光部を有する非常扉開錠手段(25)がロッカー内部に設けられたことを特徴とする自動荷物受け渡しロッカー。」
d:
「【図面の簡単な説明】【図1】本考案の全体の斜視図である。【図2】本考案の実施例でその扉を開放した状態の全体斜視図である。【図3】本考案の実施例に係るロッカー内部に荷物を収納する(発送及び受領の両場合の)手順を示すフローチャート図である。【図4】図3から連続するフローチャート図である。・・・・・【符号の説明】10荷物収納部 11荷物スイッチ 12扉 13受取スイッチ 15受取キースイッチ 16発送キースイッチ 17扉施錠作動スイッチ 20錠部 21CPU 32施錠用ソレノイド 33捺印部ソレノイド 34開錠用ソレノイド」
e:
図1には、扉12を閉めた状態のロッカーの図が記載されてあり、扉12の外側正面には15受取キースイッチ、17扉施錠作動スイッチ等が設けられている。
図2には、扉12を開いた状態のロッカーの図が記載されてあり、その荷物収納部10の底部には荷物スイッチ11が設けられている。また、扉12の裏面で、扉を閉めた状態のときにロッカー本体側壁の開口端面に面する部分には扉スイッチ13が設けられ、閉めた状態でスイッチが入る構成であることが分かる。
図3には、荷物を収納する手順を示すフローチャートが記載されてありそのフローチャートにおいて、「使用可ランプ点灯」-「扉開放」-「荷物収納」-「扉閉鎖」-「扉施錠作動スイッチオン」-「扉施錠」-「使用中ランプ点灯」-「非常スイッチ点灯」-「非常スイッチ・オン」-(NO)「タイムオーバー」-(NO)「捺印」-(YES)と進み、前記「タイムオーバー」に入る「-(NO)」に戻る矢印が記載され、荷物を入れて施錠された後、一定時間内に(タイムオーバーしないうちに)受領書等を挿入すると、捺印が行われる構成であることが分かる。

<刊行物3>特開平5-208724号公報
f:
「【0001】【産業上の利用分野】この発明は動力コンベアで搬送品を水平状に搬送する搬送装置に関するものである。」
g:
「【0025】【実施例】実施例1.図1はこの発明の一実施例を示すもので、図において、6,7,8は図示しない減速機とコンベヤチェーン等によって搬送回動されるローラコンベア等からなる第1の動力コンベア、第2の動力コンベアおよび第3の動力コンベア、9,10,11は例えば光電管等からなる搬送品検知装置、12, 13, 14は例えば近接スイッチや光電管等からなる載置検知装置で、これら検知装置は夫々の動力コンベアに配設されている。なお、搬送品1の部品組立作業は第2の動力コンベア7で行なわれる。
【0026】第1の動力コンベア6、第2の動力コンベア7、第3の動力コンベア8は搬送方向に沿って直状に所定間隔、例えばおよそ5cmの接続空間でもって搬送品1を連続して搬送可能に設けられ、かつ、夫々の動力コンベアは単独で稼動、停止が可能である。夫々の動力コンベア6,7,8は無負荷状態の時は停止している。まず、稼動について説明する。・・・・・。
【0027】次に停止について説明する。第1の動力コンベア6の搬送方向両端部に載置検知装置12が搬送ローラ間に搬送面より下方で検知面が上向きに配設され、受入れ側と送り出し側の検知回数数字が異なるとき、つまり搬送品1を搬送中は稼動を継続し、検知回数数字が同一のとき、つまり搬送品1が該コンベア上に無いときは稼動を停止する。なお、第2の動力コンベア7と第3の動力コンベア8も上記と同様の構成である。」
h:
「【0040】【発明の効果】この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0041】搬送ラインを複数の動力コンベアで形成し、搬送品が搬送されて来た時に稼動し、搬送品が無い時は停止するように構成したので、動力コンベアの省エネルギー化が図れる。」

<刊行物4>実願昭59-185095号(実開昭61-98721号)のマイクロフィルム
i:
「2.実用新案登録請求の範囲 1)電動機で駆動され物品を一方向に連続的に運搬する連続運搬装置において、運搬中の前記物品の存在を検出するセンサ、該センサが前記物品の存在しないことを検討すると始動し所定時間経過して閉じる接点を有するタイマおよび前記電動機と該電動機を駆動する電源との間に接続された開閉装置を備え、前記タイマの接点が前記開閉装置の引外しコイルの励磁回路に挿入されていることを特徴とする連続運搬装置。
3.考案の詳細な説明 [考案の属する技術分野]本考案はコンベアのように物品を一方向に連続的に運搬する装置に関する。」(第1頁第3〜16行)
j:
「ここで物品5を運搬する必要がなくなり、積載装置が停止するとa接点12が閉じ、続いてセンサ6がバケット3に物品5が載置されず、運搬装置が物品5を運搬していないことを検出するとa接点6aを閉じ、タイマ7を始動させる。そして所定時間後タイマ接点7aを閉じて引外しコイル9aに通電し、主電源遮断器9を遮断し、運搬装置を自動的に停止させる。」(第5頁第5〜13行)
k:
「[考案の効果] 以上述べたように本考案による連続運搬装置は、物品を所定時間運搬していないことを検出すると主電源遮断器を自動的に遮断し、装置を自動的に停止する。したがって、常時運搬装置を監視する必要がなく、運搬を終了すれば自動的に停止し電力の空費を防止することができる。また無用の運転が続かないから各部の摩耗も少なく寿命も長い。」(第6頁第1〜8行)

<刊行物5>実願昭62-62782号(実開昭63-169981号)のマイクロフィルム
l:
「2.実用新案登録請求の範囲 1)配達される荷物を収納するスペースを有する箱体の底部に、受入れられる荷物の確認を行う荷物有無センサーを備え、該荷物有無センサーからの信号で自動的にロックできる電気ロック錠付の前面扉を開閉自在に備えると共に、後面に鍵により施錠されるようにした後面扉を備え、且つ上記箱体の適宜個所に、上記電気ロック錠がロックすると作動する電気制御機器と、該電気制御機器が作動している間自動的に押印が可能となる押印装置とを備え、更に電気ロック錠のロックを確認するセンサーを設け、該センサーを電気制御機器に接続してなることを特徴とする無人荷物受取り装置。」
m:
「次に、荷物受取人が箱体1の後面扉3を鍵によって開き、収納された荷物を取り出すと、底板4はスプリング7の力によって持ち上げられるため、荷物有無センサー8は不作動状態となって電気信号が出されなくなるので、前面扉の電気ロック錠12はロックが解除され、前面扉2が自由に開けられるようになると共に、前後の表示灯10,11は消灯するので、次の荷物の受入れに使用できる。」(第12頁第4〜12行)

<刊行物6>実願平3-110792号(実開平6-76587号)のCD-ROM
n:
「【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】 玄関のドア本体と、袖付枠と、該袖付枠の袖部内側に設けたボックス部とからなる玄関ドアであって、該ボックス部は複数に区画されその区画のなかの1つ又は2つ以上を荷物の受渡しボックスとし、該受渡しボックスには玄関ドアの外部から荷物を入れることのできる外扉と玄関ドアの内部から中の荷物を取り出すことのできる内扉と中の荷物の有無を検出して信号を発する荷物センサとが設けてあり、該外扉には電気錠が設けられ、該外扉と内扉には中に荷物が入っているかいないかを表示するランプがそれぞれ設けてあり、上記荷物センサの信号と外扉及び内扉の閉信号とに基づき外扉を開いて中に荷物を入れ該外扉を閉めると電気錠が施錠状態となると共に中に荷物が入っていることを外扉,内扉の各ランプが表示し、内扉を開いて荷物を取り出し該内扉を閉めると前記電気錠の施錠が解除されると共に中が空であることを外扉,内扉の各ランプが表示するという電気錠及びランプの制御を行う制御装置を設けたことを特徴とする玄関ドア。

<3>当審の判断
<3-1>刊行物1記載の発明との対比
本願請求項1に係る発明を刊行物1記載の発明(記載a,b)と対比すると、刊行物1記載の発明の「宅配物受取設備」「外扉」「内扉」「宅内」「収納箱体(の内部)」は、本願請求項1に係る発明の「宅配ボックス装置」「荷物投入用屋外扉」「荷物取出用室内扉」「室内」「荷物収納部」に相当し、刊行物1記載の発明の収納箱体の内側壁に配備された「荷物の挿入を検知するセンサ」は、収納箱体内に荷物があることを検知するといえるから、その点で本願請求項1に係る発明における「荷物の有(無)を検知するセンサー」に相当するということができ、刊行物1記載の発明は、「その検知信号の指示により・・・。これによって、宅配便(9)は・・・宅内へと押し出される」(記載b)という記載があるから、本願請求項1に係る発明における「センサーからの荷物収納部内に荷物がある収納状態を検出した信号により、荷物収納部から室内へ荷物を送り出す荷物送り出し装置」という構成を有するということができる。
さらに、刊行物1記載の発明においては、「宅配物(9)の宅内への押し出しが終了すると、内扉(8)は、さらに降下し、閉じた後に電気錠でロックされる。これと同時に・・・外扉(3)のロック状態は解除される」(記載b)という記載があるから、その作動手段は本願請求項1に係る発明のものとは異なるが、少なくとも「荷物投入用屋外扉を開き可能とするロック解除手段」を設けているということができる。
また、刊行物1記載の発明は「玄関ユニットと一体化」して使用される(記載b)から、その場合には、「外扉」が玄関のドアと同様に建物の外壁部の屋外面に面し、屋外から荷物の投入が可能なように設置されるということができる。
そうしてみると、両者は、
「建物の外壁部の屋外面に設けられる屋外荷物投入口部と、該屋外荷物投入口部に連通連結される荷物収納部と、該荷物収納部から室内側へ荷物を取り出すために該室内側に設けられる室内荷物取出口部と、を備え、上記屋外荷物投入口部が荷物投入用屋外扉を有し、かつ、上記室内荷物取出口部が荷物取出用室内扉を有し、上記荷物収納部内に、荷物の有(無)を検知するセンサーを設け、さらに、該センサーからの荷物収納部内に荷物がある収納状態を検出した信号により、荷物収納部から室内へ荷物を送り出す荷物送り出し装置と、
荷物投入用屋外扉を開き可能とするロック解除手段を、設けたことを特徴とする宅配ボックス装置」の点で一致するが、次の点で、両者は相違する。
<相違点1>
本願請求項1に係る発明においては「建物の外壁部の屋外面に設けられる捺印部を有する自動捺印手段」を設けるが、刊行物1記載の発明には、そのような構成はない。
<相違点2>
本願請求項1に係る発明においては「室内荷物取出口部から排出された荷物の通過を確認すると、上記荷物送り出し装置を停止させるための信号を送出する荷物通過感知器」(以下、「相違点2の構成」という)を設けているが、刊行物1記載の発明はそのような構成ではない。
<相違点3>
本願請求項1に係る発明においてはは、センサーが「荷物の有無」の双方を検知し、「荷物投入用屋外扉を開き可能とするロック解除手段」は「センサーからの荷物収納部内に荷物が無い空状態を検出した信号により」作動するが、
刊行物1記載の発明においてはセンサーが荷物の「無」いことを検知するとの記載はなく、「ロック解除手段」も、上記において検討したとおり、荷物が無いことにより出される信号により作動するものではない。

<3-2>相違点についての検討
上記相違点1に関連して周知技術Aの例が、相違点2に関連して周知技術B相違点3について周知技術Cの例が、それぞれ例示されているが、ここでは、まず、相違点2について検討することとする。
相違点2の構成は本出願前の当該技術分野における周知技術(B)であるとして、刊行物3記載の発明(記載f〜h)および刊行物4記載の発明(記載i〜k)が例示されている。
しかしながら、刊行物3および4記載の発明は、いずれも通常は運転中のコンベアまたはベルト上に載置された複数の搬送品が連続的に搬送されてくる連続運搬装置において、該コンベアまたはベルト上に該搬送品が無いことを検知してコンベアまたはベルトを停止させる構成は記載されているが、相違点2の構成のように通常は荷物が通過していない通路において「荷物の通過を確認」して荷物送り出し装置を停止させるための信号を送出する「荷物通過感知器」ではない。
さらに、刊行物1記載の発明における宅配ボックス内の荷物の送り出し〜外扉のロック状態の解除は、「センサ(12)によって宅配物(9)が検知される」と「その検知信号の指示により、・・・内扉(3)が指示装置の指示で上方へスライドして開き、・・・スライドアーム(11)が伸張し、・・・スライドアーム(11)を所定の位置まで移動させた後に、スイングアーム(13)を上昇させ」、その動きにともなって底板が傾斜し、「この後、内扉(8)が宅配物(9)の背面付近まで降り、スイングアーム(13)が降下して底板(10)を水平にし、さらにスライドアーム(11)が短縮して底板(10)をもとの位置まで戻す。これによって、宅配物(9)はその後端部を底板(10)で持ち上げられ、かつ内扉(8)で背面を押さえられながら、宅内へと押し出され」、こうして宅配物の「押し出しが終了すると、内扉(8)は、さらに降下し」てロックされ、「外扉(3)のロック状態は解除される」(以上、記載b)という一連のもので、一部にセンサの検知信号などによる電気的駆動装置が介在しているものの、相違点2の構成の荷物収納部に投入された荷物を検知した信号で「荷物送り出し装置」を作動させて荷物を室内へ送り出し、「室内荷物取出口部から排出された荷物の通過を確認すると、上記荷物送り出し装置を停止させるための信号を送出する」という「荷物通過感知器」の構成とは、荷物の送り出しを停止させる手段が全く相違する。
そうしてみると、刊行物1記載の発明の宅配ボックス内の荷物の送り出し〜外扉のロック状態の解除の手段と上記周知例の搬送品が無いことを検知してコンベア等を停止させる手段とから、相違点2の構成を想到することは当業者に容易とはいうことができない。
したがって、相違点1および3について検討するまでもなく、本願請求項1に係る発明は、刊行物1に開示された事項および上記周知技術(A〜C)から当業者が容易に想到し得るものとはいうことができない。
そして本願請求項1に係る発明は、上記構成を具備することにより、「荷物通過感知器(26)によって、室内荷物取出口部 (7) から排出された荷物の通過が確認されると、上記荷物送り出し装置(40)が停止させられるため、無駄な電力を消費することがなく、省エネが達成されます」(審判請求書(平成12年4月17日付け手続補正書(方式)) 参照)という特有の効果を奏するものと認められる。
また、本願請求項2〜3に係る発明は、請求項1を引用しているのであるから、請求項1に係る発明と同様に、刊行物1に開示された事項および上記周知技術から当業者が容易に想到することができたとはいうことができない


<4>むすび
以上のとおり、本願の請求項1〜3に係る発明は、刊行物1記載の発明および本出願前の当該技術分野における周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいうことができないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいうことができない。
また、他に本願の請求項1にかかる発明を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論の通り審決する。
 
審決日 2001-07-31 
出願番号 特願平7-344864
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 勝司池田 貴俊倉田 和博  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 西村 綾子
鈴木 美知子
発明の名称 宅配ボックス装置  
代理人 中谷 武嗣  
代理人 中谷 武嗣  

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