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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H01M
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1043105
異議申立番号 異議1998-71983  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1988-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-23 
確定日 2001-01-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2668678号「二次電池」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2668678号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2668678号の発明についての出願は、昭和61年11月8日になされ、平成9年7月4日に、その発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について9件の特許異議の申立てがなされ、取消理由通知が3回なされ、第1回目の取消理由通知についての指定期間内の平成11年3月8日に訂正請求がなされ、また、第3回目の取消理由通知についての指定期間内である平成12年9月18日に訂正請求がなされると同時に、平成11年3月8日付けの訂正請求が取り下げられたものである。
2.訂正の要旨
a.特許請求の範囲の
「1.構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2及び/又はLiNiO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池。」を、
「1.構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3))の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池。」
に訂正する。
b.明細書第3頁15〜18行(特許公報第3欄22〜29行)の
「非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2及び/又はLiNiO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池が提供される。」を、
「非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池が提供される。」
に訂正する。
c.明細書第4頁8〜9行(特許公報第3欄38〜43行)の
「等(但し、BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)が挙げられる。」を、
「等(但し、BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)が挙げられる。」
に訂正する。
d.明細書第4頁12行(特許公報第3欄45〜46行)の
「LiCoO2及び/又はLiNiO2」を、「LiCoO2」に訂正する。
e.明細書第4頁15〜19行(特許公報第3欄48行〜第4欄1行)の
「本発明で用いるLiCoO2、LiNiO2は、炭酸リチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物と、コバルト及び/又はニッケルの金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩或いは硝酸塩との焼成反応により製造される。」を、
「本発明で用いるLiCoO2は、炭酸リチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物と、コバルトの金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩或いは硝酸塩との焼成反応により製造される。」
に訂正する。
f.明細書第5頁8行及び12行(特許公報第4欄9行及び13行)の
「LiCoO2、LiNiO2」を、「LiCoO2」に訂正する。
g.明細書第8頁8行及び9行(特許公報第5欄12行及び13行)の
「実施例」を、「参考例」に訂正する。
h.明細書第8頁11行、第10頁10行及び14行(特許公報第5欄15行、第6欄14行及び17行)の
「実施例1」を、「参考例1」に訂正する。
i.明細書第9頁16行〜第10頁2行(特許公報第6欄2〜7行)の
「参考例
実施例1においてCo3O4 2.0モルの代りに、NiO 6モルを用い、酸素中にて900℃で48時間焼成し、LiNiO2を得た。
このLiNiO2を用い実施例1と同じ操作により電池を組立てたところ開放端子電圧3.83Vを示した。」を削除する。
j.明細書第11頁(特許公報第6欄20〜26行)の第1表中の
「実施例1」を、「参考例1」に訂正する。
3.訂正の適否についての判断
3-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
aの訂正は、訂正前の「LiCoO2及び/又はLiNiO2」を「LiCoO2」に限定すると共に、負極としてのカーボンから、「置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料」を除くものであるから、特許法第120条の4第2項ただし書第1号の特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
b〜jの訂正は、aの訂正に基づいて、明細書の対応する箇所を訂正するものであるから、特許法第120条の4第2項ただし書第3号の明りょうでない記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3-2.独立特許要件
(本件発明)
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池。」
(取消理由の概要)
取消理由(1)は、本件明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである、というものである。
取消理由(2)は、本件発明は、刊行物1(特開昭60-235372号公報)及び刊行物2(特開昭55-136131号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項に規定に違反してなされたものである、というものである。
取消理由(3)は、本件発明は、本件の出願日前の特許出願(特願昭61-169864号)であって、当該出願後に出願公開されたもの(特開昭63-26953号公報参照)の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であるから、本件発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである、というものである。
(取消理由の検討)
取消理由(1)について
本件特許明細書には、記載不備があるという理由は次のとおりである。
i)特許請求の範囲の「LiCoO2及び/又はLiNiO2」の記載について、LiNiO2を正極に用いた二次電池では、開放端子電圧は3.83Vと記載されており、これを正極に用い、カーボンを負極とする組み合わせでは、3.9V以上の起電力を有するものが得られるとは認められない。また、正極として「LiCoO2及びLiNiO2」を用いた本件発明の二次電池を当業者は容易に作ることはできない。
ii)特公平4-24831号公報の実施例30には、「市販の石油系ニードルコークス(興亜石油社製、KOA-SJ Coke)をボールミルで平均粒径10μmに粉砕した」ものが、「BET表面積、真密度、X線回折より得られる面間隔d002、Lc(002)はそれぞれ11m2/g、2.13g/cm3、3.44Å、52Åであった」と記載されているから、本件明細書の実施例1に記載されている炭素質材料は、上記実施例30に記載されているものと同一であり、本件明細書の特許請求の範囲で除かれている炭素質材料に該当するから、本件明細書には、矛盾した記載がある。
また、特許請求の範囲の「・・・を除く」の記載と実施例の関係について、本件明細書には、特許請求の範囲で除かれた炭素質材料以外のカーボンを負極として使用し、3.9V以上の起電力を有する二次電池については、実施例あるいはそれに代わるデータ等が記載されていない点で記載不備がある。
i)について
訂正によって本件発明は、正極がLiCoO2を用いたものだけに限定されたので、この点の記載不備は解消した。
ii)について
本件明細書の実施例1は、参考例1と訂正されたから、上記の矛盾した記載は解消した。
特許法第36条第3項の規定では実施例の存在は必須要件としてはおらず、実施例がなくとも当業者が容易に追試(実施)できる程度に、発明の目的、構成及び効果が記載されていれば、記載不備には当たらないと認められる。
そこで、さらに検討すると、本件明細書には、「従来正極材料として、例えばTiS2、MoS2といった金属カルコゲナイト化合物等が考えられていた。但し、これらのものはカーボンと組合わせた場合、起電力が小さく期待されていたほどの性能は見出されていなかった。」(特許公報第3欄8〜12行)、「本発明でいうカーボンとは、特に限定はしないが、その一例を挙げれば、・・・が挙げられる。前述の如くかかるカーボンを負極として用いる場合、用いる正極の選択が極めて重要であり、本発明者らはLiCoO2と、カーボンとの組合せにより極めて優れた電池性能が得られることを見出した。」(同第3欄30〜47行)、「本発明による正、負極の組合せの新規な二次電池は、第1の特徴として、起電力が3.9V〜4.2Vと非常に高いことである。」(同第4欄2〜4行)と記載されているとおり、本件発明は、「正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン」を用いることにより、「3.9V以上の起電力を有する二次電池」を得たものであり、カーボンは、特に限定されるものではないが、先願発明との同一を避けるために、「BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料」を除いたものである。
そして、除かれた上記の炭素質材料とLiCoO2とを組み合わせた参考例1の二次電池は、本来は本件発明に含まれるものであり、参考例1の二次電池において、3.95Vの開放端子電圧を達成できているのであるから、本件明細書第3頁19行〜第4頁9行(特許公報第3欄30〜47行)に例示された同種の炭素質材料とLiCoO2との組合せにより3.9V以上の起電力を有する二次電池を得ることは当業者が容易に実施し得るものと認められる。
また、平成11年3月8日付けの特許異議意見書に添付された「実験報告書」九州大学 機能物質科学研究所 教授 山木準一(参考資料13-1)、「実験報告書」東京理科大学 理学部応用化学科 教授 中井泉(参考資料13-2)によっても、「正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン」を用いることにより、「3.9V以上の起電力を有する二次電池」が得られることは裏付けられている。
したがって、本件明細書には、記載不備はない。
取消理由(2)について
(刊行物に記載された発明)
取消理由(2)に引用された刊行物1(特開昭60-235372号公報)には、
「1.リチウム塩を溶解した有機溶媒を電解液とし、遷移金属のカルコゲン化合物からなるものを正極材とし、有機物焼成体と金属リチウムを電池内で電気的に接触させたものを負極材としたことを特徴とする有機電解液二次電池。
2.有機物焼成体が合成ポリマー、天然高分子化合物、石炭およびピッチからなる群より選ばれる有機物に焼成体である特許請求の範囲第1項記載の電池。
3.有機物焼成体が該焼成体をさらに活性化したものである特許請求の範囲第1項または第2項記載の電池。
4.合成ポリマーがポリアリールアセチレン類およびフェノール樹脂からなる群より選ばれる有機物の焼成体である特許請求の範囲第2項または第3項記載の電池。」(特許請求の範囲第1項〜第4項)
が記載され、また、「本発明において正極材である遷移金属のカルコゲン化合物における遷移金属としては周期表のIB〜VIIB族およびVIII族の金属たとえばチタン、バナジウム、クロム、・・・など;またカルコゲン化合物としては酸化物、硫化物、セレン化物などのカルコゲニドがあげられる。
遷移金属のカルコゲン化合物の具体例としてはTiO2,Cr3O4,V2O5,MnO2,LiCoO2,・・・などの酸化物・・・があげられる。」(第3頁右下欄2行〜13行)
「本発明の電池において、電池内で有機物焼成体と金属リチウムを電気的に接触させておくことにより自己放電反応により金属リチウムは消費され有機物焼成体にリチウムが含有される。
例として正極材に二酸化マンガンを使用して電池を作製した場合、作製直後の電池は約3.3Vの開路電圧を示すが、暗室にて1週間放置することにより、金属リチウムは完全になくなり、リチウムが含有された有機物焼成体の可逆的化合物が形成され、開路電圧は約3.0Vを示すようになる。この自己放電反応は次の式で表わすことができる。
有機物焼成体+Li→有機物焼成体・Li
また本発明の電池の起電反応は次の式で表わすことができる。
放電
正極:MnO2+Li++e-→MnO2・Li

充電
放電
負極:有機物焼成体・Li→有機物焼成体+Li++e-

充電
また電池作製後、放置することなしに正極との間で放電しても何ら問題はない。この場合、有機物焼成体・Liが完全に生成しておらず、負極材は有機物焼成体・Liと金属リチウムの両者ということになる。」(第4頁右下欄3行〜第5頁左上欄8行)
「本発明の電池は負極材として有機物焼成体と金属リチウムを電気的に接触させたものを用いることにより充放電の繰り返しによる負極側のリチウムの樹枝状結晶析出を抑制し、かつ電池の電圧が高く、放電時における電圧の平坦性が良く、電池の容量も大で高エネルギー密度であるという特長を有する。」(第6頁右下欄5〜11行)
と記載されている。
同じく引用された刊行物2(特開昭55-136131号公報)には、
「(1)イオン導電体であって、α-NaCrO2の層状構造を有し、式
AxMyO2の
(上記式中、AはLi,NaまたはKであり、Mは遷移金属であり、xは1未満であり、yはほぼ1に等しく、イオン導電体中のこのA+陽イオン空格子点はA+陽イオン抽出によって作られている)
を有することを特徴とするイオン導電体。」
(4)固溶体電極間に配置された液体または固体の電解質を有する電気化学的電池であって、その少なくとも1つの固溶体電極が式
Ax'MyO2(上記式中、AはLi,NaまたはKであり、Mは遷移金属であり、x'は1以下であり、yはほぼ1に等しい)
を有するイオン導電体で構成されてなることを特徴とする電気化学的電池。」(特許請求の範囲第1項、第4項)
が記載され、また、
「式LixCoyO2(式中、xおよびyは上で定義した通りである)の化合物のLi対電極との関連での開路電圧を測定したところ、上掲の公知のイオン導電体LiaTiS2で得られる開路電圧のほぼ2倍の大きさであることがわかった。また、4mA/cm2までの電流密度で広範囲のxの値にわたって良好な可逆性および低い過電圧が見いだされた。従って、式AxMyO2の化合物は電気化学的電池中の固溶体電極として使用することができる。」(第2頁左下欄17行〜右下欄5行)
「Li/LiBF4(1M)プロピレンカーボネート/Li0.99Co1.01O2の非水性電気化学的電池を組立てた。その電池の開路電圧を記録したところ第1図に示す通りであった。」(第3頁右下欄13〜16行)
と記載され、
第1図には、LixCo1.01O2のxの値とLixCo1.01O2/Liの開路電圧(ボルト)の関係が示され、この図から、xが1.0では3.9ボルトよりやや小さいが、xが小さくなるに従って4.7ボルト程度まで大きくなり、xが1未満で3.9ボルト以上となることが読みとれる。
(対比・判断)
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1には、正極、負極及びリチウム塩を溶解した有機溶媒(本件発明における「非水電解液」に相当)からなる二次電池であって、正極として、遷移金属のカルコゲン化合物を用い、負極として有機物焼成体(本件発明における「カーボン」に相当)を用いたものが示され、この二次電池は、電池の電圧が高いことも記載されているから、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、高い起電力を有する二次電池であって、負極としてカーボンを用いる二次電池。」である点で一致し、(1)本件発明は、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、刊行物1に記載された発明は、開路電圧が3.3V及び3.0Vの例が記載されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)正極として、本件発明は、「LiCoO2」を用いるが、刊行物1に記載された発明は、カルコゲン化合物の1例としてLiCoO2を用いることが一般的に示されているにすぎない点、(3)負極として、本件発明は、カーボンを用いるだけで、金属リチウムと接触させていないが、刊行物1に記載された発明は、カーボン(有機物焼成体)と金属リチウムを電池内で電気的に接触させたものを用いる点で相違する。
上記相違点について検討する。
刊行物1に記載された発明においては、例として正極材に二酸化マンガンを使用して電池を作製した場合、上記の正極、負極の反応をまとめると、次式のようになる。
放電
MnO2+有機物焼成体(C)・Liz→MnO2・Liz+C

充電
これと同様に、カルコゲン化合物の1例として示されているLiCoO2を正極とすると、次式で表すことができる。
放電
LiCoO2+C・Liz→Li(1+z)CoO2+C

充電
これに対して、本件発明の二次電池の正極、負極の反応は、次式で表すことができる。
充電
LiCoO2+C→Li(1-z)CoO2+C・Liz

放電
そこで、検討すると、刊行物2には、式LixCoyO2の化合物のLi対電極との関連での開路電圧は、LiaTiS2で得られる開路電圧のほぼ2倍の大きさであり、xが1未満で、yがほぼ1に等しい場合に、3.9ボルト以上の開路電圧(起電力)が得られることも示されているが、刊行物1に記載された二次電池の正極として、MnO2の代わりにLiCoO2を用いた場合には、上記のとおり、放電により、C・LizがCになると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、刊行物2の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
また、刊行物1に記載された発明の二次電池は負極材として有機物焼成体と金属リチウムを電気的に接触させたものを用いることにより充放電の繰り返しによる負極側のリチウムの樹枝状結晶析出を抑制するものであり、金属リチウムを電気的に接触させない場合には、発明の目的が達成できないものであるから、刊行物1に記載された発明の二次電池における有機物焼成体(カーボン)から金属リチウムを取り除いて本件発明と同様の負極の構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
取消理由(3)について、
(先願明細書に記載された発明)
取消理由(3)に引用された特願昭61-169864号(特開昭63-26953号公報参照)の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書1」という。)には、
「再充電可能な正極と、非水溶媒中に電解質を溶解せしめてなる電解液と、再充電可能な負極とを備えた非水溶媒二次電池において、該負極が、置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、C軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料からなることを特徴とする非水溶媒二次電池。」(特許請求の範囲)
が記載され、また、
「本発明の非水溶媒二次電池における正極材料としては、とくに限定されるものではないが、とくに、リチウムイオンなどのアルカリ金属カチオンを充放電反応に伴なって放出もしくは捕獲する金属カルコゲン化合物が好ましい。かかる金属カルコゲン化合物の具体例としては、Cr3O4,V2O5,V6O13,LiCoO2,・・・などがあげられ、とくに・・・は好ましいものである。」(第6頁右上欄6〜末行)
と記載されている。
本件発明と先願明細書1に記載された発明とを対比すると、先願明細書1に記載された発明において正極のカルコゲン化合物としてLiCoO2を使用した場合には、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなる二次電池であって、正極としてLiCoO2、負極としてカーボンを用いることを特徴とする二次電池」である点で一致し、カーボンとして、先願明細書1に記載された発明は、「置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、C軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料からなる」ものであるのに対し、本件発明は、前記炭素質材料からなるものを除くカーボンである点で相違する。
したがって、本件発明は、先願明細書1に記載された発明と同一であるとすることはできない。
(まとめ)
以上のとおりであるから、本件発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
3-3.訂正の適否についての判断
よって、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2項〜第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
4.特許異議申立てについての判断
4-1.申立て理由の概要
(1)特許異議申立人石黒きよしは、甲第1号証〜甲第8号証を提出して、本件発明は、甲第4〜6号証に記載された発明であるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるか(理由1-1)、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明又は甲第1〜3号証に記載された発明と甲第4〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(理由1-2)、また、甲第7号証又は甲第8号証に係る先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり(理由1-3)、さらに、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである(理由1-4)、とそれぞれ主張している。
(2)特許異議申立人日立マクセル株式会社は、甲第1号証〜甲第4号証を提出して、本件発明は、甲第2号証〜甲第4号証に記載された発明を参照すれば、甲第1号証に係る先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、本件発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり(理由2-1)、また、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項(特許異議申立書には「第36条第4項又は第6項」と記載されているが、本件は昭和61年の出願であるから、これは、「第36条第3項及び第4項」の誤記と認める。以下、同じ。)に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである(理由2-2)、とそれぞれ主張している。
(3)特許異議申立人株式会社ユアサコーポレーションは、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、本件発明は、甲第2、3号証に記載された発明を参照すれば、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである(理由3-1)、と主張している。
(4)特許異議申立人藤井昭夫は、甲第1号証〜甲第5号証を提出して、本件発明は、発明未完成であるから、本件発明の特許は、特許法第29条柱書の規定に違反してなされたものであり(理由4-1)、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである(理由4-2)、また、本件発明は、発明として未完成でないとしても、甲第5号証に記載された発明を参照すれば、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである(理由4-3)、とそれぞれ主張している。
(5)特許異議申立人三洋電機株式会社は、甲第1号証〜甲第5号証を提出して、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり(理由5-1)、本件発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(理由5-2)、また、本件発明は、甲第4号証に係る先願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、本件発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである(理由5-3)、とそれぞれ主張している。
(6)特許異議申立人松下電器産業株式会社は、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり(理由6-1)、また、甲第3号証に記載された発明を参照すれば、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである(理由6-2)、とそれぞれ主張している。
(7)特許異議申立人新神戸電機株式会社は、甲第1号証及び甲第2号証を提出して、本件発明は、甲第2号証に記載された発明を参照すれば、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(理由7-1)、また、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである(理由7-2)、とそれぞれ主張している。
(8)特許異議申立人富士写真フィルム株式会社は、甲第1号証及び甲第2号証を提出して、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり(理由8-1)、また、本件発明は、甲第1号証に記載された発明を参照すれば、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである(理由8-2)、と主張している。
(9)特許異議申立人日本モリエナジー株式会社は、甲第1号証〜甲第3号証を提出して、本件発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり(理由9-1)、また、本件特許明細書には、記載不備があるから、本件発明の特許は、特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである(理由9-2)、と主張している。
4-2.当審の判断
異議申立て(1)について
i)理由1-1について
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した提出した甲第4号証(特開昭60-109182号公報)には、
「1.遷移金属酸化物および遷移金属カルコゲン化合物からなる群より選ばれる正極活物質と:リチウム、リチウム合金およびリチウム含有ポリマー焼成体からなる群より選ばれる負極活物質と:3-置換-2-オキサゾリジノンと環状エーテルとの混合溶媒中の六フッ化リンリチウムおよび/またはトリフルオロメタンスルフォン酸リチウム溶液からなる非水電解液とから構成される二次電池。」(特許請求の範囲)
が記載され、また、
「正極活物質における遷移金属の酸化物および/または遷移金属カルコゲン化合物において遷移金属としてはチタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、鉄、ニオブ、モリブデンなどがあげられる。遷移金属の酸化物としてはTiO2,Cr3O8,V2O5,V6O13,MnO2,LiCoO2,CuO,MoO3などがあげられる。また遷移金属のカルコゲン化合物としてはTiS2,VSe2,Cr0.5V0.5S2,CuCo2S4,FeS,NbSe3,MoS3などがあげられる。」(第1頁右欄16行〜第2頁左上欄4行)
と記載され、
表-2及び表-3には、充電最終電圧が3.17〜3.19Vであるものが示されている。
同じく提出した甲第5号証(特開昭60-112264号公報)には、
「3.リチウムを含有するフェノール樹脂焼成体からなる負極材、遷移金属の酸化物またはカルコゲン化合物からなる正極材、およびリチウム塩の有機溶剤溶液から構成されるリチウム二次電池。」(特許請求の範囲第3項)
が記載され、また、
「本発明の二次電池の正極に用いられる遷移金属の酸化物またはカルコゲン化合物において、遷移金属としてはチタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、鉄、ニオブ、モリブデンなどがあげられる。遷移金属の酸化物としてはTiO2,Cr3O8,V2O5,V6O13,MnO2,LiCoO2,CuO,MoO3などがあげられる。また遷移金属のカルコゲン化合物としてはTiS2,VSe2,Cr0.5V0.5S2,CuCo2S4,FeS,NbSe3,MoS3などがあげられる。」(第3頁左下欄13行〜右下欄1行)
と記載され、
第2図には、電池電圧が約2.5Vのものが示されている。
同じく提出された甲第6号証(特開昭60-235372号公報)には、前記刊行物1に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、甲第4号証に記載された発明において、正極の遷移金属カルコゲン化合物としてLiCoO2を選択した場合、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなる二次電池であって、正極としてLiCoO2を用いる二次電池。」である点で一致するが、(1)本件発明が、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第4号証に記載された発明は、充電最終電圧として3.17〜3.19Vであるものが示されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)負極として、本件発明は、その特許請求の範囲に記載された括弧内の炭素質材料を除く「カーボン」を用いるのに対し、甲第4号証に記載された発明は、「リチウム、リチウム合金およびリチウム含有ポリマー焼成体からなる群より選ばれる」ものを用いる点で相違するから、本件発明は、甲第4号証に記載された発明とすることはできない。
本件発明と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、甲第5号証に記載された発明において、正極の遷移金属カルコゲン化合物としてLiCoO2を選択した場合、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなる二次電池であって、正極としてLiCoO2を用いる二次電池。」である点で一致するが、(1)本件発明が、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第5号証に記載された発明は、電池電圧として約2.5Vのものが示されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)負極として、本件発明は、その特許請求の範囲に記載された括弧内の炭素質材料を除く「カーボン」を用いるのに対し、甲第5号証に記載された発明は、「リチウムを含有するフェノール樹脂焼成体」を用いる点で相違するから、本件発明は、甲第5号証に記載された発明とすることはできない。
本件発明と甲第6号証(前記刊行物1)に記載された発明とを対比すると、上記3-2に記載したとおりの相違点があるから、本件発明は、甲第6号証に記載された発明とすることはできない。
ii)理由1-2について
(甲号証に記載された発明)
同じく提出した甲第1号証(特開昭55-136131号公報)には、前記刊行物2に記載された発明が記載されている。
同じく提出した甲第2号証(米国特許第4304825号明細書)には、溶融塩二次電池に関し、
「本発明は、通常の正極と溶融塩電解質と層間にリチウムが挿入された黒鉛からなる負極とを有する溶融塩電池である。
層間にリチウムが挿入された黒鉛の特有の利点は、電池の電圧がリチウム金属だけのものと事実上変りがなく負極が再充電可能なことである。従って、電池の容量と電圧の低下が最少限の二次電池を構成できる。
黒鉛に対するリチウムの比率は大幅に変化させ得るが、(Li/C)のモル比が1/6〜1/36が最高の結果を与えるので好ましい。この範囲では、電池容量を犠牲にすることを最少限にしてリチウム電極を多数回にわたり再充電できる。充電したリチウム-黒鉛電極の活物質はLiC6であり、放電の間にリチウム金属がより乏しい他の化合物(例えばLiC18)が形成されると考えられる。」(第1欄37〜55行)
と記載されている。
同じく提出した甲第3号証(Carbon,1976年,Vol.14,p.111〜115)には、有機電解液中でアルカリ金属-黒鉛層間化合物の電気化学的調製とその特性に関し、
「DME/LiClO4溶液中における黒鉛のC18Li(DME)への還元後、金属リチウムは低電流密度でも析出される。黒鉛の還元の終点は急激な電位の減少によって示され、また、溶媒の分解による混合電位によっては影響を受けることはない(Fig.2)。」(p.112右欄32〜37行)
と記載され、
Fig.2には、縦軸の電位が対SCEで表示され、この図から、450mAsmg-1より右側の曲線が平坦になっている部分ではリチウムが析出していることが読みとれる。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、正極としてLixCoyO2、負極としてLiを用いる非水性電気化学的電池が記載されており、第1図には、LixCo1.01O2のxの値とLixCo1.01O2/Liの開路電圧(ボルト)の関係が示され、この図から、xが1.0では3.9ボルトよりやや小さいが、xが小さくなるに従って4.7ボルト程度まで大きくなり、xが1未満で3.9ボルト以上となることが読みとれるから、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極としてLixCoyO2を用いる二次電池。」である点で一致し、本件発明は、負極として、特許請求の範囲の括弧内に示す炭素質材料を除くカーボンを用いるものであるが、甲第1号証に記載された発明は、Liを用いる点で相違する。
上記相違点について検討すると、甲第2号証には、溶融塩二次電池の負極として、層間にリチウムが挿入された黒鉛を用いることが記載されているにすぎず、また、甲第3号証には、有機電解液中でリチウム-黒鉛層間化合物を電気化学的に調製した場合、450mAsmg-1以上でリチウムが析出し、Li/Li+基準で電位がほぼ0Vになることが示されているだけであり、リチウムが挿入されていない黒鉛(カーボン)を負極に用いることは示唆されていないから、甲第2、3号証の記載を参照しても、負極として、甲第1号証に記載された発明におけるリチウムの代わりに、カーボンを用い、充電時に正極のLixCoyO2のxが1未満となるようにすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そして、本件発明は、正極としてのLiCoO2、負極としてのカーボンとを組み合わせたことにより、3.9V以上の起電力を有し、サイクル特性、自己放電特性に優れた二次電池が得られるという顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、甲第4、5号証に記載された発明は、非水系二次電池の負極として、いずれもリチウムを含有するカーボンを用いるものであるから、上記3-2に述べたとおり、前記刊行物1(甲第6号証)に記載された発明と同様に、放電により、リチウムを含有するカーボン(C・Liz)がカーボン(C)になると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、前記刊行物2の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に甲第4〜6号証に記載された発明を組み合わせても当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
iii)理由1-3について
(甲号証に記載された発明)
同じく提出された甲第7号証(特開昭62-122066号公報)に係る先願である特願昭61-8200号の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書2」という。)には、
「1.再充電可能な正極と、非水溶媒中に電解質を溶解させてなる電解液と、再充電可能な負極とを備えた非水溶媒二次電池において、
該負極が、有機高分子系化合物、縮合多環炭化水素化合物および多環複素環系化合物よりなる群から選択された少なくとも一種の化合物を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回析により求めた(002)面の面間隔が3.37Å以上、c軸方向の結晶子の大きさが150Å以下の擬黒鉛構造を有する炭素質材料よりなることを特徴とする非水溶媒二次電池。
2.該正極が、金属カルコゲン化合物により構成されている特許請求の範囲第1項記載の非水溶媒二次電池。」(特許請求の範囲第1項、第2項)
が記載され、また、
「まず、正極の構成材料として使用する金属カルコゲン化合物の具体例としては、Cr3O8,V2O5,V6O13,LiCoO2,MoO3,WO3などの酸化物;TiS2,V2S5,MoS2,MoS3,CuS,Fe0.25V0.75S2,Cr0.25V0.75S2,Cr0.5V0.5S2,Na0.1CrS2などの硫化物;NiPS3,FePS3などのリン・イオウ化合物;VSe2,NbSe3などのセレン化物などがあげられ、とくにTiS2,MoS2,V2O5は好ましいものである。このような金属カルコゲン化合物を正極として用いることは容量の大きい信頼性の高い二次電池を得るという点で好ましい。」(第5頁左上欄7〜17行)
「正極5は1.5モル/lのLiCO4を含むプロピレンカーボネイト溶液中において、2mAで10時間予備放電したものである。」(第8頁左上欄19行〜右上欄1行)
と記載され、
第2図には、電池電圧が約3.5Vのもの、第3図には、電池電圧が約2.1Vのもの、第4図には、電池電圧が約3.0Vのものが示されている。
また、同じく提出された甲第8号証(特開昭63-26953号公報)に係る先願である特願昭61-169864号の願書に最初に添付した明細書には、前記先願明細書1に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と先願明細書2に記載された発明とを対比すると、先願明細書2に記載された発明における「有機高分子系化合物、縮合多環炭化水素化合物および多環複素環系化合物よりなる群から選択された少なくとも一種の化合物を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回析により求めた(002)面の面間隔が3.37Å以上、c軸方向の結晶子の大きさが150Å以下の擬黒鉛構造を有する炭素質材料」は、本件発明におけるカーボンに相当するから、先願明細書2に記載された発明において正極のカルコゲン化合物としてLiCoO2を選択した場合には、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなる二次電池であって、正極としてLiCoO2、負極として炭素質材料を用いることを特徴とする二次電池」である点で一致し、(1)本件発明は、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、先願明細書2に記載された発明は、実施例として充電電圧が3.5Vまでのものは示されているが、3.9V以上のものは示されていない点で相違する。
上記相違点について検討すると、「正極5は1.5モル/lのLiCO4を含むプロピレンカーボネイト溶液中において、2mAで10時間予備放電したものである。」と記載されているから、正極としてLiCoO2を用いたとしても、上記3-2に述べたとおり、放電により、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoyO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、甲第1号証(前記刊行物2)の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない
したがって、本件発明は、先願明細書2に記載された発明と同一であるとすることはできない。
また、上記3-2に述べたとおり、本件発明は、先願明細書1に記載された発明と同一であるとすることはできない。
iv)理由1-4について、
特許異議申立人は、本件特許明細書が記載不備である理由として、本件特許明細書にはLiNiO2を正極とする二次電池としては3.83Vの起電力を有するものが参考例として示されているだけで、3.9V以上の起電力を有するものは示されていないという旨の主張をしているが、明細書の訂正により、正極としてLiNiO2を用いるものは除かれたので、この記載不備は解消した。
異議申立て(2)について
i)理由2-1について
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭62-122066号公報)に係る先願明細書2には、前記した異議申立て(1)の甲第7号証に記載された発明が記載されている。
同じく提出した甲第2号証(特願昭61-103785号の上申書)には、甲第1号証に記載された発明の炭素質材料は、特願昭61-103785号発明の範囲にある炭素質材料(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料)からはずれる旨の指摘がされている。
同じく提出した甲第3号証(特開昭55-136131号公報)には、前記刊行物2に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
甲第2号証及び甲第3号証の記載を考慮しても、「異議申立て(1)について」の「iii)理由1-3について」で述べたとおり、本件発明は、先願明細書2に記載された発明と同一であるとすることはできない。
ii)理由2-2について
特許異議申立人は、甲第4号証を提出すると共に、(a)本件明細書の[問題点を解決するための手段及び作用]には、起電力が3.9〜4.2Vと記載されているが、[実施例]には、3.95Vの開放端子電圧の例が記載されているのみであり、それ以外の範囲の起電力を有する二次電池については、当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえず、(b)参考例のLiNiO2を正極に用いた場合は、開放端子電圧3.83Vとされているから、正極にLiNiO2のみを用いた場合と、LiCoO2及びLiNiO2を用いた場合について、3.9V以上の起電力を有する二次電池を当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえず、(c)本件明細書の実施例には、「ニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)の平均粒径10μの粉末」を用いると記載されているが、同一出願人の先願に係る甲第4号証の「実施例30」の記載を参照すると、上記粉末は、本件明細書の特許請求の範囲において括弧書きで除かれている炭素質材料に含まれることが明らかであるから、本件明細書の実施例の記載は不明りょうである、と主張している。
そして、特許異議申立人が提出した甲第4号証(特公平4-24831号公報)には、次の発明が記載されている。
「1.正電極、負電極、セパレーター及び非水電解液を有する二次電池であって、下記Iを正電極の活物質として、下記IIを負電極の活物質として用いることを特徴とする二次電池。
I:非炭素質材料
II:BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料。」(特許請求の範囲第1項)
が記載され、また、
「実施例30
市販の石油系ニードルコークス(興亜石油社製、KOA-SJ Coke)をボールミルで平均粒径10μmに粉砕した。この粉砕物を実施例1のアントラセン油焼成炭化物の粉末のかわりに用いる以外、全く同様の電池評価を行った。その結果を第6図-Bに示す。
尚、このニードルコークスのBET表面積、真密度、X線回折より得られる面間隔d002、Lc(002)はそれぞれ11m2/g、2.13g/cm3、3.44Å、52Åであった。」(第14頁27欄21行〜28欄22行)
そこで検討すると、(a)については、上記3-2に述べたとおり、本件明細書に記載不備はなく、また、LiCoO2を正極に用いた二次電池の参考例として3.95Vのものが1例しか記載されていなくても、前記刊行物2の記載からみて、起電力が3.9〜4.2Vの範囲の二次電池を得ることは理論的に可能なものと認められるから、この点でも、本件明細書に記載不備があるとはいえない。
(b)及び(c)については、明細書の訂正により、記載不備は解消した。
異議申立て(3)について
i)理由3-1
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭60-109182号公報)には、前記した異議申立て(1)の甲第4号証に記載された発明が記載されている。
同じく提出した甲第2号証(特開昭55-136131号公報)には、前記刊行物2に記載された発明が記載されている。
同じく提出した甲第3号証(米国特許第4304825号明細書)には、前記した異議申立て(1)の甲第2号証に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明において、正極の遷移金属カルコゲン化合物としてLiCoO2を選択した場合、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなる二次電池であって、正極としてLiCoO2を用いる二次電池。」である点で一致するが、(1)本件発明が、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、充電最終電圧として3.17〜3.19Vであるものが示されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)負極として、本件発明は、その特許請求の範囲に記載された括弧内の炭素質材料を除く「カーボン」を用いるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、「リチウム、リチウム合金およびリチウム含有ポリマー焼成体からなる群より選ばれる」ものを用いる点で相違する。
上記相違点について検討すると、甲第1号証に記載された発明は、負極として、リチウム含有ポリマー焼成体(リチウム含有カーボン)を用いるものであるから、上記3-2に述べた刊行物1に記載された発明と同様に、LiCoO2は、放電によりLi(1+z)CoO2となり、すなわち、LixCoO2のxが1以上となるもので、1未満となることはないから、甲第2号証(前記刊行物2)の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
また、甲第3号証には、溶融塩二次電池の負極として、層間にリチウムが挿入された黒鉛を用いることが記載されているにすぎず、リチウムが挿入されていない黒鉛(カーボン)を負極に用いることは示唆されていないから、甲第3号証の記載を参照しても、負極として、甲第1号証に記載された発明におけるリチウム含有カーボンの代わりに、リチウムを含有していないカーボンを用い、充電時に正極のLixCoO2のxが1未満となるようにすることを当業者が適宜なし得たとはいえない。
したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
異議申立て(4)について、
i)理由4-1について、
特許異議申立人は、本件発明は、次の各理由で特許法第29条柱書の規定を満たしていない(発明未完成)、と主張している。
イ)特許請求の範囲には、「3.9V以上の起電力有する二次電池であって」、「正極として、LiCoO2及び/又はLiNiO2を用い」ると記載されているが、正極としてLiNiO2を用いるものは、開放端子電圧が3.83Vと記載されているから、LiNiO2を用いるもの、LiCoO2及びLiNiO2を用いるものについては、当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることは不可能である。
ロ)本件明細書には、正極としてLiCoO2を用いたものについては、起電力が3.95Vとなるものが実施例1に記載されているが、この実施例1のニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)は、本件発明と同一発明であるとして拒絶理由に引用された先願の明細書(甲第5号証、異議申立て(2)の甲第4号証と同じ。)の実施例30に記載されているものであり、本件明細書の特許請求の範囲において括弧書きで除かれた炭素質材料であるから、本件明細書に記載された唯一の実施例は本件発明の実施例とはいえず、カーボンであれば、どのようなカーボンであっても負極として使用でき、所期の効果をもたらすことが実証されていない。
そこで検討すると、本件明細書は訂正により、正極としてLiNiO2を用いるものが削除されたから、イ)の主張は理由がない。
また、上記3-2に述べたとおり、本件明細書の実施例1は、参考例1と訂正され、実験報告書により、「正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン」を用いることにより、「3.9V以上の起電力を有する二次電池」が得られることは裏付けられているから、ロ)の主張も理由がない。
ii)理由4-2について、
特許異議申立人は、本件明細書は記載が不備である根拠として、次の点を主張している。
イ)特許請求の範囲の「LiCoO2及び/又はLiNiO2」の記載について、「正極としてLiCoO2を用いたもの」、「正極としてLiCoO2及びLiNiO2を用いたもの」の実施例あるいはそれに代わるデータ等が記載されていない。
ロ)特許請求の範囲の「・・・を除く」の記載と実施例の関係について、本件明細書には、特許請求の範囲で除かれた炭素質材料以外のカーボンを負極として使用し、3.9V以上の起電力を有する二次電池については、実施例あるいはそれに代わるデータ等が記載されていない。
以上のイ)及びロ)については、上記3-2に述べたとおり、理由がない。
iii)理由4-3について
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭60-253157号公報)には、非水系二次電池に関し、
「正極の活物質としては特に限定されるものではないけれどもLiCoO2,NaCoO2,LiCrS2,V2O3等の層間化合物あるいはポリアセチレンに代表される有機導電体が用いられる。」(第2頁左上欄15〜19行)
「負極活物質としては、リチウム、ナトリウム等の軽金属もしくは合金、有機導電体が使用される。」(第2頁右上欄5〜7行)
「本発明で言う高出力型の非水系二次電池の充電状態における開放端子電圧は3〜5Vであることが好ましい。」(第3頁左上欄18〜末行)
と記載されている。
同じく提出した甲第2号証(特開昭60-127669号公報)には、
「負極活物質としてリチウムドープされたポリアセチレン、又正極活物質としてLi1-xCoO2(0≦x≦1)を用いることを特徴とする非水系二次電池。」(特許請求の範囲)
が記載され、
「本発明で用いるLi1-xCoO2(0≦x≦1)の前駆物質は、水酸化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム塩と、水酸化コバルト、酸化コバルト、炭酸コバルト等のコバルト塩とを大気中800〜900℃の温度で焼成することにより通常LiCoO2の組成で得られる。該LiCoO2は、その充電工程、即ちリチウムイオンを含有する電解液中における電気化学的酸化反応によりLi1-xCoO2(0≦x≦1)なる組成に変換され、その充電の度合、即ちxの値が0〜1の範囲においてリチウム標準電極に対し、3.9V〜4.7Vという非常に貴な電位を有する。かかる非常に貴な電位を有することは正極活物質として極めて重要な特徴の一つである。」(第2頁右上欄3〜16行)
「実施例1
負極としてポリアセチレン1.2g、正極としてLiCoO23.7gを用い、0.6M-LiClO4-プロピレンカーボネート溶液を電解液として第1図に示すペーパー型バッテリーを試作した。
・・・・・
充電時の開放端子電圧4.45V、平均放電電圧4.1Vの特性を示した。」(第3頁右上欄12行〜左下欄8行)
と記載されている。
同じく提出した甲第3号証(特開昭58-93176号公報)には、
「共役系を有する高分子焼成体を、陽極および/または陰極として用いることを特徴とする二次電池。」(特許請求の範囲)
が記載され、また、
「このポリアセチレン電極による電池においては、いわゆるトポケミカル反応を利用し、電解液中のイオンの高分子焼成体からなる電極へのドーピングと離脱による充電・放電を行なうものである。」(第1頁右下欄8〜12行)
「・・・前記トポケミカル反応のメカニズムを応用する本発明の電極としては、電極としての焼成体へのイオンの導入・放出を行ないやすくするために、非晶質を多く含む焼成体であることが望ましい。本発明にかかる高分子焼成体は、一般に炭化と称する段階にその焼成温度を留めるべきで、例えば、ポリアクリロニトリルの焼成温度で言えば、約700〜約1500℃程度に抑えるのが特に好ましい。」(第2頁右上欄18行〜左下欄7行)
「一方の電極、例えば陰極に金属を用いる場合には、リチウム電極を例にとると充電・放電では次のような反応が起こっている。
放電
Li→Li++e-

充電
この場合にも焼成体よりなる陽極側には電解質のカチオンが充電によってドーピングされているため、放電すると焼成体よりなる陽極から金属に向って電流が流れる。」(第2頁右下欄18行〜第3頁左上欄8行)
「実施例3
実施例2と同じポリアクリロニトリルによる繊維状焼成体(・・・)を陽極、白金板を陰極とした二次電池を作製した。電解液はPBAのプロピレンカーボネイト溶液(・・・)であった。この電池を5ボルトで1時間充電した後、Voc、Jscの初期値を測定した結果、それぞれ1.4ボルト、4mAが得られた。」(第3頁左下欄1〜8行)
と記載されている。
同じく提出した甲第4号証(特開昭60-112264号公報)には、前記した異議申立て(1)の甲第5号証に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とを対比すると、正極の活物質として、甲第1号証に記載の発明においてLiCoO2を、甲第2号証に記載の発明においてx=0を選択したときは、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極としてLiCoO2を用いる二次電池。」である点一致し、負極として、本件発明は、特許請求の範囲の括弧内に示す炭素質材料を除く「カーボン」を用いるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、「リチウム、ナトリウム等の軽金属もしくは合金、有機導電体」を用い、甲第2号証に記載された発明は、「リチウムドープされたポリアセチレン」を用いる点で相違する。
上記相違点について検討する。
甲第3号証には、共役系を有する高分子焼成体(本件発明における「カーボン」に相当)を正極および/または負極として用いることが記載されているが、共役系を有する高分子焼成体と組み合わせる該焼成体以外の電極材料としてはリチウム、白金などの金属が示されているだけで、リチウムを用いる場合には、リチウムが負極となり、共役系を有する高分子焼成体は正極となるものであり、しかも具体的に示されている開放端子電圧(Voc)は1.4V以下と極めて低いものであるから、正極としてLiCoO2を用いる甲第1号証又は甲第2号証に記載された二次電池の負極に、「リチウム、ナトリウム等の軽金属もしくは合金、有機導電体」又は「リチウムドープされたポリアセチレン」の代わりに、甲第3号証に記載された共役系を有する高分子焼成体を用いることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲第4号証に記載された発明は、負極として、リチウムを含有するフェノール樹脂焼成体(本件発明における「カーボン」に相当)を用いるものであるから、甲第1号証又は甲第2号証に記載された二次電池の負極に、甲第4号証に記載されたリチウムを含有するカーボンを用いたとしても、上記3-2に述べた刊行物1に記載された発明と同様に、放電により、リチウムを含有するカーボン(C・Liz)がカーボン(C)になると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、前記刊行物2の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
したがって、本件発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
異議申立て(5)について、
i)理由5-1について、
特許異議申立人は、(ア)先願である特願昭61-103785号(特公平4-24831号公報参照)(甲第5号証、異議申立て(2)の甲第4号証と同じ。)の実施例30の記載からすると、本件発明の実施例1に記載されたニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)は、「BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料」であり、特許請求の範囲に記載された「カーボン(〜炭素質材料は除く)」なる記載は実施例には記載されていないから、本件明細書の発明の詳細な説明には、発明の構成が容易に実施できる程度に記載されておらず、(イ)本件発明による正、負極を組み合わせると、必ず3.9V以上の起電力を有する二次電池が得られるかどうか不明であり、(ウ)正極としてLiNiO2を用いた場合は3.9V以上の起電力を有する二次電池は得られないから、特許請求の範囲に記載された事項と対応する事項が発明の詳細な説明に記載されていない、と主張している。
そこで検討すると、(ウ)については、本件明細書は訂正されたことにより、記載不備は解消した。
また、(ア)及び(イ)については、上記3-2に述べたとおり、実施例の記載がないという理由だけで直ちに記載不備があるとはいえない。
ii)理由5-2について
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭57-208079号公報)には、再充電可能なリチウム電池に関し、
「負極電極基板として黒鉛を主成分とするもので構成し、この黒鉛の結晶中にリチウムイオンを混入して負極とすることにより、サイクル特性を飛躍的に改善しうることを見出した。」(第1頁右下欄9〜12行)
「黒鉛は炭素の結晶であってその結晶型は六方晶系で層状構造を有するものであり、この黒鉛の結晶層間にリチウムイオンを混入すると黒鉛の層間化合物が得られる。
正極活物質としてV2O5(五酸化バナジウム)を用い、このV2O5粉末に導電剤及び結着剤を加えた混合物を極板芯体となるステンレス金網に加圧成型して正極とする。
そして電解液はプロピレンカーボネイトとジメトキシエタンとの混合溶媒に1モルの過塩素酸リチウムを溶解したものであり、これをポリプロピレン不織布よりなるセパレータに含浸して使用した。電池電圧は約2.5Vである。」(第1頁右下欄末行〜第2頁左上欄12行)
「本発明電池においては黒鉛を主成分とする負極電極基板に活物質としてのリチウムイオンを混入した黒鉛層間化合物を負極として用いているため、充電の際、リチウムイオンはほとんどが黒鉛の結晶中に入りこんで層間化合物を形成するよう作用するため、従来電池におけるリチウムの樹枝状生長現象が激減し、その結果として内部短絡を因とするサイクル特性の劣化が改善されたと考えられる。」(第2頁右上欄18行〜左下欄6行)
「正極活物質としては実施例で示したV2O5以外に、その他周知の各種硫化物、酸化物などが適用でき、更に電解液としても実施例で示したもの以外に溶媒としてγ-ブチロラクトン、テトラヒドロフランなど、溶質としてはLiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3なども適用できる。」(第2頁左下欄12〜17行)
と記載されている。
同じく提出した甲第2号証(特開昭55-136131号公報)には、前記刊行物2に記載された発明が記載されている。
同じく提出した甲第3号証(「JOURNAL OF POWER SOURCES」VOL.9,NOS.3&4,APRIL/MAY,1983,P.365-371)には、二次電池の黒鉛-リチウム負極に関し、
「リチウム二次電池の代替可能な負極としてのLiC6/P(OE)8LiClO4の使用は、その機械的性質の魅力のため注目に値する。それらは以下に要約される。
・・・・・
良好な電気化学的理論容量(LiC6を用いると340Ah/kgで、電気容量密度は20C(クーロン)/cm2より大きい)
電位のロスはリチウム(金属)に対して300〜400mV程度に小さい。」(第371頁6〜14行)
と記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなる二次電池であって、負極としてカーボンを用いる二次電池。」である点で一致し、(1)本件発明は、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、電池電圧が約2.5Vの例が記載されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)正極として、本件発明は、「LiCoO2」を用いるが、甲第1号証に記載された発明は、V2O5以外は周知の各種酸化物などを用いることが一般的に示されているだけで、LiCoO2を用いることは示されていない点、(3)負極として、本件発明は、カーボンを用いるだけであるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、黒鉛(カーボン)の結晶中にリチウムイオンを混入したものを用いる点で相違する。
上記相違点について検討する。
甲第1号証に記載された発明は、負極として、カーボンの結晶中にリチウムイオンを混入したものを用いるものであるから、V2O5の代わりに周知の各種酸化物の一つである甲第2号証に記載されたLiCoO2を用いたとしても、上記3-2に述べた刊行物1に記載された発明と同様に、放電により、カーボンの結晶中にリチウムイオンを混入したもの(C・Liz)がカーボン(C)になると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、甲第2号証の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
また、甲第3号証には、黒鉛電極(LiC6)の金属リチウム電極(Li)に対する平衡電位について記載されているだけであるから、甲第3号証を参照しても、上記の判断は変わらない。
そして、本件発明は、正極としてのLiCoO2、負極としてのカーボンとを組み合わせたことにより、3.9V以上の起電力を有し、サイクル特性、自己放電特性に優れた二次電池が得られるという顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものとすることはできない。
iii)理由5-3について、
特許異議申立人が提出した甲第4号証(特開昭62-122066号公報)は、前記した異議申立て(1)の甲第7号証と同じものであるから、本件発明は、甲第4号証に係る先願明細書に記載された発明と同一であるとすることはできない。
異議申立て(6)について、
i)理由6-1について、
特許異議申立人は、先願である特願昭61-103785号(特公平4-24831号公報参照)の実施例30の記載からすると、本件発明の実施例1に記載された「ニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)の平均粒径10μの粉末」は、「BET表面積、真密度、X線回折より得られる面間隔d002、Lc(002)はそれぞれ11m2/g、2.13g/cm3、3.44Å、52Å」であり、本件明細書の特許請求の範囲に記載された「除く部分」に該当するものであるから、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に発明が記載されていないと主張している。
そこで検討すると、上記3-2に述べたとおり、上記主張は理由がない。
ii)理由6-2について、
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭55-136131号公報)には、上記刊行物2に記載された発明が記載されている。
同じく提出した本出願前に頒布された甲第2号証(米国特許第4423125号明細書)には、
「1.電解質としての溶質を含む有機溶媒、活物質としてリチウムがインターカレートした黒鉛からなる負極、及び正極から構成される二次電池。」(特許請求の範囲第1項)
が記載されている。
同じく提出した甲第3号証(Journal Power Sources,9(1983)p.365-371)には、前記した異議申立て(5)の甲第3号証に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証には、正極としてLixCoyO2、負極としてLiを用いる非水性電気化学的電池が記載されており、第1図には、LixCo1.01O2のxの値とLixCo1.01O2/Liの開路電圧(ボルト)の関係が示され、この図から、xが1.0では3.9ボルトよりやや小さいが、xが小さくなるに従って4.7ボルト程度まで大きくなり、xが1未満で3.9ボルト以上となることが読みとれるから、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極としてLixCoyO2を用いる二次電池。」である点で一致し、本件発明は、負極として、特許請求の範囲の括弧内に示す炭素質材料を除くカーボンを用いるものであるが、甲第1号証に記載された発明は、Liを用いる点で相違する。
上記相違点について検討すると、甲第2号証に記載された発明は、負極として、リチウムがインターカレートした黒鉛(カーボン)を用いるものであるから、甲第1号証に記載されたLiの代わりに、甲第2号証に記載されたリチウムがインターカレートしたカーボンを用いたとしても、上記3-2に述べた刊行物1に記載された発明と同様に、放電により、リチウムがインターカレートしたカーボン(C・Liz)がカーボン(C)になると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、甲第1号証の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
また、甲第3号証には、黒鉛電極(LiC6)の金属リチウム電極(Li)に対する平衡電位について記載されているだけであるから、甲第3号証を参照しても、上記の判断は変わらない。
そして、本件発明は、正極としてのLiCoO2、負極としてのカーボンとを組み合わせたことにより、3.9V以上の起電力を有し、サイクル特性、自己放電特性に優れた二次電池が得られるという顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
異議申立て(7)について
i)理由7-1について、
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭60-112264号公報)には、前記した異議申立て(1)の甲第5号証に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明において、正極の遷移金属カルコゲン化合物としてLiCoO2を選択した場合、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター及び非水電解液からなる二次電池であって、正極としてLiCoO2を用いる二次電池。」である点で一致するが、(1)本件発明が、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、電池電圧として約2.5Vのものが示されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)負極として、本件発明は、その特許請求の範囲に記載された括弧内の炭素質材料を除く「カーボン」を用いるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、「リチウムを含有するフェノール樹脂焼成体」を用いる点で相違する。
上記相違点について検討すると、甲第1号証に記載された発明は、負極として、リチウムを含有するフェノール樹脂焼成体(本件発明における「カーボン」に相当)を用いるものであるから、上記3-2に述べた刊行物1に記載された発明と同様に、放電により、リチウムを含有するカーボン(C・Liz)がカーボン(C)になると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、前記刊行物2の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
ii)理由7-2について、
特許異議申立人は、(a)特許請求の範囲には、「・・・3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、・・・」と記載されているが、「実施例」には3.95Vの開放端子電圧の例が記載されているのみで、「3.9V以上」の範囲全ての起電力を有する二次電池を実施することができないため、技術的範囲が不明瞭であり、(b)正極としてLiCoO2を用いた場合は「開放端子電圧3.83V」とあり、起電力が3.9V以上にならない矛盾を生じるため、技術的範囲が不明瞭であり、(c)本件発明の唯一の実施例で使用されている炭素質材料は、「ニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)であり、この炭素質材料は、同一出願人の先願に係る甲第2号証(異議申立て(2)の甲第4号証と同じ。)の「実施例30」によれば、「BET表面積11m2/g、真密度2.13g/cm3、Lc(002)52Å」であり、本件明細書の特許請求の範囲で除いている炭素質材料そのものであるから、特許請求の範囲の記載と矛盾するため、技術的範囲が不明瞭である、と主張している。
そこで、検討すると、(a)については、上記3-2に述べたとおり、理由はない。
(b)及び(c)については、本件明細書が訂正されたことにより、記載不備は解消された。
異議申立て(8)について
i)理由8-1について、
特許異議申立人は、本件発明の実施例1で使用されている炭素質材料は、「ニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)であり、この炭素質材料は、同一出願人の先願に係る甲第1号証(異議申立て(2)の甲第4号証と同じ。)の「実施例30」によれば、「BET表面積11m2/g、真密度2.13g/cm3、Lc(002)52Å」であり、本件明細書の特許請求の範囲で除いている炭素質材料であるから、上記の実施例1は、本来は参考例又は比較例として記載すべきもので、本件の特許請求の範囲に対応するものではなく、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に実施できる程度に発明が記載されていない、と主張している。
そこで検討すると、上記3-2に述べたとおり、上記主張は理由がない。
ii)理由8-2について、
特許異議申立人は、本件に係る平成9年4月22日付け手続補正書は要旨を変更するものであるから、本件発明は、その出願日が繰り下がることにより、甲第2号証に記載された発明であるか、少なくとも同証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものである、と主張している。
そこで検討すると、前記手続補正において、「負極としてカーボンを用いる」を「負極として(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)を用いる」に補正しているが、この手続補正は、括弧内の「除く」構成で特許請求の範囲を減縮するものであり、発明の要旨を変更するものとは認められないから、本件発明についての出願日は繰り下がることはない。
したがって、甲第2号証は、本件発明に対して公知の引用例とはなり得ないから、上記主張は理由がない。
異議申立て(9)について、
i)理由9-1について、
(甲号証に記載された発明)
特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開昭57-208079号)には、前記した異議申立て(5)の甲第1号証に記載された発明が記載されている。
同じく提出した本出願前頒布された甲第2号証(米国特許第4423125号明細書)には、
「1.電解質としての溶質を含む有機溶媒、活物質としてリチウムがインターカレートした黒鉛からなる負極、及び正極から構成される二次電池。」(特許請求の範囲第1項)
が記載され、また、
正極としてセレン化ニオブ(NbSe3)を用いた場合について、
「そのイオンは、Li++NbSe3→LixNbSe3で示される反応式にしたがって反応する。ここで0≦x≦3であり、電池の放電の程度に依存する。負極のリチウム(1)がすべて正極(2)に導かれるか、あるいは正極はその最大のリチウム容量(すなわち、x=3)に達した時に、電池は放電終点に達する。電池の逆方向の通電によって充電される。Li+イオンは、そのときLixNbSe3正極から形成され、そして負極へ逆に導かれてリチウムがインターカレートした黒鉛を形成する黒鉛格子中へ再度導入されるものと考えられている。
この電池系からは、1サイクルは次の機構のようにまとめられる。
放電 放電電流
(負極)LiC6→Li++LiCy(y=12,18等)
(正極)Li++NbSe3→LixNbSe3(0≦x≦3)
充電 充電電流
(正極)LixNbSe3→Li++NbSe3
(負極)Li++LiCy→LiC6
放電中の負極反応は、一般にいくらかのより高い段階のインターカレーション化合物を残すことを示されるであろう。それはまた、LiC6においては、リチウムはリチウムイオンLi+として存在するので、原子状リチウムは、穏やかな充電率で負極表面に形成されそうもない。」(第2欄53行〜第3欄20行)
「他の正極及び電解質物質はこの負極とともに使用されることができる。可能性のある電解質物質はLiI、LiBr及びLiPF6を含むであろう。可能性のある正極は、V6O13、TiS2及びV(Cr,Fe)S2は含んでいる。」(第4欄9〜12行)
と記載されている。
同じく提出した甲第3号証(特開昭55-136131号公報)には、前記刊行物2に記載された発明が記載されている。
(対比・判断)
本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなる二次電池であって、負極としてカーボンを用いる二次電池。」である点で一致し、(1)本件発明は、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、電池電圧が約2.5Vの例が記載されているが、3.9V以上のものは示されていない点、(2)正極として、本件発明は、「LiCoO2」を用いるが、甲第1号証に記載された発明は、V2O5以外は周知の各種酸化物などを用いることが一般的に示されているだけで、LiCoO2を用いることは示されていない点、(3)負極として、本件発明は、カーボンを用いるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、黒鉛(カーボン)の結晶中にリチウムイオンを混入したものを用いる点で相違する。
また、本件発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、両者は、「構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなる二次電池であって、負極としてカーボンを用いる二次電池。」である点で一致し、(1)本件発明は、「3.9V以上の起電力を有する」のに対し、甲第2号証に記載された発明には、3.9V以上のものは示されていない点、(2)正極として、本件発明は、「LiCoO2」を用いるが、甲第2号証に記載された発明には、NbSe3、V6O13、TiS2、V(Cr,Fe)S2などを用いることが示されているだけで、LiCoO2を用いることは示されていない点、(3)負極として、本件発明は、カーボンを用いるのに対し、甲第2号証に記載された発明は、リチウムがインターカレートした黒鉛(カーボン)を用いる点で相違する。
上記相違点について検討する。
甲第2号証に記載された発明において、正極としてセレン化ニオブ(NbSe3)を用いた場合の正極、負極の反応をまとめると、次式のようになる。
放電
LiC6+NbSe3→LixNbSe3+LiCy

充電
上記式において、NbSe3の代わりに甲第3号証に記載されたLiCoO2を正極とすると、次式で表すことができる。
放電
LiC6+LiCoO2→Li(1+z)CoO2+LiCy

充電
上記式からみて、正極として、甲第1号証に記載されたV2O5などの酸化物、甲第2号証に記載されたNbSe3、V6O13、TiS2、V(Cr,Fe)S2などの代わりに、甲第3号証に記載されたLiCoO2を用いたとしても、放電により、甲第1号証に記載されたカーボンの結晶中にリチウムイオンを混入したもの又は甲第2号証に記載されたリチウムがインターカレートしたカーボン(LiC6)がカーボン(C)又はカーボンに近い物質(LiCy)なると、LiCoO2はLi(1+z)CoO2になり、すなわち、LixCoO2のxが1以上になるもので、1未満になることはないから、甲第3号証の第1図からみて、3.9ボルト以上の起電力が得られるとは認められない。
したがって、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
ii)理由9-2について、
特許異議申立人は、本件の同一出願人による先願である特願昭61-103785号に係る甲第4号証(特開昭62-90863号公報)を提出し、甲第4号証の実施例30には、「市販の石油系ニードルコークス(興亜石油社製、KOA-SJ Coke)をボールミルで平均粒径10μmに粉砕した」ものが、「BET表面積、真密度、X線回折より得られる面間隔d002、Lc(002)はそれぞれ11m2/g、2.13g/cm3、3.44Å、52Åであった」と記載されており、本件明細書の実施例1に記載されている炭素質材料は、上記の実施例30に記載されているものと同一であるから、本件発明は、先願発明に記載の炭素質材料を除いたものとはいえず、また、本件の特許請求の範囲には、正極活物質としてLiNiO2を用いるものが記載されているが、LiNiO2を用いたものは、明細書中に参考例として記載されているように開放端子電圧が3.83Vを示し、3.9V以上の起電力を有するものではないから、特許請求の範囲の記載は、本件特許が本来発明とすべき事項を記載していない、と主張している。
上記3-2に述べたとおり、本件明細書は訂正されたことにより、この点の記載不備は解消した。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
二次電池
(57)【特許請求の範囲】
1.構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は新規な二次電池、更には小型、軽量二次電池に関する。
〔従来の技術〕
近年、電子機器の小型化、軽量化は目覚ましく、それに伴い電源となる電池に対しても小型軽量化の要望が非常に大きい。一次電池の分野では既にリチウム電池等の小型軽量電池が実用化されているが、これらは一次電池であるが故に繰り返し使用できず、その用途分野は限られたものであった。一方、二次電池の分野では従来より鉛電池、ニッケル-カドミ電池が用いられてきたが両者共、小型軽量化という点で大きな問題点を有している。かかる観点から、非水系二次電池が非常に注目されてきているが、未だ実用化に至っていない。その理由の一つは該二次電池に用いる電極活物質でサイクル性、自己放電特性等の実用物性を満足するものが見出されていない点にある。
一方、従来のニッケル-カドミ電池、鉛電池などと本質的に異なる反応形式である層状化合物のインターカレーション、又はドーピング現象を利用した新しい群の電極活物質が注目を集めている。
かかる新しい電極活物質は、その充電、放電における電気化学的反応において複雑な化学反応を起こさないことから、極めて優れた充放電サイクル性が期待されている。中でもカーボンを活物質として用いることが提案され、注目されている。
一方、従来正極材料として、例えばTiS2,MoS2といった金属カルコゲナイト化合物等が考えられていた。但し、これらのものはカーボンと組合わせた場合、起電力が小さく期待されていたほどの性能は見出されていなかった。
〔発明が解決しようとする問題点〕
前述の如く、カーボンを負極活物質として用いた二次電池において、正極活物質の選択が極めて重要な課題として残されていた。
〔問題点を解決する為の手段及び作用〕
本発明は前述の問題点を解決し、電池性能、特に出力特性に優れた高性能、高エネルギー密度の小型軽量二次電池を提供するためになされたものである。
本発明によれば構成要素としてすくなくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池が提供される。
本発明でいうカーボンとは、特に限定しないが、その一例を挙げれば、特開昭58-35,881号、特開昭59-173,979号、特開昭59-207,568号公報等に記載の活性炭等の高表面積炭素材料、又は、特開昭58-209,864号公報等に記載のフェノール系樹脂等の焼成炭化物、又、特開昭61-111,907号公報に記載の縮合多環炭化水素、複素環多環系化合物の炭化により得られるカーボンウィスカー、更には本発明者らによる特願昭61-103,785号に記載の気相成長法炭素繊維、ピッチ系炭化物等(但し、BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)が挙げられる。
前述の如くかかるカーボンを負極として用いる場合、用いる正極の選択が極めて重要であり、本発明者らはLiCoO2と、カーボンとの組合せにより極めて優れた電池性能が得られることを見出した。
本発明で用いるLiCoO2は、炭酸リチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物と、コバルトの金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩或いは硝酸塩との焼成反応により製造される。
本発明による正、負極の組合せの新規な二次電池は、第1の特徴として、起電力が3.9V〜4.2Vと非常に高いことである。
従って前述の如くカーボン負極はその放電に伴い1V前後の電位変化を示すが、かかる本発明の二次電池においては、負極側で1V近い電圧降下があっても、まだ十分に実用的な範囲の電圧を維持することができる。
第2の特徴として、カーボン、LiCoO2は、いずれも極めて安定な化合物であり、電池組立が容易にでき工業的に大きな利点となる。
第3の特徴として、充電、放電反応に必要なLi源として、既にLiCoO2に含有されており、他の正極材料、例えばTiS2、V6O13等を用いる場合の如くLi源として金属リチウム等を電池組立時に用いる必要がない。これは工業的に極めて大きな利点である。
本発明の非水系二次電池を組立てる場合の基本構成要素として、前記本発明の活物質を用いた電極、更にはセパレーター、非水電解液が挙げられる。セパレーターとしては特に限定されないが、織布、不織布、ガラス織布、合成樹脂微多孔膜等が挙げられるが、前述の如く、薄膜、大面積電極を用いる場合には、例えば特開昭58-59072号に開示される合成樹脂微多孔膜、特にポリオレフィン系微多孔膜が、厚み、強度、膜抵抗の面で好ましい。
非水電解液の電解質としては特に限定されないが、一例を示せば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,CF3SO3Li,LiPF6,LiI,LiAl

媒としては、例えばエーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物、塩素化炭化水素類、エステル類、カーボネート類、ニトロ化合物、リン酸エステル系化合物、スルホラン系化合物等を用いることができるが、これらのうちでもエーテル類、ケトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、カーボネート類、スルホラン系化合物が好ましい。更に好ましくは環状カーボネート類である。
これらの代表例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、モノグライム、アセトニトリル、プロピオニトリル、4-メチル-2-ペンタノン、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、1,2-ジクロロエタン、γ-ブチロラクトン、ジメトキシエタン、メチルフォルメイト、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルチオホルムアミド、スルホラン、3-メチル-スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルおよびこれらの混合溶媒等をあげることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
更に要すれば、集電体、端子、絶縁板等の部品を用いて電池が構成される。又、電池の構造としては、特に限定されるものではないが、正極、負極、更に要すればセパレーターを単層又は複層としたペーパー型電池、積層型電池、又は正極、負極、更に要すればセパレーターをロール状に巻いた円筒状電池等の形態が一例として挙げられる。
〔発明の効果〕
本発明の電池は小型軽量であり、特にサイクル特性、自己放電特性に優れ、小型電子機器用、電気自動車用、電力貯蔵用等の電源として極めて有用である。
〔参考例〕
以下、参考例、比較例により本発明を更に詳しく説明する。
参考例1
LiCO3 3.3モル、Co3O42.0モルを混合した後、空気中で870℃で8時間焼成し、LiCoO2を得た。このLiCoO2の粉末100重量部、及び20重量部のグラファイト粉末をポリフッ化ビニリデンのジメチルホルムアミド溶液(2重量%濃度)100重量部に分散せしめた後1cm×5cm角のアルミ箔(15μ)に塗布し、乾燥時125μの正極を得た。
一方ニードルコークス(興亜石油社製KOA-SJ-Coke)の平均粒径10μの粉末100重量部をポリアクリロニトリルのジメチルホルムアミド溶液(4重量%濃度)100重量部に分散せしめた後、1cm×5cm角の銅箔(10μ)に塗布し、乾燥時75μの負極を得た。
電解液として1.0M過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート溶液を、又、セパレーターとして35μのポリエチレン微多孔膜を用い、第1図に示す電池を組立てた。
5mAの定電流で充電したところ、開放端子電圧3.95Vを示した。その後5mAの定電流で1.5Vまで放電した。この後5mAの定電流で1時間充電し、5mA定電流で1.5Vまでの放電サイクルを繰り返した。
この時の電池性能を第1表に示す。
比較例1
V6O13の組成を有するバナジウム酸化物の粉末100重量部と粉末グラファイト20重量部をポリフッ化ビニリデンのジメチルホルムアミド溶液(2.0重量%濃度)100重量部に分散せしめた後1cm×5cm角のアルミ箔(15μ)に塗布し、乾燥時125μの正極を得た。
参考例1で作成したものと全く同一の負極を用い、上記正極に圧延したリチウム金属箔を貼り合わせた正極を用い第1図に示す電池を作成した。
参考例1と同じ方法で電池評価をしたところ、開放端子電圧3.20Vを示した。
この電池の性能を第1表に示す。

【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の二次電池の構成例の断面図である。第1図において、1は正極、2は負極、3,3′は集電俸、4,4′はSUSネット、5,5′は外部電極端子、6は電池ケース、7はセパレーター、8は電解液又は固体電解質である。
 
訂正の要旨 a.特許請求の範囲の
「1.構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2及び/又はLiNiO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「1.構成要素として少なくとも正極、負極、セパレーター、非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3))の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池。」
に訂正する。
明りょうでない記載の釈明を目的として、b〜jの訂正をする。
b.明細書第3頁15〜18行(特許公報第3欄22〜29行)の
「非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2及び/又はLiNiO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池が提供される。」を、
「非水電解液からなり、3.9V以上の起電力を有する二次電池であって、正極として、LiCoO2を用い、負極としてカーボン(BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)を用いることを特徴とする二次電池が提供される。」
に訂正する。
c.明細書第4頁8〜9行(特許公報第3欄38〜43行)の
「等(但し、BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料を除く。)が挙げられる。」を、
「等(但し、BET法比表面積A(m2/g)が0.1<A<100の範囲で、かつX線回折における結晶厚みLc(Å)と真密度ρ(g/cm3)の値が条件1.80<ρ<2.18、15<Lcかつ120ρ-227<Lc<120ρ-189を満たす範囲にある炭素質材料及び置換もしくは非置換アセチレン重合体を炭素化して得られるものであって、かつ、水素/炭素の原子比が0.15未満であり、また、X線広角回折から求めた(002)面の面間隔d002が3.37Å以上であり、c軸方向の結晶子の大きさが8Å以上の擬黒鉛構造を有する炭素質材料を除く。)が挙げられる。」
に訂正する。
d.明細書第4頁12行(特許公報第3欄45〜46行)の
「LiCoO2及び/又はLiNiO2」を、「LiCoO2」に訂正する。
e.明細書第4頁15〜19行(特許公報第3欄48行〜第4欄1行)の
「本発明で用いるLiCoO2、LiNiO2は、炭酸リチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物と、コバルト及び/又はニッケルの金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩或いは硝酸塩との焼成反応により製造される。」を、
「本発明で用いるLiCoO2は、炭酸リチウム、酸化リチウム等のリチウム化合物と、コバルトの金属、酸化物、水酸化物、炭酸塩或いは硝酸塩との焼成反応により製造される。」
に訂正する。
f.明細書第5頁8行及び12行(特許公報第4欄9行及び13行)の
「LiCoO2、LiNiO2」を、「LiCoO2」に訂正する。
g.明細書第8頁8行及び9行(特許公報第5欄12行及び13行)の
「実施例」を、「参考例」に訂正する。
h.明細書第8頁11行、第10頁10行及び14行(特許公報第5欄15行、第6欄14行及び17行)の
「実施例1」を、「参考例1」に訂正する。
i.明細書第9頁16行〜第10頁2行(特許公報第6欄2〜7行)の
「参考例
実施例1においてCo3O4 2.0モルの代りに、NiO6モルを用い、酸素中にて900℃で48時間焼成し、LiNiO2を得た。
このLiNiO2を用い実施例1と同じ操作により電池を組立てたところ開放端子電圧3.83Vを示した。」を削除する。
j.明細書第11頁(特許公報第6欄20〜26行)の第1表中の
「実施例1」を、「参考例1」に訂正する。
異議決定日 2000-12-28 
出願番号 特願昭61-265840
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01M)
P 1 651・ 532- YA (H01M)
P 1 651・ 113- YA (H01M)
P 1 651・ 161- YA (H01M)
P 1 651・ 531- YA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉水 純子  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 山岸 勝喜
影山 秀一
登録日 1997-07-04 
登録番号 特許第2668678号(P2668678)
権利者 旭化成工業株式会社
発明の名称 二次電池  
代理人 坂口 智康  
代理人 米澤 明  
代理人 長谷 照一  
代理人 内田 亘彦  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 武井 英夫  
代理人 白井 博樹  
代理人 青木 健二  
代理人 清水 猛  
代理人 鈴木 隆盛  
代理人 西 義之  
代理人 伊藤 穣  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 鳴井 義夫  
代理人 来山 幹雄  
代理人 伊藤 穣  
代理人 大庭 咲夫  
代理人 武井 英夫  
代理人 菅井 英雄  
代理人 鳴井 義央  
代理人 折寄 武士  
代理人 韮澤 弘  
代理人 清水 猛  
代理人 高橋 敬四郎  
代理人 岩橋 文雄  

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