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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 発明同一  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1043123
異議申立番号 異議1999-74625  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-10 
確定日 2001-01-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2904301号「エチレンポリマーの製造方法、それに用いる触媒および該触媒の構成成分である新規のメタロセン」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2904301号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第2904301号は、平成2年(1990年)5月18日(優先権1989.5.20 ドイツ)の特許出願に係り、平成11年3月26日にその特許の設定登録がなされた。
そのジェイエスアール株式会社および金子しのより特許異議の申立がなされ、当審より平成12年4月14日付けの取消理由および平成12年12月4日付けの取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年12月7日付けで訂正請求がなされた。
〔2〕訂正の適否についての判断
1.訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲(請求項1、2,3および4)を次の通りに訂正する。
「【請求項1】
エチレンまたはエチレンと炭素原子数3〜20の1-オレフィンとを溶液状態で、懸濁状態でまたは気相において-60〜200℃の温度、0.5〜200barの圧力のもとで、遷移金属成分としてのメタロセンと式(ll)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フエニル基またはベンジル基を意味しそしてnは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(lll)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノオキサンとより成る触媒の存在下に重合または共重合することによつてエチレンーポリマーを製造するに当たって、重合を、メタロセンが式(l)

[式中、式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデ二ル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数 7~40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表される化合物(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)である触媒の存在下に実施することを特徴とする、上記エチレン‐ポリマ-の製造方法。
【請求項2】
用いるメタロセンがrac‐ジメチルシリルビス[1‐(3‐メチルインデニル)]‐ジルコニウム‐ジクロライドまたはジメチルシリルビス[1-(3‐トリメチルシリル)シクロペンタジエニル]‐ジルコニウム‐ジクロライドである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(1)

[式中、M1はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブまたはタンタルであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数 6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロベンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

=BR6、=AlR6、-Ge‐、-Sn‐、-0-、-S‐、=S0、=S02、=NR6、=C0 、=PR6または=P(0)R6を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表されるメタロセン、ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH30であり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く
【請求項4】
式(1)

[式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数 6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数 7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロベンタジエニルーまたはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数 7~40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表される化合物(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)と式(ll)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フエニル基またはベンジル基を意味しそしてnは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(lll)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノキサンとよりなるエチレンポリマー製造用触媒。」
(2)訂正事項b
明細書第7頁第17〜18行に「ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、」を挿入する。
(3)訂正事項c
明細書第8頁第11〜13行に「(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH30であり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)」を挿入する。
(4)訂正事項d
明細書第9頁第6〜7行に「であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではない。」と訂正を加える。
(5)訂正事項e
明細書第10頁第4〜6行を「rac‐ジメチルシリルビス‐(1‐メチルインデニル)‐ジルコニウム‐ジクロライドまたはジメチルシリルビス‐[1‐(3‐トリメチルシリル)‐シクロペンタジエニル]‐ジルコニウム‐ジクロライド」と補正する。
2.訂正の適否の判断
訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
そして、(1)訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、(2)訂正事項b〜(5)訂正事項eは、特許請求の範囲の減縮に伴う詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3.独立特許要件の判断
訂正後の本件請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、下記「〔3〕特許異議の申立てについての判断」の項で詳細に検討するとおりの理由で特許事由に違反しているとはいえない。
したがって、訂正明細書の特許請求の範囲に記載されている本件発明は特許出願の際に独立して特許を受けることができる発明であるといえる。
4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項に規定に適合するので、当該訂正を適法なものとして認める。
〔3〕特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
異議申立の対象となった請求項1〜4に係る発明は、その後上記訂正請求がなされ、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される、上記〔2〕1.(1)訂正事項a項の記載に示すとおりの発明となっている。
2.特許異議申立理由の概要
(2.1)特許異議申立人ジェイエスアール株式会社は、証拠として甲第1号証(「J.Am.Chem.Soc.、1988,Vol.110(1988年8月)p.6255〜6256);刊行物3)および甲第2号証(特開昭64-51408号;刊行物4)を引用し、
(i)本件請求項3に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定の違反して特許されたものであること、
および
(ii)本件請求項3に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することが出来たものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、
本件特許を取り消すべき旨主張する。
(2.2)特許異議申立人金子しのは、証拠として甲第1号証(特願昭63-330580号(特開平2-173104号公報参照;刊行物1)および甲第2号証(特開昭63-66206号公報;刊行物2)を引用し、
(i)本件請求項1〜4に係る発明は、甲第1号証の先願明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定の違反して特許されたものであること、
(ii)本件請求項1〜4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定の違反して特許されたものであること、
および
(iii)本件請求項1〜4に係る発明は、甲第2号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定の違反して特許されたものであるから、
本件特許を取り消すべき旨主張する。
3.甲号各証の記載事項
(3.1)特許異議申立人ジェイエスアール株式会社の提出した甲号各証に次のことが記載されている。
(a)甲第1号証(「J.Am.Chem.Soc.、1988,Vol.110(1988年8月)p.6255〜6256;刊行物3)には、
「イソプロピル(シクロペンタジエニルー1-フルオレニル)ハフニウム(lV)ジクロリド(i‐PrCp‐1‐FluHfCl2)」(第6255頁右欄本文15〜17行に)。
(b)甲第2号証(特開昭64-51408号公報;刊行物4)には、次のことが記載されている。
「高アイソタクチックのポリー1一オレフインを製造する為には、立体剛性の対掌性メタロセンを使用する。かかるメタロセンは式(1)
・・・・
[式中、Me1は元素の周期律表の第IVbまたは第Vb族の金属、要するにチタン、ジルコニウム、ハフニウム・・・であり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、・・塩素原子を意味し、
R3は炭素原子数1〜4、殊に1〜3の直鎖状炭化水素基または・・・ これら炭化水素基が少なくとも一つのへテロ原子を鎖中のブリッジ単位として含有さていてもよく、・・
単一の構成員のブリッジ単位の例には、-CR62-、・・-SiR62-、・・があり、その際R6は水素原子、炭素原子数6〜10、殊に6〜8のアリール基、炭素原子数1〜10、殊に1〜4のアルキル基、・・・である。・・・
R4およびR5互いに同じでも異なっていてもよく、互いに同じであるのが有利である。これらは、中心原子と一緒になってサンドイッチ構造を形成し得る単環式-または複環式炭化水素残基である。この種の残基の例にはインデニル-、テトラヒドロインデニルまたはシクロペンタジエニル基およびへテロ芳香族配位子がある。特に有利なメタロセンはビスインデニルージルコニウムジクロライドである。」(第3頁左上欄第2行〜同頁右下欄第1行)。
(3.2)特許異議申立人金子しのの提出した甲号各証には、次のことが記載されている。
(c)甲第1号証(特願昭63-330580号(特開平2-173104号公報参照;刊行物1)には、
「(1)(A)少なくとも2個の相異なるシクロアルカジエニル基またはその置換体が炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とする周期律表IVB族の遷移金属化合物
(B)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(C)微粒子状担体
から形成されるオレフイン重合用触媒成分。
(2)(A)少なくとも・・・オレフインの重合方法。」(特許請求の範囲)、
「本発明の方法に・・・オレフインの例として、エチレンおよび炭素数が3〜20のα‐オレフィン、・・・共重合することもできる。」(13頁右上欄18行〜同頁左下欄6行)、
「オレフィンの重合反応は、気相重合法で実施することもできるし、液相重合法で実施することもできる。」(13頁左下欄7〜9行)、
「本発明の方法において、通常重合反応の際の温度は、-50〜150℃、好ましくは-20〜120℃の範囲である。
また、重合は常圧下、加圧下および減圧下のいずれでも行なうことができるが、加圧下で行なうのが好ましい。通常は、常圧ないし50kg/cm2、好ましくは2〜30kg/cm2程度の加圧下で行なう。」(13頁右下欄4〜10行)、
「触媒成分(B)として使用される有機アルミニウムオキシ化合物としては、一般式(ll)および(lll)・・・・など媒体中でトリアルキルアルミニウムに直接水を作用させる方法。」(第8頁右下欄最終行〜第9頁右上欄7行)。
(d)甲第2号証(特開昭63-66206号公報;刊行物2)には、
「(A)インデニル基、置換インデニル基およびその部分水素化物からなる群から選ばれた少なくとも2個の基が低級アルキレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とする周期律表IVB族の遷移金属化合物を無機担体上に担持した固体触媒成分、および
(B)アルミノオキサン
から形成される触媒の存在下に、オレフインを重合または共重合させることを特徴とするオレフインの重合方法」(特許請求の範囲)、
「本発明において使用する・・オレフィンの例として、エチレンおよび炭素数が3ないし20のα‐オレフイン、・・有効である。」(5頁左上欄8〜17行)、
「α-オレフインの重合反応は気相重合法で実施することもできるし、液相重合法で実施することもできる。」(5頁右上欄4〜6行)、
「本発明の方法において、懸濁重合法のような液相重合法では、通常重合反応の際の温度は-80℃ないし100℃、好ましくは-60℃ないし80℃の範囲である。
また、重合は常圧下、加圧下および減圧下のいずれでも行うことができるが、加圧下で行うのが好ましい。通常は、常圧ないし50kg/cm2、好ましくは2ないし30kg/cm2程度の加圧下で行う。」(5頁左下欄1〜8行)。
(e)甲第3号証(前記(a)甲第1号証;刊行物3と同一のことが記載されている。
4.対比および判断
(4.1) 理由1〈特許法第29条の2違反について〉
上記刊行物1として引用した、本件特許の出願前の出願であって、その出願後に出願公開された特願昭63-330580号(特開平2-173104号公報参照)の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)には、(A)特定の多座配位性化合物を配位子とする遷移金属化合物、および(B)有機アルミニウムオキシ化合物を重合用触媒とする、オレフインの重合方法が記載されている。
そこで、本件請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という。)と先願明細書記載の発明とを順次対比すると、本件発明1は、溶液状態で、懸濁状態でまたは気相において-60〜200℃の温度、0.5〜200barの圧力のもとでエチレン-ポリマ-の製造方法に関するものであるのに対して、先願明細書記載の発明も「エチレン」を含むオレフインの重合方法であって、その重合温度、重合圧などにおいての実質的な違いがないので、この点で両者は一致する。
しかしながら、その重合に用いる本件発明1の式(l)のメタロセン触媒成分が「ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、」ということ、および「ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く」という限定された触媒の存在下に実施するものであって、他の触媒成分である式(ll)、式(lll)のアルミノキサンは、先願明細書に、特に先行技術として開示されている慣用の触媒成分と同じものであっても、メタロセン系触媒成分の違いに起因して、特に先願明細書の(A)特定の多座配位性化合物を配位子とする遷移金属化合物、および(B)有機アルミニウムオキシ化合物という二成分系触媒と相違するものである。
特に、本件発明1は、本質的に上記二成分系触媒により構成されており、これに対して、先願明細書記載の発明は、それにさらに(D)微粒子状坦体を併用するものであるという点も考慮すれば、やはり両者は触媒系成分においても相違していると解するべきである。
してみると、本件発明1のエチレン-ポリマーの製造方法は先願明細書記載のオレフインの重合方法と同一ではない。
同様に、本件発明2〜3は、本質的に本件発明1の式(l)のメタロセン触媒成分の化合物や実施態様を具体的に明示した程度のことであるから、本件発明1の検討において指摘したと同じ理由で先願明細書に記載の発明と同一ではない。
また、特に本件発明4は、本質的に本件発明1のエチレンポリマー製造用触媒を具体的に明示した程度のことであるから、本件発明1の検討で指摘したと同じ理由で、先願明細書に記載の発明と同一ではない。
したがって、本件発明1〜4の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではない。
(4.2)理由2〈特許法第29条第1項第3号違反について〉
本件発明1〜4と刊行物2〜3記載の発明とを順次対比するに、まず刊行物2には、〔A〕特定の固体触媒成分、および〔B〕アルミノオキサン、を用いたオレフインの重合方法が記載されている。
本件発明1は、溶液状態で、懸濁状態でまたは気相において-60〜200℃の温度、0.5〜200barの圧力のもとで、エチレン-ポリマーの製造方法であるのに対して、刊行物2記載の発明もエチレンを包含するオレフインの重合方法であり、この点で軌を一にする。
ところで、本件発明1の式(l)のメタロセンは、「ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く」という限定されており、刊行物2記載のインデニル基、置換インデニル基エチレンを介して結合したジルコセンというメタロセンとは、触媒成分の化合物が一致しない。
ということは、本件発明1のアルミノキサン式(ll)、式(lll)は、刊行物2記載の固体触媒成分およびアルミノオキサンとそれぞれ一致していても、二成分系触媒として同一のものではないから、結局、本件発明1は、刊行物2に記載された発明といえない。
同様に、本件発明1と刊行物3記載の発明とを対比しても、本件各発明の式(l)のメタロセンが、「ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、」という限定された触媒であり、刊行物3に記載された触媒化合物とは一致しない。
次に、本件請求項2〜4に係る発明は、請求項1に係る発明の製造方法に用いる触媒成分の具体的な態様を明示したものであるから、上記請求項1に係る発明の検討において指摘したと同じ理由で刊行物2または刊行物3に記載された発明ではない。
特に、本件発明3と刊行物3〜4記載の発明とを詳細に対比すると、本件発明3の式(l)のメタロセンが、「ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、」という限定された触媒であり、刊行物3に記載された触媒化合物とは一致しない。
同様に、本件発明3の式(l)のメタロセンが「ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く」という限定をした触媒であり、刊行物4記載の触媒化合物とは一致しない。
以上のとおり、本件発明1〜4は、刊行物2〜4のいずれにも記載された発明ではない。
したがって、本件発明1〜4の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではない。
(4.3)理由3〈特許法第29条第2項違反について〉
本件各請求項に係る発明は、特に橋掛け構造を有する式(l)のメタロセン触媒成分を用いることにより、エチレン系の重合に技術的有意性を見いだしたものである。
本件発明1〜4と刊行物2〜4記載の発明とを対比するに、両者はメタロセン触媒成分の化合物に違いがあることは既に前記理由2で詳細に指摘したとおりである。
そして、刊行物2〜4には、本件発明1〜4で限定する、特に式(l)のR3およびR4を具体的に如何なる化合物にするかということ、或いはメタロセン触媒成分の橋掛け構造として特に本件各発明で限定するようなものを用いるという技術事項を示唆するものではない。
特に、刊行物2〜4において、本件発明の式(l)のメタロセン触媒成分を構成する、具体的にM1とR1からR5の関係をどのようなものに設定設定した場合に、その触媒として如何なる挙動を示すかという技術事項で検討あるいは吟味されていないという事情からすると、その刊行物2〜4において、既にメタロセン化合物が触媒成分として有効であるという公知の事例に基づいて、本件各発明で限定する特定の置換基を有する式(l)のメタロセン触媒成分を想到することが当業者が容易に為し得ることではない。
また、特に架橋構造のメタロセン触媒成分の有用性は各刊行物で知られているが、本件各発明は特定のものを選定したことにより、相応の有意な作用効果を奏している。
したがって、本件発明1〜4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。
5.むすび
したがって、特許異議申立人の主張および証拠によっては、訂正後の本件各請求項に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件各請求項に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エチレンポリマーの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
1)エチレンまたはエチレンと炭素原子数3〜20の1-オレフィンとを溶液状態で、懸濁状態でまたは気相において-60〜200℃の温度、0.5〜200barの圧力ののもとで、遷移金属成分としてのメタロセンと式(II)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を意味しそして
nは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(III)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノキサンとより成る触媒の存在下に重合または共重合することによってエチレン-ポリマーを製造するに当たって、
重合を、メタロセンが式(I)

[式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表される化合物(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)である触媒の存在下に実施することを特徴とする、上記エチレン-ポリマーの製造方法。
2) 用いるメタロセンがrac-ジメチルシリルビス[1-(3-メチルインデニル)]-ジルコニウム-ジクロライドまたはジメチルシリルビス[1-(3-トリメチルシリル)シクロペンタジエニル]-ジルコニウム-ジクロライドである請求項1に記載の方法。
3)式(I)

[式中、M1はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブまたはタンタルであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

=BR6、=AlR6、-Ge-、-Sn-、-0-、-S-、=S0、=S02、=NR6、=C0、=PR6または=P(0)R6を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表されるメタロセン、ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く。
4)式(I)

[式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜l0のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表されるメタロセン(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)と式(II)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を意味しそして
nは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(III)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノキサンとよりなるエチレンポリマー製造用触媒。
【発明の詳細な説明】
[発明の技術分野]
本発明は、メタロセン/アルミノキサン-触媒によっていろいろな分子量範囲のポリエチレンおよびエチレン-1-オレフィン-コポリマーを製造する方法、それに用いる触媒およびその構成成分である新規のメタロセンに関する。
[従来技術及び発明が解決しようとする課題]
メタロセン/アルミノキサン-触媒によって懸濁剤としてのトルエン中でポリエチレンを製造する方法は既に開示されている(ヨーロッパ特許第69,951号明細書参照]。このポリマーについて達成される分子量は比較的に小さい。このポリマーの形態についてのデータは記載されていない。
更に、懸濁剤として高沸点炭化水素を用いる匹敵する方法も開示されている(ヨーロッパ特許第170,059号明細書参照)。しかしながら触媒活性は穏やかであり且つこのポリマーについて達成される嵩密度は0.15〜0.18g/cm3である。
また、メタロセン/アルミノキサン-触媒によって気相中で重合することによってポリエチレンおよびエチレン-1-オレフィン-コポリマーを製造することも開示されている(ヨーロッパ特許第206,794号明細書、同第285,443号明細書および同第294,942号明細書参照)。この場合にも、ポリマーの中位の高分子量しかおよび大抵の場合に触媒の貧弱な活性しか達成されない。
メタロセンとしての、シクロペンタジエニル基が置換されているかまたは置換されていない橋掛けのないビシクロペンタジエニル-ジルコニウム錯塩を用いることおよびこのメタロセンを重合においてそのまま用いるかまたは適当な予備反応段階で不活性の支持体に結合させられている点が、上記の全ての方法において共通している。
本発明者は、メタロセン成分が橋掛けしたビシクロペンタジエニル錯塩であるメタロセン/アルミノキサン-触媒によって懸濁-または気相法によってポリエチレンおよびエチレン-1-オレフィン-コポリマーを製造することが重要な長所をもたらすことを見出した。
[発明の構成]
本発明は、エチレンまたはエチレンと炭素原子数3〜20の1-オレフィンとを溶液状態で、懸濁状態でまたは気相において-60〜200℃の温度、0.5〜200barの圧力のもとで、遷移金属成分としてのメタロセンと式(II)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を意味しそして
nは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(III)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノキサンとより成る触媒の存在下に重合または共重合することによってエチレン-ポリマーを製造するに当たって、重合をメタロセンが式(I)

[式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜l0のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表される化合物(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)である触媒の存在下に実施することを特徴とする、上記エチレン-ポリマーの製造方法に関する。
本発明の方法で用いる触媒は、アルミノキサンと式(I)

で表される新規のメタロセンとで構成されている。本発明は新規のメタロセンとアルミノキサンとよりなる触媒にも関する。
本発明の新規のメタロセンは上述の式(I)で表され、ただし式(I)中、M1はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブまたはタンタルより成る群がら選択される金属、特にジルコニウムである。
式(1)中、R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜10、殊に1〜3のアルキル基、炭素原子数1〜10、殊に1〜3のアルコキシ基、炭素原子数6〜10、殊に6〜8のアリール基、炭素原子数6〜10、殊に6〜8のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10、殊に2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40、殊に7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40、殊に7〜12のアルキルアリール基、炭素原子数8〜40、殊に8〜12のアリールアルケニル基またはハロゲン原子、殊に塩素原子を意味する。
R3およびR4は互いに同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではない。
R3およびR4は好ましくはシクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基またはフルオレニル基であり、これらの基はその基礎構造に追加的に置換基を有していてもよい。
R5は

=BR6、=AlR6、-Ge-、-Sn-、-0-、-S-、=S0、=S02、=NR6、=C0、=PR6または=P(0)R6を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、炭素原子数1〜10、殊に1〜3のアルキル基、特にメチル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、特にCF3基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、特にペンタフルオロフェニル基、炭素原子数6〜10、殊に6〜8のアリール基、炭素原子数1〜10、殊に1〜4のアルコキシ基、特にメトキシ基、炭素原子数2〜10、殊に2〜4のアルケニル基、炭素原子数7〜40、殊に7〜10のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40、殊に8〜12のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40、殊に7〜12のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6およびR7またはR6およびR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成する。
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫、殊に珪素またはゲルマニウムである。
Pは1、2、3、4または5の数である。
特に有利なメタロセンは以下のものである:
rac-ジメチルシリルビス-(1-メチルインデニル)-ジルコニウム-ジクロライドまたはジメチルシリルビス-[1-(3-トリメチルシリル)-シクロペンタジエニル]-ジルコニウム-ジクロライド。
上記のメタロセンは以下の一般的反応式によって製造できる:

(X=Cl、Br、1、0-トシル基)
または

共触媒は、式(II)

で表される線状の種類および/または式(III)

で表される環状の種類のアルミノキサンである。
式IIおよびIII中、基R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、殊にメチル基、エチル基、イソブチル基、ブチル基またはネオペンチル基またはフェニル基またはベンジル基である。メチル基が特に有利である。nは2〜50、殊に5〜40の整数である。しかしながらアルミノキサンの正確な構造は知られていない。
アルミノサンは種々の方法で製造することができる。
可能な方法の一つは、トリアルキルアルミニウムの薄い溶液に水を注意深く添加するものであり、この場合トリアルキルアルミニウム、殊にトリメチルアルミニウムの溶液および水を最初に導入した比較的多量の不活性溶剤中に少量ず加えそして各添加の間、ガスの発生が終わるのを待つ。
他の方法では、細かく粉砕した硫酸銅五水和物をトルエン中でスラリー状態とし、ガラス製フラスコ中で不活性ガス雰囲気にて約-20℃で、4グラム原子のAl原子当たり約1molのCuSO4・5H2Oをもたらす程の量のアルミニウム-トリアルキルを添加する。アルカンの脱離下にゆっくり加水分解した後に、反応混合物を室温で、場合によっては、温度が約30℃を超えないように冷却しながら、24〜48時間放置する。次いでトルエンに溶解したアルミノキサンから硫酸銅を濾去し、溶液を減圧下に濃縮する。この製造方法では低分子量のアルミノキサンがトリアルキルアルミニウムの放出下により大きいオリゴマーに縮合すると考えられる。
更にアルミノキサンは、不活性の脂肪族-または芳香族溶剤、殊にヘプタンまたはトルエンに溶解したトリアルキルアルミニウム、殊にトリメチルアルミニウムを結晶水含有のアルミニウム塩、殊に硫酸アルミニウムと-20〜100℃の温度で反応させた場合にも得られる。この反応では溶剤と用いるアルキルアルミニウムとの容量比が1:1〜50:1、殊に5:1であり、アルカンの脱離を基に監視することができる反応時間は1〜200時間、殊に10〜40時間である。
結晶水含有のアルミニウム塩の内、結晶水含有量の多い水和アルミニウム塩が特に有利である。中でも、硫酸アルミニウム水和物、特に1モルのAl2(SO4)3当たりに16あるいは18モルのH2Oを持つ結晶水高含有量のAl2(SO4)3・16H2OおよびAl2(SO4)3・18H2Oが特に有利である。
アルミノキサンを製造する別の変法の一つは、トリアルキルアルミニウム、殊にトリメチルアルミニウムを重合用反応器中に最初に入れられた懸濁剤中に溶解し、次いでアルミニウム化合物を水と反応させるものである。
アルミノキサンを製造する為の上に説明した方法の他に、使用可能な別の方法もある。
製造方法に無関係に、あらゆるアルミノキサン溶液は遊離状態でまたは付加物の状態で存在する未反応トリアルキル-アルミニウムを色々な量で含有している点で共通している。この未反応成分は、用いるメタロセン化合物によって変わる、触媒能力への未だ正確に説明されていない影響を示す。
メタロセンを重合反応において使用する以前に式(II)および/または式(III)のアルミノキサンを用いて予備活性することできる。この方法は重合活性を著しく向上させそして粒子形態を改善する。
遷移金属化合物の予備活性化は溶液状態で行う。この予備活性化において、メタロセンをアルミノキサンの不活性炭化水素溶液に溶解するのが特に有利である。適する不活性炭化水素には脂肪族-または芳香族炭化水素がある。特にトルエンを用いるのが有利である。
溶液中のアルミノキサンの濃度は約1重量%乃至飽和限界までの範囲、殊に5〜30重量%の範囲内である(それぞれの重量%は溶液全体を基準とする)。メタロセンは同じ濃度で使用することができる。しかしながら1molのアルミノキサン当たり10-4〜lmolの量で使用するのが好ましい。予備活性化時間は5分〜60時間、殊に5〜60分である。-78〜100℃、殊に0〜70℃の温度で実施する。
著しく更に長い時間にわたって予備活性化することも可能であるが、一般にはそれが活性の向上効果も活性の低下効果ももたらさない。しかし保存の目的のためには充分に意義があり得る。
重合は公知の様に、溶液状態、懸濁状態または気相中で連続的にまたは不連続的に一段階または多段階で-60〜200℃、好ましくは-30〜120℃、特に50〜90℃で実施する。
重合系の全圧は0.5〜200barである。重合は特に工業的に興味の持たれる5〜60barの圧力範囲内で重合するのが有利である。ここで用いるメタロセン化合物を、ldm3の溶剤あるいは1dm3の反応器容積当たり遷移金属に関して10-3〜10-8モル、殊に10-4〜10-7モルの濃度で使用する。アルミノキサンは、ldm3の溶剤あるいはldm3の反応器容積当たり10-5〜10-1モル、殊に10-5〜10-2モルの濃度で使用する。しかしながら原則として更に高濃度も可能である。
重合を懸濁重合または溶液重合として実施する場合には、チグラー低圧法で慣用される不活性の溶剤、例えば脂肪族-または脂環式炭化水素を用いる。脂肪族炭化水素、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンまたは石油または水素化ジーゼル油留分が有利である。
エチレンの単独重合の他に、本発明の触媒系はエチレンと炭素原子数3〜20の1-オレフィンとの共重合に使用される。かゝる1-オレフィンの例には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンがある。
重合体の分子量は公知の方法で、例えば水素を用いて調整することができる。
重合は、本発明で使用する触媒系が時間の経過と共に重合活性を僅かしか下げないことが判っているので、任意の期間が可能である。
錯塩の構造次第で、これらの錯塩を用いることが高い活性をもって広い分子量範囲において狭い分子量分布(多分散度)を持つポリエチレンおよびエチレン-1-オレフィン-コポリマー、特に射出成形および押出成形によって加工するのに適しそして溶融ポリマー状態で高い延伸性を持ち且つ非常に色々な粒子形態、例えば高-および低嵩密度、極めて小さいおよび極めて大きい平均粒子径および色々な粒子形状の生成物を製造することを可能とする高分子量の生成物をもたらす。達成できる色々な粒子形態は半融法でかゝるポリエチレン粉末を用いる色々な可能性をもたらしている。
[実施例]
以下の実施例にて本発明を更に詳細に説明する。各略字は以下の意味を有している:
VN=粘度数(cm3/g)、
Mw=重量平均分子量(g/mol)、
Mw/Mn=分子量分布
分子量はゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)よって測定した。
d50=平均粒子径(μm)
各実施例の圧力データは、bar(過剰圧)である。
共重合体の密度はDIN 53479の方法Aに従って測定した。
以下の作業全てが溶剤を用いて保護ガスのもとで実施した。
例1(実施例)
ジメチルシリルビス(1-インデニル)の製造:
ヘキサンにn-ブチル-リチウムを溶解した2.5モル濃度溶液80cm3(0.20mol)を、氷冷下に、酸化アルミニウムを通して濾過した30g(0.23mol)のインデン(工業用品質、〜91%)の溶液に添加する。この混合物を室温で更に15分撹拌し、オレンジ色のこの溶液を中空針を通して2時間にわたって、30cm3のジエチルエーテルに13.Og(0.10mol)のジメチルジクロロシラン(99%)を溶解した溶液に添加する。このオレンジ色の懸濁液を夜通し撹拌し、100〜150cm3の水で三回、振盪洗浄する。イエローオレンジ相を硫酸ナトリウムによって二回乾燥処理し、反応蒸発器中で蒸発処理する。残留するオレンジ色の油を油圧ポンプ式真空乾燥器中で4〜5時間40℃に維持して過剰のインゲンを除く。その間に白色の沈澱物が生じる。40cm3のメタノールを添加しそして-35℃で結晶化して全部で20.4g(71%)の化合物、ジメチルシリルビス-(1-インデニル)、を白色乃至ベージュ色の粉末(2ジアステレオマー)(融点:79〜81℃)として得る。
例2(参考例)
rac-ジメチルシリルビス(1-インデニル)-ジルコニウム-ジクロライド(メタロセンA)の製造:
ブチル-リチウムの2.5モル濃度ヘキサン溶液15.5cm3(38.7mmol)を、40cm3のTHFに5.6g(19.4mmol)のジメイルシリルビス-(1-インデニル)を溶解した溶液に室温でゆっくり添加する。添加終了1時間後に、濃い赤色の溶液を、60cm3のTHFに7.3g(19.4mmol)のZrCl4・2THFを懸濁させた懸濁液に4〜6時間にわたって滴加する。この混合物を2時間撹拌した後に、オレンジ色の沈澱物をガラス製フリットを通して吸引濾過しそしてCH2Cl2で再結晶処理して、1.0g(ll%)のメタロセンAをオレンジ色の結晶の状態で得る。このものは200℃から徐々に分解する。
補正元素分析。E1質量スペクトルはM+=448を示す。1H-NMRスペクトル(CDCl3): 7.04〜7.60(m、8、arom.H)、6.90(dd、2、β-1ndH)、6.08(d、2、α-1nd H)、1.12(s、6、SiCH3)。
例3(参考例)
rac-ジフェニルシリルビス(1-インデニル)-ジルコニウム-ジクロライド(メタロセンB)の製造:
(C6H5)2SiCl2とインデニル-リチウムとから例1と同様に製造された20g(48.5mmol)の(C6H5)2Si(Ind)2を200cm3のジエチルエーテルに溶解した溶液を0℃で40cm3(100mmol)のブチル-リチウム(2.5モル濃度ヘキサン溶液)と反応させる。この混合物を室温で2時間撹拌した後に、溶剤をストリッピングで除き、残留物を100cm3のヘキサンと一緒に撹拌しそして濾過する。このジリチオ塩を油圧ポンプ式真空乾燥器中で乾燥しそして150cm3のCH2Cl2にll.3g(48.5mmol)のZrCl4を懸濁させた懸濁液に-78℃で添加する。この混合物を夜通し撹拌しそして室温にまで温まるままにする。赤色のこの溶液を濃縮し、沈澱した沈澱物をフリットを通して濾過する。トルエンで抽出処理して2.0g(7%)のメタロセンBをオレンジ色の粉末として得る。
補正元素分析。1H-NMRスペクトル(CDCl3): 6.8〜8.2(m、18、arom.H)、7.03(dd、2、β-1nd H)、6.30(d、2、α-1nd H)。
例4(実施例)
rac-ジメチルシリルビス[1-(3-メチルインデニル)]-ジルコニウム-ジクロライド(メタロセンG)の製造:
(CH3)2SiCl2と3-メチルインデニル-リチウムとから例1と同様に製造された4.89g(15.5mmol)の(CH3)2Si(MeInd)2の溶液を、12.5cm3(30.5mmol)のブチルリチウムおよび5.84g(15.5mmol)のZrCl4・2THFと、実施例2と同様に反応させる。溶剤をストリッピングで除いた後に残留物をトルエンで抽出処理する。濃縮しそして冷却した時にトルエンから析出した沈澱物を、CHCl3で再結晶処理し、燈赤色の結晶の状態で800mg(10%)のメタロセンGを得る。
補正元素分析。1H-NMRスペクトル(CDCl3):7.0〜7.5(m、8、arom.H)、5.71(s、2、α-Ind H)、2.30(s、6、Ind CH3)、1.07(s、6、SiCH3)、
例5(実施例)
ジメチルシリルビス[1-(3-トリメチルシリル)-シクロペンタジエニル}ジルコニウム-ジクロライド(メタロセン K)の製造:
Li2(CH3)2Si(Cp)2]と(CH3)3SiClとから製造された3.9g(11.7mmol)の(CH3)2Si[(CH3)3SiCp]2の溶液を、9.4cm3(23.4mmol)のブチルリチウムおよび4.4g(11.7mmol)のZrCl4・2THFと、例2と同様に反応させる。溶剤をストリッピングで除いた後に残留物をジエチルエーテルで抽出処理する。ジエチルエーテルをストリッピングで除いた後に残る残留物を、CHCl3で再結晶処理し、ベージュ色の結晶として0.8g(14%)の錯塩を得る。
補正元素分析。1H-NMRスペクトル(CDCl3):6.95(dd、2、CpH)、6.12(t、2、CpH)、5.96(t、2、CpH)、0.72(s、6、Si(CH3)2)、0.25(s、9、Si(CH3)3)。NMR-スペクトルは、メタロセンK が異性体混合物の状態であることを示した(43%のrac-異性体、57%のメソ-異性体)。
例6(実施例)
イソプロピル(1-インデニル)-シクロペンタジエニル-ジルコニウム-ジクロライド(メタロセンP)の製造:
19cm3(47.3mmol)のブチル-リチウム(2.5モル濃度ヘキサン溶液)を、100cm3のジエチルエーテルに6.0g(47mmol)のインデン(91%)を溶解した溶液に室温で添加する。1時間後にこの溶液を、100cm3のジエチルエーテルに6,6-ジメチルフルベンを溶解した溶液に-78℃で添加する。この混合物を室温で16時間撹拌した後に、オレンジ色の溶液を400cm3のジエチルエーテルで希釈しそして100cm3の水を添加する。次いで黄燈色の相を水で二回洗浄し、Na2SO4で乾燥しそして蒸発処理する。残留する褐色の油を400gのシリカゲル60にてクロマトグラフ処理する。ヘキサン+7%メチルクロライドを用いて、全部で7.2g(68%)の化合物、イソプロピル-(1-インデニル)-シクロペンタジエニル、を黄色の油として溶離する(二種の異性体)。28cm3(70mmol)のブチルリチウム(2.5モル濃度ヘキサン溶液)を、7,1g(32mmol)のこの化合物を100cm3のジエチルエーテルに溶解した溶液に0℃で添加する。この混合物を室温で2時間撹拌した後に、黄色の沈澱物をガラス製フリットを通して濾過しそしてヘキサン/ジエチルエーテル(1:1)にて洗浄する。沈澱物を油圧ポンプ式真空乾燥機で乾燥した後に、このパールイエローの粉末を、100cm3のメチレンクロライドに7.5g(32mmol)のZrCl4を懸濁させた懸濁液に-78℃で添加する。この混合物をゆっくり室温に加温し、室温で30分撹拌しそしてガラス製フリットを通して濾過し、固体をメチレンクロライドで数回洗浄する。黄色の濾液を、結晶が生じるまで濃縮する。-35℃にて、全部で2.4g(19%)の錯塩のrac-[(CH3)2C(Ind)Cp]ZrCl2が黄燈色の結晶の状態で析出する。
補正元素分析。1H-NMRスペクトル(CDCl3):6.90〜7.75(m、4、arom. H)、6.85(dd、1、β-Ind-H)、6.52(m、2、Cp-H)、6.12(d、1、α-Ind-H)、5.82、5.70(2xq、2xl、Cp-H)、2.20、1.95(2x s、2x3、CH3)。
例7:(実施例)
ジフェニルメチレン-(9-フルオレニル)-シクロペンタジエニル-ジルコニウム-ジクロライド(メタロセン Q)の製造:
n-ブチルリチウムの2.5モル濃度ヘキサン溶液12.3cm3(30.7mmol)を、60cm3のTHFに5.10g(30.7mmol)のフルオレンを溶解した溶液に温でゆっくり添加する。40分後に7.07g(30.7mmol)のジフェニルフルベンをこのオレンジ色の溶液に添加し、この混合物を夜通し撹拌する。この暗赤色の溶液に60cm3の水を添加し、その後にこの溶液は黄色に成り、そしてこの溶液をエーテルを用いて抽出処理する。MgSO4で乾燥したエーテル相を濃縮し、-35℃で結晶化させ、5.1g(42%)の1,1-シクロペンタジエニル-(9-フルオレニル)-ジフェニルメタンをべージ色の粉末として得る。
2,0g(5.0mmol)のこの化合物を20cm3のTHFに溶解し、ブチルリチウムの1.6モル濃度ヘキサン溶液6.4g(10mmol)を0℃で添加する。この混合物を室温で15分撹拌した後に、溶剤をストリッピングで除き、赤色の残留物を油圧ポンプ式真空乾燥機で乾燥しそしてヘキサンで数回洗浄する。その残留物を油圧ポンプ式真空乾燥機で乾燥した後に、この赤色の粉末を-78℃で、1.16g(5.0mmol)のZrCl4の懸濁物に添加する。この混合物をゆっくり加温しそして更に室温で2時間撹拌する。ピンク色の懸濁物をG3フリットを通して濾過する。このピンク色の残留物を20cm3のCH2Cl2で洗浄し、油圧ポンプ式真空乾燥機で乾燥しそして120cm3のトルエンで抽出処理する。溶剤をストリッピングで除去しそして油圧ポンプ式真空乾燥機で乾燥して、ピンク色の結晶粉末の状態で0.55gのジルコニウム錯塩(メタロセンQ)が得られる。
反応混合物の燈赤色の濾液を蒸発処理しそして-35℃で結晶化させる。更に0.34gの錯塩がCH2Cl2から結晶化する。全部で1.0g(36%)が得られる。補正元素分析。質量スペクトルはM+=556を示した。1H-NMRスペクトル(100MHz、Cl3):6.90〜8.25(m、16、Flu-H、Ph-H)、6.40(m、2、Ph-H)、6.37(t、2、Cp-H)、5.80(t、2、Cp-H)。
例8〜18(実施例):
第2表のメタロセンC、D、E、F、H、I、L、M、N、0およびRは例1および2と同様に製造した。例1におけるジメチルクロロシランをここでは、第1表に示した適当な別のジハロゲン化化合物に替えた。五員環の所で置換された錯塩(メタロセンNおよび0)の場合には、五員環の所で相応して置換されたインデンを使用した(例4と同様)。ハフニウム錯塩のメタロセンRの場合には、例2におけるZrCl4をHfCl4に代えた。


例19(実施例)
フェニルメチルメチレン-(9-フルオレニル)シクロペンタジエニル-ハフニウム-ジクロライド(メタロセンT)
メタロセンTは例7と同様に製造した。しかしながら例7におけるジフェニルフルベンとZrCl4とをフェニルメチルフルベンとHfCl4に代えた。
例20(実施例)
10dm3の石油エーテル(沸点範囲100〜120℃)を、窒素でフラッシュ洗浄した乾燥した16dm3の反応器中に20℃で導入した。次いで2barのエチレンを注入し、エチレンを開放放出しそしてこの操作を4回繰り返すことによってフラッシュ洗浄して反応器のガス空間から窒素を除く。次に1barの水素を注入し、メチルアルミノキサンの30cm3トルエン溶液[10.5重量%のメチルアルミノキサン濃度、分子量750g/mol(凝固点降下法で測定)]を加える。反応器内容物を撹拌下に15分間にわたって60℃に加熱する。次いで250回転/分で撹拌しながらエチレンを導入することによって全圧を7barに高める。同時に、3.1mgのメタロセンAをメチルアルミノキサン(上記と同じ濃度および同じ品質)の20cm3のトルエン溶液に溶解しそして15分間放置して予備活性化する。次いでこの溶液を反応器に導入する。重合系を65℃の温度に加温し、次に適当に冷却することによってこの温度を1時間維持する。全圧は、エチレンの適切な供給によってこの期間の間7barに保つ。160gのポリエチレンが得られる。
この生成物について以下の値が測定された:
VN:152cm3/g、嵩密度:320g/dm3
例21〜42(実施例)
操作はそれぞれ例20と同じであるが、以下のパラメータを変更した:
-メタロセンの種類
-メタロセンの量(mg)
-メチルアルミノキサン溶液の種類[メチルアルミノキサンの含有量(重量%)、
メチルアルミノキサンの分子量M(g/mol):凝固点降下法で測定]
-反応器に導入されるメチルアルミノキサン溶液の量(cm3)
-用いる水素の量[H2のbar数、水素は多くの実験で用いなかった。]
-全圧P(bar)
-重合時間t(分)
-重合温度T(℃)
代えた重合パラメータを第3表に示し、そして重合結果は第4表に示す。
例43(実施例)
10dm3の石油エーテル(沸点範囲100〜120℃)を、窒素でフラッシュ洗浄した乾燥した16dm3の反応器中に20℃で導入した。次いで2barのエチレンを注入し、エチレンを開放放出しそしてこの操作を4回繰り返すことによってフラッシュ洗浄して反応器のガス空間から窒素を除く。200cm3の1-ヘキサンおよび、メチルアルミノキサンの30cm3トルエン溶液[10.6重量%のメチルアルミノキサン濃度、分子量900g/mol(凝固点降下法で測定)]を次に添加する。反応器を撹拌下に15分間にわたって60℃に加熱する。次いで250回転/分で撹拌しながらエチレンを導入することによって全圧を5barに高める。同時に、1.3mgのメタロセンEをメチルアルミノキサン(上記と同じ濃度および同じ品質)の20cm3のトルエン溶液に溶解しそして15分間放置して予備活性化する。次いでこの溶液を反応器に導入する。重合系を80℃の温度に加温し、次に適当に冷却することによってこの温度を45分間維持する。全圧は、エチレンの適切な供給によってこの期間の間5barに保つ。
380gのエチレン-1-ヘキセン-コポリマーが得られる。この生成物について以下の値が測定された:
VN=182cm3/g、密度=0.934g/cm3
例44(実施例)
10dm3の石油エーテル(沸点範囲100〜120℃)を、窒素でフラッシュ洗浄した乾燥し16dm3の反応器中に20℃で導入した。次いで2barのエチレンを注入し、エチレンを開放放出しそしてこの操作を4回繰り返すことによってフラッシュ洗浄して反応器のガス空間から窒素を除く。400cm3の1-ヘキサンおよび、メチルアルミノキサンの30cm3トルエン溶液[10.6重量%のメチルアルミノキサン濃度、分子量900g/mol(凝固点降下法で測定)]を次に添加する。反応器を撹拌下に15分間にわたって60℃に加熱する。次いで250回転/分で撹拌しながらエチレンを導入することによって全圧を5barに高める。同時に、1.3mgのメタロセンBをメチルアルミノキサン(上記と同じ濃度および同じ品質)の20cm3のトルエン溶液に溶解しそして15分間放置して予備活性化する。次いでこの溶液を反応器に導入する。重合系を70℃の温度に加温し、次に適当に冷却することによってこの温度を45分間維持する。全圧は、エチレンの適切な供給によってこの期間の間5barに保つ。
520gのエチレン-1-へキセン-コポリマーが得られる。
この生成物について以下の値が測定された:
VN=168cm3/g、密度=0.924g/cm3
例45(実施例)
200gの塩化ナトリウムを、気相における撹拌助剤として20℃、大気圧のもとで、撹拌羽根を備えた、窒素でフラッシュ洗浄し乾燥した1.5dm3の反応器中に導入した。次いで5barのエチレンを注入し、そして撹拌機を600回転/分にセットする。メチルアルミノキサンの5cm3トルエン溶液[29.3重量%のメチルアルミノキサン濃度、分子量1100g/mol(凝固点降下法で測定)]を、噴霧ノズルによって反応器に注入し、内容物を15分間撹拌する。
同時に、1.1mgのメタロセンBをメチルアルミノキサン(上記と同じ濃度および同じ品質)の3cm3のトルエン溶液に溶解しそして15分間放置して予備活性化する。次いでこの溶液を同様に反応器に噴霧ノズルによって注入しそして系の温度を80℃に高める。20分間重合した後に反応器を放圧し、内容物を除きそして生じたポリマーを、水に塩化ナトリウムを溶解することによって単離し、生成物を濾過しそして乾燥する。
VN=240cm3/gのポリエチレン14.5gが得られる。
例46(実施例)
例45と同様に実施するが、1.1mgのメタロセンBを0.9mgのメタロセンEに代える。粘度数VN=230cm3/gのポリエチレン10.4gが得られる。




 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.訂正事項は次のとおりである。
(a)特許請求の範囲(請求項1、2,3および4)を次の通りに訂正する。
1)エチレンまたはエチレンと炭素原子数3〜20の1-オレフィンとを溶液状態で、懸濁状態でまたは気相において-60〜200℃の温度、0.5〜200 barの圧力ののもとで、遷移金属成分としてのメタロセンと式(II)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を意味しそして
nは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(III)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノキサンとより成る触媒の存在下に重合または共重合することによってエチレン-ポリマーを製造するに当たって、
重合を、メタロセンが式(I)

[式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表される化合物(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)である触媒の存在下に実施することを特徴とする、上記エチレン-ポリマーの製造方法。
2) 用いるメタロセンがrac-ジメチルシリルビス[1-(3-メチルインデニル)]-ジルコニウム-ジクロライドまたはジメチルシリルビス[1-(3-トリメチルシリル)シクロペンタジエニル]-ジルコニウム-ジクロライドである請求項1に記載の方法。
3)式(I)

[式中、M1はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブまたはタンタルであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

=BR6、=AlR6、-Ge-、-Sn-、-0-、-S-、=S0、=S02、=NR6、C0、=PR6または=P(0)R6を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、3、4または5である。]
で表されるメタロセン、ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く。
4)式(1)

[式中、M1はチタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
R1およびR2は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数7〜40のアルキルアリール基または炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基を意味し、
R3およびR4は同じでも異なっていてもよく、基礎構造に追加的な置換基を持つインデニル基であるかまたはR3およびR4は同じでも異なっていてもよく、R3が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいインデニル-またはフルオレニル基でありそしてR4が基礎構造に追加的な置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル-またはフルオレニル基であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、
R5は

または-Ge-を意味し、その際R6、R7およびR8は互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のフルオロアルキル基、炭素原子数6〜10のフルオロアリール基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数7〜40のアリールアルキル基、炭素原子数8〜40のアリールアルケニル基または炭素原子数7〜40のアルキルアリール基を意味するかまたは
R6とR7またはR6とR8はそれぞれそれらの結合する原子と一緒に成って環を形成し、
M2は珪素、ゲルマニウムまたは錫であり、
そしてpは1、2、31、4または5である。]
で表されるメタロセン(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)と式(II)

[式中、R9は炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を意味しそして
nは2〜50の整数である。]
で表される線状の種類および/または式(III)

[式中、R9およびnは上記の意味を有する。]
で表される環状の種類のアルミノキサンとよりなるエチレンポリマー製造用触媒。
(b)明細書第7頁第17〜18行に「ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではなく、」を挿入する。
(c)明細書第8頁第11〜13行に「(ただしR3およびR4が置換されたインデニル基であり、その置換基がH、CH3またはCH3Oであり、そしてM1がZrであるメタロセンを除く)」を挿入する。
(d)明細書第9頁第6〜7行に「であり、ただしR4はR3がフルオレニル基である時に、置換されていてもよい上記シクロペンタジエニル基ではない。」と訂正を加える。
(e)明細書第10頁第4〜6行を「rac-ジメチルシリルビス-(1-メチルインデニル)-ジルコニウム-ジクロライドまたはジメチルシリルビス[1-(3-トリメチルシリル)-シクロペンタジエニル]-ジルコニウム-ジクロライド」と補正する。
異議決定日 2000-12-25 
出願番号 特願平2-127075
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08F)
P 1 651・ 113- YA (C08F)
P 1 651・ 161- YA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉原 進藤本 保  
特許庁審判長 三浦 均
特許庁審判官 谷口 浩行
柿沢 紀世雄
登録日 1999-03-26 
登録番号 特許第2904301号(P2904301)
権利者 ヘキスト・アクチエンゲゼルシヤフト
発明の名称 エチレンポリマーの製造方法、それに用いる触媒および該触媒の構成成分である新規のメタロセン  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 江崎 光史  
代理人 江崎 光史  
代理人 衡田 直行  

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