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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1043258
異議申立番号 異議1998-75192  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-01-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-21 
確定日 2001-07-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第2743873号「鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法及び装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2743873号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第2743873号の請求項1〜請求項4に係る発明は、平成7年6月29日に特許出願され、平成10年2月6日にその特許権の設定の登録がなされ、その後、沢江健治及び宮坂和夫より請求項1〜請求項4(全請求項)に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、当審において、請求項1〜請求項4(全請求項)に係る発明の特許について取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成11年4月20日付けで訂正請求がなされ、さらに、その訂正請求に対して平成12年8月24日付けで訂正拒絶理由通知がなされたところ、平成12年10月23日付けで手続補正書(訂正請求書)が提出されたものである。
【2】訂正の適否についての判断
1.訂正請求に対する補正の適否について
1).補正の内容
特許権者が、平成12年10月23日付け手続補正(訂正請求)で求める補正の内容は、次の(1)〜(3)のとおりのものである。
(1)平成11年4月20日付け訂正請求書の特許請求の範囲の請求項1の、「・・・、前記ミキサーにおいて・・・」、及び「・・・に遊嵌し中空円板状の管押え・・・」という記載を、「・・・、前記ミキサー内において・・・」、及び「・・・に遊嵌した管押え・・・」と補正する。
(2)同請求項2の、「・・・硬化剤用供給管(15、16)とトミキサー(12)の・・・」という記載を、「・・・硬化剤用供給管(15、16)とミキサー(12)の・・・」と補正する。
(3)同請求項3の、「・・・混合比に併せて・・・」、「・・・が挿入された前記主剤用及び硬化剤用と、・・・」、及び「・・・に遊嵌した中空円板状の管押え・・・」という記載を、「・・・混合比に合わせて・・・」、「・・・が挿入された前記主剤用及び硬化剤用供給管と、・・・」、及び「・・・に遊嵌した管押え・・・」と補正する。
2).判断
(1)上記1).(1)の補正のうち、「・・・に遊嵌し中空円板状の管押え・・・」という記載を、「・・・に遊嵌した管押え・・・」と補正した点は、誤記の訂正など軽微な瑕疵の補正とは認められず、請求書の要旨を変更するものと認められる。
(2)前記1).(3)の補正のうち、「・・・に遊嵌した中空円板状の管押え・・・」という記載を、「・・・に遊嵌した管押え・・・」と補正した点は、誤記の訂正など軽微な瑕疵の補正とは認められず、請求書の要旨を変更するものと認められる。
3).むすび
したがって、前記平成12年10月23日付けの手続補正(訂正請求)は、
特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用しない。
2.訂正請求の適否について
(1).訂正の内容
上記のとおり、平成12年10月23日付けの手続補正(訂正請求)は採用できない。
そうすると、特許権者が求める平成11年4月20日付けの訂正の内容は、特許明細書(特許査定時の明細書)の特許請求の範囲の請求項1〜請求項3の記載を、次のように訂正しようとするものである。
【請求項1】 鉄筋継手(10)のグラウト注入孔(11)に管形固定ミキサー(12)の吐出口を直接又はフレキシブルチューブ(41)とノズル(42)を介して挿入すると共に、前記ミキサーの供給口に出口を直結したY形管接手(14)の2つの主剤用及び硬化剤用入口に主剤及び硬化剤が充填された主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)の吐出口をはめ込み、前記主剤用及び硬化剤用供給管の供給口から主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)を挿入し、ついで前記ピストン(25、26)を吐出口側へ同期移動して内部の主剤と硬化剤をそれぞれ前記ミキサーに送出し、前記ミキサーにおいて前記主剤及び硬化剤を混練してそのまま前記鉄筋継手内に注入する方法において、前記主剤用及び硬化剤用供給管はそれぞれの管径が主剤と硬化剤の混合比に合わせて設定され、かつ前記主剤用及び硬化剤用供給管はピストンロッド(23、24)に遊嵌し中空円板状の管押え(17、18)と、前記管押えとホルダー上端部(22)の間にはめたコイルばね(35、36)により押さえられることを特徴とする鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法。
【請求項2】 主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)とトミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明であることを特徴とする請求項1記載の鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法。
【請求項3】 管径が主剤と硬化剤の混合比に併せて設定された主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)と、枠状のホルダー(20)と、前記ホルダー下端部(21)に脱着目在に固定したY形管接手(14)と、前記Y形管接手の出口に直結した管形固定ミキサー(12)と、前記Y形管接手の平行な主剤用及び硬化剤用入口に吐出口が挿入された前記主剤用及び硬化剤用と、前記ホルダーに軸方向摺動自在に軸受けした主剤用及び硬化剤用ピストンロッド(23、24)と、前記ピストンロッドの一端に固定され、かつ前記主剤用及び硬化剤用供給管の供給口から内嵌された主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)と、前記ホルダーに固定されて前記ピストンロッドと係合してそれを軸方向に摺動させる駆動機構(29)とからなる装置であって、前記主剤用及び硬化剤用供給管を前記ピストンロッドに遊嵌した中空円板状の管押え(17、18)と、前記管押えとホルダー上端部(22)の間にはめたコイルばね(35、36)により押さえたことを特徴とする鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する装置。
(2).訂正拒絶理由
当審では、平成12年8月24日付けで、平成11年4月20日付けの訂正請求に対して、次の『 』内のとおりの訂正拒絶理由を通知した。
『 1.平成11年4月20日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1〜請求項4を訂正しようとするものである。
具体的には、請求項1及び請求項3は、構成を限定する事項を付加することによって特許請求の範囲を減縮し、さらに、請求項1及び請求項3をそれぞれ引用する請求項2及び請求項4も、結果として特許請求の範囲を減縮するというものである。
2.そこで、各請求項の訂正について、検討する。
(1)請求項1について
請求項1の訂正は、特許明細書(特許査定時の明細書)の特許請求の範囲の請求項1に、「かつ前記主剤用及び硬化剤用供給管は・・・コイルばね35,36により押さえられる」という事項を付加したもので、一応特許請求の範囲の減縮に相当するものと認められる。
ところで、前記訂正のほかに、特許明細書の請求項1の「・・・前記ミキサー内において・・・」という記載を、「・・・前記ミキサーにおいて・・・」と訂正しているが、この訂正は明りょうであった記載を、明りょうでない記載に訂正したものと認められる。
(2)請求項2について
請求項2において、特許明細書の請求項2の「・・・硬化剤用供給管15,16とミキサー12の・・・」という記載を、「・・・硬化剤用供給管15,16とトミキサー12の・・・」と訂正しているが、この訂正は明りょうであった記載を、明りょうでない記載に訂正したものと認められる。
(3)請求項3について
請求項3の訂正は、特許明細書の請求項3に、「・・・とからなる装置であって、前記主剤用及び硬化剤用供給管を・・・コイルばね35,36により押さえた」という事項を付加したもので、一応特許請求の範囲の減縮に相当するものと認められる。
ところで、前記訂正のほかに、特許明細書の請求項3の「・・・混合比に合わせて設定された・・・」、及び「・・・前記主剤用及び硬化剤用供給管と、前記ホルダーに・・・」という記載を、「・・・混合比に併せて設定された・・・」、及び「・・・前記主剤用及び硬化剤用と、前記ホルダーに・・・」と訂正しているが、これら訂正は明りょうであった記載を、明りょうでない記載に訂正したものと認められる。
3.したがって、前記訂正は、特許請求の範囲の減縮に相当する訂正も一部含まれるものの、明りょうでない記載を含んでいるから、請求項全体の記載としては不明りょうであって、特許明細書の明りょうであった請求項の記載を、明りょうでない記載に訂正したものである。
以上のように、前記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き各号の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。』
(3).むすび
この訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は平成12年10月23日付けで手続補正書(訂正請求書)を提出したが、その手続補正書(訂正請求書)は、前記「1.訂正請求に対する補正の適否について」で述べたとおり採用することはできない。
そして、前記訂正拒絶理由通知は妥当なものと認められるから、前記平成11年4月20日付けの訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き各号の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
【3】特許異議申立についての判断
1.本件請求項に係る発明
前述のとおり、平成11年4月20日付けの訂正は認められない。
そうすると、本件特許第2743873号の請求項1〜請求項4に係る発明は、特許明細書(特許査定時の明細書)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項4(全請求項)に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 鉄筋継手(10)のグラウト注入孔(11)に管形固定ミキサー(12)の吐出口を直接又はフレキシブルチューブ(41)とノズル(42)を介して挿入すると共に、前記ミキサーの供給口に出口を直結したY形管接手(14)の2つの主剤用及び硬化剤用入口に主剤及び硬化剤が充填された主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)の吐出口をはめ込み、前記主剤用及び硬化剤用供給管の供給口から主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)を挿入し、ついで前記ピストン(25、26)を吐出口側へ同期移動して内部の主剤と硬化剤をそれぞれ前記ミキサーに送出し、前記ミキサー内において前記主剤及び硬化剤を混練してそのまま前記鉄筋継手内に注入する方法において、前記主剤用及び硬化剤用供給管はそれぞれの管径が主剤と硬化剤の混合比に合わせて設定されたことを特徴とする鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法。
【請求項2】 主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)とミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明であることを特徴とする請求項1記載の鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法。
【請求項3】 管径が主剤と硬化剤の混合比に合わせて設定された主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)と、枠状のホルダー(20)と、前記ホルダー下端部(21)に脱着目在に固定したY形管接手(14)と、前記Y形管接手の出口に直結した管形固定ミキサー(12)と、前記Y形管接手の平行な主剤用及び硬化剤用入口に吐出口が挿入された前記主剤用及び硬化剤用供給管と、前記ホルダーに軸方向摺動自在に軸受けした主剤用及び硬化剤用ピストンロッド(23、24)と、前記ピストンロッドの一端に固定され、かつ前記主剤用及び硬化剤用供給管の供給口から内嵌された主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)と、前記ホルダーに固定されて前記ピストンロッドと係合してそれを軸方向に摺動させる駆動機構(29)とからなることを特徴とする鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する装置。
【請求項4】 主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)と管形固定ミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明であることを特徴とする請求項3記載の鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する装置。
2.取消理由通知
当審では、平成11年2月17日付けで、刊行物として、
刊行物1(米国特許第5249709号明細書=特許異議申立人 宮坂和 夫提出の甲第1号証)、及び
刊行物2(特開昭51-127531号公報=特許異議申立人 宮坂和夫 提出の甲第2号証、及び同 沢江健治提出の甲第3号証)
を引用し、
さらに、周知技術として、一般に、接着剤注入器の技術分野においては、接着剤供給管を透明にして注入量の目視確認等を行うことは、本件発明の出願前、周知の技術手段であるとして実願昭62-95784号(実開昭64-1777号)のマイクロフイルム、及び登録実用新案第3009354号公報(登録日 平成7年1月25日)を引用し、
本件請求項1〜請求項4に係る発明には、進歩性が認められない旨の取消理由を通知した。
3.刊行物に記載の発明
(1)特許異議申立人 宮坂和夫が提出した甲第1号証であって、先の当審の取消理由通知において刊行物1として引用した米国特許5249709号明細書(1993年(平成5年)発行)の1欄19〜39行、2欄29〜32行、3欄9〜54行、及び図1,2の記載からみて、刊行物1には、主剤及び硬化剤を混練した接着剤を吐出する方法及び装置に関して、次のような発明が開示されているものと認められる。
「固定ミキサー28の供給口に出口を直結したボンネット26に、主剤及び硬化剤が充填された主剤用及び硬化剤用のカートリッジ14,16の出口ノズル20,24をはめ込み、カートリッジ14,16の供給口からシール18,22を挿入し、ついで、二本のプランジャーによりシール18,22を吐出口側に同期移動させて、内部の主剤及び硬化剤をそれぞれ固定ミキサー28に送出し、固定ミキサー28内において主剤及び硬化剤を混練してそのまま吐出する方法において、カートリッジ14,16はそれぞれの管径が主剤及び硬化剤の混合比に合わせて設定された、固定ミキサー28内において主剤及び硬化剤を混練して吐出する方法」、及び、
「管径が主剤と硬化剤の混合比に合わせて設定された主剤用及び硬化剤用のカートリッジ14,16と、カートリッジ14,16を保持する枠状のホルダーと、カートリッジ14,16の先端に設けたボス部64,66及び出口ノズル20,24を介して枠状のホルダー下端部に着脱自在に支持したボンネット26と、ボンネット26の出口に直結した固定ミキサー28と、ボンネット26の供給口に主剤用及び硬化剤用の吐出口が挿入された主剤用及び硬化剤用のカートリッジ14,16と、カートリッジ14,16に内嵌されたシール18,22と、カートリッジ14,16の供給口から挿入され、シール18,22を軸方向に摺動させるプランジャーとからなる、主剤及び硬化剤を混練し吐出する装置。」
(2)特許異議申立人 宮坂和夫が甲第2号証として提出し、特許異議申立人 沢江健治が甲第3号証として提出したものであって、先の当審の取消理由通知において刊行物2として引用した特開昭51ー127531号公報の特許請求の範囲、公報2頁右上欄14行〜左下欄6行、同2頁右下欄18行〜3頁左上欄2行、同3頁左上欄5行〜右上欄10行、及び第1図の記載からみて、刊行物2には、鉄筋継手に関して、次のような発明が記載されているものと認められる。
「二本の鉄筋をネジスリーブ3に螺合嵌着し、ネジスリーブ3の接着剤注入孔4に注入器のノズル5を挿入し、エポキシ樹脂と硬化剤を混合したエポキシ樹脂系接着剤をネジスリーブ3内に注入して固化させる鉄筋継手。」
(3)接着剤注入器の技術分野において、接着剤供給管を透明にして注入量の目視確認等を行うことが周知の技術手段であるとして引用された実願昭62-95784号(実開昭64-1777号)のマイクロフイルム(以下、「刊行物3」という。)の実用新案登録請求の範囲、明細書2頁17行〜3頁1行、同3頁10〜17行、同4頁2〜5行、同5頁1〜3行、及び図面の記載からみて、刊行物3には、接着剤注入器に関して、次のような発明が記載されているものと認められる。
「シリンダとピストンからなる接着剤注入器において、シリンダを透明としたもの。」
(4)同じく、周知の技術手段であるとして引用された登録実用新案第3009354号公報(以下、「刊行物4」という。)の実用新案登録請求の範囲、段落番号0010,及び図1〜3の記載からみて、刊行物4には、床補修用注入器に関して、次のような発明が記載されているものと認められる。
「床補修用注入器において、輸送チューブを透明な材質とし、注入用樹脂の輸送状態を目視できるようにしたもの。」
4.対比、判断
本件特許明細書の請求項1〜請求項4に係る発明(以下、「本件発明1〜本件発明4」という。)と、各刊行物の発明とを対比する。
(1).本件発明1について
本件発明1と、上記刊行物1の方法に関する発明とを対比すると、刊行物1の発明の「固定ミキサー28」、「主剤用及び硬化剤用のカートリッジ14,16」、「出口ノズル20,24」、「シール18,22」、及び「主剤及び硬化剤を混練して吐出する方法」は、それぞれ、本件発明1の「管形固定ミキサー(12)」、「主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)」、「吐出口」、「主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)」、及び「2液混合グラウトを注入する方法」に対応し、刊行物1の発明の「ボンネット26」と、本件発明1の「Y形管接手(14)」は、接手という点で共通するから、両発明は、
「管形固定ミキサー(12)の供給口に出口を直結した接手の2つの主剤用及び硬化剤用入口に主剤及び硬化剤が充填された主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)の吐出口をはめ込み、前記主剤用及び硬化剤用供給管の供給口から主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)を挿入し、ついで前記ピストン(25、26)を吐出口側へ同期移動して内部の主剤と硬化剤をそれぞれ前記ミキサーに送出し、前記ミキサー内において前記主剤及び硬化剤を混練してそのまま注入する方法において、前記主剤用及び硬化剤用供給管はそれぞれの管径が主剤と硬化剤の混合比に合わせて設定されている。」
という点で構成が一致しており、次のa)の点で相違しているものと認められる。
a)本件発明1が、鉄筋継手(10)のグラウト注入孔(11)に管形固定ミキサー(12)の吐出口を直接又はフレキシブルチューブ(41)とノズル(42)を介して挿入し、鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法であるのに対して、刊行物1の発明は、主剤と硬化剤を混練した接着剤をどこに吐出する(注入する)のかが明記されていない点。
そこで、この相違点a)について検討する。
前記刊行物2には、「二本の鉄筋をネジスリーブ3に螺合嵌着し、ネジスリーブ3の接着剤注入孔4に注入器のノズル5を挿入し、エポキシ樹脂と硬化剤を混合したエポキシ樹脂系接着剤をネジスリーブ3内に注入して固化させる鉄筋継手」が記載されており、本件発明1の相違点a)の構成は、刊行物2に実質的に記載されているものと認められる。
したがって、本件発明1は、刊行物1の発明に、刊行物2の発明を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明1の効果も刊行物1,2から予測しうる範囲のものである。
(2).本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1の構成を「主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)とミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明である」と限定したものである。
そこで検討するに、周知の技術手段であるとして引用した前記刊行物3,4には、「シリンダとピストンからなる接着剤注入器において、シリンダを透明としたもの」や、「床補修用注入器において、輸送チューブを透明な材質とし、注入用樹脂の輸送状態を目視できるようにしたもの」が記載されており、本件発明2の、「主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)とミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明である」という構成は、刊行物3,4の発明と格別相違するものとは認められない。
したがって、本件発明2は、前記「(1).本件発明1について」での判断と同様な理由によって、刊行物1の発明に、刊行物2〜4の発明を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明2の効果も刊行物1〜4から予測しうる範囲のものである。
(3).本件発明3について
本件発明3と、上記刊行物1の装置に関する発明とを対比すると、刊行物1の発明の「主剤用及び硬化剤用のカートリッジ14,16」、「固定ミキサー28」、「シール18,22」、「プランジャー」、及び「主剤及び硬化剤を混練し吐出する装置」は、それぞれ、本件発明3の「主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)」、「管形固定ミキサー(12)」、「主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)」、「駆動機構(29)」、及び「2液混合グラウトを注入する装置」に対応し、刊行物1の発明の「ボンネット26」と、本件発明3の「Y形管接手(14)」は、接手という点で共通するから、両発明は、
「管径が主剤と硬化剤の混合比に合わせて設定された主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)と、枠状のホルダー(20)と、前記ホルダー下端部(21)に脱着目在に固定した接手(14)と、前記接手の出口に直結した管形固定ミキサー(12)と、前記接手に吐出口が挿入された前記主剤用及び硬化剤用供給管と、前記主剤用及び硬化剤用供給管の供給口から内嵌された主剤用及び硬化剤用ピストン(25、26)と、ピストン(25、26)を軸方向に摺動させる駆動機構(29)とからなる2液混合グラウトを注入する装置。」
という点で構成が一致しており、次のa)の点で相違しているものと認められる。
a)本件発明3が、鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する装置であるのに対して、刊行物1の発明は、主剤と硬化剤を混練した接着剤をどこに吐出する(注入する)のかが明記されていない点。
そこで、この相違点a)を検討する。
前記刊行物2には、「二本の鉄筋をネジスリーブ3に螺合嵌着し、ネジスリーブ3の接着剤注入孔4に注入器のノズル5を挿入し、エポキシ樹脂と硬化剤を混合したエポキシ樹脂系接着剤をネジスリーブ3内に注入して固化させる鉄筋継手」が記載されているから、本件発明3の相違点a)の構成は、
刊行物2に実質的に記載されているものと認められる。
したがって、本件発明3は、刊行物1の発明に、刊行物2の発明を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明3の効果も刊行物1,2から予測しうる範囲のものである。
(4).本件発明4について
本件発明4は、本件発明3を引用し、本件発明3の構成を「主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)と管形固定ミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明である」と限定したものである。
そこで検討するに、周知の技術手段であるとして引用した前記刊行物3,4には、「シリンダとピストンからなる接着剤注入器において、シリンダを透明としたもの」や、「床補修用注入器において、輸送チューブを透明な材質とし、注入用樹脂の輸送状態を目視できるようにしたもの」が記載されており、本件発明4の、「主剤用及び硬化剤用供給管(15、16)とミキサー(12)の管体(13)は内部の色が識別できる程度に透明である」という構成は、刊行物3,4の発明と格別相違するものとは認められない。
したがって、本件発明4は、前記「(3).本件発明3について」での判断と同様な理由によって、刊行物1の発明に、刊行物2〜4の発明を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明4の効果も刊行物1〜4から予測しうる範囲のものである。
(5).むすび
以上のとおり、本件発明1及び本件発明3は、刊行物1及び刊行物2の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明1及び本件発明3の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1及び本件発明3の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認められる。
また、本件発明2及び本件発明4は、刊行物1〜刊行物4の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明2及び本件発明4の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明2及び本件発明4の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認められる。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116条)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-04 
出願番号 特願平7-163202
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (E04G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小山 清二  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 宮崎 恭
鈴木 憲子
登録日 1998-02-06 
登録番号 特許第2743873号(P2743873)
権利者 東京鐵鋼株式会社
発明の名称 鉄筋継手に2液混合グラウトを注入する方法及び装置  
代理人 川上 肇  
代理人 高木 義輝  

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