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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F04C
管理番号 1043311
異議申立番号 異議1998-75352  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1987-03-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-11-04 
確定日 2001-07-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第2748314号「密閉形電動圧縮機」の特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2748314号の特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された発明についての特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2748314号の特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された発明についての出願は、昭和61年6月17日(パリ条約による優先権主張1985年6月17日、アメリカ合衆国)に出願され、平成10年2月20日に設定登録された。その後、特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された発明に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年6月30日付けで訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされたところ、平成12年2月14日付けで平成11年6月30日付けの訂正請求に対し訂正請求取り下げがなされるとともに、同日付けで第2の訂正請求がなされた。一方、平成12年5月26日付けで平成12年2月14日付けの訂正請求書に係る手続は訂正の請求ができる期間外の差し出し(特許法第120条の6第1項の規定によって準用する特許法第133条の2第1項の規定)との却下理由通知がなされ、さらに平成12年8月28日付けで平成12年2月14日付けの訂正請求書に係る手続は却下がなされたものである。

2.本件発明
本件特許第2748314号の発明の要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された次のとおりのものである。
「1.(イ)電動機と、電動機によって駆動される圧縮機とを含むとともに冷却流体を充填した密閉容器と、(ロ)上記密閉容器に取り付けられ、上記密閉容器内に複数の導電性のリードピンを提供する端子部と、(ハ)上記密閉容器内に上記端子部と対向するように配置され、上記電動機の巻線と上記端子部間に電気的な接続を提供するためのクラスタブロックとを有し、上記クラスタブロックは、複数の導電性の接触装置と、少なくとも上記密閉容器内の上記冷却流体の熱に応答可能な熱応答性スイッチを含むプロテクタと、上記プロテクタを保持する保持部とを有し、上記複数の導電性の接触装置は、上記複数のリードピンを保持するために上記複数のリードピンの位置にそれぞれ対応するように位置決め部材によって位置決めされ、上記プロテクタは、上記接触装置の1つに電気的に接続される第1の端子部と、上記電動機の所定の巻線に電気的に接続される第2の端子部を有し、かつ、上記プロテクタは、少なくともその一部が上記密閉容器内の上記冷却流体に露出されるようにクラスタブロックの上記保持部によって保持されていることを特徴とする密閉形電動圧縮機。
2.(イ)電動機と、電動機によって駆動される圧縮機とを含むとともに冷却流体を充填した密閉容器と、(ロ)上記密閉容器に取り付けられ、上記密閉容器内に複数の導電性のリードピンを提供する端子部と、(ハ)上記密閉容器内に上記端子部と対向するように配置され、上記電動機の巻線と上記端子部間に電気的な接続を提供するためのクラスタブロックとを有し、上記クラスタブロックは、複数の導電性の接触装置と、少なくとも上記密閉容器内の上記冷却流体の熱に応答可能な熱応答性スイッチを含むプロテクタと、上記プロテクタを保持する保持部とを有し、上記複数の導電性の接触装置は、上記複数のリードピンを保持するための複数の弾性接触部と複数の接触アームからなり、上記複数の接触アームの少くとも1つから延在する延在部を有し、該延在部によって上記プロテクタの少なくとも一部を上記冷却流体に露出可能となる位置に上記プロテクタを配し、上記プロテクタの第1の端子部が上記延在部に電気的に接続され、第2の端子部が上記電動機の所定の巻線に電気的に接続されていることを特徴とする密閉形電動圧縮機。」

3.引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由において引用した、刊行物1(米国特許第3586910号明細書)には、
第2コラム第53行〜第67行に、
「図面を参照すると、冷媒圧縮機10は、従来構成であり、上部電動機部14を有する電動機-圧縮機ユニット12を含む。上部電動機部14は、下部圧縮機部16を支持している。ユニット全体は、脚22によって基体に取り付けられた下部外殻20の内壁に連結されたばね受け組み体18に支持されている。上部外殻24はユニット12を気密に密封し、上部外殻及び下部外殻は溶接されるか、或いはそれらの協働する周囲フランジ26及び28の周りで密封状態に連結される。
従来と同様に、冷蔵庫、エア-コンディショナー或いは類似のシステムにおいて、圧縮機10は導管30を介して冷却器の一方の側から冷媒を受け、その冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を導管32を介して凝縮器に供給する。」という内容が記載されており、
第3コラム第6行〜第56行に、
「各プラグの内側と外側の端部は、以下に述べる目的のために環状の溝46を有する。複数の雌ターミナルソケット即ちクリップ48、50及び52は、それぞれプラグ38、40及び42の内側端に装着され、各クリップは、正確な位置にしっかりとスナップしてはまる刻み目を付けた弾性片54を有し、若し、外したいと思えば、装着を解くこともできる。
クリップ48、50及び52は、ベース部分58を有する2つの部分からなるベークライト絶縁ハウジング56中にあり、その底壁はプラグ38、40及び42がクリップ48、50及び52各々と協働してプラグから同時に脱着できるような適合箇所に開口している。
取り外し可能の蓋板は摺動してベース肩部60及び62とそれと一体をなす仕切片63と係合し、その上に横フランジ64、66と端フランジ68によって覆い囲まれて保持される。蓋板はクリップ48、50及び52がそれら各々に該当するプラグから同時に外れることを防ぎ、ハウジング56中のクリップ48と共にその内側端で一体をなす外方へ延在する導電性支持片72を担持するクリップ48の一部を覆い囲む溝付きコーナー部70を有し、導電性支持片72は溶接のような方法で電流-温度保護装置74の金属容器82の外方端と導電的に一体化されて支持され、保護装置74は外殻20中でハウジング56の外側に位置している。
共通主リード線76は、保護装置74からモータ14の主及び補助巻線へ張り渡してある。一対のリード線78、80は、ハウジング56中のクリップ50、52にそれぞれ接続され、ハウジングの後端を通ってそれぞれモータ巻線の補助Aと主Mに導かれている。
保護装置74は、在来の構造によるものであり、図6に示すように、金属端蓋84と一体に結合された金属容器82から構成されている。バイメタル86は、蓋84に結合された金属支持体88より片持ち梁状態に装着され、その自由端には固定接点92と協働する接点90を有し、固定接点は98の位置で蓋84に対して電気的に絶縁された状態で貫通するピン96に結合された金属細長片94の端部に所在する。
上記に示されるように、支持片72は缶容器82に固定され、共通リード線76はピン96に接続されているから、通常では、電流は端子クリップ48より、容器82、蓋84、バイメタル86、細長片94、ピン96、リード線76を通じ、モータ巻線へ流れる。
注目されるべき点は、保護装置74は、電動圧縮機ユニットの動作中の温度に速時反応するものであるが、それは外殻20の中に内蔵され、その中の温度状態に直接支配されるからである。熱伝導的な容器82、蓋84、支持体88、バイメタル86は所定の過大動作高温度が生じたときに温度変化に直接反応して、一対の接点90と92間を遮断する。」
という内容が記載されている。
上記記載及び第1乃至第6図、第9図等をあわせてみると、上記刊行物1には、
「(イ)電動機部14と、電動機部14によって駆動される圧縮機部16とを含む上部外殻24及び下部外殻20と、(ロ)上記下部外殻20に取り付けられ、上記上部外殻24及び下部外殻20内に複数の導電性のプラグ38、40、42を提供する端子部と、(ハ)上記上部外殻24及び下部外殻20内に上記端子部と対向するように配置され、上記電動機部14の巻線と上記端子部間に電気的な接続を提供するための絶縁ハウジング56とを有し、上記絶縁ハウジング56は、複数の導電性のクリップ48、50、52と、少なくとも上記上部外殻24及び下部外殻20内の熱に応答可能な熱応答性のバイメタルスイッチを含む保護装置74とを有し、上記複数の導電性のクリップ48、50、52は、上記複数のプラグを保持するために上記複数のプラグの位置にそれぞれ対応するように位置決めされ、上記保護装置74は、上記クリップの1つに電気的に接続される金属容器82と、上記電動機部14の所定の巻線に電気的に接続されるピン96を有し、かつ、上記保護装置74は、少なくともその一部が上部外殻24及び下部外殻20内に露出されるように保持されている密閉形電動圧縮機」
及び
「(イ)電動機部14と、電動機部14によって駆動される圧縮機部16とを含む上部外殻24及び下部外殻20と、(ロ)上記下部外殻20に取り付けられ、上記上部外殻24及び下部外殻20内に複数の導電性のプラグ38、40、42を提供する端子部と、(ハ)上記上部外殻24及び下部外殻20内に上記端子部と対向するように配置され、上記電動機部14の巻線と上記端子部間に電気的な接続を提供するための絶縁ハウジング56とを有し、上記絶縁ハウジング56は、複数の導電性のクリップ48、50、52と、少なくとも上記上部外殻24及び下部外殻20内の熱に応答可能な熱応答性のバイメタルスイッチを含む保護装置74とを有し、上記複数の導電性のクリップ48、50、52は、上記複数のプラグを保持するためのクリップ48、50、52からなり、上記複数のクリップ48、50、52の少なくとも1つから延在する導電性支持片72を有し、該導電性支持片72によって上記保護装置74の少なくとも一部を密閉容器内に露出可能となる位置に上記保護装置74を配し、上記保護装置74の金属容器82が上記導電性支持片72に電気的に接続され、ピン96が上記電動機部14の所定の巻き線に電気的に接続されている密閉形電動圧縮機」が記載されていると認められる。

また、同刊行物2(米国特許第3016183号明細書)には、第1コラム第9行〜第10行に、
「本発明は冷凍装置に関し、特に、密閉型電動圧縮機に関する。」
という内容が記載されており、
第2コラム第6行〜第11行に、
「モータ回転子28は回転軸26の上端に固着され、その回転軸26の下端部にはシリンダ板34中に形成された圧縮室32中で作動するインペラ30を駆動するための偏心部28を具備している。」
という内容が記載されており、
第3コラム第19行〜第26行に、
「過熱除去コイルの出口は圧縮された冷却流体をその流体によって運ばれた油をケーシング10へ戻すように一旦はケーシング10へ吐出し、しかる後、圧縮された冷却流体は凝縮器85へ放出される。凝縮された冷却流体は、凝縮器から膨張弁87を通り、蒸発器89を経て吸入ライン50へ戻る。」
という内容が記載されており、
第3コラム第36行〜第37行に、
「通常の熱応答性過負荷スイッチ103が圧縮機の運転を止める。」
という内容が記載されており、
第3コラム第53行〜第55行に、
「在来の熱応答性過負荷プロテクタースイッチがモータを止める。」
という内容が記載されている。
上記記載及び第1図等をあわせてみると、上記刊行物2には、
「ケーシング10内に冷却流体が充填されており、ケーシング10内の冷却流体の熱に応答可能な熱応答性過負荷スイッチ103の少なくともその一部がケーシング10内の冷却流体に露出されている密閉型電動圧縮機」が記載されていると認められる。

さらに、同刊行物3(米国特許第3622948号明細書)には、第1コラム第15行〜第24行に、
「ここに開示の標準形電気コネクタクラスタ組立の使用がすでに知られ、且つ、例えばU.S.Pat.NO.3,345,605に記述されているにもかかわらず、そのようなコネクタクラスタ組立は密閉形モータをオーバロードから保護する手段を含んでおらず、それ故にそのような保護手段が密閉容器内のどこかに設けなければならない。これは必然的な追加の組合せ操作と、この組合せ操作による追加コストとが要求される。この発明はそのような要求を回避することを目的とする。」
という内容が記載されており、
第1コラム第53行〜第63行に、
「本発明の本質に従えば、装着用ブロックは、密閉容器から突出している複数のピンに合致するにふさわしい配列にコネクタが保持されるための複数のコネクタ孔が配設されている。接合部補強用の金輪(フェルール)を含む複数のコネクタは、前記装着用ブロックに配設された前記複数の孔に適応するように形成され、これらの孔はその孔の近傍にきっちりと位置して、装着用ブロックの端部から各々の導体が出現するようになされている。コネクタ孔の外側で実質的に前記ブロックのベースに配設された追加の孔は、過負荷保護素子をその中にきっちりと保持するように形成されている。」
という内容が記載されており、
第2コラム第55行〜第65行に、
「図2,3,5を参照すると、3個のキャビティ16はモータのリード線の先端に固着されたコネクタを受けるブロック18の各コーナーに隣接して設けられている。その各コネクタは密封端子ピンに摺動で接続できる通常形状のクリップ部分44,44をもっている。」
という内容が記載されており、
第2コラム第69行〜第72行に、
「コネクタ42を受ける各キャビティ16はクリップ受け開口部50を有し、この受け開口部50は取付ブロック18の前面と後面間に延びる。」
という内容が記載されており、
第3コラム第7行〜第10行に、
「各コネクタ42は、キャビティ16内に収められると同時に、そのクリップ部分44,44がブロック18のクリップ受け開口部50内に、そのブロック18の前面及び後面間にわたるように挿入されている。」
という内容が記載されており、
第3コラム第24行〜第27行に、
「リード線12は、この方法で最上位キャビティ16付近から延び、そして、それから、キャビティ24内に配置されている通常の熱応動検出装置のようなオーバロードディバイス60に接続される。」
という内容が記載されており、
第3コラム第46行〜第59行に、
「オーバロードディバイス60がキャビティ24内で長軸方向に適宜の空間をとるようにするため、二つの壁66、66間で直接的に半円溝72が設けられている。そのオーバロードディバイスは、その一端に近接して有する円形フランジ74が、半円状溝72にきっちり嵌まり、これにより、キャビティ24内に確実に位置決めされる。
接続線10、14、20を束ねた完成状態では、絶縁ブロック18とこのブロックから延びている3個の電気コネクタとが本質的に単一集合体をなし、それ故、容易に取扱うことができ、また、例えば、コンプレッサ(図示せず)の密封容器の壁に配置される三本の刺しプラグに容易に係合できる。」
という内容が記載されている。
上記記載及び第1乃至第6図等をあわせてみると、上記刊行物3には、
「絶縁ブロック18が、オーバーロードディバイス60を保持するキャビティ24を有し、オーバーロードディバイス60がそのキャビティ24によって保持されている密閉型電動圧縮機」及び、
「コネクタ42が保持されるための複数のキャビティ16及びクリップ受け開口部50が配設されている密閉型電動圧縮機」及び、
「コネクタ42は密封端子ピンに摺動で接続できる通常形状のクリップ部分44、44と、むき出しのリード線を包囲して物理的にも電気的にも接続する金輪(フェルール)部46と、クリップ部44と金輪部46との間に延在する中間ウェブ部48とからなる密閉型電動圧縮機」が記載されていると認められる。

4.対比・判断
(1)本件特許請求の範囲の第1項に記載された発明についての対比・判断
本件特許請求の範囲の第1項に記載された発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1に記載された「電動機部14」、「圧縮機部16」、「上部外殻24及び下部外殻20」、「プラグ38、40、42」、「絶縁ハウジング56」、「クリップ48、50、52」、「保護装置74」、「金属容器82」、「ピン96」は、それぞれ本件特許請求の範囲の第1項に記載された発明の「電動機」、「圧縮機」、「密閉容器」、「リードピン」、「クラスタブロック」、「接触装置」、「プロテクタ」、「第1の端子部」、「第2の端子部」に相当する。
したがって、両者は、
「(イ)電動機と、電動機によって駆動される圧縮機とを含む密閉容器と、(ロ)上記密閉容器に取り付けられ、上記密閉容器内に複数の導電性のリードピンを提供する端子部と、(ハ)上記密閉容器内に上記端子部と対向するように配置され、上記電動機の巻線と上記端子部間に電気的な接続を提供するためのクラスタブロックとを有し、上記クラスタブロックは、複数の導電性の接触装置と、少なくとも上記密閉容器内の熱に応答可能な熱応答性スイッチを含むプロテクタとを有し、上記複数の導電性の接触装置は、上記複数のリードピンを保持するために上記複数のリードピンの位置にそれぞれ対応するように位置決めされ、上記プロテクタは、上記接触装置の1つに電気的に接続される第1の端子部と、上記電動機の所定の巻線に電気的に接続される第2の端子部を有し、かつ、上記プロテクタは、少なくともその一部が上記密閉容器内に露出されるように保持されている密閉形電動圧縮機」
の点で一致するものの、
(a)特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、密閉容器内に冷却流体が充填されており、密閉容器内の冷却流体の熱に応答可能なプロテクタの少なくともその一部が密閉容器内の冷却流体に露出されているのに対し、刊行物1に記載された発明は、密閉容器内に冷却流体が充填されているか否か明示されておらず、密閉容器内の熱に応答可能なプロテクタの少なくともその一部が密閉容器内に露出されている点、
(b)特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、クラスタブロックが、プロテクタを保持する保持部を有し、プロテクタがその保持部によって保持されているのに対し、刊行物1に記載された発明は、クラスタブロックが、プロテクタを保持する保持部を有していない点、
(c)特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、複数の導電性の接触装置を位置決めする位置決め部材を有するのに対し、刊行物1に記載された発明は、位置決め部材が明示されていない点、
で両者は相違する。
以下、上記相違点について検討する。
刊行物2に記載された発明の「ケーシング10」、「熱応答性過負荷スイッチ103」は、それぞれ特許請求の範囲の第1項に記載された発明の「密閉容器」、「プロテクタ」に相当するから、上記(a)の相違点における特許請求の範囲の第1項に記載された発明の構成は上記刊行物2に記載されていると認められる。そして、刊行物2に記載された発明は、特許請求の範囲の第1項に記載された発明及び刊行物1に記載された発明と、技術分野が同じものであから、刊行物2に記載された上記構成を、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
次に、上記(b)の相違点について検討すると、刊行物3に記載された発明の「絶縁ブロック18」、「コネクタ42」、「オーバーロードディバイス60」、「キャビティ24」は、それぞれ特許請求の範囲の第1項に記載された発明の「クラスタブロック」、「接触装置」、「プロテクタ」、「保持部」に相当するから、上記(b)の相違点における特許請求の範囲の第1項に記載された発明の構成は上記刊行物3に記載されていると認められる。そして、刊行物3に記載された発明は、特許請求の範囲の第1項に記載された発明及び刊行物1に記載された発明と技術分野が同じものであるから、刊行物3に記載された上記構成を、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
また、上記(c)の相違点について検討すると、刊行物3に記載された発明の「コネクタ42」、「キャビティ16及びクリップ受け開口部50」は、それぞれ特許請求の範囲の第1項に記載された発明の「接触装置」、「位置決め部材」に相当するから、上記(c)の相違点における特許請求の範囲の第1項に記載された発明の構成は上記刊行物3に記載されていると認められる。そして、刊行物3に記載された発明は、特許請求の範囲の第1項に記載された発明及び刊行物1に記載された発明と技術分野が同じものであるから、刊行物3に記載された上記構成を、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
以上から、上記相違点(a)〜(c)における特許請求の範囲の第1項に記載された発明の構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
そして、特許請求の範囲の第1項に記載された発明の作用効果は、刊行物1乃至3から予測できる程度のものであって格別なものとは認められない。
したがって、特許請求の範囲の第1項に記載された発明は、上記刊行物1乃至3にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件特許請求の範囲の第2項に記載された発明についての対比・判断
本件特許請求の範囲の第2項に記載された発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1に記載された「電動機部14」、「圧縮機部16」、「上部外殻24及び下部外殻20」、「プラグ38、40、42」、「絶縁ハウジング56」、「クリップ48、50、52」、「保護装置74」、「複数のプラグを保持するためのクリップ48、50、52」、「導電性支持片72」、「金属容器82」、「ピン96」は、それぞれ特許請求の範囲の第2項に記載された発明の「電動機」、「圧縮機」、「密閉容器」、「リードピン」、「クラスタブロック」、「接触装置」、「プロテクタ」、「複数のリードピンを保持するための複数の弾性接触部」、「延在部」、「第1の端子部」、「第2の端子部」に相当する。
したがって、両者は、
「(イ)電動機と、電動機によって駆動される圧縮機とを含む密閉容器と、(ロ)上記密閉容器に取り付けられ、上記密閉容器内に複数の導電性のリードピンを提供する端子部と、(ハ)上記密閉容器内に上記端子部と対向するように配置され、上記電動機の巻線と上記端子部間に電気的な接続を提供するためのクラスタブロックとを有し、上記クラスタブロックは、複数の導電性の接触装置と、少なくとも上記密閉容器内の熱に応答可能な熱応答性スイッチを含むプロテクタとを有し、上記複数の導電性の接触装置は、上記複数のリードピンを保持するための複数の弾性接触部からなり、上記複数の接触装置の少なくとも1つから延在する延在部を有し、該延在部によって上記プロテクタの一部を密閉容器内に露出可能となる位置に上記プロテクタを配し、上記プロテクタの第1の端子部が上記延在部に電気的に接続され、第2の端子部が上記電動機の所定の巻線に電気的に接続されている密閉形電動圧縮機」
の点で一致するものの、
(a)特許請求の範囲の第2項に記載された発明は、密閉容器内に冷却流体が充填されており、密閉容器内の冷却流体の熱に応答可能なプロテクタの少なくともその一部を冷却流体に露出可能としているのに対し、刊行物1に記載された発明は、密閉容器内に冷却流体が充填されているか否か明示されておらず、密閉容器内の熱に応答可能なプロテクタの少なくともその一部を密閉容器内に露出可能としている点、
(b)特許請求の範囲の第2項に記載された発明は、クラスタブロックが、プロテクタを保持する保持部を有し、プロテクタがその保持部によって保持されているのに対し、刊行物1に記載された発明は、クラスタブロックが、プロテクタを保持する保持部を有していない点、
(d)特許請求の範囲の第2項に記載された発明は、接触装置が接触アームを有し、延在部を接触装置の接触アームから延在させているのに対し、刊行物1に記載された発明は、接触装置が接触アームを有しておらず、延在部を接触装置の弾性接触部から延在させている点、
で両者は相違する。
以下、上記相違点について検討する。
上記相違点(a)、(b)についての判断は、上記(1)に示したとおり。
次に、上記(d)の相違点について検討すると、刊行物3に記載された発明の「コネクタ42」、「クリップ部44」、「金輪部46及び中間ウェブ部48」は、それぞれ特許請求の範囲の第2項に記載された発明の「接触装置」、「弾性接触部」、「接触アーム」に相当するから、上記(d)の相違点における特許請求の範囲の第2項に記載された発明の「接触装置が接触アームを有する」点は上記刊行物3に記載されていると認められる。そして、刊行物3に記載された発明は、特許請求の範囲の第2項に記載された発明及び刊行物1に記載された発明と技術分野が同じでものあるから、刊行物3に記載された上記構成を、刊行物1に記載された発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。さらに、上記(d)の相違点における特許請求の範囲の第2項に記載された発明の「延在部を接触装置の接触アームから延在させている」点は、延在部を接触装置の弾性接触部から延在するか、接触装置の接触アームから延在するかは、どちらも延在部を接触装置から延在し、その奏する作用効果に格別な差異があるものとは認められず、この点は当業者が必要に応じ適宜選択し得ることであるから、単なる設計的事項にすぎない。
以上から、上記相違点(a)、(b)、(d)における特許請求の範囲の第2項に記載された発明の構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
そして、特許請求の範囲の第2項に記載された発明の作用効果は、刊行物1乃至3から予測できる程度のものであって格別なものとは認められない。
したがって、特許請求の範囲の第2項に記載された発明は、上記刊行物1乃至3にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された発明は上記引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許請求の範囲の第1項、第2項に記載された発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-03-07 
出願番号 特願昭61-141211
審決分類 P 1 651・ 121- Z (F04C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 石橋 和夫  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 清水 信行
田村 嘉章
登録日 1998-02-20 
登録番号 特許第2748314号(P2748314)
権利者 テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
発明の名称 密閉形電動圧縮機  
代理人 佐藤 強  
代理人 浅村 皓  
代理人 浅村 肇  
代理人 村田 司朗  

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