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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1043950
審判番号 審判1999-12065  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-29 
確定日 2001-08-15 
事件の表示 平成 7年特許願第127138号「画像形成装置、画像形成方法、画像処理装置および画像処理方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年11月12日出願公開、特開平 8-295066]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年4月27日に出願されたものであって、その請求項1乃至15に係る発明は、平成10年12月28日付け手続補正書及び平成13年2月19日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、本願発明という)は次のとおりである。
「画像処理部で生成された画素データに基づいて画像形成部で記録媒体に画像形成する画像形成装置であって、前記画像形成部のステータスを監視する監視手段と、前記画像形成部のステータスの種類を指定するコマンドを前記画像処理部から前記画像形成部に送出する送出手段と、前記コマンドにより指定された種類のステータスに変化があった場合、ステータスの変化があったことを前記画像形成部から前記画像処理部に通知する通知手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」
なお、本願については、平成11年8月30日付けの手続補正がされたが、これは、平成12年12月1日付けの補正の却下の決定により却下された。
2.引用例
これに対して、当審における拒絶の理由で引用した特開平2-231178号公報(以下「引用例」という。)には、
(イ)「ホストシステムより文字情報あるいは画像情報を受けて画像イメージ情報を生成する画像処理装置と、この画像処理装置から前記画像イメージ情報を受けて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置と、・・・それらをインタフエースを介して接続してなる画像形成システムにおいて、・・・前記画像形成装置又は付加装置に状態の変化が発生した時に、それを非同期メッセージとして前記画像処理装置へ通知する状態変化通知手段を備えたことを特徴とする画像形成システム」(第1頁左下欄第5〜19行、特許請求の範囲の請求項1)、
(ロ)「以下、この発明をレーザプリンタシステムに適用した実施例について説明する。・・・このレーザプリンタシステムは、ホストシステム1と、コントローラ2とプリントエンジン(以下単に「エンジン」と称す)3からなる画像形成装置本体であるプリンタ本体4と、・・・レーザプリンタ・ビデオ・インターフエース(以下「LPVI」と略称する)・・・とによつて構成されている。」(第6頁左下欄第2〜18行)、
(ハ)「コントローラ2は、ホストシステム1から文字情報や画像情報を受けて、プリント用紙1ページ分ずつの画像イメージ情報(ビデオデータ)を生成する画像処理装置である。エンジン3は、コントローラ2により生成された画像イメージ情報を用紙にプリントする画像形成装置である。」(第6頁右下欄第3〜9行)、
(ニ)「次に、コントローラとプリントエンジンとの間の通信について説明する。まず、コントローラとプリントエンジン間の通信条件は次のとおりである。1.インタフエース:非同期シリアルI/F・・・コントローラとプリントエンジン間の通信は前述したようにLPVIを介して、4種類の信号/PETXD,/PERXD,・・・によつてなされる。これらのインタフエース用の信号については先に簡単に説明したが、ここでもう少し詳しく説明する。(1)/PERXD この信号は、コントローラからプリントエンジンへのコマンドを送るためのシリアル通信の受信データ信号ラインである。(2)/PETXD この信号は、プリントエンジンからコントローラへレスポンス及びイベントレポートを送るシリアル通信の送信データ信号ラインである。」(第11頁右下欄第6行〜第12頁左上欄第8行)、
(ホ)「以下、この実施例によるこの発明の特徴とする機能について詳述する。この実施例によれば、プリンタシステム(エンジン+オプシヨンユニット)に状態の変化が発生すると、エンジンはそれを非同期メッセージであるイベントレポートによってコントローラへ通知することができる。そのため、コントローラがエンジンに非同期メツセージの送信可否を設定する方法は、第10図に示したLPVIの/PERXD信号により、第4図等に示したコントローラ2からエンジン3に非同期メッセージ(イベントレポート)送信可否設定用のコマンド、すなわち第26図(A)に示すように[argument+’ETB’]からなるコマンド“イベントレポート イネーブル”を送る。・・・この‘ETB’コマンドは、エンジンが各種のイベントレポートを発信することをイベントレポート番号毎にそれぞれ可能あるいは不能にするためのコマンドである。フォーマット:“アーギュメント”+‘ETB’<17hex> アーギュメント;b7:“1” b6〜b2:イベントレポート番号 b1,b0:イベント可能条件・・・ここで、エンジンに発生し得る状態変化を、第26図(A)に示すように12種類に分け、その認識番号としてイベントレポート番号を付加し、それをこのコマンドのアーギュメントのビットb6〜b2に割り当てる。そして、送信可能に指定するか送信不能に指定するかの指示をビットb1〜b0に割り当てる。このうち、イベントレポート#4については送信可否を次の4つのレベルに分ける。・・・“1 0”;現在選択されている装置に発生した全ての状態又は、現在選択されていない装置に発生したサービスマンコールのエラー状態を送る。・・・これらのアーギユメントを使つて‘ETB’コマンドをコントローラがエンジンに送信することにより、イベントレポートの送信可否を設定する。エンジン3に状態変化が発生した時、送信可と指定してあればその状態変化がエンジンから80Hex〜FFHexのコードがイベントレポートとしてとして/PETXD信号によりコントローラ2に送られる。このイベントレポートのフオーマツトは第14図(e)に示したよう8ビツトで構成されている。ここでイベントレポートについてさらに詳細に説明する。エンジンシステムは、イベントレポート可能条件が‘ETB’コマンドでコントローラにより指定されている間、エンジンシステム内で生じた全ての状態変化(イベント)をイベントレポートとしてイベントバツフア内にスタツクする。・・・次に、各イベントレポート番号毎に説明する。 A.イベントレポート#0(給紙・印刷イベント) このイベントレポートは、ペーパのフイードがスタートした時、又は、ペーパがレジスト位置でプリントの準備ができた時にコントローラに送られる。・・・B.イベントレポート#4(ジェネラルステータスグループコード)このイベントレポートは、エンジンシステム内のステータスが変化したときにコントローラに送られる。・・・C.イベントレポート#5,#6,#7,#8,#9 イベントレポート#5 インプットユニット#1ステータスグループコード イベントレポート#6 インプットユニット#2ステータスグループコード イベントレポート#7 両面ユニット#2ステータスグループコード イベントレポート#8 アウトプットユニット#1ステータスグループコード イベントレポート#9 アウトプットユニット#2ステータスグループコード これらのイベントレポートは、各ユニットの“ステータスグループコード”のレベルが変化したときに送られる。・・・D.イベントレポート#12(先頭ジャム ペーパID)このイベントレポートは、ジャム紙位置が固定された時点、すなわち“プリンタジェネラルステータス”の“ペーパジャムフィックスフラグ”が‘0’から‘1’に変化した時にコントローラに送られる。・・・E.イベントレポート#16(インプットトレイのペーパエンド)このイベントレポートは、システム内のいずれかのインプットトレイ状態が、ペーパが空の状態とペーパが存在する状態との間で変化したときにコントローラに送られる。・・・F.イベントレポート#20(アウトプットトレイのペーパ満杯)このイベントレポートは、システム内のいずれかのアウトプットトレイ状態が、ペーパが満杯の状態とペーパが満杯でない状態のと間で変化したときにコントローラに送られる。・・・G.イベントレポート#24(排出ペーパID)このイベントレポートは、プリントサイクルが完了して、1枚のペーパが、特定されたアウトプットトレイに完全に排出されたときにコントローラに送られる。・・・H.イベントレポート#28(コンフィギュレーション変更)このイベントレポートは、システムのコンフィギュレーション(有効な構成状態)が変化したときにコントローラに送られる。・・・また、コントローラ2がこのコマンドを送信する以前に、状態情報が反映している各装置(エンジン又は付加装置)の範囲を指定する“イベントレポートイネーブル”コマンド(アーギュメント+‘ETB’:アーギュメントで範囲を決定する)を/PERXD信号によりエンジン3に対して送っていれば、それによって指定された範囲内の装置に対する状態情報がコントローラ2へ返される。」(第20頁右下欄第3行〜第24頁左下欄第11行)
(ヘ)「また、画像形成装置又は付加装置に状態の変化が生じた時に、それを非同期メッセージとしてすぐに画像処理装置へ通知することができる。その際、その状態変化の種類をグループ分けして付加した認識番号によって指定して、どの状態変化が発生したらそれを画像処理装置へ通知するかを選択できるようにすれば、画像処理装置がすぐに知りたい情報のみを効率よく通知することができる。また、コントローラの種類や動作状態に応じて、状態変化の重要度と発生した装置により、必要なレベルの情報のみを効率よく通知することも可能である。」(第25頁左下欄第20行〜右下欄第11行)
と記載されている。
上記(イ)〜(ヘ)の記載を含む明細書及び図面の記載からみて、引用例には、
「画像処理装置(コントローラ2)で生成された画像イメージ情報を受けて画像形成装置(エンジン3)で記録媒体に画像形成する画像形成装置本体(プリンタ本体4)であって、前記画像形成装置の各種のイベントレポートを発信することをイベントレポート番号毎にそれぞれ可能あるいは不能にするためのコマンドをコントローラ2からエンジン3に送信する手段と、エンジン3に状態変化が発生した時、送信可と指定してあればその状態変化がイベントレポートとしてエンジンからコントローラに通知する通知手段とを有する画像形成装置本体、及び、該イベントレポートは、プリンタシステム(エンジン+オプシヨンユニット)の指定された範囲内の状態の変化が発生すると、エンジンがコントローラへ通知するもので、その状態変化を示すものであり、該イベントレポート番号が、プリンタシステムに発生し得る状態変化(イベントレポート)の種類に分けたグループの認識番号であること」
が記載されている。
3.対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「画像形成装置本体(プリンタ本体4)」、「画像処理装置(コントローラ2)」、「画像形成装置(エンジン3)」、及び「画像イメージ情報」はそれぞれ、本願発明の「画像形成装置」、「画像処理部」、「画像形成部」、及び「画素データ」に相当する。
引用例に記載された発明の「イベントレポート」は、プリンタシステムの指定された範囲内の状態変化を示すものであり、プリンタシステムの指定された範囲内の状態の具体例として、サービスマンコールのエラー状態が挙げられており、また、本願発明のステータスの具体例として、発明の詳細な説明にサービスコールが挙げられている(段落【0038】参照。)ことからみて、引用例に記載されたイベントレポートが示すプリンタシステムの指定された範囲内の状態は、本願発明の「ステータス」に相当しており、また、引用例に記載された「イベントレポート番号」は、上記プリンタシステムの指定された範囲内の状態変化の種類に分けたグループの認識番号であるから、引用例に記載された発明において、「イベントレポートを発信することをイベントレポート番号毎にそれぞれ可能あるいは不能にするためのコマンド」は、本願発明の「ステータスの種類を指定するコマンド」に相当している。
引用例に記載された発明の「エンジン3に状態変化が発生した時、送信可と指定してあればその状態変化がイベントレポートとしてエンジンからコントローラに通知する通知手段」は、本願発明の「コマンドにより指定された種類のステータスに変化があった場合、前記画像形成部から前記画像処理部に通知する通知手段」に対応する。
したがって、両者は、
「画像処理部で生成された画素データに基づいて画像形成部で記録媒体に画像形成する画像形成装置であって、前記画像形成部のステータスの種類を指定するコマンドを前記画像処理部から前記画像形成部に送出する送出手段と、前記コマンドにより指定された種類のステータスに変化があった場合、前記画像形成部から前記画像処理部に通知する通知手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」である点で一致し、以下の2点で、相違する。
[相違点]
A.本願発明が、「画像形成部のステータスを監視する監視手段」を有しているのに対し、引用例に記載された発明は、この点の記載がない点
B.ステータスに変化があった場合、画像形成部から画像処理部に通知されるものが、本願発明ではステータスの変化があったことであるのに対して、引用例に記載された発明では状態変化を示すイベントレポートである点
[相違点の検討]
上記相違点について検討する。
相違点Aについて
引用例に記載された発明は、プリンタシステムの指定された範囲内に状態変化が発生した時、その状態変化がイベントレポートとしてエンジンからコントローラに送られるものであるから、引用例には明記されていないものの、指定された範囲の状態を監視する監視手段を具備することは明らかであり、この点は実質的な相違点ではない。
相違点Bについて
引用例に記載された発明において、イベントレポートがコントローラ2へ通知されるのは、指定された範囲内の状態の変化があって始めて起こるものであることは明らかであって、その通知により、先ず変化があったことを認識できるのであり、かつ、例えば、処理部における単一のランプ等が点灯しているか消灯しているかによって各種の機器の状態変化を知ることのできるようなシステムにおいて、各種の機器の状態変化を処理部に通知する際に、その状態変化の内容ではなく、その通知する内容自体が何を意味するかを予め決めておいて、その状態変化があったことを通知するようにすることが慣用されていることを勘案すれば、引用例に記載された発明において、エンジン(画像形成部)から状態変化の内容に代えて、状態変化があったことを通知することも当業者が格別困難性を要せず想到し得ることであるから、この点は当業者が容易になし得た設計の変更である。
そして、本願発明の効果は、引用例に記載された発明及び慣用技術から、当業者であれば予測できることができる程度のものであって格別のものとはいえない。
なお、請求人は、「ステータスの変化があったことのみを画像形成部から画像処理部に通知することにより、本願の従来の技術や引用例の発明と比べ、画像形成部と画像処理部との間の通信処理にかかる負荷を一層低減することができる。」と主張するが、相違点Bについて検討したように、引用例に記載された発明におけるイベントレポートを通知する構成を、ステータスの変化のみを通知するような構成に置き換えることは容易に思いつくことであるし、情報が少なくなれば、通信処理にかかる負荷を低減することができることは、当然に予測できることであるから、この主張は採用できない。
また、請求人は、「コマンドでステータスの種類を指定できるようにすることで、例えば、コマンドによりミスプリントが指定されている場合、ステータスの変化の通知があっただけで、画像処理部はミスプリントが発生したことを知ることができ、画像形成部はミスプリントを示すイベントレポートを数ビット使用して通知する必要がなくなる。」と主張するが、コマンドでステータスの種類を指定できるようにする構成については、上述したように、引用例に記載された発明についても同様の構成が記載されており、引用例に記載された発明について、イベントレポートを通知する構成を、ステータスの変化があったことのみを通知する構成に置き換えた場合、ステータスの変化の通知があっただけで、画像処理部は、何が発生したのかを知ることができるのは当然に予測できたことであり、情報が少なくなるので、通知の際のビット数が少なくなることも当然であるから、この主張も採用できない。
4.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-30 
結審通知日 2001-06-08 
審決日 2001-06-21 
出願番号 特願平7-127138
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 番場 得造
渡辺 努
発明の名称 画像形成装置、画像形成方法、画像処理装置および画像処理方法  
代理人 渡部 敏彦  

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