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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01J |
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管理番号 | 1044121 |
審判番号 | 不服2000-61 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-01-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-01-05 |
確定日 | 2001-09-10 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第111560号「シャドウマスク」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年 1月14日出願公開、特開平 4- 10336、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成2年4月26日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年7月27日付け及び平成12年2月1日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「カラー受像管に用いるシャドウマスク用板材が、下記の表面粗さRa及び表面粗さの突起状態Rskを有することを特徴とするシャドウマスク: Ra :0.55〜0.62μm Rsk:+0.7 以上 ここで、 Raは、JIS B0601において規定されている表面粗さ、 Rskは、平均線に対しての振幅分布曲線の相対性を示す値で、次式で示される突起状態、 【数1】 i=n×j Rsk=(1/n×jRq3 ){Σ Y(i)3 } i=1 Y(i) は、断面曲線の基準長さにおいて、平均線をX軸、縦倍率の方向をY軸としたときの粗さ曲線、 Rqは、二乗平均粗さ、 n=230、 j=2〜5、を表す。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭62-238003号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。 「フラットマスクの多数枚を積み重ねて焼鈍処理する工程を含むシャドウマスクの製造方法に供する該フラットマスクと実質上同等の厚みをもつ冷延鋼帯素材であって、その表面粗度(Ra)が0.2〜2.0μmの範囲で且つ粗さ曲線の高さ方向の片寄り指標であるスキューネス(Rsk)が0以上であるシャドウマスク用素材。」(特許請求の範囲) 「本発明は、カラーテレビブラウン管のシャドウマスクを製造するためのシャドウマスク用素材およびその製造法に関する。より詳しくは、穿孔処理されたフラットマスクを焼鈍する時の密着焼付を防止したシャドウマスク用素材およびその製造法に関する。」(1頁右下欄3〜8行) 「[発明が解決しようとする問題点」 フォトエッチング穿孔処理後においてフラットマスクを焼鈍する工程(・・・)をもつシャドウマスクの製造法(・・・)によると、その焼鈍時に密着焼付の問題を生ずる。・・・本発明はこの問題を解決できるシャドウマスク用素材の提供を目的とする。 [問題点を解決する手段] 前記目的を達成するための本発明のシャドウマスク用素材は、表面粗度(Ra)が0.2〜2.0μmの範囲で且つ粗さ曲線の高さ方向の片寄り指標であるスキューネス(Rsk)が0以上であることを特徴とする。」(2頁左上欄18行〜左下欄2行) 「ここで表面粗度(Ra)およびスキューネス(Rsk)は次のように定義される。・・・このRskによると、たとえRaやRqが同じ値の表面でも形状の非対称を比較して区別することができ、山の多いプロフィールであればRskの値は正の値となり、谷の多いプロフィールであればRskの値は負となる。」(2頁左下欄17行〜3頁左上欄9行) 「比較例(1)は・・・表面粗度(Ra)は0.2〜2.0μmの範囲にあるが、スキューネス(Rsk)が-0.3であった。・・・かなり振動を加えないと剥離しない程度の密着が生じた。」(3頁左下欄14行〜右下欄3行) 「比較例(2)は・・・表面粗度(Ra)は比較例(1)と同様でありスキューネス(Rsk)は-0.1であり、比較例(1)と同様の条件での焼鈍において密着が生じた。このことから粗度プロフィールにおける波長の長短は密着焼付において大きな有意差を生じさせないことがわかる。」(3頁右下欄4〜14行) 「実施例(3)は・・・表面粗度は比較例(1)や(2)と同等であるが、スキューネス(Rsk)が0.2であった。この場合には、比較例と同じ条件の焼鈍処理において全く密着が生じなかった。」(3頁右下欄15行〜4頁左上欄4行) 「このように、フラットマスク焼鈍時の密着焼付を防止するには、・・・製品素材のRskが0以上の正の値となるようにすることが重要であることが判明した。なお、表面粗度(Ra)については、Raが0.2μm未満では凹凸が小さいために粗度の断面形状を改善してもフラットマスク同士の接触面積が大きくなって焼鈍密着の防止に対してRskが有効に働かなくなる。一方Raが2.0μmを超えるような大きな値となると、エッチング穿孔処理時において孔形状が悪くなるので、Raは0.2〜2.0μmの範囲とする必要がある。」(4頁左上欄5〜18行) 同じく引用された特開昭62-253783号公報(以下、「引用例2」という)には、次の事項が図面とともに記載されている。 「シャドウマスク用軟鋼薄板材に電子ビーム透過用開孔部を形成するに際し、予め前記薄板材を下記の表面粗さRa及び表面粗さの凸凹の平均間隔Smにし、次にこの薄板材にマスクパターンを介して露光法によりレジスト膜を選択的に形成し、次いでエッチングにより開孔部を形成することを特徴とするシャドウマスク用薄板材のエッチングによる穿孔方法 Ra 0.2〜0.7μm Sm 100μm以下 (但し、RaはJISB0601の表面粗さ、Smは基準長さ内における表面粗さを示す断面曲線の凸凹の間隔の平均値である)。」(特許請求の範囲) 「本発明はカラー受像管に用いるシャドウマスク用軟鋼薄板材のエッチングによる穿孔方法に関する。」(1頁右下欄15〜17行) 「本発明は・・・シャドウマスクの孔径や孔形状のばらつきを小さくし、むらの発生しない高品質のシャドウマスク用薄板材のエッチング方法を提供するものである。」(2頁右上欄4〜7行) 「まず、表面粗さであるが、表面粗さはレジストの密着性に大きく影響を与える。レジストの密着性が適切でないと孔形状の乱れがおこり、開孔の精度が低下する。特に、高精細度マスクではレジストの密着性のわずかな差による孔形状の乱れが致命的な欠陥となる。そこで、表面粗さは次のように厳しく規定する必要がある。表面粗さRaが0.2μmより小さいとレジストの密着性が弱すぎるためサイドエッチングが進みすぎ、精度良く開孔できない。また、0.7μmより大きいと密着性が強すぎるため現象後に穿孔されるべき部分にもレジストが残存することがあり好ましくない。また、生産性を高めるためにはエッチング温度を高くしなければならないが、その場合、腐食反応が激しくなるため、より一層表面粗さを厳しくコントロールして良好なレジストの密着性を得る必要がある。Raのさらに好ましい範囲は0.4超〜0.6μmである。」(2頁左下欄17行〜右下欄14行) 3.対比・判断 本願発明を上記引用例1、2に記載された発明と対比すると、引用例2には、Rskに関する記載がない。また、引用例1には、焼鈍密着を防止するためにRskを0以上とする点が記載されているものの、Rskの値とネガパターンの密着性及び密着吸引時間との関連について記載されていない。これに対して、本願発明は、焼鈍密着防止に加えて、さらに、密着吸引時間を短縮してネガパターンとの密着性を向上させるために、Rskを+0.7以上としたものである。したがって、本願発明においては、Rskの数値範囲を+0.7以上としたことにより、密着吸引時間が短縮されマスクパターンとの密着性が向上するという点で臨界的意義が認められ、引用例1、2には、この点が記載されておらず、示唆もされていない。 そして、本願発明は、明細書記載の顕著な効果を奏するものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
審決日 | 2001-08-08 |
出願番号 | 特願平2-111560 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01J)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 江成 克己、榎本 吉孝 |
特許庁審判長 |
高瀬 浩一 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 山川 雅也 |
発明の名称 | シャドウマスク |
代理人 | 蛭川 昌信 |
代理人 | 白井 博樹 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 内田 亘彦 |