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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1044413 |
審判番号 | 審判1997-19683 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-03-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-11-25 |
確定日 | 2001-09-06 |
事件の表示 | 平成4年特許願第44874号「分散多重処理データ・システムにおけるユーザ保全キーのキーリング・メタファ」拒絶査定に対する審判事件[平成5年3月12日出願公開、特開平5-61833]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯、本願発明 本願は、平成4年3月2日(パリ条約による優先権主張1991年3月1日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年12月11日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「データ処理システムのユーザによって利用可能で且つ保護されたプロセスの利用を保証するための保護機構コード(ロック)を、前記ユーザが前記保護されたプロセスの利用を要求するときに前記保護されたプロセスに提示される利用許可コード(キー)と関連付けるためのコンピュータ実施方法であって、前記システムのアクティブ記憶装置が、各アクティブ・ユーザに対して許可されたキーの夫々のリストを保持し、該リストは、前記アクティブ記憶装置において、前記ユーザと関連付けられた一意の識別子によって指標付けられている方法において、前記アクティブ・ユーザの一人が前記保護されたプロセスの内の1つのプロセスの利用を要求するとき、前記システム内で実行中の第1のプロセスが、前記ユーザの識別子を前記要求に添付し、該要求を、識別子と共に前記1つの保護されたプロセスに送り、第2のプロセスが、前記識別子の受け取りに応答して、前記アクティブ記憶装置にアクセスし、前記アクティブ記憶装置から前記の夫々のキー・リストを検索し、前記第2のプロセスが、前記の検索されたキー・リスト内の個々のキーと前記1つのプロセスのロックとの比較を実行して、前記検索されたキー・リストの内のどれかのキーが前記1つのプロセスのロックと一致するかどうかを決定し、もし前記比較が、比較されたキー間の一致を決定したときは、前記1つのプロセスを実行に移し、もし前記比較が、比較されたキー間の不一致を決定したときは、前記1つのプロセスを実行しない、ことを特徴とするコンピュータ実施方法。」 2.引用例記載事項 これに対して、当審における拒絶の理由に引用した特開昭63-226731号公報(以下、「引用例」という。)の、「仮想記憶上に操作権情報と操作権情報に対応して入力可能なコマンドの情報を管理するコンソール操作権制御手段5」(第2頁左上欄第18行〜同頁右上欄第1行)なる記載及び「操作員がコンソール装置3より操作権を入力すると、制御がコンソール装置制御手段2からコンソール入力制御手段1に渡される。コンソール入力制御手段1はコンソール装置3より入力された操作権情報とコンソール操作権制御手段5で管理している操作権情報をチェックし、操作権情報が一致すればコンソール入力の許可をコンソール装置3に行い、コンソール制御3からのコマンド入力が可能となる。ここで、操作権情報が一致しなければ、コンソール入力制御手段1は、コンソール装置3の入力を許可しないエラーメッセージをコンソール装置3に出力してコンソール操作権制御の処理を終了する。つづいて、操作員がコマンド入力が可能となったコンソール装置3よりコンピュータシステムを停止させるコマンド“A”を入力すると、制御がコンソール装置制御手段2からコンソール入力制御手段1に渡される。コンソール入力制御手段1は入力を許可したコンソール装置3の入力可能コマンド情報をコンソール操作権制御手段5より得、コンソール装置3より入力されたコマンド“A”とをチェックし、コマンド名が一致しなければコマンド“A”が不正コマンドであることを示すエラーメッセージをコンソール装置3に出力してコンソール操作権制御の処理を終了し、コマンド名が一致した場合は、コマンド“A”処理プログラム8に制御を渡す。」(第2頁左下欄第1行〜同頁右下欄第7行)なる記載並びに第1図からみて、引用例には、 操作員がコンソール装置3から入力した操作権情報をコンソール操作権制御手段5が管理している操作権情報と照合し、一致すればコンソール入力の許可をコンソール装置3に行ない、続いて操作員がコンソール装置3から入力したコマンドを、コンソール操作権制御手段5が仮想記憶上に管理している操作権情報に対する入力可能なコマンドのリストと照合し、コマンド名が一致すれば該コマンドに対応する処理プログラム8に制御を渡し、不一致の場合には処理プログラム8に制御を渡さない、コンソール入力制御手段1を有するコンピュータシステム が記載されていると認められる。 3.本願発明と引用例記載発明との対比 本願発明(以下、「前者」という。)と引用例記載発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の備える機能からみて、後者もコンピュータ実施方法として捉えられ、 (イ)後者の「コンピュータシステム」は、前者の「データ処理システム」に相当し、 (ロ)後者のコンソール装置3のコンソール入力の許可を与えられた「操作員」は、前者の「アクティブ・ユーザ」に相当し、 (ハ)後者の「処理プログラム8」は、操作権のない操作員による実行から保護されており、前者の「保護されたプロセス」に相当している。 次に、以下の事項は、それぞれ次のような共通点を有している。 (イ)後者のリスト中の「コマンド」及び「入力したコマンド」が、前者の「利用許可コード(キー)」及び「保護機構コード(ロック)」と同様に、コードで記述されていることは明らかであり、 (ロ)後者の「操作権情報に対する入力可能なコマンドのリスト」は、仮想記憶上に管理されているのであるから、前者の「キー・リスト」と同様に、記憶装置に保持されており、 (ハ)後者の「操作権情報」は、操作員と関連するから、「ユーザと関連付けられた識別子」として、前者の「識別子」と共通している。 よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「データ処理システムの記憶装置が、各アクティブ・ユーザに対して許可されたプロセスに対応するコードの夫々のリストを保持し、該リストは、前記記憶装置において、前記ユーザと関連付けられた識別子によって指標付けられているコンピュータ実施方法において、前記アクティブ・ユーザの一人が保護されたプロセスの内の1つのプロセスの利用を要求するとき、前記識別子を受け取り、前記記憶装置にアクセスし、前記記憶装置から前記の夫々のリストを検索し、前記の検索されたリスト内の個々のコードと前記要求された1つのプロセスに対応するコードとの比較を実行して、前記検索されたリストの中のどれかのコードが前記要求された1つのプロセスに対応するコードと一致するかどうかを決定し、もし前記比較が、一致を決定したときは、前記1つのプロセスを実行に移し、不一致を決定したときは、前記1つのプロセスを実行しない、コンピュータ実施方法」である点。 [相違点] (1)前者において、各アクティブ・ユーザに対して許可されたキーの夫々のリストを保持する記憶装置が「アクティブ記憶装置」であるのに対して、後者において、操作権情報に対する入力可能なコマンドのリストを記憶する記憶装置が「アクティブ記憶装置」であることは記載されていない点。 (2)前者において、各アクティブ・ユーザに対して許可されたキーの夫々のリストが「ユーザと関連付けられた一意の識別子によって指標付けられている」のに対して、後者において、操作権情報に対する入力可能なコマンドのリストはユーザと関連付けられた識別子によって指標付けられているが、該識別子が「一意の識別子」であるかは不明である点。 (3)請求項1の「比較されたキー間」に関する記載として、本願明細書の段落番号36には「ブロック63は、プロセスが「ロック」されたかどうかを調べる。もしそうであれば、ブロック64がその時の要求者のユーザID(要求メッセージを伴う)により割付けられたキーリスト38をアクセスして、この要求者が使用を許されたキーのリストを検索する。ブロック65は、このように検索されたキーのいずれか(先に述べたように4文字のストリング)がその時のロックにより要求されたキーと整合するかどうかを調べ、もしそうであれば、要求された処理が行われ、もしそうでなければ、この処理は否定される。」と記載されていることから、キー間の意味を検索されたキーとロックにより要求されたキーとの間と解した。 前者において、アクティブ記憶装置に保持されるのはキー(ユーザーが保護されたプロセスの利用を要求するときに保護されたプロセスに提示される利用許可コード)のリストであり、アクティブ記憶装置から検索されたキー・リスト内の個々のキーと利用を要求された1つの保護されたプロセスのロック(保護されたプロセスの利用を保証するための保護機構コード)とを比較して、1つの保護されたプロセスを実行に移すか否かを決めているのに対して、後者において、記憶装置が保持するのは操作権情報に対する入力可能なコマンドのリストであり、「キー」のリストではなく、上記リスト中のコマンドと入力されたコマンドとを比較して、コマンドに対応する処理プログラム8を実行に移すか否かを決めており、「キー」と「ロック」とを比較するものではない点。 (4)前者は、システム内で実行中の第1のプロセスが、1つの保護されたプロセスの利用の要求をユーザの識別子と共に要求された1つの保護されたプロセスに送り、識別子の受け取りに応答して、第2のプロセスが、リストの検索とキーとロックとの比較と1つの保護されたプロセスを実行に移すか否かの決定を行っており、検索されたリスト内の個々の利用許可コードは保護されたプロセスに提示されるのに対して、後者は、コンソール入力制御手段1が、操作員のコマンド入力に応答して、コンソール操作権制御手段5を介してリストを検索し、コマンドの比較とコマンドに対応する処理プログラム8を実行に移すか否かの決定を行っており、処理プログラム8の利用の要求を操作権情報と共に要求された処理プログラム8に送るものではなく、検索されたリスト内の個々のコードが処理プログラム8に提示されるものではない点。 4.当審の判断 相違点(1)について。 コンピュータシステムにおいて、データをアクセス可能状態にある記憶装置に保持することが慣用手段であるから、後者の記憶装置をアクティブ記憶装置とすることは、当業者が格別に思考することなくなし得たことである。 相違点(2)について。 コンピュータシステムにおいて、利用者毎に利用できる業務を設定しておくことが周知であるから(例えば特開昭64-70860号公報第2頁右上欄第14行〜同頁左下欄第12行参照。)、前者のユーザと関連付けられた識別子をユーザと関連付けられた一意の識別子とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。 相違点(3)について。 操作者と扱うことのできる業務とを対応付けるのに、操作者と扱うことのできる業務とを直接対応付けずに、各業務に各々固有の管理番号を設け、操作者と扱うことのできる業務に固有の管理番号とを対応付けることが周知であるから(例えば特開昭63-223868号公報、特開平1-296367号公報参照。)、後者において、各処理プログラム8に各々固有なコードを設け、各操作権情報に対して扱うことのできる処理プログラム8に固有なコードのリストを保持して、アクティブ・ユーザの一人が1つの処理プログラム8の利用を要求するときに、アクティブ・ユーザの操作権情報に対するリスト内の個々のコード(ユーザーが保護されたプロセスの利用を要求するときに提示される利用許可コードとして機能する。)と要求された処理プログラム8に固有のコード(保護されたプロセスの利用を保証するための保護機構コードとして機能する。)とを比較して、処理プログラム8を実行に移すか否かを決めるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 相違点(4)について。 コンピュータシステムにおいて、実行したいプロセスに管理機能を持たせることが周知であるから、後者において、要求された処理プログラム8に、要求された処理の他に、リストの検索と比較と要求された処理を実行に移すかの決定を行う機能を持たせて、コンソール入力制御手段1が、第1のプロセスとして、ユーザによる利用の要求を操作権情報と共に要求された処理プログラム8に送り、その受け取りに応答して、要求された処理プログラム8が、第2のプロセスとして、リストの検索と比較と要求された処理を実行に移すか否かの決定を行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。要求された処理プログラム8がリストの検索と比較を行う場合に、リストの検索結果が比較のために処理プログラム8自身に提示されることは明らかである。 そして、本願発明の効果は、引用例に記載された発明の効果から予測できる程度のものである。 5.まとめ 以上のとおりであるので、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-15 |
結審通知日 | 2001-03-27 |
審決日 | 2001-04-09 |
出願番号 | 特願平4-44874 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 徳永 民雄、江口 能弘 |
特許庁審判長 |
佐藤 荘助 |
特許庁審判官 |
山本 穂積 村上 友幸 |
発明の名称 | 分散多重処理データ・システムにおけるユーザ保全キーのキーリング・メタファ |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 今井 庄亮 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 栗田 忠彦 |