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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1044582
異議申立番号 異議2000-72811  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-17 
確定日 2001-03-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3000885号「スイッチ装置」の請求項1乃至2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3000885号の請求項1乃至2に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件特許第3000885号(以下「本件」という。)は、平成7年4月28日に出願されたものであって、平成11年11月12日に設定登録がされ、同12年1月17日に特許公報に掲載されたものであり、これに対して、特許異議申立人本吉広正より平成12年7月17日付けで、請求項1及び請求項2(全請求項)の特許に対して特許異議の申立てがされ、その後、当審の取消理由通知に対して、平成13年3月7日付け訂正請求書により訂正請求がされたものである。
〔2〕訂正事項と訂正の適否についての判断
1.本件訂正請求は、以下の事項について明細書の記載を訂正するものである。
(1)訂正事項a
請求項1及び請求項2を下記のように訂正する。
「請求項1
プリント基板上に互いに向き合うように対型接点パターンを複数形成し、このパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられ押し下げ時に前記対型固定接点に当接してその対となるパターン同士を導通させる可動接点とを有するスイッチ装置において、前記可動接点は中央部の第1の可動接点と、その第1の可動接点の外側に少なくとも1部がドーナツ状の第2の可動接点を有し、前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成することを特徴とするスイッチ装置。
請求項2
プリント基板上に接点パターンを形成しこの接点パターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、該可動接点を上記固定接点に当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置において、
上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、
該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、
上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、
該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、
前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、
前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、
前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とするスイッチ装置。」
と訂正する。
(2)訂正事項b
(i)発明の詳細な説明の段落番号0027の第10〜11行目(本件特許号公報第7欄39〜40行)の「前記固定接点パターンは第1の可動接点が当接する位置から放射状に形成されたこと」を、「前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成すること」と訂正する。
(ii)同段落番号0028の第6〜26行(同第7欄第47行〜第8欄第17行)の「上記固定接点パターンは、・・・ことを特徴とする鍵盤装置用スイッチ装置を提供する。」を、「上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とする鍵盤装置用スイッチ装置を提供する。」と訂正する。

2.そこで、訂正事項について検討すると、訂正事項aは、放射状に形成された固定接点が共通接点パターンを有するものである旨限定(請求項1)するとともに、第1固定接点対が内ペアで、第2固定接点対が外ペアとして、固定接点が内側から順番に第1固定接点対を構成する内パターン、共通パターン、第2固定接点対を構成する外パターンとなるように順に配置されたものである旨限定(請求項2)するものであって、訂正事項bは、訂正された特許請求の範囲の記載と整合させたものであるから、これらの訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書第1号にいう特許請求の範囲の減縮に該当し、また、本件訂正事項は、全体として願書に添付した明細書及び図面の範囲においてされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないと認められるので、同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定にも適合する。
したがって、本件訂正はこれを認める。

〔3〕特許異議申立てについての判断
1.本件発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された以下のものにある。
「請求項1
プリント基板上に互いに向き合うように対型接点パターンを複数形成し、このパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられ押し下げ時に前記対型固定接点に当接してその対となるパターン同士を導通させる可動接点とを有するスイッチ装置において、前記可動接点は中央部の第1の可動接点と、その第1の可動接点の外側に少なくとも1部がドーナツ状の第2の可動接点を有し、前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成することを特徴とするスイッチ装置。
請求項2
プリント基板上に接点パターンを形成しこの接点パターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、該可動接点を上記固定接点当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置において、
上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、
該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、
上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、
該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、
前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、
前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、
前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とするスイッチ装置。」

3.これに対して、特許異議申立人本吉広正の申立ての理由は、本件請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反する、というにあるものと認められる。
(証拠方法)
甲第1号証:特開平6-203700号公報
甲第2号証:実願昭56-186292号(実開昭58-91793号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願平2-125147号(実開平4-85538号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特公昭63-35993号公報
甲第5号証:特公昭57-104995号公報
そこで、異議申立人の提出した甲号各証について検討する。
まず、甲第1号証には、電子楽器の接点装置が記載されているが、請求項1の、「プリント基板上に互いに向き合うように対型接点パターンを複数形成し、このパターンにより構成された固定接点と、固定接点の上方にこれと対向して設けられ押し下げ時に対型固定接点に当接してその対となるパターン同士を導通させる可動接点とを有するスイッチ装置において、可動接点は中央部の第1の可動接点と、その第1の可動接点の外側に少なくとも1部がドーナツ状の第2の可動接点を有し、固定接点は、第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成すること」、請求項2の、「プリント基板上に接点パターンを形成しこの接点パターンにより構成された固定接点と、固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、可動接点を固定接点に当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置において、固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、可動接点は各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、外ペアの接点閉成部は、内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいこと」に関する記載は、何ら見あたらない。
次に甲第2号証には、電子楽器の鍵盤スイッチが記載されているが、甲第2号証にも上述の請求項1及び請求項2の主要な構成に関しては何ら記載されていない。
さらに、甲第3号証乃至甲第5号証は、本件発明の構成の一部である、固定接点パターンを放射状に形成する点、及び、第1固定接点対と第2固定接点対の各々のパターンを相互に入り組んで形成される点が本件特許の出願前の周知技術であることを立証するために提出されたものであり、もとより、甲第3号証乃至甲第5号証には上述の請求項1及び請求項2の主要な構成に関しては何ら記載されていない。
そうすると、甲号各証を併せもってしても本件発明に到達することには到底ならない。

4.以上のとおりであるから、異議申立人の主張する申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スイッチ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上に互いに向き合うように対型接点パターンを複数形成し、このパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられ押し下げ時に前記対型固定接点に当接してその対となるパターン同士を導通させる可動接点とを有するスイッチ装置において、前記可動接点は中央部の第1の可動接点と、その第1の可動接点の外側に少なくとも1部がドーナツ状の第2の可動接点を有し、前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成することを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
プリント基板上に接点パターンを形成しこのパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、該可動接点を上記固定接点に当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置において、
上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、
該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、
上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に置して形成し、
該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、
前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、
前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、
前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とするスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はスイッチ装置に関し、特に1つのスイッチ装置内で複数の接点の対を別個にあるいは所定関係をもって閉成するスイッチ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から多種多様のスイッチが存在しているが、電子機器に使用されるスイッチ装置においてある種の関連をもちながら複数のスイッチが接近して配設される場合がある。
【0003】
例えば、ある数値を入力する場合、テンキーの他にアップダウンの2キーで入力する場合があり、この場合は、この2キーはなるべく接近して配設するのが合理的であり、従来から接近配置されている。腕時計等、比較的小さな表示可能面積しかもたない場合、さらに接近配置させたいが、従来ではおのずと限界があった。
【0004】
また、電子楽器の分野で複数メイク(例えば2メイク)式のタッチレスポンススイッチが古くから存在している。このスイッチは、各鍵の押下によって、押鍵スピードに対応して時間差を生じさせながら順次メイクさせるものである。
【0005】
このようなスイッチにおいて、複数メイクスイッチは必然的に接近配置させられるもので、なおかつラフに製造組立てても、一方の可動接点が他方の接点に影響を与えないようにすることが要求される。
【0006】
機能的にみて前者のスイッチ構造は、対スイッチが個別に任意のタイミングでオンオフされるものであり、後者のスイッチ構造は鍵の押下に連動して所定関係(第1スイッチが先で、第2スイッチが後にメイクする)をもちながらオンオフされる。
【0007】
いずれの場合でも、小型化にしつつラフ製作可能という技術の向上という範疇では、上記所定関係のあるなしにかかわらず、1つの従来技術を例示しつつ本発明の説明を行なうのみで十分であると思われるので、以下タッチレスポンススイッチのみについて説明する。
【0008】
2メイク式あるいはそれ以上の複数メイク式のタッチレスポンススイッチとして、プリント基板上に固定接点パターンが形成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、該可動接点を上記固定接点に当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置が従来より用いられている。
【0009】
図11は従来の2メイク式スイッチの要部構成を示す。(A)はプリント基板41上に形成された固定接点46のパターン形状を示し、(B)はこの固定接点46と可動接点の当接状態を示す。固定接点46は、2対の固定接点パターン、即ち内対(内ペア、以下内ペアという)を構成する一対の内パターン21、23と外対(外ペア、以下外ペアという)を構成する一対の外パターン22、24とからなり、各パターン同士は所定の間隔を隔てて図示したように入り組んだ形状に形成される。各パターン21、22、23、24の端部には、スイッチの外部配線パターン30に接続する接点端子部T1、T2、T3、T4が形成される。
【0010】
一方、この固定接点46に対向してこの上方には第1可動接点25および第2可動接点26a、26bが形成される。第1可動接点25は内ペアの端部に当接し、両方の内パターン21、23同士を接続する位置に形成される。第2可動接点26a、26bはそれぞれ円弧状であって、外ペアを構成する外パターン22、24同士を接続する位置であって且つ内パターン21、23に当接しない位置に形成される。
【0011】
このような2メイクスイッチは例えば電子鍵盤楽器の各鍵に対応して設けられ、押鍵動作に連動してキーオン信号や押鍵速度信号を発信するために用いられる。
【0012】
図12はこのような従来の2メイクスイッチの回路図である。上記固定接点および可動接点からなる接点部(2メイクスイッチ)27の4つの各接点端子T1、T2、T3およびT4に例えばダイオードを介してプリント基板上に形成した4本のスイッチ外部の配線パターン30が接続される。各配線パターン30は図示しないCPUに連結され押鍵動作に応じて電子音を発生させたり音色や音量その他各種楽音の制御を行う。
【0013】
図13は2メイクスイッチ27の各別の例の断面構成図である。(A)図は第1可動接点25が先にメイクする構成、(B)図は第2可動接点26a、26bが先にメイクする構成を示す。これらの2メイクスイッチ27は、ゴムまたはプラスチック等の弾性材からなり、頂部に形成した押圧部29と、ドーム状または伏椀状の弾性変形部40と、その下端外周の縁部31とにより構成される。弾性変形部40内の中心部に導電材からなる円形の第1可動接点25が設けられ、その外周部分に円弧状の第2可動接点26a、26bが設けられる。縁部31の下面には弾性突起32が形成される。この弾性突起32をプリント基板41に形成した孔33を通して圧入することにより、スイッチ27がプリント基板41上に固定される。
【0014】
図13(A)図の構成において、押圧部29を指で押し下げると、弾性変形部40が歪んでまず中央部の第1可動接点25がプリント基板41上に形成した固定接点の内パターン21、23(図11参照)に当接してこれらを閉成し、さらに押し下げることにより、外側の各円弧状の第2可動接点26a、26bが外パターン22、24(図11参照)に当接してこれらを閉成する。これにより2段階の時間差でスイッチがメイクされる。図13(B)図の構成においては、逆に外側の第2可動接点26a、26bが先にメイクし次に中央の第1可動接点25がメイクする。
【0015】
また、従来の電子鍵盤楽器の構造が特開平6-176663等に記載されている。この電子鍵盤楽器には各鍵に対応して可動接点と固定接点の対からなるスイッチ手段が示されている。一方、電子鍵盤楽器に組込まれるスイッチ装置は、通常図14あるいは図15に示す構造を有している。
【0016】
図14において、2メイクスイッチ50は、第1可動接点51と第2可動接点52とを有し、プリント基板53上に搭載される。このプリント基板53上には、図示したような櫛歯状パターンからなる第1固定接点54および第2固定接点55が形成される。各固定接点54、55は、それぞれ対抗して噛み合う1対の櫛歯パターン54a,54bおよび55a,55bにより構成される。これらの櫛歯状の第1および第2の固定接点54、55は、相互に櫛端部を対向させて櫛歯の並び方向に連続的に配置される。このような第1および第2の固定接点54、55に対し、前述の図11〜図13のスイッチ構造の例と同様に、それぞれ第1および第2の可動接点51、52が時間差をもってメイクする。
【0017】
図15の従来例においては、図14の例と同様に、第1固定接点54は一対の対向して噛み合う櫛歯パターン54a,54bからなり、第2固定接点55は同様に噛み合う他の一対の櫛歯パターン55a,55bとにより構成される。この例では、各固定接点54、55が櫛歯の並び方向に関し、隣接して並列配置された状態でプリント基板上に形成される。このような構成において、前記従来例と同様に、第1および第2可動接点51、52がそれぞれ第1および第2固定接点54、55を時間差をもってメイクする。
【0018】
このような時間差をもってメイクするスイッチは、例えば電子楽器のタッチレスポンスの検出に用いられる。このタッチレスポンス用のスイッチは、押鍵時の鍵の動きを2メイクスイッチのメイクする時間の差により検出し、押鍵速度を演算したりまた加速度から押鍵力を演算しこれに基づいて各種楽音を制御するためのものである。
【0019】
一方、1つのスイッチ装置として複数の接点の対を有するスイッチ装置は、前述のような時間差をもってメイクするタッチレスポンスの用途以外にも、各対それぞれがスイッチとして例えば2つの可動接点の高さを揃えて同時にメイクするように構成して独立に機能するスイッチ装置として用いることができる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記図11〜図13の従来の2メイクスイッチの固定接点においては、各パターン21、22、23、24がそれぞれ分離して各パターンに対応して4つの接点端子T1、T2、T3、T4を有するため、形状が複雑となって細かいパターニングが必要となり製造が面倒になる。これに加えて、各パターンの離間距離は、製造上小さくすることに限界があり、小さなスイッチ装置が製造できないという欠点をもっている。
【0021】
また、従来の2メイクスイッチを電子鍵盤楽器の各鍵に対応して設け各鍵の押鍵動作により駆動される構成とした場合、一般に鍵盤楽器の鍵は押鍵時にその端部を支点として回動し、鍵中央部下面側のスイッチを押し下げるように構成されているため、スイッチに対し垂直で直線的な押圧動作を行わずに円弧運動の一部としてスイッチを擦りながら押圧する。したがって、スイッチは曲げられあるいは曲げ戻されながら可動接点が固定接点に当接する。このため可動接点の動作が安定せず2メイク目の可動接点がこれに対応する固定接点パターンに当接した時点で、既に当接している1メイク目の可動接点がこれに対応する固定接点パターンから離れる場合がある。これにより、スイッチのチャタリングを起こし、鍵のタッチレスポンス検出として利用した場合、2つの可動接点のメイク時間差の正確な情報が得られなくなり正確な楽音制御ができなくなる。
【0022】
このようなチャタリングの問題は、仮に鍵が垂直方向に押し下げられる構成を実現したとしても、強打鍵時等に1メイク目の可動接点がその質量に基づき固有振動を起こし、2メイク目の可動接点がメイクした時点で1メイク目の可動接点が離れることが起こり得るため、単に鍵盤構造を変更しても解消しない。
【0023】
前述の従来技術の問題は、図14、図15の従来構成に対しても同様に起こり得る。図14、15を従来技術として表わしているが、デフォルメされており、もっと正確には接点54、55がもっと離れて配置されている。そしてさらに、このような従来の櫛歯状の固定接点構造においては、スイッチの小型化を図るために固定接点54、55同士を図のように最も近づけて形成した場合、正常なスイッチとして機能する各可動接点に対する各固定接点54、55の許容占有範囲は、隣りの固定接点に当接しないようにするためにはそれぞれ図示したS1およびS2の範囲となる。このような許容範囲は、櫛歯パターンの印刷技術精度に応じたパターン間のピッチ幅により定まり、印刷技術精度を越えてパターン同士を近づければ短絡ヵ所が発生しスイッチ機能が損われる。
【0024】
一方、可動接点側には、前述のようにそのベース部分(図13の端部31)の下面に鍵の並び方向に沿って所定のピッチで突起(図13の番号32)が形成され、この突起をプリント基板側の孔(図13の番号33)に圧入することにより、可動接点がプリント基板上の固定接点上に固着される。この場合、プリント基板に設ける孔の寸法や穿孔位置の誤差によって固定接点と可動接点が僅かにずれることがある。このような誤差も含めて前述の正常なスイッチとして機能する各固定接点54、55の許容占有範囲S1、S2が定まるため、許容される固定接点の範囲はますます狭くなる。
【0025】
以上のような問題は、鍵盤楽器の押鍵圧力や速度等を検出するタッチレスポンススイッチとして用いた場合に限らず、従来一般の固定接点パターンとこれを閉じる可動接点とからなるスイッチ全般に関する問題であり、特に2メイクスイッチあるいはさらに多くのメイク差の段数を有する多段スイッチに関し生ずる問題であった。即ち、それぞれ独立して機能する複数の固定接点とこれに対向する可動接点の対からなるスイッチ装置について、前述のような形状の小型化が充分に達成できないという問題やチャタリングの問題があった。
【0026】
この発明は上記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、パターン形状を簡素化し小型で効率良く容易に製造可能なスイッチ装置の提供を第1の目的とする。この発明の第2の目的は、スイッチ押圧時の接点離間を防止しチャタリングを抑制して確実な2メイクあるいはさらに多段のスイッチ機能が達成されるスイッチ装置を提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】
前記第1および第2の目的を達成するために、請求項1に係る発明では、プリント基板上に互いに向き合うように対型接点パターンを複数形成し、このパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられ押し下げ時に前記対型固定接点に当接してその対となるパターン同士を導通させる可動接点とを有するスイッチ装置において、前記可動接点は中央部の第1の可動接点と、その第1の可動接点の外側に少なくとも1部がドーナツ状の第2の可動接点を有し、前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成することを特徴とするスイッチ装置を提供する。
【0028】
また、請求項2に係る発明では、プリント基板上に接点パターンを形成しこのパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、該可動接点を上記固定接点に当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置において、上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とするスイッチ装置を提供する。
【0029】
【作用】
請求項1に係る発明においては、固定接点側の共通パターンの形成方向と可動接点の配列方向が同じになるように形成されるため、スイッチ自体の構成がコンパクトに収められる。さらに、鍵盤楽器に適用した場合、この共通パターンの形成方向は、鍵の長手方向に連続させることによりスイッチを搭載する基板の幅を小さくできるとともに、鍵の並び方向にも連続させれば鍵の配列ピッチを小さくすることができる。
【0030】
この場合、それぞれ1対のパターンからなる第1固定接点対と第2固定接点対のいずれか一方のパターンを共通パターンとして一体化し、他方のパターン同士の間にこの共通パターンのみを形成することにより、小数のパターンにより固定接点が構成され、外部取り出し用の接点端子も少なくすることができ、構成が簡単になりパターン形状も簡素化して容易に製造することができるようになる。またこのようなパターンの共通化により、可動接点が従来と同じ大きさであると仮定した場合、パターン幅を太くすることができるため、パターン導体の抵抗値が減少し検出信号の信頼性を高めることができる。さらに、このことを逆に言えば、前記パターン幅を従来と同じ幅にとどめることで、固定接点パターンが小さく製作でき、これに合せて可動接点を小さく成型すれば、スイッチの小型化が図られる。
【0031】
請求項2に係る発明においては、スペース的に制約を受ける鍵盤装置において、接点パターン形成領域の中央部に第1固定接点対の接点閉成部が櫛歯状に入組んで形成され、その周囲の円周上の対向する2箇所に第2固定接点対の接点閉成部が櫛歯状に入組んで形成されるとともに、接点パターン形成領域のほぼ全体が導体パターンで覆われ、各接点対のパターンが分離した絶縁部分の面積が導体部分に比べ小さく形成される。これにより、狭いスペースで確実な接点閉成動作が達成され、スペースが有効に接点として利用されスイッチ機能の信頼性が高められる。
【0032】
【実施例】
図1はこの発明の実施例に係る2メイク式スイッチの要部構成を示す。(A)はプリント基板41上に形成された固定接点6のパターン形状を示し、(B)はこの固定接点6と可動接点の当接状態を示す。この固定接点6は、実質上図6に示した従来の固定接点46を構成する内ペアの一方のパターン23と、外ペアの内側のパターン24とを一体的に共通に形成した構成である。即ち、本実施例においては、一対の内パターン1と共通パターン3とにより内ペア4を構成し、一対の外パターン2と上記共通パターン3とにより外ペア5を構成している。このように共通パターン3を共有する内ペア4および外ペア5とにより固定接点6が形成される。内パターン1、外パターン2および共通パターン3は、それぞれ外部配線パターン30に接続する第1接点端子部T1、第2接点端子部T2および第3接点端子部T3を有し、これらの接点端子部T1、T2、T3を基端部として所定の間隔を隔ててスイッチ内部側に相互に入り組んで形成される。共通パターン3の基端部は先端部より太く形成されている。
【0033】
このような固定接点6に対応して、その上方に可動接点が設けられる。可動接点は、中央部の円形の第1可動接点25とその周囲の円弧状の第2可動接点26a、26bとにより構成される。第1可動接点25は内ペア4を構成する内パターン1と共通パターン3に当接してこの内ペア4をメイクする。第2可動接点26a、26bは外ペア5を構成する外パターン2および共通パターン3に当接してこの外ペア5をメイクする。
【0034】
このような2メイクスイッチは例えば電子鍵盤楽器の各鍵に対応して設けられ、押鍵動作に連動してキーオン信号や押鍵速度信号を発信するために用いられる。
【0035】
図2はこのような本実施例に係る2メイクスイッチの回路図である。上記固定接点および可動接点からなる接点部(2メイクスイッチ)7の3つの各接点端子T1、T2、T3に例えばダイオードを介してプリント基板上に形成した3本のスイッチ外部の配線パターン30が接続される。各配線パターン30は図示しないCPUに連結され押鍵動作に応じて電子音を発生させたり音色や音量その他各種楽音の制御を行う。
【0036】
このような2メイクスイッチのプリント基板への取付け構造や断面構造は、前述の図12に示した構成と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0037】
図3は、電子鍵盤楽器の鍵盤の下側に配置されるプリント基板41の部分平面図である。各健(図示しない)に対応してその下側に、前述のように3つの接点端子部T1、T2、T3を有する固定接点6が形成される。各固定接点6に対応して図13(A)または(B)に示すように可動接点25および26a,bが装着される。各固定接点6の3つの接点端子部T1、T2、T3には外部配線パターン30が接続されるとともに、適宜ランドパターン8、9を介して廻り込み防止ダイオード10が接続される。
【0038】
図4は、このような電子鍵盤楽器に搭載された2メイクスイッチによる制御回路の部分構成図である。S1は1メイク目の接点であり、前記第1可動接点25と内ペア4(図1)とにより構成される。S2は2メイク目の接点であり、前記第2可動接点26a,bと外ペア5とにより構成される。これらの接点S1、S2からなる各2メイクスイッチ7は各健ごとに設けられ、例えばC、C#、D...Fからなる半オクターブおよびF#、G、G#...Bからなる残りの半オクターブごとにまとめてブロック化し、ブロックごとにマイコン(CPU)11に連結してブロックごとの時分割キースキャニングにより各種楽音制御を行ってもよい。マイコン11は利用回路12に連結される。この利用回路12は、物理音を発生させたり各種楽音を形成する回路およびアンプやスピーカ等を含む楽音発生手段となるものである。
【0039】
図5はこの発明の別の実施例を示し、(A)は縦断面図、(B)は平面構成の説明図である。この実施例においては、可動接点側の構成が、図13(A)の構成における円弧状に分離した第2可動接点26aおよび26b(図1参照)に代えて、ドーナツ状に連続したドーナツ形第2可動接点26を設けた構成となっている。また、固定接点6の構成は、図5(B)に示すように、実質上十字形の放射状パターンであって、中央の内パターン1と、外側の外パターン2と、その中間の共通パターン3とをそれぞれ所定の間隔を隔てて形成したものである。内パターン1と共通パターン3とにより内ペア4を構成し、外パターン2と共通パターン3とにより外ペア5を構成している。各パターン1、2、3はそれぞれ接点端子部T1、T2、T3を介して外部配線パターンに接続され、これを通して内パターン1および外パターン2は抵抗を介してアースに接続され、共通パターン3は電源電圧Vに接続される。内パターン1および外パターン2は電圧検出回路(図示しない)に連結され、例えば各種楽音制御に利用される。
【0040】
このような構成の2メイクスイッチ27において、押圧部29を押圧してスイッチを押し下げると、まず中央の円形第1可動接点25が内ペア4に当接し、接点端子T1、T3間を閉成する。さらにスイッチを押し下げることにより、ドーナツ形第2可動接点26が内パターン1、外パターン2および共通パターン3のすべてに跨がって当接して、外ペア5の接点端子T1、T2間を閉成するとともに、第1可動接点により閉成されている接点端子T1、T3間をさらに閉成する。これにより、1メイク目の第1可動接点25が万一チャタリングを起こして内ペア4のパターン1、3から離れた場合であっても、2メイク目の第2可動接点26が外ペア5とともに内ペア4をパックアップして閉成するため、第2可動接点26がメイクした時点において内ペア4は閉成された状態に保持される。
【0041】
このように図5の2メイクスイッチ構造においては、チャタリングの防止が図られるとともに、放射状パターン形状および共通パターンを用いることによる形状のシンプル化およびパターン面積の縮小化が図られ、従来に比べ小型のスイッチが実現可能になる。
【0042】
なお、放射状パターン形状は4方向放射形状の十字形に限らず、例えば3方向放射形状のY字状あるいは5方向やそれ以上の放射方向をもつ形状としてもよい。また、2方向の放射形状、即ち直線形状のパターンもこの発明に含まれる。また、第2可動接点の形状についても、ドーナツ形状に限定されるものではなく、3つのパターン1、2、3に跨がって同時に当接できる形状であれば円弧状あるいは直線状その他の形状であってもよい。
【0043】
図6は、この発明のさらに別の実施例を示す図であり、(A)は上面図、(B)は(A)のB-B断面図、(C)は固定接点の形状図である。この実施例における2メイクスイッチ50は、高さ方向に段差を有して並べて設けた第1可動接点51と第2可動接点52とからなり、プリント基板53上に搭載される。51a,52aはそれぞれ可動接点51、52の背面(上面)側を示す。56は弾性変形部であり、57はキートップを示す。
【0044】
プリント基板53上には、(C)図に示すように、第1固定接点パターン58と、第2固定接点パターン59と、共通パターン60とからなる固定接点が形成される。このような固定接点は、図14で説明した従来技術の固定接点54、55を改良したものである。即ち、第1および第2の固定接点パターン58、59は櫛歯状であって、櫛歯の並び方向に先端を対向させて配置され、これらのパターン58、59の間に各パターンの櫛歯に噛み合うように同じく櫛歯形状の共通パターン60が形成される。このように直線状の櫛歯パターンからなる両固定接点パターン58、59間に共通パターン60を設けることにより、対向して突き合せて配置した第1固定接点パターン58および第2固定接点パターン59が正常なスイッチ機能をもつための許容占有範囲は、それぞれS1およびS2で示される範囲となり、図14の従来技術に比べほぼ3倍に拡大される。これにより、スイッチ機能の信頼性を向上させることができる。言換えれば、従来と同じ印刷精度のピッチの櫛歯パターンを用いてスイッチの小型化が図られる。その他の作用効果については、実質上前述の本発明の各実施例と同様である。
【0045】
図7は、図6の固定接点の変形例を示す。図6では、第1固定接点パターン58と第2固定接点パターン59の櫛の向きを反対方向に配置した形状であるが、この図7の例は、櫛の向きを両パターン58、59ともに同じ向き(上向き)とし、これらに噛み合う共通パターン60の櫛歯を下向きに形成したパターン形状である。その他の構成および作用効果は上記実施例と同様である。
【0046】
図8は、この発明のさらに別の実施例の構成を示す。この実施例は3段メイクのスイッチ装置50を示す。高さ方向に段差を有する第1、第2、第3の可動接点61、62、63が並べて設けられ、プリント基板53上に搭載される。各可動接点61、62、63に対応して、プリント基板53上に、(C)図に示すように、櫛歯状の第1、第2、第3の固定接点パターン64、65、66が櫛歯に直交方向に揃えて連続的に並べて形成される。各固定接点パターン64、65、66の歯の向きは図で上向きである。これらの固定接点パターン64、65、66の各歯に噛み合う櫛歯状の共通パターン67が形成される。これにより、各固定接点パターン64、65、66と共通パターン67とがそれぞれ対をなす3つの固定接点を構成する。スイッチ装置50のキートップ57を押圧することにより、第1、第2、第3の可動接点61、62、63が順番に固定接点対のパターンに当接し、スイッチを3段階にメイクする。その他の構成および作用効果は前述の実施例と同様である。
【0047】
図8(D)は、固定接点パターンの変形例を示す。この例では、4つの第1、第2、第3、第4の櫛歯状のパターン71、72、73、74が形成される。第1、第2のパターン71と72は歯が下向きに形成され、これらの第1、第2のパターン71、72に対し、第3の櫛歯パターン73がその上向きの歯を噛み合わせて共通パターンとして形成される。この第3のパターン73と同じく上向きの歯からなる第4のパターン74に対し第2の下向きの櫛歯パターン72が共通のパターンとして第3、第4パターン73、74に噛み合って形成される。スイッチ装置50のキートップ57を押圧することにより、第1、第2、第3の可動接点61、62、63が順番にこれらの固定接点の組合せの対に当接してスイッチを3段階にメイクする。その他の構成および作用効果は前述の実施例と同様である。
【0048】
図9は、この発明のさらに別の実施例を示す。この実施例は、前述の図15に示した従来構造を改良したものである。即ち、櫛歯状の第1固定接点パターン58と第2固定接点パターン59が歯を向合わせて形成され、これらの歯に噛み合わせて中央から両側に向けて歯を有する共通パターン60が形成される。これにより、第1、第2の固定接点パターン58、59と共通パターン60とがそれぞれ対をなす固定接点を構成する。
【0049】
このように直線状の櫛歯パターンからなる両固定接点パターン58、59間に共通パターン60を設けることにより、並列配置した第1固定接点パターン58および第2固定接点パターン59が正常なスイッチ機能をもつための許容占有範囲は、それぞれS1およびS2で示される範囲となり、図15の従来技術に比べほぼ3倍に拡大される。これにより、スイッチ機能の信頼性を向上させることができる。言換えれば、従来と同じ印刷精度のピッチの櫛歯パターンを用いてスイッチの小型化が図られる。その他の作用効果については、実質上前述の本発明の各実施例と同様である。
【0050】
図10は、本発明のさらに別の実施例を示す。この実施例は、本発明を鍵盤楽器に適用した例であり、前記図9のスイッチ構造を鍵の並び方向に連続させたものである。各鍵71、72に対応して、鍵71には櫛歯状の第1固定接点パターン581および第2固定接点パターン591が鍵71の長手方向に対向して形成される。隣接する鍵72には同様に櫛歯状の第1固定接点パターン582および第2固定接点パターン592が鍵72の長手方向に対向して形成される。これらの第1固定接点パターン581、582および第2固定接点パターン591、592間に、図9の例と同様に共通パターン60が形成されるとともにその上方に可動接点511、521および512、522が形成される。各鍵の共通パターン60は鍵71、72の並び方向(図のH方向)に連続して形成される。従って、固定接点の共通パターン60は、鍵の長手方向に沿って形成されるとともに鍵の並び方向に沿って連続して形成され、これに対応して可動接点が鍵の長手方向と並び方向に沿って連続的に配列される。このような構成により、鍵の並び方向に関し図9の例と同様に対向配置した第1固定接点パターンおよび第2固定接点パターンが正常なスイッチ機能をもつための許容占有範囲は、それぞれS1およびS2で示される範囲となり、図15の従来技術に比べほぼ3倍に拡大される。さらに鍵の並び方向(H方向)に関し、各スイッチの許容占有範囲はS1’、S2’となり範囲が拡大される。このように鍵の長手方向および並び方向に関しスイッチとして使用できる範囲が拡大するとともに、パターンの共通化によりスイッチ自体の形状が小さくなる。例えば、複数のスイッチ装置を通常のキースイッチとして各鍵に対応して設ける場合は、左右いずれかの列からなるスイッチのみでよく、この場合にも鍵並び方向においてスイッチを搭載する基板の幅を小さくすることができる。さらにタッチレスポンススイッチとして各鍵に対応して図示のように設けた場合に鍵長手方向においても基板の幅を小さくすることができる。いずれの場合も鍵の並び方向のピッチを小さくして幅の狭い鍵を使用することができ鍵盤装置全体の小型化を図ることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明においては、それぞれ1対のパターンからなる第1固定接点対と第2固定接点対のいずれか一方のパターンを共通化して一体化し、他方のパターン同士の間にこの共通パターンのみを形成しているため、小数のパターンにより固定接点が構成され、同一寸法のスイッチを製造するのであればスペース的に余裕ができ、可動接点と固定接点の配置が多少ずれてもスイッチ機能に支障を来さない。従って歩留の向上が図られる。また、固定接点パターンの共通化により固定接点配設スペースを小さくできスイッチの小型化が達成される。さらに説明すれば、スイッチ製造の歩留を同一とするならば従来に比べより小型スイッチの製造が可能になる。例えば2つの接点のペアからなる2メイクスイッチ構造のような可動接点と固定接点パターンとからなるスイッチ装置において、固定接点側の各ペアに共通のパターンを形成しているため構造が簡素化し製造が容易になるとともにスイッチの小型化が図られる。またパターン抵抗値の減少により検出信号の信頼性の向上が図られる。また、2メイク目の可動接点の形状を両方の接点のペアに対し同時に当接する形状とすることにより、チャタリングの防止が図られ確実な2メイクスイッチング機能が達成され信頼性の高い検出情報が得られる。
【0052】
なお、前記各実施例は鍵盤装置のタッチレスポンススイッチの固定接点パターンとして例示したが、この発明はこれに限定されるものではなく、単に2接点回路またはそれ以上の接点回路のスイッチであればよく、独立した機能の複数のスイッチ接点を有するスイッチ装置、例えば一方の回路が閉じた後にさらにスイッチを押し下げることにより、スイッチがオフとなる機能付加もしくは機能変更するようなモードスイッチ、あるいは単に複数の独立したスイッチが同時に閉成するマルチ型のスイッチに対し適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係るスイッチ装置におけるパターン形状の説明図である。
【図2】 図1の実施例を利用した回路図である。
【図3】 図1の実施例を搭載した電子鍵盤楽器のプリント基板の平面図である。
【図4】 図3のプリント基板の回路図である。
【図5】 本発明の別の実施例の構成説明図である。
【図6】 本発明の別の実施例の構成説明図である。
【図7】 本発明の別の実施例に係る固定接点パターンの形状説明図である。
【図8】 本発明のさらに別の実施例に係るスイッチ装置の構成説明図である。
【図9】 本発明のさらに別の実施例に係るスイッチ装置の構成説明図である。
【図10】 本発明のさらに別の実施例に係るスイッチ装置の構成説明図である。
【図11】 従来のスイッチ装置のパターン形状の説明図である。
【図12】 従来のスイッチ装置を利用した回路図である。
【図13】 (A)(B)は、本発明が適用可能な2メイクスイッチの各別の例を示す断面図である。
【図14】 従来のスイッチ装置構造の一例の説明図である。
【図15】 従来のスイッチ装置構造の別の例の説明図である。
【符号の説明】
1:内パターン、2:外パターン、3:共通パターン、4:内ペア、5:外ペア、6:固定接点、25:第1可動接点、26a,26b:第2可動接点、30:スイッチ外部配線パターン、41:プリント基板。
 
訂正の要旨 本件訂正請求は、以下の事項について明細書の記載を訂正するものである。
(1)訂正事項a
請求項1及び請求項2を下記のように訂正する。
「請求項1
プリント基板上に互いに向き合うように対型接点パターンを複数形成し、このパターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられ押し下げ時に前記対型固定接点に当接してその対となるパターン同士を導通させる可動接点とを有するスイッチ装置において、前記可動接点は中央部の第1の可動接点と、その第1の可動接点の外側に少なくとも1部がドーナツ状の第2の可動接点を有し、前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成することを特徴とするスイッチ装置。
請求項2
プリント基板上に接点パターンを形成しこの接点パターンにより構成された固定接点と、該固定接点の上方にこれと対向して設けられた可動接点とからなり、該可動接点を上記固定接点に当接させることによりスイッチングを行うスイッチ装置において、
上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、
該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、
上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、
該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、
前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、
前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、
前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とするスイッチ装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b
(i)発明の詳細な説明の段落番号0027の第10〜11行目(本件特許号公報第7欄39〜40行)の「前記固定接点パターンは第1の可動接点が当接する位置から放射状に形成されたこと」を、「前記固定接点は、前記第1および第2の可動接点と対を成す接点パターンの一方を共通パターンとして、内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して前記第1の可動接点が当接する位置から3つのパターンを放射状に形成した固定接点とし、前記第1の可動接点は第1の可動接点用の内パターンと共通パターンを閉成し、前記第2の可動接点は少なくとも第2の可動接点用の外パターンと共通パターンを閉成すること」と訂正する。
(ii)同段落番号0028の第6〜26行(同第7欄第47行〜第8欄第17行)の「上記固定接点パターンは、・・・ことを特徴とする鍵盤装置用スイッチ装置を提供する。」を、「上記固定接点は、第1固定接点対となる内ペアと第2固定接点対となる外ペアとを有し、該内ペアおよび外ペアの各パターン同士は所定間隔を隔てて内部に相互に入り組んで上記プリント基板上に形成され、上記可動接点は上記各ペアをそれぞれ接触させるための各ペアのそれぞれに対応する第1可動接点および第2可動接点とを有し、上記固定接点は、内ペアと外ペアのいずれか一方の接点パターンを共通パターンとして一体化して形成し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンとの間に前記共通パターンのみを配設し、内ペアの他方の接点パターンと外ペアの他方の接点パターンの双方に対して入り組んで内側から第1の可動接点用の内パターン、共通接点パターン、第2の可動接点用の外パターンの順に配置して形成し、該スイッチ装置は鍵盤装置の各鍵に対応して設けられ、前記内ペアの接点閉成部は、スイッチパターン領域の中央部で櫛歯状に入組んで形成され、前記外ペアの接点閉成部は、前記内ペアの接点閉成部周囲の円周上の対向する2箇所の位置にそれぞれ櫛歯状に入組んで形成され、前記スイッチパターン領域は、ほぼ全体が導体パターンで覆われ、各ペアの分離部分の面積が導体パターンの面積より小さいことを特徴とする鍵盤装置用スイッチ装置を提供する。」と訂正する。
異議決定日 2001-03-07 
出願番号 特願平7-105681
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤村 泰智  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 藤本 信男
熊倉 強
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3000885号(P3000885)
権利者 ヤマハ株式会社
発明の名称 スイッチ装置  
代理人 荒井 潤  
代理人 荒井 潤  

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