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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1044604 |
異議申立番号 | 異議2000-71486 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-05-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-04-12 |
確定日 | 2001-02-28 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2961730号「整髪用エアゾールスプレー製品」の請求項1ないし7及び11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2961730号の請求項1ないし6及び10に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.経緯 本件特許第2961730号は、平成8年2月14日の出願(優先権主張、平成7年4月29日、平成7年9月1日、日本)に係り、平成11年8月6日に設定登録された後、ウエラ アクチェンゲゼルシャフト、足立泰守、及び太田一から特許異議申立がなされ、取消理由通知に対して、平成12年12月26日付けで訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否 本件訂正請求に係る訂正事項の一は、特許明細書の請求項1における整髪剤原液の構成成分のうち、(A)成分であるエタノールの配合割合を「1〜50重量%」から「15〜35重量%」に訂正するとともに、同明細書の請求項1及び2における整髪剤原液を構成する成分のうち、(C)成分である水の使用割合について「バランス量」から「60重量%」に訂正するものである。 そして、上記エタノーの配合割合についての訂正は、数値範囲をより狭い範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記水の使用割合の訂正についていうと、特許明細書の請求項1及び2においては、(C)成分である水に加え、(A)成分であるエタノール及び(B)成分である毛髪固定用高分子化合物の配合割合が記載されており、整髪剤原液がこの3成分のみからなる場合には、使用する水の配合割合の範囲は、全体を100%として上記(A)成分及び(B)成分の合計は配合割合を差し引くことにより確定できるが、本件上記請求項1及び2においては、(A)〜(C)成分以外の成分を含み得るように記載されているため、上記請求項1および2の記載では、(C)成分である水の配合割合の範囲は特定できない。 この訂正は、(C)成分である水の配合割合の下限値を明示して、該配合割合を特定化したものであるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、この訂正事項の一は、実質的に特許請求の範囲を拡張、変更するものではなく、さらに、訂正後の(A)成分であるエタノールの配合割合および(C)成分である水の配合割合については、特許明細書に明示されていたものであるから、この訂正は、特許明細書に記載されていた事項の範囲内の訂正である。 本件訂正請求に係る訂正事項の二は、特許明細書の請求項4の削除、並びにこれに伴い同請求項5〜12の番号を順次繰り上げるものであり、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張、変更するものではない。また当然、特許明細書に記載されていた事項の範囲内の訂正である。 本件訂正請求に係る訂正事項の三は、上記訂正事項の一に係る訂正後の請求項1の記載に整合するように、発明の詳細な説明中の段落番号[0013]、[0019]及び[0032]の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張、変更するものではなく、また、上記したことから明らかなように、特許明細書に記載されていた事項の範囲内の訂正である。 したがって、本件訂正請求は特許法第120条の4第2項、及び同条第3項で準用する同法第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについて、 異議申立人ウエラ アクチェンゲゼルシャフトの主張は、本件請求項1〜7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたというものであり、また、同足立泰守及び太田一からの主張は、本件請求項1〜7及び11項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたというものであって、これら主張に伴い提示された証拠方法は以下のとおりである。 特開平6-172144号公報( 大原一提示の甲第1号証、ウエラ、アクチェンゲゼルシャフト提示の甲第3号証、足立泰守提示の甲第4号証、以下、刊行物1という。) 特開昭57-11906号公報(ウエラ、アクチェンゲゼルシャフト提示の甲第1号証、以下、刊行物2という。) 米国特許第5,286,477号明細書(ウエラ、アクチェンゲゼルシャフト提示の甲第4号証、以下、刊行物4という。) ヨーロッパ特許公開第0,5253,388号公報(ウエラ、アクチェンゲゼルシャフト提示の甲第4号証、以下、刊行物5という。) 特開平6-199640号公報(足立泰守提示の甲第2号証、以下、刊行物7という。) 「HANDBOOK OF AEROSOL TECHNOLOGY」Second Edition 、VAN NOSTRAND REINHOLD COMPANY 1979 pp.90-91,94及び111(足立泰守提示の甲第3号証、以下、刊行物8という。) 「エアゾール産業新聞」(1993年7月25日)(以下、刊行物9という。) これに対して、 本件訂正後の請求項1の発明は、訂正明細書の記載からみて、その請求項1に記載されたとおりの以下のものである。 「以下の成分(A)〜(C) (A)エタノール」 1〜50重量% (B)毛髪固定用高分子 0.05〜5重量% (C)水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤原液とを、原液/噴射剤=60/40〜90/10 (重量比)の比率で含有し、25℃における噴射量が8g/10秒以上に調整されており、かつ噴射がミスト状である整髪用エアゾールスプレー製品。」 そこで、まず、本件訂正後の請求項1の発明(以下、本件発明という。)について検討する。 刊行物1、2、4、5、6及び7においては、エタノール、毛髪固定用高分子化合物及び水、並びに噴射剤としてジメチルエーテルを含有するヘアスプレーについて記載され、特に上記刊行物1における実施例6のヘアスプレイは配合成分及びその配合割合において本件発明の整髪用エアゾールスプレー製品と重複する組成を有する。 しかし、これら刊行物においては、本件発明の整髪用エアゾールスプレー製品における噴射量については記載がない。 一方、この噴射量に関しては、刊行物3、8及び9が提示されており、これらについて順次検討する。 刊行物3においては、ヨーロッパ及び北アメリカで市販されていた各種エアゾールへアスプレーのうち13種が8g/10秒以上(70゜F(21℃))であることが示され、また、ヨーロッパの製品はいずれもジメチルエーテルを含有する旨記載され、さらに、「そして、ヨーロッパの市場で売買する人たちの多くが、10%以下の水を含むヘアスプレーを製剤することの原因となっている。」との記載及び「ヨーロッパにおいては、高い圧力のジメチルエーテルが、アルコールによって緩和されている。」との記載がある。 しかし、刊行物3においては、上記13種のヘアスプレーについては、どのような成分組成を有するのか明かにされてはいない。 また、上記水の10%以下の配合は、その後段の10重量%以上にすることは消費者にとって不満足である旨の記載からも明らかなように、可燃性プロペラントを使用しているためにやむをえず行っているもので、本件発明における水の配合割合に比べてあまりにも少なく(なお、本件発明の整髪剤原液に対し60重量%以上は、ヘアスプレー全体に対して36重量%以上に相当する。)、また、本件発明のように髪に水分を供給して毛髪の乱れを直すために配合しているとすることもできない。してみると、刊行物3の上記13種のへアスプレーが、たとえ水を含むものであったとしても、その量は極めて少ないとすべきであり、上記13種のヘアスプレーの噴射量は、少なくとも本件発明のように、髪に水分を供給するための、水を多量に含むヘアスプレー製品において、普通に行われていた噴射量ということはできない。そして、事実この点は、刊行物9において、上市された3種の水配合ヘアスプレー製品の噴射量がいずれも4g/10秒前後である旨示されている点からも窺えるものである。さらに、刊行物3において、噴射量が8g/10秒以上(70゜F(21℃))のものが単に13種示されているものの、これのみでは、この噴射量が、本件発明のような水を多量に含むヘアスプレーにおいても好ましいものであるということもできない。したがって、これらの点からみれば、刊行物3の記載は、本件発明ような水を多量に含むヘアスプレーにおいて噴射量を8g/10秒以上にすべきことを示唆するものではない。 刊行物8においては、噴射容器のステム孔径、ハウジング孔径及びボタン孔径についてそれぞれ通常0.012〜0.035インチ(0.30〜0.89mm)、0.060〜0.080インチ(1.52〜2.03mm)及び0.012〜0.060インチ(0.30〜1.52mm)であることが示されており、これら数値範囲は、本件発明における噴射量の調整するためのステム孔径(0.4mm)、ハウジング孔径(2.0mm)及びボタン孔径(0.6mm)を包含する。しかし、刊行物8においては、一般に用いられている種々の噴射容器のステム孔径、ハウジング孔径及びボタン孔径の大きさについての包括的範囲を示すにすぎず、また、噴射量及び噴射の状態は、これら孔径のみではなく、整髪剤原液との組成、それと噴射剤との配合比率の、噴射ボタンの噴口形状あるいは上記孔径の組み合わせ等にも影響されるから、上記刊行物8に示された各孔径の数値範囲内であれば、噴射量が8g/10秒以上でかつミスト状になるというわけではない。してみると、刊行物8が本件発明の噴射量及び噴射の状態を開示しているとすることはできない。 刊行物9は、「ヘアスプレーの最近の開発傾向と技術的課題」と題した論文であり、その図5においては、水を50%配合し、噴射容器のバルブのステム径が0.4及び0.5mmでかつVT比が0.19のとき、噴射量が8g/10秒以上である実験結果が示されている。しかし、この実験は、単にバルブの仕様及び水の配合量が、噴射量及び形成される霧粒子径にどのような影響を与えるかを調べたものにすぎず、水配合ヘアスプレーにおいてはその噴射量が8g/10秒以上であることが好ましいことを示すものではない。しかも、この結果は、図3(水配合割合0%のとき)及び4(水配合25%のとき)の結果をも併せてみると、水を50%配合し、噴射容器のバルブのステム径が0.4及び0.5mmでかつVT比が0.19のときは、他の場合と比べ、霧粒子径は最大となっており、これを受けて内容物の微粒化が困難になるとも記載しているのであり、この点からみても、上記実験結果における噴射量が8g/10秒以上になる場合を好ましいものとしているわけではないとすべきである。さらに、刊行物9においては、上市された3種の水配合ヘアスプレー製品(水配合割合;ヘアスプレー全体に対して13〜43重量%)の噴射量がいずれも4g/10秒前後である旨示され、これに比べて、本件発明の噴射量は極めて多く、水配合スプレーの通常の噴射量を遥かに超えるものである。以上の点からみると、刊行物9の記載も、本件発明のヘアスプレーにおいてその噴射量を8g/10秒以上にすべきことを示唆するものとはいえない。 してみれば、本件発明の構成は、刊行物1、2、4、5、6及び7の記載に、さらに刊行物3,8及び9の記載を加えてみても当業者が容易に想到できるものとはいえず、しかも、本件発明は、毛髪の乱れを直したい領域及びその領域の毛髪の根本にまで素早くかつ充分な水分を供給して毛髪の寝癖等の乱れを良好に直すことができ、しかも優れたセット性を有する整髪用エアゾールスプレー製品得ることを目的、効果とするものであるのに対して、刊行物1〜9においては、毛髪の乱れを直したい領域及びその領域の毛髪の根本にまで素早くかつ充分な水分を供給しようとする着想自体見いだせなものである。 したがって、以上の点からみると、本件発明は刊行物1〜9に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。また、本件訂正後の請求項1〜6及び10の発明(訂正前の請求項1〜7及び11の発明に対応)は、いずれも本件発明をさらに限定した発明であるから、これら請求項の発明も項、刊行物1〜9に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとはいえない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求は認めることができ、また、本件請求項1〜6及び10に係る特許は、本件異議申立ての理由及び証拠によっては取消すことができない。 さらに、他に本件訂正後の請求項1〜6及び10に係る特許を取消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 整髪用エアゾールスプレー製品 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 以下の成分(A)〜(C) (A) エタノール 15〜35重量% (B) 毛髪固定用高分子化合物 0.05〜5重量% (C)水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=60/40〜90/10(重量比)の比率で含有し、25℃における噴射量が89/10秒以上に調整されており、かつ噴射がミスト状である整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項2】 以下の成分(A)〜(C) (A) エタノール 20〜30重量% (B) 毛髪固定用高分子化合物 0.05〜3重量% (C) 水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=65/35〜80/20(重量比)の比率で含有し、且つ25℃における噴射量が10g/10秒以上に調整されている請求項1記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項3】 25℃における噴射量が10〜16g/10秒に調整されている請求項1又は2記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項4】 成分(B)の毛髪固定用高分子化合物が、両性ポリマー、アニオンポリマー、カチオンポリマー、ノニオンポリマー、天然高分子もしくはそれらの誘導体、及び水分散性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項5】 成分(B)の毛髪固定用高分子化合物が酸性基又は塩基性基を有する場合に、その少なくとも一部が中和されて塩の形態となっている請求項4記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項6】 整髪剤原液が、更に成分(D)としてポリエーテル変性シリコーンオイルを含有する請求項1又は2記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項7】 成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルのHLB値が5以下である請求項6記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項8】 整髪剤原液中の成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルの含有量が0.0005〜0.005重量%である請求項6又は7記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項9】 整髪剤原液中の成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルの含有量が0.0008〜0.002重量%である請求項8記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項10】 ポリエーテル変性シリコーンオイルが、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体又はポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体である請求項6〜9のいずれかに記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項11】 整髪剤原液と噴射剤とが、メカニカルブレイクアップ構造の噴口を備えたエアゾールスプレー用耐圧容器に充填されている請求項1〜10のいずれかに記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、整髪用エアゾールスプレー製品に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、毛髪に水分を供給し浸透させて柔軟化させることにより毛髪の乱れを手軽に直して整髪することを一つの目的として、種々のスプレー式の整髪料製品、例えば、以下に説明するような手動ポンプ式のスプレー整髪料製品、圧縮ガスを噴射剤とするエアゾールスプレー整髪料製品あるいは液化ガスを噴射剤とするエアゾールスプレー整髪料製品などが上市されている。 【0003】 ヘアブロースプレーやスタイリングウォーターなどと称されている手動ポンプ式のスプレー整髪料製品は、エタノール5〜30重量%、カチオン界面活性剤0.1〜1重量%及びバランス量の水から主として構成される整髪剤原液を手動式ポンプ容器に充填したものである。この製品の場合、手動ポンプを手で操作(ポンピング)することにより比較的含水量の多い整髪剤原液が噴口からミスト状に噴射される。 【0004】 また、圧縮ガスを噴射剤とするエアゾールスプレー整髪料製品の場合、大きく二種類に分類される。その一つは、上述の手動ポンプ式のスプレー整髪料製品と同様の比較的含水量の多い整髪剤原液を、窒素ガスなどの圧縮ガスとともにエアゾールスプレー用耐圧容器に充填したものである。この場合、メカニカルブレイクアップ構造(図1)の噴口Aが使用されており、整髪剤原液がその噴口からミストとして噴射される。他方は、エタノール40〜70重量%、薬効成分0.1〜1重量%及びバランス量の水から主としてなるヘアトニック剤原液を、炭酸ガスや窒素ガスなどの圧縮ガスとともにエアゾールスプレー用耐圧容器に充填したものである。この製品の場合、ミストの形成能力は低いが、内容物を狭いパターンで遠くまで噴射することのできるストレート構造(図2)又はフォワードテーパー構造(図3)の噴口Aが使用されており、その噴口Aからヘアトニック剤組成物がジェット噴流として噴射される。この製品は、本来的にはヘアトニックスプレーや育毛スプレーとして使用されるものであるが、整髪用エアゾールスプレーとしても用いられている。 【0005】 また、液化ガスを噴射剤とするエアゾールスプレー整髪料製品は、エタノール50〜85重量%、水15〜50重量%及び被膜形成成分(例えば、アクリル系樹脂)1〜10重量%から主として構成される整髪剤原液を、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)などの液化ガス(噴射剤)とともにエアゾールスプレー用耐圧容器に、原液/噴射剤=50/50程度の重量比率で充填したものである。この製品の場合、耐圧容器のアクチュエーターにおいては、遠くまでは噴射することはできないが、細かいミストを形成でき且つそのミストを比較的広い面積の領域に噴射することができるリバーステーパー構造(図4)あるいはメカニカルブレイクアップ構造(図1)の噴口Aが使用されており、その噴口から整髪剤原液がミストとして噴射される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上述した従来の手動ポンプ式スプレー整髪料製品の場合、一回のポンピングで噴射できる整髪剤原液の量が少なく、また、噴射圧も低いために、毛髪の寝癖等の乱れを直すのに十分な量の整髪剤原液を毛髪全体、特に毛髪の根元に行き渡らせるためには、かなりの回数のポンピングを行わなければならないという問題がある。 【0007】 また、従来の圧縮ガスを噴射剤として使用して含水整髪剤原液をミスト状に噴射させるエアゾールスプレー整髪料製品の場合、噴射剤の気化現象がないためにスプレーの勢いが極端に弱く、毛髪の乱れを直すのに十分な量の整髪剤原液を毛髪の根元にまで供給することができないという問題がある。 【0008】 また、従来の圧縮ガスを噴射剤として使用してヘアトニック剤などの整髪剤原液をジェット噴流として噴射させるエアゾールスプレー製品の場合には、整髪剤原液を局所的に毛髪の根元に供給できるが、髪の寝癖等の乱れを直すことが必要とされるある程度の面積の領域全体に整髪剤原液を供給しようとすると、使用量が過多となって液だれが生じ、それが顔に垂れたり衣服を汚したりするという問題がある。また、局所的に整髪剤原液が供給されるために、意図した部分に確実に供給するのが容易でないという問題がある。更に、その整髪剤原液は、エタノール含量が多いために乾燥しやすく毛髪に水分を十分に浸透させることができないという問題がある。 【0009】 一方、液化ガスを噴射剤として使用する従来のエアゾールスプレー整髪料製品の場合、液化ガスが噴射時に膨脹するので、整髪剤原液が比較的高い噴射圧でミスト状に噴出されるという利点を有する。この利点は、髪の寝癖等の乱れを直すべき領域全体に、整髪剤原液をまんべんなく供給することを可能とする。しかし、この場合に使用する整髪剤原液は、エタノール含量が多く、しかも噴射剤の充填比率が比較的高いために乾燥しやすいものである。このため、液化ガスを噴射剤として使用する従来のエアゾールスプレー整髪料製品の場合、毛髪に水分を浸透させることにより髪の寝癖等の乱れを十分に直し整髪することができないという問題がある。 【0010】 また、一般に上述のようなエアゾールスプレー製品に対しては、寝癖等の毛髪の乱れを直すことだけでなく、毛髪をべたつかせずにセットできるようにすることも求められるようになっている。 【0011】 本発明は以上の従来技術の課題を解決しようとするものであり、毛髪の乱れを直したい領域及びその領域の毛髪の根元にまで素早く且つ十分な水分を供給して毛髪の寝癖等の乱れを良好に直すことができ、しかも優れたセット性を有する整髪用エアゾールスプレー製品を提供することを目的とする。 【0012】 本発明者は、エアゾールスプレー用耐圧容器に、エタノールと毛髪固定用高分子化合物と水とを特定の配合割合で含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを特定の範囲で充填し、単位時間当りの噴射量を特定の値以上に設定し、かつ噴射がミスト状になるように調整された整髪用エアゾールスプレー製品が、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 【0013】 即ち、本発明は、以下の成分(A)〜(C) (A) エタノール 15〜35重量% (B) 毛髪固定用高分子化合物 0.05〜5重量% (C) 水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=60/40〜90/10(重量比)の比率で含有し、25℃における噴射量が8g/10秒以上に調整されており、かつ噴射がミスト状である整髪用エアゾールスプレー製品を提供する。 【0014】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の整髪用エアゾールスプレー製品を詳細に説明する。 【0015】 本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、基本的には整髪剤原液と噴射剤とをエアゾールスプレー用耐圧容器に充填したものである。このようなエアゾールスプレー用耐圧容器としては、従来のエアゾールスプレー製品において用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。 【0016】 次に、本発明で使用する整髪剤原液について説明する。 【0017】 整髪剤原液は、前述のように、成分(A)のエタノール、成分(B)の毛髪固定用高分子化合物及び成分(C)の水を少なくとも含有する。 【0018】 ここで、成分(A)のエタノールは、整髪剤原液の乾燥速度を向上させ、しかも毛髪への馴染みを向上させるために用いられている。 【0019】 成分(A)のエタノールの配合量は、整髪剤原液中に15〜35重量%、好まくは20〜30重量%とする。実質的にエタノールが未添加(1重量%未満)であると、毛髪の乾燥速度が遅くなり、また、毛髪へ馴染みにくくなる。50重量%を超えると、相対的に水分含量が減り、しかも乾燥速度が速まるので、十分に水分が毛髪に浸透しにくくなり、そのため毛髪の寝癖等の乱れを直す効果が不十分となる。 【0020】 また、成分(B)の毛髪固定用高分子化合物は、毛髪をセットし、そのスタイルを保持するために用いられている。 【0021】 成分(B)の毛髪固定用高分子化合物の配合量は、整髪剤原液中に0.05〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.1〜2.5重量%とする。0.05重量%未満であると、毛髪のスタイルを保持しにくくなり、5重量%を超えると毛髪の乱れを直す際に櫛やブラシの通り性が低下する。また、仕上がりの感触が不自然に重くなる。 【0022】 このような成分(B)の毛髪固定用高分子化合物としては、毛髪に付着して皮膜を形成し得るものであれば特に制限されず、両性ポリマー、アニオンポリマー、カチオンポリマー、ノニオンポリマー、天然高分子又はその誘導体のいずれでも良く、更に水分散性ポリエステル樹脂を使用することもできる。 【0023】 両性ポリマーの具体例としては、ユカフォーマーAM-75、SM(以上、三菱化学社製)等のジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、アンフォマー28-4910、LV-71(以上、ナショナル・スターチ社製)等のアクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体などを挙げることができ、中でもユカフォーマーSM、アンフォマーLV-71を好ましく使用することができる。 【0024】 アニオンポリマーの具体例としては、ガントレッツES-225、ES-425、SP-215(以上、ISP社製)等のメチルビニルエーテル/無水マレイン酸アルキルハーフエステル共重合体;レジン28-1310(ナショナル・スターチ社製)、ルビセットCA(BASF社製)等の酢酸ビニル/クロトン酸共重合体;レジン28-2930(ナショナル・スターチ社製)等の酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体;ルビセットCAP(BASF社製)等の酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体;ADVANTAGECP(ISP社製)等の酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロニルアクリレート共重合体;プラスサイズL53PB(互応化学社製)、ダイヤホールド(三菱化学社製)等の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ウルトラホールド8、ウルトラホールド・ストロング(以上、BASF社製)、アンフォマーV-42(ナショナル・スターチ社製)等のアクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体;ルビフレックスVBM35(BASF社製)等のポリビニルピロリドン/アタリレート/(メタ)アクリル酸共重合体などを挙げることができ、中でも、ガントレッッES-225、プラスサイズL53PBを好ましく使用することができる。 【0025】 カチオンポリマーの具体例としては、ルビカットFC370、FC550、FC905、HM552、MonoCP(以上、BASF社製)等のビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体;セルカットH-100、L-200(以上、ナショナル・スターチ社製)等のヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド;ガフカット734、755N(以上、ISP社製)等のビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体;コポリマー845、937、958(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体;コポリマーVC-713(ISP社製)等のポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体;ガフカットHS-100(ISP社製)等のビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体;特開平2-180911号公報に記載の水溶性高分子化合物等のアルキルアクリルアミド/アタリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体等を挙げることができ、特にガフカット734を好ましく使用することができる。 【0026】 ノニオンポリマーの具体例としては、ルビスコールK12、17、30、60、80、90(以上、BASF社製)、PVP K15、30、60、90(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン;ルビスコールVA28E、37E、55E、64E、73E(以上、BASF社製)、PVP/VA E-735、E-635、E-535、E-335、S-630、W-735(以上、ISP社製)等のポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体;ルビスコールVAP343(BASF社製)等のポリビニルピロリドン/酢酸ビニル/プロピオン酸ビニル三元共重合体;Dowlex(ダウ・ケミカル社製)等の酢酸ビニル/N-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン共重合体等を挙げることができ、中でもルビスコールVA55E、PVP/VA E-535を好ましく使用することができる。 【0027】 天然高分子またはその誘導体の具体例としては、グア-ガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、キサンタンガム、プルラン、カラギーナン等の天然多糖類;キトサン塩、カルボキシメチルキチン、ヒドロキシプロピルキトサン等のキチン誘導体;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子化合物、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子化合物;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子化合物などを挙げることができ、中でもカラギーナン、ヒドロキシプロピルキトサンを好ましく使用することができる。 【0028】 なお、これらの毛髪固定用高分子化合物のうち、酸性基を有するものについては、感触等の点から、酸性基の一部又は全部を中和して塩に変換したものが好ましい。そのような塩としては、特に制約はなく、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アミノメルカプトプロパンジオール、トリイソプロパノールアミン、グリシン、ヒスチジン、アルギニン等の有機塩基塩を挙げることができる。中でも、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの塩を好ましく使用することができる。 【0029】 また、成分(B)の毛髪固定用高分子化合物のうち、塩基性基を持った高分子化合物については、その塩基性基の一部又は全部を中和して塩に変換したものが好ましい。そのような塩としては、特に制約はないが、無機酸塩としては塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸の塩が好ましく、有機酸塩としては、酢酸、乳酸、グリコール酸、ジメチロールプロピオン酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、ピロリドンカルボン酸等の有機酸の塩が好ましい。 【0030】 以上説明した毛髪固定用高分子化合物の他に、成分(B)の毛髪固定用高分子化合物として水分散性ポリエステル樹脂を用いることもできる。このような水分散性ポリエステル樹脂としては、水不溶性で水に分散可能なものであれば特に制限されず、中でも、水に分散するのに充分な量の-SO3M基(Mは水素原子または金属イオンを示す)を有するポリエステルを挙げることができる。このような-SO3M基を有するポリエステルとしては、一種以上のジカルボン酸化合物と、重合にあずかる官能基以外にスルホン酸基を芳香核上に有する二官能モノマーの一種以上とを縮合させて得られるものを挙げることができ、特にジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸及びスルホイソフタル酸を縮合させて得られたものが好ましい。このようなポリエステルの具体例としては、Eastman AQ38S、55S(イーストマン・ケミカルプロダクツ社製)等の市販品を使用することができる。 【0031】 また、成分(C)の水は、毛髪を柔軟化させて整髪しやすくするために用いられている。 【0032】 成分(C)の水の配合量は、整髪剤原液全体から成分(A)のエタノール及び成分(B)の毛髪固定用高分子化合物と、必要に応じて添加される他の添加剤とを除いた量とであるが、水の配合量が少な過ぎると十分に毛髪を柔軟化することができないので、整髪剤原液中に少なくとも60重量%以上となるように配合する。 【0033】 本発明で使用する整髪剤原液には、更に、成分(D)として、スプレーの均一性を向上させるために、水とエタノールとの混合溶液に溶解するポリエーテル変性シリコーンオイル使用することが好ましい。この場合、HLB値が5以下のものを使用することが好ましい。これにより、スプレーの均一性を向上させることができ、特に低温時において顕著に向上させることができる。ここで、HLB値とはポリエーテル変性シリコーンオイル中のポリエーテル部分(通常はポリオキシエチレン部分)の重量%の数値を5で除した値に相当する。 【0034】 このような成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルの配合量は、少な過ぎると均一で糸奇麗なスプレーを行なうことができず、多過ぎるとスプレーが拡散し過ぎるために、所望の箇所以外の毛髪に整髪剤原液が付着し、毛髪の根元に整髪剤原液が供給されにくくなるので、整髪剤原液中に好ましくは0.0005重量%〜0.005重量%、より好ましくは0.0008重量%〜0.002重量%とする。 【0035】 なお、成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、従来より、毛髪化粧料において使用されているものを使用することができる。例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体等を好ましく使用することができる。具体的には、SH3775E(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、HLB値5)、KF945A(信越化学工業株式会社、HLB値4.5)、KF6015(信越化学工業株式会社、HLB値4.5)、KF6016(信越化学工業株式会社、HLB値4.5)、KF6017(信越化学工業株式会社、HLB値4.5)などを挙げることができる。 【0036】 なお、本発明で使用する整髪剤原液には、必要に応じて毛髪化粧料に通常用いられている各種の添加剤、例えば、油性成分、界面活性剤、粉末成分、保湿剤、粘度調整剤、有機溶剤、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、生薬などを適宜配合することができる。 【0037】 本発明の整髪用エアゾールスプレー製品においては、整髪剤原液を噴射するためにジメチルエーテル(DME)からなる噴射剤を使用する。これは、DMEの水に対する溶解性が高いため、従来にくらべ比較的低い成分(A)のエタノールの配合範囲でも、エアゾールスプレー用耐圧容器中で整髪剤原液と均一に混合することができ、そのため噴射時に整髪剤原液を均一なミストとして容易に噴出することができるためである。 【0038】 なお、エアゾールスプレー用耐圧容器中で整髪剤原液と噴射剤とが均一に混合することができる範囲内で、ジメチルエーテルに加えて他の噴射剤(例えば、LPG)を添加してもよい。 【0039】 本発明において、整髪剤原液と噴射剤との配合(重量)比率は、整髪剤原液/噴射剤=60/40〜90/10、好ましくは65/35〜80/20の範囲になるようにする。整髪剤原液の配合比率が90%を超えると、均一なスプレーとならず、60%未満ではスプレーのミストが過度に細かくなって拡散し、このため、毛髪の根元に効果的に水を供給できなくなり、寝癖等の毛髪の乱れを直しにくくなる。 【0040】 本発明の整髪用エアゾールスプレー製品においては、整髪剤原液の噴射量を、寝癖等の髪の乱れを直し且つセットするのに十分な量の整髪剤原液を毛髪及び毛髪の根元に比較的短時間で供給するために、25℃において8g/10秒以上、好ましくは10g/10秒以上、より好ましくは10〜16g/10秒となるように調整する。このような本発明における整髪剤原液の噴射量は、従来の整髪用エアゾールスプレー製品の噴射量(2〜4g/10秒)に比べて非常に高い値に設定されている。 【0041】 本発明において、整髪用エアゾールスプレー製品の噴射量の調整は、整髪剤原液の組成、それと噴射剤との配合比率、噴射ボタンの噴口形状などにより異なるが、主としてバルブ孔径(ステム孔径、ハウジング孔径)や噴射ボタン孔径を調整することにより行うことができる。但し、ステム孔を過度に大きくすると、均一なスプレーを得ることが困難になるので、ハウジング孔を十分に大きくすることが有効である。このような孔径の組み合わせ例としては、ステム孔径0.4mm、ハウジング孔径2.0mm、ボタン孔径0.6mmといった組み合わせを挙げることができる。 【0042】 本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、常法により製造することができる。例えば、成分(A)〜成分(C)と、必要に応じて更に成分(D)や他の添加剤とを均一に溶解もしくは分散させることにより整髪剤原液を調製し、その原液を噴射剤とともにエアゾールスプレー用耐圧容器に充填すればよい。この場合、エアゾールスプレー用耐圧容器としては、種々のタイプのものを使用することができるが、メカニカルブレイクアップ構造の噴口を有するエアゾールスプレー用耐圧容器を使用することが好ましい。 【0043】 以上説明したように、本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、エタノールと毛髪固定用高分子化合物と水とが特定範囲の量で配合されている整髪剤原液を使用する。従って、毛髪に十分な水分を供給して毛髪の寝癖等の乱れを良好に直すことができ、また優れたセット性も有する。更に、本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、噴射剤として特定の配合比率のジメチルエーテルを使用し、その噴射量が8g/10秒以上に調整されている。よって、本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、寝癖等の髪の乱れを直したい部分の毛髪にまんべんなく、しかも毛髪の根元にまで十分に整髪剤原液を素早く供給することが可能となる。 【0044】 特に、HLB値が5以下のポリエーテル変性シリコーンオイルを添加した場合には、従来より少ない量の噴射剤でも良好なスプレー特性でミスト状に整髪剤原液を噴射させることが可能となる。 【0045】 【実施例】 以下、本発明を実施例に従って具体的に説明する。 【0046】 実施例1〜8及び比較例1〜5 表1〜表4に示した原液成分を均一に混合することにより整髪剤原液を調製し、更にその原液を表1〜表4に挙げた配合比率(重量基準)でジメチルエーテル(噴射剤)ともに、メカニカルブレイクアップ構造の噴口を備えたエアゾールスプレー用耐圧容器(ステム孔径0.4mm/ハウジング孔径2.0mm/噴射ボタン孔径0.6mm)に充填することにより整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0047】 得られたエアゾールスプレー製品を男性の専門パネラー10名に実際に使用させ、「髪への馴染み」、「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及びスプレーが広がりすぎて飛び散るか否か、あるいはスプレーが均一に広がらないか否かという観点からみた「スプレー特性」について官能評価させ、更に、その官能評価の結果を以下の基準に従って4段階に評価した。得られた結果を表1〜表4に示す。 【0048】 なお、実施例1の整髪用エアゾールスプレー製品は、整髪剤原液を11.4g/10秒という量で噴射することができた。 【0049】 評価基準 ランク 状態 ◎: 良好もしくはやや良好としたパネラーの人数が8名以上の場合 ○: 良好もしくはやや良好としたパネラーの人数が6〜7名の場合 △: 良好もしくはやや良好としたパネラーの人数が4〜5名の場合 ×: 良好もしくはやや良好としたパネラーの人数が3名以下の場合 【0050】 【表1】 【0051】 【表2】 【0052】 【表3】 【0053】 【表4】 【0054】 表1〜表3からわかるように、実施例1〜8の本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、いずれの評価項目について「×」と評価されたものはなく、優れた結果を示した。 【0055】 一方、表4からわかるように、比較例1の整髪用エアゾールスプレー製品の場合には、整髪剤原液中におけるエタノールを過剰に使用しているので、特に毛髪に水分を十分に供給する前に乾燥してしまい、寝癖直し効果が不十分であった。また、比較例2の整髪用エアゾールスプレー製品の場合には、毛髪固定用高分子化合物の使用量が多すぎるので、特に乾燥後にべたつくという問題があった。比較例3の場合には、毛髪固定用高分子化合物を使用していないので、特にヘアスタイルの保持性に問題があった。比較例4の場合には、原液に対する噴射剤の配合量が多すぎるので、特に「スプレー特性」の点で問題があった。比較例5の場合には、原液に対する噴射剤の配合量が少な過ぎるので、特に「スプレー特性」の点で問題があった。 【0056】 比較例6実施例1で使用したメカニカルブレイクアップ構造の噴口を備えたエアゾールスプレー用耐圧容器(ステム孔径0.4mm/ハウジング孔径2.0mm/噴射ボタン孔径0.6mm)のステム孔径を0.3mmとし且つハウジング孔径を0.3mmとした以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。この整髪用エアゾールスプレー製品の噴射量は、5.6g/10秒であった。このため、この比較例6のエアゾールスプレー製品は、毛髪の根元部分に十分に整髪剤原液を供給することができず、更に頭髪全体に十分な整髪剤原液をすばやく供給することもできなかった。 【0057】 なお、実施例1の場合には、既に記載したように11.4g/10秒の量で噴射することができたのであるから、噴射量はバルブの孔(ステム孔やハウジング孔等)の径を変化させることにより調整できることがわかる。 【0058】 実施例9 表5に従って整髪剤原液を調製し、且つその原液とジメチルエーテル(噴射剤)とを表5に示す配合割合とする以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0059】 得られたエアゾールスプレー製品について実施例1と同様に、「髪への馴染み」、「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及び「スプレー特性」について評価したところ、いずれも実施例1と同様の好ましい結果が得られた。 【0060】 【表5】 【0061】 実施例10 表6に従って整髪剤原液を調製し、且つその原液とジメチルエーテル(噴射剤)とを表6に示す配合割合とする以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0062】 得られたエアゾールスプレー製品について実施例1と同様に、「髪への馴染み」、「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及び「スプレー特性」について評価したところ、いずれも実施例1と同様の好ましい結果が得られた。 【0063】 【表6】 【0064】 実施例11 表7に従って整髪剤原液を調製し、且つその原液とジメチルエーテル(噴射剤)とを表7に示す配合割合とする以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0065】 得られたエアゾールスプレー製品について実施例1と同様に、「髪への馴染み」「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及び「スプレー特性」について評価したところ、いずれも実施例1と同様の好ましい結果が得られた。 【0066】 【表7】 【0067】 実施例12 表8に従って整髪剤原液を調製し、且つその原液とジメチルエーテル(噴射剤)とを表8に示す配合割合とする以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0068】 得られたエアゾールスプレー製品について実施例1と同様に、r髪への馴染み」、「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及び「スプレー特性」について評価したところ、いずれも実施例1と同様の好ましい結果が得られた。 【0069】 【表8】 【0070】 実施例13 表9に従って整髪剤原液を調製し、且つその原液とジメチルエーテル(噴射剤)とを表9に示す配合割合とする以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0071】 得られたエアゾールスプレー製品について実施例1と同様に、「髪への馴染み」、「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及び「スプレー特性」について評価したところ、いずれも実施例1と同様の好ましい結果が得られた。 【0072】 【表9】 【0073】 実施例14 表10に従って整髪剤原液を調製し、且つその原液とジメチルエーテル(噴射剤)とを表10に示す配合割合とする以外は、実施例1と同様にして整髪用エアゾールスプレー製品を製造した。 【0074】 得られたエアゾールスプレー製品について実施例1と同様に、「髪への馴染み」、「寝癖直し効果」、「ヘアスタイルのまとめ易さ」、「ヘアスタイルの保持」、「乾燥後のベタツキのなさ」及び「スプレー特性」について評価したところ、いずれも実施例1と同様の好ましい結果が得られた。 【0075】 【表10】 【0076】 【発明の効果】 本発明の整髪用エアゾールスプレー製品は、毛髪に十分な水分を供給して毛髪の寝癖等の乱れを良好に直し、且つ毛髪を良好にセットすることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 メカニカルブレイクアップ構造の噴口を有するアクチュエーターの断面図(同図(a))及び噴口に形成された溝の正面図(同図(b))である。 【図2】 ストレート構造の噴口を有するアクチュエーターの断面図である。 【図3】 フォワードテーパー構造の噴口を有するアクチュエーターの断面図である。 【図4】 リバーステーパー構造の噴口を有するアクチュエーターの断面図である。 【符号の説明】 A 噴口 |
訂正の要旨 |
1.特許請求の範囲を次の通りに訂正する。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 以下の成分(A)〜(C) (A) エタノール 15〜35重量% (B) 毛髪固定用高分子化合物 0.05〜5重量% (C) 水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=60/40〜90/10(重量比)の比率で含有し、25℃における噴射量が8g/10秒以上に調整されており、かつ噴射がミスト状である整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項2】 以下の成分(A)〜(C) (A) エタノール 20〜30重量% (B) 毛髪固定用高分子化合物 0.05〜3重量% (C) 水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=65/35〜80/20(重量比)の比率で含有し、且つ25℃における噴射量が10g/10秒以上に調整されている請求項1記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項3】 25℃における噴射量が10〜16g/10秒に調整されている請求項1又は2記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項4】 成分(B)の毛髪固定用高分子化合物が、両性ポリマー、アニオンポリマー、カチオンポリマー、ノニオンポリマー、天然高分子もしくはそれらの誘導体、及び水分散性ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項5】 成分(B)の毛髪固定用高分子化合物が酸性基又は塩基性基を有する場合に、その少なくとも一部が中和されて塩の形態となっている請求項4記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項6】 整髪剤原液が、更に成分(D)としてポリエーテル変性シリコーンオイルを含有する請求項1又は2記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項7】 成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルのHLB値が5以下である請求項6記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項8】 整髪剤原液中の成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルの含有量が0.0005〜0.005重量%である請求項6又は7記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項9】 整髪剤原液中の成分(D)のポリエーテル変性シリコーンオイルの含有量が0.0008〜0.002重量%である請求項8記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項10】 ポリエーテル変性シリコーンオイルが、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体又はポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体である請求項6〜9のいずれかに記載の整髪用エアゾールスプレー製品。 【請求項11】 整髪剤原液と噴射剤とが、メカニカルブレイクアップ構造の噴口を備えたエアゾールスプレー用耐圧容器に充填されている請求項1〜10のいずれかに記載の整髪用エアゾールスプレー製品。」 2.特許明細書の段落【0013】、【0019】、【0032】を特許請求の範囲の記載と整合するようにそれぞれ次の通りに訂正する。 「 【0013】 即ち、本発明は、以下の成分(A)〜(C) (A) エタノール 15〜35重量% (B) 毛髪固定用高分子化合物 0.05〜5重量% (C) 水 60重量%以上 を含有する整髪剤原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=60/40〜90/10(重量比)の比率で含有し、25℃における噴射量が89/10秒以上に調整されており、かつ噴射がミスト状である整髪用エアゾールスプレー製品を提供する。」 「 【0019】 成分(A)のエタノールの配合量は、整髪剤原液中に15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%とする。実質的にエタノールが未添加(1重量%未満)であると、毛髪の乾燥速度が遅くなり、また、毛髪へ馴染みにくくなる。50重量%を超えると、相対的に水分含量が減り、しかも乾燥速度が速まるので、十分に水分が毛髪に浸透しにくくなり、そのため毛髪の寝癖等の乱れを直す効果が不十分となる。」 「 【0032】 成分(C)の水の配合量は、整髪剤原液全体から成分(A)のエタノール及び成分(B)の毛髪固定用高分子化合物と、必要に応じて添加される他の添加剤とを除いた量とであるが、水の配合量が少な過ぎると十分に毛髪を柔軟化することができないので、整髪剤原液中に少なくとも60重量%以上となるように配合する。」 |
異議決定日 | 2001-02-05 |
出願番号 | 特願平8-52481 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A61K)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 高原 慎太郎、福井 悟 |
特許庁審判長 |
吉村 康男 |
特許庁審判官 |
宮本 和子 谷口 浩行 |
登録日 | 1999-08-06 |
登録番号 | 特許第2961730号(P2961730) |
権利者 | 花王株式会社 |
発明の名称 | 整髪用エアゾールスプレー製品 |
代理人 | 武石 靖彦 |
代理人 | 村田 紀子 |
代理人 | 田治米 惠子 |
代理人 | 田治米 登 |
代理人 | 吉崎 修司 |
代理人 | 田治米 惠子 |
代理人 | 田治米 登 |