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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C23C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1044658
異議申立番号 異議1999-74516  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-01 
確定日 2001-03-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2900691号「蒸着フィルムおよびその透明化方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2900691号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔一〕 本件特許は、平成4年(1992)2月28日に出願され(特願平4-78551号)、平成11年3月19日に特許権の設定の登録(特許番号第2900691号。請求項数 2)がされ、平成11年6月2日に特許掲載公報が発行されたものである。
これに対して、本件特許の願書に添付した明細書(以下では、本件特許明細書という。)の特許請求の範囲の請求項1及び同2の構成の発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して、また、同請求項1の構成の発明は、特許法第29条の2の規定に違反して、特許されたものであるから、取り消すべきであるとの特許異議の申立てがされた。
当審は、同趣旨の取消理由を通知し、本件特許権者は、これに対して、意見書及び訂正請求書を提出し、上記請求項1を削除し、同請求項2を訂正することを請求した。
〔二〕 訂正請求の成否
(1) 訂正の内容
(イ) 訂正事項a
上記請求項1を削除する。
(ロ) 訂正事項b
上記請求項2の記載
「【請求項2】(A)および(B)の合計に対し、(A)の量が0.05〜50モル%である蒸着原料を混合し、蒸着することを特徴とする請求項1記載の蒸着フィルムの透明化方法。」を下記のとおり訂正する。
「【請求項1】プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、(B)けい素、および(C)けい素酸化物を混合してなり、蒸着原料中の元素(A)の量が、(A)と(B)および(C)中のけい素との合計に対し、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法。」
以下では、上記構成の発明を本件訂正請求発明という。
(ハ) 訂正事項c
本件特許明細書の第1頁第19行(段落【0001】の末尾から2行)の「蒸着フィルムおよびその透明化方法」を「蒸着フィルムの透明化方法」と訂正する。
(ニ) 訂正事項d
本件特許明細書の段落【0005】の記載を
「【課題を解決するための手段】
本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、(B)けい素、および(C)けい素酸化物を混合してなり、蒸着原料中の元素(A)の量が、(A)と(B)および(C)中のけい素との合計に対し、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法である。」と訂正する。
(ホ) 訂正事項e
本件特許明細書の段落【0008】の記載を
「本発明において、蒸着を安定に行うためには、蒸着原料中の元素(A)の量は0.05〜50モル%である。また、蒸着薄膜層中で元素(A)は均一に分布していても、表面に近くなるほど元素(A)の濃度が高くなっていても、その逆に低くなっていてもよい。また、本発明の蒸着フィルムの性能を阻害しない範囲で、元素(A)、けい素および酸素以外の元素である、炭素、ちっ素、いおう、ふっ素を含む。」と訂正する。
(ヘ) 訂正事項f
本件特許明細書の段落【0009】の記載を
「本発明において、これらの蒸着薄膜層を得るための蒸着原料としては、(1)元素(A)のふっ化、ちっ化物、炭化物または硫化物、あるいはこれらの混合物、および(2)けい素およびけい素酸化物の混合物をあげることができる。けい素酸化物としては、SiO、Si2O3、Si3O4、SiO2の1種または2種以上である。」と訂正する。
(当審注。 ただし、上記中、(1)〜(3)の番号は、本件特許明細書では、対応する数字を白丸で囲んだ番号である。)
(ト) 訂正事項g
本件特許明細書の段落番号【0017】の記載を下記のとおり訂正する。
「実施例2
蒸着原料としてけい素/二酸化けい素/フッ化カリウム=1.0/1.0/0.05(モル比)からなる混合物を用いてそれぞれ実施例1と同様にして、厚さ500Åの蒸着薄膜層を有する蒸着フィルムを得、30μmの未延伸ポリプロピレンを接着した。
実施例1と同様にして試験したところ、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。」
(チ) 訂正事項h
本件特許明細書の段落番号【0007】、【0015】及び【0016】を削除する。そして、同書段落【0008】から段落【0014】までの各段落の番号を、これらの番号順に対応して、それぞれ【0007】から【0013】に、段落番号【0017】及び【0018】をそれぞれ、【0014】及び【0015】に訂正する。

(2) 訂正の適法性
(2-1) 独立特許要件以外の要件
(イ) 訂正事項a
訂正事項aは、特許請求の範囲を減縮し、本件特許明細書の記載事項の範囲内でする訂正するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものとも認められない。
(ロ) 訂正事項b
訂正事項bは、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「請求項1記載の蒸着フィルムの透明化方法」の記載の「請求項1記載の蒸着フィルム」の部分を、その請求項1の記載の「プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物、硫化物、けい化物またはけい酸塩、(B)けい素、および(C)酸素を主成分とする蒸着薄膜層を設けてなる蒸着フィルム」に置き換え、
「【請求項2】(A)および(B)の合計に対し、(A)の量が0.05〜50モル%である蒸着原料を混合し、蒸着することを特徴とする、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物、硫化物、けい化物またはけい酸塩、(B)けい素、および(C)酸素を主成分とする蒸着薄膜層を設けてなる蒸着フィルムの透明化方法。」とし、その「元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物、硫化物、けい化物またはけい酸塩」の部分を「元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物」とするに等しい訂正であるから、訂正事項bは、特許請求の範囲を減縮し、本件特許明細書の記載事項の範囲内でする訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張するものでも、変更するものでもない。
(ハ) 訂正事項c〜同g
これらの訂正事項は、いずれも、上記訂正事項a又は訂正事項bに対応して、本件特許明細書の明りょうでない記載を釈明し、本件特許明細書の記載事項の範囲内でする訂正するものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張するものでも、変更するものでもない。
(ニ) 訂正事項h
これらの訂正事項は、いずれも、単に段落番号を削除又は訂正するものであり、本件特許明細書の明りょうでない記載を釈明し、本件特許明細書の記載事項の範囲内で訂正するものであって特許請求の範囲を実質上拡張するものでも、変更するものでもない。

(2-2) 独立特許要件
なお、以下では、直接引用する場合を除き、引例中にフッ化物、珪素と記載されていても、ふっ化物、けい素と記す。
(イ) 本件訂正請求発明{上記〔二〕(1)(ロ)参照}は、その「元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物」〔以下では、本件訂正請求発明の化合物(A)という。〕と(B)けい素と(C)けい素酸化物とからなり、元素(A)が(B)及び(C)中のけい素を加えた全体に対して、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法の発明であって、本件訂正請求発明の化合物(A)すべてにわたって、特願平3-112212号の願書に最初に添付した明細書(本件特許異議申立人が提示した特開平4-226343号公報)に記載された発明と同一の発明であるとは認められない。
すなわち、上記出願の当初明細書の全記載を検討すると、例えば、表VIのMgF2/SiO2系〔MgF2は上記化合物(A)に該当する〕だけでなく、その特許請求の範囲に記載された「ドーピングされた二酸化珪素の硝子状の被膜」(同明細書の特許請求の範囲の請求項1参照)も、一応、総じて透明であるとされていることは認められるが、Siを含有する対照例C56及びC57が透明であることは具体的に指摘されておらず、かつ、上記明細書には、Siとともに上記化合物(A)をけい素酸化物中に共存させた例も示されていないから、この明細書に本件訂正請求発明の上記蒸着フィルムの透明化方法の発明が記載されていることにはならない。
(ロ) 引例1(特公平5-73825号公報。本件特許異議申立人が提示した甲第1号証刊行物)には、本件訂正請求発明の化合物(A)と(B)けい素と(C)けい素酸化物とからなる上記蒸着原料を蒸着することは記載されていない。
また、引例1には、けい素/二酸化けい素(モル比1/1)、けい素/二酸化けい素/アルミニウム(モル比1/1/0.03)、けい素/二酸化けい素/ニッケルクロム合金(モル比1.0/1.0/0.1)、けい素/二酸化けい素/銀(モル比1.5/1.0/0.07)、けい素/二酸化けい素/けい酸ナトリウム(モル比1.5/1.0/0.5)からなる蒸着原料を用いて、フィルム上に蒸着させたことが記載されているが、これらの透明性がどの程度のものであるか、具体的に示唆する記載はないから、これらの例からは、上記化合物(A)と(B)けい素と(C)けい素酸化物とからなる蒸着原料を用いて蒸着させた蒸着膜がどの程度透明であることを推測することはできない。
ただし、本件訂正請求発明の上記蒸着膜は、その蒸着原料の成分からみて、ある程度透明であることが一般的に推測できないではないとしても、本件訂正請求発明の蒸着フィルムは、ただ透明であるだけでなく、同時に、「ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐薬品性にすぐれ」、かつ「ほとんど無色透明性を必要とする用途に有用な蒸着フィルム」である〔本件特許明細書の段落【0001】参照〕から、本件訂正請求発明(蒸着フィルムの透明化方法の発明)は、引例1に記載されている発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。
なお、本件特許異議申立人は、その異議申立書において、本件特許明細書の表-1には、厚さ1000Åの蒸着薄膜層(けい素/二酸化けい素/フッ化カルシウム、モル比1/1/0.03)を有する蒸着フィルム(実施例1)単体の、400nmにおける光透過率(T%)が80%であるのに対して、厚さ500Åおよび1000Åの蒸着薄膜層(けい素/二酸化けい素、モル比1/1)を有する蒸着フィルム(比較例1-1、同1-2)単体の透過率もそれぞれ80及び70%であることが示されているところ、実施例1と比較例1-1及び比較例1-2の場合の光透過率を比較すると、同程度であるから、本件特許発明の蒸着フィルムの透明性と引例1に記載されている蒸着フィルムの透明性と大差無いはずであると主張している。
しかしながら、上記1000Å厚における透過率は、本件訂正請求発明の場合、80%であるのに対して、比較例1-2の場合は70%であり、この差が技術的に実際上意味がないとは言い切れないし、本件訂正請求発明の蒸着薄膜層の、ふっ化カルシウム以外の(A)成分の透過率に対す影響を引例1の記載から知ることはできないし、さらに、上述したとおり、そもそも、引例1には、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐薬品性だけでなく、同時に透明性も優れた蒸着フィルムを開発するという発明の課題が記載されていない。
(ハ) 当審は、他に本件訂正請求発明が独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

(2-3) そうすると、本件訂正は適法な訂正であるとして認めるべきものである。
〔三〕 特許を維持する理由
本件特許異議申立は、上記〔二〕(2-2)に述べた理由と同一の理由によって理由がなく、また、当審は、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
蒸着フィルムの透明化方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふつ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、(B)けい素、および(C)けい素酸化物を混合してなり、蒸着原料中の元素(A)の量が、(A)と(B)および(C)中のけい素との合計に対し、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、酸素ガス、二酸化炭素ガスなどのガスバリア性、水蒸気バリア性、耐水性および耐薬品性にすぐれ、種々の厳しい環境下におかれてもその性能が安定しており、飲食品、医薬品などの包装材料分野、電気絶縁材料ないし導電材料などの電子材料分野、あるいは医療材料分野などの分野において、ほとんど無色透明性を必要とする用途に有用な蒸着フィルムの透明化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からプラスチックフィルムにアルミニウムを蒸着したフィルムは食品包装などの材料として広く用いられている。これらのアルミニウム蒸着フィルムは可撓性、ガスバリア性、水蒸気バリア性にすぐれるものの、耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性、耐水性、透明性などに劣るため、煮沸殺菌処理を施したり、酸、アルカリなどに接触すると、蒸着層の一部が剥離し、ガスバリア性や水蒸気バリア性がかなり低下するという欠点があった。
【0003】
一方、特開昭49-41469号公報などにより提案された、プラスチックフィルムにSixOy(x=1,2,y=0,1,2,3)なる組成の蒸着薄膜層を設けた蒸着フィルムは、耐薬品性は高いものの、若干黄色味を呈しており、特に蒸着面側に直接印刷した場合は黄色味を呈していることが大きな弊害となり、デザイン上または用途上、例えばエレクトロルミネッセンスの構成材料等においては性能上大きな障害となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐薬品性、および耐水性にすぐれるのみでなく、煮沸殺菌処理を施しても、剥離や亀裂を生じることもなく、また、ガスバリア性や水蒸気バリア性も低下することがなく、ほとんど無色透明な蒸着フィルムを提供するものである。
なお、けい素およびその他の元素を含む蒸着薄膜を設けてなるフィルムも知られている。しかし、特に透明化に有効な手段はほとんど知られていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、(B)けい素、および(C)けい素酸化物を混合してなり、蒸着原料中の元素(A)の量が、(A)と(B)および(C)中のけい素との合計に対し、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法である。
【0006】
本発明においてプラスチックフィルムとしては特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物、芳香族ポリアミド、ふっ素樹脂などを素材とするフィルム、あるいはこれらの1種または2種以上を含む積層フィルムがあり、その表面に印刷やシランカップリング剤、プライマーなどの塗装、コロナ放電処理、低温プラズマ処理などの表面処理が施されたもの、一軸延伸や二軸延伸をされたものであってもよい。また、一般包装用途では、光沢、強度の面から二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどが好んで用いられ、電子材料分野では、ふっ素樹脂フィルムやポリエステルフィルムなどが用いられる。また、巻取り方式で生産する場合には、プラスチックフィルムの厚さは、伸び、しわ、亀裂などの発生の防止の面から、5〜300μmであることが好ましい。
【0007】
本発明において、蒸着を安定に行なうためには、蒸着原料中の元素(A)の量は0.05〜50モル%である。また、蒸着薄膜層中で元素(A)は均一に分布していても、表面に近くなるほど元素(A)の濃度が高くなっていても、その逆に低くなっていてもよい。また、本発明の蒸着フィルムの性能を阻害しない範囲で、元素(A)、けい素および酸素以外の元素である、炭素、ちっ素、いおう、ふっ素を含む。
【0008】
本発明において、これらの蒸着薄膜層を得るための蒸着原料としては、▲1▼元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、あるいはこれらの混合物、および▲2▼けい素およびけい素酸化物の混合物をあげることができる。けい素酸化物としては、SiO,Si2O3,Si3O4,およびSiO2の1種または2種以上である。
【0009】
上記蒸着原料は、必要に応じて、結合剤または粘結剤、崩壊剤、滑沢剤などの成形助剤を加え、湿式または乾式で、造粒、圧縮成形、押出成形などの方法により、ワイヤー状、ロッド状、タブレット状、ペレット状あるいは円柱状、立方体状、直方体状などの形状に成形して用いられる。また、成形中あるいは成形後に大気中、不活性ガス中、あるいは真空中で、乾燥または焼成して、成形物の強度をあげるとともに、含有水分、内蔵ガス、不純物を除去することが好ましい。
蒸着原料は予じめ粉体混合しておくことが好ましく、混合しておくことにより透明性が向上する。
蒸着加熱の方法としては特に制限はなく、高周波誘導加熱、抵抗加熱などの直接加熱、幅射加熱、電子線加熱など従来公知の加熱方式を用いることができる。
【0010】
本発明の蒸着フィルムには、必要に応じて、さらに印刷やコーティングを施したり、ドライプレーティング層を設けたり、粘着剤やラミネート接着剤を用いてまたは用いずにプラスチックフィルムを積層したりしてもよい。そして、フィルムのまま、あるいは袋やチューブなどの形に加工して、飲食品、医薬品、医療、電子材料などの分野で包装材料、ガス遮断材料、電気絶縁材料ないし導電材料などとして広く用いることができる。
【0011】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、例中、酸素ガス透過率(OP)は、同圧法で測定した値であり、その単位はml/m2・24時間・1気圧・25℃・100%RH、透湿度(WVT)は赤外線吸収法で測定した値であり、その単位はml/m2・24時間・40℃・90%RHであり、透明性の評価は分光光度計による400nmにおける蒸着フィルム単体の透過率(T%)を用い、これらの単位の表示はすべて省略した。
【0012】
実施例1
けい素/二酸化けい素/フッ化カルシウム=1/1/0.03(モル比)からなる蒸着原料を成形して得られた直径40mm厚さ35mmのタブレットを円筒状のちっ化ほう素製のるつぼに入れ、1×10-4torrの真空下、高周波誘導加熱装置により1350℃に加熱することにより、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに蒸着を施し、厚さ1000Åの蒸着薄膜層を有する蒸着フィルムを得た。透明性の評価として特定波長における透過率測定を行った。
ラミネート用ポリウレタン系接着剤「アドコート#810」(東洋モートン(株)製、商品名)を用いて、常法により、得られた蒸着フィルムと厚さ50μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを接着した。OPおよびWVTをそれぞれ10点測定し、測定値の平均値を算出した。算出した結果を表1に示す。
比較例1-1,1-2
蒸着原料としてけい素/二酸化けい素=1/1(モル比)からなる混合物を用いて蒸着膜厚を500Å(1-1)および1000Å(1-2)にした以外は実施例1と同様にして測定し算出した結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
実施例2
蒸着原料としてけい素/二酸化けい素/フッ化カリウム=1.0/1.0/0.05(モル比)からなる混合物を用いてぞれぞれ実施例1と同様にして、厚さ500Åの蒸着薄膜層を有する蒸着フィルムを得、30μmの未延伸ポリプロピレンを接着した。
実施例1と同様にして試験したところ、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。
【0015】
【発明の効果】
本発明により、可撓性が高く、ガスバリア性、水蒸気バリア性、耐薬品性および耐水性にすぐれるのみでなく、煮沸殺菌処理を施しても、剥離や亀裂を生じることもなく、また、ガスバリア性や水蒸気バリア性も低下することがなく、ほとんど無色透明な蒸着フィルムが得られるようになった。
 
訂正の要旨 (請求の要旨)
(イ) 訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1を削除する。
(ロ) 訂正事項b
請求項2の記載
「(A)および(B)の合計に対し、(A)の量が0.05〜50モル%である蒸着原料を混合し、蒸着することを特徴とする請求項1記載の蒸着フィルムの透明化方法。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、下記のとおり訂正し、請求項1とする。
「【請求項1】プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、(B)けい素、および(C)けい素酸化物を混合してなり、蒸着原料中の元素(A)の量が、(A)と(B)および(C)けい素酸化物との合計に対し、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法。」
(ハ) 訂正事項c
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の第1頁第19行(段落【0001】の末尾から2行)の「蒸着フィルムおよびその透明化方法」を「蒸着フィルムの透明化方法」と訂正する。
(ニ) 訂正事項d
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0005】の記載を
「【課題を解決するための手段】
本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケルおよびインジウムからなる群から選ばれる元素(A)のふっ化物、ちっ化物、炭化物または硫化物、(B)けい素、および(C)けい素酸化物を混合してなり、蒸着原料中の元素(A)の量が、(A)と(B)および(C)けい素酸化物との合計に対し、0.05〜50モル%である蒸着原料を蒸着することを特徴とする蒸着フィルムの透明化方法。」と訂正する。
(ホ) 訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0008】の記載を
「本発明において、蒸着を安定に行うためには、蒸着原料中の元素A)の量は0.05〜50モル%である。また、蒸着薄膜層中で元素(A)は均一に分布していても、表面に近くなるほど元素(A)の濃度が高くなっていても、その逆に低くなっていてもよい。また、本発明の蒸着フィルムの性能を阻害しない範囲で、元素(A)、けい素および酸素以外の元素である、炭素、ちっ素、いおう、ふっ素を含む。」と訂正する。
(へ) 訂正事項f
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落【0009】の記載を
「本発明において、これらの蒸着薄膜層を得るための蒸着原料としては、(1)元素(A)のふっ化、ちっ化物、炭化物、硫化物、あるいはこれらの混合物、および(2)けい素、けい素酸化物の混合物をあげることができる。けい素酸化物としては、SiO、Si2O3、Si3O4、SiO2の1種または2種以上を用いることができる。」と訂正する。
(当審注。ただし、上記中、(1)〜(3)の番号は、本件特許明細書では、対応する数字を白丸で囲んだ番号である。)
(ト) 訂正事項g
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落番号【0017】の記載を下記のとおり訂正する。
「実施例2
蒸着原料としてけい素/二酸化けい素/フッ化カリウム=1.0/1.0/0.05(モル比)からなる混合物を用いてそれぞれ実施例1と同様にして、厚さ500Åの蒸着薄膜層を有する蒸着フィルムを得、30μmの未延伸ポリプロピレンを接着した。
実施例1と同様にして試験したところ、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。」
(チ) 訂正事項h
明りょうでない記載の釈明を目的として、本件特許明細書の段落0008】から段落【0014】までの各段落の番号をそれぞれ対応して【0007】から【0013】に、段落番号【0017】及び【0018】をそれぞれ、【0014】及び【0015】に訂正し、また、段落番号【0015】及び【0016】を削除する。
異議決定日 2001-03-01 
出願番号 特願平4-78551
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C23C)
P 1 651・ 161- YA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三宅 正之  
特許庁審判長 吉田 敏明
特許庁審判官 唐戸 光雄
能美 知康
登録日 1999-03-19 
登録番号 特許第2900691号(P2900691)
権利者 東洋インキ製造株式会社
発明の名称 蒸着フィルムの透明化方法  

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