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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C04B 審判 一部申し立て 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1044672 |
異議申立番号 | 異議2000-71603 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-12-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-04-14 |
確定日 | 2001-03-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2965548号「高流動性低熱セメント組成物及び高流動性低熱セメント水性スラリー」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2965548号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2965548号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成10年6月1日に特許出願されたものであって、平成11年8月13日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、太平洋セメント株式会社より本件請求項1ないし3に係る発明について特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされ、その後再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年2月8日に上記訂正請求が取り下げられ、新たに訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち訂正事項aないしeのとおりに訂正しようとするものである。 (1)訂正事項a 請求項1を「【請求項1】40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントに、ギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とする高流動性低熱セメント組成物。」に訂正する。 (2)訂正事項b 請求項3を「【請求項3】40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中にギ酸カルシウムのみが配合されていて、高流動性を示すことを特徴とする、高流動性低熱セメント水性スラリー。」に訂正する。 (3)訂正事項c 明細書中の段落【0006】を「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の高流動性低熱セメント組成物は、40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントにギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とするものである。本発明の高流動性低熱セメント組成物において、前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメント重量に対して、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。本発明の高流動性低熱セメント水性スラリーは、40〜70重量%の2CaO・SiO2(以下C2Sと称する)と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3(以下C3Aと称する)とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中に、ギ酸カルシウムのみを配合することによって、前記水性スラリーの流動性を向上させたことを特徴とするものである。本発明の高流動性低熱セメント水性スラリーにおいて、前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメントの重量に対して、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。」に訂正する。 (4)訂正事項d 明細書中の段落【0010】を「【0010】一方、各種セメント組成物の水性スラリー中に、ギ酸塩、例えばギ酸カルシウムが、その他の塩類とともに含まれる場合、この水性スラリーの流動性を低下させ、凝集、凝固などを発生することが、知られているが、本発明においては、低熱セメント(高ビーライトセメントの範疇にある)組成物の水性スラリー中に、ギ酸カルシウムのみが、好ましくは1〜4重量%の含有量の範囲内で含有されるときには、低熱セメント水性スラリーの流動性を実質上低下させることがないことを見出された。また、低熱セメント組成物の水性スラリーを、ギ酸カルシウムのみの存在下に硬化させると、得られるセメント硬化体の短期材齢における強度が、顕著に向上する。」 (5)訂正事項e 明細書中の段落【0015】を削除する。 (6)訂正事項f 明細書中の段落【0022】の表3の記載を訂正事項f-1〜f-7のとおりに訂正し、下記の表とする。 訂正事項f-1:比較例3、材齢28日の比率の数値「108」を「103」に訂正する。 訂正事項f-2:比較例5、材齢91日の比率の数値「98」を「93」に訂正する。 訂正事項f-3:比較例8、材齢28日の比率の数値「108」を「103」に訂正する。 訂正事項f-4:比較例9、材齢28日の圧縮強さの数値「48.1」を「43.1」に訂正する。 訂正事項f-5:比較例10、材齢28日の圧縮強さの数値「38.2」を「33.2」に訂正する。 訂正事項f-6:実施例6、材齢28日の圧縮強さの数値「38.1」を「33.1」に訂正する。 訂正事項f-7:実施例8、材齢91日の比率の数値「118」を「103」に訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否 上記訂正事項a及びbは、高ビーライトセメントに配合するものをギ酸カルシウムのみに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、特許明細書の段落【0015】の「本発明の高流動性低熱セメント組成物・・・流動化剤などを、慣用の含有量で含んでいてもよい。」の流動化剤等を含まない場合を含む記載からみて、含まない場合のみを限定した上記訂正事項a及びbは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。また、上記訂正によって別個の新たな目的及び効果をもたらすものではないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、上記訂正事項cないしeは、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項a及びbの訂正に伴うものであり、減縮された特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるために、明りょうでない記載の釈明を行うことを目的とする訂正に該当するものであり、しかも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、上記訂正事項f-1〜f-7において、訂正前の数字は圧縮強さと比率の変化の傾向からみて数字の3を8と混同した結果の誤記と認められるから、上記訂正事項f-1〜f-7は誤記の訂正を目的とする訂正であるものと認められる。 2-3.まとめ したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについて 3-1.本件発明 特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、認容することができるから本件請求項1ないし4に係る発明は上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、特許異議申立ての対象とされる請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ本件発明1ないし3という)は次のとおりである。 「【請求項1】40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントに、ギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とする高流動性低熱セメント組成物。 【請求項2】前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメント重量に対して、1.0〜4.0重量%である、請求項1に記載の高流動性低熱セメント組成物。 【請求項3】40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中にギ酸カルシウムのみが配合されていて、高流動性を示すことを特徴とする、高流動性低熱セメントスラリー。」 3-2.特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人太平洋セメント株式会社は、証拠方法として甲第1〜4号証を提出し、本件請求項1ないし3に係る発明の特許は下記の理由(イ)、(ロ)により取り消されるべきものである旨主張している。 (イ)本件請求項1に係る発明は、甲第1、2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項2、3に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜3に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (ロ)本件明細書は、甲第4号証等からみて記載が不備であるから、本件請求項1ないし3に係る発明の特許は特許法第36条第4項または第6項に規定に違反してされたものである。 3-3.甲号各証の記載内容 甲第1号証(「CONCRETE ADMIXTURES HANDBOOK Properties,Science,and Technology」NOYES PUBLICATIONS 第103〜106頁(1984))には、ギ酸塩類(訳文、以下同じ)に関し次の事項が記載されている。 (a)「2.12.2ギ酸塩類 多数ある非塩化物系硬化促進混和剤の中で、定例的に取り上げられるものとしてギ酸塩類がある。ギ酸カルシウムは、C3Sの水和のための促進剤である;」(第103頁下から第5〜3行) (b)「ポルトランドセメントの水和反応において、ギ酸カルシウムを添加した場合、最初は添加しない場合に比べて熱が発生するが、後には添加しない場合に比べて、わずかに少ないか等しい熱を発生する。」(第104頁表2.27下第1〜3行) (c)「ギ酸カルシウムは、コンクリートの早期強度を向上させることが一般的に知られている。図2.29は、ギ酸カルシウムを2%および4%配合した場合の効果を示したもので、強度が最初の24時間内で増大することを示している。」(第105頁表2.12の下第1〜3行) (d)「セメントの強度に対するギ酸カルシウムの影響は、C3A含有量によって決まる。強度発現の促進作用は、C3A含有量が少ないほど顕著である。」(第105頁、表2.12の下第7〜9行) (e)「コンクリートの初期強度に対するギ酸カルシウムの影響」(第105頁、図2.29) 甲第2号証(「JOUNAL OF MATERIALS SCIENCE LETTERS」3(1984)第821〜824頁)には、β-C2Sの硬化における促進混和剤の効果(訳文、以下同じ)に関し次の事項が記載されている。 (f)「けい酸三カルシウムがポルトランドセメントの初期の段階の水和反応を支配していることは良く知られている。他方その硬化形成に高熱を必要とする。それゆえ、けい酸三カルシウムをもっと低い硬化形成温度と充分な水和特性を持つ物質に全てか部分的に置き換えることが有利である。この点で、βけい酸二カルシウムが考慮に値する。・・・他方、βけい酸二カルシウムの硬化速度はけい酸三カルシウムのそれよりも著しく遅く、それゆえ、βC2Sを多く含んだセメントを普通ポルトランドセメントと同じ性能を持たせるためには、初期の機械的強度を増さねばならない。・・・それゆえ合成けい酸二カルシウムに混合水以外に添加されたフッ化ナトリウム、ギ酸カルシウム、硫酸アルミニウムの三つの混和剤の水和反応が試験された。」(第821頁左欄第6〜39行) (g)「化学量論的比率で配合した分析用試薬CaCO3とSiO2の混合物を、1450℃に加熱してβ‐C2Sを合成した。安定剤としてB2O3を0.5wt%添加した[9]。粉砕後の製造物には、170メッシュのASTMふるい試験では残分がなかった。」(第821頁右欄第9〜14行) (h)「C2Sは、ペーストにして水和試験に、またモルタルにして圧縮強度試験に供された。ペーストの水/固形物比は0.5、反応温度は20℃であったり;」(第821頁右欄第17〜20行) (i)「図1〜3は、β‐C2Sモルタルの圧縮強度に対するギ酸カルシウム、硫酸アルミニウムおよびフッ化ナトリウムの影響を示したものである。ギ酸カルシウムの添加量は、β‐C2Sに対して1.0wt%;2.5wt%;5.0wt%であった。」(第822頁左欄第6〜10行) (j)「一般的に、混和剤を添加されたβ‐C2Sモルタルは、添加されない場合よりも大きい強度を示す。特に、ギ酸カルシウムは、全ての材齢における強度を増進させる;その強度は、材齢28日で最大約200%に達する。」(第822頁第13〜17行) (k)「「β‐C2Sモルタルの圧縮強度に対するギ酸カルシウムの影響」(第822頁、図1) 甲第3号証(「昭和49年セメント技術年報XXVIII 1974」社団法人セメント協会第256〜259頁)には、硬化促進剤を用いた高強度コンクリートに関し次の事項が記載されている。 (l)「減水剤はMT(高分子芳香族スルフォン化物系・・・であり、また硬化促進剤は・・・ギ酸カルシウム(1〜2%)・・・である。()内は3.(1)におけるセメントに対する添加割合(%)の範囲を示すもので,結晶水をもつものは無水ベースに換算した。」(第256頁右欄第3〜12行) (m)「(2)モルタルのフローおよび圧縮強度 早強セメントと富士川の砂を用いた1:2モルタル(W/C=30% 一定)でJIS R5201に拠りフローと圧縮強度の試験を行った。」(第257頁左欄第7〜10行) (n)第257頁第1表にはモルタルの圧縮強度が記載されており、配合Aは薬品名および添加量(%)の欄がプレーン、減水剤MT添加量(%)の欄がゼロ、フロー(mm)の欄が100、圧縮強度(Kg/cm2)の欄が7日が695、28日が729、配合Bは薬品名および添加量(%)の欄がMT単味、減水剤MT添加量(%)の欄が0.6、フロー(mm)の欄が160、圧縮強度(Kg/cm2)の欄が7日が863、28日が926、配合Fは薬品名および添加量(%)の欄がギ酸カルシウム2、減水剤MT添加量(%)の欄が0.6、フロー(mm)が149、圧縮強度(Kg/cm2)の欄が7日が775、28日が885であることが記載されている。 甲第4号証(平成12年3月22日付実験成績証明書)には、低熱ポルトランドセメントにギ酸カルシウム及び/又は減水剤を配合し、低い水/セメント比で調整した場合のモルタルの流動性についての実験結果が記載されている。 3-4.対比・判断 (1)本件発明1ないし2について 本件発明1ないし2は、高流動性低熱セメント組成物に関する発明である。本件特許明細書によれば、低熱セメントである高ビーライトセメントは、従来「高ビーライトセメントは、その鉱物組成において、ビーライト(C2S)の含有率が高いため、その硬化に際し、長期材齢においては、十分な強度の発現が期待されるが、しかし、短期材齢において十分な強度の発現が得られないという問題点が認められている。」(本件特許掲載公報段落【0003】)という問題点が指摘されている。 そのため強度発現、硬化促進のために硬化剤を使用することが考えられるが、硬化剤の使用については、「従来各種セメントの硬化促進を目的とする多種の添加剤の使用が試みられ、そのうちのいくつかは、コンクリート硬化促進剤として実用されている。しかしながら、これらの硬化促進剤と各種セメントとの組み合わせにおいて、一般に、硬化促進剤の添加により、セメント水性スラリーの流動性が低下し、施工作業に困難を生ずるという問題点があった。」(本件特許掲載公報段落【0004】)という問題点も指摘されている。 本件発明1は、「40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメント」という特定のセメントにおいて、「ギ酸カルシウムのみが配合されている」という構成をとることにより、「高流動性低熱セメント組成物」となしたものであり、このような構成をとることにより、「本発明の高流動性低熱セメント組成物及びその水性スラリーにより、水性スラリーの流動性を、実用上十分なレベルに維持しつつ、その硬化体の短期材齢における強度発現を促進し、しかし長期材齢における強度を維持向上させることができる。」(本件特許掲載公報段落【0024】)という明細書記載の効果を奏するものである。 これに対して、甲第1号証には、ポルトランドセメントにギ酸カルシウムを添加した場合、初期強度が向上し、その強度発現の促進作用はC3A含有量が少ないほど顕著である旨記載されている。 しかしながら、甲第1号証には、「40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメント」という特定のセメントについては記載も示唆もされていないし、ましてやこの特定のセメントにギ酸カルシウムのみが配合されることにより硬化体の短期材齢における強度発現を促進するだけでなく水性スラリーの流動性が実用上十分なレベルに維持にされることは記載も示唆もされていない。 また、甲第2号証の記載内容は、特に上記(f)の記載から、「ポルトランドセメントに含まれているC3Sは硬化時に高熱を発生するので、C2Sに置き換える必要がある。しかしながら、C2Sは初期の強度が低いので、硬化促進剤を添加する必要がある。そのために、βC2Sにギ酸カルシウム等を添加した場合の強度を調べた。」という趣旨を前提とした記載内容である。してみると、甲第2号証の上記(g)、(j)の記載から把握される「0.5%のB2O3と99.5%β-C2Sを含有するものにギ酸カルシウムを添加したモルタルの強度は全ての材齢における強度を増進させる」という趣旨の記載内容は、「ポルトランドセメントに含まれているC3SをC2Sに置き換えて低熱化したときは初期の強度が低いので、ギ酸カルシウムを添加すれば全ての材齢における強度を増進させる」ということを意味している。つまり、甲第2号証には、「ポルトランドセメントに含まれているC3SをC2Sに置き換えて低熱化したときは初期の強度が低いので、ギ酸カルシウムを添加する」ということが記載されていると云える。 しかしながら、甲第2号証には「40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメント」という特定のセメントについては記載も示唆もされていないし、ましてやこの特定のセメントにギ酸カルシウムが配合されても水性スラリーの流動性が実用上十分なレベルに維持にされることは記載も示唆もされていない。 特許異議申立人は本件審査段階で特許権者が提出した「コンクリート技術者のためのセメント化学雑論」セメント協会第82頁の記載に基づいて普通ポルトランドセメントのC2Sが23%、C3Aが8%であることから、甲第1、2号証からC2Sが23%でも99.5%でも、C3Aが8%でも0%でもギ酸カルシウムが配合されることにより短期、長期強度が増進することが知られているから、その中間の組成である本件発明1の組成物を用いて製造した硬化体の短期、長期強度が増進することを予測するのは容易である旨主張している。 しかしながら、「40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメント」という特定のセメントにギ酸カルシウムが配合された時、その硬化体の短期材齢における強度発現を促進すると同時に、水性スラリーの流動性が、実用上十分なレベルに維持されるということは上述のように甲第1、2号証に記載されておらず予測可能とも云えないので、「40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメント」という特定のセメントにギ酸カルシウムが配合されることは当業者が容易に想到し得る程度のこととは云えない。 また、水性スラリーの流動性について、特許異議申立人は甲第3号証を挙げ、ギ酸カルシウムが配合されない配合A(モルタルフロー値100)より、配合された配合Fの方がモルタルフロー値が大きいから、ギ酸カルシウムを配合すればモルタルフロー値が向上することは予測できる旨主張している。 しかしながら、上記(n)から明らかなように配合F(モルタルフロー値149)の場合は減水剤を含んでおり、この場合配合例Bの減水剤単味の場合のモルタルフロー値が160もあることからみて、ギ酸カルシウムはモルタルフロー値を低下させているとみるのが普通であり、ギ酸カルシウムを配合すればモルタルフロー値が向上するということは予測できない。したがって、減水剤を含まずギ酸カルシウムのみが配合された例が記載されていない以上、甲第3号証からギ酸カルシウムのみが配合された時、水性スラリーの流動性が実用上十分なレベルに維持されることが予測できるということは云えない。 以上のとおり、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。 本件請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を引用しさらに限定した発明であるから、上述した理由と同じ理由で、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。 3-5.本件発明3について 上記3-4.(1)で述べたように、甲第1〜3号証には、「40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメント」という特定のセメントに硬化剤として知られるギ酸カルシウムのみが配合されても水性スラリーの流動性が実用上十分なレベルに維持されることについて記載も示唆もされていないから、本件請求項3に係る発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。 3-6.理由(ロ)について 特許異議申立人は具体的には「(1)甲第4号証からみて、水/セメント比の高低によって目的を達成しない場合があり、請求項1の記載は目的、構成、効果が整合しておらず記載不備である。(2)請求項1及び3におけるC2S、C3Aの含有量の数値範囲の上限下限の数値の技術的意義が不明である。(3)実施例5は長期強度が低下しているから、請求項1および3は目的を達成できない構成を含んでいる。(4)「水性スラリーの初期強度」について目的、構成、効果が不明である。(5)請求項3に係る発明は、発明が完成したものであるか不明である。」旨主張している。 そこで、検討する。 上述のように、甲第4号証(平成12年3月22日付実験成績証明書)には、低熱ポルトランドセメントにギ酸カルシウム及び/又は減水剤を配合し、低い水/セメント比で調整した場合のモルタルの流動性についての実験結果が記載されている。 しかしながら、甲第4号証において、ギ酸カルシウムのみが配合された場合のモルタルフロー値100であり、何も添加しないプレーンの場合のフロー値である100以下ではない。本件明細書にも記載されている従来技術における硬化促進剤の添加による流動性の低下という技術常識からみて(本件特許掲載公報第2頁第3欄第24〜26行参照)、プレーンの場合より悪くなっていない以上、この実験結果からギ酸カルシウムのみが配合された場合、流動性が実用上十分なレベルより悪くなるとは云えない。 したがって、水/セメント比によって目的を達成しない場合があるという特許異議申立人の上記(1)の主張は採用することができない。 次に、本件発明において、特定の組成の高ビーライトセメントにギ酸カルシウムのみが配合されるという組合せにおいて短期材齢における強度や流動性の効果が奏されるのであるから、その組成の数値範囲の限定は技術的に意義のあることである。そして、その数値範囲内の実施例が記載されている以上、数値範囲の上限下限の数値付近のデータがないからといって、記載不備とまでは云えず、特許異議申立人の上記(2)の主張は採用することができない。 次に、本件特許明細書の実施例5では、材齢28日の圧縮強さの比率は96であるが、比較例に比べて長期材齢強度が極端に悪いとまでは云えないので、特許異議申立人の上記(3)の主張は採用することができない。 次に、特許異議申立人は本件明細書の「本発明は、流動性及び初期強度の高い水性スラリーを形成することができ」(本件特許掲載公報第2頁第4欄第1,2行)の記載を根拠に上記(4)の主張をしているが、この記載において「初期強度」は硬化体の短期材齢における強度を述べているものと解されるので記載不備とするほどのことでもない。 次に、本件特許明細書の表2においてモルタルフロー値が記載されているのであるから、請求項3に係る発明は実施例に裏付けられており、特許異議申立人の上記(5)の主張は採用することができない。。 以上のとおり、本件特許明細書は記載不備であるという特許異議申立人の主張は採用することはできない。 4.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 高流動性低熱セメント組成物及び高流動性低熱セメント水性スラリー (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントに、ギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とする高流動性低熱セメント組成物。 【請求項2】 前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメント重量に対して、1.0〜4.0重量%である、請求項1に記載の高流動性低熱セメント組成物。 【請求項3】 40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中にギ酸カルシウムのみが配合されていて、高流動性を示すことを特徴とする、高流動性低熱セメントスラリー。 【請求項4】 前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメントの重量に対して、1.0〜4.0重量%である、請求項3に記載の高流動性低熱セメント水性スラリー。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、高流動性低熱セメント組成物及び高流動性低熱セメント水性スラリーに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、硬化速度が高い高流動性低熱セメント組成物、並びにこの低熱セメント組成物から、高い硬化速度をもって硬化する高流動性低熱セメント水性スラリーに関するものである。本発明の高流動性低熱セメント組成物の水性スラリーは、良好な流動性を有しているが、その硬化に際し、初期材齢において高い強度を発現することができる。 【0002】 【従来の技術】 平成9年度JIS R5210の改訂により、高ビーライトセメントの品質範囲が規定され、JISに、新らたに低熱ポルトランドセメントが追加された。この高ビーライトセメントは、従来の中庸熱ポルトランドセメントにくらべて、硬化発熱量が、低く抑制されたものであって、この特性を利用して、硬化の際の発熱によるひび割れ発生のおそれがあるマスコンクリート及び高流動、高強度コンクリートなどへの使用が増加するものと期待されている。 【0003】 しかしながら、高ビーライトセメントは、その鉱物組成において、ビーライト(C2S)の含有率が高いため、その硬化に際し、長期材齢においては、十分な強度の発現が期待されるが、しかし、短期材料において十分な強度の発現が得られないという問題点が認められている。 【0004】 従来、各種セメントの硬化促進を目的とする多種の添加剤の使用が試みられ、そのうちのいくつかは、コンクリート硬化促進剤として実用されている(特開昭48-36223号、特開昭48-36224号、特開昭51-67325号、特開昭61-86458号、特開平6-7761号及び特開平8-310845号など)。しかしながら、これらの硬化促進剤と各種セメントとの組み合わせにおいて、一般に、硬化促進剤の添加により、セメント水性スラリーの流動性が低下し、施工作業に困難を生ずるという問題点があった。さらに、従来の各種セメント(例えば普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメントなど)と硬化促進剤との組み合わせにおいては、硬化促進剤の添加量の増大に応じて得られるセメント硬化体の長期材齢における強度が不十分になるという問題点も見出されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、流動性及び初期強度の高い水性スラリーを形成することができ、かつ短期及び長期材齢において高い強度を発現する硬化体を形成することができる高流動性低熱セメント組成物、並びにこの低熱セメント組成物を含む、高流動性低熱セメント水性スラリーを提供しようとするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明の高流動性低熱セメント組成物は、40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントにギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とするものである。本発明の高流動性低熱セメント組成物において、前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメント重量に対して、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。本発明の高流動性低熱セメント水性スラリーは、40〜70重量%の2CaO・SiO2(以下C2Sと称する)と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3(以下C3Aと称する)とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中に、ギ酸カルシウムのみを配合することによって、前記水性スラリーの流動性を向上させたことを特徴とするものである。本発明の高流動性低熱セメント水性スラリーにおいて、前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメントの重量に対して、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。 【0007】 【発明の実施の形態】 セメントの鉱物組成において、その成分と、強度発現性(短期材齢及び長期材齢)との関係は、一般に表1に示されている通りである。 【0008】 【表1】 【0009】 表1から明らかなように、C2Sの含有率が高く、C3Aの含有率が比較的低い高ビーライトセメントには長期材齢において発現される強度は十分高いが、短期材齢において発現される強度が低いという問題点がある。 【0010】 一方、各種セメント組成物の水性スラリー中に、ギ酸塩、例えばギ酸カルシウムが、その他の塩類とともに含まれる場合、この水性スラリーの流動性を低下させ、凝集、凝固などを発生することが、知られているが、本発明においては、低熱セメント(高ビーライトセメントの範疇にある)組成物の水性スラリー中に、ギ酸カルシウムのみが、好ましくは1〜4重量%の含有量の範囲内で含有されるときには、低熱セメント水性スラリーの流動性を実質上低下させることがないことを見出された。また、低熱セメント組成物の水性スラリーを、ギ酸カルシウムのみの存在下に硬化させると、得られるセメント硬化体の短期材齢における強度が、顕著に向上する。 【0011】 従来のギ酸カルシウムを含有する普通ポルトランドセメント組成物及び早強ポルトランドセメントの硬化体は、ギ酸カルシウムの存在により、その長期材齢における強度が、低下することが認められているが、これに対して、本発明のギ酸カルシウム含有低熱セメント組成物の硬化体は、ギ酸カルシウムが存在しているにも拘らず、その長期材齢における強度が、低下することなくむしろ一層向上するのである。 【0012】 本発明に用いられる低熱セメント(高ビーライトセメント)は、40〜70重量%のC2Sと、1〜6重量%のC3Aとを含むものであって、その他の鉱物成分としては、高炉スラグ粉末、フライアッシュまたは石灰石粉末などの1種以上を含むことができる。本発明に用いられる低熱セメントは、JIS R5210-1997に記載の諸性能及び鉱物成分(C2S及びC3Aを除く)含有率を有するものである。 【0013】 本発明において、ギ酸カルシウム(Ca(HCOO)2)は、好ましくは、高ビーライトセメント重量に対し、1.0〜4.0重量%、より好ましくは1.0〜3.0重量%の含有量で用いられる。ギ酸カルシウムの含有量が1.0重量%未満では、得られるセメント硬化物の短期強度発現が不十分になることがあり、また、ギ酸カルシウムの含有量が4.0重量%をこえると、得られるセメント硬化物の長期材齢における強度が不十分になることがある。 【0014】 本発明方法において、40〜70重量%のC2Sと1〜6重量%のC3Aとを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリーを調製し、この水性スラリー中に、ギ酸カルシウムを含有させる。ギ酸カルシウムは、高ビーライトセメント中に含有させておいてもよく、或は、高ビーライトセメント含有水性スラリー中に添加されてもよい。このときのギ酸カルシウムの含有量は前述のように、高ビーライトセメントの重量に対し1.0〜4.0重量%であることが好ましく、1.0〜3.0重量%であることがより好ましい。 【0015】 【実施例】 本発明を下記実施例によりさらに説明する。 実施例1〜5及び比較例1 実施例1〜5及び比較例1の各々において、55重量%のC2S、2重量%のC3A、24重量%の3CaO・SiO2(以下C3Sと称する)、および11重量%の4CaO・Al2O3・Fe2O3(以下C4AFと称する)を含む高ビーライトセメントに、その重量に対し、表2に示された量のギ酸カルシウムを添加し、その合計重量に対し、65重量%の水および200重量%の砂を添加して、水性スラリーを調製した。なおここで使用した砂は花崗岩砕砂で、粗粒率2.65の粒度のものである。この水性スラリーのモルタルフロー値、並びに材齢3日、7日及び28日における圧縮強さを測定し、比較例1の各材齢における圧縮強さを100として相対比の値を算出した。その結果を表2に示し、図1にギ酸カルシウムの含有量と、圧縮強度比の値との関係を示す。 【0016】 【表2】 表2から明らかなように、本発明に係る実施例1〜5の水性スラリーは、実用上十分なモルタルフロー値を示した。また、表2及び図1から明らかなように、本発明に係る低熱セメント硬化体は、良好な初期強度発現性および長期材齢強度を示した。 【0017】 実施例6〜8及び比較例2〜10 比較例2〜5の各々において普通ポルトランドセメントに、その重量に対し、表3に記載の量のギ酸カルシウムを添加し、その合計重量に対し、65重量%の水、及び200重量%の砂を添加して水性スラリー(モルタル)を調製した。 【0018】 比較例6〜9の各々において、早強ポルトランドセメントに、その重量に対し、表3に記載の量のギ酸カルシウムを添加し、その合計重量に対し、65重量%の水、及び200重量%の砂を添加して水性スラリー(モルタル)を調製した。 【0019】 比較例10及び実施例6〜8の各々において、55重量%のC2S、2重量%のC3A、24重量%のC3S、および11重量%のC4AFを含む高ビーライトセメントに、その重量に対し、表3に示された量のギ酸カルシウムを添加し、その合計重量に対し、65重量%の水および200重量%の砂を添加して、水性スラリー(モルタル)を調製した。なお実施例6〜8及び比較例2〜10において使用した砂は天然珪砂で標準網ふるい300μm残分1%以下、106μm残分95%以上の粒度のものである。 【0020】 上記比較例2〜10及び実施例6〜8の水性スラリーの、材齢、28日及び91日における圧縮強さを測定し、各グループのギ酸カルシウム添加なしの場合の、各材齢における圧縮強さを100としたときの圧縮強さ比率を算出した。その結果を表3に示す。 【0021】 【表3】 【0022】 表3から明らかにように、普通ポルトランドセメントを用いた比較例3〜5、及び早強ポルトランドセメントを用いた比較例7〜9においては、セメント硬化体の材齢28日及び91日における圧縮強さは、ギ酸カルシウムの添加が増えることにより低下する傾向が見られるが、低熱セメントを用いた実施例6〜8においては、セメント硬化体の前記長期材齢における圧縮強さは、低下することなく却って向上することが確認された。 【0023】 【発明の効果】 本発明の高流動性低熱セメント組成物及びその水性スラリーにより、水性スラリーの流動性を、実用上十分なレベルに維持しつつ、その硬化体の短期材齢における強度発現を促進し、しかし長期材齢における強度を維持向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 実施例1〜5及び比較例1において調製された低級セメント水性スラリーのギ酸カルシウム含有量と、それから得られた硬化体の圧縮強さ比率との関係を示すグラフ。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2965548号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち、 (1)訂正事項a 請求項1を「【請求項1】40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントに、ギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とする高流動性低熱セメント組成物。」に訂正する。 (2)訂正事項b 請求項3を「【請求項3】40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中にギ酸カルシウムのみが配合されていて、高流動性を示すことを特徴とする、高流動性低熱セメント水性スラリー。」に訂正する。 (3)訂正事項c 明細書中の段落【0006】を「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の高流動性低熱セメント組成物は、40〜70重量%の2CaO・SiO2と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3とを含有する高ビーライトセメントにギ酸カルシウムのみが配合されていることを特徴とするものである。本発明の高流動性低熱セメント組成物において、前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメント重量に対して、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。本発明の高流動性低熱セメント水性スラリーは、40〜70重量%の2CaO・SiO2(以下C2Sと称する)と、1〜6重量%の3CaO・Al2O3(以下C3Aと称する)とを含有する高ビーライトセメントを含む水性スラリー中に、ギ酸カルシウムのみを配合することによって、前記水性スラリーの流動性を向上させたことを特徴とするものである。本発明の高流動性低熱セメント水性スラリーにおいて、前記ギ酸カルシウムの含有量が、前記高ビーライトセメントの重量に対して、1.0〜4.0重量%であることが好ましい。」に訂正する。 (4)訂正事項d 明細書中の段落【0010】を「【0010】一方、各種セメント組成物の水性スラリー中に、ギ酸塩、例えばギ酸カルシウムが、その他の塩類とともに含まれる場合、この水性スラリーの流動性を低下させ、凝集、凝固などを発生することが、知られているが、本発明においては、低熱セメント(高ビーライトセメントの範疇にある)組成物の水性スラリー中に、ギ酸カルシウムのみが、好ましくは1〜4重量%の含有量の範囲内で含有されるときには、低熱セメント水性スラリーの流動性を実質上低下させることがないことを見出された。また、低熱セメント組成物の水性スラリーを、ギ酸カルシウムのみの存在下に硬化させると、得られるセメント硬化体の短期材齢における強度が、顕著に向上する。」 (5)訂正事項e 明細書中の段落【0015】を削除する。 (6)訂正事項f 明細書中の段落【0022】の表3の記載を訂正事項f-1〜f-7のとおりに訂正し、下記の表とする。 訂正事項f-1:比較例3、材齢28日の比率の数値「108」を「103」に訂正する。 訂正事項f-2:比較例5、材齢91日の比率の数値「98」を「93」に訂正する。 訂正事項f-3:比較例8、材齢28日の比率の数値「108」を「103」に訂正する。 訂正事項f-4:比較例9、材齢28日の圧縮強さの数値「48.1」を「43.1」に訂正する。 訂正事項f-5:比較例10、材齢28日の圧縮強さの数値「38.2」を「33.2」に訂正する。 訂正事項f-6:実施例6、材齢28日の圧縮強さの数値「38.1」を「33.1」に訂正する。 訂正事項f-7:実施例8、材齢91日の比率の数値「118」を「103」に訂正する。 |
異議決定日 | 2001-02-16 |
出願番号 | 特願平10-151312 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YA
(C04B)
P 1 652・ 537- YA (C04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 平田 和男 |
特許庁審判長 |
吉田 敏明 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 野田 直人 |
登録日 | 1999-08-13 |
登録番号 | 特許第2965548号(P2965548) |
権利者 | 住友大阪セメント株式会社 |
発明の名称 | 高流動性低熱セメント組成物及び高流動性低熱セメント水性スラリー |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 西舘 和之 |
代理人 | 宮越 典明 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 西館 和之 |
代理人 | 樋口 外治 |