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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B41J 審判 全部申し立て 発明同一 B41J |
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管理番号 | 1044691 |
異議申立番号 | 異議2000-72199 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-11-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-05-25 |
確定日 | 2001-04-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2984017号「サーマルヘッド用グレーズ基板及びその製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2984017号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 本件特許第2984017号発明は、平成2年3月8日に特許出願され、平成11年9月24日にその特許の設定登録がなされ、その後、ローム株式会社より請求項1乃至2に係る発明について特許異議の申立てがなされ、最初の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月28日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年2月19日に訂正請求がなされたものである。 [2]訂正の適否についての判断 1.訂正の要旨 (1)訂正事項a 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2を以下のとおり訂正する。 「【請求項1】セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と、 該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点が低く該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されるとともに上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より100°C以上低い温度で焼成されて失透を防止して形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層と、 を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板。 【請求項2】セラミックス基板上に凸状に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して、該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点の低い少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成して失透を防止したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法。」 (2)訂正事項b 本件特許明細書の発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]及び[作用]の欄を以下のとおり訂正する。 「[課題を解決するための手段] かかる問題点を解決するための請求項1の発明は、 セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と, 該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点が低く該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されるとともに上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より100°C以上低い温度で焼成されて失透を防止して形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層と、 を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板を要旨とする。 請求項2の発明は、 セラミックス基板上に凸状に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して、該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点の低い少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成して失透を防止したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法を要旨とする。 ここで、上記第1のグレーズ層と第2のグレーズ層との軟化点の温度差は、100°C以上であると、形状のはっきりした凸状部分が形成されるので一層好適である。 上記セラミックス基板としては、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,ムライト等を使用することができる。 [作用] 請求項1の発明では、セラミックス基板上に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層が凸状に形成され、更に第1のグレーズ層を覆って或は該層に接してセラミックス基板上に、第1のグレーズ層より50°C以上低い軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層が形成されているので、第2のグレーズ層の焼成時に、第1のグレーズ層が軟化することなく凸状部分の形状が明瞭に保存される。 しかも、第2のグレーズ層は第1のグレーズ層より100°C以上低い温度で焼成され、両グレーズ層が反応して生ずる失透が防止されている。 また、請求項2の発明では、セラミックス基板上に高軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を凸状に形成した後に、第1のグレーズ層より50°C以上低い軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層を形成し、第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成することにより、両グレーズ層が反応して生ずる失透を防止する。また、第2のグレーズ層の焼成温度は第1のグレーズ層の焼成温度よりかなり低いので、その焼成によって第1のグレーズ層が軟化することを防止でき、それによって凸状部分の形状が明瞭に保存される。」 2.訂正の目的、新規事項の有無、拡張変更の存否の各要件についての判断 (1)訂正事項a 本訂正は、本件特許明細書の[作用]の欄の請求項2の発明の説明の、「・・第2のグレーズ層を形成し、第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成することにより、両グレーズ層が反応して生ずる失透を防止する・・」の記載及び第1表の記載に基づいて各グレーズ層と温度と失透防止との関係を限定したものである。 したがって、本訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (2)訂正事項b 本訂正は、訂正事項aに伴う訂正であり、上記各要件を適法に満たすものである。 3.訂正の適否のまとめ 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める(なお、特許異議申立がされていない請求項についての訂正はないので、独立特許要件の判断はしない)。 [3]異議申立てについての判断 1.本件請求項1乃至2に係る発明 本件請求項1乃至2に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載されたとおりのものである(上記訂正事項a参照。以下、請求項1,2に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明2」という)。 2.再度の取消理由について 再度の取消理由は、請求項1乃至2の記載では、温度に係る意義を明瞭には把握し難いため、特許法第36条に係る記載の不備があるというものであるが、上記訂正により、各グレーズ層と温度と失透防止との関係が限定され、温度に係る意義が明瞭となったため、この取消理由は解消されている。 3.異議申立ての理由と証拠 これに対し、異議申立人は甲第1乃至4号証及び参考資料1を提出し、本件発明1,2は、甲第1号証1に記載された発明であり、あるいは、少なくとも甲第1乃至4号証及び参考資料1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項あるいは第2項の規定により特許を受けることができないとしている(当審が通知した最初の取消理由はこれを採用したものである)。 甲第1乃至4号証及び参考資料1とそれらの記載事項は次のとおりである。 (1)甲第1号証:特開昭62-138257号公報 a.「本発明は超微細配線が可能な感熱ヘッド用グレーズドセラミック基板(以下グレーズド基板とする)の改良に関する。・・・従来、グレーズド基板には全面グレーズド基板及び部分グレーズド基板があり、それぞれ一長一短があった。全面グレーズド基板は表面平滑性が良く、全面に超微細配線が容易であるという利点はあるが感熱ヘッドとして用いる際、基板に少しでも反りがあると紙とのあたりが悪くなり、印字性が落ちるという欠点がある。・・・そこで上記の欠点を解消するため・・・印字が必用な部分だけにグレーズ層を形成し、紙との接触性を改善した部分グレーズド基板が用いられるようになった。しかしながら部分グレーズド基板は、グレーズ層を形成した部分以外はセラミックの研磨面がむき出しのため、表面平滑性が悪く、かつ空隙であった部分が多く露出するため微細な配線の形成が困難であるという欠点がある。本発明はこのような欠点を解消し、印字性能が良く、超微細配線が可能なグレーズド基板を提供するものである。」(1頁左下欄12行〜右下欄16行) b.「グレーズ層の突起を設け、かつ前記の突起以外の絶緑性セラミック基板の表面にグレーズ層を形成したところ上記の欠点のないグレーズド基板が得られることを見い出した。」(1頁右下欄20行〜2頁左上欄4行) c.「突起と絶緑性セラミック基板の表面に形成するグレーズ層は、同種のグレーズを用いて形成してもよいが、突起を高温グレーズ層、絶緑性セラミック基板の表面は突起に形成するグレーズより低温のグレーズ層を形成すれば低温のグレーズを焼き付けるとき突起部分のグレーズの流出はほとんどなく」(2頁左上欄20行〜右上欄6行) d.「セラミック基板1の片側の表面の一部に軟化点が850°Cのアルカリ土類珪酸塩ガラスペーストを焼結後の高さが50μm、100μm、150μmおよび400μmになるような厚さにスクリーン印刷により帯状(幅10mm、長さ220mm)に印刷した。ついで大気中で1100°Cの温度で1時間焼成して突起2を有するセラミック基板を得た。次にセラミック基板1の表面にPbOを主成分とした硼珪酸鉛ガラス(軟化点590°C、日本電気硝子製、商品名GA-1)の層を形成した。ついで大気中で850°Cの温度で1時間焼成して第1図に示すようなセラミック基板1の表面に厚さ20μmのグレーズ層3を形成した突起2を有するグレーズド基板を得た。この後DCスパッタ装置で各々のグレーズド基板の突起2の表面およびグレーズ層3の表面に厚さ1μmのAuの層を形成し、ついでフォトリソグラフィーにより不必要な部分を除去して16本/mmの配線を形成した。」(2頁左下欄2〜20行) e.「本発明によれば、部分グレーズド基板の利点と全面グレーズド基板の利点をいずれも保持したグレーズド基板、即ち従来の全面グレーズド基板の欠点であるわずかな基板の反りが印字性の悪さにつながる点また、部分グレーズド基板の欠点である微細配線形成時にショート、断線し易いという問題などを解消したグレーズド基板を得ることができる。」(3頁左上欄8〜15行) 等が記載されている。 また、第1図にグレーズド基板の斜視図が示されている。 これらの記載を対比のためにまとめると、甲第1号証には、セラミック基板1の表面上に、軟化点が850°Cのアルカリ土類珪酸塩ガラスペーストを帯状に厚く印刷し、次に1100°Cで焼成してグレーズ層である突起2を形成し、その後に、上記セラミック基板1の表面上の突起2以外の部分に、軟化点が590°CのPbOを主成分とした硼珪酸鉛ガラスの層を薄く形成し、次に850°Cで焼成してグレーズ層3を形成してなる、感熱ヘッド用グレーズドセラミック基板及びその製造方法が記載されている。 また、突起2には紙との接触性を良くする意味があり、突起2以外のセラミック基板1の表面上にグレーズ層3を形成することには表面の平滑性を良くして良好な超微細配線を可能とする意味があること、が記載されている。 さらに、突起2とグレーズ層3の軟化点と焼成温度との関係には、グレーズ層3を焼成するときに、先に焼成形成された突起2の流出をほとんどなくする意味があることが記載されている。 (2)甲第2号証:特開昭62-259874号公報 f.「部分グレーズ層を有するサーマルヘッドの長所としては熱応答特性が良く、発熱抵抗体層と紙との当たりが良くなる等の点が上げられる。反面、部分グレーズ層2の周辺部はセラミック基板1上に直接導体等の薄膜パターを形成する事となるためセラミック基板1に陥没や突起が有ると断線やパターン欠けが生じるという問題点がある。」(1頁右下欄11〜18行) g.「第1図は本発明の一実施例の断面図である。第1図において、セラミック基板1上には高融点ガラスからなる突起状の部分グレーズ層2が形成されておりこの部分グレーズ層2の端部に接して部分グレーズ層2より薄い、低融点ガラスからなる平面状ガラス層3がセラミック基板1の表面に形成されている。」(2頁左上欄17行〜右上欄3行) h.「部分グレーズ層の端部に接して平面状ガラス層を設けることにより、セラミック基板表面は平滑になるため、パターン欠けや断線がなくなり、製造歩留りの向上したサーマルヘッドが得られるという効果がある。」(2頁右下欄6〜10行) 等が記載されている。 また、第1図には一実施例の断面図が示されている。 (3)甲第3号証:特開昭63-3971号公報 i.「第3図のサーマルヘッドは基板1上に下部グレーズ層2を印刷焼成して形成した後上部グレーズ層3を更に印刷焼成して積層し、これらの上に発熱低抗体層4を形成し、次いで給電体層5、保護層6を順次形成することにより作られている。しかしながら、前述のサーマルヘッドの場合下部グレーズ層2と上部グレーズ層3とをそれぞれ焼成温度の異なるグレーズ層で形成する必要があった。これは上部グレーズ層3形成時における下部グレーズ層2の熱変形を防ぐためであり、このため発熱抵抗体層4の発熱部分(以下、発熱要素と称す)4aの直下の上部グレーズ層3は下部グレーズ層2より200〜300°C程度軟化点が低いグレーズで形成する必要があった。」(1頁右下欄17行〜2頁左上欄11行) 等が記載されている。 また、第3図に従来構成の断面図が示されている。 (4)甲第4号証:実願昭60-193541号(実開昭62-102640号)のマイクロフイルム j.「第2図のサーマルヘッドは基板1上に下部グレーズ層2を印刷焼成して形成した後上部グレーズ層3を更に印刷焼成して積層し、これらの上に発熱抵抗体層4を形成し、次いで給電体層5、保護層6を順次形成することにより作られている。(考案が解決しようとする問題点)しかしながら、前述のサーマルヘッドの場合下部グレーズ層2と上部グレーズ層3とをそれぞれ焼成温度の異なるグレーズ層で形成する必要があった。これは上部グレーズ層3形成時における下部グレーズ層2の熱変形を防ぐためであり、このため発熱抵抗体層4の発熱部分(以下、発熱要素と称す)4aの直下の上部グレーズ層3は下部グレーズ層2より200〜300°C程度軟化点が低いグレーズで形成する必要があった。」(3頁2〜17行) 等が記載されている。 また、第2図に従来構成の断面図が示されている。 (5)参考資料1:実願昭58-49086号(実開昭59-155139号)のマイクロフイルム k.「サーマルプリンタヘッドにおいて、絶縁基板の表面の一部に突条状のグレーズ層を設け、その表面に抵抗体を設けたものも知られている。・・・前記絶縁基板の表面から突条状のグレーズ層にまたがって導体を設け、グレーズ層の表面で抵抗体に接続するようにしていた。ところがこのような導体構成によると、絶縁基板がセラミックであるため、その表面が粗面となっており、・・・導体が途切れてしまうことがある。」(2頁5〜20行) l.「1はアルミナ等のセラミックからなる絶緑基板、2は絶緑基板1の表面に設けられた突条状のグレーズ層、3はグレーズ層2の表面に設けられた印字用の発熱抵抗体である。・・・4,5は抵抗体3への通電のための導体である。・・・絶緑基板1の表面からグレーズ層2まで連続してグレーズ層6を設け、その表面に重なるように導体4,5を設ける。・・・グレーズ層6はグレーズ層2と同じようにガラス質を含むセラミックであり、その表面はアルミナより遙かに平滑である。」(3頁4〜16行) 等が記載されている。 また、図面には実施例の断面図が示されている。 3.対比・判断 (1)本件発明1について 本件発明1(以下、前者)と甲第1号証記載の発明(以下、後者)とを対比すると、後者の、感熱ヘッド用グレーズドセラミック基板、セラミック基板1、突起2,グレーズ層3は、それぞれ、前者の、サーマルヘッド用グレーズ基板、セラミックス基板、凸状に焼成されて形成された第1のグレーズ層、第2のグレーズ層に対応し、後者の、突起2とグレーズ層3の軟化点はそれぞれ850°Cと590°Cであって、グレーズ層3は突起2より260°C軟化点が低く、また、後者の、突起2とグレーズ層3の焼成温度はそれぞれ1100°Cと850°Cであって、グレーズ層3は突起2より250°C焼成温度が低いから、両者の間には、次の一致点と相違点が認められる。 <一致点>セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された第1のグレーズ層と、該第1のグレーズ層より軟化点が低く上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より低い温度で焼成されて形成された第2のグレーズ層と、を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板。 <相違点1>前者の第2グレーズ層が第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されているのに対し、後者のグレーズ層3はセラミック基板1の表面上の突起2以外の部分に形成されている点。 <相違点2>前者が、共に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と第2のグレーズ層とにおける、第2のグレーズ層の軟化点及び焼成温度を、第1のグレーズ層よりそれぞれ50°C以上低い温度及び100°C以上低い温度として、失透を防止するものであるのに対し、後者は、アルカリ土類珪酸塩ガラスペーストからなる突起2とPbOを主成分とした硼珪酸鉛ガラスからなるグレーズ層3とにおける、グレーズ層3の軟化点及び焼成温度を、突起2よりそれぞれ260°C低い温度及び250°C低い温度として、グレーズ層3を焼成するときに、先に焼成形成された突起2の流出をほとんどなくするものである点。 相違点1について検討する。 甲第1号証にはグレーズ層3が突起2に接しているか否か明記はないが、グレーズ層3はセラミック基板1の表面上の突起2以外の部分の平滑性を良くして良好な超微細配線を可能とするものであり、かつ、該配線がグレーズ層3から突起2にかけて形成されるものであることからすれば、グレーズ層3と突起2との間にセラミック基板1の表面が露出するように、すなわち、グレーズ層3が突起2に接することがないように形成されるとは考え難く、第1図にグレーズ層3と突起2とが切れ目なく記載されていることからみても、グレーズ層3が突起2に接しているとみるのが自然であるため、相違点1は甲第1号証に実質的に示唆されていたものと認められる。 また、甲第2号証には、サーマルヘッドのセラミック基板1上に高融点ガラスからなる突起状の部分グレーズ層2と低融点ガラスからなる平面状ガラス層3とを形成したものにおいて、平面状ガラス層3が配線パターンを平滑な表面に形成するためのものであって、部分グレーズ層2に接して形成することが記載されている。 さらに、参考資料1には、サーマルプリンタヘッドのセラミックからなる絶縁基板1上に突条状のグレーズ層2とグレーズ層6とを形成したものにおいて、グレーズ層6が導体4,5を平滑な表面に形成するためのものであって、グレーズ層2を覆って形成することが記載されている。 これらの甲第2号証及び参考資料1に記載された事項は、甲第1号証記載の発明に適用する上で阻害要因のないものであるから、相違点1は、少なくとも、甲第2号証及び参考資料1に記載された事項から当業者が容易になし得た設計の変更であるともいえる。 相違点2について検討する。 本件発明1における、軟化点と焼成温度に係る50°C以上低い温度と100°C以上低い温度とには、本件特許明細書の記載からみて、2つのグレーズ層が共に少なくとも酸化ホウ素を含むものからなる特定の組合せの場合について、両グレーズ層の接触部が反応して生ずる失透を防止できる軟化点と焼成温度とに係る温度差範囲を見出したという意義があり、かつ、焼成温度は失透が生じないように適用されなければならないものである。 これに対して、甲第1号証記載の発明における、軟化点と焼成温度に係る260°C低い温度と250°C低い温度とには、甲第1号証の記載からみて、2つのグレーズ層がアルカリ土類珪酸塩ガラスペーストからなるものとPbOを主成分とした硼珪酸鉛ガラスからなるものとの特定の組合せの場合について、両グレーズ層の焼成時に先に焼成形成されたグレーズ層の流出をほとんどなくすることのできる温度差を設けるという意義があるものである。 すなわち、甲第1号証記載の発明の該温度差は、アルカリ土類珪酸塩ガラスペーストからなるものとPbOを主成分とした硼珪酸鉛ガラスからなるものとの特定の組合せについてのものであり、該組合せ以外について示唆されることは、せいぜい、如何なる組成物の組合せであっても、先に焼成形成されたグレーズ層の流出がないように後から焼成されるグレーズ層の軟化点と焼成温度とを低くしなければならないということであって、如何なる組成物の組合せにおいても該軟化点と焼成温度とをそれぞれ50°C以上低い温度と100°C以上低い温度とにすること、及び該100°C以上低い焼成温度を失透が生じないように適用することまで示唆するものではない。 そもそも、甲第1号証には、2つのグレーズ層として共に少なくとも酸化ホウ素を含むもの同士を組合せることや失透の防止については記載も示唆もなく、かつ、その記載からみて容易に想起し得ることとも認められないため、相違点2が甲第1号証に実質的に記載されていることとも甲第1号証の記載から容易に想起し得ることとも認められない。 また、甲第2乃至4号証及び参考資料1の記載をみても、後から焼成されるグレーズ層を先に焼成されたグレーズ層より低融点や200〜300°C低い軟化点とすること等は記載されているが、2つのグレーズ層として共に少なくとも酸化ホウ素を含むもの同士を組合せることや失透の防止については記載も示唆もないことから、これら甲第2乃至4号証及び参考資料1の記載によっても相違点2を容易に想起し得るとは認められない。 そして、本件発明1における軟化点と焼成温度に係る温度差範囲には、共に少なくとも酸化ホウ素を含むグレーズ層間の上述した失透防止の意義があることから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1乃至4号証及び参考資料1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることができない。 (2)本件発明2について 本件発明2(以下、前者)と甲第1号証記載の発明(以下、後者)とを対比すると、後者の、感熱ヘッド用グレーズドセラミック基板、セラミック基板1、突起2,グレーズ層3は、それぞれ、前者の、サーマルヘッド用グレーズ基板、セラミックス基板、凸状に焼成されて形成された第1のグレーズ層、第2のグレーズ層に対応し、後者の、突起2とグレーズ層3の軟化点はそれぞれ850°Cと590°Cであって、グレーズ層3は突起2より260°C軟化点が低く、また、後者の、突起2とグレーズ層3の焼成温度はそれぞれ1100°Cと850°Cであって、グレーズ層3は突起2より250°C焼成温度が低いから、両者の間には、次の一致点と相違点が認められる。 <一致点>セラミックス基板上に凸状に第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層より軟化点の低い第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より低い温度で焼成したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法。 <相違点1>前者の第2グレーズ層が第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されているのに対し、後者のグレーズ層3はセラミック基板1の表面上の突起2以外の部分に形成されている点。 <相違点2>前者が、共に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と第2のグレーズ層とにおける、第2のグレーズ層の軟化点及び焼成温度を、第1のグレーズ層よりそれぞれ50°C以上低い温度及び100°C以上低い温度として、失透を防止しているのに対し、後者は、アルカリ土類珪酸塩ガラスペーストからなる突起2とPbOを主成分とした硼珪酸鉛ガラスからなるグレーズ層3とにおける、グレーズ層3の軟化点及び焼成温度を、突起2よりそれぞれ260°C低い温度及び250°C低い温度として、グレーズ層3を焼成するときに、先に焼成形成された突起2の流出をほとんどなくしている点。 これら相違点1及び相違点2は、上述した本件発明1と甲第1号証記載の発明との対比における相違点1及び相違点2と同内容であるから、その判断も上述した本件発明1についての判断と同じである。 したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1乃至4号証及び参考資料1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることができない。 [4]むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1乃至2についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1乃至2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1乃至2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 サーマルヘッド用グレーズ基板及びその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と、 該第1のグレーズ層より50℃以上軟化点が低く該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されるとともに上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より100℃以上低い温度で焼成されて失透を防止して形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層と、 を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板。 【請求項2】 セラミックス基板上に凸状に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して、該第1のグレーズ層より50℃以上軟化点の低い少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より100℃以上低い温度で焼成して失透を防止したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法。 【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、ファクシミリやサーマルプリンタ等に用いるサーマルヘッド用グレーズ基板に関するものである。 [従来の技術] 従来より、ファクシミリやサーマルプリンタ等の印字機構としては、例えばサーマルヘッドが知られており、このサーマルヘッドには、セラミックス基板上にガラス質のグレーズ層が形成されたグレーズ基板が使用されている。 上記グレーズ基板としては、例えば第4図(a)に示すように、平板なセラミックス基板P1上に、グレーズ層P2を帯状に配置して突起部P3を形成したものが知られており、この突起部P3表面に発熱体P4が形成され、セラミックス基板P1上に導電性パターンP5が配線されている。 また、第4図(b)に示す様に、凸部P6を有するセラミックス基板P7の表面全体をグレーズ層P8で覆って、突起部P9を形成したものが知られており、この突起部P9の表面に発熱体P10が形成され、グレーズ層P8の平板部分P11に導電性パターンP12が配線されている。 [発明が解決しようとする課題] しかしながら、上記従来技術では下記のような問題があり未だ十分ではなかった。 即ち、近年では機器の精密化の要求が高くなっており、上記平板なセラミックス基板P1上にグレーズ層P2により突起部P3を形成するものでは、グレーズ層P2を焼成する際に、グレーズ層P2の端部が縮むいわゆる「ひけ」という現象が生じ、それによって突起部P3の直線性や寸法精度に問題が生じていた。更に、上記配線に関しても高精度が要求されており、従来の表面が粗いセラミックス基板P1上に、直接導電性パターンP5を配線をするものでは、これ以上の高精度化,均質化ができないという問題が生じてきた。 また、凸部P6を有するセラミックス基板P7上にグレーズ層P8を形成するものでは、セラミックス基板P1表面全体をグレーズ層P8で覆うことにより、平滑性は良好になるが、焼成時にグレーズ層P8の軟化により突起部P9が広がり易く、必ずしも十分な高さと幅を備えた明瞭な形状の突起部P9を形成することができないという問題があった。 本発明は、上記課題を解決し、好適な形状の突起部を有し、精密かつ均質な配線を行うことができるサーマルヘッド用グレーズ基板及びその製造方法を提供することを目的とする。 [課題を解決するための手段] かかる問題点を解決するための請求項1の発明は、 セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と、 該第1のグレーズ層より50℃以上軟化点が低く該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されるとともに上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より100℃以上低い温度で焼成されて失透を防止して形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層と、 を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板を要旨とする。 請求項2の発明は、 セラミックス基板上に凸状に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して、該第1のグレーズ層より50℃以上軟化点の低い少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より100℃以上低い温度で焼成して失透を防止したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法を要旨とする。 ここで、上記第1のグレーズ層と第2のグレーズ層との軟化点の温度差は、100℃以上であると、形状のはっきりした凸状部分が形成されるので一層好適である。 上記セラミックス基板としては、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,ムライト等を使用することができる。 [作用] 請求項1の発明では、セラミックス基板上に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層が凸状に形成され、更に第1のグレーズ層を覆って或は該層に接してセラミックス基板上に、第1のグレーズ層より50℃以上低い軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層が形成されているので、第2のグレーズ層の焼成時に、第1のグレーズ層が軟化することなく凸状部分の形状が明瞭に保存される。 しかも、第2のグレーズ層は第1のグレーズ層より100℃以上低い温度で焼成され、両グレーズ層が反応して生ずる失透が防止されている。 また、請求項2の発明では、セラミックス基板上に高軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を凸状に形成した後に、第1のグレーズ層より50℃以上低い軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層を形成し、第1のグレーズ層の焼成温度より100℃以上低い温度で焼成することにより、両グレーズ層が反応して生ずる失透を防止する。また、第2のグレーズ層の焼成温度は第1のグレーズ層の焼成温度よりかなり低いので、その焼成によって第1のグレーズ層が軟化することを防止でき、それによって凸状部分の形状が明瞭に保存される。 [実施例] 以下本発明の各実施例を説明するが、ここで、第1ないし第3実施例は、セラミックス基板上に、突起部を形成する高軟化点の第1のグレーズ層を設けた後に、均一な厚さに低軟化点の第2のグレーズ層を形成したものである。 (1)第1〜第3実施例 まず、これらの実施例で使用する材料等について説明する。 第1及び第2のグレーズ層が形成されるセラミックス基板は、アルミナが97重量%含まれる基板が使用されるが、それ以外に、窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,ムライト等を使用できる。 また、第1又は第2のグレーズ層となるペーストは、まず、下記第1表の組成となるようにガラスの原料を調整し、1300℃〜1500℃で溶融した後に、水中で急冷してガラスフリットを製造する。次いで、そのガラスフリットを粉砕し、エチルセルロース系バインダを混合してペーストを製造する。 尚、下記第1表において、試料No.1が第1のグレーズ層に使用される組成であり、試料No.2,3が第2のグレーズ層に使用される組成である。また、試料No,4は第1のグレーズ層に使用可能な参考例であり、試料No.5は後述する比較例に用いるグレーズの組成である。 (第1実施例) 第1図に示すように、本実施例のサーマルヘッドに使用されるグレーズ基板31は、セラミックス基板32上に、上記第1表の試料No.1の組成の第1のグレーズ層33が、幅1.0mm,高さ50μmで凸状に形成されており、更に、この第1のグレーズ層33及びセラミックス基板32の表面上に、厚さ30μmの試料No.2の組成の第2のグレーズ層34が形成されている。尚、本実施例では、上記凸状部分とその上に形成された第2のグレーズ層34によって突起部35が形成される。 そして、このグレーズ基板31を製造するには、下記第2表に示すように、まず、セラミックス基板32上に第1のグレーズ層33となる試料No1のペーストを凸状に塗布し、1250℃で2時間焼成した。次に、その第1のグレーズ層33及びセラミックス基板32の表面に、上記試料No2のペーストを均一な厚さで塗布し、1020℃で2時間焼成した。 この様にして製造されたグレーズ基板31は、突起部35の幅、高さとも最初の焼成時の形状を保ち、かつ第1のグレーズ層33と第2のグレーズ層34との接触部分に失透もなく、表面が平滑で実用に富む好適な基板である。 (第2実施例) 第2図に示すように、本実施例のグレーズ基板41は、セラミックス基板42上に、試料No.1の組成の第1のグレーズ層43からなる、高さ50μm,幅1.0mmの突起部44が形成されている。そして、その突起部44の両側面に接してセラミックス基板42上に、均一の厚さ30μmで試料No3の組成の第2のグレーズ層45が形成されている。 そして、このグレーズ基板41を製造する際には、下記第2表に示すように、第1のグレーズ層43を1250℃で2時間焼成した後に、第2のグレーズ層45を930℃で2時間焼成した。 この様にして製造されたグレーズ基板41は、上記第1実施例と同様な作用効果を奏する。 (第3実施例) 第3図に示すように、本実施例のグレーズ基板51は、セラミックス基板52上に、試料No.1の組成の第1のグレーズ層53からなる、高さ50μm,幅1.0mmの突起部54が形成されている。そして、その突起部54の一方の側面に接してセラミックス基板52上に、均一の厚さで試料No.2の組成の第2のグレーズ層55が形成されている。 そして、このグレーズ基板55を製造する際には、下記第2表に示すように、第1のグレーズ層53を1250℃で2時間焼成した後に、第2のグレーズ層55を1020℃で2時間焼成した。 この様にして製造されたグレーズ基板51は、上記第1実施例と同様な作用効果を奏する。 尚、本実施例において、第2のグレーズ層55を形成する際に、試料No.3のペーストを使用して第2のグレーズ層55を使用しても同様な効果を奏する。 次に、比較例について説明する。 (比較例) この比較例のグレーズ基板(図示せず)は、上記第1実施例の構成とほぼ同様であるが、使用する素材の組成が異なる。 即ち、セラミックス基板上に、試料No.1の組成の第1のグレーズ層により突起部が形成され、更にその第1のグレーズ層上に、試料No.5の組成の第2のグレーズ層が均一な厚さで形成されている。 そして、このグレーズ基板を製造する際には、下記第2表に示すように、まず、上記第1のグレーズ層を1250℃で2時間焼成した後に、第2のグレーズ層を1150℃で2時間焼成した。 この様にして製造されたグレーズ基板は、第1のグレーズ層の軟化点Tsが970℃,第2のグレーズ層の軟化点Tsが940℃と、温度差が50℃以下であるので、突起部はなだらかな丘状となり、明瞭な突起が形成されない。 以上本発明の各実施例について説明したが、本発明はこの様な実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施できることは勿論である。 [発明の効果] 上述した請求項1の発明により、第1のグレーズ層の上に、第2のグレーズ層が形成されるので、明瞭な形状の凸状部分が形成される。またその際に、ひけが生ずることがなく高い直線性や精度を有する凸状部分が形成されるという特徴がある。 また、セラミックス基板表面を請求項1,2の第2のグレーズ層で覆うことにより、セラミックス基板表面の面粗さを飛躍的に向上でき、それによって、セラミックス基板上の表面加工を行う必要がなくなるので、表面が滑らかなサーマルヘッド用グレーズ基板を容易に製造することができる。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の第1実施例のグレーズ基板を示す断面図、第2図は第2実施例のグレーズ基板を示す断面図、第3図は第3実施例のグレーズ基板を示す断面図、第4図は従来のグレーズ基板を示す断面図である。 31,41,51…グレーズ基板 32,42,52…セラミックス基板 33,43,53…第1のグレーズ層 34,45,55…第2のグレーズ層 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 (1)訂正事項a 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2を以下のとおり訂正する。 「【請求項1】セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と、 該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点が低く該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されるとともに上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より100°C以上低い温度で焼成されて失透を防止して形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層と、 を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板。 【請求項2】セラミックス基板上に凸状に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して、該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点の低い少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成して失透を防止したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法。」 (2)訂正事項b 本件特許明細書の発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]及び[作用]の欄を以下のとおり訂正する。 「[課題を解決するための手段] かかる問題点を解決するための請求項1の発明は、 セラミックス基板上に凸状に、焼成されて形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層と, 該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点が低く該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して配置されるとともに上記セラミックス基板上に上記第1のグレーズ層より100°C以上低い温度で焼成されて失透を防止して形成された少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層と、 を備えたことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板を要旨とする。 請求項2の発明は、 セラミックス基板上に凸状に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を焼成して形成した後に、該第1のグレーズ層を覆って或は第1のグレーズ層に接して、該第1のグレーズ層より50°C以上軟化点の低い少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層となる組成物を上記セラミックス基板上に形成し、次に上記第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成して失透を防止したことを特徴とするサーマルヘッド用グレーズ基板の製造方法を要旨とする。 ここで、上記第1のグレーズ層と第2のグレーズ層との軟化点の温度差は、100°C以上であると、形状のはっきりした凸状部分が形成されるので一層好適である。 上記セラミックス基板としては、アルミナ,窒化アルミニウム,窒化珪素,炭化珪素,ムライト等を使用することができる。 [作用] 請求項1の発明では、セラミックス基板上に少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層が凸状に形成され、更に第1のグレーズ層を覆って或は該層に接してセラミックス基板上に、第1のグレーズ層より50°C以上低い軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層が形成されているので、第2のグレーズ層の焼成時に、第1のグレーズ層が軟化することなく凸状部分の形状が明瞭に保存される。 しかも、第2のグレーズ層は第1のグレーズ層より100°C以上低い温度で焼成され、両グレーズ層が反応して生ずる失透が防止されている。 また、請求項2の発明では、セラミックス基板上に高軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第1のグレーズ層を凸状に形成した後に、第1のグレーズ層より50°C以上低い軟化点の少なくとも酸化ホウ素を含む第2のグレーズ層を形成し、第1のグレーズ層の焼成温度より100°C以上低い温度で焼成することにより、両グレーズ層が反応して生ずる失透を防止する。また、第2のグレーズ層の焼成温度は第1のグレーズ層の焼成温度よりかなり低いので、その焼成によって第1のグレーズ層が軟化することを防止でき、それによって凸状部分の形状が明瞭に保存される。」 |
異議決定日 | 2001-03-19 |
出願番号 | 特願平2-57454 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YA
(B41J)
P 1 651・ 121- YA (B41J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 尾崎 俊彦 |
特許庁審判長 |
小沢 和英 |
特許庁審判官 |
番場 得造 小泉 順彦 |
登録日 | 1999-09-24 |
登録番号 | 特許第2984017号(P2984017) |
権利者 | 日本特殊陶業株式会社 |
発明の名称 | サーマルヘッド用グレーズ基板及びその製造方法 |
代理人 | 根本 恵司 |
代理人 | 足立 勉 |
代理人 | 足立 勉 |
代理人 | 田中 敏博 |
代理人 | 畑川 清泰 |
代理人 | 三谷 浩 |
代理人 | 田中 敏博 |