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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61H
管理番号 1044746
異議申立番号 異議2000-72624  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-27 
確定日 2001-04-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3002181号「浴槽」の請求項1乃至3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3002181号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3002181号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成10年7月16日に出願され、平成11年11月12日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、申立人角屋義彦より、その請求項1及び3に係る特許について、同オージー技研株式会社より、その請求項1乃至3に係る特許について、それぞれ特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年1月30日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断

(1) 訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を削除し、同請求項2を新たな請求項1とし、同請求項3の末尾の「請求項1または請求項2記載の浴槽」を「請求項1記載の浴槽」とすると共に、同請求項3を新たな請求項2とする。
イ.訂正事項b
明細書の【課題を解決するための手段】の次から段落【0010】の末尾までの「上記目的を達成するために、・・・常に有効な濃度に維持される。」との記載を
「上記目的を達成するために、請求項1記載の浴槽は、浴槽本体と、該浴槽本体の上方に設けられて入浴者を支持する担架と、前記浴槽本体と前記担架とを相対的に上下移動させ、互いに近接させることにより前記担架上の入浴者を前記浴槽本体内の湯に浸漬させる昇降機構と、前記浴槽本体に貯留された湯を循環させる循環路と、この循環路を流れる湯の殺菌処理を行う殺菌装置と、前記浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に、前記殺菌装置へ作動開始信号を出力するフロートスイッチとを有し、前記殺菌装置は、前記昇降機構によって前記浴槽本体と前記担架とが近接されて前記担架上の入浴者が前記浴槽本体内の湯に浸漬された際に作動することを特徴としている。
つまり、浴槽本体内に貯留された湯が、循環路を流れる際に、循環路に設けられた殺菌装置によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、浴槽本体内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化が図られ、作業効率が大幅に向上される。また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体内の湯を循環路内へ通すことにより、浴槽本体内の湯が殺菌装置によって殺菌処理されるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。さらに、浴槽本体内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって殺菌装置が作動されるので、浴槽本体内に貯留する湯が自動的に殺菌処理され、殺菌作業にかかる労力が大幅に低減される。そして、入浴者が支持された担架と浴槽とが昇降機構によって互いに近接されることにより、循環路を通されて有効な殺菌濃度とされた浴槽本体内の湯に、入浴者が浸漬されて入浴される。しかも、このように、昇降機構によって浴槽本体と担架とが近接されて、担架に支持された入浴者が浴槽本体内の湯に浸漬された時、つまり入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。
請求項2記載の浴槽は、請求項1記載の浴槽において、前記殺菌装置が、前記浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すことを特徴としている。
つまり、殺菌装置が、浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すものであるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度が常に有効な濃度に維持される。」と訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の【発明の効果】の次から段落【0041】の末尾までの「以上、説明したように、・・・常に有効な濃度に維持させることができる。」との記載を
「以上、説明したように、本発明の浴槽によれば、下記の効果を得ることができる。
請求項1記載の浴槽によれば、浴槽本体内に貯留された湯が、循環路を流れる際に、循環路に設けられた殺菌装置によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、従来のように浴槽本体内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化を図ることができ、作業効率を大幅に向上させることができる。また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体内の湯を循環路内へ通すことにより、浴槽本体内の湯を殺菌装置によって殺菌処理されるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。さらに、殺菌装置が、浴槽本体内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって殺菌装置が作動されるので、浴槽本体内に貯留する湯を自動的に殺菌処理させることができ、殺菌作業にかかる労力を大幅に低減させることができる。そして、入浴者が支持された担架と浴槽とを昇降機構によって互いに近接させることにより、循環路を通されて有効な殺菌濃度とされた浴槽本体内の湯に、入浴者を浸漬させて入浴させることができる。しかも、このように、昇降機構によって浴槽本体と担架とを近接させて、担架に支持された入浴者を浴槽本体内の湯に浸漬させた時、つまり入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。
請求項2記載の浴槽によれば、殺菌装置が、浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となるように作動した後、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すものであるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度を常に有効な濃度に維持させることができる。」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1を削除し、それに続く請求項を順次繰り上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
次に、上記訂正事項b及びcは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記いずれの訂正事項も、新規事項の追加に該当せず、また、極めて容易に浴槽内の湯の殺菌を行うことができかつ常に充分な殺菌濃度に保つことが可能な浴槽の提供という課題に変更を及ぼすものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3) むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断

(1) 申立ての概要
申立人角屋義彦は、本件請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1及び3に係る発明の特許を取り消すべきと、また、本件請求項3に係る発明の特許は、それに付随して主張している効果を得るための構成要件を満たしていないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり取り消されるべきと、それぞれ主張している。
さらに、申立人オージー技研株式会社は、本件請求項1乃至3係る発明は、甲第1号証乃至甲第13号証に記載された発明、公知技術及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1乃至3係る発明の特許を取り消すべきと主張している。

(2) 本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、訂正後の本件請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】 浴槽本体と、該浴槽本体の上方に設けられて入浴者を支持する担架と、前記浴槽本体と前記担架とを相対的に上下移動させ、互いに近接させることにより前記担架上の入浴者を前記浴糟本体内の湯に浸漬させる昇降機構と、前記浴槽本体に貯留された湯を循環させる循環路と、この循環路を流れる湯の殺菌処理を行う殺菌装置と、前記浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に、前記殺菌装置へ作動開始信号を出力するフロートスイッチとを有し、前記殺菌装置は、前記昇降機構によって前記浴槽本体と前記担架とが近接されて前記担架上の入浴者が前記浴槽本体内の湯に浸漬された際に、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間作動することを特徴とする浴槽。
【請求項2】 前記殺菌装置は、前記浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すことを特徴とする請求項1記載の浴槽。

(3) 進歩性(特許法第29条第2項)についての判断
ア.刊行物等
特許異議申立人が証拠として提出した刊行物には、それぞれ、以下のような発明が記載されている。
a)刊行物1:実願昭63-141950号(実開平2-66294号)の
マイクロフィルム(申立人角屋義彦の提出した甲第1号証)
水供給源と水槽とをつなぐ流水路における水の流れの有無を水量検知センサにより検知し、水の流れを検知したときに殺菌処理を施すようにした水流検知型殺菌装置。
b)刊行物2:特開平5-104078号公報(同甲第2号証)
蛇口に接続される給水管を流れる水の流量に適した殺菌剤を投入する浄水器ユニット。
c)刊行物3:特開昭63-35214号公報(同甲第3号証)
水と湯を混合した温水を浴槽などに供給する湯水混合装置。
d)刊行物4:特開平8-132054号公報(同甲第4号証)
塩素濃度が基準範囲内になるように、循環路の水(又は湯)流中に、塩素の消費が多い時間帯においては塩素が多く投入され、塩素の消費が少ない時間帯には塩素の投入を少なくし、かつ、塩素を投入するタイミングを所定時間毎に行うようにした、プールや大型風呂用の塩素濃度調整装置。
e)刊行物5:実願昭63-141950号(実開平2-66294号)の
マイクロフィルム(申立人オージー技研株式会社の提出した
甲第1号証)
上記刊行物1に同じ。
f)刊行物6:特開平9-56769号公報(同甲第2号証)
上流から、電解酸性水製造装置、タンク、ポンプ、流量調整弁が、パイプ(メインパイプ)によって浴槽に向かって直列的に接続される一方、水道水の流入するサブパイプに流量調整弁及びヒータが設けられ、サブパイプは合流部においてメインパイプに合流し、流入した水道水がヒータによって高温とされ、メインパイプを流れる常温の電解酸性水と合流部において混合し、また、メインパイプにおける合流部よりも下流側に設けられた温度センサは、流量調整弁に設けられた制御装置に接続されており、温度センサによって測定された温度に基づいて、制御装置によって流量調整弁の開き具合が調整されて、流量調整弁を経て流れる電解酸性水(常温)の量(割合)が調整され、浴槽へ流入する電解酸性水の温度が調整される入浴装置。
g)刊行物7:特開平6-181964号公報(同甲第3号証)
浴槽内に湯を張るための給湯系の構成として、給湯ポンプの後位および給水ポンプの後位にそれぞれ分岐管が接続されて、それらの分岐管が浴槽給湯用のミキシングバルブに接続され、該バルブの吐出側が浴槽内に開口され、更に、上記浴槽内給湯系の中途部にハンドシャワー用のミキシングバルブが介装されてハンドシャワー系が設けられているシャワー浴兼用入浴装置。
h)刊行物8:特開平5-99441号公報(同甲第4号証)
水加熱用熱交換器からの給湯路が、第1給湯路と第2給湯路とに分岐しており、第1給湯路には逆止弁が配設され、さらに、第1給湯路には給水路から分岐させたバイパス路が接続されており、バイパス路と第1給湯路との接続箇所にはミキシングバルブが配設され、第2給湯路の、第4給湯路との接続箇所より下流側は浴槽への湯張給湯または追焚給湯を行なうための浴槽用給湯路となっており、浴槽への湯張給湯を行なう場合には、閉止機能付き水量調節弁が閉じると共に、開閉弁が開き、温水が第1給湯路、第4給湯路、浴槽用給湯路を経て浴槽へ供給され、そして、浴槽に湯張給湯している途中に一般給湯を行なう場合においては、給湯栓が開けられると、水流センサがこれを検知し、開閉弁が閉じるようにした給湯装置。
i)刊行物9:特開平9-28447号公報(同甲第5号証)
三方電磁弁の吐出ポートに連通された給水管路には、給水ポンプから送出された水を検出するフローセンサが配設され、フローセンサが給水検出すると、その検出信号が発信器から出力され、該検出信号に基づいて三方電磁弁を切り換え制御する洗髪装置。
j)刊行物10:OG技研株式会社の「車椅子入浴装置<標準タイプ>HK-
830取扱説明書」1997年4月発行(同甲第6号証)
給湯の仕方は、可変式オーバーフローのスライドレバーを最も高い位置にセットし、殺菌入浴を行なう時は、殺菌スイッチを押すと、殺菌スイッチのランプが点燈し、給湯量に応じて次亜塩素酸ナトリウムが自動混入され浴槽水を殺菌し、給湯・シャワーミキシングを適切な位置に設定し、給湯スイッチを押すと、殺菌スイッチを押している時は、給湯量に応じて一定の比率で次亜塩素酸酸ナトリウムを自動混入し、浴槽水の殺菌を行う浴槽及び貯湯タンクを備えた車椅子入浴装置。
k)刊行物11:特公平3-37995号公報(同甲第7号証)
薬注ポンプを連結した薬液タンクと、濾過装置および濾過装置の濾過、逆洗、洗浄の工程を選択する3個の自動3方弁と、濾過装置で濾過された濾過水を系外に供給する濾過水供給管に取りつけられた流量センサーと、濾過制御装置および薬液供給制御装置とから構成され、給水装置と原水供給管を介して連結されていおり、また原水供給管には薬液ポンプに連結された薬液供給管が分岐して接続され、濾過水供給管に取りつけられた流量センサーが、濾過水供給管内の流量を検知し、この信号が薬液供給制御装置に伝達されて薬液供給制御装置の指令により薬注ポンプの吐出量が制御され、適正な量の薬液が注入される水の浄化装置。
l)刊行物12:株式会社イワキのカタログ「イワキ電磁定量ポンプ」
1995年3月発行(同甲第8号証)
外部信号(無電圧接点信号)に同期してポンプが作動し、パルス発信型流量計と接続することにより、メイン流量に比例した薬注ができ、また専用のコントローラと接続することにより、さまざまな自動制御運転が行えるコントロールユニット機能を備えた電磁定量ポンプ。
m)刊行物13:特開平8-47518号公報(同甲第9号証)
浴槽本体には吸込口、ポンプ、並びに吐出口を備える循環系が接続され循環系の吸込口または吐出口は浴槽本体の底部に形成された収納室に設けられ、前記収納室に紫外線殺菌装置が組み込まれていることを特徴とし、身体障害者が横臥している担架を運搬車に載せたまま移動させて当該昇降式浴槽に横付けし、浴槽本体を下降させた状態で、担架ごと担架支持台上に移し替えることによって身体障害者を浴槽本体の担架支持台上に位置させ、この状態で浴槽本体を上昇させることによって、身体障害者を直接動かさずに入浴状態にさせることができ、ここで、紫外線殺菌装置を作動状態にするとともにポンプを駆動させると、循環系によって本体浴槽内の湯を循環させて紫外線殺菌装置に当てて殺菌処理することができる昇降式浴槽。
n)刊行物14:特開平8-132054号公報(同甲第10号証)
上記刊行物4に同じ。
o)刊行物15:特開平6-327575号公報(同甲第11号証)
浴水を強制的に循環させつつ濾過、保温、殺菌等の清浄化の処理をする浴水の清浄化装置において、循環ポンプが空運転し浴水の循環が止まるいわゆる水不足状態を検出する装置の異常検出装置に関し、水不足状態になると、密閉タンクとしての濾過タンクの水位が下がり、これが水位検出装置としてのフロートスイッチにより検出されるので、運転制御装置は、水不足表示装置に水不足を表示すると同時に循環ポンプ及びヒータへの通電を止めて安全を保つようにし、また、濾過タンクに取り付けられたフロートスイッチの動きは、装置に異常が無い場合は、濾過タンクは満水となっていてフロートは上の方に在るのでマグネットスイッチが働き、装置に異常がないことを示す信号が信号線から出るようにした浴水の清浄化装置。
p)刊行物16:特開平9-19474号公報(同甲第12号証)
水位検出部がフロートスイッチで構成され、浴槽に湯を供給する時に溢水が始まる前に作動し該水位検出部の出力信号が湯供給機構を制御して、浴槽への給場を停止させるものであり、増し湯給口から湯を供給している場合は、溢水の前に水位検出部が電磁弁を閉止させるようにしたオーバーフロー装置付浴槽。
q)刊行物17:特開平8-285374号公報(同甲第13号証)
浴水循環装置において、開始指令スィッチに応答して電解殺菌装置に通電させ塩素を一定時間発生させるための作動タイマーを備えることにより操作性を向上することができるものであり、電解殺菌ルーチンについては、電解殺菌を行なうか否かの判断が電解殺菌開始指令スイッチの操作により行なわれ、スイッチが操作(YES)されると、電解殺菌のための作動タイマーが作動し、そして、タイマーが所定時間に達した場合(YES)には、電解殺菌装置への通電が停止されて電解殺菌は終了し、それに伴い、流量調節弁が閉鎖され、これにより、浴水は脱塩素フィルターへの通水を終了するようにした浴水循環装置。
イ.対比・判断
a)本件発明1について
本件発明1と上記刊行物1乃至17に記載の発明とを対比すると、上記各刊行物に記載の発明は、少なくとも本件発明1を特定する事項である、「浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に、殺菌装置へ作動開始信号を出力するフロートスイッチ」を備えていない。
そして、当該事項により本件発明1は、浴槽本体内に貯留する湯を自動的に殺菌処理させて、殺菌作業にかかる労力を大幅に低減させることができるという顕著な効果を奏するものである。
確かに、上記刊行物1(上記刊行物5と同じ。)には、水量検知センサにより殺菌装置を動作させることが開示されてはいるが、このものは、水供給源と水槽とをつなぐ流水路における水の流れの有無を検知するものであって、浴槽本体内に貯留される湯の量を検出する本件発明1とは、検出対象及びスイッチの形態が全く異なるものである。
また、上記刊行物4(上記刊行物14と同じ。)には、殺菌剤の投入量を消費量に応じて調整すると共に、殺菌剤の投入のタイミングを所定時間毎に行う浴槽装置が開示されてはいるが、このものは、浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に殺菌装置が動作する本件発明1とは、動作タイミングが異なるものである。
また、刊行物13は、本体浴槽内の湯を循環させて殺菌装置にて殺菌処理することができる昇降式浴槽を開示するものではあるが、殺菌装置を動作させるための具体的な手段の開示がなく、また、浴槽本体内に貯留される湯の量を検出する構成を備えたものでもない。
また、刊行物15及び16は、水位を検出するためのフロートスイッチを備えた浴槽を開示するものではあるが、これらものは、単に水位不足やオーバーフロー状態を検出するためのものであり、殺菌装置自体或いは殺菌装置との関係が全く考慮されていないことは明らかである。
さらに、上記刊行物17には、浴槽本体に貯留された湯を循環させる循環路と、この循環路を流れる湯の殺菌処理を行う殺菌装置が開示されてはいるが、かかる殺菌装置の動作は、開始指令スイッチの手動操作により行われるものであるから、本件発明1のような自動的殺菌処理がなされないことは明らかである。
このように、殺菌装置の作動のタイミングを本件発明1のように設定する技術思想が何れの刊行物にも開示されていない以上、本件発明1が上記各刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。
b)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における殺菌装置について更なる事項を限定したものであるから、本件発明1と同様に、上記各刊行物に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 記載要件(特許法第36条第6項第2号)についての判断
申立人角屋義彦は、訂正前の請求項3(訂正後の請求項2)に対して、
ア.『殺菌処理を本来必要な時間以上長く行うようにしているので、浴槽本体内の殺菌濃度が本来必要な濃度よりも濃くなると言える。』(以下、「主張ア」という。)、
イ.『浴槽本体内への差し湯については、入浴行為によって浴槽水位が低下した場合に行われるものであると考えられるが、この差し湯を行うときにも、本件特許発明の請求項1(訂正前の請求項1)に記載のフロースイッチにより流れが検出されることになるので、差し湯動作によって給湯配管を湯が流れるときに上述したような殺菌処理が行われることになるはずであり、結果的に上述したように差し湯を考慮して事前に余分な殺菌処理を行っていることを加味すると、トータルとして過剰な殺菌処理を行ってしまうことになり、殺菌濃度が許容範囲を越えてしまうといった不具合の発生が予測できる。』(以下、「主張イ」という。)、
旨主張している。
しかしながら、上記主張アについては、訂正後の請求項2に係る本件発明2が、差し湯のあることを前提としたものであるから、差し湯のある限り、殺菌濃度が有効な濃度に保てることは明らかであり、上記主張アを妥当なものとして認めることはできない。
また、上記主張イについては、訂正により、訂正前の請求項1が削除されると共に、訂正後の請求項2において、該訂正前の請求項1を引用する記載も削除されたため、上記主張イのごとき不具合は解消されている。
したがって、記載要件に関し、上記申立人の主張する不備は認められない。

(5) むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
浴槽
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 浴槽本体と、該浴槽本体の上方に設けられて入浴者を支持する担架と、前記浴槽本体と前記担架とを相対的に上下移動させ、互いに近接させることにより前記担架上の入浴者を前記浴槽本体内の湯に浸漬させる昇降機構と、前記浴槽本体に貯留された湯を循環させる循環路と、この循環路を流れる湯の殺菌処理を行う殺菌装置と、前記浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に、前記殺菌装置へ作動開始信号を出力するフロートスイッチとを有し、前記殺菌装置は、前記昇降機構によって前記浴槽本体と前記担架とが近接されて前記担架上の入浴者が前記浴槽本体内の湯に浸漬された際に、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間作動することを特徴とする浴槽。
【請求項2】 前記殺菌装置は、前記浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すことを特徴とする請求項1記載の浴槽。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、浴槽に係り、特に、身体の不自由な人や老人などの被介護者用の浴槽に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、身体の不自由な人や老人などの被介護者用の浴槽においては、複数の者が順に入浴する場合や入浴が長時間となる場合に、浴槽内の湯を殺菌処理することが行われている。このように、浴槽内の湯を殺菌する場合は、浴槽の湯量に応じて、浴槽内の湯に銀イオンを発生させたり塩素を溶解させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、浴槽内の湯を殺菌させる場合、浴槽内へ湯を溜めた後に、別個の殺菌装置によって浴槽内の湯を殺菌処理しなければならず、その作業が極めて煩雑であった。また、充分な殺菌濃度にて殺菌したとしても、差し湯を行うことにより新湯が浴槽に入ると、浴槽内の湯の殺菌濃度が薄まってしまい、殺菌効果が低下してしまうという問題があった。
【0004】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、極めて容易に、浴槽内の湯の殺菌を行うことができ、かつ常に充分な殺菌濃度に保つことが可能な浴槽を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の浴槽は、浴槽本体と、該浴槽本体の上方に設けられて入浴者を支持する担架と、前記浴槽本体と前記担架とを相対的に上下移動させ、互いに近接させることにより前記担架上の入浴者を前記浴槽本体内の湯に浸漬させる昇降機構と、前記浴槽本体に貯留された湯を循環させる循環路と、この循環路を流れる湯の殺菌処理を行う殺菌装置と、前記浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に、前記殺菌装置へ作動開始信号を出力するフロートスイッチとを有し、前記殺菌装置は、前記昇降機構によって前記浴槽本体と前記担架とが近接されて前記担架上の入浴者が前記浴槽本体内の湯に浸漬された際に作動することを特徴としている。
つまり、浴槽本体内に貯留された湯が、循環路を流れる際に、循環路に設けられた殺菌装置によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、浴槽本体内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化が図られ、作業効率が大幅に向上される。また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体内の湯を循環路内へ通すことにより、浴槽本体内の湯が殺菌装置によって殺菌処理されるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。さらに、浴槽本体内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって殺菌装置が作動されるので、浴槽本体内に貯留する湯が自動的に殺菌処理され、殺菌作業にかかる労力が大幅に低減される。そして、入浴者が支持された担架と浴槽とが昇降機構によって互いに近接されることにより、循環路を通されて有効な殺菌濃度とされた浴槽本体内の湯に、入浴者が浸漬されて入浴される。しかも、このように、昇降機構によって浴槽本体と担架とが近接されて、担架に支持された入浴者が浴槽本体内の湯に浸漬された時、つまり入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。
請求項2記載の浴槽は、請求項1記載の浴槽において、前記殺菌装置が、前記浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すことを特徴としている。
つまり、殺菌装置が、浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すものであるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度が常に有効な濃度に維持される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の浴槽を図によって説明する。
(第1実施形態例)
図1において、符号1は、浴槽本体である。この浴槽本体1には、給湯配管2が設けられており、この給湯配管2によって浴槽本体1内へ湯が供給されるようになっている。
【0007】
次に、この給湯配管2について説明する。図に示すように、ミキシング部3には、湯が送り出される湯配管4と、水が送り出される水配管5とが接続されており、このミキシング部3にて、湯配管4からの湯と水配管5からの水とが設定された温度の湯となるように混合されるようになっている。そして、このミキシング部3にて設定温度に調整された湯は、給湯配管2を通って、この給湯配管2の先端の給湯口6から浴槽本体1内へ注がれるようになっている。
【0008】
また、この給湯配管2には、フロースイッチ7が設けられており、このフロースイッチ7によって、この給湯配管2内における湯の流れの検出及び流れる湯の流量が検出されるようになっている。さらに、この給湯配管2には、殺菌装置8が設けられており、この殺菌装置8が作動されることにより、給湯配管2を流れる湯に殺菌処理が行われるようになっている。なお、符号9は、給湯配管2の流路を開閉させるバルブである。
【0009】
そして、上記構造の給湯配管2が設けられた浴槽本体1によれば、浴槽本体1内へ湯を貯留すべく、バルブ9を開くと、湯配管4と水配管5とから送り出された湯と水とがミキシング部3にて混合されて給湯配管2へ送り込まれ、この給湯配管2を通って給湯口6から浴槽本体1内へ注がれる。そして、浴槽本体1内へ充分に湯が貯留されたら、バルブ9を閉じて給湯口6からの湯の吐出を止める。
【0010】
ここで、この給湯配管2にて湯が流れると、給湯配管2内にて湯が流れていることがフロースイッチ7にて検出され、さらに、このフロースイッチ7によって流量が検出される。このフロースイッチ7からの検出信号は、殺菌装置8へ送信され、この殺菌装置8の作動が開始されるとともに、この殺菌装置8が、給湯配管2を通って給湯口6から浴槽本体1内へ注がれる湯量に応じて、この給湯配管2を流れる湯に殺菌処理を施す。これにより、浴槽本体1内には、殺菌装置8によって有効な殺菌濃度の殺菌処理が施された湯が貯留される。
【0011】
また、この浴槽本体1に、差し湯を行う場合は、再びバルブ9を開き、給湯口6から湯を吐出させる。このときにも、フロースイッチ7からの検出信号に基づいて、殺菌装置8によって差し湯に有効な殺菌濃度にて殺菌処理が施される。つまり、差し湯による、浴槽本体1内に貯留されている湯の殺菌濃度の低下が防がれ、常時、有効な殺菌濃度の湯が貯留された状態が維持される。
【0012】
このように、上記の浴槽によれば、給湯配管2を通して浴槽本体1内へ注がれる湯が、給湯配管2に設けられた殺菌装置8によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、浴槽本体1内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化を図ることができ、作業効率を大幅に向上させることができる。また、差し湯を行うべく、給湯配管2を通して浴槽本体1内へ湯を注ぐ場合にも、この差し湯が殺菌装置8によって殺菌処理されるので、浴槽本体1内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。
【0013】
(第2実施形態例)
図2に示すものは、浴槽本体1の下方側に昇降機構11が設けられた昇降式の浴槽であり、特に、身体の不自由な人や老人などの被介護者用の浴槽である。この昇降機構11が設けられた浴槽本体1には、その浴槽本体1の上方側に、担架19が設けられており、この担架19上に入浴者である被介護者を横たわらせた状態にて、昇降機構11によって浴槽本体1を上昇させることにより、浴槽本体1内に担架19が浸漬され、この担架19上の被介護者の入浴が行われるようになっている。
【0014】
昇降機構11によって昇降される浴槽本体1には、循環路12が設けられている。この循環路12は、浴槽本体1の側面における下方側及び上方側に端部が接続された配管からなるもので、この循環路12には、ポンプ13、フィルタ14、殺菌装置15が順に設けられている。そして、ポンプ13が作動することにより、このポンプ13によって浴槽本体1内の湯が下方側から循環路12内へ吸い込まれ、その後、フィルタ14を通されることにより清浄され、さらに、殺菌装置15を通されて、浴槽本体1内へ上方側から送り出されるようになっている。
【0015】
このとき、殺菌装置15が作動している場合は、この殺菌装置15によって、浴槽本体1へ戻される湯の殺菌が行われる。ここで、この循環路12の殺菌装置15は、その作動が昇降機構11と連動されている。つまり、被介護者の入浴を行うべく、昇降機構11によって浴槽本体1が上昇されると、殺菌装置15の作動が開始されるようになっている。即ち、入浴時には、浴槽本体1内の湯が循環路12の殺菌装置15によって必ず殺菌され、浴槽本体1内の湯が充分に有効な殺菌濃度に維持されるようになっている。
【0016】
なお、この浴槽には、給湯管16が設けられており、この給湯管16のバルブ17を開くことにより、給湯口18から浴槽本体1内へ湯が供給されるようになっている。そして、この浴槽によれば、浴槽本体1内に貯留された湯が、循環路12を流れる際に、循環路12に設けられた殺菌装置15によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、浴槽本体1内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化を図ることができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0017】
また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体1内の湯を循環路12内へ通すことにより、浴槽本体1内の湯が殺菌装置15によって殺菌処理されるので、浴槽本体1内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。
【0018】
なお、この浴槽では、浴槽本体1を昇降機構11によって昇降させる構造としたが、担架19を昇降させる構造としても良いことは勿論である。
【0019】
(第3実施形態例)
図3に示すように、この浴槽は、浴槽本体1と、この浴槽本体1に設けられた循環路12とから構成されたもので、循環路12は、前述した第2実施形態例のものと同一構成とされている。この浴槽では、循環路12の殺菌装置15の作動を、差し湯を考慮して次のようなタイミングにて行うようになっている。
【0020】
図4に示すように、この浴槽では、浴槽本体1内へ湯を貯留させた時点にて、この貯留させた湯が充分に有効な殺菌濃度にて殺菌することができる作動時間T1にて作動される。その後は、差し湯を考慮した所定の作動時間T2による作動を間隔をあけて繰り返し行うようになっている。
【0021】
このように、この浴槽によれば、差し湯を考慮した所定の作動時間T2による作動を間隔をあけて繰り返し行うものであるので、浴槽本体1内の湯の殺菌濃度を差し湯の影響を受けることなく、有効な濃度に維持させることができる。
【0022】
なお、上記殺菌装置15の作動のタイミングは、第1実施形態例の浴槽及び第2実施形態例の浴槽に、それぞれ適応させることができる。ここで、図5に示すものは、第1実施形態例の浴槽における殺菌装置8の作動のタイミングを示すものである。
【0023】
この場合、図に示すように、まず、給湯配管2のバルブ9が開かれて給湯口6から浴槽本体1内へ湯が注がれ、フロースイッチ7によって湯の流れが検出されると、殺菌装置8が、浴槽本体1へ貯留させる湯が充分に有効な殺菌濃度となる作動時間T1にて作動される。その後は、殺菌装置8が、所定の作動時間T2による作動を、間隔をあけて繰り返し行う。
【0024】
また、図6に示すものは、第2実施形態例の浴槽における殺菌装置15の作動のタイミングを示すものである。この場合、図に示すように、浴槽本体1内へ湯を貯留させた時点にて、この貯留させた湯が充分に有効な殺菌濃度にて殺菌することができる作動時間T1にて作動される。その後は、浴槽本体1が昇降機構11によって上昇された時点にて、殺菌装置15が所定の作動時間T2による作動を行う。
【0025】
このように、昇降機構11によって浴槽本体1が上昇して担架19に支持された被介護者が浴槽本体1内の湯に浸漬された時、つまり、担架19に支持された被入浴者の入浴時に、殺菌装置15が作動して、浴槽本体1内の湯を所定時間T2だけ殺菌処理するので、入浴時の度に差し湯を行ったとしても、浴槽本体1内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。
【0026】
なお、第2実施形態例あるいは第3実施形態例における殺菌装置15の作動を開始させるために、ON/OFFスイッチを設けても良く、または、図7に示すように、浴槽本体1内に所定量の湯が貯留されたことを検知して殺菌装置15へ作動開始信号を出力するフロートスイッチ21を浴槽本体1に設けても良い。
【0027】
そして、このように、フロートスイッチ21を設けた浴槽によれば、浴槽本体1内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチ21からの作動開始信号によって殺菌装置15が作動されるので、浴槽本体1内に貯留する湯を自動的に殺菌処理させることができ、殺菌作業にかかる労力を大幅に低減させることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の浴槽によれば、下記の効果を得ることができる。
請求項1記載の浴槽によれば、浴槽本体内に貯留された湯が、循環路を流れる際に、循環路に設けられた殺菌装置によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、従来のように浴槽本体内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化を図ることができ、作業効率を大幅に向上させることができる。また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体内の湯を循環路内へ通すことにより、浴槽本体内の湯を殺菌装置によって殺菌処理されるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。さらに、殺菌装置が、浴槽本体内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって殺菌装置が作動されるので、浴槽本体内に貯留する湯を自動的に殺菌処理させることができ、殺菌作業にかかる労力を大幅に低減させることができる。そして、入浴者が支持された担架と浴槽とを昇降機構によって互いに近接させることにより、循環路を通されて有効な殺菌濃度とされた浴槽本体内の湯に、入浴者を浸漬させて入浴させることができる。しかも、このように、昇降機構によって浴槽本体と担架とを近接させて、担架に支持された入浴者を浴槽本体内の湯に浸漬させた時、つまり入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。
請求項2記載の浴槽によれば、殺菌装置が、浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となるように作動した後、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すものであるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度を常に有効な濃度に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態例の浴槽を説明する浴槽本体及び給湯配管
を有する浴槽の概略図である。
【図2】 本発明の第2実施形態例の浴槽を説明する浴槽本体及び循環路を有する浴槽の概略図である。
【図3】 本発明の第3実施形態例の浴槽を説明する浴槽本体及び循環路を有する浴槽の概略図である。
【図4】 本発明の第3実施形態例の浴槽における殺菌のタイミング及び殺菌時間を説明するタイミングチャート図である。
【図5】 本発明の第1実施形態例の浴槽における殺菌のタイミング及び殺菌時間を説明するタイミングチャート図である。
【図6】 本発明の第2実施形態例の浴槽における殺菌のタイミング及び殺菌時間を説明するタイミングチャート図である。
【図7】 本発明の他の実施形態例の浴槽を説明する浴槽本体及び循環路を有する浴槽の概略図である。
【符号の説明】
1 浴槽本体
2 給湯配管
7 フロースイッチ
8、15 殺菌装置
11 昇降機構
12 循環路
15 殺菌装置
19 担架
21 フロートスイッチ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を削除し、同請求項2を新たな請求項1とし、同請求項3の末尾の「請求項1または請求項2記載の浴槽」を「請求項1記載の浴槽」とすると共に、同請求項3を新たな請求項2とする。
(2)訂正事項b
明細書の【課題を解決するための手段】の次から段落【0010】の末尾までの「上記目的を達成するために、・・・常に有効な濃度に維持される。」との記載を
「上記目的を達成するために、請求項1記載の浴槽は、浴槽本体と、該浴槽本体の上方に設けられて入浴者を支持する担架と、前記浴槽本体と前記担架とを相対的に上下移動させ、互いに近接させることにより前記担架上の入浴者を前記浴槽本体内の湯に浸漬させる昇降機構と、前記浴槽本体に貯留された湯を循環させる循環路と、この循環路を流れる湯の殺菌処理を行う殺菌装置と、前記浴槽本体内に貯留される湯が所定量となった際に、前記殺菌装置へ作動開始信号を出力するフロートスイッチとを有し、前記殺菌装置は、前記昇降機構によって前記浴槽本体と前記担架とが近接されて前記担架上の入浴者が前記浴槽本体内の湯に浸漬された際に作動することを特徴としている。
つまり、浴槽本体内に貯留された湯が、循環路を流れる際に、循環路に設けられた殺菌装置によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、浴槽本体内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化が図られ、作業効率が大幅に向上される。また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体内の湯を循環路内へ通すことにより、浴槽本体内の湯が殺菌装置によって殺菌処理されるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。さらに、浴槽本体内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって殺菌装置が作動されるので、浴槽本体内に貯留する湯が自動的に殺菌処理され、殺菌作業にかかる労力が大幅に低減される。そして、入浴者が支持された担架と浴槽とが昇降機構によって互いに近接されることにより、循環路を通されて有効な殺菌濃度とされた浴槽本体内の湯に、入浴者が浸漬されて入浴される。しかも、このように、昇降機構によって浴槽本体と担架とが近接されて、担架に支持された入浴者が浴槽本体内の湯に浸漬された時、つまり入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度が確実に有効な濃度に維持される。
請求項2記載の浴槽は、請求項1記載の浴槽において、前記殺菌装置が、前記浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、前記浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すことを特徴としている。
つまり、殺菌装置が、浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となる時間作動した後、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すものであるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度が常に有効な濃度に維持される。」
と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の【発明の効果】の次から段落【0041】の末尾までの「以上、説明したように、・・・常に有効な濃度に維持させることができる。」との記載を
「以上、説明したように、本発明の浴槽によれば、下記の効果を得ることができる。
請求項1記載の浴槽によれば、浴槽本体内に貯留された湯が、循環路を流れる際に、循環路に設けられた殺菌装置によって有効な殺菌濃度にて殺菌されるので、従来のように浴槽本体内へ貯留した湯を別個の殺菌装置によって殺菌処理する場合と比較して、殺菌作業の容易化を図ることができ、作業効率を大幅に向上させることができる。また、差し湯を行ったとしても、浴槽本体内の湯を循環路内へ通すことにより、浴槽本体内の湯を殺菌装置によって殺菌処理されるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。さらに、殺菌装置が、浴槽本体内への湯の貯留量が所定量となった際に、フロートスイッチからの作動開始信号によって殺菌装置が作動されるので、浴槽本体内に貯留する湯を自動的に殺菌処理させることができ、殺菌作業にかかる労力を大幅に低減させることができる。そして、入浴者が支持された担架と浴槽とを昇降機構によって互いに近接させることにより、循環路を通されて有効な殺菌濃度とされた浴槽本体内の湯に、入浴者を浸漬させて入浴させることができる。しかも、このように、昇降機構によって浴槽本体と担架とを近接させて、担架に支持された入浴者を浴槽本体内の湯に浸漬させた時、つまり入浴者の入浴時に、殺菌装置が作動して、浴槽本体内の湯を、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間だけ殺菌処理するものであるので、入浴時における確実な殺菌処理が行われ、入浴時の度に差し湯を行ったとしても浴槽本体内の湯の殺菌濃度を確実に有効な濃度に維持させることができる。
請求項2記載の浴槽によれば、殺菌装置が、浴槽本体内の湯が有効な殺菌濃度となるように作動した後、浴槽本体内への差し湯を考慮した所定時間の作動を間隔をあけて繰り返すものであるので、浴槽本体内の湯の殺菌濃度を常に有効な濃度に維持させることができる。」
と訂正する。
異議決定日 2001-03-21 
出願番号 特願平10-202295
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61H)
P 1 651・ 537- YA (A61H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 稲積 義登稲村 正義  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
和泉 等
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3002181号(P3002181)
権利者 酒井医療株式会社
発明の名称 浴槽  
代理人 村山 靖彦  
代理人 鈴木 三義  
代理人 志賀 正武  
代理人 西 和哉  
代理人 高橋 詔男  
代理人 青山 正和  
代理人 渡辺 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 西 和哉  
代理人 渡邊 隆  
代理人 高橋 詔男  
代理人 青山 正和  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  

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