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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A23K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A23K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A23K
管理番号 1044781
異議申立番号 異議1998-70618  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-10-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-12 
確定日 2001-04-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2640533号「多孔性養魚飼料及びその製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2640533号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続きの経緯
特許第2640533号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成1年3月29日に特許出願され(優先権主張昭和63年12月27日)、平成9年5月2日に特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、下記1〜8の各特許異議申立人より異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内に訂正請求(後日取下げ)がなされた後、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。



1:メルシャン株式会社 (以下、特許異議申立人1という)
2:日本農産工業株式会社 外1 (同、特許異議申立人2という)
3:全国農業協同組合連合会 外8 (同、特許異議申立人3という)
4:日清製粉株式会社 (同、特許異議申立人4という)
5:林兼産業株式会社 (同、特許異議申立人5という)
6:オリエンタル酵母工業株式会社 (同、特許異議申立人6という)
7:日本水産株式会社 (同、特許異議申立人7という)
8:富士製粉株式会社 外2 (同、特許異議申立人8という)

II.訂正請求の適否について
(i)特許権者が求めている訂正の内容は、以下イ、ロのとおりである。

イ.特許請求の範囲を以下のとおり訂正する。

「【請求項1】
2軸エクストルーダーで加熱混練した後、水分含量12重量%以下に乾燥し、その後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることにより得られる粗脂肪含有量が13〜35重量%であり、硬度が0.5〜4.0Kg/cm2で、嵩比重が0.35〜0.65で、かつ水分含量が10重量%以下であることを特徴とする多孔性養魚飼料。
【請求項2】
養魚飼料原料に油脂を添加後、水を加えて2軸エクストルーダーで加熱混練し、次いで水分含量12重量%以下に乾燥した後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることを特徴とする請求項1記載の多孔性養魚飼料の製造方法。」

ロ.特許請求の範囲の訂正に併せて発明の詳細な説明を訂正する(内容は上記と同様であるので省略)。

(ii)訂正の適否
<イの訂正について>
請求項1に係る「2軸エクストルーダーで加熱混練した後、水分含量12重量%以下に乾燥し、その後最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることにより得られる」との製法による特定の追加、「水分含量が10重量%以下であること」との物性の追加、および、請求項2に係る、加圧加熱押出機を「2軸エクストルーダー」と特定のものに限定すること、乾燥を「水分含量12重量%以下」にすること、および、乾燥工程後の油脂の含浸量を特定の範囲に規定することは、それぞれ、訂正前の請求項1の「多孔性養魚飼料」および請求項2の「多孔性養魚飼料の製造方法」を減縮するものである。そして、当該訂正は、明細書の記載により支持されるものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。なお、「水分含量12重量%以下」については、特許公報には「水分含量が12%」としか記載されていないが(特許公報第5欄第5行)、公報の印刷の誤りであり、願書に添付した明細書には「水分含量12重量%以下」と記載されている。
さらに、訂正後の請求項1、2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることは、後記III、IVで述べるとおりである。

<ロの訂正について>
当該訂正は、上記イに係る訂正に併せて明細書の発明の詳細な説明を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、これら訂正が願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、又、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは、上記イと同様である。
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立ての検討
III-1本件発明
上記訂正が認められることから、本件請求項1、2に係る発明は、上記II(i)イに記載されたとおりのものである(以下、本件請求項1に係る発明、請求項2に係る発明という)。
ところで、エクストルーダーで加圧押出成型したものは多孔性の固形飼料となるが、これは、そのまま給餌すると摂餌性が悪く、給餌するにあたって飼料に水又は油をしみこませてスポンジ状にして給餌させる必要があり作業性に問題があった(本件特許明細書従来技術の項参照)。なお、このような問題点は、本件特許異議の証拠の中でも記載されているところではあるが、本件特許に係る出願の直前の出願に係る特開平2-117347号公報第1頁〜2頁にも詳細に説明されている。すなわち、上記公開公報には、従来技術に関して、ペレットミル等を使用して製造される固形飼料は沈降性が大きく投与後に急速に沈降してしまうために魚類による摂取が充分行われない、発育不良、水底での飼料の腐敗等問題があったこと、この欠点を改良するために加圧加熱押出による(エクストルーダーによる製造と認められる)多孔性飼料が製造されるようになったが、かかる飼料は、水面に浮き、吸水破損することが少ないので、急速に沈降する上記固形飼料とは異なり水の汚染が少なくこれまでコイ、テラピア飼料として使用されてきたこと、又、この多孔性飼料に油脂の水性エマルジョンを含浸させて処理すると油脂分を10〜20%程度含んだソフトタイプの飼料となるが、かかるソフトタイプの多孔性飼料はハマチ、マダイ、トラフグ等の摂餌性が良好であること、このハマチ等は、コイとは異なり水面に浮いている飼料より、水中に浮遊する飼料を摂取する習性があり、又、水を含んで柔らかくなった多孔性飼料を好んで摂取する傾向があること、一方で、多孔性飼料は水を吸収しにくく、水面に浮いたままになってなかなか水中に落下してこず、かつ該難吸水性のために柔軟化しにくい傾向があること、したがって、多孔性養魚飼料を予め吸水処理せずそのまま直接養魚池等に散布して魚に給与した場合には、いつまでも水面に落下しないため、魚による摂餌性が劣り充分な養魚効果を上げることができなかったこと、この傾向は、上記ソフトタイプのような水との親和性がない油脂分を含んだ多孔性養魚飼料において特に著しいこと、したがって、多孔性養魚飼料をハマチ等の魚に給餌するにあたっては、従来多孔性養魚飼料に予め吸水して飼料に水を吸い込ませてその浮遊性や柔らかさを調節してから魚に給与していたこと、しかしながら、その場合は給水に時間がかかり、又、多孔性養魚用飼料の種類によっては吸水させても芯が残り食感の悪いものとなる場合も多かった旨記載されている。
本件請求項1、2に係る発明は、飼料中の粗脂肪含量を高め、その添加の仕方を工夫し、硬度が低く、嵩比重が特定の範囲にある多孔性の飼料とすることで上記摂餌性、給餌性の問題点を解決する、すなわち、給餌前に水や油脂の添加が不要でそのまま給餌でき、自動給餌も可能とし、魚の成育をも向上させるものである。

III-2各特許異議の申立ての検討
III-2-1特許異議申立人1に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人1は、下記甲第1〜5号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号で規定する発明に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである、(b)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきものである旨主張している。



甲第1号証:エクストルージヨンクツキング -2軸型の開発と利用- 食品産業エクストルージヨンクツキング技術研究組合編 株式会社光琳(昭和62年11月10日発行)第319頁〜第325頁
甲第2号証:特開昭61-202662号公報
甲第3号証:最新造粒技術の実際(総合技術資料集)神奈川経営開発センター出版部:企画:出版(発行日 昭和59年6月20日)第338頁〜339頁
甲第4号証:「養殖」臨時増刊号第23巻第12号(通巻278号)発行所株式会社緑書房(昭和61年11月5日発行)第106頁〜109頁
甲第5号証:「養殖」第15巻第3号(通巻171号)発行所株式会社緑書房(昭和53年3月1日発行)第40頁〜45頁

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証の第323頁下から6行以降には、高含油飼料の製造が2軸エクストルーダーを使用すれば可能であること、および、当該方法で製造した魚用の飼料が記載されている。
特に、第324頁表2-10によれば、試験区2区及び3区として、それぞれ、
粗脂肪(CF):16.2%及び25.0%、
粗蛋白(Cp):41.0%及び36.2%、
炭水化物:26.1%及び23.2%
水分:8.0%及び7.1%
を含んでなる、2軸エクストルーダーで製造されたニジマス用の飼料が記載されている。さらに、第325頁表2-11及び表2-12には、上記試験区の飼料は、使用に際して優れた透明度を維持し、飼料効率(各々83、94%)にも優れていることが記載されている。
甲第2号証の特許請求の範囲には、「・・・(略)・・・硬度約2〜5kg/cm2を有する浮上性養魚用飼料」が記載されている。また、第2頁左上欄18〜20行には、上記のような硬度をもつ浮上性養魚用飼料は、向上した摂餌性を示すことが、さらに、実施例1、2においては、浮上性飼料をエクストルーダーを用いて製造することが記載されている。
甲第3号証の第338頁右欄第11〜18行には、鑑賞魚用等に用いられる「EP・・・(略)・・・と称する多孔質の膨化造粒製品」が記載されており、そして「これらの膨化製品は・・・(略)・・・EPミル(エクストルーダーとも称す)により製造される。」ことが記載されている。第339頁左欄にはEPミルの機構が説明されており、その下から6〜3行には、「ハードペレットの場合、密度が増加し見かけ比重0.7程度になるが、それと全く同じ組成の飼料をEP加工すると見かけ比重は0.3〜0.4のとほぼ1/2になる。」と記載されている。
甲第4号証の第108頁以降には、「パフ飼料」について、その形態、飼料効率、経済性に関する記載があり、第106頁第二段9〜17行には、「パフ飼料の製造方法は・・・(略)・・・蒸気を掛け、押し出し機で澱粉質をα化し造粒し・・・(略)・・・発泡状態になっているので硬度は軟らかいが、崩れ・粉化率が少ない」との記載がある。さらに、第108頁第二段10〜14行には、「パフ飼料の沈降性はかなりの幅が認められ・・・(略)・・・沈降性の遅い事が捕食率の向上に役立っています。」と記載されている。
甲第5号証は、「普及が期待されるハマチ用浮餌」に係るものであり、第41頁第3段第2〜7行には「多孔質飼料(浮餌)は前述のとおり非常に吸水性が大きく芯まで軟化させても崩壊せずかつ弾力性を持続するため、ハマチにとって多孔質飼料は生魚に近い食感が得られるのではないかと推測される」と記載され、また、同第42頁第1段5〜11行には「魚粉飼料・・・(略)・・・にスケトウタラ肝油を添加して、蛋白質と脂質の含量をそれぞれ50〜55%および15〜17%とすると、ハマチはすぐれた成長とエネルギー蓄積を示し」と記載されている。さらに油脂の添加に関しては、第42頁第2段第3行〜第3段第3行には、「配合飼料に脂質を補うには、養魚用油脂(フィードオイル)を給餌直前に添加すればよいが、粉末やペレットではせいぜい10%程度である。この点多孔質飼料は吸水、給油能力が大きく、比較的多量の油脂を添加することが可能である。実際油脂を使う場合、油脂を水よりも先に添加すると、後から水を加えても十分吸水せず、必要な柔らかさが得られなくなるので、乳化剤入りの養魚用油脂を用い、水と油を良く混和してから吸着させる方法を奨める。」と記載されている。

以下、上記(a)、(b)について検討する。
(a)について
甲第1号証の上記ニジマス用養魚飼料は2軸エクストルーダーで製造することが記載されているので、多孔性となっていると認められる。
そうすると、甲第1号証に記載された当該飼料製品は、その水分含量、粗脂肪含量が本件請求項1で規定する範囲にあり、多孔性であるが、製品に添加される粗脂肪の一部特定量を乾燥工程後に添加することについては記載がない。
そして、粗脂肪は製品中に同量含まれていたとしても、その添加の仕方によって飼料製品の物理的、物理化学的物性は異なるものと認められるので(必要であれば、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)、他の構成要件を検討するまでもなく、本件請求項1において規定する養魚飼料が甲第1号証に記載されているとはいえない。

(b)について
甲第1号証には、上述のように製品に添加される粗脂肪の一部特定量を乾燥工程後に添加することについては記載がなく、本件請求項1で規定する他の条件と組み合わせたときの効果を類推させる記載もない。
甲第2号証に係る浮上性飼料は、エクストルーダーで製造していることから、多孔性のものと認められ、硬度についても記載があるが、乾燥工程後に油脂を添加する態様は記載されていないし、本件請求項1で規定する他の条件と組み合わせたときの効果を類推させる記載もない。 又、甲第2号証で採用する硬度の範囲は、本件請求項1で規定する硬度の範囲より高い値を採用している(値自身は一部重複するが)。
甲第3号証には魚用飼料をエクストルーダーで製造すること、及び、そのときの見かけ比重についての一般事項が記載されているにすぎない。
甲第4号証には、パフ飼料の沈降性には幅があることが一般的に示されているにすぎない。
甲第5号証には、ハマチ用の多孔性飼料が記載されており、比較的多量の油脂添加の可能性及びその際のすぐれた成長は示されているといえるとしても、上述のように給餌直前に水と油を添加するタイプのものである。
そうしてみると、甲第1〜5号証には、上記III-1で述べた問題点を解決するために本件請求項1で規定する構成を組み合わせることを示唆する記載があるとはいえない。
そして、本件請求項1に係る発明は、本件請求項1で規定する構成を採用することにより、上記問題点を解決できるのであり、その効果は予想外のものと認められる(本件特許明細書及び平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1に係る発明の進歩性は甲第1〜5号証によって否定されるものではない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人1の主張はいずれも採用できない。

III-2-2特許異議申立人2に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人2は、下記甲第1〜6号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである、(b)本件明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、本件訂正前の請求頃1及び2に係る特許は、特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同請求項1及び2に係る特許は取り消されるべきである旨主張している。



甲第1号証:1988年10月2〜7日シンガポールにおいて開催された「The World Congress on Vegetable Protein Utilization in Human Foods and Animal Feedstuffs」で発表された「押し出しによる魚および小エビ用飼料の生産」第1〜29頁
甲第2号証:特開昭61-202662号公報
甲第3号証:「造粒便覧」昭和50年5月30日株式会社オーム社発行 第541〜546頁
甲第4号証:「エクストルージヨンクッキング」昭和62年11月10日株式会社光琳発行 第323〜325頁
甲第5号証:「養殖」臨時増刊号第23巻第12号昭和61年11月5日株式会社緑書房発行 第106〜109頁
甲第6号証:1988年Wenger Manufacturing Inc発行カタログ「Wenger X-130Cooking Extruder」

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証は、押し出しによる魚・エビ飼料の製造に係るもので、その第9頁第27〜28行には、「22%内部脂肪を含む」ことが、また、第12頁第15〜18行に「高脂肪用に特別仕様の1軸押し出し調理機は20%の脂肪まで扱うことができるが、2軸押し出し調理機は25%まで扱うことができる。」ことが記載されている。
また、第14頁の「浮上性水産飼料」の項の第1〜2行に「これらの飼料は、通常320〜400g/1の範囲の密度を有している。」と記載され、同じく「沈降性水産飼料」の項の第1〜2行に「これらの飼料は、通常400〜600g/1の範囲の密度を有している。」と記載されている。
(なお、特許異議申立人2は、上記320〜400g/1及び400〜600g/1は、各々嵩比重が0.32〜0.4及び0.4〜0.6であると説明している。)
また、28頁の「密度調整」の項の1〜5行に「密度管理として、押し出し製品の密度を調整することにより、対象とする生物にあわせて浮く製品や沈む製品を作ることができる。これは、膨張率及び押し出し圧力を変化させることにより調整する。」と記載されている。
又、第20頁下から5行〜同第1行には、油脂等の液体原料をよりよく浸透させるため飼料製品が温かいうちにビタミンや魚油を飼料の表面に塗布する旨、当該脂肪は、動物のエネルギー源になることも記載されており、第5頁の処方例の上第6行〜同第4行には、押出し及び乾燥を終わった最終製品には、ビタミン溶液の塗布及び海性油によるトップコーティングが行われる旨記載されている。
甲第2号証については、特許異議申立人1の甲第2号証参照。
甲第3号証は、飼料工業における造粒に係るもので、その第541頁左欄4〜6行にエキスパンデッドフィードについて「かさ比重はマスの場合20〜30lb/ft3が必要であるが、底魚の場合は27〜35lb/ft3でよい。」と記載されている。
(なお、特許異議申立人2は、上記の20〜30lb/ft3及び27〜35lb/ft3は、各々比重が0.32〜0.48及び0.43〜0.56であると説明している。)
また、第546頁右欄1〜6行に「油脂の添加装置は通常ペレットのときと同じものが用いられ、蒸気パイプで外側より加熱できるものがよく、粉を除いた製品にスプレーされる。装置は乾燥機と冷却機の間におく場合と、冷却機の後におく場合がある。」と記載されている。
甲第4号証は、魚類等の高含油飼料の製造に係るもので、その第323頁下から2行〜324頁4行に「2軸エクストルーダーの場合、それ自身で十分に混合が行えるので、広範囲の油分を含有した飼料をつくることができると思われる。試験にはニジマス用配合原末を用い、加水率を30%とし、各区の大豆白絞油添加量を0%、10%、20%とした。使用したダイはφ3mm、5穴、ダイ厚約80mmである。これは油添加によるノズル付近の圧力低下を防ぐために用いた。成形後に乾燥したサンプルの分析値を示す。」と記載され、325頁6〜7行に「飼料効率は1区(油添加0%)が70%、2区(油添加10%)が83%、3区(油添加20%)が94%であり、油添加による向上が認められた。」と記載されている。
甲第5号証は、ニジマス・ギンザケ用パフ飼料に係るもので、108頁の図7に「ペレットとパフ飼料の硬度分布」が示されており、パフ飼料即ち発泡性飼料は、硬度が1.5〜2.0kg/cm2がピークで、大体1〜2.5kg/cm2であることが明示されている。
甲第6号証は、水産用飼料製造のためのエクストルーダ-に係るもので、飼料サンプル写真の下の説明書きに、「嵩比重は、300〜500g/1に調整されうる。」ことが記載されている。

以下、上記(a)及び(b)について検討する。
(a)について
甲第1号証の飼料は多孔性であって、本件請求項1で規定する程度の脂肪を含むこと、2軸エクストルーダーによれば25%までの脂肪を含有するものが製造できること、浮上性飼料と沈降性飼料の嵩比重をあわせ見れば、本件請求項1で規定する嵩比重範囲とほとんどが一致する範囲が記載されているといえても、粗脂肪の添加について、相当量の特定量の魚油等を乾燥工程の後添加することについては記載がなく、さらに、他の硬度条件と合わせたときの効果については記載もなく、それを類推させる記載もない。
甲第2号証については、上記III-2-1の「(b)について」の甲第2号証を参照。
甲第3号証に係る飼料は多孔性と認められるが、甲第3号証には、嵩比重がマスの場合と底魚の場合の好ましい値が記載されているにすぎない。油脂の添加装置についても記載されているが量に関する記載はなく、それに他の条件を組み合わせたときの効果等について記載も又はそれを類推させる記載はない。
甲第4号証には、油脂の添加について、製品に添加される粗脂肪の一部特定量を乾燥工程後に添加することについては記載がなく、その効果を類推させる記載もない。
甲第5号証については、当該パフ飼料が多孔性飼料の範疇のものであるとしても、当該飼料の硬度が1.5〜2.0Kg/cm2であることが示されているにすぎず、他の条件との関係及びその効果を類推させる記載はない。
甲第6号証には、飼料製造に係る当該エクストルーダーによって調整されうる嵩比重が記載されているにすぎない。
そうしてみると、甲第1〜6号証には、上記III-1で述べた問題点を解決するために本件請求項1で規定する構成を組み合わせ採用することを示唆する記載があるとはいえない。
そして、本件請求項1に係る発明は、請求項1で規定する構成を採用することにより、上記問題点を解決できるのであり、その効果は予想外のものと認められる(本件特許明細書及び平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1に係る発明の進歩性は甲第1〜6号証によって否定されるものではない。
又、請求項2についても同様に、その進歩性を否定することはできない。

(b)について
特許異議申立人2は、明細書の記載不備については、以下(i)〜(iv)の数値限定に関し、対照との対比実験がなされていないのでその意義が不明瞭であると述べている。
(i)「油脂を2回のに分けて添加すると効率よくかつすぐれた固形飼料を製造できる。」(特許公報第3欄第39〜40行)点
(ii)「特に粗脂肪を13〜35重量%(以下%と略称する)と多量に含有することを特徴とする。つまり、このような量で粗脂肪を含有させると成長促進についてすぐれた効果が得られるからである。・・・(略)・・・最も好ましくは23〜30重量%である。」(同第4欄第3〜8行)点
(iii)「硬度を0.5〜4.0/cm2・・・(略)・・・とすることによって魚に与える前に水につけて飼料を柔らかくするという従来の固形飼料が有する問題を除くことができ、直接魚に与えることができるのである。」(同第4欄第20〜25行)点
(iv)嵩比重が0.40〜0.65、・・・(略)・・・の多孔性とすることによって、自動給餌システムを使用して効率的な給餌を達成できるからである。」(同第4欄第25〜28行)点
上記(i)〜(iv)について検討する。
(i)についての検討
油脂の添加の仕方を乾燥前(2軸エクストルーダーで加熱混練する前)と乾燥後に分けることにより、養魚飼料の硬度や食感を調節できたことは、明細書の記載から理解できるところである。明細書には、「動物性油脂又は植物性油脂およびその混合物を常温もしくは加温した状態でスプレーもしくは噴霧するなどの手段で後添加することでハマチブリなどが活発に摂餌し成長する高脂質養魚飼料が製造できる。」(第5欄第6〜10行)ことが説明されており、すぐれた摂餌性は実施例で示されている。
そして、2回に分ける効果は、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書で確認されている。
(ii)についての検討
特許明細書には、「このような量で粗脂肪を含有させると成長促進についてすぐれた効果が得られるからである。」(第4欄第5〜6行)と説明されている。そして、比較的多量の脂肪が魚の成長に有用なものであることは、本件の多数の異議の証拠においても示されるように周知のことである。
(iii)についての検討
後述する特許異議申立人4のIII-2-4「(b)について」の「(i)についての検討」参照。
(iv)についての検討
適正量給餌された固形飼料が養魚生け簀内の水中にできるだけ長く漂うもしくはゆっくり沈降するものであれば、遊魚する魚にとって捕食する時間が長くなるので効率的な給餌でき、又、風や表層の潮流といった外的要因による飼料ロスも防げるので、自動給餌システムに適したものとなることは、当業者の技術常識をもってすれば理解できることである。
そして、沈降性と嵩比重との関係は当業者に広く知られたところと認められるので、自動給餌システムを採用するに際して好ましいとされる嵩比重の範囲の意義は、具体的に実験をもって証明されなくとも当業者が理解できるものと認められる。
そうしてみると、特許異議申立人2の指摘する点をもって、本件明細書に記載不備があるとまではいえない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人2の主張はいずれも採用できない。

III-2-3特許異議申立人3に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人3は、甲第1〜7号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号で規定する発明に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである、(b)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである、さらに、(c)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第7号証で示す先願の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである旨主張している。



甲第1号証:配合飼料講座上巻、設計編 チクサン出版社昭和55年発行、第586頁、第598〜599頁
甲第2号証:特開昭55-104864号公報
甲第3号証:「養殖」、昭和60年5月号、(株)緑書房発行、第100〜101頁
甲第4号証:荻野珍吉編、「魚類の栄養と飼料」昭和55年11月15日発行、恒星社社厚生閣版、第296頁、298頁
甲第5号証:「養殖」臨時増刊号(株)緑書房発行、、1986年11月5日号、第30、31、33頁
甲第6号証:INFOFISH MARKETING DIGEST 1986年第4号、第43〜44頁
甲第7号証:特願平1-266256号(特開平2一138944号公報)

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証は、ハマチ、コイ用の多孔質飼料に係るものであり、第598頁のハマチの項第11行には、「ハマチは、ペレットのような固い飼料は好まない。」ことが、同第14〜19行には「多孔質固形飼料は水を添加しても崩壊せず、給与直前に水と油を加え、十分に柔らかくしてから給与できるため、嗜好性が高く生餌からの切替えも比較的容易であり、今後のハマチ用配合飼料として最も有望視されている。・・・略・・・ハマチは飼料の粗たん白質40%、脂質24%の場合がたん白質を最高に利用し、たん白質と脂質の総合利用の観点からは粗たん白質55%、脂質17%の飼料が最もすぐれている。」と記載され、第586頁表の下第6〜8行には、エクストルーダーを用いて多孔質飼料を製造することが記載されてる。
甲第2号証は、微小水中動物飼料、具体的には、ヒラメやシタガレイ等の稚魚用顆粒飼料の製造法に係るものであり、請求項5〜7の油分の添加に関する技術としては、第5頁右上欄下から3行〜同左下欄第12行に「混転床の基質は通常添加される本質的に固形材料の任意の組み合せでよい。これらは以下に詳細に記載される。 更に、きびしい限定量の任意の油状成分は、顆粒化前の基質中の全体の液レベルが基質をい回転顆粒機に入れたときに自由流動床を形成しないほど高くはないことを条件として所望の場合、基質に含ませることができる。飼料中に油を含ませたい場合には、粒化液が床に適用される前に油を混転床上に噴霧することができる。本発明の好ましい態様では、少なくとも任意の遊離油の部分と少なくとも無毒性重合性材料の水溶液の部分とを顆粒化操作中混転床上に噴霧できるエマルジョンを製造するために組み合わせることが有利であることがわかった。」と、記載され、同右下欄第13〜18行には、「エマルジョンにより添加される遊離油量は、乾燥床重量で約20重量%までであることができる。一般にこの方法で添加される遊離油量は乾燥床重量で1〜15%であろう。エマルジョンは油及び水性相を高速撹拌して単に混合することにより製造することができる。」ことが記載されている。又、第6頁左下欄下から4行〜同右上欄第4行には、「一般に魚飼料は高たん白含量及びエネルギーの実質的部分は油であることを特徴とする。代表的魚飼料は少なくとも約30重量%、好ましくは少なくとも約40重量%および一般には約50重量%を越えない量のたん白質、約40重量%までの炭水化物、約20重量%までの油および魚飼料の約15重量%までを寄与する多種のミネラルおよびビタミンよりなることができる。」と記載され、例1に具体例が記載されている。
甲第3号証は、ハマチの栄養と飼料に係るものであり、第100頁の「四、飼料の適正脂質含量」と題する項には、「以上の試験結果から推測すると、魚粉主体のハマチ配合飼料、あるいはこれと生餌とを混合したモイストペレットにHUFA含量の多いスケトウダラ肝油またはカツオ油のような魚油を添加する場合は、飼料へこれを10%前後添加して乾物中の脂質含量を15〜17%に調整するのが好ましいと考えられる。」と記載され、第101頁第2段第8〜14行には、「高知水試(1985年)の試験によると、ハマチ配合飼料へのカツオ油の添加量を9%から17%へ増やすと、10週後における筋肉、肝臓および消化管の脂肪含量は何れもイカナゴ投与魚のそれと同様の高い価であった。」と記載されている。
甲第4号証には、養魚用配合飼料の使用区分についての表6-39に多孔質ペレット(浮餌)は、使用形態の欄にソフトタイプと、魚種の欄にマダイ、ハマチと、摘要の欄に水と油脂を吸着させるソフトタイプとすると記載されている。
第294頁下から6行〜同下から3行には「養魚飼料は、ほとんどの場合、水中より給餌しなければならないので、給餌時の物性に種々工夫がなされている。例えば、同じ粉末でも養魚の場合には、ねり餌またはオレゴンタイプとして給餌される。飼料製造工程(フローシート)の概要を図6-9に示した。」と記載され、第298頁の浮上性飼料と題する項には、「水と油をあらかじめエマルジョンにしたものを吸収させると、油分を10-20%程度含んだソフトタイプの飼料となる。このものはハマチ、マダイなど配合飼料に慣れていない魚でも良く摂餌することから、今後の発展が期待される飼料である」と記載され、又、第296頁第5〜11行には、「粉化を防ぐためあまり硬度を高めると、消化が悪くなる恐れもあり、適度な硬度を保つことが必要である。」と記載されている。
甲第5号証には、海水魚飼料の現状と展望を解説したものであって、第30頁最下段後ろから4行に〜第31頁第5行にハマチの栄養要求に合わせて設計された粉末配合飼料(以下マッシュという)を原料とするモイストペレットは、ハマチによる捕食率が高いので、自家汚染防止に極めて有効であるばかりでなく、ハマチに対して生餌(イカナゴ)に匹敵する栄養効果を示すことが明らかとなった。」ことが記載され(さらに、表2の粉末(マッシュ)についての摘要欄には、生餌と混合しモイストペレットに成型と記載されている。)、第31頁第2段第13〜18行には、「一方、生餌を混合しない完全配合飼料には、マッシュに油脂と水を加えて成形した単独型モイストペレットと、エクストルーダーという機械成形された多孔質ペレット(浮餌)がある。」ことが記載され(さらに、表2の多孔質ペレットの摘要欄には適量の油と水を吸着と記載されている。)、第31第2段後ろから第3行には、「最近鹿児島水試の指導により開発された、改良多孔質ペレット(配合固形飼料の名称で市販)は、生餌にほぼ等しい飼料効果を示したと報告されている。」と記載され、第33頁第3段第12〜19行には、「一般に、ある飼料の効果、換言すれば、飼料に対する魚の反応は、種々の生物的・環境的要因により変動するので魚を正しく飼うには個々の養殖場において、魚や環境の変動に即応して、前項で述べたような種々の飼料品質の強化.改善を行うことが望ましい。」と載されている。
甲第6号証は、エクストリユージョンによる浮遊性及び沈降性魚用飼料の製造に係るものであり、第43頁第1〜5行には、「エクストリュージョン技術は、原料を大きさ、形、食感、加工状態等々、極めて色んな形態に加工したり、付型するのに極めて有効な手段であり、製品開発の成功に重要なファクターであることがわかってきた。」ことが、第44頁中欄第13〜23行には、水分20〜25%でエクストリュージョン処理すると、水中にばらまいたときにも殆ど壊れないこと、この粒子は表面が多孔性であり、内部に大きな孔を有し、かつ孔の周りにしっかりした水の幕を形成すること、このことが柔らい口当たりを与え、粒子は水に浮遊しやすい嵩比重を低く保つことが記載されており、第44頁左欄第8〜30行には油脂の添加の仕方で製品が浮遊性になるか沈降するか決まること、エクストルーダーに入れる前または直接エクストルーダーに入れると高密度のものができ沈降しやすくなること、一方、最終製品の表面に供与された油脂は、エクスパンジョンに影響はなく、より重くなるが、内部は多孔であること、組成分に油脂を追加し浮遊化したいときは、エクストルーダ処理の前よりも、エクストルーダー処理の後で処理した方が良い旨が記載されている。
甲第7号証は、昭和63年10月27日に出願された特願昭63-269501号の分割に係る平成1年10月16日の出願である特願平1-266256号の公開公報に係るものである。

以下(a)〜(c)について検討する。
(a)、(b)についての検討
甲第1号証には、多孔質飼料をエクストルーダーで製造すること及び脂質を17%、24%程度のものが飼料効率がすぐれていることが記載されているが、そもそも当該飼料は上述のように水と油を給餌直前に加えるタイプのものと認められ、2軸エクストルーダーで製造すること、油脂を請求項1のやり方で添加すること、嵩密度、硬度についての記載もないから、本件請求項1、2に係る発明は甲第1号証に記載されたものとはいえない。
甲第2号証には、油脂を本件請求項1で規定する程度に含む魚用顆粒状飼料油脂の添加は分けて行うこと等その製造方法が記載されているが、当該飼料を2軸エクストルーダーで製造すること、製造されたものの硬度、嵩密度について記載がない。
そして、甲第1号証で製造された顆粒と、2軸エクストルダーで製造されたものはその物理的、物理化学的性質が異なると認められるので、本件請求項1、2に係る発明は、甲第2号証に記載されたものとはいえない。
甲第3号証には、ハマチ配合飼料に魚油を10%前後添加して乾物中の脂肪含量を15〜17%に調整すること等記載されているが、当該飼料を2軸エクストルーダーで製造すること、硬度、嵩比重については記載がないので、上記と同様に本件請求項1、2に係る発明は、甲第3号証に記載されたものとはいえない。
そして、上記甲第1〜3号証には、本件課題解決のために請求項1、2で規定する構成をあわせ採用することについて示唆する記載は見あたらない。
又、甲第4号証には、油分を10-20%程度含んだハマチやマダイ用の飼料エクストルーダーによる製造及び適当な硬度を採用することが必要であることが記載されているが、上述のように水と油を給餌時に添加するものであり、本件請求項1、2で規定する製造方法によることは記載されておらず、嵩密度に関する記載もない。
甲第5号証には、多孔質ペレットをエクストルーダーで製造することが記載されているが、上述のように給餌時に水と油の添加をするものであり、エクストルーダーの種類(1軸か2軸か)、油脂の添加の仕方、嵩密度、硬度をどのようにしたら給餌時に水や油の添加必要でなくなるのかについて示唆する記載はない。
甲第6号証には、エクストルーダーにより製造される多孔性ペレット及び油脂の添加の仕方(後から油脂添加するか)で浮遊性、沈降性に影響がある旨記載されているが、本件請求項1、2で規定する他の構成との関係を示唆する記載はない。
そうしてみると、甲第1〜6号証には、上記III-1で述べた問題点を解決するために本件請求項1、2で規定する構成を組み合わせ採用することを示唆するところはない。
そして、本件請求項1、2に係る発明は、請求項1、2で規定する構成を採用することにより予想外の効果を奏するものと認められる(本件特許明細書及び平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1、2に係る発明の進歩性は、甲第1〜6号証によって否定されるものではない。

(c)についての検討
特許異議申立人3は、本件訂正前の請求項1、2に記載された発明は、本件特許に係る出願の日前に出願され、平成2年5月28日に出願公開された甲第7号証で示す出願の願書に最初に添付された明細書に記載された発明とその構成において何ら異なるところがなく、両者は同一である旨述べている。
ところで、上記甲号証で示される出願は、上述のように特許法第44条の規定に基づく分割出願(分割が適法かどうかはともかく)であるが、特許法第44条第2項には、分割出願が同法第29条の2に規定する他の特許出願に該当する場合における当該規定の適用については、もとの特許出願のときにしたものとみなさない旨規定されている。そして、甲第7号証に係る出願は、職権で調査したところ、平成1年10月16日に出願されたものである。
してみると、甲第7号証で示される特許出願は、本件特許に係る出願(平成1年3月29日(優先権主張昭和63年12月27日))の後に出願されたものであるから、特許異議申立人3の当該主張を検討する必要がないことは明らかである。
なお、甲第7号証で示される分割出願のもとの出願(特願昭63-269501号(特開平2-117347号公報)の願書に最初に添付した明細書には、「多孔性養魚飼料を減圧吸引処理することを特徴とする多孔性養魚飼料の吸水性改良法」に係る発明が記載され、油脂のみの吸引処理は示唆さえもされていないので、本件請求項1、2に係る発明が当該明細書に記載された発明と同一とはいえないことは、他に詳細に検討するまでもなく、明らかである。
注)甲第7号証で示される公開公報にはあたかも出願日が昭和63年10月27日のように表示されているが、分割出願の原出願の出願日が表示されているのであり、甲第7号証に係る出願の現実の出願日は上述のとおりである。

以上のとおりであるから特許異議申立人3の主張は何れも採用できない。

III-2-4特許異議申立人4に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人4は、甲第1〜8号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、同請求項2に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである、(b)本件明細書の記載に不備があり、本件訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるからその特許は取り消されるべきである、と主張している。



甲第1号証:「エクストルージョン・クッキング」、株式会社光琳、昭和62年11月10日発行、第319〜331頁
甲第2号証:「水産の研究」、第6巻第2号、1987年、第85〜87頁
甲第3号証:特開昭61-202662号公報
甲第4号証:「PREPARATION OF FISH AND SHRIMP FEEDS BY EXTRUSION」,1988年10月2-7日 第1〜31頁
甲第5号証:「配合飼料講座・下巻・製造篇」、チクサン出版社、昭和54年3月1日発行、 第43〜46頁
甲第6号証:「標準計測方法」、食糧庁、昭和56年3月、第54〜59頁
甲第7号証:「造粒便覧」、株式会社オーム社、昭和50年5月30日発行、第524頁
甲第8号証:「化学大辞典2」、共立出版株式会社、昭和50年12月1日発行、第360頁

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証は、2軸エクストルーダ-を用いた養魚用固形飼料の製造に係るものであり、第323頁下から第6行〜第325頁第10行には、高含油飼料について記載され、その第324頁第1〜4行には、「ニジマス用配合原末を用し、加水率を30%とし、各区の大豆白絞油添加量を0%、10%、20%とした(表2-9)。使用したダイはφ3mm、5穴、ダイ厚約80mmである。・・・(略)・・・成形後に乾燥処理したサンプルの分析値を表2-10に示す。」と記載され表2-10には、CF(粗脂肪)含量は「1区6.8%、2区16.2%、3区25.0%」であることが、第325頁第4〜7行には、「これらの試作飼料を用いてニジマスによる飼育試験を行った(表2-12)。供試魚は平均体重52.2gのニジマス、各区200尾を20日間飼育した。飼料効率は1区が70%、2区が83%、3区が94%であり、油添加による向上が認められた。」と記載されている。また、第320〜321頁の表2-1及び表2-2には、小麦粉を原料として行った実験において、加水率、加熱温度を選択することによって、嵩比重0.513(No.8)〜1.11(No.5)の種々の嵩比重のものを製造できることが記載されている。
甲第2号証は、「ノルウェイにおけるサケ属魚類の養殖」に係るものであり、第86頁の「4.乾燥餌料」に関する表2のニジマス用ペレットの粗成分として、「脂肪最小」の欄には15〜20%と、表3のサケ用ペレットの組成分として、「脂肪最小」の欄には20%と記載されている。
甲第3号証には、「直径約3〜10mmの球状又は直径約3〜10mm高さ約3〜15mmの円筒伏の硬度約2〜5kg/cm2を有する浮上性養魚用飼料。」(特許請求の範囲)が記載されている。
そして、第2頁左上欄第7〜11行には、「飼料の大きさ及び硬度がこれら範囲から外れると、魚に与えた場合魚の摂餌性及び飼料の保形性及び浮上性が劣ることになる。特に硬度が低いと保形性が悪く、逆に高いと摂餌性が劣る。」ことが、また、第2頁左上欄第12〜14行には、斯かる飼料は、「原料を混合し通常の方法例えばエキストルーダーによる押出しなどにより行うことが出来る。」ことが記載されている。
甲第4号証には、エクストルーダーによって養魚飼料を製造する方法について記載されており、第14頁第1〜3行には、「フロート飼料は典型的にはリッター当り320〜400グラムの密度のものである」、ことが、第14頁第17〜19行には、「沈降性飼料は典型的にはリッター当り400〜600グラムの密度のものである」と記載されている(なお、この点について、特許異議申立人は、嵩比重がそれぞれ0.32〜0.40、0.40〜0.60であると説明している)。
甲第5号証には、EP(エクストルーダー)加工について記載され、第43頁第22〜23行には、「膨化物なので比重が軽く、また、保水性がよいので、養魚用の浮き餌などに利用することができる。」ことが記載されている。
そして、第43〜46頁の「5-4-2製造工程」には、製品化は、EP工程、乾燥工程、クランブル工程及び油脂添加工程からなること、特に、第46頁第3〜4行には、「油脂添加工程では、膨化粒およびクランブル状の製品をリール、オッシレーターなどにより粉末を分離した後、回転ドラム型式の油添機などで油脂をコーティングして製品にする。」と記載されている。
甲第6号証には、容積重の測定法としてはへクトリットルキログラム計による方法、ブラウエル穀粒計による方法があり、ヘクトリットルキログラム計による方法は、「とかきをその側面が垂直になるように持ってその全長を3回ジグザグに動かして試料のますから盛上った部分をかき落とす。漏斗からますに試料を落とし初めてからとかきを使い終わるまでの間、ますに衝動を与えてはならない。」(第59頁第7〜9行)と記載されている。
甲第7号証には、アメリカ法による嵩比重の測定法について記載されており、第524頁左欄第29〜32行には、「円筒中へのサンプルの充てん法は円筒の上縁の2ft上方よりサンプルを注ぎ込む。内容を落ちつかせるため、円筒を弾力のない床の上に、6inの高さから5回落とす。」と記載されている。
甲第8号証には、「カサ密度:粉体、粒体、繊維体などをある容器に詰めたとき、個々の粒子や繊維の間に存在する空間をも含めた密度であって、同じ物体でもその詰め方によってその値が違う。」と記載されている。

以下上記(a)、(b)について検討する。
(a)について
先に特許異議申立人1の甲第1号証について述べたと同様、甲第1号証には、油脂の添加については、製品に添加される粗脂肪の一部特定量を乾燥工程後に添加することについては記載がなく、本件請求項1、2で規定する他の条件と組み合わせたときの効果を類推させる記載もない。
甲第2号証には、ニジマス用ペレット飼料脂肪量が記載されているにすぎない。
甲第3号証は、特許異議申立人1の甲第2号証について述べたと同様である。
甲第4号証は、特許異議申立人2の甲第1号証について述べたと同様である。
甲第5号証には、エクストルーダーによる飼料の製造工程等が記載されているにすぎない。乾燥工程後の油脂の添加についても記載されているが、添加量をどの位にするか、本件請求項1に規定する他の条件と組み合わせたときの効果を類推させる記載はない。
そうしてみると、甲第1-5号証には、上記III-1で述べた問題点を解決するために本件請求項1、2で規定する構成を組み合わせ採用することを示唆する記載はない。
そして、本件請求項1、2に係る発明は、請求項1、2で規定する構成を組み合わせ採用することにより上記III-1で述べた課題を解決したのであり、その効果は予想外のものと認められる(本件特許明細書、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
そうしてみると、本件請求項1、2に係る発明の進歩性は、それぞれ、甲第1〜4証、甲第1〜5号証によって否定されるものではない。

(b)について
特許異議申立人4は、上記記載不備について具体的には以下(i)、(ii)のように述べている。
(i)本件請求項1においては硬度が0.4〜4.0Kg/cm2であることが必須であるとしているが、具体的には硬度2.3及び2.0の場合が記載されているのみでこれ以外の場合において同様な効果が得られるのか不明である。
(ii)本件請求項1においては、嵩比重が0.35〜0.65であることが必須とされているが、本件明細書には嵩比重の測定方法が記載されていない。嵩比重の測定方法には、甲第6号証、甲第7号証に記載されているように試料に振動を与えて充填する方法と振動を与えることなく充填して測定する方法があり、甲第8号証に記載のように試料の充填方法によってその値が異なるものであるから、その測定方法が記載されていない本件特許の嵩比重の数値範囲は不明瞭である。
そこで、上記(i)、(ii)について検討する。
(i)についての検討
本件請求項1で規定する養魚用飼料は上述のように、給餌前に水や油を添加しないタイプのものであって、本件明細書の記載(請求項1で規定する硬度範囲のものは、「魚に与える前に水につけて飼料を柔らかくする従来の固形飼料が有する問題点を除くことができる」旨の説明がある(特許公報第4欄第18〜25行)。又、「本発明は、・・・硬度が低い・・・多孔性の形態の固形飼料・・・」との記載(同3欄第36〜38行))を参照するまでもなく、水や油を添加するタイプのものよりも当然ながらその硬度は低めであると認められるところ、飼料の硬度は、摂餌性にとって重要なファクターであること、魚種による適切な硬度範囲があることは周知であるから(例えば、特許異議申立人4の提出した甲第3号証第2頁左上欄第7〜11行、同1の提出した甲第5号証第41頁第2段第22〜25行、同6の提出した甲第3号証第4欄第25〜26行)、これを考慮して請求項1で規定する数値範囲をみれば、その硬度範囲に不自然な点は見あたらず、請求項1で規定する範囲の硬度のものの奏する効果は当業者に理解されうる範囲のものと認められる。
そして、請求項1で規定する範囲では明細書記載の効果が得られないことを示す証拠が提出されているわけでもない。
(ii)についての検討
嵩比重の測定方法は複数あって、測定方法の違いによって値が違ってくることは、特許異議申立人4の指摘を待つまでもなく、本件特許に係る出願前、当該技術分野のみならず広く知られたことである。
そして、測定方法としては、単に粉粒体を受器に入れ一定容積あたりの重量を測る方法と振動(横振動、縦振動)等他の物理的な条件を加えた上で測定する方法があることも周知であるところ、前者の方法は簡便であり、値自体に厳密性が要求されない技術分野ではよく採用される慣用の方法であって、詳細な記載がなくともその測定方法は単純であるから当業者に理解できるものと認められる。一方、後者の方法においては、振動の方向等が異なる複数の方法があり、それらが採用する条件によって測定値が異なってくるから、そのような方法を採用したときの数値を記載するときには併せてその条件の記載が必要であることは当業者であれば理解できるところであり、このような測定方法を採用したときはその条件を記載するのが通常であると認められる。
そうしてみると、測定方法の記載がない本件嵩比重の測定方法は、測定条件の提示が必ずしも必要でない慣用の前者の方法が採用されていると考えるのが自然である。
そして、養魚飼料に係る技術分野では、嵩密度の値自体の厳密さは格別要求されているとまではいえないので、この点からみても、上記前者の方法が採用されているとすることに不自然な点はない。
又、このことは、本件特許明細書の記載ぶりからも窺える。すなわち、本件特許明細書には、本件請求項で規定する他の物理的性質である硬度については、その測定方法が詳細に記載されており(特許公報第5欄下から3行〜6欄第1行)、このことからすると測定条件が必要なものについては本件明細書に記載したと解するのが自然であり、そうすると、嵩比重については、測定条件についての記載がなくとも当業者が採用・理解できる測定方法を採用していると解される。
そうしてみると、測定方法の記載がある方が好ましいといえるとしても、本件明細書の記載が全く不十分でありその数値範囲が不明であるとまではいえない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人4の主張は何れも採用できない。

III-2-5特許異議申立人5に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人5は、甲第1〜4号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1に係る発明は甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することのできたものであり、又、(b)同請求項2に係る発明は、甲第2号証の記載に基づいて当業者が容易に明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることのできないものであるから、その特許は取り消されるべきであると主張している。



甲第1号証:「養殖」、第15巻、第3号、昭和53年3月1日、株式会社緑書房発行第40頁〜第45頁
甲第2号証:「養殖」臨時増刊号、第23巻、第12号、昭和61年11月5日、株式会社緑書房発行第102頁〜113頁及び第131頁〜132頁
甲第3号証:「新水産学全集14、魚類の栄養と飼料」、昭和55年11月15日、株式会社恒星社厚生閣発行、第298頁〜第299頁
甲第4号証:「エクストルージョンクッキング」昭和62年11月10日、株式会社光琳発行、第319頁〜第321頁

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証:特許異議申立人1の甲第5号証の記載事項参照
甲第2号証の第102頁第3段、左から第1行〜第4行には、鰻用フロート飼料の製造工程として、以下の工程が記載されている。
「原料混合→粉砕→造粒(エクストルーダー)→乾燥→オイルコーテング(ビタミンC・Eの強化)→包装」
また、ニジマス、ギンザケ用パフ飼料に係る第108頁の図7にはペレット飼料とパフ飼料(多孔性飼料)についての硬度と粉化率の関係が示されている。図7のグラフの横軸としては、1〜5kg/cm2の範囲が示されており、パフ飼料の硬度として1〜2.5kg/cm2の硬度のものの粉化率が示されている。
さらに、第110頁第2段第10行〜第19行には、「(1)EP飼料の概略 EPとはExpansion Pelletの略で、エクストルーダー(図1)と呼ばれる造粒機を用いて、原料に熱と水分と圧力を加え、その配合原料中のでん粉質をα化したのち、大気中に急激に放出することにより膨化させた、比重0.3前後の多孔質ペレットのことで、特殊造粒製品の一つである。」と記載されている。
第131頁以下には「配合固形飼料によるハマチの飼育」について記載されている。特に、第131頁第3段左から第8行〜第4段右から第8行には「(一)脂質の栄養ハマチの高度不飽和酸(HUFA)に対する要求量は他の海産魚に比べて高く、その適性量は飼料の1.6〜2.1%である。したがって、ハマチ飼料に補給すべき脂質の適性量は、その脂質のHUFA含有量により変動する。例えば、HUFA含有量が15%前後のスケトウタラの肝油(フィードオイル)やニシン油の場合は、それらの適性脂質しベルは飼料の約15%であるが、イカ肝油、イワシ油、カツオ油のようにHUFAを20%以上含有する油は飼料に九%又は九%以下の補足量でよい。」と、第132頁第3段の表2には、粒状乾燥固形の試作飼料の一般成分(使用時)の粗脂肪量は21.7%(乾物)であることが記載され、同第2段には、その物性が「水中での保型性にすぐれ、幾分浮力を有し、給餌に際して添加する水を吸収しやすい多孔質とする。」こと、同第3段左から4行〜同1行には、「固形飼料は給餌直前に飼料100部に対して水30部とフィードオイル10部を吸着させて投与したが、その飼料組成を逐次改変して、水に浸漬するだけで給餌できるようにした。」と記載されている。
甲第3号証第298頁第6行以下には「浮上性飼料(expanded」について記載されており、特に、同頁下から第6行〜同第2行には「この飼料は、水と油脂をあらかじめ エマルジョンにしたものを吸収させると、油分を10〜20%程度含んだソフトタイプの飼料となる。このものは、ハマチ、マダイなど、配合飼料に慣れていない魚でも良く摂取することから、今後の発展が期待される飼料である。」と記載されている。
甲第4号証の第319頁以下には「魚類等の飼料化技術」と題する報文が掲載されており、その第321頁の表2-2には、小麦粉を2軸エクストルーダーで押出して得られる押出物の嵩比重は約0.5〜1.1である事が示されている。

以下、上記(a)、(b)について検討する。
(a)について
甲第1号証は、ハマチ用の多孔性飼料が記載されているが、特許異議申立人1の甲第5号証について述べたように、給餌にあたって水と油あるいは水の添加を必要とするものである。
甲第2号証は、鰻用フロート飼料についてはエクストルーダーによる製造、乾燥工程後のオイルコーティングについて、ニジマスギンザケ用パフ飼料については1〜1.25の範囲の硬度範囲と粉化率の関係、エクストルーダーによる製造、比重は0.3前後であることが記載されているにすぎず、ハマチ用飼料に関しては、粗脂肪量が記載されているものの、当該飼料は給餌時に水と油又は水を添加するものである。
甲第3号証には、浮上性飼料に関して記載されているが、当該飼料は、給餌時に水と油を添加するタイプのものである。
甲第4号証には、特許異議申立人5が摘示する以外に、上述の特許異議申立人1等の甲第1号証についての摘示事項で示すことが記載されているが、当該甲号証に関して述べたように、油脂の添加の仕方等について記載するところがなく、本件請求項1で規定する他の構成要件を組み合わせたときの効果を類推させる記載もない。甲第4号証には、特許異議申立人5が摘示する嵩比重についての記載もあるが、これは、エクストルーダーで試作される製品の押出物と吸水性の関係を示すにすぎない。
又、甲第1-4号証には、上記III-1で述べた問題点を解決するために本件請求項1で規定する構成を組み合わせ採用することについて示唆する記載もない。
そして、本件請求項1に係る発明は、請求項1で規定する構成を採用することにより上記III-1で述べた課題を解決するものであり、その効果は予想外のものであると認められる(本件特許明細書、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1の進歩性は、甲第1〜4号証をもって否定されるものではない。

(b)について
本件請求項1に係る発明が、甲第1〜4号証によって否定されない以上、同請求項2に係る発明が甲第2号証によって否定されないことは明らかである。

以上のとおりであるから、特許異議申立人5の主張は、何れも採用できない。

III-2-6特許異議申立人6に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人6は、下記甲第1〜3号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号で規定する発明に該当し、特許を受けることができないものであり、また、(b)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである旨述べている。



甲第1号証:萩野珍吉編「魚類の栄養と飼料」第121頁〜124頁、第149頁〜160頁、第167頁〜177頁、第292頁〜299頁 昭和55年11月 株式会社恒星社厚生閣発行
甲第2号証:特開昭61‐202662号公報
甲第3号証:特公昭58‐29054号公報

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証は、「魚類の栄養と飼料」についての総説書であって、次の事項が記載されている。
第149貢下から7行〜第150頁第1行には、「無脂肪飼料やコーン油や大豆油のみを脂質源とした飼料では正常な発育が阻害され、魚類でも必須脂肪酸(以下、EFAと略記)を必要とすることがわかり・・・(略)・・・魚類は一般に肉食性の傾向が強く、炭水化物をエネルギー源として利用する能力が低い種類が多いので、脂質はエネルギー源として重要であり、脂質のタンパク質に対する節約効果が期待される。このように脂質にはEFAの給源およびエネルギー源としての2つの大きな働きがあるが・・・(略)・・・」と、第168頁4〜10行には、「一般に肉食性の魚類は炭水化物の消化率が低いので、炭水化物を主なエネルギー源とした飼料、すなわち.肉食性魚類に対して可消化エネルギー含量が低い飼料においては、タンパク質の一部がエネルギー源として消費される。従ってこれに脂質を添加して飼料のエネルギー含量を高めると、タンパク質の消費が節約され、タンパク質の利用効率が向上する。これを脂質のタンパク質節約効果(protein sparing effect)という。」と、第168頁1〜2行には、「脂質のエネルギー源としての研究は古くからなされており、成長に対する添加効果が認められている。」と、第168頁19〜26行、第169頁の図5.23には、「ニジマス飼料におけるタンパク質と脂質の至適添加量は、炭水化物の含量が30%前後の場合には、増重率において、タンパク質48%・脂質10%区と、タンパク質35%・脂質15〜20%区で差がないこと(第5.23図)、さらに飼料効率、PER、NPUおよび魚全体の分析結果からみて、それぞれ35%および15〜20%前後と推定している。」と、第169頁19〜24行には、「竹内らは上記のタンパク質レベルにおける脂質の至適添加量について 追試し、・・・(略)・・・その結果、タンパク質と脂質の至適添加割合は、それぞれ35%および18%前後であり、・・・(略)・・・この時飼料のタンパク質と脂質が最も有効に利用されることを明らかにした。」と記載され、第171頁図5・25および第172頁図5・26にはコイの飼料において脂質含量15%の飼料を用いたことが示されている。
又、第174〜176頁の「海水魚」の項では、「肉食性の強い海水魚のハマチにおいても、脂質添加によりタンパク質節約効果が知られている」(第174頁第1〜2行)、「北洋魚粉を主原料とした配合飼料にタラ肝油を0〜19%添加し、等カロリーに調整した5種類の飼料で、平均体重106gのハマチを網生簀で30日飼育した(実験2)。その結果、タンパク質35〜59%・脂質10〜15%の両区で優れた成長を示し、タンパク質蓄積率も油脂無添加の高タンパク質区に比べてはるかに高かった(図5・28)。」(第174頁14〜18行)との説明とともに、175頁図5.28には、脂質含量を15%および20%としたハマチ配合飼料が記載されている。
さらに、292頁〜299頁には、養魚用配合飼料についての説明がなされており、その「飼料の製造工程と用途」の項では、「粉末飼料」の項に次ぐ「ペレット」の項において、その成型工程における「加水度は普通5〜10%である」こと(295頁下から5〜4行)、「投餌のとき、粉になった部分はロスになるので、製造時と輸送中の粉化に注意しなければならない。しかし粉化を防ぐためあまり硬度を高めると、消化が悪くなるおそれもあり、適当な硬度を保つことが必要である。」(第296頁下から9〜3行)との説明を行った後、特に「浮上性飼料」の項を設けて次の説明がなされている。
「これは押出機を著しい圧力で押し出す際の圧搾熱と圧力により糊化した原料が、常圧に戻る際に、水分が蒸散し発泡してできるものである(図6・12)。 加水量と加熱量がペレットに比して多い」(第298頁6〜8行)、「このものは水面に浮上し、給水破損することが少ないので、過給餌により水を汚す心配が少ない飼料で、錦ゴイ用に広く使用されている」(第298貢下から7〜6行)、「また、この飼料は、水と油脂をあらかじめエマルジョンとしたものを吸収させると、油分を10〜20%程度含んだソフトタイプの飼料となる。このものは、ハマチ、マダイなど、配合飼料に慣れていない魚でも良く摂餌する」(第298頁下から4〜3行)
甲第2号証には、「浮上性養魚用飼料」についての発明に関連して、次の説明がなされている。
「直径3〜10mmの球状又は直径3〜10mm高さ約3〜15mmの円筒状の硬度約2〜5kg/cm2を有する浮上性養魚用飼料」(特許請求の範囲の項)、「浮上性養魚用飼料は、他の飼料と異なり、水底に沈下したり又は崩壊したりして損失し、その上養魚他の水質を劣化させることがないため、広く用いられている。」(第1頁左下欄下から6〜3行)、「これら浮上性養魚用飼料は、一般に他の飼料よりも摂餌性の良好なものが多く・・・(略)・・・」(第1頁左下欄最下行〜同右下欄第1行)、「本発明の飼料は、直径約3〜10mm球状又は直径3〜10mm高さ約3〜15mmの円筒状であって硬度約2〜5kg/cm2である。飼料の大きさおよび硬度がこれらの範囲から外れると、魚に与えた場合魚の摂餌性及び飼料の保形性及び浮上性が劣ることになる。特に硬度が低いと保形性が悪く、逆に高いと摂餌性が劣る。」(第2頁左上欄第5〜11行)、「本発明の飼料の製造に当たっては、前記の原料を混合し通常の方法例えばエキストルーダーによる押出しなどにより行うことができる。」(第2頁左上欄第12〜14行)
甲第3号証は「魚類の給餌方法」の発明に係るものであるが、図面には、多孔性固型飼料(第2欄最下行〜第3欄第4行の説明にあるとおり、粉末状養殖配合飼料を加熱水蒸気の存在下において押し出し式加熱加圧成型機にかけたもの)に対して大豆白絞油および水を乳化させたものを吸着しせしめたものの硬さを表すグラフが示されている。
また、従来技術に関し、第2欄第17〜25行には、「油脂だけを固定飼料に吸着処理した場合、油脂が溶出して水が汚染される等の欠点は免れなかった。また、固形飼料には水と油の両方を添加しようとする場合、水を吸着させた後では油の吸着は困難であり、反対に油脂を吸着した後では水の吸収が極めて遅く、柔らかい飼料を作るための作業性が損なわれるという欠点もあった。」と記載されている。さらに、第4欄第25〜26行には、「ウナギでは硬さ1Kg、ハマチでは2Kg以下で摂餌可能であった。」と記載されている。

以下、上記(a)、(b)について検討する。
甲第1号証には、養魚飼料に関し、本件請求項1、2で規定する程度の油脂を添加すること、飼料の輸送中の粉化や消化のために適当な硬度を保つことが必要であることが記載されているが、当該浮上性飼料は、上述のように給餌時に水と油を添加するタイプのものである。
甲第2号証に係る浮上性飼料はエクストルーダーで製造していることから、多孔性のものと認められ、甲第2号証には、硬度についても記載があるが、乾燥工程後に油脂を添加する態様は記載されていないし、本件請求項1で規定する他の条件と組み合わせたときの効果を類推させる記載もない。又、甲第2号証で採用する硬度の範囲は、本件請求項1で規定する硬度の範囲より高い値を採用している(値自身は一部重複するが)。
甲第3号証には、多孔性固形飼料が記載されているが、給餌時に水と油を吸着させるタイプのものである。そして、上述の従来技術の項の記載ぶりからすると、乾燥工程後の油脂のみの添加を直ちに想到し得たとはいえない。
そうしてみると、本件請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
又、甲第1〜3号証には、上記III-1で述べた問題点を解決するために本件請求項1、2に係る構成を組み合わせ採用することを示唆する記載はない。
そして、本件請求項1、2に係る発明は、請求項で規定する構成を組み合わせ採用することによって予想外の効果を奏するものである(本件特許明細書、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1,2に係る発明の進歩性は、甲第1〜3号証によって否定されるものではない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人6の主張は採用できない。

III-2-7特許異議申立人7に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人7は、甲第1〜11号証を提出して、本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、本件特許に係る出願前の周知慣用の技術から、あるいは、下記甲第1〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきであると主張している。



甲第1号証:「養殖」第15巻、第3号、昭和53年3月1日、緑書房発行 第40〜44頁
甲第2号証:「養殖」臨時増刊号、第23巻第12号 昭和61年11月5日、緑書房発行 第25〜33頁、第39〜44、第102〜113頁、第131〜137頁
甲第3号証:「配合飼料講座、下巻、製造篇」、昭和54年3月1日、チクサン出版社発行 第43〜46頁
甲第4号証:特開昭61-202662号公報
甲第5号証:特開昭63-294748号公報
甲第6号証:特開昭63-230039号公報
甲第7号証:北大水産彙報,30(4).294〜299(1979)
甲第8号証:Aquaculture,25(1981)185〜194
甲第9号証:「配合飼料講座、上巻、設計篇」、昭和55年3月15日、チクサン出版社発行 第583〜587頁〕
甲第10号証:「配合飼料講座、上巻、設計篇」、昭和55年3月15日、チクサン出版社発行 第596〜599頁
甲第11号証「エクストルージョンクッキング」昭和62年11月10日、食品産業エクストルージョンクッキング技術研究組合発行、第319〜329頁

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証は、「普及が期待されるハマチ用浮餌」に係るものであり、特に第42頁第1段左から第2行〜第6行には「蛋白質と脂質の含量をそれぞれ50〜55%および15〜17%とすると、ハマチはすぐれた成長とエネルギー蓄積を示し、」と記載され、更に、同頁第2段、左から第5行〜第7行には「この点、多孔質飼料は、吸水、吸油能力が大きく、比較的多量の油脂を添加することが可能である」と記載されている。
甲第2号証には、第25頁からの「淡水魚飼料の現状と展望」に係るものとして、第28第1段第1〜11行に、「この製造機はエクストルーダーと呼び、一定の水分と圧力を加えた飼料をノズルからパフさせて押し出し、後、乾燥してペレットにするものであるが、水面に浮くので残餌が池の底にたまることがない利点がある。水と油脂を混合、乳化したものをよく吸収し、柔かい飼料となるので、海産魚も含めて今後さらに開発が進むと考えられる。」と記載されている。
第30頁からの「海水魚飼料の現状と展望」に係るものとして、第31頁には第2段左から3行〜同第3段第3行には、ハマチ用飼料について、「しかし、最近鹿児島水試の指導により開発された、改良多孔質ペレット(配合固型飼料の名称で市販)は、生餌にほぼ等しい飼料効果を示したと報告されている。」、と記載され、第31頁の海水魚用配合飼料の形状と使用区分に関する表2には、固形で多孔質ペレットについてその摘要の項に「適量の油と水を吸着」と記載されている。第33頁第2段左から8行〜同6行には、「飼料へ添加する油脂の種類や量を変えて飼料の栄養分バランスを調整することにより飼育魚の肉質をある程度調節し向上させることができるであろう。」と記載されている。
第39頁からの「ニジマス用飼料の実際」に係るものとして、第43頁第4段第10行〜14行には、油脂の利用について、「先に脂質の蛋白節減効果を述べたが、市販飼料に油脂を吸着させる方法が通常であり、その添加率はクランブルで10%、ペレットでは7%程度が限度である。」と記載されている。
第102頁からの「ウナギ用浮餌の特徴と使用法」に係るものとして、第102頁第2段には、ウナギ用浮餌の製造工程として、原料混合→粉砕→造粒(エクストルーダー)→乾燥→オイルゴーナィング→包装からなる工程が記載されている。
第106頁からの「ニジマス・ギンザケ用パフ飼料の特徴と使用法」に係るものとして、第107頁第2段左から2行から同第3段第1行には、「ペレット飼料、パフ飼料とも、油脂無添加飼料と、油脂添加飼料が使用されています。」と、記載され、第108頁の図7においてはパフ飼料について硬度1〜2.5kg/cm2の場合の粉化率が示されている。
第110頁からの「アユ用多孔質(EP)飼料の特徴と使用法」に係るものとして、第11頁第2段左から第6行〜同第1行には、「飼料の吸水率は、PC飼料の約2倍と非常に高いが、これは、飼料が多孔質になっている(表面積が大きい)からである。」と記載されている。
第131頁からの「配合固形飼料によるハマチの飼育」に係るものとして、第132頁表1にはハマチの乾燥固型飼料の脂肪含有量が15〜20%、表2には試作固形飼料の一般成分(使用時)として粗脂肪21.7%(乾物%)のものが示され、試作飼料の物性として、「水中での保型性にすぐれ、幾分浮力を有し、給餌に際して添加する水を吸収しやすい多孔質とする」こと、飼育試験の飼育方法としては第3段左から5行〜表の下第1段第1行には、「固形飼料は給餌直前に飼料100部に対して水30部とフィードオイル10部を吸着させて投与したが、その後飼料組成を逐次改変して、水に浸漬するだけで給餌できるようにした。」と、第136頁第1段左から4行〜同第2段第3行には、固形飼料を使用する際の留意点として、「真水に浸漬し、吸水させて給餌する。この操作は、飼料に含まれる油やビタミンなどの変質をできるだけ押さえるために給餌直前に行う。」ことが記載されている。
甲第3号証は、EP加工(エクストルーディング)に係るものであり、46頁3〜4行には、「(4)油脂添加工程では、膨化粒およびクランブル状の製品をリール、オッシレーターなどにより粉末を分離した後、回転ドラム型式の油添機などで油脂をコーティングして製品にする。」と記載されている。
甲第4号証の特許請求の範囲には、「直径約3〜10mmの球状又は直径約3〜10mm高さ約3〜15mmの円筒状の硬度約2〜5kg/cm2を有する浮上性養魚用飼料。」と記載されている。
甲第5号証は、浮懸性を有する水棲動物用飼料及びその製法に係るものであり、その特許請求の範囲には、「(1)自体公知の飼料成分と起泡性物質とを含有する飼料素材から成形されたき多孔質体であり、見掛け比重が0.35-0.42g/mlであって、水中に投下される場合に-旦沈降するが、その後に吸水膨潤して浮上する特性を有していることを特徴とする、浮懸性を有する水棲動物用飼料。」と記載されている。
甲第6号証は、休日用鑑賞魚餌に係るものであり、その特許請求の範囲には、「水中で長期間安定であり、水に不溶性で、かつ水質を損わない押出物の形態であり、該餌が粗蛋白質を30〜50重量%、粗脂肪を5〜15重量%及び水分含有量5〜15%の粗繊維を0.5〜10重量%含む鑑賞魚の休日用魚餌。」と記載されている。
甲第7号証は「ギンザケの成長と脂質におよぼす飼料脂質の影響」に係るものであり、特に第295頁の表1には、脂肪含有量が7.4〜15.1%のものが示され、第296頁第第6行には、「油脂添加量の多い飼料を摂取した魚群ほど成長がすぐれており」と記載されている。
甲第8号証の第187頁の表1には脂肪(%)11.6±0.2と12.7±0.2のものが示され、第189頁〜第190の「ペレットの水分吸収」については、「エクストルージョン・ペレットのクランブルはスチーム・ペレットに比べて、10、60、180秒間のいずれの浸漬時間においても有意に多くの水を高速で吸収した(表3)。エクストルージョン・ペレットは水中への浸漬中その形状は維持し、しかし、良く水分を吸収し1分間の浸漬で中心まで柔らかであった。スチーム・ペレットのクランブルは1分間の浸漬で外殻が水分を吸い、極めて柔らかくなり状態が悪くなる。しかし、より大きいクランブルの中心は硬いままで3分間の浸債後でも明らかに乾燥していた。」と記載され、第191頁〜第192頁の<ディスカッション>の項には、「エクストルージョン・ペレットのクランブルはスチーム・ペレットのクランブルよりも強度があり(表2)、水中安定性に優れている。・・・(略)・・・エクストルージョン・ペレットの浮上性は微粒子中の空気が比重を減少させているためである(エクストルージョン・ペレットの比重は45g/100cm3、スチーム・ペレットの比重は61g/100cm3)。このエクストルージョン・ペレット密度の減少がスチームペレットと比較してエクストルージョン・ペレットのより水分吸収の速さ、大きさに寄与しているのであろう(表3)。」と記載されている。
甲第9号証には、コイ用の多孔質飼料について、第585頁18〜21行に「コイもニジマス同様に油脂を良く利用するが、・・・(略)・・・保存中の酸化防止の点から、ニジマスの場合と同様、飼料給与直前に養魚用油脂を配合飼料に添加するのが最良の方法である。最近、油脂を3〜5%添加した配合飼料も市販されている。」と記載されている。
甲第10号証には、マダイ用のペレット飼料について、第597頁15〜16行に「油脂は、他魚種の飼料同様、ペレット給与直前に5〜8%添加すると成長、飼料効率が改善される。」と記載され、ハマチ用の飼料について、第598頁下から6行〜同4行に、「多孔質固型飼料は水を添加しても崩壊せず、給与直前に水と油を加え、十分に柔らかくしてから給与できるため、嗜好性が高く、生餌からの切替えも比較的容易であり、今後のハマチ用配合飼料として最も有望視されている。」と記載されている。
甲第11号証の第323〜325頁には、油添加率10%および20%とした高含油飼料製造について、油脂添加による飼料効率の向上が認められたことが記載されている。

以下上記特許異議申立人の主張について検討する。
なるほど、特許異議申立人のいうように、甲第1号証には、養魚飼料について油脂分15〜17%の割合で添加しうること、多孔質飼料は吸水給油能力に優れ比較的多量の油脂を添加することが可能であることが、甲第8号証には粗脂肪11.6%と12.7%のペレットに水分を吸収させたものが、甲第6号証にも粗脂肪5〜15%のものが記載されている甲第11号証には、油添加率が10〜20%とすること、油脂添加による飼料効率の向上が示されている。
又、甲第2号証及び甲第4号証には、本件請求項1で規定する硬度の範囲と一部重複する範囲の魚餌が記載され、甲第5号証及び甲第8号証には本件請求項1で規定する嵩比重と一部重複する値が記載され(甲第5号証では見かけ比重と、甲第8号証ではg/cm3の単位で表示されているが)、甲第9号証には、コイの多孔質飼料について油脂を給餌直前に添加すること、甲第10号証には、マダイ用ペレットに油脂を給餌直前に添加すること、甲第2号証、甲第3号証には乾燥工程後に「オイルコーティング」工程があることが、甲第3号証、甲11号証にはエクストルーダーで飼料を製造すること(甲第11号証のものは2軸)が記載されている。
しかしながら、上記甲号証には、高配合量の粗脂肪を請求項1で規定するよう添加すること、これら構成を組み合わせることについては記載も示唆もない。
そして、たとえ請求項1で規定する各構成自体が周知、公知、又は、それらから当業者が容易に想到しうる範囲のものであったとしても、比較的高粗脂肪量が添加された2軸エクストルーダー押出物にさらに比較的高粗脂肪量の油脂を添加したものが適当な浮遊性(沈降性)が得られるのか、請求項1で規定する構成を採用すればそのまま給餌可能なものとなるのか、摂餌性は問題ないのか等の効果は必ずしも明らかでない。
そして、本件請求項1に係る発明は、本件請求項1で規定する構成を採用することにより上記III-1で述べた課題を達成できたものであり、その効果は、予想外のものであると認められる(本件特許公報、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1に係る発明は、単に周知技術を集めたものということはできず、又、甲第1〜11号証によってその進歩性が否定されるものともいえない。
又、請求項1の進歩性が否定できない以上、請求項2の進歩性が否定できないことは明らかである。

以上のとおりであるから、特許異議申立人7の主張は採用できない。

III-2-8特許異議申立人8に係る特許異議申立てについて
特許異議申立人8は、下記甲第1〜6号証を提出して、(a)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号で規定する発明に該当するから、その特許は取り消されるべきである、(b)本件訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証および甲第3〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである旨主張している。



甲第1号証:「「人間の食料および動物の飼料における植物蛋白の利用に関する世界会議」で発表されたカーンズ氏の論文」およびその訳文
甲第2号証:雑誌「FEED INTERNATIONAL,1988年9月、ワット出版社発行」、第51頁
甲第3号証:「造粒便覧」、オーム社、昭和50年発行、543頁
甲第4号証(「エクストルージョンクッキング」(株)光琳発行、昭和62年、 第319〜331頁
甲第5号証:特公平4-81419号公報
甲第6号証:特開昭63-294748号公報

そして、上記甲号証には以下の事項が記載されている。

甲第1号証については、特許異議申立人2の甲第1号証の記載事項参照。
甲第2号証には、甲第1号証に記載の会議がシンガポールにて1988年10月2〜7日に開催されることが記載されている。
甲第3号証には、エキスパンデッドフィードの特性、製造法が記載されており、その第543頁、右欄第19〜22行には、「エキスパンドした飼料に少量の油脂(1.5%以下)はあらかじめ配合してエキスバンドすることができるが、多量になると種々の問題が発生するので、普通は後添加する」旨記載されている。
甲第4号証には、2軸エクストルーダを用いて飼料を製造すれば、従来のドライペレット飼料に比較して広範囲の油分を含有した飼料をつくることができ、しかも油脂を均一に混合でき、さらに油脂を0%、10%、20%添加しニジマスに対する給与試験を行い、油脂の添加量が多い程優れた飼料効率を示したことを報告している。
甲第5号証は、「直径3〜10mmの球状又は直径3〜10mm、高さ3〜15mmの円筒状を有し、かつ硬度が2〜5kg/cm2を有することを特徴とする浮上性養魚用飼料」(特許請求の範囲)の発明に係るものである(なお、当該甲号証は、本出願前頒布されたものではないので、検討の必要がないことは明らかであるが、上記甲号証に係る特許出願の発明は、特開昭61-202662号公報として本出願前公知のものとなっている(特許異議申立人1の甲第2号証参照)ので、以下において一応、検討する)。
甲第6号証には、「自体公知の原料成分と起泡性物質とを含有する飼料素材から成形された多孔質体であり、見掛け比重が0.35〜0.42g/mlであって、水中に投下される場合に一旦沈降するが、その後に吸水膨潤して浮上する特性を有していることを特徴とする、浮懸性を有する水棲動物用飼料」が記載されている。

以下、上記(a)、(b)について検討する。
(a)について
特許異議申立人2の主張の検討「(a)について」において述べたように、本件請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(b)について
甲第1号証、甲第4号証には多孔性養魚飼料を2軸エクストルーダーで製造し、本件請求項1で規定する程度の高粗脂肪量を配合すること、甲第1号証、甲第3号証には、乾燥工程後に油脂の添加をすること、甲第6号証には、本件請求項1で規定する範囲と一部重複する範囲の嵩比重のものが記載されており、さらに、本件請求項1で規定する範囲と一部重複する範囲の硬度のものが上記甲第号5証で示される公告公報に対応する公開公報によって公知であるといえても、特許異議申立人7における異議の検討で述べたように、本件請求項1で規定する構成を採用したときの給餌性、摂餌性についての効果は必ずしも明らかでない。
そして、本件請求項1で規定する発明は、当該構成を採用したことにより上記III-1で述べた課題を達成できたものであり、その効果は、予想外のものと認められる(本件特許明細書、平成12年9月18日付け特許異議意見書に添付された実験報告書参照)。
してみれば、本件請求項1に係る発明の進歩性は、甲第1、3〜6号証によって否定されるものではない。
又、本件請求項1に係る発明の進歩性が否定できない以上、請求項2に係る発明の進歩性が否定できないことは明らかである。

以上のとおりであるから、特許異議申立人8の主張はいずれも採用できない。

IV.結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
又、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
多孔性養魚飼料及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 2軸エクストルーダーで加熱混練した後、水分含量12重量%以下に乾燥し、その後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることにより得られる粗脂肪含有量が13〜35重量%であり、硬度が0.5〜4.0kg/cm2で、嵩比重が0.35〜0.65で、かつ水分含量が10重量%以下であることを特徴とする多孔性養魚飼料。
【請求項2】 養魚飼料原料に油脂を添加後、水を加えて2軸エクストルーダーで加熱混練し、次いで水分含量12重量%以下に乾燥した後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることを特徴とする請求項1記載の多孔性養魚飼料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、ハマチ、ブリ、ヒラメ、シマアジ、マグロ、サケ、マス、ウナギなどの養殖魚、特にハマチの餌として好適に使用できる多孔性養魚飼料とその製造方法に関するものである。
〔従来の技術〕
近年、わが国の栽培漁業はますます重要な地位を占めるようになっている。しかし、ハマチやタイに代表される魚の海面養殖では多獲魚であるイワシ、サバなどの生魚または冷凍魚をミンチ、切断、丸の形状で給餌するため、海水中への水溶性栄養分の溶出が多くまたは水中でのバラケが多く、魚の捕食率が低いという欠点がある。特にハマチやブリなどは、従来他の魚種で広く使用されている固型養魚飼料(ドライペレット)を摂餌しなかったため、長年にわたり上記生餌給餌形態がとられており、この分野での固型飼料の研究が進まず現在環境悪化、へい死の増大、経営悪化への悪循環が起こりやすくなっている。
従って、現在、ハマチ、タイなどの海水魚向養魚用餌用として魚粉、小麦粉、大豆油かす、グルテンミール、米ヌカなどを主原料として、これに各種ビタミン、ミネラル類さらにアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、グアガム等の粘結剤を配合して粉末状にした配合飼料と、生魚もしくは冷凍魚をミンチ状にしたものを混合して造粒したモイストペレットが普及しつつある。このモイストペレットは、水分を30〜40%以上含みやわらかいため嗜好性もよく、養魚は生餌にひってきする生長をしている。しかし、モイストペレットの製造設備に多額の設備投資を要すること、品質にバラツキが生じること及び給餌作業がふえる等数多くの問題がある。
こうした中で最近品質的に安定している配合飼料のみを使用した多孔性固型養魚飼料が市場に出現している。この多孔性飼料は、通常、養魚用配合飼料に用いられる魚粉、大豆油かす、コーングルテンミール、でんぷん質(でんぷん粉、小麦粉など)及び米ぬかなどを主原料とし、ビタミンやミネラル類を加えた後、エクストルーダー(加圧加熱押出機)で加圧、押し出して成型された飼料であり、ハマチ用のものも出現している。特に、ハマチは、乾燥した硬い固型配合飼料を好まず、そのままでは摂餌しないので、これらの多孔性養魚飼料を用いる場合には、飼料に水または水と油をしみ込ませてスポンジ状にして給餌させる必要がある。従って、水を用意したり作業面でも手間がかかるうえ、自動給餌がむずかしいという問題がある。また栄養面でも水溶性ビタミン類が水中へ流出する恐れもあり、さらに魚の成長も従来の生餌飼料を与えた場合に比べると劣るなど実用的でなくあまり普及していないのが現状である。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、乾燥した固型配合飼料を好まないハマチやブリなどの海水魚が食べ、かつこれらの魚の成育を向上させることができる固型配合飼料を提供することを目的とする。
本発明は、また上記固型飼料の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、飼料中の粗脂肪含量を高め、かつ硬度が低くて嵩比重が特定の範囲にある多孔性形態の固型飼料を用いると上記課題を解決できるとの知見、及び該飼料を製造するにあたり、油脂を2回に分けて添加すると効率よく、かつすぐれた固型飼料を製造できるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、2軸エクストルーダーで加熱混練した後、水分含量12重量%以下に乾燥し、その後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることにより得られる粗脂肪含有量が13〜35重量%であり、硬度が0.5〜4.0kg/cm2で、嵩比重が0.35〜0.65で、かつ水分含量が10重量%以下であることを特徴とする多孔性養魚飼料を提供する。
本発明は、又、養魚飼料原料に油脂を添加後、水を加えて2軸エクストルーダーで加熱混練し、次いで水分含量12重量%以下に乾燥した後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることを特徴とする上記多孔性養魚飼料の製造方法を提供する。
本発明の多孔性高脂質養魚飼料は従来の多孔性養魚飼料の原材料とほぼ同じものを用いることができ、魚粉、大豆油かす、コーングルテンミールなどのタンパク質、でんぷん質(でんぷん粉、小麦粉など)に、ビタミン、ミネラル類を含有するが、特に粗脂肪を13〜35重量%(以下%と略称する)と多量に含有することを特徴とする。つまり、このような量で粗脂肪を含有させると成長促進においてすぐれた効果が得られるからである。粗脂肪の量は、好ましくは18〜30%、より好ましくは、20〜30%、最も好ましくは23〜30%である。該粗脂肪は、魚粉などの原材料由来の脂肪分に加えて、動物性油脂や植物性油脂が含まれる。尚、油脂としては高度不飽和脂肪酸のω3系脂肪酸を含むものが好ましく、融点が-20〜50℃のものを用いるのが好ましい。
本発明の飼料成分は上記要件を満せば特に限定されないが、通常粗タンパク質35〜55%、粗脂肪13〜35%、炭水化物5〜30%、無機物、ビタミン等1〜5%を含み、水分含量が10%以下のものが好ましい。又、上記炭水化物はα化デンプンの形態で含ませるのがよい。
本発明の飼料は、上記特徴に加えて、硬度が0.5〜4.0kg/cm2と軟かく、嵩比重が0.35〜0.65の範囲にある多孔性形態にあることを特徴とする。すなわち、硬度を0・5〜4.0kg/cm2、好ましくは0.7〜3.0kg/cm2、より好ましくは1.0〜2.5kg/cm2とすることによって、魚に与える前に水につけて飼料を軟かくするという従来の固型飼料が有する問題を除くことができ、直接魚に与えることができるのである。また嵩比重が0.40〜0.65、好ましくは0.5〜0.65、より好ましくは0.55〜0.65の多孔性とすることによって、自動給餌システムを使用して効率的な給餌を達成できるからである。
上記硬度及び嵩比重は使用原料や製造条件の調整により所望の範囲とすることができる。
本発明の多孔性飼料は、上記タンパク質、炭水化物、ビタミン等を含有する粗脂肪分2〜9%、好ましくは3〜8%、水分含量5〜14%の原料に動物性油脂もしくは植物性油脂を1〜6%、好ましくは3〜5%の割合で混合し、加水加圧熱(水蒸気でも可)の存在下において、でんぷん質をα化しつつ加熱加圧押し出しにより多孔性固体に成型した後乾燥する方法により製造するのが好ましい。ここで加水量としては10〜24%の水を加えるのがよい。このように原料配合時に油脂を加えると、加圧過程で原材料がスリップ状態を起こし加圧が不十分になる恐れが生じるので2軸エクストルーダーを用いて加圧押出するのがよい。
2軸エクストルーダーを用いると摩擦熱を押さえて80〜100℃といった中低温で加圧加熱及び混練が可能であり、原料の加熱や酸化による劣化を押えることができる。上記方法では、加圧加熱された原料を空気中に押出すことにより、実質的に減圧下で水分が蒸散し膨化し、その直後に水分含量を所定の数値となるまで乾燥すると所望の硬度の多孔体が製造できる。
上記2軸エクストルーダーを用いる方法では、配合原料をフィーダーに供給し、次に、クッカー部においてスチームまたは温水によって水分含量を20〜38%に上げ、スクリュープレス部で加圧、加熱、混練されてダイから空気中に放出される方法によるのがよい。
このようにして得られた多孔体を水分含量が12%以下、好ましくは5〜12%となるように乾燥した後、動物性油脂または植物性油脂およびその混合物を常温もしくは加温した状態でスプレーもしくは噴霧するなどの手段で後添加することでハマチ、ブリなどが活発に摂餌し、成長する高脂質養魚飼料が製造できる。油脂の後添加は約6%〜約25%で行い、養魚飼料の成分を粗脂肪13%〜35%、飼料の総エネルギー4500kcal/kg〜6100kcal/kg、好ましくは粗脂肪18〜30%、4900kcal/kg〜5900kcal/kgに調整するのがよい。本発明の飼料は多孔性なので、上記油脂を極めて効率的に吸収することができる。
本発明の多孔性飼料は、任意の形、大きさとすることができるが、ダイ等の形状を変更することにより、直径約0.5〜50mmの球状又は直径約0.5〜50mm長さ約0.5〜100mmの円筒状とすることができる。
〔発明の効果〕
本発明の多孔性高脂質養魚飼料は、栄養価が高く従来乾燥固型飼料を摂餌しないとされていたハマチにおいても活発に捕食され、従来の生餌主体飼育に優るとも劣らない成長を示した。
従って、本発明の飼料は、ハマチやブリなどはもとより他の多くの魚の養殖用飼料として幅広く使用できる。
また、嵩比重を調整することにより、フロート飼料(嵩比重約0.35〜約0.52)や沈降性飼料(約0.52〜約0.65)とすることができる。
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例〕
実施例1
下記の原料:
魚 粉 72%
大豆油かす 4%
小麦粉 13%
馬鈴しょ澱粉 6%
ビタミン・ミネラル 2%
魚 油 3%
(水分含量10%、粗脂肪含量11%)
を混合機で十分ミキシングした後、2軸エクストルーダー(クレクストラル社製)にて加水17%、加熱温度80℃〜100℃下で加圧成型した後、水分10%弱に乾燥した。
その後フィードオイル(魚油)を14%スプレーし、粗脂肪約25%の多孔性高脂質養魚飼料(直径10mm、長さ12mmの円柱状ペレット、硬度2.3、嵩比重0.52)を得た。尚、硬度は、木屋式硬度計を用い、加圧面の直径が5mmφの円形の平面(プランジャー)で加圧、破砕した状態での数値kgを、ペレットの直径から面積を算出し1cm2当たりの破砕硬度とした(以下同じ)。
この多孔性飼料を用いてハマチの養殖を60日間行った。一方、比較用に生餌と市販のハマチ用配合飼料を8:2の割合で混合して造粒したモイストペレットを用いて同様の試験を行った。結果を次に示す。

上記結果から明らかな様に本発明の飼料は、水を加えたりすることなしに使用でき、従来の生餌主体養殖よりも優れた結果を得た。また、本発明の飼料は食べ残しもなく、利用率はモイストペレットと同等もしくはそれ以上であった。
本発明の飼料をハマチ以外のヒラメに与えて養殖したところ、すぐれた成長率と高い利用率が得られた。
実施例2
下記の原料:
魚 粉 60%
イカミール 16%
小麦粉 6%
馬鈴しょ澱粉 8%
コーンスターチ 4%
ビタミン・ミネラル 2%
大豆油 4%
(水分含量10%、粗脂肪含量10%)
を用い、実施例1と同一の装置を用いて加水量を15%、加熱温度80〜95℃で加圧成形し、水分含量8%に乾燥した。
その後、油脂(融点0℃)を20%スプレーして、粗脂肪含量30%の多孔性高脂質飼料(硬度2.0〜嵩比重0.55)を得た。
この飼料は実施例1と同等のすぐれた性能を有していた。
実施例3
下記の原料:
魚 粉 50%
オキアミ粉末 20%
大豆油かす 5%
小麦粉 7%
馬鈴しょ澱粉 5%
小麦グルテン 6%
ビタミン・ミネラル 2%
フィードオイル(魚油) 3%
大豆油 2%
(水分含量9%、粗脂肪含量9%)
を用い、実施例1と同一の装置を用いて加水量16%、加熱温度80〜90℃で加圧成形し、水分9%まで乾燥した。
その後、油脂(融点0℃)を20%スプレーして、粗脂肪含量29%の多孔性高脂質飼料(硬度2.3〜嵩比重0.35)を得た。
この飼料は浮上性であり、ハマチに与えたところすぐれた成長率と高い利用率が得られた。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.特許請求の範囲の減縮を目的として以下の訂正を行う。
a.請求項1に「2軸エクストルーダーで加熱混練した後、水分含量12重量%以下に乾燥し、その後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることにより得られる」との製法を加える。
b.請求項1に「水分含量が10重量%以下であること」を加える。
c.請求項2における“加圧加熱押出機”を「2軸エクストルーダー」に限定する。
d.請求項2における“乾燥”を「水分含量12重量%以下に乾燥すること」に限定する。
e.請求項2における“油脂を含浸”を「最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させる」に限定する。
2.明瞭でない記載の釈明を目的として明細書の“すなわち、本発明は、‐‐‐を提供する。”(特許公報第3欄第42〜48行)を、以下のように訂正する。
「すなわち、本発明は、2軸エクストルーダーで加熱混練した後、水分含量12重量%以下に乾燥し、その後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることにより得られる粗脂肪含有量が13〜35重量%であり、硬度が0.5〜4.0kg/cm2で、嵩比重が0.35〜0.65で、かつ水分含量が10重量%以下であることを特徴とする多孔性養魚飼料を提供する。
本発明は、又、養魚飼料原料に油脂を添加後、水を加えて2軸エクストルーダーで加熱混練し、次いで水分含量12重量%以下に乾燥した後、最終多孔性養魚飼料の約6〜約25重量%に相当する量の油脂を含浸させることを特徴とする上記多孔性養魚飼料の製造方法を提供する。」
異議決定日 2001-03-27 
出願番号 特願平1-77522
審決分類 P 1 651・ 531- YA (A23K)
P 1 651・ 113- YA (A23K)
P 1 651・ 531- YA (A23K)
P 1 651・ 534- YA (A23K)
P 1 651・ 121- YA (A23K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 大高 とし子
佐伯 裕子
登録日 1997-05-02 
登録番号 特許第2640533号(P2640533)
権利者 坂本飼料株式会社
発明の名称 多孔性養魚飼料及びその製造方法  
代理人 田淵 権  
代理人 田淵 権  
代理人 平木 祐輔  
代理人 小川 信夫  
代理人 安藤 克則  
代理人 小川 信夫  
代理人 浅村 肇  
代理人 安田 徹夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 小堀 貞文  
代理人 箱田 篤  
代理人 安藤 克則  
代理人 村社 厚夫  
代理人 田淵 権  
代理人 浅村 肇  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 小田嶋 平吾  
代理人 村社 厚夫  
代理人 浅村 肇  
代理人 小田島 平吉  
代理人 小堀 貞文  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 浜野 孝雄  
代理人 森田 哲二  
代理人 大塚 文昭  
代理人 有賀 三幸  
代理人 田淵 権  
代理人 浅村 皓  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中島 俊夫  
代理人 浅村 皓  
代理人 今城 俊夫  
代理人 平木 祐輔  
代理人 高野 登志雄  
代理人 今城 俊夫  
代理人 中村 稔  
代理人 小堀 貞文  
代理人 安藤 克則  
代理人 浅村 皓  
代理人 竹内 英人  
代理人 田淵 権  
代理人 辻 良子  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 藤井 幸喜  
代理人 田淵 権  
代理人 田淵 権  
代理人 八木田 茂  
代理人 竹内 英人  
代理人 田淵 権  
代理人 辻 邦夫  
代理人 中村 稔  
代理人 安田 徹夫  
代理人 田淵 権  

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