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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1044799 |
異議申立番号 | 異議1999-74786 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-04-11 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-21 |
確定日 | 2001-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2908479号「ポリエステル樹脂組成物並びにその製造法」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2908479号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 本件特許第2908479号発明は、平成1年8月30日に出願され、平成11年4月2日にその特許の設定がなされ、その後、日本板硝子株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年8月18日に訂正請求がなされたものである。 [2]訂正の適否についての判断 [2]-1.訂正事項 (1)訂正事項1 本件明細書特許請求の範囲の記載 「1(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に(B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び(C)結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中)を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。 2(B)繊維状強化剤がガラス繊維である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 3(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤が熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 4(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤がエポキシ樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 5(C)顆粒状のガラスフレークの平面粒径が100〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 6(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体である請求項1〜5の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 7(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネートを3〜30重量%含むものである請求項1〜6の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 8請求項1〜7の何れか1項記載の製造法により製造されたポリエステル樹脂組成物及びその成形品。」を、 「1(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂に(B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び(C)結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中)を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。 2(B)繊維状強化剤がガラス繊維である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 3(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤が熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 4(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤がエポキシ樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 5(C)顆粒状のガラスフレークの平面粒径が100〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 6(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネートを3〜30重量%含むものである請求項1〜5の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 7請求項1〜6の何れか1項記載の製造法により製造されたポリエステル樹脂組成物及びその成形品。」と訂正する。 (2)訂正事項2 本件明細書第5頁第13行(本件特許公報第4欄第1行)の「(A)熱可塑性ポリエステル樹脂」を、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂」と訂正する。 (3)訂正事項3 本件明細書第8頁第8行〜第13行(本件特許公報第4欄第48行〜第5欄第2行)の「上記の如き化合物をモノマー成分として、重縮合により生成する熱可塑性ポリエステルは何れも本発明の(A)成分として使用することができ、単独で、又は2種以上混合して使用されるが、好ましくは結晶性ポリアルキレンテレフタレート、更に好ましくは」を削除する。 [2]-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件明細書の請求項1において、「熱可塑性ポリエステル樹脂」を、下位概念の、「ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂」に限定するものである。そして、「ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂」は本件明細書第8頁第13行〜第16行(本件特許公報第5欄第2行〜第5行)や実施例に記載されていたものである。 それ故、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正事項1による特許請求の範囲の記載の訂正に伴って発明の詳細な説明の記載を整合させる訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項2は、訂正事項1について述べた理由と同じ理由により願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1による特許請求の範囲の記載の訂正に伴って発明の詳細な説明の記載を整合させる訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、発明の詳細な説明における記載を削除するものであるから願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 [2]-3.独立特許要件 (1)本件発明 訂正後の本件請求項1〜7に係る発明は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「1(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂に(B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び(C)結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中)を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。(以下「本件第1発明」という。) 2(B)繊維状強化剤がガラス繊維である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。(以下「本件第2発明」という。) 3(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤が熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。(以下「本件第3発明」という。) 4(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤がエポキシ樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。(以下「本件第4発明」という。) 5(C)顆粒状のガラスフレークの平面粒径が100〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。(以下「本件第5発明」という。) 6(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネートを3〜30重量%含むものである請求項1〜5の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。(以下「本件第6発明」という。) 7請求項1〜6の何れか1項記載の製造法により製造されたポリエステル樹脂組成物及びその成形品。」(以下「本件第7発明」という。) そして、本件第1発明は、ポリブチレンテレフタレートの如く結晶性の高い樹脂、ポリエチレンテレフタレートの如くアニーリングにより結晶化の進む樹脂等においては、成形時又はそれ以後の結晶化に伴う収縮性の故に成形品に変形即ち「そり」が著しいという問題があり、その問題を解決する為、従来、繊維状強化剤とマイカ、ガラスフレークなどの板状の充填剤を併用した組成物が提案されているが、必ずしも満足できるものではなく、一層の改良が要求されていたという課題に対して、繊維状強化剤と板状充填剤とを含む上記ポリエステル樹脂の優れた機械的性質を損なうことなく、成形品とした場合に「そり」が少なく、かつ、調製時の加工性、生産性等が改善された樹脂組成物を安価に提供することを目的としてなされたものであって、従来の造粒処理をしていないフレーク状ガラス等を用いた樹脂組成物に比べて、成形品の変形即ち「そり」を大幅に改善することができ、又機械的強度(引張強度)を損なうことなく、むしろ改善されており、しかもペレット調製時の各種の問題即ちガラスフレーク等の詰まり、押し出し不良等が顕著に改善されることにより、生産性が著しく向上し、品質の安定した樹脂組成物を得ることが可能となるという効果を奏するものである。 (2)取消理由の概要 熱可塑性ポリエステル樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体及びポリカーボネートを3〜30重量%含むものが本願出願前周知のものであることを考慮すると、訂正前の本件請求項1〜8に係る発明は、いずれも、刊行物1(特開昭63-225554公報、特許異議申立人日本板硝子株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第2号証)、刊行物2(特開昭54-95654号公報、特許異議申立人日本板硝子株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第3号証)及び特開昭60-177048号公報、特許異議申立人日本板硝子株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第1号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、訂正前の本件請求項1〜8に係る発明の特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである、というものである。 (3)刊行物の記載事項 (イ)上記刊行物1(特開昭63-225554公報、特許異議申立人日本板硝子株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第2号証)について 該刊行物には、 「(1)フレーク状ガラスを結合剤で造粒したことを特徴とする顆粒状のフレーク状ガラス。 (2)結合剤の使用量が、フレーク状ガラス100重量部に対し、0.2重量部以上である特許請求の範囲第1項に記載の顆粒状のフレーク状ガラス。 (3)結合剤の使用量が、フレーク状ガラス100重量部に対し0.5〜10重量部である特許請求の範囲第2項に記載の顆粒状のフレーク状ガラス。 (4)結合剤が熱可塑性樹脂である特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の顆粒状のフレーク状ガラス。 (5)結合剤はカップリング剤を含む特許請求の範囲第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の顆粒状のフレーク状ガラス。 (6)顆粒は44μm篩残で5000μm篩通過が90重量%以上であるような大きさである特許請求の範囲第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の顆粒状のフレーク状ガラス。 (7)フレーク状ガラスは、熱可塑性樹脂補強用フレーク状ガラスである特許請求の範囲第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の顆粒状のフレーク状ガラス。」(特許請求の範囲)、 「本発明は顆粒状のフレーク状ガラスに係り、特にその包装体の開封時の飛散等の問題を解決し、また流動性を向上させることにより、複合材への分散性を改善した顆粒状のフレーク状ガラスに関する。」(第1頁右下欄第11行〜第15行)、 「本発明は上記従来の問題点を解決し、特に可塑性樹脂等の補強用として使用されるフレーク状ガラスであって、包装を開封して、ホッパー等に投入する際に殆ど飛散することがなく、また流動性も良好なフレーク状ガラスを提供するものである。」(第2頁左下欄第8行〜第13行)、 「本発明の顆粒状のフレーク状ガラスは、フレーク状ガラスを結合剤で造粒して顆粒状としたものである。」(第2頁左下欄第14行〜第16行)、 「使用し得る結合剤の具体例としては、……、(不)飽和ポリエステル、ナイロン、エポキシレジン等の縮重合体……等が挙げられる。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第7行)、 「フレーク状ガラスとしては、通常提供されているフレーク状ガラスを適用することができ、例えば平均厚さ0.5〜7.0μm、平均粒径5〜1000μm、アスペクト比2〜1000程度のものが好適である。」(第3頁左下欄末行〜同頁右下欄第4行)、 「このような本発明の顆粒状のフレーク状ガラスは、……、飽和ポリエステル、ポリカーボネート、……などの熱可塑性樹脂、……、不飽和ポリエステル樹脂、……等の補強材、充填材として極めて有効である。これらのうちでも、特に本発明の顆粒状のフレーク状ガラスは熱可塑性樹脂の補強材として最適である。本発明の顆粒状のフレーク状ガラスを含有する熱可塑性樹脂を押出成形、インジェクション成形した場合、フレークは樹脂マトリックス中に均一に分散される。」(第4頁左上欄下から第3行〜同頁右上欄第11行)、 「本発明のフレーク状ガラスは、鱗片状ガラスが結合剤にて顆粒状に造粒されたものであり、極めて飛散しにくい。また、顆粒状とすることにより、圧縮度や均一性が向上し、流動性が大幅に改善され、ホッパーやオリフィス内でのブリッジが防止される。しかも、このように流動性が良いことから、マトリックス樹脂中への分散性も向上し、得られる複合材の強度等の特性が著しく改善される。」(第4頁右上欄第13行〜同頁左下欄第1行)、 「本発明の顆粒状のッフレーク状ガラスは、使用時に包装体等から取り出す際などに殆ど飛散しない。このため、作業環境が改善され、取り扱い性も良好となり、また、飛散による歩留り低下の問題も解決される。また、顆粒状とすることにより、圧縮度や均一性が向上し、流動性が大幅に改善され、ホッパーやオリフィス内でのブリッジが防止される。しかも、このように流通性が良いことから、マトリックス樹脂中への分散性も向上し、得られる複合材の強度等の特性が著しく改善される。」(第5頁右上欄第4行〜第15行)が記載されている。 (ロ)刊行物2(特開昭54-95654号公報、特許異議申立人日本板硝子株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第3号証)について 該刊行物には、 「1.芳香族ポリエステル100重量部当り、溶解度パラメーター(δ)が9〜11の範囲にあり、且つ分子量が1000以下の化合物の少くとも一種0.5〜25重量部を配合してなるポリエステル組成物。 2.芳香族ポリエステル100重量部当り、ガラス繊維5〜100重量部を配合することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のポリエステル組成物。 3.芳香族ポリエステル100重量部当り、非繊維状の無機固体物5〜150重量部を配合することを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項記載のポリエステル組成物。」(特許請求の範囲)、 「本発明者は、芳香族ポリエステルの衝撃強度を向上すべく、更には衝撃強度、タップ強度、そり等の特性の良くバランスした芳香族ポリエステル樹脂を得るべく鋭意研究した結果、芳香族ポリエステルの衝撃強度向上には溶解度パラメーター(δ)が9〜11の範囲にあり、且つ分子量が1000以下の化合物が優れた効果を奏すること、更には該化合物と繊維状強化材及び/又は非繊維状無機固体物とを組合せると、衝撃強度のより一層の向上、更には熱変形温度、タップ強度、そり等の特性が改善されることを知見し、本発明に到達したものである。」(第2頁左上欄第12行〜同頁右上欄第3行)、 「1.芳香族ポリエステル100重量部当り、溶解度パラメーター(δ)が9〜11の範囲にあり、且つ分子量が1000以下の化合物の少くとも一種0.5〜25重量部を配合してなるポリエステル組成物、並びに 2.該ポリエステル組成物に更にガラス繊維5〜100重量部及び/又は非繊維状無機固体物5〜150重量部を配合してなるポリエステル組成物に関する。」(第2頁右上欄第5行〜第13行)、 「本発明において用いられる芳香族ポリエステルは……。これらの中で結晶化速度の速い……、ポリエチレンテレフタレート等が好ましい。」(第2頁右下欄第3行〜第13行)、 『本発明において、前記化合物を非繊維状無機固体物と併用すると、衝撃強度の向上とともにタップ強度も向上し、更に熱変形温度も高く、かつ成形品に「そり」を生じないポリエステル組成物が得られる。』(第3頁右下欄第6行〜第10行)、 「本発明において用いられる非繊維状無機固体物としては、タルク、………、粉末ガラス、……、ガラスフレーク、……等が例示される。」(第3頁右下欄第15行〜第4頁左上欄第1行)、 「また該非繊維状無機固体物はその表面をカップリング剤、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤等またはエポキシなどで処理してから用いても良い。」(第4頁左上欄第7行〜第11行)、 「本発明のポリエステル組成物は剛性特に衝撃強度に優れ、また優れたタップ強度、高い熱変形温度及び成形品にそりを生じないなどのバランスの良くとれた特性を有し、機械器具、電機製品あるいは自動車部品等の用途に有用である。」(第4頁右上欄第12行〜16行) が記載されている。 (ハ)刊行物3(特開昭60-177048号公報、特許異議申立人日本板硝子株式会社が特許異議申立証拠として提出した甲第1号証)について 該刊行物には、 「1)(a)ポリプロピレン樹脂、(b)ガラス繊維および(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルクからなるポリオレフィン樹脂組成物。 2)(a)ポリプロピレン樹脂40〜92重量%、(b)ガラス繊維3〜40重量%および(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルク5〜50重量%を配合してなる特許請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。 3)(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルクの平均粒子径が50〜3000μである特許請求の範囲第1項記載の樹脂組成物。 4)(A)(a)ポリプロピレン樹脂、(b)ガラス繊維および(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルクよりなる樹脂組成物100重量部および(B)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン0.1〜10重量部を配合してなるポリオレフィン樹脂組成物。 5)(A)樹脂組成物の配合量が(a)ポリプロピレン樹脂40〜92重量%、(b)ガラス繊維3〜40重量%および(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルク5〜50重量%である特許請求の範囲第4項記載の組成物。 6)(A)樹脂組成物中の(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルクの平均粒子径が50〜3000μである特許請求の範囲第4項記載の組成物。」(特許請求の範囲)、 「本発明はポリオレフィン樹脂組成物に関し、詳しくはガラス繊維の破損を抑え、タルクの均一分散を簡便な混練方法で可能とし、しかも機械的強度、特に曲げ弾性率などを向上させたポリオレフィン樹脂組成物に関する。」(第1頁右下欄第16行〜末行)、 「そこで本発明者らは一段階混練でタルクの分散が均一で機械的強度の向上したポリオレフィン樹脂を開発すべく研究した結果、ポリプロピレン樹脂に特定の処理を施したタルクおよびガラス繊維を配合することにより、またこれにさらに変性ポリオレフィンを配合することにより、目的とする樹脂組成物が得られることを見い出し、これに基づいて本発明を完成した。」(第2頁左上欄第17行〜同頁右上欄第4行)、 「本発明は、(a)ポリプロピレン樹脂(以下、(a)成分という。)、(b)ガラス繊維(以下、(b)成分という。)および(c)平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルク(以下、(c)成分という。)からなるポリオレフィン樹脂組成物(以下、第1発明という。)」(第2頁右上欄第5行〜第10行)、 「第1発明および第2発明において、(a)成分であるポリプロピレン樹脂は本発明の樹脂組成物のベースとなるものであって、種々のポリプロピレン樹脂を用いることができる。」(第2頁右上欄第19行〜同頁左下欄第2行)、 「(b)成分のガラス繊維としては繊維長1〜10mmのチョップドストランドであって、無アルカリガラスが好ましく用いられる。特にシラン系化合物を用いて表面処理したものが好適である。」(第2頁左下欄第16行〜第19行)、 「(b)成分の配合量は3〜40重量%が適当であり、好ましくは5〜30重量%である。(b)成分の配合量が3重量%未満であると、成形品に対するガラス繊維の補強効果が小さく、また40重量%を越えると、成形時の流動性や成形性に問題が生じ、好ましくない。」(第2頁右下欄第14行〜第19行)、 「本発明は(c)成分として平均粒子径0.5〜10μのタルクをポリエチレンで被覆した顆粒状タルクを使用することに特色があり、このタルクの使用によってガラス繊維の破損を防ぐような低剪断混練によっても樹脂組成物中にタルクを均一に分散することができ、機械的強度の向上とそりの改善を図ることができるのである。」(第2頁右下欄末行〜第3頁左上欄第6行)、 「顆粒状タルクを製造するには、所定量のタルクとポリエチレンおよび必要により後記するような分散剤、カップリング剤などを加え、攪拌槽などで攪拌して流動状態とする。さらに剪断、混合し、その際に発生する攪拌熱により混合物は180〜210℃程度の温度となるので、これによりポリエチレンを微細化、溶融させた後、0〜15℃の冷却槽に移送して顆粒状タルクを得る。この顆粒状タルクは平均粒子径が50μ〜3mmであり」(第3頁左上欄第18行〜同頁右上欄第6行)、 「本発明の樹脂組成物はいずれもタルクの分散が均一であり、しかも混練を一段の低剪断で行なうことが可能である。そのため、ガラス繊維の破損が少なく、かつ各成分は熱劣化を受けず、機械的強度、とりわけ曲げ弾性率などが改善されたものが得られる。特に、第2発明の樹脂組成物において(c)成分としてカップリング剤で処理した顆粒状タルクを用いた場合、該タルクとポリプロピレン樹脂の結合が向上し、機械的強度が一段とすぐれたものが得られる。したがって、本発明の樹脂組成物は自動車、弱電分野の部品の製造に有用であり、たとえばカーヒーター、カークーラーのケース;エアークリーナーのケース;冷蔵庫、掃除機等の外枠などの製造に用いられる。」(第4頁右上欄第14行〜同頁左下欄第8行)、 「製造例1 高密度ポリエチレン(MI10g/10分)25重量部と平均粒子径1.5μのタルク75重量部を攪拌混合し、攪拌熱により溶融させた後、常温の槽へ投入し、平均粒子径700μ、5mm以上の粗大粒子が1.5重量%である顆粒状タルクAを得た。 製造例2 高密度ポリエチレン(MI7g/10分)25重量部、平均粒子径1.5μのタルク75重量部およびγ-アミノプロピルトリエトキシシラン1重量部を攪拌混合し、攪拌熱により溶融させた後、常温の槽へ投入して平均粒子径500μで5mm以上の粗大粒子が0.5重量%である顆粒状タルクBを得た。 製造例3 低密度ポリエチレン(MI10g/10分)20重量部、平均粒子径1.5μのタルク80重量部(「780重量部」と記載されているが「80重量部」の誤記であると認められる。)およびステアリン酸マグネシウム1重量部を攪拌混合し、攪拌熱により溶融させた後、常温の槽へ投入して平均粒子径1mmで5mm以上の粗大粒子が3重量%である顆粒状タルクCを得た。」(第4頁左下欄第10行〜同頁右下欄第10行) が記載されている。 (4)対比・判断 (イ)本件第1発明について 本件第1発明と上記刊行物1〜3に記載された発明を対比する。 上記刊行物1には、熱可塑性ポリエステル樹脂に強化剤として結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレークを配合することは記載されているものの、本件第1発明のように繊維状強化剤と顆粒状のガラスフレークを併用したものを配合することについては全く記載されておらず、また、示唆もされていない。また、上記刊行物1に記載された発明は、包装体の開封時の飛散等の問題を解決し、また流動性を向上させることにより、複合材への分散性を改善することを目的とするものであって、本件発明が解決しようとする課題とは異なるものである。 また、上記刊行物2には、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂にガラス繊維とガラスフレーク等の非繊維状無機固体物を併用したものを配合することによって衝撃強度を向上させ、更には熱変形温度、タップ強度、そり等の特性を改善することが記載されているものの、上記刊行物2に記載された発明は、特定の溶解度パラメーターと特定の分子量を持つ化合物の配合を前提とするものであって、その効果は特定の溶解度パラメーターと特定の分子量を持つ化合物の配合することに基づくものであって、この点で本件第1発明とは全く異なる。 さらに、上記刊行物3には、ポリプロピレンにガラス繊維と顆粒状タルクを併用したものを配合することによってガラス繊維の破損を抑え、タルクの均一分散を簡便な混練方法で可能とし、しかも機械的強度の向上とそりの改善を図ることが記載されているものの、上記刊行物3に記載された発明は、対象となる樹脂がポリエチレンやポリ塩化ビニルと共に汎用プラスチックとして知られているポリプロピレンであって、本件第1発明における、高強度、高耐熱性等が要求される各種機構部品等に用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂と相違している点、ガラス繊維と併用する充填剤が顆粒状タルクであって、本件第1発明における顆粒状ガラスフレークと相違している点、及び、上記刊行物3に上記刊行物3に記載された発明が「そり」の改善をも図るものであることが記載されているものの、上記刊行物3に記載された発明に係る樹脂組成物の用途として上記刊行物3に「冷蔵庫、掃除機等の外枠」も例示されており、また、その具体的実施例で「そり」の評価すらされていないのに対して、本件第1発明は用途として精密な電気・電子部品も例示されていて、その具体的実施例で「そり」の評価もなされていることからみて、上記刊行物3に記載されている「そり」の内容は、本件第1発明が対象とする「そり」と、要求されるレベルに差があるものであると認められる点で、本件第1発明と異なる。 してみると、上記刊行物1〜3には、本件第一発明における、ポリブチレンテレフタレートの如く結晶性の高い樹脂、ポリエチレンテレフタレートの如くアニーリングにより結晶化の進む樹脂の如き、成形時又はそれ以後の結晶化に伴う収縮性の故に特に成形品に変形即ち「そり」が著しい熱可塑性ポリエステル樹脂に特有の課題についての認識、課題の解決手段、並びに奏する効果についての記載は全く存在せず、それぞれ本件第1発明の構成の一部を開示するに留まるものである。 したがって、本件第1発明は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。まして、本件第1発明は、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明、又は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。 (ロ)本件第2発明〜第7発明について 本件第2発明〜第7発明はいずれも本件第1発明を引用して記載されているものである。 そして、本件第1発明が、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないし、まして、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明、又は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないものであるから、本件第2発明〜第7発明も、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないし、まして、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明、又は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。 (5)まとめ よって、訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとすることができない。 [2]-4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号、以下「平成六年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第百二十条の四第三項において準用する平成六年改正法による改正前の特許法第百二十6条第1項ただし書き、第二項及び第三項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 [3]特許異議申立てについての判断 [3]-1.特許異議申立理由の概要 特許異議申立人日本板硝子株式会社は、特許異議証拠として、特開昭60-177048号公報(「刊行物3」)、特開昭63-225554号公報(「刊行物1」)、特開昭54-95654号公報(「刊行物2」)を提出して、訂正前の本件請求項1に係る発明は、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明、又は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、訂正前の本件請求項2〜8に係る発明は、いずれも、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件請求項1〜8に係る発明は、いずれも、特許法第29条第29条第2項の規定に違反してされたものであって、取り消されるべきものである、と主張している。 [3]-2.刊行物の記載事項 上記刊行物1〜3には上記[2]-3の(3)の欄で述べた事項が記載している。 [3]-3.対比・判断 本件第1発明が、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明、又は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないものであり、また、本件第2発明〜本件第7発明が、いずれも、上記刊行物3に記載された発明、又は、上記刊行物3及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないものであることは、上記[2]-3の(4)の欄で述べたとおりである。 [3]-4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人日本板硝子株式会社が提出した特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件第1発明〜本件第7発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件第1発明〜本件第7発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ポリエステル樹脂組成物並びにその製造法 (57)【特許請求の範囲】 1(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂に (B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び (C)結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中) を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。 2(B)繊維状強化剤がガラス繊維である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 3(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤が熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 4(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤がエポキシ樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 5(C)顆粒状のガラスフレークの平均粒径が100〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 6(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネートを3〜30重量%含むものである請求項1〜5の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 7請求項1〜6の何れか1項記載の製造法により製造されたポリエステル樹脂組成物及びその成形品。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ポリエステル樹脂組成物及びその製造法に関するものである。更に詳しくはポリエステル樹脂の優れた機械的性質を損なうことなく、成形品とした場合にそりが少なく、かつ、調製時の加工性、生産性等が改善された樹脂組成物を安価に提供するものである。 〔従来の技術とその課題〕 熱可塑性ポリエステル樹脂、例えばポリアルキレンテレフタレート樹脂等は機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れている為、エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子機器等の広汎な用途に使用されている。 かかる熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独でも種々の成形品に用いられているが、利用分野によってはその性質、特に機械的性質を改善する目的で、様々な強化剤、添加剤を配合することが行われてきた。そして、高い機械的強度、剛性の要求される分野においては、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維状の強化剤を用いることが周知である。 しかしながら、繊維状強化剤を含む熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的強度、剛性等は高いが、射出成形等の成形加工時に成形品に収縮率の異方性があることから、成形品に変形即ち「そり」が生じるという問題がある。そしてこのような変形はポリブチレンテレフタレートの如く結晶性の高い樹脂、ポリエチレンテレフタレートの如くアニーリングにより結晶化の進む樹脂等においては、成形時又はそれ以後の結晶化に伴う収縮性の故に特に著しい。 かかる問題を解決する為、前述の繊維状強化剤とマイカ、ガラスフレークなどの板状充填剤を併用した組成物が提案されているが、必ずしも満足できるものではなく、一層の改良が要求されていた。 更にこれら繊維状強化剤とマイカ、ガラスフレーク等とを併用した組成物を調製する際、押出機へのフィード部での詰まり、食い込み不良等によるサージング、ストランド切れ等の加工上の不都合、又、嵩密度が低いことに起因すると思われる単位時間当たりの押出量が少ない等種々生産上の問題があり、合わせてその解決が切望されていた。 〔課題を解決するための手段〕 本発明者等は、かかる要求に鑑み、繊維状強化剤と板状充填剤とを含むポリエステル樹脂の優れた機械的性質を損なうことなく、変形性を改善し、又、組成物調製時の問題点を改善することを目的として鋭意検討を重ねた結果、板状充填剤としてガラスフレークを顆粒状にしたものを混合することが上記目的を果たすのに極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。 即ち本発明は、 (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂に (B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び (C)結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中) を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物並びにその製造法に関するものである。 以下、順次本発明の組成物の構成成分について詳しく説明する。 先ず本発明に用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂(A)とは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合或いはこれら3成分混合物の重縮合等によって得られるポリエステルであり、ホモポリエステル、コポリエステルの何れに対しても本発明の効果がある。 ここで用いられるジカルボン酸化合物の例を示せば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸の如き公知のジカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等である。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、例えばジメチルエステルの如き低級アルコールエステルの形で重合に使用することも可能である。これは2種以上が使用されることもある。 次に本発明のポリエステルを構成するジヒドロキシ化合物の例を示せば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールAの如きジヒドロキシ化合物、ポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等であり、1種又は2種以上を混合使用することができる。 また、オキシカルボン酸の例を示せば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。また、これら化合物のエステル形成可能な誘導体も使用できる。本発明においては、これら化合物の1種又は2種以上が用いられる。 また、これらの他に三官能性モノマー、即ちトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を少量併用した分岐又は架橋構造を有するポリエステルであってもよい。 本発明では、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体が使用される。 又この熱可塑性ポリエステル樹脂(A)は場合により30重量%以下の他の熱可塑性樹脂、例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、フッ素樹脂、アクリル樹脂等を含有してもよく、特に非晶性熱可塑性樹脂を併用する事により、変形量は更に小さくなり、目的とする用途によっては好ましい場合もある。特に、ポリカーボネート、ABS樹脂、フェノキシ樹脂からなる1種又は2種以上のものが好適である。 次に、本発明に用いられる繊維状強化剤(B)としては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ホイスカー、金属繊維、シリコンカーバイト繊維、アスベスト繊維、ウオラストナイト等の鉱物繊維、各種有機繊維等が挙げられるが、特に限定はなく、強化、導電性付与、摩擦特性改良、難燃性向上等種々の目的にあわせて適宜用いられる。 又、強化剤(B)の繊維径、長さ等についても任意であり、要求される機械的性質、変形性等性能に応じ適宜選択して用いればよい。通常は、直径1μm以上、長さ15μm以上、好ましくは直径3〜20μm、長さ50μm以上のガラス繊維が好適である。これらの繊維状強化剤(B)の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。この例を示せば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物である。これらの化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は組成物調製の際同時に添加してもよい。 本発明において用いられる繊維状強化剤(B)の配合量は組成物全量中3〜65重量%であり、好ましくは5〜50重量%である。3重量%未満では所望の効果が得られず、65重量%を越えると成形が困難になるので好ましくない。 又、併用される上記官能性表面処理剤の使用量は繊維状強化剤に対し、0〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。 次に本発明の組成物の特徴は、前記繊維状強化剤(B)に、更に結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク(C)を配合することにある。 前述の如く、変形、そりに関して、従来から提案されている繊維状強化剤とガラスフレーク、マイカ等板状充填剤とを併用して用いることにより一応の効果を得ることができるが、未だ十分でなく、又その組成物の調製時種々の問題があり、特に強化剤を多量に使用する際、より加工上のトラブルが頻発し、生産性が著しく阻害され問題であった。ところが意外にも結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレークを用いることにより、従来の顆粒状に接着していないガラスフレークを用いる場合に比べて分散性がよく押出混練時に破砕を生じないためか、変形、そりが大幅に改善され、かつ飛散、ブリッヂの形成等、加工上の問題も顕著に改善できることが判明した。 本発明で使用される顆粒状のガラスフレーク(C)とは、平均厚さ0.5〜7μm、平均粒径5〜1000μmのガラスフレークを、結合剤で互いに接着、造粒して長径50〜5000μmの顆粒状としたものである。粒径は小さすぎると本発明の目的を達成することができず、又逆に大きすぎるとマトリックス樹脂への均一分散性が低下する。本発明において、顆粒状のガラスフレーク(C)は、平均粒径が100〜2000μm好ましくは300〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものであることが好ましい。又、結合剤としては、ガラスフレークを互いに接着できるものであれば特に制限はなく、マトリックス樹脂に対して悪影響を及ぼすことのないものを選定すればよい。使用しうる結合剤の具体例としては、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、(酸変性)ポリエチレン、(酸変性)ポリプロピレン等のオレフィンの付加重合体及びこれらの共重合体、ポリウレタン、ポリ尿素などの重付加反応体、不飽和ポリエステル、ナイロン、エポキシ樹脂等の縮重合体、ナイロン6、ポリエチルオキサゾリン等の開環重合体、尿素ホルマリン樹脂等の付加縮合体、エポキシシラン等が挙げられる。好ましくは熱可塑性樹脂もしくはエポキシ樹脂である。 これら結合剤を用いて顆粒状のガラスフレークを製造する方法は任意であるが、例えば混合機等を用い、適当な有機溶剤に溶解させた結合剤溶液にフレーク状ガラスを添加し、流動させつつ攪拌混合後、乾燥することにより顆粒状のガラスフレークが得られる。 又、ガラスフレーク(C)は、使用にあたり、マトリックス樹脂との接着力の増大及び均一分散化のために、カップリング剤で表面処理されていてもよい。表面処理は、ガラスフレークの造粒の際、同時に行ってもよく又、組成物調製時、カップリング剤を添加してもよい。かかる目的で用いられるカップリング剤はエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、ジルコニア系化合物等いずれを用いても良いが、好ましくはエポキシ系化合物あるいはシラン系化合物を用いるのが好適である。 本発明で用いられる顆粒状のガラスフレーク(C)の配合量は、組成物全量中、3〜65重量%であり、好ましくは、5〜50重量%(但し、B+C成分が全組成物に対し65重量%を越えない範囲)である。3重量%未満では所望の効果が得られず、65重量%を越えると成形が困難になるので好ましくない。 本発明組成物には、更にその目的に応じ所望の特性を付与するため、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等に添加される公知の物質、すなわち、(C)成分以外の粉粒状や板状の無機充填剤、酸化防止剤や耐熱安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤及び結晶化促進剤、結晶核剤等を配合することも勿論可能である。 次に本発明の組成物の調製は、従来の強化充填剤入樹脂の調製法として一般に用いられる方法により容易に調製される。即ち、繊維状物質としては適当な寸法に収束切断されたチョップドストランドあるいはロービング又はフィラメント状等のものを何れも定法通り使用出来、各成分を同時に混合し、押出機により練込み押出しても、従来の如き、ガラスフレークの顕著な破砕、細粉化の生じていない組成物ペレットを調製することができる。 しかし勿論、繊維状強化剤(B)及び顆粒状のガラスフレーク(C)を押出機内でポリエステル樹脂(A)が溶融した以降に添加し混練してもよく、かかる2段添加法の場合も本発明の方法によればその作業性が顕著に改善され、更に一層、繊維状強化剤及び顆粒状のガラスフレークの押出機内での破砕が少なく、従って機械的性質が高く、かつ、変形性が良好に保持される。 〔実施例〕 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 尚、以下の例に示した特性評価の測定法は次の通りである。 ▲1▼変形量の測定 80mm角(サイド1点ゲートを有する)の平板状試験片(厚さ2mm)を成形し、試験片を定盤の上に置いて試験片の変形部のうちの最大部(定盤と試験片との隙間が最大の所)を変形量として測定した。 ▲2▼引張強度 ASTM D 638に準じて測定 ▲3▼押出加工性(組成物ペレット調製時の所見) 内径40mmの押出機を用いて、ポリエステル樹脂とガラス繊維及び/又は(顆粒状)ガラスフレークとの混合物を押出して、押出機へのフィード状況(ガラス繊維、ガラスフレーク等ホッパーでの付着、詰り)、食い込み状況及び押出機を出てからの状況(ストランド切れ、サージング現象)等を目視観察にて総合的に4段階で評価した。 実施例1〜5 表1に示す如く、ポリブチレンテレフタレート単独あるいは、これと場合によりポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートとの混合樹脂とガラス繊維及び顆粒状ガラスフレークを表1の配合量に成るように予め混合し、これを押出機に12kg/Hrでフィードして溶融混練しペレット状の組成物を得た。次いで、このペレットを用い、射出成形により各種試験片を作成し前記の評価を行った。 比較例1、2 表1に示す如く、ポリブチレンテレフタレート及びガラス繊維又は顆粒状ガラスフレークを用いて実施例と同様の方法にてペレットを調製し、前記の評価を行った。結果を表1に示す。 比較例3〜7 表1に示す如く、ポリブチレンテレフタレート単独、あるいは、場合によりこれとポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートとの混合樹脂とガラス繊維及び顆粒状にしていないガラスフレークを表1の配合量に成るように混合し、これを押出機に5kg/Hrでフィードして溶融混練してペレット状の組成物を得た。次いで、このペレットを用い、射出成形により各種試験片を作成し前記の評価を行った(当初、フィード量を実施例と同様、12kg/Hrでフィードしたが、ガラス繊維およびガラスフレークがフィーダーと押出機の結合部に詰まり、押出不能となった為、フィード量を1/2以下に下げてペレット状の組成物を得た)。結果を表1に示す。 〔発明の効果〕 以上の説明及び実施例により明らかなごとく、ポリエステル樹脂に繊維状強化剤と顆粒状のガラスフレークを配合して成る本発明のポリエステル樹脂組成物は、従来の造粒処理をしていないフレーク状ガラス等を用いた樹脂組成物に比べて、成形品の変形即ち「そり」を大幅に改善することができ、又機械的強度(引張強度)を損なうことなく、むしろ改善されており、しかもペレット調製時の各種の問題即ちガラスフレーク等の詰まり、押し出し不良等が顕著に改善されることにより、生産性が著しく向上し、品質の安定した樹脂組成物を得ることが可能となった。 本発明の組成物は、自動車、電気機器、一般機器等の外装部品、構造部品、機構部品等に好適に用いられる。即ち、その具体的な使用例を示せば、自動車のフェンダー、フューエルリッド、ルーバー、ランプハウジング、アウタードアーハンドル等の外装部品、オーディオ、ビデオテープレコーダー、ステレオ等の構造部品(例えばシャーシー)として、又、ギヤ、カム、レバー、ガイドステー、クラッチ、ローラー等の機構部品として有用なものである。又、コネクター、スイッチ、リレー、コイルボビン、キーステム、シャーシ等の電気、電子部品、その他カメラ、ラジオ、ファクシミリ、複写機、コンピューター等の各種OA機器、ICケース、コンデンサーケース、モーター部品等の多岐にわたる用途においても、好ましく用いられるものである。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2908478号発明の明細書を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりにすなわち、 (a)本件明細書特許請求の範囲の記載 「1(A)熱可塑性ポリエステル樹脂に(B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び(C)結合剤で造粒した穎粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中)を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。 2(B)繊維状強化剤がガラス繊維である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 3(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤が熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 4(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤がエポキシ樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 5(C)顆粒状のガラスフレークの平面粒径が100〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 6(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体である請求項1〜5の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 7(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネートを3〜30重量%含むものである請求項1〜6の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 8請求項1〜7の何れか1項記載の製造法により製造されたポリエステル樹脂組成物及びその成形品。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「1(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂に(B)繊維状強化剤3〜65重量%(組成物中)及び(C)結合剤で造粒した顆粒状のガラスフレーク3〜65重量%(組成物中)を配合し溶融混練することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造法。 2(B)繊維状強化剤がガラス繊維である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 3(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤が熱可塑性樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 4(C)顆粒状のガラスフレークの結合剤がエポキシ樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 5(C)顆粒状のガラスフレークの平面粒径が100〜2000μmであり、かつ最大粒径が5000μmを越えないものである請求項1記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 6(A)熱可塑性ポリエステル樹脂が、ポリカーボネートを3〜30重量%含むものである請求項1〜5の何れか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造法。 7請求項1〜6の何れか1項記載の製造法により製造されたポリエステル樹脂組成物及びその成形品。」と訂正する。 (b)本件明細書第5頁第13行(本件特許公報第4欄第1行)の「(A)熱可塑性ポリエステル樹脂」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び/又はポリエチレンテレフタレート樹脂、あるいはこれらを60重量%以上含有する共重合体より選ばれる熱可塑性ポリエステル樹脂」と訂正する。 (c)本件明細書第8頁第8行〜第13行(本件特許公報第4欄第48行〜第5欄第2行)の「上記の如き化合物をモノマー成分として、重縮合により生成する熱可塑性ポリエステルは何れも本発明の(A)成分として使用することができ、単独で、又は2種以上混合して使用されるが、好ましくは結晶性ポリアルキレンテレフタレート、更に好ましくは」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、削除する。 |
異議決定日 | 2001-03-07 |
出願番号 | 特願平1-224147 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C08L)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大熊 幸治 |
特許庁審判長 |
三浦 均 |
特許庁審判官 |
中島 次一 船岡 嘉彦 |
登録日 | 1999-04-02 |
登録番号 | 特許第2908479号(P2908479) |
権利者 | ポリプラスチックス株式会社 |
発明の名称 | ポリエステル樹脂組成物並びにその製造法 |
代理人 | 溝部 孝彦 |
代理人 | 古谷 聡 |
代理人 | 持田 信二 |
代理人 | 古谷 聡 |
代理人 | 溝部 孝彦 |
代理人 | 古谷 馨 |
代理人 | 古谷 馨 |
代理人 | 持田 信二 |
代理人 | 渡部 敏彦 |