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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1044916
異議申立番号 異議2000-73647  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-05-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-26 
確定日 2001-05-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3025901号「硝酸塩の圧縮造粒方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3025901号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
特許3025901号の請求項1〜3に係る発明は、平成2年10月3日に特許出願され、平成12年1月28日に特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年3月6日に訂正請求がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
訂正事項a.
特許請求の範囲を以下のとおり訂正する。
「1.硝酸塩の圧縮造粒に用いるブリケッティングマシーンの圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの容積が、中央部に設けられたポケットの容積よりも小さく、かつ前記端部に設けられたポケットの深さが中央部のポケットの深さよりも浅いことを特徴とする硝酸塩の圧縮造粒方法。
2.前記圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの開ロ面積が中央部のポケットの開□面積よりも小さくないことを特徴とする請求項1に記載の硝酸塩の圧縮造粒方法。
3.前記硝酸塩が硝酸銀である請求項1又は2に記載の硝酸塩の圧縮造粒方法。」と訂正する。
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1については、ポケットの容積に更なる限定を付加するものであり、また、請求項2については、ポケットの開口面積について更なる限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、これらは、本件特許公報第2頁第3欄第36〜43行、第2頁第4欄第26〜28行及び第3頁表1に記載されているものであり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.むすび
以上のとおり、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書および第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)特許異議申立について
ア.訂正後の請求項1〜3に係る発明は、前記訂正事項aに記載されるとおりである。、
イ.申立理由の概要
本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
ウ.当審の判断
甲第1号証には、「二つのロールタイヤの互いに対向する多数ポケットを、該ロールの両端側に位置するポケットが中央方向に位置するポケットより小さくなるように設けてなる粉体成形用ロールタイヤ。」が記載されている。
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、多数のポケットを有する粉体成形用ロールタイヤを用いて粉体を圧縮造粒方法で一致し、以下の点で相違する。
相違点:
本件請求項1に係る発明では、「圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの容積が、中央部に設けられたポケットの容積よりも小さく、かつ前記端部に設けられたポケットの深さが中央部のポケットの深さよりも浅い」のに対し、甲第1号証では、ポケットに関して、端部の方が中央部よりもポケット面積が小さいとの記載はあるものの、前記相違点については、記載がない点。
この点に関し、甲第2号証には、ブリケッティングについての一般的な説明が記載されているにとどまり、前記相違点については、記載もなければ示唆もない。そして、本件請求項1に係る発明は、この構成によって、明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件請求項2〜3に係る発明は、 請求項1と同様に、「圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの容積が、中央部に設けられたポケットの容積よりも小さく、かつ前記端部に設けられたポケットの深さが中央部のポケットの深さよりも浅いこと」を必須の構成として備えている発明であるから、請求項1と同様の理由により、甲第1〜2号証の記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜3に係る発明の特許は、特許異議申立の理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、請求項1〜3に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
硝酸塩の圧縮造流方法
(57)【特許請求の範囲】
(1) 硝酸塩の圧縮造粒に用いるブリケッティングマシーンの圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの容積が、中央部に設けられたポケットの容積よりも小さく、かつ前記端部に設けられたポケットの深さが中央部のポケットの深さよりも浅いことを特徴とする硝酸塩の圧縮造粒方法。
(2) 前記圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの開口面積が中央部のポケットの開口面積よりも小さくないことを特徴とする請求項1に記載の硝酸塩の圧縮造粒方法。
(3) 前記硝酸塩が硝酸銀である請求項1又は2に記載の硝酸塩の圧縮造粒方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は硝酸塩微粒片原料を用いる乾式圧縮成形法に関し、特に硝酸銀ブリケット及びその製造方法に関する。
〔発明の背景〕
硝酸塩は一般に不安定であり、アルカリ金属塩は酸素を放って亜硝酸塩に変り、また重金属塩は酸素及び窒素を遊離して金属酸化物或いは金属を生成する。更に有機物や酸化され易い金属と混在すると爆発性混合物を作る。
従って硝酸塩はその製造工程中及び保管中において品質保持及び危険防止の面から充分な注意が必要であり、特に重金属硝酸塩の場合には更に厳重な注意が必要である。
重金属硝酸塩の代表例として硝酸銀が挙げられるが写真用、医薬品その他として甚だ重要である。
硝酸銀は一般にその水溶液中からの晶析によって得られ、その純度を重視する場合には大結晶として析出させることが多い。この大結晶は使い勝手のよい適当な大きさの小片にまで砕かれ、洗浄し、遠心脱水し、遮光容器に収納し保管される。或は析出条件を整え撹拌しながら適当な大きさの結晶片に止めて取出される。
このように適当な大きさに調えられた硝酸銀結晶片は遮光容器に収納しておくと、保管中に固結するのが常であって、その防止には調温調湿管理にコストを必要とし、また固結した結晶片塊は使用時取出しに解砕の手数を要する。また解砕及び使用時の投入に際しては、結晶片が砕け、弾け飛んだ微結晶片は人体に障害を与え、作業環境を汚損し、更に少量使用の際には秤量の精度を失う。
更に消防法において、硝酸銀結晶は規制の対象になっており、製造及び取扱い施設、保管,運搬の全般に亘り、危険物管理に関する法に則った処置が必要であって、安全で且つ効率的な硝酸銀薬品形態が求められる。
尚硝酸銀に限らず硝酸塩についても一般的に前記の配慮が必要である。
前記のような配慮から硝酸塩にはブリケット形態に圧縮造粒することが行われる。
圧縮造粒にはブリケッティングマシーンが用いられるが、ブリケット形状に対応する互いに整合する窪んだポケットを多数設けた相対侍する圧縮ローラのクリアランスに原料をホッパから供給する際、原料のローラ端からの散逸、脱落も手伝って、圧縮ローラの幅方向には原料供給量の分布があり、ブリケット収量の歩留りが悪く、また中央部ポケットで形成されたブリケットに比べ端部で形成されたブリケットは強度が小さく、取扱い中に磨砕粉末が生じる等の不都合があった。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、硝酸塩特に硝酸銀のブリケットをブリケッティングマシーンで造粒する際のブリケット収量がよく、またブリケット強度にばらつきのない製造方法を提供することにある。
〔発明の構成及び作用効率〕
前記本発明の目的は、硝酸塩の圧縮造粒に用いるブリカッティングマシーンの圧縮ロールのポケット容積が、供給される原料の圧縮ロール幅方向量分布に相関して幅方向に調節されていることを特徴とする硝酸塩の圧縮造粒方法によって達成される。特に、前記圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットは、中央部に設けられたポケットよりも容積が小さいことを特徴とする前記硝酸塩の圧縮造粒方法が有用である。
また本発明は写真用硝酸銀に対し適用すると好ましい効用をあげることができる。
次に本発明を図を用いて説明する。
第1図に本発明に使用可能なブリケッティングマシーンの概要図を示した。
1は原料(微粒片)を投入するホッパ、2は微粒片原料中の空気を除きブリケットの歩留りを上げる脱気槽、3は脱気原料を供給するホッパ、4は原料を圧入するテーパスクリュー、5は高圧圧縮成形(以後造粒と称す)を行う圧縮ロール対であり、51及び52は対をなす圧縮ロールである。両ロール面にはブリケットに与える形状、大きさに対応するポケット6がその圧接点で正確にポケット周縁が合致するように配列されている。
次に第2図に圧縮ローラ上に配列されるラウンドコーナピロー型のポケットの形態例を示した。
図において、R1及びR2は相対持する圧縮ローラ、Cはその間のクリアランスである。Pi(i=1,2,…n)は個々のポケットである。aiはポケットpiのローラ円周に沿う円弧長であり、wiはローラ軸方向の幅、diはポケットの窪みの平均深さである。ポケットPiで造粒されるブリケットの容積ViはVi=k(aiwidi)で与えられる。
またEaはローラ円周方向、Ewはローラ軸方向にポケットを隔てる目地縁の幅である。
本発明においては、前記ポケットの形態において、目地縁の幅Ea及びEwを0.5mm以下に抑え、ブリケットの収率(歩留)を上げる手段の1つに用いる。
但し目地縁の幅が狭すぎると強度が不足するので0.2mm以上であることが好ましい。
また本発明においては、原料硝酸塩のローラ軸方向の供給量分布にポケットで造粒されるブリケット容積Viを相関させ、ブリケットに加わる圧縮度を揃えブリケット硬度を同等とし、ブリケットの耐磨砕性を上げている。その1つの手段としてPiのai,wiを等しくし中央部ポケットのdiを深く端部ポケットのdiを浅くすることが挙げられる。
原料の軸方向供給量分布は中央部100とすると端部は統計的に92を与える。ポケットの容量は中央部100に対し端部は90以下が好ましい。
尚ポケットの4隅は、ブリケットのポケット型離れを容易にし、かつ耐磨砕性、収量を大きくするためにラウンドコーナとすることが好ましい。
従来の圧縮ローラのポケットについては、一般に目地縁幅が広く、また軸方向に係る原料供給量分布に相関させてポケット容量の調整は行われていない。
圧縮ローラの圧縮圧力は油圧方式等によって与えられ、ブリケットの使用目的に適したブリケット強度となるように調節される。また造粒に必要ならば適温に調整してもよい。
またポケットを穿つ表面層は原料の物化性及び圧に耐えうる剛性をもつ材質(例えばSus310S)が選ばれ、差換可能であることが好ましい。
写真用硝酸銀の造粒条件として、微粒片原料の含水率は0〜1%が好ましく、更に0.1〜0.8%が好ましい。0.1%未満は遠心脱水で到着するには困難があり、また取扱時微粉が発生し易い。また1%を越えるとブリケット表面に搾り出された水分が付着し、流動性不良、ブリケット間の固結、容器壁への付着など好ましくない事態を招く。
また原料微粉片の大きさは、0.1〜3mmの範囲が好ましく、またこの範囲で分布がブロードである方が最密充填に都合がよく造粒性がよい。
またブリケットの薬品形態は、使用態様に合った最小有効数値単位の重量、実用上充分な強度、見掛比重が大きく小体積であること、更に溶解速度が大きいこと等が勘案されて定められる。
尚、磨砕等によって発生する粉末は、固結、容器壁等への付着を起こすので全くないことが好ましいが10wt%程度までの混在は実用上左程問題にならない。
以上のように諸種事項を勘案し、実用に最も適した硝酸銀プリケット薬品形態が選ばれる。
また本発明に係る硝酸銀原料微粉片は、日本カーリット(株);危険性評価試験所の評価結果では、落球式打撃感度試験結果では「不爆」となるが、落球重量試験で「爆」となり「危険性中」に分類され、また、燃焼試験によると、「危険性大」に分類され、従って、「第1種酸化固体」と評価される。
一方、硝酸銀ブリケットについては、50/60鉄管起爆試験で「不爆」となり「危険性無」と評価される。また、500g燃焼試験では「燃焼中断」と判断され、硝酸銀ブリケットは「危険性無」となり、「非危険物」と評価される。
尚、前記試験方法については、法規に則り定められた前記危険性評価試験所の定める「不安定性物質の危険性評価試験方法」に紹介されている。
〔実施例〕
次に実施例によって本発明の効果を示す。
表-1に示す諸元を与えたラウンドコーナピロー型ポケットを中央部に3列、両端に夫々1列計5列設けた圧縮ローラRI,RII及びRIIIを用い硝酸銀ブリケットを調整した結果を表-2に掲げた。
尚、中央部3列のポケットの容量Vcと端部ポケットの容量Vsとの比Vs/Vc=Vrはポケットの深さで調節した。


表-2から明かなように本発明の要件を備えた圧縮ロールRIIIは歩留は良好であり、またポケット位置による硬度のばらつきが少く、端部ポケットのブリケットも実用的硬度を有している。
〔発明の効果〕
以上述べたように本発明に沿って調整された硝酸銀ブリケットは、収量が大きく、かつ破砕が少く、粉末を生ずることが少く、容器その他の器壁への固着、固結塊の生成がなく、ロスが減少しかつ取扱い工数が減る。
また硝酸銀微粉塵による人体の傷害、作業環境の汚損がなくなる等の数々のメリットを有している。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に使用されるブリケッティングマシーンの概要図である。第2図はピロー型ポケットの説明図である。
2……脱気槽、4……テーパスクリュー、
5……圧縮ロール対、
51及び52……圧縮ロール、6……ポケット
M……原料、B……ブリケット、Pi……ポケット、
Eai,Ewi……目地縁、ai,wi……ポケット幅
【図面】


 
訂正の要旨 訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として.
特許請求の範囲を以下のとおり訂正する。
「1.硝酸塩の圧縮造粒に用いるブリケッティングマシーンの圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの容積が、中央部に設けられたポケットの容積よりも小さく、かつ前記端部に設けられたポケットの深さが中央部のポケットの深さよりも浅いことを特徴とする硝酸塩の圧縮造粒方法。
2.前記圧縮ロールの巾手方向端部に設けられたポケットの開ロ面積が中央部のポケットの開□面積よりも小さくないことを特徴とする請求項1に記載の硝酸塩の圧縮造粒方法。
3.前記硝酸塩が硝酸銀である請求項1又は2に記載の硝酸塩の圧縮造粒方法。」と訂正する。、
異議決定日 2001-04-03 
出願番号 特願平2-265836
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 服部 智村守 宏文  
特許庁審判長 守屋 敏道
特許庁審判官 山田 充
唐戸 光雄
登録日 2000-01-28 
登録番号 特許第3025901号(P3025901)
権利者 コニカ株式会社
発明の名称 硝酸塩の圧縮造粒方法  

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