ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K |
---|---|
管理番号 | 1044962 |
異議申立番号 | 異議1999-74457 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-12-17 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-11-30 |
確定日 | 2001-04-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2898247号「ケラチン物質の強化剤としてのコロイドケイ酸の使用」の請求項1ないし16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2898247号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2898247号発明は、平成8年5月29日(パリ条約による優先権主張1995年5月30日、3件、フランス国)に特許出願され、平成11年3月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、小野節子より特許異議申立がなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月3日に訂正請求(後日取下)がなされた後、訂正拒絶理由通知がなされ、さらに取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年3月22日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (a)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の 「【請求項1】コロイドケイ酸からなるケラチン物質の強化剤。 【請求項2】前記コロイドケイ酸が表面処理したシリカ、親水性の火成シリカ及び/又は疎水性の火成シリカより選択される請求項1に記載のケラチン物質の強化剤。」を 「【請求項1】 脆性の低い爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項2】 割れない爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項3】 ひび割れしない爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項4】 弱くなった爪、特に筋の入った、ひび割れした、柔らかい、または曲がりやすい爪、の壊れ易さを減少させるために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項5】 コロイドケイ酸が、表面処理したシリカ、親水性の火成シリカ及び/又は疎水性の火成シリカより選択される請求項1から4のいずれか一項に記載の強化剤。」 と訂正し、 訂正事項b 請求項3〜16を削除するものである。 (b)訂正の目的の適否、拡張・変更の存否、及び新規事項の追加の有無 上記訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載のケラチン物質を、訂正後の請求項1〜4において、訂正前の願書に添付された明細書(以下、特許明細書という。)の【0009】の「…特に爪、さらに髪及び睫毛等のケラチン物質…」との記載から明らかなように、ケラチン物質に包含される爪に限定し、かつ「脆性の低い爪を得るために適用される」、「割れない爪を得るために爪に適用される」、「ひび割れしない爪を得るために」又は「弱くなった爪、特に筋の入った、ひび割れした、柔らかい、または曲がりやすい爪、の壊れ易さを減少させるために爪に適用される」と適用する目的を限定し、さらに爪用強化剤としては水性成分を含まないと限定するものであって、これらは、【0008】及び【0013】に、「このような強化剤の機能によれば、例えば爪に塗布する組成物の場合には、特に筋の入った、ひびの入った、柔らかいもしくは曲がりやすい爪及び割れやすい爪のような、弱った爪の壊れ易さを減少させることが可能である。」及び「本発明による組成物の使用によれば、例えば爪では、より堅く、強い爪にすることが可能であり、すなわち脆性が減少する。この爪ケラチンの強化により、割れる及び/又はひびの入ることのない爪にすることもまた、可能になる。」と記載されていること、及び、水性成分を含まないと訂正前の特許請求の範囲の一部を除くものであることから、特許明細書に記載した事項の範囲内であって、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、訂正前の請求項2を、訂正後の請求項5への訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1を引用することに代えて、特許請求の範囲の減縮に該当する請求項1〜4を引用するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。 訂正事項bは、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。 そして、これらは、実質上請求の範囲を拡張し、変更するものではない。 また、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。 (c)独立特許要件の判断 後述の3.特許異議申し立てについての判断に記載した理由により、訂正後の請求項1〜5に係る発明は、独立して特許を受けることができる発明というべきである。 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立についての判断 イ、本件特許発明 本件請求項1〜5に係る発明は、訂正された特許明細書の記載からみて、特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められる。 ロ、異議申立の概要 異議申立人は、甲第1号証(国際公開第94/28877号パンフレット)、甲第2号証(特開昭62-174003号公報)、甲第3号証(特開平1-242514号公報)、甲第4号証(特開昭60-16910号公報)、甲第5号証(特開昭58-180412号公報)及び甲第6号証(特開平6-263618号公報)を提出して、本件請求項1〜15に係る発明は甲第1号証〜甲第6号証に記載されたいずれかの発明であり、また、請求項16に係る発明は甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきであると主張している。 ハ、証拠記載の発明 甲第1号証には、組成物中でのコロイド状シリ力の存在は、組成物の人体中への浸透能力を劇的に向上させるように見えること、組成物およびこれに含まれる水、油分およびコラーゲンは、もし存在するとすれば実際に使用者の表皮中へ、毛髪中へあるいは爪中へ浸透し、この組成物は人体から失われた成分に置き換わることができ、………爪での結果は、より柔軟性を与え、より強化するために爪により潤いを与えること(第6頁、第22行〜第7頁、第4行)、好ましい実施態様として、生成した蒸留水中に、約500ppmのコロイド状シリカ、0.001モル/リットルのクエン酸カリウム及び微量の酢酸を含有する溶液が挙げられ、この溶液は、ボディケア組成物に極少量添加することにより、皮膚、髪、及び爪などの表皮構造への水分の浸透を助けることできること(8頁9〜13行)が記載され、具体的な皮膚や毛髪化粧料の実施例では500ppm又は50ppmのコロイダルシリカの水溶液を配合することが記載されている。 甲第2号証には、無機顔料やパール光沢剤の沈降がなく経時安定性に優れ、しかも良好なフィルム物性、使用性を有することを目的とする有機ペントナイト及び/または有機モンモリロナイトと疎水性シリカとを含有する美爪料(1頁左下欄)が記載され、疎水性シリカの例としてアエロジルR-972が挙げられている。 甲第3号証には、人体に安全で顔料やパール剤の沈降がなく、経時安定性に優れ、しかも塗膜物性、使用性の良好な美爪料(1頁左下欄)について、有機変性モンモリロナイト、シリ力および非芳香族系の溶剤を含有する美爪料(特許請求の範囲)が記載され、シリカの好ましいものとして、粒径が0.01μ未満のアエロジル#300、アエロジル#380(2頁左下欄)が記載されている。 甲第4号証には、マットな仕上がりを有し、塗り易く、経時でのもちがよく、除光液での落とし易さに優れた美爪料(1頁左下欄)について、ニトロセルローズ、レジン、可塑剤、溶剤を含有する美爪料において、平均粒子径0.01〜30μのシリカを1〜10wt%配合した美爪料(特許請求の範囲)が記載されている。 甲第5号証には、固型、半固型、液状油分と揮発性分岐炭化水素と有機ゲル化剤と疎水性無水シリカと水とを含有する油中水型アイメーキャッブ化粧料が記載されている。 甲第6号証には、疎水性煙霧状シリカゲル、ワックスおよび液体油脂を含有するオイルゲル化粧料が記載され、オイルゲル化粧料の例として、口紅、アイスティック、リップクリーム、ポイントカバー、チークカラー、アイカラー、アイライナー、マスカラ、練り香水が挙げられている。 ニ、対比・判断 甲第1号証には、コロイド状シリカ(=コロイドケイ酸)の存在は、爪での結果は、より柔軟性を与え、より強化するために爪により潤いを与えることとの記載されているものの、好ましい実施態様として組成物に水が含有すること、そのボディケアの機構として皮膚、髪、及び爪などの表皮構造への水分の浸透を助けることが記載され、具体的の化粧料の処方例はすべて水を含有するものであることから、甲第1号証にはコロイドケイ酸は水の浸透を助けることによって爪を強化することが開示されているものと認められる。そうすると、水が組成物に含まれない場合にコロイドケイ酸が爪を強化することまでは記載されてないものである。 また、甲第2〜4号証に記載されている美爪料に配合されているシリカは、粒径及び商品名からみて、コロイド状のシリカ、すなわちコロイドケイ酸と認められるものの、これらの美爪料にコロイドケイ酸を配合するのは顔料などの沈降がなく、経時安定性に優れ、しかも塗膜物性、使用性の良好であるなど、美爪料としての製品の安定性や使い良さなどを改良するためのものと認められ、爪自体を強化することについては何ら記載されていない。また、甲第5号証及び甲第6号証には疎水性無水シリカ、疎水性煙霧状シリカゲルというコロイドケイ酸と認められる成分を含有する化粧料が記載されているが、アイメーキャップ化粧料、口紅等の化粧料であって、爪を強化することについては何ら記載されていない。 したがって、本件請求項1〜5に係る発明は、水性成分を含まない爪用強化剤であるから、このことが全く記載されていない甲第1〜6号証に記載された発明ではないし、これらの記載に基づいて当業者が容易に想到できるものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件特許が特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 また、本件特許については、他に取消理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ケラチン物質の強化剤としてのコロイドケイ酸の使用 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 脆性の低い爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項2】 割れない爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項3】 ひび割れしない爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項4】 弱くなった爪、特に筋の入った、ひび割れした、柔らかい、または曲がりやすい爪、の壊れ易さを減少させるために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項5】 コロイドケイ酸が、表面処理したシリカ、親水性の火成シリカ及び/又は疎水性の火成シリカより選択される請求項1から4のいずれか一項に記載の強化剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、コロイドケイ酸からなるケラチン物質の強化剤に関する。この強化剤は、油性媒体中の爪用エナメルもしくはベース、髪用製品もしくはマスカラ、ベースの形態の組成物の調製に使用可能である。 【0002】 【従来の技術】 コロイドケイ酸は、頻繁に化粧品組成物中に用いられている。例えば、国際特許出願WO94/28877号には、少量のコロイドケイ酸(1〜500ppm)が、表皮への水、オイル及びコラーゲンの浸透及び、毛幹への着色物質の浸透を促進することが示されている。 【0003】 例えば爪に塗布する組成物として、媒体が溶媒の爪用エナメルタイプもしくは爪のケア用ベースタイプのものが知られており、これらの組成物は、通常、少なくとも一のフィルム形成ポリマーと、任意の可塑剤、顔料、構成剤(rheological agents)及び溶媒を含むものである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 このような組成物では、爪に着色することはできるが、しかし、同時に爪の手入れをすることはできない。従って、一方では爪の上に化粧品として許容されるフィルムを形成することで着色することができ、他方では以下の記載において“強化剤”と呼称する適切な活性剤を含むことにより爪のケラチン物質を強化することのできる化粧品組成物を得ることが望まれている。 【0005】 水性の爪用エナメルは、一般的に、フイルム形成ポリマー粒子の水性分散液からなり、さらに、共一溶媒、顔料及び/又は染料、並びに構成剤を含むことができる。このようにして適切な粘度のエナメルが得られ、これは充分な量を爪に塗布することが容易であり、チキソトロピーに優れたものである。しかしながら、例えば爪、睫毛もしくは髪等のケラチン物質を強化することのできる組成物、すなわち以下の記載において“強化剤”と呼称する適切な活性剤を含む組成物を得ることが必要である。 【0006】 特に爪に塗布するトリートメント用ベースとしては着色剤及び/又は爪の処理、爪に栄養を与える、爪のケアのため及び/又は爪の美化用の活性剤等の、従来からの添加物を含む、オイルもしくはオイルの混合物の形態で与えられるものが知られている。 【0007】 しかしながら、特に爪等のケラチン物質を強化することができ、以下の記載において“強化剤”と呼称する活性物質を含む油性媒体中のべースヘの要求は依然として存在している。 【0008】 このような強化剤の機能によれば、例えば爪に塗布する組成物の場合には、特に筋の入った、ひびの入った、柔らかいもしくは曲がりやすい爪及び割れやすい爪のような、弱った爪の壊れ易さを減少させることが可能である。 【0009】 【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】 出願人は、驚くべきことに、特に爪、さらに髪及び捷毛等のケラチン物質を強化するための薬剤として、コロイドケイ酸を用いて申し分のないことを見出した。 【0010】 本発明は、コロイドケイ酸からなるケラチン物質の強化剤に関する。 従って、本発明は、少なくとも一のフィルム形成物質及び少なくとも一の有機溶媒及びコロイドケイ酸からなるケラチン物質の強化剤を含む組成物に関する。 【0011】 前記溶媒としては、有機溶媒を用いることができる。 【0012】 本発明の別の主題は、油性の媒体を含む組成物におけるケラチン物質を強化するための薬剤としてのコロイドケイ酸の使用である。 【0013】 本発明による組成物の使用によれば、例えば爪では、より堅く、強い爪にすることが可能であり、すなわち脆性が減少する。この爪ケラチンの強化により、割れる及び/又はひびの入ることのない爪にすることもまた、可能になる。 【0014】 本発明の組成物が有機溶媒中の組成物である場合には、この組成物は特に、アルキド樹脂、アクリル樹脂及び/又はビニル樹脂、ポリウレタン及びポリエステル、セルロース及びニトロセルロース等のセルロース誘導体、及びホルムアルデヒドとアリールスルホンアミドとの縮合により生じる樹脂及びこれらの混合物より選択される少なくとも一のフィルム形成物質を含む。 【0015】 前記フイルム形成物質は、通常はトルエン、キシレン、酢酸エチル及び/又は酢酸ブチル、ケトン、グリコールエーテル、エステルもしくは、エタノール、イソプロパノールもしくはブタノール等のアルコール及びこれらの混合物等の有機溶媒の溶液として、例えば5〜30重量%の濃度で存在する。 【0016】 該組成物はまた、可塑剤及び、構成剤を任意に含んでもよい。 挙げることのできる可塑剤としては、クエン酸塩、フタル酸塩、エステル及び/又はショウノウ等であり、通常組成物全重量に対して5〜30重量%の量が用いられる。 【0017】 挙げることのできる構成剤としては、疎水性ベントナイト、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸誘導体、グアーガム及びカロブガム並びにキサンタンガム等である。 【0018】 本発明の組成物はまた、水性媒体中に分散したフイルム形成ポリマーの粒子を含むことができる。 【0019】 使用可能なフィルム形成ポリマーの中では、例えばアニオン性ポリウレタン等のポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルーポリウレタン、ラジカルポリマー、特に、アクリル性、アクリル性スチレン及び/又はビニル性タイプ、ポリエステル及びアルキド樹脂等の単独もしくは混合物を挙げることができる。 【0020】 前記分散液はまた、ポリウレタンタイプの会合ポリマーもしくはキサンタンガム等の天然ゴムを含んでもよい。 【0021】 前記分散液は、固体含有量30〜45重量%であることが好ましい。 【0022】 本発明による組成物はまた、油性の媒体を含むことができる。該組成物は、油性媒体中のベースの形態で与えられることが好ましい。この油性媒体は、一以上のオイルを含むことができ、それらは揮発性及び/又は不揮発性であり、例えば、植物、鉱物、動物及び/又は合成由来のオイルであって、これらの中では下記のものを挙げることができる: ・ 脂肪酸のエステルとポリオールとから形成される、特に流動トリグリセリド等の動物もしくは植物オイルで、例えばサンフラワー、コーン、大豆、ヒョウタン、グレープシード、ゴマ、ヘーゼルナッツ、アプリコット、スウィートアーモンドもしくはアボカドのオイル、魚油、トリカプロカプリル酸グリセロールもしくは、化学式R9COOR10において、R9が7から19の炭素原子を含む高級脂肪酸の残基を表し、R10が3から20の炭素原子を含む分枝状の炭化水素鎖を表す植物または動物オイル、例えばパーセリンオイル等。 ・ 天然もしくは合成の精油、例えばユーカリ、ラバンジン、ラベンダー、ベチバー、レモン、サンダルウッド、ローズマリー、カモミール、セイボリー、ナツメグ、シナモン、ヒソップ、キャラウエイ、オレンジ、ゲラニオール、ケイド(cade)及びベルガモットのオイル等。 ・ 炭化水素、例えばヘキサデカン及びパラフィンオイル。 ・ 無機酸とアルコールとのエステル。 ・ エーテル及びポリエーテル。 ・ シリコーンオイル及びゴム。 【0023】 特定の実施態様においては、前述の油性媒体はまた、水相を含むことができ、溶液もしくは水中油型エマルションもしくは油中水型エマルション、あるいはまた、多相エマルションを形成することができる。 【0024】 本発明の組成物において使用することのできるコロイドケイ酸は、火成(pyrogenic)シリカもしくは表面処理したシリカであって、これは、親水性火成シリカ、疎水性火成シリカもしくは有機処理により表面処理したシリカの形態をとることができる。 【0025】 火成シリカは、揮発性シリコン化合物の、酸素-水素炎中での高温加水分解により得られる。この結果、細かく分割されたシリカが生成する。前記シリカの表面は、反応により、シラノール基の数を減少させることによって疎水性のシリカを得るために、化学的に変性されていてもよい。 【0026】 コロイドケイ酸は、例えば10〜200nm等のナノメートルからマイクロメートルに渡る粒子径を有することが好ましい。 【0027】 本発明のコロイドケイ酸は、とりわけDegussa社より、Aerosil200、Aerosi1300もしくはAerosi1380の商品名で市販の親水性シリカ、AerosilMOX80もしくはAerosilCOK84の商品名で市販の特殊シリカ、AerosilR972の商品名で市販の疎水性シリカ、あるいはまた、AerosilOK412の商品名で市販の表面処理したシリカといった化合物より選択することができる。 【0028】 本発明の組成物は、組成物全重量に対して、コロイドケイ酸を0.1〜5重量%の量含むことができ、1〜2重量%の量含むとより好ましい。 【0029】 本発明の組成物が油性の媒体を含む場合、この組成物は組成物全重量に対して0.01〜10重量%の量のコロイドケイ酸を含むことができ、0.3〜3重量%であるとより好ましい。 【0030】 本発明の組成物はまた、このような組成物に加えることのできるものとして当業者に知られる添加剤であればどのようなものでも含むことができ、例えば、展着剤、湿潤剤、分散剤、発泡防止剤、保存剤、UVスクリーニング剤、染料、顔料、真珠光沢剤、N-ブチルホルミル、D-パンテノール、フィタントリオール、ビタミン及びその誘導体、ケラチン及びその誘導体、メラニン、コラーゲン、シスチン、キトサン及びその誘導体、セラミド、ビオチン、微量元素、グリセリン、蛋白質水解物、リン脂質及びモイスチュアリング剤(moisturizing agents)等である。当業者であれば、明らかにこれらの任意の添加化合物の選択及び/又はその量について、例えば予想される添加により本発明の組成物の優れた特性を損なう、もしくは本質的に損なうことのないようにするであろう。 【0031】 本発明の組成物は、当業者であれば、その一般的知識に基づき、現状の技術によって調製することができる。 【0032】 本発明の組成物は、例えば爪用エナメル、ベースもしくはケア用ベース等の爪に塗布するための製品の形態、例えばマスカラ等の睡毛に塗布するための製品の形態、例えばスタイリングムース、ローションもしくはヘアスプレー等の髪用製品の形態をとることができる。 【0033】 本発明を以下の実施例において詳細に説明する。 【実施例】 実施例1 下記の組成(重量%)をもつ爪用エナメルを調製した。 ニトロセルロース 15% 可塑剤及び樹脂 15% コロイドケイ酸 (Degussa社製のAerosi1 200) 1% 溶媒(酢酸エチル及び酢酸ブチル) 全体を100%とする量 適切なきめ(texture)のエナメルが得られ、これは爪への塗布が容易なものであった。これを乾燥させた後、滑らかで均一なフィルムが得られた。 【0034】 実施例2 実施例1のエナメルを下記の組成の対照エナメルと比較した。 ニトロセルロース 15% 可塑剤及び樹脂 15% 溶媒(酢酸エチル及び酢酸ブチル) 全体を100%とする量 この組成物を脆化した爪(筋の入った、割れた、柔らかいもしくは曲がりやすい爪、及び割ける傾向のある爪)に8週間塗布した。 これを一方の手の全ての爪に塗布し、他方の手には対照組成物を塗布した。 下記の結果が得られた。比較自己評価(comparative self-evaluation)により、本発明による組成物が塗布された爪の状態は改善されたことが判明した。爪はより堅固で強くなり、脆性は減少し、割れる傾向も減少した。 【0035】 実施例3 下記の組成(重量%)をもつ爪用エナメルを調製した。 ニトロセルロース 10% 可塑剤及び樹脂 15% コロイドケイ酸 (Degussa社製のAerosi1 200) 1.5% 真珠母(mother-of-pearl)の粒子 0.2% 顔料 0.5% 活性剤、染料及び添加剤 1% 溶媒(酢酸エチル及び酢酸ブチル) 全体を100%とする量 爪への塗布が容易なエナメルが得られた。これを乾燥させた後、滑らかで均一なフィルムが得られた。 【0036】 評価試験: 女性パネルにより、実施例1のエナメルを評価試験した。この女性達は、柔らかい爪をもつ者(第一カテゴリー)及び硬い爪をもつ者(第二カテゴリー)に分けられ、この組成物を8週間に渡って塗布し、その爪の堅さ、光沢、外観の滑らかさ、脆性、割れ及び全般的な状態について、処置開始後4週間の時点(N1)及び8週間の時点(N2)で評価した(1〜5で評定)。同様の評価を、処置開始前(N0)についても行った。これらの評価の平均値を決定し、これを処置後の平均評定に対して処置開始4時間後(M1)及び8時間後(M2)の平均評定における改善比率に変換した。 Mi=(Ni-N0)/N0 i=1,2 【0037】 結果: 研究の開始時に柔らかい爪をもつとされた女性(17例)について: 【0038】 研究の開始時に硬い爪をもつとされた女性(13例)について: 全般に、これらの改善は1ヶ月以降顕著であり、その後安定することがわかった。 【0039】 実施例4 下記の組成(重量%)をもつ爪用エナメルを調製した。 アクリル性ポリマーの分散液(固体含有量40%) 38% ポリウレタンの分散液(固体含有量30%) 50% コロイドケイ酸(Aerosil MOX80) 0.7% 添加剤(染料、活性剤) 1.3% 水 全体を100%とする量 爪に容易に塗布することのできるエナメルが得られ、これを乾燥させた後、化粧品として許容されるフィルムが得られた。 【0040】 実施例5 実施例1のエナメルを下記の組成の対照エナメルと比較した。 アクリル性ポリマーの分散液(固体含有量40%) 38% ポリウレタンの分散液(固体含有量30%) 50% 添加剤(染料、活性剤) 1.3% 水 全体を100%とする量 これらの2種の組成物を脆化した爪(筋の入った、割れた、柔らかいもしくは曲がりやすい爪、及び割ける傾向のある爪)に8週間塗布した。 実施例1のエナメルを一方の手の全ての爪に塗布し、他方の手には対照エナメルを塗布した。 下記の結果が得られた。比較自己評価により、本発明によるエナメルが塗布された爪の状態は改善されたことが判明した。爪はより堅固で強くなり、脆性は減少し、割れる傾向も減少した。 【0041】 実施例6 下記の組成をもつ爪用トリートメント用ベースを調製した。 植物油 5% コロイドケイ酸 1% 揮発性シリコーンオイル 94% 得られたトリートメントオイルは、爪を保護するフィルムを形成し、これはマッサージにより、爪の組織及びその下層に間で浸透する。 【0042】 実施例7 実施例1の爪用トリートメント用ベースを下記の組成をもつ対照ベースと比較した。 植物油 5% 揮発性シリコーンオイル 95% これらの組成物を物を脆化した爪(筋の入った、割れた、柔らかいもしくは曲がりやすい爪、及び割ける傾向のある爪)に8週間塗った。 実施例1のベースを一方の手の全ての爪に塗布し、対照ベースを他方の手に塗布した。 比較自己評価により下記の結果が得られ、本発明のベースをでの処置を受けた爪の状態には改善が見られた。このような爪はより強く、耐性に優れ、脆性は減少し、割れる傾向も減少した。 【0043】 実施例8 下記の組成をもつ爪用トリートメントベースを調製した。 植物油 4% 鉱物油 1% コロイドケイ酸 0.5% 添加剤(活性剤及び着色剤) 1.5% 溶媒 1% 揮発性シリコーンオイル 92% 得られたトリートメントオイルは、爪を保護するフィルムを形成し、これはマッサージにより、爪の組織及びその下層に間で浸透する。 |
訂正の要旨 |
訂正事項a 特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の 「【請求項1】コロイドケイ酸からなるケラチン物質の強化剤。 【請求項2】前記コロイドケイ酸が表面処理したシリカ、親水性の火成シリカ及び/又は疎水性の火成シリカより選択される請求項1に記載のケラチン物質の強化剤。」を 「【請求項1】 脆性の低い爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項2】 割れない爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項3】 ひび割れしない爪を得るために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項4】 弱くなった爪、特に筋の入った、ひび割れした、柔らかい、または曲がりやすい爪、の壊れ易さを減少させるために爪に適用される、コロイドケイ酸からなり、水性成分を含まない爪用強化剤。 【請求項5】 コロイドケイ酸が、表面処理したシリカ、親水性の火成シリカ及び/又は疎水性の火成シリカより選択される請求項1から4のいずれか一項に記載の強化剤。」 と訂正し、 訂正事項b 特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項3〜16を削除するものである。 |
異議決定日 | 2001-03-29 |
出願番号 | 特願平8-135480 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A61K)
P 1 651・ 113- YA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 河野 直樹、冨士 美香 |
特許庁審判長 |
吉村 康男 |
特許庁審判官 |
宮本 和子 深津 弘 |
登録日 | 1999-03-12 |
登録番号 | 特許第2898247号(P2898247) |
権利者 | ロレアル |
発明の名称 | ケラチン物質の強化剤としてのコロイドケイ酸の使用 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 成瀬 重雄 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 成瀬 重雄 |