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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1044976
異議申立番号 異議2000-72817  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-03-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-21 
確定日 2001-05-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3001589号「リグナン類含有飲食物」の請求項1ないし19に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3001589号の請求項1ないし19に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3001589号に係る発明についての出願は、平成1年7月21日に出願され、平成11年11月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人 竹本油脂株式会社及び花井恭子により特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年2月26日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
(a)明細書の特許請求の範囲の請求項1〜19に記載の、
「【請求項1】セサミン及び/又はエピセサミンを内容組成物の1重量%以上添加したセサミン及び/又はエピセサミン含有飲食物。
【請求項2】セサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である、請求項1に記載の飲食物。
【請求項3】前記セサミン及び/又はエピセサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項1又は2に記載の飲食物。
【請求項4】セサミン及び/又はエピセサミンを内容組成物の0.1重量%以上添加したセサミン及び/又はエピセサミン含有液体飲料。
【請求項5】セサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項4に記載の液体飲料。
【請求項6】前記セサミン及び/又はエピセサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項5又は6に記載の液体飲料。
【請求項7】血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項8】飲食物にセサミン及び/又はエピセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン及び/又はエピセサミン含有飲食物の製造方法。
【請求項9】セサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】セサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の0.01重量%〜10.0重量%である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】セサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の1重量%以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】前記セサミン及び/又はエピセサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加される、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】前記セサミン及び/又はエピセサミン添加飲食物が、血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】単離されたセサミン及び/又はエピセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加したセサミン及び/又はエピセサミン含有飲食物。
【請求項15】単離されたセサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項14に記載の飲食物。
【請求項16】血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項14または15のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項17】飲食物に単離されたセサミン及び/又はエピセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン及び/又はエピセサミン含有飲食物の製造方法。
【請求項18】単離されたセサミン及び/又はエピセサミンの添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である請求項17に記載の方法。
【請求項19】前記セサミン及び/又はエピセサミン添加飲食物が血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する請求項17または18のいずれか1項に記載の方法。」を、
「【請求項1】セサミンを内容組成物の1重量%以上添加したセサミン含有飲食物。
【請求項2】セサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である、請求項1に記載の飲食物。
【請求項3】前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項1又は2に記載の飲食物。
【請求項4】セサミンを内容組成物の0.1重量%以上添加したセサミン含有液体飲料。
【請求項5】セサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項4に記載の液体飲料。
【請求項6】前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項5又は6に記載の液体飲料。
【請求項7】血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項8】飲食物にセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン及び/又はエピセサミン含有飲食物の製造方法。
【請求項9】セサミン添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】セサミンの添加量が内容組成物の0.01重量%〜10.0重量%である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】セサミンの添加量が内容組成物の1重量%以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加される、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】前記セサミン添加飲食物が、血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】単離されたセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加したセサミン含有飲食物。
【請求項15】単離されたセサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項14に記載の飲食物。
【請求項16】血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項14または15のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項17】飲食物に単離されたセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン含有飲食物の製造方法。
【請求項18】単離されたセサミンの添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である請求項17に記載の方法。
【請求項19】前記セサミン添加飲食物が血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する請求項17または18のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
(b)明細書第4頁第10行に記載の「セサミン及び/又はエピセサミン」を「セサミン」に訂正する。
(c)明細書第5頁第8行〜第6頁第1行に記載の「本発明で使用するセサミン及びエピセサミンは、これらを単独で、または混合して使用することができる。」を削除する。
(d)明細書第14頁第14行に記載の「特出願平」を「特願平」に訂正する。
(e)明細書第20頁第2〜3行に記載の「特出願平」を「特願平」に訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された「セサミン及び/又はエピセサミン」を「セサミン」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項(b)及び(c)は、特許請求の範囲の上記訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、上記訂正事項(d)及び(e)は、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、上記「セサミン」に関連する事項ついて、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、リグニン類化合物を主成分とする抽出物からセサミンを単離すること(実施例3)、セサミンをシクロデキストリン包接化合物の形態でジュースに加えてセサミン含有ジュースを調製すること(実施例9)、及び原料油脂にセサミンを加えてセサミン含有マーガリンを調製すること(実施例11)が記載されていることから、上記(a)〜(c)の訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
また、上記訂正事項(a)〜(e)は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
ア.本件発明
平成13年2月26日付けで提出された訂正明細書の請求項1ないし19に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記訂正事項(a)において訂正された請求項1ないし19に係る発明を参照されたい。以下、それぞれを本件請求項1ないし19に係る発明という。)

イ.異議申立ての理由の概要
異議申立人 竹本油脂株式会社は、下記の甲第1〜6号証を提出して、
(1)訂正前の本件請求項1ないし7に係る発明は、甲第1又は2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない、
(2)訂正前の本件請求項8ないし13に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
(3)特許明細書には、セサミン及び/又はエピセサミンが血中コレステロール及び血中中性脂質を低下させる作用を有することを裏付ける具体的なデータが記載されていないことを考えると、請求項7、13、16、及び19の記載は、同法第36条に規定する要件を満たしていない、
旨主張している。

甲第1号証 「油脂・油糧ハンドブック」株式会社 幸書房、昭和63
年5月25日発行、119頁、128頁、132頁
甲第2号証 The Journal of the America
n Oil Chemists’ Society、
VoL.32
甲第3号証 特開昭50ー160460号公報
甲第4号証 特開昭54ー62371号公報
甲第5号証 特開昭60ー184370号公報
甲第6号証 特開昭61ー242558号公報

また、異議申立人 花井恭子は、下記の甲第1〜4号証を提出して、訂正前の本件請求項1ないし19に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、又は甲第1号証に記載された発明に基づいて、あるいは甲第1、3及び4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、旨主張している。

甲第1号証 米国特許第4,427,694号公報
甲第2号証 「一般薬 日本医薬品集」(株)薬業時報社、昭和58年
12月5日発行、第184頁
甲第3号証 「日本食品工業学会誌」第35巻、第8号、第552〜56 2頁
甲第4号証 特開平1ー104062号公報

ウ.対比・判断
(1)異議申立人 竹本油脂株式会社の主張について
29条1項3号違反について>
甲第1号証には、ゴマ種子中には平均53.1%のゴマ油が含まれていること、ゴマ油中には0.4〜1.1%のセサミンが含まれていること、及び
ゴマ油を食用油として使用して各種飲食物を製造することが記載され、甲第2号証には、ゴマ種子から得られるゴマ油には、ゴマ種子原料の種類によっては、1%以上のセサミンを含むものもあることが記載されているが、これら刊行物には、ゴマ油からセサミンを単離し、これを添加して飲食物を製造すること、あるいはゴマ油からセサミン等のリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得て、この抽出物を添加して飲食物を製造することについては何も記載されていない。
この点について、異議申立人は、「甲第1、2号証から明らかなように、ゴマ種子から抽出したゴマ油にはセサミン含有量が1%以上のものもある。
かかるゴマ油を飲食品に使用する態様は様々であって、その使用形態により結果としてセサミン含有量が1%以上になることは当然にあり得る。」と主張している。
確かに、本件請求項1に係る発明は、「セサミンが天然物からの抽出物中に含有される形で添加される」態様を包含するものではあるが、技術用語として「抽出」を使用するとき、それは「液状または固状の混合物に溶剤を接触させて、混合物の中のある特定の物質を他の物質から分離する操作」(化学大辞典編集委員会編「化学大辞典 5」共立出版株式会社、‘抽出’の項参照)を意味するのであるから、ゴマ種子を圧搾して得られるゴマ油は、本件特許明細書で特定する「天然物からの抽出物」に該当しない。(異議申立書の「ゴマ種子から抽出したゴマ油」という記載は、技術的にみて正しい表現ではない。)
即ち、本件請求項1に係る発明は、ゴマ油を直接添加してセサミン含有飲食物あるいは液体飲料とする態様を含むものではない。
してみると、異議申立人の上記主張を採用することはできず、本件請求項1に係る発明は、甲第1又は2号証に記載された発明であるとすることはできない。
また、本件請求項2ないし7に係る発明も、同様の理由により、甲第1又は2号証に記載された発明であるとすることはできない。

29条2項違反について>
甲第1、2号証には、上記<29条1項3号違反について>の項で述べたとおりのことが記載されて、甲第3〜6号証には、ゴマ油、粉末ゴマ、練りゴマ、あるいはいりゴマを使用して各種飲食物を製造することは記載されているが、これら刊行物には、ゴマ油からセサミンを単離し、これを添加して飲食物を製造すること、あるいはゴマ油からセサミン等のリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得て、この抽出物を添加して飲食物を製造すること、及び該飲食物は血中コレステロール及び血中中性脂質を低下させる作用を有することについては何も記載されていない。
この点についてさらに検討すると、ゴマ油中にセサミンが含まれていること、及びゴマ油を用いて飲食物を製造することが甲第1、2号証等に記載されているとしても、セサミンそれ自体の有する食品成分としての有利な作用・機能について甲第1〜6号証に何も記載されていない以上、ゴマ油からセサミンを単離し、あるいはゴマ油からセサミン等のリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得て、これらを飲食物に添加することは当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件請求項8に係る発明は、セサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することにより、血中コレステロール及び血中中性脂質を低下させる作用を有する飲食物が得られる等の特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件請求項8に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件請求項9ないし13に係る発明も、同様の理由により、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

36条違反について>
特許明細書の実施例7の表1には、リグナン類化合物を主成分とする抽出物を含むバターをラットに与えた場合、血中コレステロール及び血中中性脂質を有意に低下させることを裏付ける実験データが記載され、実施例3には、前記実験に用いた抽出物が「セサミン19.6%、エピセサミン30.6%、セサミノール及びエピセサミノール10.2%」の組成からなることが記載されている。
そして、上記組成比からみて、セサミン及びエピセサミン(セサミンの異性体)が抽出物の主成分であることは明らかであり、血中コレステロール及び血中中性脂質低下作用がセサミン及びエピセサミンによるものであることが合理的に推定できるので、異議申立人が指摘する点に記載不備はない。

(2)異議申立人 花井恭子の主張について
29条1項3号違反について>
甲第1号証には、ヒト又は動物に対して向精神反応を惹起させるのに効果的かつ無毒な量のセサミンと、薬学的に許容される担体とから本質的になり、投与形態が錠剤、糖衣錠、カプセル、アンプル、座薬又は無菌注射製剤である向精神用医薬組成物、及び該組成物は経口的に投与されることが記載されているが、セサミンを添加して飲食物を製造することについては何も記載されていない。
異議申立人は、「甲第1号証に記載の向精神用医薬組成物と本件請求項1に係る発明の飲食物とは、一応表現上の差異が存在している。しかし、甲第1号証では、向精神用医薬組成物を経口的に投与しており、さらに実施例2では、トリオレイン5mlにセサミン14.3mgを溶解し、これをオレンジスライスに注入したものを用いている。一方、本件特許明細書をみると、本件発明で対象とするリグナン類化合物であるセサミンの薬理作用について、炎症性疾患、心臓欠管及び血栓症疾患、精神医学的疾患等の種々疾患の治療に利用できると記載され、これらの記載からは、本件発明が対象とする飲食物は通常の飲食物というよりは、経口投与用の医薬組成物ということができる。このように、両者の上記の差異は、単なる表現上の違いであり、両者は同一のものである。」との主旨の主張をしている。
しかしながら、医薬(医薬組成物)は、人の病気の診断、治療、処置又は予防のために使用する物であるのに対して、飲食物は、人体の栄養を主目的として飲食する物であって、甲第1号証に記載の向精神用医薬組成物と本件請求項1に係る発明の飲食物とは、用途からみて明確に区別される物である。
また、異議申立人が指摘するとおり、甲第1号証には、確かに「トリオレイン5mlにセサミン14.3mgを溶解し、これをオレンジスライスに注入したものを、この試験期間中動物に毎日与えた。」(第5欄47〜49行)と記載されている。
しかし、上記箇所は、向精神反応を惹起させるというセサミンの薬理効果を確認するための動物試験に関する記載であり、この動物試験に供した「オレンジスライス」をもってセサミン含有飲食物が記載されているということはできない。
以上のとおり、異議申立人の上記主張を検討するも、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
また、本件請求項2ないし19に係る発明も、同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。

29条2項違反について>
甲第1号証には、上記<29条1項3号違反について>の項で述べたとおりの向精神用医薬組成物が記載され、そこにはさらに、前記医薬組成物にセサミンを利用するにあたって、セサミンはゴマ油から濃縮又は単離された形態で使用されることが記載されているが、甲第1号証には、ゴマ油からセサミンを単離し、これを添加して飲食物を製造すること、あるいはゴマ油からセサミン等のリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得て、この抽出物を添加して飲食物を製造すること、及び該飲食物は血中コレステロール及び血中中性脂質を低下させる作用を有することは記載されていない。
この点について更に検討すると、飲食物の鮮度保持・保存、栄養素の補充強化、品質の向上等を目的として、これらの作用・機能を有することが知られている天然物由来の化合物を添加して飲食物を製造することは、当業者において広く行われているということができる。
しかしながら、医薬組成物中に主成分として含まれる薬効成分を飲食物に
使用することは、安全性等の観点から規制されており、食品加工の技術分野において、このような薬効成分を添加して飲食物を製造することは通常行われていない。
ゴマ油から単離したセサミンがヒト又は動物に対して向精神反応を惹起する薬理作用を有し、該セサミンを向精神用医薬として使用することが甲第1号証に記載されているとしても、かかる記載に基づいてセサミンを飲食物に利用しようとは当業者において考えないのが普通である。
してみると、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとすることはできない。
また、本件請求項2ないし19に係る発明も、同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得えたものとすることはできない。
次に、甲第2号証には、栄養保険薬として強力ゴールドビタゲン内服液がアンプル形態であること等が記載され、甲第3号証には、ゴマサラダ油の精製工程において脱色処理のために使用する酸性白土存在下で加熱することによりセサミンの約半分量がエピ化してエピセサミンを生成することが記載されているが、これら刊行物には、ゴマ油からセサミンを単離し、これを添加して飲食物を製造すること、あるいはゴマ油からセサミン等のリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得て、この抽出物を添加して飲食物を製造することを教示する記載はない。
さらに、甲第4号証には、ゴマに含まれる成分であるセサミン等の合成中間体として有用であるテトラヒドロフラン誘導体に関し「この発明の目的は、上記要領に応え、たとえば動脈硬化抑制作用、制癌作用等の期待されるゴマの成分である(-)-セサモリン、(-)-セサミン、………」と記載されているが、前記「期待される」という文言から、直ちにセサミンが動脈硬化抑制作用及び制癌作用を有することが、すでに実験等により確認されていたという事実を認めることはできない。
甲第4号証の上記箇所は、上述のとおり客観的な裏付けのない記載であり、このような記載はセサミンを添加して飲食品を製造することの動機付けとはなり得ない。
そして、本件請求項1に係る発明は、セサミンを飲食物に添加することにより、血中コレステロール及び血中中性脂質を低下させる作用を有する飲食物が得られる等の特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。 してみると、本件請求項1に係る発明は、甲第2号証の記載内容を参考にするも、甲第1、3及び4号証の記載に基づいて当業者が容易になし得たものではない。
また、本件請求項2ないし19に係る発明も、同様の理由により、甲第1、3及び4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1ないし19に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし19に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
リグナン類含有飲食物
(57)【特許請求の範囲】
1.セサミンを内容組成物の1重量%以上添加したセサミン含有飲食物。
2.セサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である、請求項1に記載の飲食物。
3.前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項1又は2に記載の飲食物。
4.セサミンを内容組成物の0.1重量%以上添加したセサミン含有液体飲料。
5.セサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項4に記載の液体飲料。
6.前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項5又は6に記載の液体飲料。
7.血中コレステローノレ低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲食物。
8.飲食物にセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン含有飲食物の製造方法。
9.セサミンの添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である、請求項8に記載の方法。
10.セサミンの添加量が内容組成物の0.01重量%〜10.0重量%である、請求項8又は9に記載の方法。
11.セサミンの添加量が内容組成物の1重量%以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
12.前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加される、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
13.前記セサミン添加飲食物が、血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
14.単離されたセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加したセサミン含有飲食物。
15.単離されたセサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項14に記載の飲食物。
16.血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項14または15のいずれか1項に記載の飲食物。
17.飲食物に単離されたセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン含有飲食物の製造方法。
18.単離されたセサミンの添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である請求項17に記載の方法。
19.前記セサミン添加飲食物が血中コレステローノレ低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する請求項17または18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、降コレステロール作用及び/または降中性脂質作用を有するリグナン類化合物を含有する食品に関する。
〔従来の技術〕
近年、成人病として増加の一途をたどりつつある動脈硬化の最も重要な危険因子と考えられている高脂血症は、遺伝性、非遺伝性のものも含まれるが、血清コレステロールもしくは血清トリグリセライド値が上昇する病気であり、特に低比重リポ蛋白コレステロールは動脈内膜細胞に取り込まれて沈着し、動脈粥状硬化の主因となると考えられている。
従来、抗高脂血症剤としては、高コレステロール血症用にγ-オリザノール、ソイステロール、メリナミド、パンテチン、ニコチン酸製剤、クロフィブラート系誘導体、蛋白同化ホルモン、プロブコール及びコレスチラミンが高トリグリセライド血症用に、パンテチン、ニコチン酸トコフェロール、蛋白同化ホルモン、ニコチン酸誘導体、クロフィブラート系誘導体及びデキストラン硫酸が治療薬として使用されてきたが、これらの中には胃腸障害、発癌性、肝障害などの副作用のあるものがあり、機能性食品の機能性因子として食品中に使用することができなかった。
ところで、例えば、バターはコレステロール含量が非常に高く(コレステロール約220mg/100g)、カロリーも非常に高い(700カロリー以上/100g)が、それにも拘らず、バターは特に人気のある製品である。バターの人気は主として、その独特の特徴的な風味によるものであり、この風味がバターの食品成分としての広範囲な受容性と用途の根拠である。しかし、高コレステロール食物が心疾患の発生率の増加と関係することから、健康専門家はコレステロールの摂取を減少するかまたは抑制するために、食物中のバターを除去もしくは低減することをすすめているのが現状であり、こういった問題を解決する手段として、アブラハム・アイ・バカル等は「バター風味の顆粒及びその製造法」(特開平1-95740)を記載しているが、これはあくまでも風味の強化であり、バター本来のうま味を得ることはできなかった。一般に食品には、バター以外にも食品を摂取することで血清コレステロール及び血清トリグリセライドの上昇を伴う食品が多く、解決方法としては風味を有する擬似的な食品を発明する以外はなかった。そこで、本来の食品に加えることのできる無害な天然物で、嗜好に影響を与えず、しかも安全な降コレステロール作用及び降中性脂質作用を有する物質を有する飲食物の開発が強く望まれている。
〔発明が解決しようとする課題〕
従って本発明は、降コレステロール作用及び降中性脂質作用を有する、天然物で安全な物質を添加した飲食物を提供しようとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、上記の目的を達成するため種々研究した結果、胡麻種子、胡麻粕及び胡麻油中より単離したセサミン(本明細書において「リグナン類化合物」、「リグナン類」又は「リグナン」と称する場合がある)が、血中コレステロール及び血中中性脂質を低下させる作用を有する上に安全性が高く、しかも、精製品は無味無臭で白色を呈しているため、飲食品への配合に適するものであることを見い出し、本発明を完成した。
また、リグナン類化合物高含有の胡麻種子等からの抽出物は、香ばしいゴマの香りを有するものであるため、同時に、ゴマの香りをも付加することも可能である。
従って本発明は、リグナン類化合物1種類又は複数種類を合計0.001重量%以上含有することを特徴とするリグナン類含有飲食物;及びリグナン類化合物を含有する抽出物を0.004重量%以上含有することを特徴とするリグナン類含有飲食物を提供する。
〔具体的な説明〕
本発明の食品に添加するリグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物を得る方法として次の手順で行うことができる。まず、リグナン類化合物を主成分とする抽出物を胡麻油から得るには、胡麻油とは実質的に非混和性であり且つリグナン類化合物を抽出・溶解することができる種々の有機溶剤を用いて抽出・濃縮することで得られる。このような有機溶剤として、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メタノール、エタノール等を挙げることができる。リグナン類化合物を主成分とする抽出物を得るには、例えば胡麻油と上記の溶剤のいずれかとを均一に混合した後、低温において静置し、遠心分離等の常法に従って相分離を行い、溶剤画分から溶剤を蒸発除去することにより得られる。さらに具体的には、胡麻油を2〜10倍、好ましくは6〜8倍容量のアセトンに溶かし、-80℃で一晩放置する。その結果油成分が沈殿となり、濾過により得た濾液から有機溶剤を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が得られる。あるいは、胡麻油を熱メタノール又は熱エタノールで混合した後、室温において静置し、溶剤画分から溶剤を蒸発除去することにより得られる。さらに具体的には、胡麻油を2〜10倍、好ましくは5〜7倍容量の熱メタノール(50℃以上)又は熱エタノール(50℃以上)で混合し激げしく抽出する。室温に静置あるいは遠心分離等の常法に従って相分離を行い、溶剤画分から溶剤を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が得られる。又超臨界ガス抽出も利用できる。この抽出物より、各々のリグナン類化合物を得るためには、抽出物をカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留、液々交流分配クロマトグラフィー等の常法に従って処理することにより目的とする化合物を単離すればよい。さらに具体的には、逆相カラム(5C18)、溶離液にメタノール/水(60:40)を使って、上記抽出物を高速液体クロマトグラフィーで分取し、溶媒を留去した後、得られた結晶をエタノールで再結晶化することでセサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール等の各リグナン類化合物が得られる。用いる胡麻油は精製品でもよく、また胡麻油の製造過程で脱色工程前のいずれの粗製品でもよくさらに、胡麻種子あるいは胡麻粕(脱脂胡麻種子、残油分8〜10%)であってもよい。この場合、胡麻種子あるいは胡麻粕を必要により破砕した後、任意の溶剤、例えば胡麻油からの抽出について前記した溶剤を用いて常法により抽出することができる。抽出残渣を分離した後、抽出液から蒸発等により溶剤を除去することにより抽出物が得られる。このように調製された胡麻種子抽出物、胡麻粕抽出物あるいは粗製品の胡麻油抽出物からはセサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール以外に、セサモリン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、2,6-ビス-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタン、又は2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-6-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェノキシ)-3,7-ジオキサビシクロ〔3.3.0〕オクタンの各リグナン類化合物が同様の手法で得られる。なお、リグナン類化合物の精製法及び抽出物を得る方法は、これに限られるものではない。さらに、上記リグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物は胡麻油、胡麻粕、及び胡麻種子から得たものに限定したわけではなく、上記リグナン類化合物を含む天然物をすべて使用できるのは明らかであり、例えば五加皮、桐木、白果樹皮、▲ひつ▼▲ばつ▼等をあげることができる。又、降コレステロール活性及び降中性脂質活性を有している限り、リグナン類化合物の吸収を高めるために誘導体の形で使用することもできる。
本発明のリグナン類化合物もしくはリグナン類化合物を主成分とする抽出物を含有することを特徴とするリグナン類含有食品の種類は特に限定されない。しかし、降コレステロール作用及び降中性脂質作用を考慮すると、油脂を含む食品への添加が考えられる。例えば、肉、魚、ナッツ等の油脂を含む天然食品、中華料理、ラーメン、スープ等の調理時に油脂を加える食品、天プラ、フライ、油揚げ、チャーハン、ドーナッツ、カリン糖等の熱媒体として油脂を用いた食品、バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、即席ラーメン、キャラメル、ビスケット、アイスクリーム等の油脂食品又は加工時油脂を与えた加工食品、おかき、ハードビスケット、あんパン等の加工仕上時油脂を噴霧又は塗布した食品等を上げることができる。リグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物は、本来食用油脂中に含まれていた有効成分及びその抽出物であるため、油脂への添加は容易で、上記の食品等に添加する上でも都合が良い。しかし、本発明は油脂食品に限っているわけではなく、あらゆる食品に添加しコレステロール及び中性脂質改善食品とすることができる。
本発明において、リグナン類化合物の使用量については特に制限はないが、含有する食品に対して0.001重量%以上、20重量%以下が望ましい。特に0.01〜10.0重量%の範囲が好ましい。0.001重量%未満では効果が低く、20重量%を越えると対象の食品によっては、風味の上で好ましくない場合もある。又、リグナン類化合物を主成分とする抽出物のリグナン類化合物の含量は25%以上が望ましい。さらに、サイクロデキストリン包接化合物とした後、この粉末を使用することもできる。
次に、本発明の意義の一端を示す。バターはバター脂肪またはクリーム、ミルク固体及び天然着色剤から製造される非常にポピュラーな食品であり、塩をも含んでいる。バターの脂肪含量は通常約80%である。バター製造は、牛乳を遠心分離して得られるクリームをそのままあるいは乳酸発酵を行って、これに撹動操作(チャーニング)を施すことによって脂肪球皮膜を破壊して脂肪を粒状に融合させ食塩を加えて練圧操作(ワーキング)を行い均等な組織として製品とする。このようにして出来るバターは、その独特な特徴的な風味によって人気のある製品である。しかし、バターはコレステロール含量が非常に高い(コレステロール約220mg/100g)ため、健康専門家はコレステロールの摂取を減少するかまたは抑制するために食物中のバターを除去もしくは低減することをすすめている。そこで、本発明のリグナン類化合物もしくはリグナン類化合物を主成分とする抽出物をバターに加えることで、摂取後のコレステロールの上昇を抑える効果があり、本発明は類似的な食品の発明ではないので、バター本来のうまみを得ることを可能とする。なお、リグナン類化合物もしくはリグナン類化合物を主成分とする抽出物はバター製造工程のいずれで添加してもよい。特に練圧操作(ワーキング)で加えるのが好ましい。
本発明は食品の品質を高める目的で使用することもできる。マヨネーズは食用油と食酢を、卵黄のレシチンを乳化剤として混合させたものであり、さらに、添加物として砂糖、食塩、マスタード、ホワイトペッパーなどが使われる。マヨネーズ、さらにドレッシングはO/W型の乳化で水層が主体になっており、JAS規格ではマヨネーズは油分65%以上で乳化剤として卵を使用し、ドレッシングは油分65%以上で乳化剤として卵以外の物も使用しうるサラダドレッシングと卵を用いないフレンチドレッシングに大別される。ここで問題となるのが乳化剤として使用する卵黄である。人では卵黄摂取による血清コレステロール増加が実験的に明らかになっており、マヨネーズの品質を高級化するために卵黄を多量に使用することができなかった。しかし、本発明のリグナン類化合物もしくはリグナン類化合物を主成分とする抽出物をマヨネーズに用いる食用油に添加することで、マヨネーズ摂取後のコレステロールの上昇を抑えることが可能となり、マヨネーズに用いる卵黄の量をふやし、品質を上げることが可能となる。さらに、乳化剤に卵黄を用いたサラダドレッシングに本発明を使用し品質を高めることができる。
本発明に用いたリグナン類化合物又はリグナン類化合物を主成分とする抽出物は、他の物質と併用することにより機能性因子としての効果を高めることができる。この場合1〜3個の二重結合を炭素鎖中に有する炭素原子数16〜20個を有する脂肪酸、好ましくはγ-リノレン酸(6,9,12-オクタデカトリエン酸)もしくはジホモ-γ-リノレン酸(8,11,14-エイコサトリエン酸)との併用が望まれる。さらに、併用する際の形態は脂肪酸をそのままの形か、あるいはナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩又はメチルエステル、エチルエステル等のエステルが上げられる。又、これらの脂肪酸を含有する油脂類も上げられる。
以上、リグナン類化合物もしくはリグナン類化合物を主成分とする抽出物の作用及びこれらを含有する食品に関して、降コレステロール作用及び降中性脂質作用について説明したが、特願平1-052950に記載されているようにリグナン類化合物又はリグナン類化合物を主成分とする抽出物がジホモ-γ-リノレン酸をアラキドン酸に変換するΔ5-不飽和化酵素を特異的に阻害する阻害剤となりうることが見出されている。そして、ジホモ-γ-リノレン酸含量の増加に伴いそのエイコサノイドを上昇させることで種々の薬理効果が期待でき、例えば抗炎症作用、抗血栓作用、血圧降下作用等が期待でき、関連する疾患、例えば炎症性疾患、心臓欠管及び血栓症の疾患、精神医学的疾患、胸部及び前立腺疾患、糖尿病、子宮内膜症、栄養素欠乏、月経周期不規則、ならびに悪性腫瘍の治療に利用できる。したがって、本発明の機能性として抗血栓作用、抗炎症作用及び血圧降下作用等をあげることができる。さらに、これら作用がプロスタグランジン1群由来の効果より、γ-リノレン酸及びジホモ-γ-リノレン酸を併用することで効果を有意義に高めることができる。
次に、実施例により、この発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
胡麻油240gに対してアセトン1.8Lを加え溶かし、-80℃で一晩放置した。その結果油成分が沈殿となり、濾過により得た濾液からロータリーエバポレーターで有機溶媒を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が11.25g得られた。抽出物中のリグナン類化合物を分析した結果セサミン9.6%、エピセサミン12.7%、セサミノール及びエピセサミノール3.5%で、抽出物中のリグナン類化合物の含量は25.8%であった。
実施例2
胡麻油16.5kgに熱メタノール(60℃)94.5lを加え激げしく混合し抽出した。室温で一晩静置し、上層のメタノールからロータリーエバポレーターで有機溶媒を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が424g得られた。抽出物中のリグナン類化合物を分析した結果、セサミン5.2%、エピセサミン7.0%、セサミノール及びエピセサミノール2.2%で、抽出物中のリグナン類化合物の含量は14.4%であった。
実施例3
実施例2で得たリグナン類化合物を主成分とする抽出物424gにアセトン3.21を加え溶かし、-80℃で一晩放置した。実施例1と同様に、濾過により得た濾液から有機溶媒を留去して、リグナン類化合物を主成分とする抽出物が103g得られた。抽出物中のリグナン類化合物を分析した結果、セサミン19.6%、エピセサミン30.6%、セサミノール及びエピセサミノール10.2%で、抽出物中のリグナン類化合物の含量は60.4%であった。
実施例4
サラダ油180mlに実施例3で得たリグナン類化合物を主成分とする抽出物0.9gを加え溶かした。次に、容器に卵黄1個、食塩3g、洋からし1g、砂糖、香辛料、化学調味料を入れ、食酢を3ml加えて泡立て器で強くかき混ぜ、マヨネーズのベースを得た。そして、食酢12ml及びリグナン類化合物と溶かしたサラダ油180mlをマヨネーズのベースにかきまぜながら加え、リグナン類含有マヨネーズを得た。
実施例5
バター製造工程の撹動操作(チャーニング)でバターミルクが除かれた、バター脂肪100gに実施例3で得たりグナン類化合物を主成分とする抽出物を2g加えて練圧操作(ワーキング)を行い均等な組織として、リグナン類含有バターを得た。
実施例6
実施例5で得たリグナン類含有マヨネーズ及び実施例6で得たリグナン類含有バターを、それぞれの実施例でリグナン類化合物を加えないで調製したマヨネーズ及びバターと、その味覚の違いについて、専門パネル5人による評価を行った。その結果、リグナン類化合物を添加することで食品本来の品質に影響を与えなかった。
実施例7
4週令(102g)の雄SD系ラットを3週間飼育した。飼料はバターを10%含み、実施例5で得たリグナン含有バター及びリグナン類化合物を含まないバターを用いた(それぞれリグナン有及びリグナン無群とした)。3週間後、体重、肝重量、血漿コレステロール、血漿トリグリセライド、及び血漿リン脂質を測定した。この結果を第1表に示す。
これらの結果から明らかなように、リグナン類化合物を含有する食品を与えても、3週間の飼育中、体重の増加量、肝重量は差はなく成長に影響しなかった。そして、リグナン類含有食品を与えることで、血漿中のコレステロール及びトリグリセライドの低下が認められた。

実施例8
実施例3で得たリグナン類化合物を主成分とする抽出物からΔ5-不飽和化酵素阻害剤(特願平1-052950)記載の方法に従って、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノールを得た。そして、実施例4及び実施例5記載のリグナン類化合物を主成分とする抽出物の代わりに、セサミンをそれぞれの実施例に対して、0.54g、1.2g使用して、セサミン含有マヨネーズ及びセサミン含有バターを得た。同様に本発明記載の各種リグナン類化合物を単独であるいは組み合わせてリグナン類含有食品を得ることができる。なお、各リグナン類化合物は無色(白色)結晶で、無味無臭より食品本来の品質に影響を与えなかった。
実施例9
β-シクロデキストリン2gを水20mlに添加しここにスターラーで撹拌しながら、少量のアセトンに溶かしたセサミン0.2gを加え室温で4時間撹拌した。そして、凍結乾燥を行い、セサミン10%含有シクロデキストリン包接化合物2.2gを得た。この粉末1gをジュース100mlに加えてセサミン含有ジュースを調製した。
実施例10
本発明の各種リグナン類化合物及びリグナン類化合物を主成分とする抽出物についても実施例9と同様の操作を行った所、それぞれを含有するジュースが得られた。
実施例11
食用大豆硬化油、食用綿実硬化油、大豆サラダ油、パーム油、及びトウモロコシ油がそれぞれ、30%、10%、40%、10%、10%からなる原料油脂82gにセサミン1gを加え溶かし、水15g、食塩1.2g、モノグリセライド0.3g、レシチン0.1g、カロチン微量、フレーバー0.00001g、及び乳固形分1.4gを加え乳化した後、急冷練り合わせを行い、セサミン含有マーガリンを調製した。
 
訂正の要旨 <訂正の要旨>
「【請求項1】セサミンを内容組成物の1重量%以上添加したセサミン含有飲食物。
【請求項2】セサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である、請求項1に記載の飲食物。
【請求項3】前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項1又は2に記載の飲食物。
【請求項4】セサミンを内容組成物の0.1重量%以上添加したセサミン含有液体飲料。
【請求項5】セサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項4に記載の液体飲料。
【請求項6】前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加されたものである、請求項5又は6に記載の液体飲料。
【請求項7】血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項8】飲食物にセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン及び/又はエピセサミン含有飲食物の製造方法。
【請求項9】セサミン添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】セサミンの添加量が内容組成物の0.01重量%〜10.0重量%である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】セサミンの添加量が内容組成物の1重量%以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】前記セサミンが、天然物からの抽出物中に含有される形で添加される、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】前記セサミン添加飲食物が、血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】単離されたセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加したセサミン含有飲食物。
【請求項15】単離されたセサミンの添加量が内容組成物の20重量%以下である請求項14に記載の飲食物。
【請求項16】血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する、請求項14または15のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項17】飲食物に単離されたセサミンを内容組成物の0.001重量%以上添加することを特徴とする、セサミン含有飲食物の製造方法。
【請求項18】単離されたセサミンの添加量が内容組成物の0.001重量%〜20重量%である請求項17に記載の方法。
【請求項19】前記セサミン添加飲食物が血中コレステロール低下作用又は血中中性脂質低下作用を有する請求項17または18のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。
(b)明細書第4頁第10行に記載の「セサミン及び/又はエピセサミン」を「セサミン」に訂正する。
(c)明細書第5頁第8行〜第6頁第1行に記載の「本発明で使用するセサミン及びエピセサミンは、これらを単独で、または混合して使用することができる。」を削除する。
(d)明細書第14頁第14行に記載の「特出願平」を「特願平」に訂正する。
(e)明細書第20頁第2〜3行に記載の「特出願平」を「特願平」に訂正する。
異議決定日 2001-05-08 
出願番号 特願平1-187497
審決分類 P 1 651・ 531- YA (A23L)
P 1 651・ 121- YA (A23L)
P 1 651・ 113- YA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 光本 美奈子上條 肇  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 斎藤 真由美
大高 とし子
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3001589号(P3001589)
権利者 サントリー株式会社
発明の名称 リグナン類含有飲食物  
代理人 今城 俊夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 鶴田 準一  
代理人 竹内 英人  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 鶴田 準一  
代理人 村社 厚夫  
代理人 入山 宏正  
代理人 福本 積  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 石田 敬  
代理人 中村 稔  
代理人 西島 孝喜  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 小川 信夫  
代理人 西山 雅也  
代理人 箱田 篤  
代理人 福本 積  

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