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審決分類 審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  H04S
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H04S
管理番号 1044992
異議申立番号 異議2000-74260  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-28 
確定日 2001-05-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3045106号「音処理装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3045106号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3045106号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成63年9月2日にした特願昭63-220010号の一部を平成6年5月23日に新たな特許出願とした特願平6-132611号の一部を平成9年5月23日に新たな特許出願としたものであって、平成12年3月17日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人ローランド株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月6日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(i)訂正事項a
訂正前の特許請求の範囲である、
「【請求項1】
複数の音場のうちから任意の音場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された音場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、複数のスピーカを有する音発生手段であって、音源に対応する音を発生するものと、
前記選択手段で選択された音場の前後方向における前記音源の位置を示す位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が音場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が音場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
この変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が音場の後方になるほど前記音の音像定位が遠方になるように前記音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が音場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものとを備えた音処理装置。
【請求項2】
複数の音場のうちから任意の音場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された音場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、
複数のスビーカを有する音発生手段であって、複数の音源にそれぞれ対応した複数の音を発生するものと、
前記選択手段で選択された音場の前後方向における前記複数の音波の位置をそれぞれ示す複数の位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの各位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、各位置情報が示す音源位置が音場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に各位置情報が示す音源位置が音場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力される音像定位制御情報に応じて、音源位置が音場の後方になるほど該音の音像定位が遠方になるように該音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記複数の音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記複数の音のうちの各音毎に該音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバープ効果を付加する効果付加手段であって、前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力されるリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が後方になるほどリバープ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものとを備えた音処理装置。」
を、以下のように訂正することを求めるものである。
「【請求項1】
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、音源に対応する音を発生するものと、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記音源の位置を示す位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの位置情報を音像定位制御情報とリバープ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
この変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど前記音の音像定位が遠方になるように前記音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものとを備えた音処理装置。
【請求項2】
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、複数のスピーカを有する音発生手段であって、複数の音源にそれぞれ対応した複数の音を発生するものと、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記複数の音源の位置をそれぞれ示す複数の位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの各位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、各位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に各位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力される音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど該音の音像定位が遠方になるように該音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのりバーブ特性情報に応じて前記複数の音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記複数の音のうちの各音毎に該音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力されるリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものとを備えた音処理装置。」
(アンダーライン部分が訂正部分)

(ii)訂正事項bないしf
発明の詳細な説明中の【0001】【0004】【0005】【0006】【0100】の訂正を求めるものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、上記訂正事項bないしfは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正特許法附則6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法126条(平成5年改正法)第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
上記のとおり訂正が認められたので、本件請求項1、2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりに特定されるものである。

(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人ローランド株式会社は、「本件明細書の特許請求の範囲ならびに発明の詳細な説明の記載に不備があり、請求項1ならびに請求項2に係る各特許は、特許法第36条第3項および同条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたことから、請求項1ならびに請求項2に係る各特許はいずれも同法第113条第1項第4号により取り消すべきものである。」と主張し、以下のようにその理由を述べている。

(b-1)本件特許公報においては、「音場」がどのような方向性を持つものであるかについては何らの記載もなく、「音場」自体にどのような方向性があるのかが不明である。このため、本件特許公報の請求項1ならびに請求項2において「音場の前後方向」あるいは「音場の後方」と記載されているが、何をもって「音場の前後方向」あるいは「音場の後方」とするのかを定めることができない。
本件特許公報の請求項における「第2の情報発生手段」は、2次元の平面上において音源位置を指定するものであると認定されるが、上記したように2次元の平面は「演奏場」を意味するものであって、3次元の「音場」を意味するものではない。即ち、本件特許公報における「音場」の定義が、請求項の記載と発明の詳細な説明の記載とで一致していないものであり、このため「音場」の定義が明確ではなく、このままでは「音場」に音源位置を指定する際にその位置を定めることができない。
上記において説明したように、本件特許公報の発明の詳細な説明の欄における「音場」の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に明確かつ十分には記載されていない。即ち、請求項1ならびに請求項2に係る各特許は、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(b-2)仮に「音場」の方向性が認められたとしても、「音場の前後方向」あるいは「音場の後方」がいずれの方向を向くべきであるのかを特定することはできない。即ち、本件特許公報の請求項1ならびに請求項2の記載は不明確であり、請求項1ならびに請求項2に係る各特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(b-3)本件特許公報の請求項1ならびに請求項2に係る特許発明においては、「音場」を基準として「音源」を設定することが前提になっている。ところが、本件特許の原出願である特願平6-1132611号の公開特許公報(特開平7-5873)第2頁第2欄第28行乃至同頁同欄第29行には、「演奏場内の音源位置(楽器位置)に応じた音場」と記載されている。つまり、「音場」は、演奏場内に配置された音源位置に応じて生ずるものである。このように、本来「音場」とは音源位置の存在を前提として定義されるものであるのに対し、本件特許公報の請求項1ならびに請求項2においては、「音場」の位置の存在を前提として音源位置が定義されているものであって、音場と音源位置との因果関係が無視されており、その記載内容が不明確なものとなっている。即ち、本件特許公報の請求項1ならびに請求項2の記載は不明確であり、請求項1ならびに請求項2に係る各特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(b-4)本件特許公報の請求項2に関して、本件特許公報第2頁第3欄第28行に「音源位置が後方になるほど」なる記載があるが、何における後方なのか、あるいは、何に対しての後方なのかが何ら記載されておらず不明である。従って、請求項2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

(3)判断
(b-1)について
訂正により「音場」が「演奏場]に変更された。そして、演奏場の前後方向や演奏場の後方を定めたり、演奏場内で音源位置を指定したりすることは、当業者にとって明確な事項である。すなわち、演奏場の前とは、通常、聴取者が存在する場所をいうから、演奏場の後とは、演奏場の前の反対側であり、演奏場の前後方向とは演奏場の前と後とを結ぶ方向であること明らかである。また、演奏場の後方とは、演奏場の前方の反対側であり、演奏場の奥の方であることは明らかである。さらに、演奏場内で音源位置を任意に指定できることは、本件の図3等の説明から明らかである。
したがって、請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第36条第3項に規定する要件を満たしている特許出願に対してなされたものである。

(b-2)について
訂正により「音場」が「演奏場]に変更された。したがって、聴取者の存在する場所を基準にして演奏場の前が定められるから、演奏場の前後方向や演奏場の後方を特定できることは明らかである。
したがって、本件特許公報の請求項1及び請求項2の記載は明確であり、請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしている特許出願に対してなされたものである。

(b-3)について
訂正により「音場」が「演奏場」に訂正され、明確になった。したがって、本件特許公報の請求項1及び請求項2の記載は明確であり、請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしている特許出願に対してなされたものである。

(b-4)について
請求項2は、「・・・音源位置が演奏場の後方になるほど・・・」と訂正され、明確になった。したがって、請求項2に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしている特許出願に対してなされたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
音処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、音源に対応する音を発生するものと、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記音源の位置を示す位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
この変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど前記音の音像定位が遠方になるように前記音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものと
を備えた音処理装置。
【請求項2】
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、複数の音源にそれぞれ対応した複数の音を発生するものと、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記複数の音源の位置をそれぞれ示す複数の位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの各位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、各位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に各位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力される音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど該音の音像定位が遠方になるように該音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記複数の音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記複数の音のうちの各音毎に該音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力されるリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものと
を備えた音処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子楽器、自動演奏機等に用いるに好適な音処理装置に関し、特に演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を簡単に模擬可能とした音処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、所定方向の位置情報に基づいて音像定位及びリバーブ効果を制御する音処理装置としては、位置情報を手前から後方に向う方向の位置変化に対して単純に値を減少する態様で制御情報に変換すると共にこの制御情報に応じて音像定位及びリバーブ効果を制御するようにしたものが知られている(例えば、特開昭57-116500号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来技術によると、音像を近くに定位させるとリバーブ効果が大きくなり、音像を遠くに定位させるとリバーブ効果が小さくなるだけで、例えば、演奏場の奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を模擬することができないという問題点がある。
【0004】
この発明の目的は、演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を簡単に模擬することができる新規な音処理装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る音処理装置は、
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段[図2のHSS]と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段[図10の122]と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、音源に対応する音を発生するもの[図1の38〜44,46R,46L,48R,48L]と、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記音源の位置を示す位置情報を発生する第2の情報発生手段[図1の20,34B]と、
この第2の情報発生手段からの位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するもの[図1の16,18、図5の(A),(B)]と、
この変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど前記音の音像定位が遠方になるように前記音の音像定位を制御する制御手段[図6の50]と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるもの[図6の58〜64]と
を備えたものである。
【0006】
この発明の構成によれば、選択手段で所望の演奏場を選択すると、第1の情報発生手段は、選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生し、第2の情報発生手段は、選択された演奏場の前後方向における音源位置を示す位置情報を発生する。この位置情報は、変換手段により音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換される。変換の際には、位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように位置情報が音像定位制御情報に変換されると共に、位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように位置情報がリバーブ効果制御情報に変換される。制御手段は、変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど発生音の音像定位が遠方になるように発生音の音像定位を制御する。効果付加手段は第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて発生音に関するリバーブ特性が設定されるもので、発生音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する。効果付加手段では、リバーブ効果を付加する際に、変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御される。従って、演奏場を選択すると共に必要に応じて音源位置を指定するだけの簡単な操作により演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を模擬することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態に係る電子楽器の回路構成を示すもので、この電子楽器は、楽音発生がマイクロコンピュータによって制御されるようになっている。
【0008】
図1において、バス10には、鍵盤回路12、操作子群14、中央処理装置(CPU)16、ROM(リード・オンリィ・メモリ)18、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)20、レジスタ群22、フロッピーディスク装置24、表示パネルインターフェース26、タッチパネルインターフェース28、音源インターフェース30、外部入力インターフェース32等が接続されている。
【0009】
鍵盤回路12は、一例として上鍵盤、下鍵盤及びペダル鍵盤を有するもので、各鍵盤の各鍵毎に鍵操作情報が検出されるようになっている。
【0010】
操作子群14は、楽器パネルに設けられた楽音制御用乃至演奏制御用の各種操作子を含むもので、各操作子毎に操作情報が検出されるようになっている。この発明の実施に関係する操作子については図2を参照して後述する。
【0011】
CPU16は、ROM18にストアされたプログラムに従って楽音発生のための各種処理を実行するもので、これらの処理については図8乃至図12を参照して後述する。ROM18には、プログラムの他に、図5について後述するような楽音パラメータ制御情報もストアされている。
【0012】
RAM20は、フロッピーディスク装置24から読出した1演奏場分の表示・制御データをストアするためのものである。
【0013】
レジスタ群22は、CPU16による各種処理に際して利用される多数のレジスタを含むもので、これらのレジスタのうち、この発明の実施に関係するものについては後述する。
【0014】
フロッピーディスク装置24は、複数の演奏場について各演奏場毎に表示・制御データが記録されたフロッピーディスクを有するもので、このフロッピーディスクからRAM20へのデータ書込みについては図4を参照して後述する。
【0015】
表示パネルインターフェース26及びタッチパネルインターフェース28は、楽器位置設定装置34を構成する表示パネル34A及びタッチパネル34Bにそれぞれ接続されたもので、インターフェース26は表示パネル34Aに表示データDSを供給し、インターフェース28は、タッチパネル34Bからタッチ位置を検出し、そのタッチ位置に応じた楽器位置データPSを受取るようになっている。なお、楽器位置設定装置34については、図3を参照して後述する。
【0016】
音源インターフェース30は、割当回路36に音源制御情報TSを供給するもので、音源制御情報TSとしては、鍵盤操作に基づくキーオン信号、キーオフ信号、押鍵対応のキーデータ(音高データ)等の演奏情報と、ROM18から読出した楽音パラメータ制御情報と、RAM20から読出した音色指定データ及びリバーブ制御データとを供給可能である。
【0017】
外部インターフェース32は、他の電子楽器からの鍵盤操作に基づく演奏情報又は記憶(記録)装置から読出した演奏情報を入力するためのもので、入力された演奏情報は、鍵盤回路12からの演奏情報と共に又はその代りに音源インターフェース30を介して割当回路36に供給可能である。
【0018】
割当回路36は、供給される音源制御情報TSを第1の音源(TG1)38、第2の音源(TG2)40、第3の音源(TG3)42又はパラメータ制御回路44に割当てて供給するもので、TG1(38)〜TG3(42)はいずれもディジタル楽音信号を発生可能なものである。TG1(38)には、第1音源制御情報S1として、上鍵盤操作に基づく演奏情報及び楽器1(例えばピアノ)に対応する音色指定データが供給され、TG2(40)には、第2音源制御情報S2として、下鍵盤操作に基づく演奏情報及び楽器2(例えばバイオリン)に対応した音色指定データが供給され、TG3(42)には、第3音源制御情報S3として、ペダル鍵盤操作に基づく演奏情報及び楽器3(例えばバス)に対応した音色指定データが供給され、パラメータ制御回路44には、楽音パラメータ制御情報PD及びリバーブ制御データRVDが供給される。この場合、上鍵盤、下鍵盤及びペダル鍵盤のうちの任意の鍵盤の操作に基づく演奏情報に代えて外部入力インターフェース32からの演奏情報を供給することもでき、このようにすれば、他の電子楽器又は自動演奏機との合奏が可能となる。
【0019】
パラメータ制御回路44は、TG1(38)からのディジタル楽音信号S11、TG2(40)からのディジタル楽音信号S12、TG3(42)からのディジタル楽音信号S13についてそれぞれ楽音パラメータ制御情報PDに基づいて楽音パラメータを制御したり、リバーブ制御データRVDに基づいてリバーブ効果を付与したりするもので、このような制御を受けた楽音信号を左右のチャンネル別にD/A(ディジタル/アナログ)変換して右チャンネル用アナログ楽音信号AS(R)及び左チャンネル用アナログ楽音信号AS(L)を送出する。パラメータ制御回路44の具体例については図6及び図7を参照して後述する。
【0020】
楽音信号AS(R)は、出力アンプ46Rを介して右スピーカ48Rに供給され、楽音として発音される。また、楽音信号AS(L)は、出力アンプ46Lを介して左スピーカ48Lに供給され、楽音として発音される。
【0021】
図2は、操作子群14に属する操作子のうち、この発明の実施に関係する操作子の配置例を示したものである。
【0022】
演奏モードスイッチPMSは、ノーマル演奏モードを指定するためのもので、これをオンすると、その近傍の発光素子PMLが点灯し、演奏場の音場の再現を伴わない通常のマニアル演奏(又は自動演奏)が可能となる。
【0023】
演奏場選択スイッチHSSとしては、N個のスイッチが並設されており、各スイッチ毎にその近傍に発光素子HSLが設けられている。所望の演奏場に対応するスイッチHSSをオンすると、その近傍の発光素子HSLが点灯し、オンしたスイッチに対応する演奏場の音場を再現した状態でマニアル演奏(又は自動演奏)が可能となる。そして、発光素子HSLが点灯中であるスイッチHSSをオンすると、発光素子HSLが消灯すると共に発光素子PMLが点灯し、ノーマル演奏モードに戻る。
【0024】
図3は、楽器位置設定装置34を上面から見た図であり、この装置34は、スイッチマトリクスを有する透明性のタッチパネル34Bの裏面に表示パネル34Aを配置した構成になっている。
【0025】
表示パネル34Aには、例えばコンサートホール等の演奏場のシンボルHSYと、「HALL1」等の演奏場名HNMと、楽器表示枠FLMと、楽器シンボルISYと、楽器名INMとが表示される。この場合、楽器表示枠FLMは、タッチパネル34Bに対応した長方形領域内に表示可能であり、楽器シンボルISY及び楽器名INMは、各楽器表示枠FLM内に1組ずつ表示される。一例として、最も左の楽器表示枠FLM内には、楽器シンボルISYとしてピアノのシンボルが表示されると共に楽器名INMとして「PIANO」の文字が表示され、同様にして右寄りの楽器表示枠FLM内にはバイオリンのシンボル及び「VIOLIN」の文字が、最も右の表示枠FLM内にはバスのシンボル及び「BASS」の文字がそれぞれ表示される。
【0026】
タッチパネル34Bの前後方向の一辺の長さをHとし、左右方向の一辺の長さをWとすると、Hは演奏場の奥行きに対応し、Wは演奏場の幅(又は間口)に対応する。タッチパネル34Bの左奥端部を原点P0(0,0)とし、前後方向をy軸左右方向をx軸とすると、ピアノの位置はxy座標を用いてPP(x1,y1)として表わされ、同様にしてバイオリンの位置はPV(x2,y2)、バスの位置はPB(x3,y3)として表わされる。
【0027】
図3の楽器位置設定装置34では、例えばピアノが表示された楽器表示枠FLMに対応するタッチパネル34Bの一部に指等でタッチし、このタッチ状態のまま前後左右に移動すると、この移動につれて楽器表示枠FLMも楽器名INM及び楽器シンポルISYと共に移動し、移動及びタッチを止めた位置が最終的にピアノの表示位置となる。このことは、バイオリン及びバスを表示した他の楽器表示枠FLMについても同様である。従って、3種類に楽器について各楽器毎に演奏場内の楽器位置をタッチ操作のみで簡単に且つ任意に設定可能である。
【0028】
図4は、表示・制御データのフォーマットを示すもので、前述したフロッピーディスクには、演奏場1(例えば小ホール)、演奏場2(例えば大ホール)、演奏場3(例えば野外ステージ)…演奏場N(例えばジャズクラブ)にそれぞれ対応するN演奏場分の表示・制御データが記録されている。
【0029】
図2に示した演奏場選択スイッチHSSの操作により所望の演奏場を選択すると、選択された演奏場に関する表示・制御データがフロッピーディスク装置24からRAM20に転送され、図4で演奏場1について例示するようなフォーマットRAM20に書込まれる。
【0030】
1演奏場分のデータは、先頭の識別データIDに続けて演奏場関連データ及び3楽器分の楽器関連データを配列したものである。演奏場関連データは、演奏場名データHNMDのバイト数K0を表わすデータ、演奏場シンボルデータHSYDのバイト数L0を表わすデータ、リバーブ制御データRVDのバイト数M0を表わすデータ、演奏場名を表示するための演奏場名データHNMD、演奏場シンボルを表示するための演奏場シンボルデータHSYD、リバーブ効果を制御するためのリバーブ制御データRVDからなっている。HAD0は、演奏場関連データをRAM20に書込んだ際の先頭アドレスであり、これと各データのバイト数K0、L0、M0とを用いてRAM20からのデータHNMD、HSYD、RVDの読出しが制御される。
【0031】
楽器関連データは、楽器1(例えばピアノ)、楽器2(例えばバイオリン)及び楽器3(例えばバス)にそれぞれ関連した表示・制御データからなるものである。ここで、3楽器分のデータフォーマットは互いに同様であるので、代表として楽器1について述べる。
【0032】
楽器1関連データは、楽器名データINMDのバイト数K1を表わすデータ、楽器シンボルデータISYDのバイト数L1を表わすデータ、音色指定データTSDのバイト数M1を表わすデータ、楽器名を表示するための楽器名データINMD、楽器シンボルを表示する楽器シンボルデータISYD、楽器対応の音色(例えばピアノ音色)を指定するための音色指定データTSD、x方向の楽器位置(x1)を表わすデータ、y方向の楽器位置(y1)を表わすデータからなっている。HAD1は、楽器1関連データをRAM20に書込んだ際の先頭アドレスであり、これと各データのバイト数K1、L1、M1とを用いてRAM20からのデータ1NDM、ISYD、TSD及び楽器位置データ(x1,y1)の読出しが制御される。なお、この後の説明の便宜上、RAM20内で、x1を表わすデータの記憶領域X1とし、y1を表わすデータの記憶領域をY1とする。
【0033】
楽器2及び楽器3に関連するデータについても、それぞれ先頭アドレスHAD2、HAD3が読出制御に用いられる。また、X1に対応する記憶領域X2、X3と、Y1に対応する記憶領域Y2、Y3とが存在するが、これらの図示は省略してある。
【0034】
図5(A)〜(D)は、ROM18に記憶された5種類の楽音パラメータ制御情報を示すものである。
【0035】
ROM18において、図5(A)に対応する記憶部には,楽器のy座標の各正規化値Py毎に第1の乗算係数MP1が記憶されている。第1の乗算係数MP1は、演奏場の前後方向の音像定位を決定するもので、Py=1のときMP1=1とすることにより演奏場最前部の楽器位置に対応した音像を再現可能にしている。
【0036】
図5(B)に対応する記憶部には、楽器のy座標の各正規化値Py毎に第4の乗算係数MP4が記憶されている。第4の乗算係数MP4は、演奏場の前後方向のリバーブ効果の大きさを決定するもので、Py=0のときはMP4=1とすることにより演奏場最後部の楽器位置に対応した大きなリバーブ効果の付与を可能にしている。
【0037】
図5(C)に対応する記憶部には,楽器のy座標の各正規化Py毎にフィルタ定数CFが記憶されている。フィルタ定数CFは、後述するローパスフィルタのカットオフ周波数を決定するもので、Py=1のときfs/2(fsはディジタル楽器信号のサンプリング周波数)とすることにより演奏場最前部の楽器位置に対応して音域が高音側に広がるのを可能にしている。
【0038】
図5(D)に対応する記憶部には,楽器のx座標の各正規化値Px毎に第2及び第3の乗算係数MP2及びMP3が記憶されており、ラインL2及びL3はそれぞれMP2及びMP3の値変化を示している。これらの乗算係数MP2及びMP3は、演奏場の左右方向の音像定位を決定するもので、Px=1でMP2=1、MP3=0とすることにより演奏場最右部の楽器位置に対応した音像を再現可能にすると共に、Px=0でMP2=0、MP3=1とすることにより演奏場最左部の楽器に対応した音像の再現を可能にしている。
【0039】
なお、楽器のy座標の正規化値Py及びx座標の正規化値Pxは、RAM20から読出した楽器位置データ(例えばx1,y1を表わすデータ)又は楽器位置設定位置34からの楽器位置デーPSに応じて定められるものである。
【0040】
図6は、パラメータ制御回路44の一構成例を示すもので、この回路44は、TG1、TG2、TG3からのディジタル楽音信号S11、S12、S13をそれぞれ入力とする3つのパラメータ制御部CN1、CN2、CN3を含んでいる。これらのパラメータ制御部CN1〜CN3は互いに同様の構成であるので、代表としてCN1について説明する。
【0041】
TG1からのディジタル楽音信号S11は、乗算器50に供給され、第1の乗算係数MP1と乗算される。乗算器50からの乗算出力は、ローパスフィルタ52に供給され、フィルタ定数CFに応じて周波数特性が制御される。
【0042】
ローパスフィルタ52からの出力は、乗算器54に供給されて第2の乗算係数MP2と乗算されると共に、乗算器56に供給されて第3の乗算係数MP3と乗算され、さらに乗算器58に供給されて第4の乗算係数MP4と乗算される。
【0043】
乗算器54及び56の乗算出力は、それぞれ加算器60及び62に供給される一方、乗算器58の乗算出力は、リバーブ回路64に供給される。
【0044】
リバーブ回路64は、一例として図7に示す構成のものを用いることができる。図7の回路では、入力データINを加算器ADDを介して遅延回路DLに供給すると共に、この遅延回路DLの出力を乗算器MPLを介して加算器ADDに供給し、リバーブ制御データRVDのうちの遅延制御データRVD1に応じて遅延回路DLの遅延時間を設定し、データRVDのうちの乗算係数データRVD2を乗算器MPLに供給して遅延回路DLの出力に乗算し、遅延回路DLからリバーブ効果の付与された出力データOUTを取出すようになっている。
【0045】
リバーブ回路64の出力は、加算器60及び62に供給され、それぞれ乗算器54及び56の出力と加算される。
【0046】
加算器60の出力は、右チャンネル用のディジタル楽音信号SR1であり、加算器66に供給される。また、加算器62の出力は、左チャンネル用のディジタル楽音信号SL1であり、加算器70に供給される。
【0047】
加算器66には、パラメータ制御部CN2及びCN3から右チャンネル用ディジタル楽音信号SR2及びSR3が供給され、信号SR1と加算される。また、加算器70には、パラメータ制御部CN2及びCN3から左チャンネル用ディジタル楽音信号SL2及びSL3が供給され、信号SL1が加算される。
【0048】
加算器66の加算出力は、D/A変換器68により右チャンネル用アナログ楽音信号AS(R)に変換される。また、加算器70の加算出力は、D/A変換器72により左チャンネル用アナログ楽音信号AS(L)に変換される。
【0049】
図6の回路構成によれば、乗算器50において、第1の乗算係数MP1を図5(A)に示すように楽器のy座標正規化値Pyに応じて変化させることにより演奏場の前後方向の音像移動が可能となる。ローパスフィルタ52において、カットオフ周波数を決定するフィルタ定数CFを図5(C)に示すように楽器のy座標正規化値Pyに応じて変化させることにより演奏場の前後方向の楽器位置に応じた微妙な音色変化を模擬できる。乗算器54及び56において、第2及び第3の乗算係数MP2及びMP3を図5(D)に示すように楽器のx座標正規化値Pxに応じて変化させることにより演奏場の左右方向の音像移動が可能となる。乗算器58において、第4の乗算係数MP4を図5(B)に示すように楽器のy座標正規化値Pyに応じて変化させることにより演奏場の前後方向の楽器位置に応じたリバーブ効果の大きさ変化を模擬できる。
【0050】
この実施形態では、加算器60、62、66、70を設けて制御済みの楽音信号を電気的に混合した後2つのスピーカで放音するようにしているが、更に多くのスピーカを設けて制御済みの楽音信号を空間的に混合するようにしてもよく、このようにすれば混合用の加算器は適宜省略できる。
【0051】
レジスタ群22に属するレジスタのうち、この発明の実施に関係するものを列挙すると、次の通りである。
【0052】
(1)モードレジスタMOD…これは、0〜2のいずれかの値がセットされるもので、0ならばノーマル演奏モード、1ならば楽器位置設定モード、2ならば演奏場の音場の再現を伴う演奏モード(以下では単に再現演奏モードと称する)をそれぞれ表わす。
【0053】
(2)スイッチナンバレジスタSNO…これは、演奏場選択スイッチHSSのうち、オンされたスイッチのナンバn(1〜Nのいずれか)がセットされるものである。
【0054】
(3)スイッチプラグSFL1〜SFLN…これらのフラグは、それぞれ第1〜第Nの演奏場選択スイッチHSSに対応したもので、オンされたスイッチに対応するフラグに1がセットされる。
【0055】
(4)先頭アドレスレジスタADR0〜ADR3…これらのレジスタは、それぞれ図4の先頭アドレスHAD0〜HAD3がセットされるものである。
【0056】
(5)x座標レジスタPX…これは、x座標正規化値Pxがセットされるものである。
【0057】
(6)y座標レジスタPY…これは、y座標正規化値Pyがセットされるものである。
【0058】
(7)制御変数レジスターi…これは、制御変数iがセットされるものである。
【0059】
図8は、メインルーチンの処理の流れを示すもので、このルーチンは電源投入等に応じてスタートする。
【0060】
まず、ステップ80では、イニシャライズルーチンを実行し、各種レジスタを初期セットする。そして、ステップ82に移る。
【0061】
ステップ82では、MODに0をセットし、ノーマル演奏モードとする。また、MOD=0に基づいて発光素子PMLを点灯させる。
【0062】
次に、ステップ84では、MODの値が0又は2か(演奏モードか)判定し、この判定結果が肯定的(Y)であれは、ステップ86に移る。
【0063】
ステップ86では、鍵盤回路12においていずれかの鍵盤にキーオンイベントありか判定し、この判定結果が肯定的(Y)であればステップ88に移り、発音処理を行なう。すなわち、キーオンイベントのあった鍵盤に対応する音源に対し、キーオン信号及び押鍵対応のキーデータを供給し、押された鍵に対応する楽音を発生させる。
【0064】
ステップ88の処理が終ったとき又はステップ86の判定結果が否定的(N)であったときは、ステップ90に移り、いずれかの鍵盤にキーオフイベントありか判定する。この判定結果が肯定的(Y)であればステップ92に移り、消音処理を行なう。すなわち、キーオフイベントのあった鍵盤に対応する音源に対し、キーオフ信号及び離鍵対応のキーデータを供給し、離された鍵に対応する楽音を減衰開始させる。
【0065】
ステップ92の処理が終ったときあるいはステップ84又は90の判定結果が否定的(N)であったときは、ステップ94に移り、演奏場選択スイッチHSSのいずれかにオンイベントありか判定する。この判定結果が肯定的(Y)であればステップ96に移り、図9について後述するようにHSSオンのサブルーチンを実行する。
【0066】
ステップ96の処理が終ったとき又はステップ94の判定結果が否定的(N)であったときは、ステップ98に移り、その他の処理(例えば音色、音量等の設定操作に応じた処理)を行なう。
【0067】
この後は、ステップ84に戻り、これ以降の処理を上記したと同様に繰返す。
【0068】
図9は、HSSオンのサブルーチンを示すもので、ステップ100では、オンされたスイッチHSSのナンバnをSNOにセットする。そして、ステップ102に移る。
【0069】
ステップ102では、MODの値が2か(再現演奏モードか)判定し、この判定結果が肯定的(Y)であればステップ104に移る。ステップ104では、SNOにセットされたナンバnに対応するフラグSFLnが1か(ナンバ対応の演奏場の音場再現中か)判定する。この判定結果が肯定的(Y)であればステップ106に移る。
【0070】
ステップ106では、MODに0をセットすると共にPMLを点灯する。また、SFL1〜SFLNにいずれも0をセットし、すべてのHSLを消灯し、この後図8のルーチンにリターンする。これは、ナンバn対応の演奏場の音場を再現中にナンバnのスイッチHSSがオンされた場合であり、この場合には、再現演奏モードをキャンセルしてノーマル演奏モードに戻る。
【0071】
ステップ102又は104の判定結果が否定的(N)であったときは、ステップ108に移り、MODに1をセットすると共にPMLを消灯する。この結果、ステップ102からステップ108にきた場合にはノーマル演奏モードから楽器位置設定モードに移ることになり、ステップ104からステップ108に来た場合には再現演奏モードから楽器位置設定モードに移ることになる。
【0072】
次に、ステップ110では、SFLnに1をセットすると共に、それに対応する発光素子HSLを点灯する。また、SFLn以外のフラグSFLに0をセットし、それぞれに対応する発光HSLを消灯する。この結果、オンされたスイッチHSSに対応する演奏場が選択されたことがナンバn対応の発光素子の点灯により表示される。この後、ステップ112に移る。
【0073】
ステップ112では、ナンバn対応の演奏場に関する表示・制御データをフロッピーディスク装置24からRAM20に転送して書込む。そして、ステップ114に移り、図4に示したような先頭アドレスHAD0〜HAD3をそれぞれADR0〜ADR3にセットする。そして、ステップ116に移る。
【0074】
ステップ116では,表示パネル34Aに初期表示を行なう。すなわち、RAM20からナンバn対応の演奏場関連データのうち演奏場名データHNMD及び演奏場シンボルデータHSYDを読出し、これらのデータに基づいて表示パネル34Aの所定位置に演奏場名HNM及び演奏場シンボルHSYを表示する。ここで、データHNMDの読出しにあたっては、ADR0にセットされた先頭アドレスHAD0に3を加えることでHNMDの先頭アドレスが指定され、HNMDのバイト数K0分の読出しが行なわれる。また、データHSYDの読出しにあたっては、[HAD0+3]にK0を加えることでHSYDの先頭アドレスが指定され、HSYDのバイト数L0分の読出しが行なわれる。
【0075】
HNM及びHSYの表示に続いて、RAM20からナンバn対応の楽器関連データのうち3楽器分の楽器名データINMD、楽器シンボルデータISYD及び楽器位置データ(x1,y1等を表わすデータ)を読出し、これらのデータに基づいて表示パネル34Aに楽器位置毎に楽器名INM及び楽器シンポルISYを楽器表示枠FLMで囲むようにして表示する。ここで、各楽器毎のデータ読出しを代表として楽器1について述べると、ADR1にセットされた先頭アドレスHAD1に3を加えることでINMDの先頭アドレスが指定され、INMDのバイト数K1分の読出しが行なわれる。また、[HAD1+3]にK1を加えることでISYDの先頭アドレスが指定され、ISYDのバイト数L1分の読出しが行なわれる。さらに、、[HAD1+3+K1]にL1及びM1を加えることで楽器位置データの先頭アドレスが指定され、x1及びy1を表わすデータが順次に読出される。
【0076】
この後は、ステップ118で図10について後述するように音像初期化のサブルーチンを実行する。そして、ステップ120で図11について後述するように音像移動のサブルーチンを実行した後、図8のルーチンにリターンする。
【0077】
図10は、音像初期化のサブルーチンを示すもので,ステップ122では、RAM20からリバーブ制御データRVDを読出してリバーブ回路64にセットする。データRVDの読出しにあたっては、[HAD0+3+K0]にHSYDのバイト数L0を加えることでRVDの先頭アドレスが指定され、RVDのバイト数M0分の読出しを行なう。
【0078】
次に、ステップ124では、制御変数iを1とする。そして、ステップ126に移り、i>3か判定する。この判定結果が否定的(N)であればステップ128に移る。
【0079】
ステップ128では、RAM20から楽器iの音色指定データTSDを読出し、i番目の音源TGiにセットする。データTSDの読出しにあたっては、[HAD1+3+K1]にISYDのバイト数L1を加えることでTSDの先頭アドレスが指定され、TSDのバイト数M1分の読出しを行なう。ステップ128の後は、ステップ130に移る。
【0080】
ステップ130では、図12について後述するように特性設定のサブルーチンを実行する。そして、ステップ132でiの値を1アップしてから、ステップ126に戻り、これ以降の処理をi>3となるまで繰返す。
【0081】
i>3となると、3楽器分の音色設定処理及び特性設定処理が終ったことになり、ステップ126の判定結果が肯定的(Y)になるのに応じて図9のルーチンにリターンする。
【0082】
図11は、音像移動のサブルーチンを示すもので、ステップ140では、タッチパネル34Bから楽器位置データ(座標値x,y)ありか判定し、この判定結果が肯定的(Y)であればステップ142に移る。
【0083】
ステップ142では、制御変数iを1とする。そして、ステップ144に移り、座標値x,yが楽器iの楽器表示枠FLM内にあるか判定する。この判定結果が肯定的(Y)であればステップ146に移る。
【0084】
ステップ146では、RAM20を記憶領域Xi,Yiにそれぞれ座標値x,yを書込む。そして、ステップ148に移り、表示パネル34Aにおける楽器iの表示位置をXi,Yiの座標値に応じて変更する。
【0085】
この後、ステップ150で図12について後述するように特性設定のサブルーチンを実行してから、ステップ152に移り、ステップ140と同様にしてパネル34Bからのデータありか判定する。この判定結果が肯定的(Y)であればステップ146に戻り、これ以降の処理を上記したと同様に繰返す。この結果、パネル34Bにタッチしたままタッチ位置を変更すると、そのタッチ位置の変更に追従してXi,Yiの内容が書換えられると共にパネル34A上の楽器iの表示位置も変更される。
【0086】
ステップ152の判定結果が否定的(N)であったときは、ステップ140に戻り、これ以降の処理を上記したと同様に繰返す。
【0087】
例えば、上記のようにして楽器1の位置を設定した後、楽器2について位置設定を行なうべくパネル34Bにタッチすると、ステップ140及び142を経てステップ144にくるが、このときのステップ144の判定結果は、楽器2の楽器表示枠FLM内にx,yがあるので、否定的(N)となり、ステップ154に移る。
【0088】
ステップ154では、iの値を1アップする。そして、ステップ156に移り、i>3か判定する。この例では、i=2であるので、ステップ156の判定結果が否定的(N)となり、ステップ144に戻る。
【0089】
ステップ144では、x,yが楽器2のFLM内にあるので、判定結果が肯定的(Y)となる。この後、ステップ146以下の処理を上記したと同様に行なうことにより楽器2について位置変更が可能となる。
【0090】
この後、楽器3について位置設定を行なうべくパネル34Bにタッチすると、ステップ140及び142を経てステップ144にきた後ステップ154及び156を2回通るとステップ144の判定結果が肯定的(Y)となる。そして、ステップ146以下の処理を上記したと同様に行なうことにより楽器3について位置変更が可能となる。
【0091】
パネル34Bにおいて、いずれの楽器表示枠FLMにも該当しない個所にタッチした場合には、ステップ154を3回通るとステップ156の判定結果が肯定的(Y)となり、ステップ140に戻る。また、パネル34Bにタッチしなかったときは、ステップ140の判定結果が否定的(N)となり、ステップ158に移る。ステップ158では、演奏モードスイッチPMSにオンイベントありか判定し、ない(N)ならばステップ140に戻る。
【0092】
上記のようにして楽器1〜3のうち1つ以上の楽器について位置設定を行なった後又はこのような位置設定を行なう前にスイッチPMSをオンすると、ステップ158の判定結果が肯定的(Y)となり、ステップ160に移る。
【0093】
ステップ160では、MODに2をセットすると共に、発光素子PMLを点灯する。そして、図9のルーチンにリターンする。この結果、楽器位置設定モードから再現演奏モードに移ることになり、選択した演奏場の音場の再現を伴ってマニアル演奏(又は自動演奏)を行なえるようになる。
【0094】
なお、ステップ146〜152で新たに設定した楽器位置(Xi,Yiの書換え後の内容)は装置24内のフロッピーディスクに転送して保存するようにしてもよい。
【0095】
図12は、特性設定のサブルーチンを示すもので、ステップ170では、Xiに記憶されている座標値xを図3に示した長さWで割って得た正規化値PxをPXにセットすると共に、Yiに記憶されている座標値yを図3に示した長さHで割って得た正規化値PyをPYにセットする。
【0096】
次に、ステップ172では、ROM18を用いてPX及びPYの内容(Px及びPy)を図5で述べたように5種類の楽音パラメータ制御情報PD(第1〜第4の乗算係数MP1〜MP4及びフィルタ定数CF)に変換し、これらの情報を図6に示すようにパラメータ制御回路44の被制御部にそれぞれセットする。
【0097】
この結果、図10の場合には、選択した演奏場の音場がRAM20からの読出データに基づいて再現されるようになり、図11の場合には、選択した演奏場の音場が楽器位置設定装置34での位置設定に基づいて再現されるようになる。
【0098】
ステップ172の後は、元のルーチン(図10又図11)にリターンする。
【0099】
なお、上記した実施形態では、タッチパネルを用いて楽器位置を指定するようにしたが、タッチパネルの代りにボリューム、スイッチ等の操作子を用いて楽器位置を指定するようにしてもよい。また、演奏場と楽器の組合せを選択するようにしたが、演奏場と楽器を別々に選択可能としてもよい。
【0100】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、複数の演奏場のうちから選択された演奏場に関してリバーブ特性を示すリバーブ特性情報と演奏場内の音源位置を示す位置情報とを発生すると共に位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換し、音像定位制御情報に応じて音像定位を遠方にするように制御するのに伴ってリバーブ特性情報に基づくリバーブ効果をリバーブ効果制御情報に応じて大きくするように制御する構成にしたので、演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を簡単に模擬可能となる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係る電子楽器の構成を示すブロック図である。
【図2】 操作子配置を示す平面図である。
【図3】 楽器位置設定装置34の上面図である。
【図4】 表示・制御データのフォーマットを示す図である。
【図5】 ROM18の記憶情報を示す図である。
【図6】 パラメータ制御回路44の回路図である。
【図7】 リバーブ回路64の回路図である。
【図8】 メインルーチンを示すフローチャートである。
【図9】 演奏場選択スイッチHSSオンのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図10】 音像初期化のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】 音像移動のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】 特性設定のサブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10…バス、12…鍵盤回路、14…操作子群、16…中央処理装置、18…リード・オンリィ・メモリ、20…ランダム・アクセス・メモリ、22…レジスタ群、24…フロッピーディスク装置、26…表示パネルインターフェース、28…タッチパネルインターフェース、30…音源インターフェース、32…外部入カインターフェース、34…楽器位置設定装置、34A…表示パネル、34B…タッチパネル、36…割当回路、38,40,42…第1〜第3の音源、44…パラメータ制御回路、46R,46L…出力アンプ、48R,48L…スピーカ。
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
明細書の特許請求の範囲の欄を次のように訂正する。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、音源に対応する音を発生するものと、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記音源の位置を示す位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
この変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど前記音の音像定位が遠方になるように前記音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものと
を備えた音処理装置。
【請求項2】
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、複数の音源にそれぞれ対応した複数の音を発生するものと、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記複数の音源の位置をそれぞれ示す複数の位置情報を発生する第2の情報発生手段と、
この第2の情報発生手段からの各位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、各位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に各位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するものと、
前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力される音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど該音の音像定位が遠方になるように該音の音像定位を制御する制御手段と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記複数の音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記複数の音のうちの各音毎に該音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記複数の音のうちの各音毎に該音に対応する音源に関して前記変換手段から出力されるリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるものと
を備えた音処理装置。」
▲2▼訂正事項b
明細書の段落0001を次のように訂正する。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電子楽器、自動演奏機等に用いるに好適な音処理装置に関し、特に演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を簡単に模擬可能とした音処理装置に関する。」
▲3▼訂正事項c
明細書の段落0004を次のように訂正する。
「【0004】
この発明の目的は、演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を簡単に模擬することができる新規な音処理装置を提供することにある。」
▲4▼訂正事項d
明細書の段落0005を次のように訂正する。
「【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る音処理装置は、
複数の演奏場のうちから音場を再現すべき任意の演奏場を選択する選択手段[図2のHSS]と、
この選択手段で選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生する第1の情報発生手段[図10の122]と、
複数のスピーカを有する音発生手段であって、音源に対応する音を発生するもの[図1の38〜44,46R,46L,48R,48L]と、
前記選択手段で選択された演奏場の前後方向における前記音源の位置を示す位置情報を発生する第2の情報発生手段[図1の20,34B]と、
この第2の情報発生手段からの位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換して出力する変換手段であって、前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように該位置情報を音像定位制御情報に変換すると共に前記第2の情報発生手段からの位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように該位置情報をリバーブ効果制御情報に変換するもの[図1の16,18、図5の(A),(B)]と、
この変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど前記音の音像定位が遠方になるように前記音の音像定位を制御する制御手段[図6の50]と、
前記第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて前記音に関するリバーブ特性が設定されると共に前記音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する効果付加手段であって、前記変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御されるもの[図6の58〜64]と
を備えたものである。」
▲5▼訂正事項e
明細書の段落0006を次のように訂正する。
「【0006】
この発明の構成によれば、選択手段で所望の演奏場を選択すると、第1の情報発生手段は、選択された演奏場のリバーブ特性を示すリバーブ特性情報を発生し、第2の情報発生手段は、選択された演奏場の前後方向における音源位置を示す位置情報を発生する。この位置情報は、変換手段により音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換される。変換の際には、位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほど音像定位を遠方にするように位置情報が音像定位制御情報に変換されると共に、位置情報が示す音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果を大きくするように位置情報がリバーブ効果制御情報に変換される。制御手段は、変換手段からの音像定位制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほど発生音の音像定位が遠方になるように発生音の音像定位を制御する。効果付加手段は第1の情報発生手段からのリバーブ特性情報に応じて発生音に関するリバーブ特性が設定されるもので、発生音に対して設定に係るリバーブ特性に従ってリバーブ効果を付加する。効果付加手段では、リバーブ効果を付加する際に、変換手段からのリバーブ効果制御情報に応じて、音源位置が演奏場の後方になるほどリバーブ効果が大きくなるようにリバーブ効果の大きさが制御される。従って、演奏場を選択すると共に必要に応じて音源位置を指定するだけの簡単な操作により演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を模擬することができる。」
▲6▼訂正事項f
明細書の段落0100を次のように訂正する。
「【0100】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、複数の演奏場のうちから選択された演奏場に関してリバーブ特性を示すリバーブ特性情報と演奏場内の音源位置を示す位置情報とを発生すると共に位置情報を音像定位制御情報とリバーブ効果制御情報とに変換し、音像定位制御情報に応じて音像定位を遠方にするように制御するのに伴ってリバーブ特性情報に基づくリバーブ効果をリバーブ効果制御情報に応じて大きくするように制御する構成にしたので、演奏場毎に奥ほどリバーブ効果が大きくなる様子を簡単に模擬可能となる効果が得られる。」
異議決定日 2001-05-07 
出願番号 特願平9-150256
審決分類 P 1 651・ 532- YA (H04S)
P 1 651・ 531- YA (H04S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邊 聡千葉 輝久  
特許庁審判長 井上 雅夫
特許庁審判官 小松 正
石川 伸一
登録日 2000-03-17 
登録番号 特許第3045106号(P3045106)
権利者 ヤマハ株式会社
発明の名称 音処理装置  
代理人 上島 淳一  
代理人 伊沢 敏昭  
代理人 伊沢 敏昭  

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