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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 一部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 H01L |
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管理番号 | 1045026 |
異議申立番号 | 異議2000-74374 |
総通号数 | 22 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-05-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-12-05 |
確定日 | 2001-08-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3049079号「半導体製造装置の製造方法及び半導体装置」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3049079号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]本件発明 本件特許第3049079号(平成2年9月27日出願、平成12年3月24日設定登録)の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1〜3」という。)は、願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の請求項1〜3に記載されたとおりのものである。 [2]特許異議申立ての理由の概要 異議申立人渡部賢一は、次の甲第1〜10号証を提示して、以下に示したとおり、本件発明1〜3についての特許は特許法第113条第1項第2、4号の規定により取り消すべきである旨主張する。 (理由1)本件発明1〜3は、甲第1〜10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜3についての特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (理由2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、本件発明1〜3についての特許は、同法第36条第3項の規定に違反してされたものである。 [3]甲各号証の記載事項 (1)甲第1号証 上記甲第1号証の特開昭58-141523号公報には、半導体のCVDなどの工程に使用される石英管の放熱構造に関する発明が、第3、4図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「石英管の中にSiウエファを収容して加熱すると共に、石英管の両端にパッキングを介して接続された反応ガス流入用フランジから流出用フランジに向けて反応ガスを流して、Siウエファに酸化等の処理を施すようにした半導体製造装置において、前記石英管はその両端近傍の周囲に冷却用の翼板が突出されていることを特徴とする半導体製造装置。」(特許請求の範囲)、 「Oリング8、8′を介挿して接合する石英管端部12、12′は、その周囲に翼(フイン)状の放熱板13、13′を多数配設して熱の放熱面積を拡大させた空冷のラジエーター構造にしてある。」(2頁右上欄4〜8行)、 「本発明の半導体製造装置では、石英管反応炉のシーリングの効率がより完全なものになるため、空気の侵入や反応ガスのもれが防止され、半導体の品質を向上させることができる。」(2頁左下欄10〜14行) 以上まとめると、甲第1号証には、石英管の中にSiウエファを収容して加熱するとともに、反応ガスを流して、SiウエファにCVDの処理を施す際に、石英管反応炉の両端の金属フランジ、石英管端部が高温になり、これに改装されたパッキングが熱におかされて、空気の侵入や反応ガスのもれが生じていたのを、石英管端部の周囲に放熱板を多数配列して空冷ラジエータ構造にしたことにより、このような空気の侵入や反応ガスのもれを防いだことが記載されている。 (2)甲第2号証 上記甲第2号証の特開昭60-224281号公報には、PIN接合を少なくとも1つ有する半導体装置に関する発明が開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「またI型半導体層・・・中の酸素、炭素、窒素の不純物をそれぞれ5×1018cm-3以下、4×1017cm-3、5×1018cm-3以下にせしめることにより多結晶化を促し、加えて接合界面ではミスフィットを除去するためさらに1〜3%の変換効率の向上を促すことができることが推測できる。」(4頁左下欄4〜10行) (3)甲第3号証 上記甲第3号証の特開昭61-502777号公報には、半導体の製造に使用する石英ガラス製のフランジを有する管状の構成部材に関する発明が図1〜4とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「1.石英ガラス又は石英材料から、融着された、又は、溶接されたフランジを有している管、排気鐘、ドーム、又は、ルツボのような管状の構成部材において、フランジ(1;16;22;26)が、薄壁の中空フランジとして形成されていることを特徴とする管状の構成部材。」(請求の範囲1)、 「U形のフランジ1は、管状の構成部材2と一緒に空間6を包囲しており、その中には、接続支管7を介して、冷却媒体、例えば、水、又は、ガスを、供給ないしは運び去られる。」(3頁左上欄16〜19行) (4)甲第4号証 上記甲第4号証の特開昭64-12523号公報には、半導体ウエーハの低圧CVD装置における被熱処理物を収容する熱処理用チューブに関する発明が、第1、2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「耐熱材料によって透明に形成されたチューブ本体の開口部に、肉厚で不透明な縁部を設けた熱処理用チューブ。」(特許請求の範囲)、 「このように各チューブ20A、20Bの開□部に肉厚で不透明な縁部6を取り付けたことによって、比熱を高め、熱伝導を抑えることができるので、シール構造など熱遮断構造の簡略化を実現できるとともに、過熱防止によって不要な生成物の発生をも防止できるのである。」(3頁左下欄16行〜右下欄1行) さらに、第1図及び第2図において、矢視円Aに示したように、チューブ本体4の開口端部がテーパ状に形成されることが示されている。 (5)甲第5号証 上記甲第5号証の特開昭64-44016号公報には、気相成長膜形成装置に使用される石英製反応管に関する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「金属製の蓋とシール材を用いて反応ガスを密封し、加熱器で高温反応部を形成する石英製反応管において、上記の金属製の蓋をする開口部と上記の高温反応部の中間の石英管壁に、幅射熱の遮断板を埋め込んだことを特徴とする石英製反応管。」(特許請求の範囲)、 「このように構成された石英製反応管の動作を説明する。矢印Aのように、高温反応部laから反射を繰り返しながら管壁内を伝播して来た幅射熱は、大部分が黒雲母5で遮断され、黒雲母5を回り込んでOリングに到達するものは極くわずかで、Oリング2の温度が下がった。加熱器4の温度を約850℃とし、バイトン製のOリング2を用いた場合、従来例に比べ寿命が約10倍伸びた。」(2頁右上欄2〜10行) (6)甲第6号証 上記甲第6号証の特開昭64-44017号公報には、気相成長膜形成装置に使用される石英製反応管に関する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「金属製の蓋とシール材を用いて反応ガスを密封し、加熱器で高温反応部を形成する石英製反応管において、上記の金属製の蓋をする開口部と上記の高温反応部の中間の石英管壁に、不透明の石英部分を設けたことを特徴とする石英製反応管。」(特許請求の範囲) 「このように構成された石英製反応管の動作を説明する。矢印Aのように、高温反応部laから反射を繰り返しながら管壁内を伝播して来た幅射熱は、大部分が不透明石英部lbで反射または吸収され、開口部まで伝播する幅射熱は極くわずかで、Oリング2の温度は大幅に低下した。加熱器4の温度を約850℃とし、バイトン製のOリング2を用いた場合、Oリング2の寿命は従来に比べ約10倍に伸びた。」(2頁右上欄3〜11行) (7)甲第7号証 上記甲第7号証の特開昭62-165914号公報には、半導体ウエハに酸化膜などを形成する拡散炉装置に関する発明が第1、2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「半導体ウエハを整列した石英ボートを収納した石英管を加熱し、この石英管内に導入した反応ガスで上記半導体ウエハを熱拡散処理する拡散炉装置において、上記石英管内に石英管と同じ曲率の石英樋を設けたことを特徴とする拡散炉装置。」(特許請求の範囲) さらに、第1図(A)、第2図(A)には、石英管3の開口端部がテーパ状になっていることが示されている。 (8)甲第8号証 上記甲第8号証の特開昭64-46918号公報には、半導体拡散炉用炭化珪素質炉芯管に関する発明が第2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「炭化珪素質の炉芯管本体の端部にフランジを設け、該炉芯管本体のフランジに石英ガラス製のキャップを嵌合して締め具でフランジ接合したことを特徴とする半導体拡散炉用炭化珪素質炉芯管。」(特許請求の範囲)、 「キャップ6の端面にはテフロン又はバイトンゴムからなるOリング7を介して金属製の自動キャップ8が接合されている。」(2頁右上欄18行〜左下欄1行) (9)甲第9号証 上記甲第9号証の特開平2-86120号公報には、半導体デバイスの製造工程において使用する縦型熱処理装置に関する発明が第1、2図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。 「反応容器内で被処理物を気体によって処理するに際し、前記気体による前記反応容器内腐蝕部に非腐蝕性のガスを吹き付けた状態で上記処理を行うことを特徴とする処理方法。」(特許請求の範囲) 「Oリング10は、耐熱性に優れたゴム部材例えばカルレッツ(商品名、デュポン社製)によって形成されている。」(3頁右上欄9〜11行) (10)甲第10号証 上記甲第10号証の「化学大事典」(共立出版株式会社、昭和54年11月10日縮刷版第23刷発行)には、「表1 合成ゴムの種類」(第547頁)には、「BitonA」がフッ素ゴムの一商品であることが示されている。 [4]対比・判断 (1)特許法第29条第2項違反について (1-1)本件発明1 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 甲第1号証に記載された半導体製造装置は、半導体のCVD工程に使用されるものであるから、ウエファに膜を形成することは明らかである。また、甲第1号証に記載されたものは、石英管の中にSiウエファを収容して加熱すると共に、反応ガスを流してSiウエファに処理を施す際に、放熱板によりOリングを冷却している以上、Siウエファを石英管に出し入れする際においても、放熱板によりOリングの温度は低下していることは当然である。 そして、甲第1号証に記載された「石英管反応炉」、「原料ガス」、「ウエファ」、「ガスケット部」、及び「放熱手段」は、本件発明1の「耐熱性材料の容器」、「混合ガス」、「試料」、「パッキング」、及び「放熱板」に相当する。 してみると、両者は、本件発明1の構成に沿って記載すると、「耐熱性材料の容器内で原料ガスを加熱分解して試料に膜を形成する半導体製造装置において、前記膜堆積中および前記膜が堆積される前記試料を前記半導体製造装置に出し入れする際に前記耐熱性の容器と接合するガスケット部の温度が低下するように、前記耐熱性材料の容器のガスケット部周辺に放熱手段を設け、この半導体製造装置を用いて膜を形成する半導体装置の製造方法」の点で一致する。 しかしながら、本件発明1が、試料に多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成する半導体製造装置を用いて、炭素不純物濃度が、1017/cm3以下の前記多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成するのに対し、甲第1号証に記載された発明はこのような膜を形成することは明らかではない点で相違する。 そこで上記相違点について検討する。 ウエハに多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成することは、本件出願当時、フラッシュメモリにおいて周知の技術であり、しかも、甲第1号証には半導体のCVD工程についての開示があることから、甲第1号証に記載された石英管を用いて、ウエハに多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成することは示唆されているとしても、本件発明1のように、ガスケット部周辺に放熱手段を設けた半導体製造装置を用いて、炭素不純物濃度が1017/cm3以下の多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成することについては何らの記載もないし、示唆もされていないことから、上記の半導体製造装置を用いて、炭素不純物濃度が1017/cm3以下の多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成することは容易に想到することはできない。 してみると、甲第2号証に、PIN半導体層のI型半導体層中の炭素の不純物を4×1017cm-3とすることにより多結晶化を促す旨が記載され、また、甲第3〜6号証に、本件発明の放熱手段に相当するものが記載され(甲第3号証に記載された冷却媒体を供給する中空フランジ、甲第4号証に記載された熱処理用チューブの開口部に取り付けた縁部、甲第5号証に記載された石英管壁に埋め込んだ輻射熱の遮断板、甲第6号証に記載された石英管壁に設けた不透明の石英部分。)、さらに、甲第4、7号証に、本件発明の放熱手段の実施例として記載されているテーパ状の石英管端部に相当する、テーパ部を有する石英管端部が記載されているとしても、甲第1号証に記載された石英管に、甲第2〜7号証に記載されたものを組み合わせてみても、本件発明1を容易に想到することはできない。 そして、本件発明1は、容器のガスケット部周辺に放熱手段を設けて、炭素不純物濃度が1017/cm3以下の、多結晶シリコン膜のフローテイングゲートを形成することにより、多結晶シリコン膜を熱酸化したときにできる多結晶シリコン膜の酸化膜について絶縁耐圧を高くすることができるという顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (1-2)本件発明2、3 本件発明2は本件発明1を引用するものであるから、甲第4号証に低圧CVD装置が記載され、また、ゲート酸化膜を熱酸化法により形成することが周知の技術であるとしても、本件発明1が甲第1〜7号証に記載された発明から容易に想到することができない以上、本件発明2についても、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 本件発明3は本件発明1を引用するものであるから、甲第5、6、8、9号証に記載されているように、Oリングとしてゴム部材を用いることが周知の技術であるとしても、本件発明1が甲第1〜7号証に記載された発明から容易に想到することができない以上、本件発明3についても、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 そして、本件発明1〜3は、甲第1〜10号証に記載された発明を如何に組み合わせてみても当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)同法第36条第3項違反について 本件特許明細書には、石英管1のヘリと石英管1の胴体部分との境界をテーパ状12とすることによって、石英管内部ヒータ9からの熱輻射が直接ゴムガスケット3に当たらず途中の空間に放散するので、ゴムガスケット3はさほど過熱されない旨の記載(3頁6欄21行〜29行)があるが、このような記載では、単にテーパを設けると記載するのみで、テーパの角度やテーパの長さ、テーパとゴムガスケットとの位置関係などについては何も記載されておらず、放熱手段として機能し得るテーパの定義が全く不明である旨の主張をしている。 しかしながら、テーパは、放熱手段としての機能を奏するものでさえあれば、どのような角度や長さを有していても、また、ゴムガスケットとの位置関係がどのようなものであっても構わないから、放熱手段として機能し得るテーパの定義が必要である理由は何もない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 [5]むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜3についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1〜3についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願についてされたものとは認めない。 よって、特許法(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-07-16 |
出願番号 | 特願平2-255335 |
審決分類 |
P
1
652・
531-
Y
(H01L)
P 1 652・ 121- Y (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 長谷山 健 |
特許庁審判長 |
関根 恒也 |
特許庁審判官 |
雨宮 弘治 市川 裕司 |
登録日 | 2000-03-24 |
登録番号 | 特許第3049079号(P3049079) |
権利者 | 株式会社東芝 |
発明の名称 | 半導体製造装置の製造方法及び半導体装置 |