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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21H
管理番号 1045034
異議申立番号 異議2001-71211  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-20 
確定日 2001-08-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第3102107号「製紙用添加剤」の請求項1〜2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3102107号の請求項1〜2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯、本件発明
本件特許第3102107号の請求項1〜2に係る発明についての出願は、平成3年11月15日に出願され、平成12年8月25日にその発明について特許権の設定登録がされ、その特許公報は平成12年10月23日発行された。これに対して、平成13年4月20日付けで日本ピー・エム・シー株式会社より、請求項1〜2に係る特許に対し、特許異議の申し立てがなされた。
請求項1〜2に係る発明は、特許請求の範囲請求項1〜2に記載された下記のとおりのものである。
【請求項1】(A)アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドと、(B)アニオン性ビニルモノマーおよび(C)カチオン性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種、必要により(D)(A)以外のノニオン性ビニルモノマー、並びに(E)架橋性ビニルモノマーを共重合させるに際し、(F)連鎖移動性官能基を2個以上有し、かつ重量平均分子量が300以上の化合物を(A)〜(E)のモノマーの総和100重量部に対し0.1〜10重量部添加して得られる共重合体を含有してなる製紙用添加剤。
【請求項2】前記(F)化合物がポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびグリセリンから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の製紙用添加剤。
II.特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特開昭62-104998号公報)、甲第2号証(特開昭54-34409号公報)、甲第3号証の1(特開平2-61197号公報)、を提示して、甲第3号証の2(特開平2-139494号公報)及び甲第3号証の3(特開平3-227482号公報)を提示して、本件請求項1〜2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて、そして、周知事項を示す甲第3号証を考慮すれば一層のこと、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、と主張している。
III.証拠の記載
a.甲第1号証には、次の記載がなされている。
a-1.「(1)水溶性高分子物質(A)、水溶性カチオンモノマーおよび/またはそれらの塩類(B)α,β-不飽和ジカルボン酸および/またはそれらの塩類(C)およびアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド(D)を必須成分とすることを特徴とする、水溶性重合体からなる製紙用添加剤。(2)水溶性高分子物質(A)が5〜50重量%、成分(B),(C)および(D)の各モノマーの総和が50〜95重量%であることを特徴とする製紙用添加剤。」(特許請求の範囲第1〜2項)
a-2.「水溶性高分子物質(A)の代表的なものとしては澱粉類、ポリビニルアルコール類(以下PVA類と略記する。)・・・・、セルロース類、・・・・等が挙げられる。澱粉類は・・・・カチオン化澱粉、・・・・等が挙げられる。PVA類は水溶性であれば全て使用可能であり、そのイオン性の種類は問わない。セルロース類の代表的なものとしては、カルボキシメチルセルロース、・・・・等が挙げられる。」(第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第3行)
a-3.「水溶性高分子物質(A)の量が5〜50重量%、成分(B),(C)及び(D)の各モノマーの総和が50〜95重量%である範囲で実施される。」(第3頁右上欄末行〜左下欄第2行)
a-4.「製紙用添加剤は紙力増強効果、濾水性、填料およびサイズ剤の歩留り効果が求められており、これらの各性能の均衡をはかる事が重要である。これら各性能が共に優れた効果を示す組成は成分(E)モノマーが0.1〜20モル%、成分(C)モノマーが0.1〜15モル%、成分(D)モノマーが99.8〜68モル%なる範囲である。またこれら三成分以外に、(i)アクリル酸、メタクリル酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸およびそれらの塩類、(ii)重合体の水溶性を害しない程度の量のスチレン、アクリルニトリル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の疎水性モノマー、(iii)ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマーおよびそれらの塩類、等のモノマーを用いることは本発明を妨げるものではない。」(第3頁右下欄第3〜18行)、
a-5.「本発明の水溶性重合体のブルックフィールド粘度(以下粘度と略記する)は、濃度が10重量%の場合300〜100,000cps(25℃,ブルックフィールド型粘度計使用・・・以下B型粘度計と略記する。)、特に好ましくは800〜20,000cpsである。極度に低分子量(低粘度)の場合は歩留り効果が劣り、また極度に高分子量(高粘度)の場合は歩留り効果は優れるが、過度の凝集を起こすため紙力に悪影響を及ぼす。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第8行)、
a-6.実施例1には、水溶性高分子物質として、カチオン化澱粉を用い、モノマーとして、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、イタコン酸(IA)、アクリルアミド(AAm)を用い(構成モノマーの割合DM5モル%、IA2モル%、AAm93モル%)、 DM,IA,AAmの全重量とカチオン化澱粉重量比は10:1として、重合反応させて、25℃における粘度が6800cpsの水溶液(A-1)を得たことが示され、実施例19には、水溶性高分子物質として、カルボキシメチルセルロースを用い、モノマーとして、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DPA)、イタコン酸(IA)、アクリルアミド(AAm)を用い(構成モノマーの割合DPA6.5モル%、IA1.5モル%、AAm92モル%)、 DPA,IA,AAmの全重量とカルボキシメチルセルロース重量比は10:3として、重合反応させて、25℃における粘度が4800cpsの水溶液(D-3)を得たことが示され、実施例20には、水溶性高分子物質として、ポリビニルアルコールを用い、モノマーとして、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、イタコン酸(IA)、アクリルアミド(AAm)を用い(構成モノマーの割合DM2.5モル%、IA1.8モル%、AAm95.7モル%)、 DM,IA,AAmの全重量とポリビニルアルコール重量比は10:3として、重合反応させて、25℃における粘度が4300cpsの水溶液(D-4)を得たことが示されている。そして、これらの水溶性重合体を用いて紙力増強剤としての性能試験の結果が第5表に示されている。(なお、実施例20における「カチオン化澱粉」は、「ポリビニルアルコール」の誤記と認められる。)
以上の記載をまとめると、甲第1号証には、単量体50〜95重量%、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子物質(A)5〜50重量%を用いて、水系媒体中で共重合して得られる共重合体を含有してなる製紙用添加剤において、単量体として、水溶性カチオンモノマー(B)、α,β-不飽和ジカルボン酸(C)およびアクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド(D)を共重合させた製紙用添加剤が記載されているといえる。
b.甲第2号証には、製紙用内添処理剤に関して、以下の記載がある。
b-1.「1.デンプン(A)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(B)または(B)75モル%以上および他の単量体25モル%以下とのグラフト重合体からなる製紙用内添処理剤。2.該内添処理剤が紙力増強剤である特許請求の範囲1の製紙用内添処理剤。」(特許請求の範囲第1〜2項)
b-2.「本発明におけるグラフト重合体はデンプン(A)およびカルボキシル基を有する単量体(B)に加えて他のエチレン性不飽和単量体(C)を共重合させたものでもよい。このような単量体としては、前記加水分解によりカルボキシル基を生成する単量体(未加水分解)のほか、下記のものが挙げられる。」(第2頁左下欄第9〜15行)
b-3.「さらに、グラフト重合体は必要により(耐水性付与等の目的で)架橋性単量体(D)を共重合させることができる。」(第3頁左下欄第2〜5行)
c.甲第3号証の1には、製紙用添加剤の製法において、三官能性ビニルモノマーを共重合することが記載されている。
d.甲第3号証の2には、製紙用添加剤の共重合体として、ジビニルモノマーを共重合したものが記載されている。
e.甲第3号証の3には、製紙用添加剤の共重合体として、架橋性単量体を共重合したものが記載されている。
IV.当審の判断
1.請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明の(F)連鎖移動性官能基を2個以上有し、かつ重量平均分子量が300以上の化合物の具体的化合物名には、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールが記載されているから、本件請求項1に係る発明(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)とを対比すると、後者における、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド(D)、α,β-不飽和ジカルボン酸及び(C)水溶性カチオンモノマー(B)及びカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子は、前者における、(A)アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミド、(B)アニオン性ビニルモノマー、(C)カチオン性ビニルモノマー及び(F)連鎖移動性官能基を2個以上有し、かつ重量平均分子量が300以上の化合物に、それぞれ対応するので、両者は、「(A)アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドと、(B)アニオン性ビニルモノマーおよび(C)カチオン性ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種を共重合させるに際し、連鎖移動性官能基を2個以上有しかつ重量平均分子量が300以上の化合物であるカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を単量体総量に対し特定量添加して得られる共重合体を含有してなる製紙用添加剤」である点で軌を一にするが、次の点で相違する。
(1)共重合モノマーの成分について、前者は、架橋性ビニルモノマーを必須としているのに対して、後者は、このようなことを記載していない点(相違点1)、
(2)カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子の単量体に対する添加量が、前者では、単量体総和量100重量部に対して、0.1〜10重量部と特定されているのに対して、後者では、単量体50〜95重量%、水溶性高分子物質5〜50重量%と特定され、実施例1では、単量体:水溶性高分子物質=10:1の添加使用例が開示されているにすぎない点(相違点2)。
(相違点について)
異議申立人は、相違点1に関して、アクリルアミド系製紙用添加剤を製造するに当たり、重合成分として架橋性ビニルモノマーを使用することは、甲第2号証に記載されているから、甲第1号証に記載された発明において、共重合させる単量体として、架橋性ビニルモノマー当業者の使用は、当業者が容易になし得たことであると主張する。そして、周知事項を示す甲第3号証の1〜甲第3号証の3を考慮すれば一層のこと、重合成分として架橋性ビニルモノマーを使用することは、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するので、これらの主張を検討する。
本件請求項1に係る発明は、アクリルアミド系製紙用添加剤の問題点の解決手法として、架橋剤(架橋性ビニルモノマー)を使用することにより分岐構造を持たせ、得られる共重合体の粘度上昇を抑えながらその分子量を増加さえようとする試みがなされているが、架橋剤の反応性が不十分であったり、均一な分岐構造を導入しがたく、製紙用添加剤としての効果が未だ十分でなかったところ、高分子量に(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有してなり、しかも比較的低粘度の製紙用添加剤を提供することを目的とするものである(段落番号【0006】〜【0007】参照)。そして、本件請求項1に係る発明における、(E)架橋性ビニルモノマーを使用した上で、(F)連鎖移動性官能基を2個以上有し、かつ重量分子量が300以上の化合物を、特定量用いることによる、従来品(比較例)に較べて高分子でありながら、ほぼ同様の粘度であり、また優れた紙力増強効果を発現するという効果は、特許明細書の実施例1、3及び4と比較例1、2及び3を対比してみれば明らかである。(段落番号【0024】〜【0029】参照)
一方、甲第2号証には、架橋性ビニルモノマーの使用自体は開示されている。しかし、甲第1号証には、「これら三成分以外に・・・・等のモノマーを用いることは本発明を妨げるものではない。」(上記a-4参照)とされてはいるが、架橋性ビニルモノマーは、高分子量化し凝集を生じさせることが当業者の技術常識であるから、甲第1号証の「極度に高分子量(高粘度)の場合は・・・・過度の凝集を起こすため紙力に悪影響を及ぼす」(上記a-5参照)の記載からみて、甲第1号証に記載された発明において、架橋性ビニルモノマーは、悪影響を及ぼす成分であるために、使用できる成分ではないと認識されるものである。そうすると、甲第1号証に甲第2号証を組み合わせることはできないから、申立人の主張は採用できない。
また、甲第3号証の1〜甲第3号証の3は、本件特許明細書において、先行技術として記載していた、架橋剤の使用を開示しているにすぎず、本件請求項1に係る発明における、(E)架橋性ビニルモノマーを使用した上で、(F)連鎖移動性官能基を2個以上有し、かつ重量分子量が300以上の化合物を、特定量用いることによる効果を示唆するところがない。
上記したように、甲第1号証に記載された発明において、架橋性単量体は使用できる成分ではないと認識されるものであるから、甲第3号証の1〜甲第3号証の3により、架橋性単量体を使用することが周知事項であるといっても、甲第1号証に甲第2号証を組み合わせることはできないから、申立人の主張は採用できない。
2.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、(F)化合物を具体的に特定するものである。
したがって、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明と同様、甲第1号証及び甲第2号証に基づいて当業者が容易になし得た発明であるとすることはできない、また、本件請求項2に係る発明は、甲第3号証の1〜甲第3号証の3による周知事項を考慮しても、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
V.結び
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張及び挙証によって本件請求項1〜2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-07-31 
出願番号 特願平3-328281
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D21H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渕野 留香  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 加藤 志麻子
石井 克彦
登録日 2000-08-25 
登録番号 特許第3102107号(P3102107)
権利者 荒川化学工業株式会社
発明の名称 製紙用添加剤  
代理人 佐野 忠  

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