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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23B
管理番号 1045057
異議申立番号 異議1999-74589  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-06-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-07 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2902231号「乾燥食品の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2902231号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2902231号の請求項1に係る発明についての出願は、平成4年11月18日に特許出願され、平成11年3月19日に特許の設定登録がされ、その後、その特許について異議申立人 日清食品株式会社より特許異議の申立てがされ、当審において取消理由の通知がされ、その指定期間内に特許異議意見書と訂正請求書が特許権者から提出され、更に当審からこの訂正請求に対する訂正拒絶理由が通知されたところ、その指定期間内に特許異議意見書と訂正請求書の手続補正書が特許権者から提出されたものである。

2.訂正請求の補正について
(1)訂正請求の補正内容
特許請求の範囲について
訂正明細書の特許請求の範囲請求項1の記載において、「水分含量が85〜40重量%」を「水分含量85〜70重量%」と補正する。

(2)前記補正の適否
前記補正事項は、軽微な瑕疵の補正ではなく、「水分含量が85〜40重量%」を「水分含量85〜70重量%」に補正することは、特許請求の範囲を減縮しようとするものであって、平成12年6月27日付けの訂正請求書の請求の要旨を変更するものであるから、当該補正は、特許法第131条第2項の規定により認められない。

3.訂正請求について
前記補正は、認められないので、補正前の訂正請求について検討する。
i)訂正の内容
イ)特許請求の範囲の請求項1記載の「30分間〜5時間の条件により熱風乾燥した」を「60分間〜5時間の条件により、熱風で緩慢乾燥した」と訂正する。
ii)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
特許請求の範囲の請求項1において、前記のように熱風の乾燥の処理時間及び処理方法を「60分間〜5時間の条件により、熱風で緩慢乾燥した」と訂正することは、熱風乾燥の処理条件を下位概念のものに限定するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮に相当する。
そして、前記訂正は願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
iii)独立特許要件の判断
前記訂正後の請求項1に係る発明が、本件出願の際独立して特許を受けることができるものかを検討する。
ところで、前記当審がなした訂正拒絶理由の概要は、訂正明細書の請求項1に係る発明は、下記の刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。

刊行物1:特開昭55-120742号公報
上記刊行物1には、以下の記載事項がある。
(1)「適宜選別、裁断、洗滌したねぎ等の葉物類、玉ねぎ等の根物類または、しめじ等の茸類の如き野菜類を脱水処理する工程、比較的低温度にて一次加熱乾燥する工程、ソルビットの如き酸化防止剤を添加混合する工程、予備凍結させる工程、減圧下における二次乾燥する工程を順次施すことを特徴とする野菜類の乾燥処理方法。」(特許請求の範囲第1項)
(2)「この発明は、ねぎ等の葉物類、玉ねぎ等の根物類または、しめじ等の茸類の如き野菜類の乾燥処理方法の改良に係り、適宜選別、裁断、洗浄したねぎ等の葉物類、里芋等の根物類または、しめじ等の茸類の如き野菜類を脱水処理する工程、比較的低温度にて一次加熱乾燥する工程、ソルビットの如き酸化防止剤を添加混合する工程、予備凍結させる工程、減圧下における二次乾燥する工程を順次施すことを特徴とするもので、その実施態様として、葉物類の野菜の一例として、入荷したねぎ類を流水中にて腐敗物、枯葉等を除去洗浄したものを適宜選別、裁断したものの約25kgを使用し、これを洗浄した後、遠心脱水機に入れ約1450rpminで約20〜50秒間残存水分約90%に至るまで脱水処理する。次いで、これを静置型の乾燥機または風速約1m/sec〜3m/secの熱風乾燥機に入れて温度約50℃〜100℃、時間約10分〜30分間にて残存水分約60%まで一次乾燥し、これを酸化防止剤として、ソルビット5%〜20%を添加して、撹拌混合機に入れて添加混合させ、次いで、これを冷凍庫に入れて約-30℃〜-50℃にて約5時間冷凍させ、これを減圧乾燥機に入れて、約12時間残存水分約5%以下まで二次乾燥する。」(第2頁右上欄12行〜同頁左下欄末行)
(3)「この発明は、……(中略)……一次乾燥及び二次乾燥によって、野菜類の品質、色沢、風味、外観共に乾燥前の野菜類と殆ど変化なく、従来乾燥法に較べてきわめて能率的に且つ良質の乾燥野菜類を得させることができて頗る有用である。」(第3頁左下欄下から2行〜同頁右下欄末行)
(訂正明細書の請求項1に係る発明)
訂正明細書の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものと認める。

【請求項1】固形食品を、水分含有量が85〜40重量%になるまで40〜120℃で60分〜5時間の条件により、熱風で緩慢乾燥した後、凍結乾燥処理することを特徴とする乾燥食品の製造方法。
(以下、訂正された請求項1係る発明を「訂正発明」という)
(対比・判断)
上記刊行物1の摘示事項(1)、(2)より、刊行物1には、「適宜、選別、洗滌したねぎ等の葉物類、玉ねぎ等の根菜類または、しめじ等の茸類の如き野菜類を脱水処理する工程、熱風乾燥機に入れて温度約50℃〜100℃、時間約10分〜30分間にて水分約60%まで、一次乾燥する工程、ソルビットの如き酸化防止剤を添加混合する工程、及び凍結乾燥により二次乾燥する工程を順次施す野菜類の乾燥処理方法」の発明が記載されている。
そこで、訂正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、刊行物1記載の発明の「野菜類」は、訂正発明の「固形食品」に相当するので、両者は、固形食品を水分含量が約60重量%になるまで50〜100℃で所定時間、熱風乾燥した後、凍結乾燥処理する乾燥食品の製造方法である点で一致し、以下の点で相違する。
(1)刊行物1記載の発明は、野菜類の洗浄後、脱水処理を施しているのに対し、訂正発明は、そのような処理を施すことを必須の構成要件としていない点。
(2)刊行物1記載の発明は、一次乾燥(熱風乾燥)する工程の後、ソルビットの如き酸化防止剤を添加する工程があるのに対し、訂正発明は、そのような工程を備えていない点。
(3)訂正発明では、乾燥時間が60分〜5時間の条件で、熱風で緩慢乾燥するのに対し、刊行物1記載の発明では、乾燥時間約10〜30分間の条件で熱風乾燥する点。
上記相違点(1)〜(3)について検討する。
相違点(1)について
刊行物1には、洗滌した野菜類を遠心脱水機に入れて脱水処理することが記載されているが、該脱水処理は、予め洗滌した野菜の周りに付着した水を取り除き、次工程の熱風乾燥を効率良く行うためになされるものと認められる。
一方、本件訂正明細書には、予め洗滌した野菜の周りに付着した水を取り除くことについて記載されていないが、熱風乾燥を効率良く行うために予め洗滌した野菜の周りに付着した水を取り除くことは当業者の常套手段であり、訂正発明も、その訂正明細書をみると、実施例1の乾燥前のニンジンの水分は90%と記載されており(訂正明細書第3頁の【実施例1】参照)、野菜を洗浄後、外側に付着された水分を取り除いたものを熱風乾燥の対象としているものと解される。
そうすると、この点で両者間に実質的な相違があるとはいえない。
相違点(2)について
野菜等を凍結乾燥する際に、ソルビットの如き酸化防止剤を添加する前処理を行うことなく凍結乾燥することは、本件出願前周知である(必要であれば、実開昭64-482号のマイクロフィルム、特開昭49-12053号公報、特開昭57-26553号公報、特開昭62-44145号公報(第2頁右上欄16行〜同頁左下欄15行)、特開昭55-165758号公報参照)ことから、刊行物1に記載されている「ソルビットの如き酸化防止剤を添加する工程」を省略して、熱風乾燥後の野菜を直接凍結乾燥することは当業者が容易になし得ることである。
相違点(3)について
野菜等を一定の水分量になるよう熱風乾燥する際に、高い乾燥温度で短時間の熱風乾燥を行うよりも、低い乾燥温度で長時間の熱風乾燥を行う方が乾燥ムラが生じないことは当業者なら容易に想到し得ることであり、かつ野菜、果実等を訂正発明で規定する温度及び時間で熱風乾燥することは本件出願前周知のことである(特開昭51-121547号公報(70℃、120分間)、特開昭53-9343号公報(60〜80℃、2時間)、特開昭58-152440号公報(70℃、約1時間)等参照)から、乾燥時間が60分〜5時間の条件で熱風で緩慢乾燥することは当業者が容易になし得ることである。
そして、訂正発明は、刊行物1に記載のもの(摘示事項(3)参照)に比べて格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
以上のとおり、訂正発明は、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
vi)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、認められない。

4.特許異議申立について
(請求項1に係る発明)
前記のとおり、訂正が認められないので、本件請求項1に係る発明は、訂正前の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】固形食品を、水分含有量が85〜40重量%になるまで40〜120℃で30分間〜5時間の条件により、熱風乾燥した後、凍結乾燥処理することを特徴とする乾燥食品の製造方法。
(以下、本件発明という)

(刊行物1記載の発明)
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭55-120742号公報)には、上記3.iii)において示したとおりの発明が記載されている。

(対比・判断)
本件発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、両者は、固形食品を水分含量が約60重量%になるまで50〜100℃で所定時間、熱風乾燥した後、凍結乾燥処理する乾燥食品の製造方法である点で一致し、以下の点で相違する。
(1)刊行物1記載の発明は、野菜類の洗浄後、脱水処理を施しているのに対し、訂正発明は、そのような処理を施すことを必須の構成要件としていない点。
(2)刊行物1記載の発明は、一次乾燥(熱風乾燥)する工程の後、ソルビットの如き酸化防止剤を添加する工程があるのに対し、訂正発明は、そのような工程を備えていない点。
(3)訂正発明では、乾燥時間が30分〜5時間の条件で熱風乾燥するのに対し、刊行物1記載の発明では、乾燥時間約10〜30分間の条件で熱風乾燥する点。
上記相違点(1)〜(3)について検討する。
相違点(1)について
上記3.iii)の(対比・判断)で述べたように、この点で両者は実質的に相違するとはいえない。
相違点(2)について
上記3.iii)の(対比・判断)で述べた理由と同様の理由で、刊行物1に記載されている「ソルビットの如き酸化防止剤を添加する工程」を省略して、熱風乾燥後の野菜を直接凍結乾燥することは当業者が容易になし得ることである。
相違点(3)について
上記3.iii)の(対比・判断)で述べた理由と同様の理由で、乾燥時間が30分〜5時間の条件で熱風乾燥することは当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明の効果は、刊行物1記載の発明が奏する(摘示事項(3)参照)ものから予期できるものと認められる。
したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-24 
出願番号 特願平4-309056
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A23B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 滝本 晶子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 吉田 一朗
大高 とし子
登録日 1999-03-19 
登録番号 特許第2902231号(P2902231)
権利者 ハウス食品株式会社
発明の名称 乾燥食品の製造方法  

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