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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B05C
審判 一部申し立て 発明同一  B05C
管理番号 1045101
異議申立番号 異議2000-73351  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-12-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-05 
確定日 2001-08-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第3015817号「遠心力を利用した薬液塗布装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3015817号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3015817号は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴い平成7年4月4日(優先日:平成6年4月4日、出願番号:特願平6-66179号)に出願され、平成11年12月24日にその発明について特許が設定登録され、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年5月1日に意見書が提出されたものである。
2.本件発明
本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】内部に薬液の供給される基盤装填用の回転カップを備えた回
転部材と、上記回転部材を高速回転させる駆動機構と、上記回転カップとの結合によって内部に閉鎖空間をつくるフードと、上記フードを吊持して昇降させる吊持手段を備えた昇降機構と、上記フードと吊持手段との間に介在され、フードが上昇された状態でフードと吊持手段とを結合するとともに、フードが回転カップに結合された状態で上記フードと吊持手段との結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部は、フードが上昇された状態でフードの周方向の位置決めが行われるような形状を有していることを特徴とする遠心力を利用した薬液塗布装置。
【請求項2】内部に薬液の供給される基盤装填用の回転カップを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させる駆動機構と、上記回転カップとの結合によって内部に閉鎖空間をつくるフードと、上記フードを吊持して昇降させる吊持手段を備えた昇降機構と、上記フードと吊持手段との間に介在され、フードが上昇された状態でフードと吊持手段とを結合するとともに、フードが回転カップに結合された状態で上記フードと吊持手段との結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部は、上記フードおよび吊持手段のうちのいずれか一方に形成されたフランジと他方に形成された係合孔とから構成され、上記フランジは外側周縁部を有し、上記係合孔はフランジの外側周縁部に対応した内側周縁部を有し、上記外側周縁部と上記内側周縁部とは、それらが相互に当接した状態でフードの周方向の位置決めが行われる形状に形成されていることを特徴とする遠心力を利用した薬液塗布装置。」
3.申立て理由の概要
特許異議申立人井上博史は、証拠方法として甲第1ないし3号証を提出し、本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、あるいは甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明であるから、請求項1ないし2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項あるいは第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
4.取消理由の概要
当審で通知した取消理由の概要は、本件の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平4-347362号(特開平6-190326号)の願書に最初に添付された明細書又は図面(前記甲第3号証と同一)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をしたものと同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないというものである。
5.甲第1ないし3号証の記載内容
本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開平5-169003号公報)には以下の事項が記載されている。
(a)「塗布装置2はベース10、インナーカップ20、アウターカップ30及び蓋部40から構成されている。ベース10には軸受け11が取り付けられ、この軸受け11を貫通してスピンナー装置の中空回転軸12を支承し、この回転軸12上端にインナーカップ20の底板21を固着し、この底板21の上面周縁に環状の壁体22を立設し、この壁体22と底板21とでカップ形状をなすようにしている。」(段落【0010】〜【0011】)
(b)「またインナーカップ20及びアウターカップ30の上方には図1に示すようにアーム50、51を配置している。これらアーム50、51は直線動、回転動、上下動或いはこれらを合成した動きが可能で互いに干渉しないようになっている。そして、アーム50にはレジスト液等の塗布液を滴下するノズルを取り付け、前記蓋部40を支持するアーム51の先端には下方に伸びる軸52を取り付け、この軸52にはノズル孔を穿設し、このノズル孔からチッ素ガスや洗浄液が噴出するようにしている。また、前記軸52にはベアリング及び磁気シールを介してボス部53を回転自在に嵌合し、このボス部53にインナーカップ20の上面開口を閉塞するための円板状をなすアルミニウム製の蓋体41を取り付けている。また、この蓋体41の上方のアーム51の先端下面にはアウターカップ30の上面開口を閉塞するための蓋体42を固着している。」(段落【0016】〜【0017】)
(c)「このため、蓋体41の外周には前記壁体22上面に設けたピン22aに係合する切欠41aを形成し、また蓋体41からは上方に向けてピン45を突出し、このピン45が係合する受け部材46を蓋体42に取り付けている。即ち、蓋体42は前記したガイドポスト57により回転が阻止されガラス基板Wに対する相対位置が確定しているので、蓋体41を上昇させた図2の状態では受け部材46に蓋体41のピン45が係合することで蓋体41及び整流板43のガラス基板Wに対する相対位置も定まる。」(段落【0020】)
(d)「スピンナーによって真空チャック13とインナーカップ20を一体的に回転せしめ、遠心力によりレジスト液をガラス基板Wの表面に均一に拡散塗布する。」(段落【0023】)
甲第2号証[特願平4-304684号(特開平6-132212号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願1明細書等」という)](異議申立人は甲第2号証として公開公報を引用しているが、特許異議申立書の全趣旨からみて甲第2号証は前記先願1明細書等であり、この先願1明細書等に代えてその記載内容を示す公開公報を引用提出しているものと認められる)には以下の事項が記載されている。
(e)「本発明は、液晶表示パネル用のガラス基板、半導体ウエハ、半導体製造装置用のマスク基板などの基板の表面に、遠心力を利用してフォトレジスト液などの塗布液を薄膜状に塗布する」(段落【0001】)
(f)「図1は本実施例に係る回転式塗布装置の全体の概略構成を示す縦断正面図であり、角型基板1を載置する回転台2が鉛直方向の軸心P周りに水平回転可能に設けられ、その回転台2の上方に、回転台2と平行に上部回転板3が設けられるとともに、その上部回転板3が回転台2に上部支持板4を介して一体的に回転可能に取り付けられ、これら回転部材の下方及び周辺部を外から囲むように廃液回収ケース5が設けられ、前記回転台2に、縦向き回転軸としての出力軸6を介して電動モータ7が連結されている。」(段落【0015】)
(g)「また、回転台2の外周上面には、回転台2と同外径のスペーサリング9およびリングプレート10が同心円線上の場所に複数箇所で連結されるとともに、このリングプレート10に上部支持板4がノブボルト11を介して着脱自在に取り付けられ、上部支持板4を取り外すことで、リングプレート10の中央開口から基板1を出し入れすることができるようになっている。」(段落【0017】)
(h)「固定支持部材16の下方側支持プレート16bは環状に形成され、その内周面側に寄った上面の周方向所定の4箇所それぞれに、山形状の係合突起29が設けられ、一方、下方側支持プレート16bよりも上方に位置するように、上部支持板4に取付部材30…を介して環状プレート31が取り付けられるとともに、その環状プレート31の周方向所定の4箇所それぞれに、係合突起29を嵌入する筒体32が設けられ、前記上部回転板3を着脱する際に、係合突起29…を筒体32…に嵌入することにより、固定支持部材16で吊り下げることがてきるように構成されている。以上の構成により、先ず、塗布処理に際しては、固定支持部材16を筒状カバー15から取り外すとともに上部支持板4を回転台2から取り外し、固定支持部材16で吊り下げて上部回転板3を上方に外して角型基板1を回転台2の基板支持ピン8…上に所定の姿勢で載置する。」(段落【0025】〜【0026】)
甲第3号証[特願平4-347362号(特開平6-190326号公報)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「先願2明細書等」という)](異議申立人は甲第3号証として公開公報を引用しているが、特許異議申立書の全趣旨からみて甲第3号証は前記先願2明細書等であり、この先願2明細書等に代えてその記載内容を示す公開公報を引用提出しているものと認められる)には以下の事項が記載されている。
(i)「塗布装置は、図1に示すように、回転カップ1を有しており、この回転カップ1は、円形状の回転ステージ2を有し、この回転ステージ2の中央には開口30が形成され、回転ステージ2の裏面には開口30より径小でこの開口30に連通した挿通孔31が形成された回転軸32が設けられており、この回転軸32は軸受33にて回転自在に支持され、回転ステージ2の表面の周囲には中央側よりやや低く形成された係合段部5が形成されている。」(段落【0027】)
(j)「さらに、回転ステージ2の上面の係合段部5には、回転ステージ2の外周と略同形で下方に向けて縮径した回転枠11が係合されており、この回転枠11の上面にはガイドピン12が上方に向けて突出形成されている。また、回転枠11の上面には、上蓋14が取り付けられ、回転枠11および上蓋14などにてチャンバー15を形成している。そして、この上蓋14の周囲にも、回転ステージ2と同様に中央よりやや低く形成された係合段部16が形成され、この係合段部16には回転枠11の上部が係合され、この係合段部16にはガイドピン12が挿入されるガイド孔17が穿設されている。さらに、上蓋14の上面にも回転軸18が突出して形成され、この回転軸18は上蓋14を昇降させる昇降装置19に装着されている。また、回転軸18の上端には、鍔部51が形成され、この鍔部51にはガイド孔52が形成され、昇降装置19に形成されたガイドピン53に係止して、位置決め回転されるようになっている。また、回転軸32はモー夕55に接続されたプーリ56によりタイミングベルト57にて回転されるように構成され、回転円筒34はモータ55にクラッチ58を介して接続されたプーリ59によりタイミングベルト60にて回転駆動されるように構成されている。」(段落【0032】〜【0035】)
6.当審の判断
(1)請求項1に係る発明について
当審において、本件の請求項1に係る発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないとの取消理由を通知し、意見書を提出する機会を与えたところ、特許権者は請求項1に係る発明についての取消理由通知に対して意見はないと主張している。
そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件の請求項1に係る発明は、取消理由通知で示したとおりの理由で、特許を受けることができないものと認める。
(2)請求項2に係る発明について
(特許法第29条第2項違反について)
甲第1号証には、上記(a)〜(d)より「内部にレジスト液が供給されるガラス基板装填用のインナーカップを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させるスピンナー装置と、上記インナーカップとの結合によって内部に閉鎖空間を作る蓋体41と、蓋体41を回転自在に軸支する手段と蓋体42を上下摺動自在に保持する手段を備えた蓋体の昇降機構と、蓋体間に介在され、蓋体41が上昇された状態で両蓋体を結合するとともに、蓋体41がインナーカップに結合された状態で両蓋体の結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部は蓋体41に設けたピンと蓋体42に設けた受け部材とから構成され、それらが相互に当接した状態でインナーカップの周方向の位置決めが行われる形状に形成されている、遠心力を利用したレジスト液塗布装置」が記載されていると云える。
本件請求項2に係る発明(以下「本件2発明」という)と甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という)とを対比すると、甲1発明の「レジスト液」は本件2発明の「薬液」、同じく「ガラス基板」は「基盤」、「インナーカップ」は「回転カップ」、「スピンナー装置」は「駆動機構」、「蓋体41」は「フード」にそれぞれ相当するため、両者は「内部に薬液の供給される基盤装填用の回転カップを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させる駆動機構と、上記回転カップとの結合によって内部に閉鎖空間をつくるフードと、上記フードの昇降機構と、フードが上昇された状態で結合するとともに、フードが回転カップに結合された状態で結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部はそれらが相互に当接した状態でフードの周方向の位置決めが行われる形状に形成されていることを特徴とする遠心力を利用した薬液塗布装置」である点で一致し、以下の点で相違している。
(イ)本件2発明は昇降機構がフードの吊持手段を備えているのに対し、甲1発明は昇降機構がフードを回転自在に軸支する手段を備えている点。
(ロ)本件2発明は係合部がフードと吊持手段との間に介在され、フードおよび吊持手段のうちのいずれか一方に形成されたフランジと他方に形成された係合孔とから構成され、上記フランジは外側周縁部を有し、上記係合孔はフランジの外側周縁部に対応した内側周縁部を有しているのに対し、甲1発明はフードと蓋体42との間に介在され、フードに設けたピンと蓋体42に設けた受け部材とから構成されている点。
上記相違点のうち相違点(ロ)に着目して以下検討する。
甲1発明に記載されていない、位置決めのための本件2発明のフランジの外側周縁部とそれに対応した内側周縁部を有する係合孔とで係合部を構成する点は周知慣用のものとは認められず、さらに、本件2発明はその構成により「簡単な構成で確実なフードの周方向の位置決めが実現し、位置決め構造の製造コストを低減させる」(特許明細書段落【0129】)という効果を奏するものであるから、甲1発明の受け部材とピンに代えて本件2発明の上記構成に置き換えることはできない。よって、本件2発明は甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものとすることができない。
なお、異議申立人は、甲1発明の係合部と本件2発明の係合部とは位置決めの作用・効果が全く同じであるから、甲1発明の係合部を本件2発明の係合部に置き換えることに困難性はないと主張しているが、本件2発明の係合部の構成の公知性について何ら立証されていないから、この主張は採用することができない。
(特許法第29条の2違反について)
先願1明細書等には、上記(e)〜(h)より「内部にフォトレジスト液が供給される基板装填用の回転台とスペーサリング及びリングプレートを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させる電動モータと、リングプレートとの結合によって内部に閉鎖空間をつくる上部支持板と、上部支持板を吊持して昇降させる支持プレートを備えた昇降機構と、上部支持板と支持プレートとの間に介在され、上部支持板が上昇された状態で上部支持板と支持プレートとを結合するとともに、上部支持板がリングプレートに結合された状態で上部支持板と支持プレートとの結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部は、上部支持板に付設された筒体と支持プレートに設けられた係合突起とから構成され、それらが相互に当接した状態で回転台とスペーサリング及びリングプレートの周方向の位置決めが行われる形状に形成されている、遠心力を利用したフォトレジスト液塗布装置」が記載されていると云える。
本件2発明と先願1明細書等に記載された発明(以下「先願1発明」という)とを対比すると、先願1発明の「フォトレジスト液」は本件2発明の「薬液」、同じく「基板」は「基盤」、「回転台とスペーサリング及びリングプレート」は「回転カップ」、「電動モータ」は「駆動機構」、「上部支持板」は「フード」、「支持プレート」は「吊持手段」にそれぞれ相当するため、両者は「内部に薬液の供給される基盤装填用の回転カップを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させる駆動機構と、上記回転カップとの結合によって内部に閉鎖空間をつくるフードと、上記フードを吊持して昇降させる吊持手段を備えた昇降機構と、上記フードと吊持手段との間に介在され、フードが上昇された状態でフードと吊持手段とを結合するとともに、フードが回転カップに結合された状態で上記フードと吊持手段との結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部はそれらが相互に当接した状態でフードの周方向の位置決めが行われる形状に形成されていることを特徴とする遠心力を利用した薬液塗布装置」である点で一致し、本件2発明は係合部がフードおよび吊持手段のうちのいずれか一方に形成されたフランジと他方に形成された係合孔とから構成され、上記フランジは外側周縁部を有し、上記係合孔はフランジの外側周縁部に対応した内側周縁部を有しているのに対し、先願1発明は係合部がフードに付設された筒体と吊持手段に設けられた係合突起とから構成されている点で相違している。
上記相違点について検討すると、先願1明細書等に記載されていない本件2発明の係合部の上記構成は、先願1明細書等の記載及びその出願時の技術水準からみて自明の事項とは認められない。よって、本件2発明は先願1発明と同一であるとすることができない。
また、先願2明細書等には、上記(i)〜(j)より「内部に塗布液が供給される基板装填用の回転カップを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させる駆動機構と、回転カップとの結合によって内部に閉鎖空間をつくる上蓋と、上蓋を吊持して昇降させる吊持手段を備えた昇降装置と、
上蓋と吊持手段との間に介在され、上蓋が上昇された状態で上蓋と吊持手段とを結合するとともに、上蓋が回転枠に結合された状態で上蓋と吊持手段との結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部は、上蓋に付設された鍔部のガイド孔と吊持手段に設けられたガイドピンとから構成され、それらが相互に当接した状態で回転カップの周方向の位置決めが行われる形状に形成されている、遠心力を利用した塗布装置」が記載されていると云える。
本件2発明と先願2明細書等に記載された発明(以下「先願2発明」という)とを対比すると、先願2発明の「塗布液」は本件2発明の「薬液」、同じく「基板」は「基盤」、「上蓋」は「フード」、「昇降装置」は「昇降機構」にそれぞれ相当するため、両者は「内部に薬液の供給される基盤装填用の回転カップを備えた回転部材と、上記回転部材を高速回転させる駆動機構と、上記回転カップとの結合によって内部に閉鎖空間をつくるフードと、上記フードを吊持して昇降させる吊持手段を備えた昇降機構と、上記フードと吊持手段との間に介在され、フードが上昇された状態でフードと吊持手段とを結合するとともに、フードが回転カップに結合された状態で上記フードと吊持手段との結合状態が解除される係合部とが設けられ、上記係合部はそれらが相互に当接した状態でフードの周方向の位置決めが行われる形状に形成されていることを特徴とする遠心力を利用した薬液塗布装置」である点で一致し、本件2発明は係合部がフードおよび吊持手段のうちのいずれか一方に形成されたフランジと他方に形成された係合孔とから構成され、上記フランジは外側周縁部を有し、上記係合孔はフランジの外側周縁部に対応した内側周縁部を有しているのに対し、先願2発明は係合部がフードに付設された鍔部のガイド孔と吊持手段に設けられたガイドピンとから構成されている点で相違している。
上記相違点について検討すると、先願2明細書等に記載されていない本件2発明の係合部の上記構成は、先願2明細書等の記載及びその出願時の技術水準からみて自明の事項とは認められない。よって、本件2発明は先願2発明と同一であるとすることができない。
7.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当し、特許を取り消すべきものである。
また、本件の請求項2に係る特許については、特許異議申立人の主張および証拠方法によっては取り消すことはできず、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-19 
出願番号 特願平7-78677
審決分類 P 1 652・ 121- ZC (B05C)
P 1 652・ 161- ZC (B05C)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 早野 公惠  
特許庁審判長 吉田 敏明
特許庁審判官 唐戸 光雄
西村 和美
登録日 1999-12-24 
登録番号 特許第3015817号(P3015817)
権利者 タツモ株式会社
発明の名称 遠心力を利用した薬液塗布装置  
代理人 板谷 康夫  

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