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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01B
管理番号 1045120
異議申立番号 異議1999-73308  
総通号数 22 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-11-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-03 
確定日 2001-08-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2862311号「面位置検出装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2862311号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2862311号の請求項1に係る発明は、平成2年2月23日に出願され、平成10年12月11日に設定登録され、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月28日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の可否
1.訂正発明
上記訂正請求の内容は、特許請求の範囲の減縮を目的として請求項1の記載を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを含むものである。
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである。

「 被検面に対して傾いた方向から、該被検面上の第1測定点に第1ビームを照射せしめ該被検面上の該第1測定点とは異なる第2測定点に第2ビームを照射せしめる照射手段と、該第1、第2測定点で反射して被検面に対して傾いた方向へ向けられた該第1、第2ビームを光電変換手段に投影し、該光電変換手段から該第1測定点の高さに応じた第1信号と該第2測定点の高さに応じた第2信号とを出力せしめる投影手段とを有する装置であって、前記照射手段は単一のスリットの第1、第2のピンホールをそれぞれ前記第1、第2の測定点に結像せしめ、且つ該投影手段が、該光電変換手段上に、該第1、第2測定点の各像を互いにほぼ同じ大きさで形成することを特徴とする面位置検出装置。」

2.引用刊行物記載の発明
刊行物1:特開平1-253603号公報

訂正発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知において引用した上記刊行物1には、面位置検出装置について次の記載がある。
(イ)第1図の装置概略(第2頁右下欄第2行〜同欄第11行、第1図)
「以下、本発明の実施例の面位置検出装置を図に基づいて説明する。第1図に示すように、ウエハの表面等である被検出面a′が縮小投影露光レンズ28に対向して配置される。露光レンズ28の一方の側には、面検出用の指標像1′、2′、3′を形成するための光源部30、指標像1′、2′、3′を投影するための第1投影系40が形成され、また露光レンズ28の他の側には、検出系50、及び検出系50に指標像1′、2′、3′の像を形成するための第2投影系60が形成されている。」

(ロ)被検出面a′への指標像の投影(第2頁右下欄第12行〜第3頁左上欄6行、第1図)
「光源部30は、3つのLED光源8a、8b、8c、これらの光源からの光束をそれぞれスリット1、2、3上に導くためのリレーレンズ9、10、11からなる。光源8a、リレーレンズ9及びスリット1の光軸A、光源8b、リレーレンズ10及びスリット2の光軸B、さらに光源8c、リレーレンズ11及びスリット3光軸Cは、後述の走査ミラー12の回軸中心を通過するように位置決めされている。スリット1、2、3は実質上指標として作用する。
第1投影系40は、走査ミラー12、第1ミラー16、第1投影レンズ4、第2ミラー17、第2投影レンズ5を有する。そして、走査ミラー12と第1ミラー16との間には補正系42が設けられている。」

(ハ)スリットを含む光源面と被検出面、補正系(第3頁左上欄第7行〜右上欄18行、第1〜4図)
「 スリット1、2、3を含む光源面aと被検出面a′とは、第2図に示すように、第1投影レンズ4及び第2投影レンズ5に関しシャインプルーフの条件を満足するように配置されている。また、第1投影レンズ4と第2投影レンズ5は、テレセントリック系を形成している。すなわち・・・従って、スリット1、2、3から射出された光束はテレセントリック系の入射瞳である第1投影レンズ4を通過後、第2対物レンズ5により光軸に平行な光束となって像空間を進み、被検出面a′上に指標像1′、2′、3′を形成する。
補正系42は、第1図に示すように、走査ミラー12で反射された走査光軸A’、B’、C’を考えるとき、光軸A’、B’上には、単に光軸を折り曲げさせるための第3ミラー14及び第4ミラー15がそれぞれ配置される。光軸C’上には凸レンズ6、平行プリズム13,凹レンズ7が配置される。凸レンズ6及び凹レンズ7は、逆望遠鏡系を形成する。すなわち、第1投影レンズ4と第2投影レンズ5の光軸Oに対し傾斜している光源面aは、第3図に示すように、凸レンズ6及び凹レンズ7を挿入することによりスリット3が光学的に第1投影レンズ4から離れるようになり、光源面aを光軸Oに対し垂直にする。
補正系は、第1図及び第4図に示すように、光軸C’上に平行プリズム13を有し、これによって光軸C’を平行移動させて、光軸A’、B’、C’のいずれもが走査ミラー12の回転中心を通過するようにする。」

(ニ)指標像の光検出器への投影(第3頁右上欄第19行〜同頁右下欄第1行、第1図)
「第2投影系60は、第1図に示すように、実質上光軸0の被検出面a′ による反射光軸である光軸0′上に、第3投影レンズ18、第5ミラー19、第4投影レンズ20、第6ミラー21を設けてなる。第3投影レンズ18及び第4投影レンズ20はそれぞれ第2投影レンズ5及び第1投影レンズ4に対応し、逆向きのテレセントリック光学系を形成し、また、被検出面a′と、後述の半導体位置検出器(PSD)等の光検出器25、26、27を含む検出面a″は共役になるように配置される。
検出系50は、第1図に示すように、指標像1′、2′からの光束を反射し、指標像3′ からの光束を通過させる孔あきミラー52、指標像3′からの光束を反射するための第7ミラー54を有する。検出系50はさらに、指標像1′、2′、3′からのそれぞれの光束を導いて受光するためのリレーレンズ22、23、24及び光検出器25、26、27が設けられている。
上記光学系において、スリット1、2、3から出た光束はそれぞれ同一倍率でかつ垂直に光検出器25、26、27に入射するから、それぞれの光束は均等な条件で検出されることになる。」

(ホ)光検出器で検出された検出信号(第3頁右下欄第2行〜第4頁右上欄第10行、第5図、第6図)
「なお、被検出面a′上に結像された各指標像1′、2′、3′は、第5図に示すように、正三角形の頂点にあり、指標像1′ 、2′、3′の座標をそれぞれ(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)とすると、被検出面a′の露光される領域の中心は、上記正三角形の中心と一致する。上記各スリット像の位置を表示するため、第5図に示すように、上記正三角形の中心を原点とし、上記ウエハ面上にX、Y軸が横たわり、該中心においてウエハ面に立てた法線方向にZ軸があるような直交座標系を考える。直交座標系のX軸を指標像3′ を通る直線に選べば、Y軸は指標像1′、2′を結ぶ線分に平行になる。
次に、制御回路70及び検出系50で検出された検出信号を処理する検出回路80を説明する。第6図に示すように・・・・また、被検出面a′のZ方向の変位も指標像1″、2″、3″の変位として現われ、この変位は光検出器25、26、27のアンバランス信号として検出される。
検出回路80は、第6図に示すように・・・位置検出回路85に接続される(1系統のみ図示する)。
上記回路において、光検出器85で検出されたアンバランス信号はそれぞれ加算回路81で加算され、減算回路82で減算される。これらの出力は除算回路83で除算されて両者の比が算出され、位置検出回路85によって演算処理されてZ方向の高さが求められる。
同様にして、検出点2′および3′の位置の高さZ2およびZ3も夫々に位置検出信号として算出される。各位置検出信号Z1、Z2およびZ3は演算回路86に導かれ、この演算回路はウエハの高さの平均(Z1+Z2+Z3)/3及びX方向の傾き成分{(Z1+Z2)/2-Z3}、およびY方向の傾き成分(Z1-Z2)を演算し、ウエハ面a′の高さ及び傾きを算出する。」

(ヘ)発明の効果(第4頁右上欄第17行〜同頁左下欄第2行)
「 本発明は、以上説明したように、複数の指標像が被検出面に同一倍率で同一の角度をもって入射され、また被検出面で反射された夫々の指標像の反射光は光検出器に同一倍率で垂直に入射するから、面位置すなわち面の高さ位置、傾斜等を高精度に検出することが出来る利点を有する。」

3.訂正発明と刊行物1記載の発明との対比
訂正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「光検出器」は「光電変換手段」に相当する。また、刊行物1には、光電変換手段上に形成される該第1、第2測定点の各像の大きさが「互いにほぼ同じ大きさで形成」されるものであるとは記載されていないものの、スリットのピンホールからの複数の光束が、被検出面に同一倍率で同一の角度をもって入射され、また被検出面で反射されたそれぞれの測定点の各像を光検出器(光電変換手段)に同一倍率で垂直に入射させるように、同一倍率の照射手段および同一倍率の投影手段をわざわざ採用している理由は、「上記光学系において、スリット1、2、3から出た光束はそれぞれ同一倍率でかつ垂直に光検出器25、26、27に入射するから、それぞれの光束は均等な条件で検出されることになる。」と記載されている(前記2(ニ)最終段落参照)ように、各光検出器上に形成される指標像が均等、すなわち大きさについては、互いにほぼ同じ大きさを形成するようにするためのものと認められる。
そうすると、刊行物1記載の発明においても、測定点像の投影手段は「光電変換手段上に、該第1、第2測定点の各像を互いにほぼ同じ大きさで形成する」ものであり、光電変換手段上に形成される測定点像の大きさについて、訂正発明と刊行物1記載の発明とに実質的な相違は認められないから、両者は次の点で一致し、
<一致点>
「 被検面に対して傾いた方向から、該被検面上の第1測定点に第1ビームを照射せしめ該被検面上の該第1測定点とは異なる第2測定点に第2ビームを照射せしめる照射手段と、該第1、第2測定点で反射して被検面に対して傾いた方向へ向けられた該第1、第2ビームを光電変換手段に投影し、該光電変換手段から該第1測定点の高さに応じた第1信号と該第2測定点の高さに応じた第2信号とを出力せしめる投影手段とを有する装置であって、前記照射手段はスリットの第1のピンホール、第2のピンホールをそれぞれ前記第1、第2の測定点に結像せしめ、且つ該投影手段が、該光電変換手段上に、該第1、第2測定点の各像を互いにほぼ同じ大きさで形成することを特徴とする面位置検出装置。」

次の点で相違する。
<相違点>
照射手段の測定点の数とスリットとに関し、訂正発明は「単一のスリットの第1、第2のピンホールをそれぞれ前記第1、第2の測定点に結像せしめ」るものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、それぞれ異なるスリットの3つのピンホールを測定点に結像させるものである点。

4.相違点についての判断
訂正発明においては、「第1、第2の測定点に結像せしめ」と2つの測定点についてしか記載されていないものの、面の傾きと高さを検出する際に、2つの測定点を結ぶ線廻りの傾きを特に考慮しないですむ場合には、刊行物1に記載された3つの測定点を2つに減らし、例えば投影レンズに対して補正系を使用しないスリット1および2による2つの測定点を採用するようなことも、当業者が必要に応じて変更できる範囲内の事項である。
そして、刊行物1におけるピンホールを有する3つのスリットが同一面上にあることは、前記2.(ハ)の「スリット1、2、3を含む光源面aと被検出面a′とは、第2図に示すように、第1投影レンズ4及び第2投影レンズ5に関しシャインプルーフの条件を満足するように配置されている。」という記載からも明らかであり、同一面上にある2以上のピンホールが必要な場合、単一のスリットに2以上のピンホールを設けて使用することも、普通に行われていることであるから、第1、第2の測定点に光ビームを照射する照射手段として、ピンホール毎別体のスリットに変えて、単一のスリットの第1、第2のピンホールをそれぞれ第1、第2の測定点に結像せしめるように設計することは、当業者が適宜設計変更し得る程度の事項である。
また、それによる、複数の指標となるべきピンホールが別部材に設けられている場合の位置精度のバラツキ防止が避けられるとの効果は、当然予測し得る範囲内のものにすぎない。

5.意見書の主張について
特許権者は平成13年5月7日付け意見書において、投影レンズ4,5の光軸Oに対して傾斜した光軸をC’を補正系によって構成しているため、この補正系を経由して結合されたスリット3の像は、他のスリットの像に対して結像面が傾斜することになり、スリット3の被検面上の像は他の像と異なる倍率で形成されていること、この偏倍を補正するためには3つのスリットを少なくとは1部傾斜して配置せざるを得ず、刊行物1記載のスリットを別体構成にすることは必然で、当業者に同一スリットを想起させる発明ではない旨、主張している。
しかしながら、刊行物1におけるピンホールを有する3つのスリットが同一面上にあることは、前記2.(ハ)の如く明記されていることである。また、2つの測定点に光ビームを照射する2つのスリットとして、補正系と関係のないスリット1,2を選択することが可能であり、その場合には特許権者の主張するスリット3と他のスリットとの像の間の問題は、そもそも関係がないので、当該意見書における特許権者の主張は妥当なものではない。

6.訂正の可否について
したがって、訂正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正前の同法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

III.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである。

「 被検面に対して傾いた方向から、該被検面上の第1測定点に第1ビームを照射せしめ該被検面上の該第1測定点とは異なる第2測定点に第2ビームを照射せしめる照射手段と、該第1、第2測定点で反射して被検面に対して傾いた方向へ向けられた該第1、第2ビームを光電変換手段に投影し、該光電変換手段から該第1測定点の高さに応じた第1信号と該第2測定点の高さに応じた第2信号とを出力せしめる投影手段とを有する装置であって、該投影手段が、該光電変換手段上に、該第1、第2測定点の各像を互いにほぼ同じ大きさで形成することを特徴とする面位置検出装置。」

2.特許法第29条違反について
当審が平成12年9月19日に通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平1-253603号公報)には、上記II.2.に記載した発明が記載されている。

そして、本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「光検出器」は「光電変換手段」に相当する。また、刊行物1には、光電変換手段上に形成される該第1、第2測定点の各像の大きさが「互いにほぼ同じ大きさで形成」されるものであるとは記載されていないものの、スリットのピンホールからの複数の光束が、被検出面に同一倍率で同一の角度をもって入射され、また被検出面で反射されたそれぞれの測定点の各像を光検出器(光電変換手段)に同一倍率で垂直に入射させるように、同一倍率の照射手段および同一倍率の投影手段をわざわざ採用している理由は、「上記光学系において、スリット1、2、3から出た光束はそれぞれ同一倍率でかつ垂直に光検出器25、26、27に入射するから、それぞれの光束は均等な条件で検出されることになる。」と記載されている(前記2(ニ))ように、各光検出器上に形成される指標像が均等、すなわち大きさについては、互いにほぼ同じ大きさを形成するようにするためのものと認められる。
そうすると、刊行物1記載の発明においても、測定点像の投影手段は「光電変換手段上に、該第1、第2測定点の各像を互いにほぼ同じ大きさで形成する」ものであり、光電変換手段上に形成される測定点像の大きさについて、訂正発明と刊行物1記載の発明とに実質的な相違は認められないから、刊行物1には、
「 被検面に対して傾いた方向から、該被検面上の第1測定点に第1ビームを照射せしめ該被検面上の該第1測定点とは異なる第2測定点に第2ビームを照射せしめる照射手段と、該第1、第2測定点で反射して被検面に対して傾いた方向へ向けられた該第1、第2ビームを光電変換手段に投影し、該光電変換手段から該第1測定点の高さに応じた第1信号と該第2測定点の高さに応じた第2信号とを出力せしめる投影手段とを有する装置であって、前記照射手段はスリットの第1のピンホール、第2のピンホールをそれぞれ前記第1、第2の測定点に結像せしめ、且つ該投影手段が、該光電変換手段上に、該第1、第2測定点の各像を互いにほぼ同じ大きさで形成することを特徴とする面位置検出装置。」という発明が記載されているものと認められるので、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当する。

IV.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2号の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-29 
出願番号 特願平2-44236
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (G01B)
P 1 651・ 121- ZB (G01B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 白石 光男  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 平井 良憲
伊坪 公一
登録日 1998-12-11 
登録番号 特許第2862311号(P2862311)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 面位置検出装置  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 西山 恵三  
代理人 内尾 裕一  

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