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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02M |
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管理番号 | 1045989 |
審判番号 | 審判1999-15725 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-09-27 |
確定日 | 2001-09-11 |
事件の表示 | 平成1年特許願第510902号「カートリッジ型電磁燃料噴射弁」拒絶査定に対する審判事件[平成2年4月19日国際公開、WO90/04098、平成4年5月28日国内公表、特表平4-502947]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、1989年10月10日(パリ条約による優先主張1988年10月10日、独国)の出願であって、その請求項1〜11に係る発明は、平成12年2月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「電磁石、可動子、磁極及び弁ハウジングを備えた内燃機関用の電磁燃料噴射弁において、前記電磁石を支持するカートリッジを備えており、このカートリッジが非磁化性の部分と弁座とを備えていて、かつ少なくとも1つのマグネットコイルによって囲われており、このマグネットコイルが2つのコンタクトピンに結合されていて、かつ少なくとも1つの磁気帰路部材に取り囲まれており、前記磁気帰路部材がブラケットから成っており、マグネットコイルが磁気帰路部材の片側内に挿入されていることを特徴とする電磁燃料噴射弁。」 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成12年7月25日付けで通知した拒絶の理由IIの概要は、本願発明は、本件出願の優先権主張の日前に頒布された特開昭61-108866号公報(以下「刊行物1」という。)、特開昭58-211083号公報、実願昭59-188848号(実開昭61-103678号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)及び実願昭57-197988号(実開昭59-105663号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.刊行物の記載事項 刊行物1の、 (イ)「本発明は、内燃機関へ燃料を供給するための電磁式燃料噴射弁に関するものである。」(第1頁右下欄1行〜2行)、 (ロ)「第1図において、1は磁性材料からなる吸気管への取付板で取付穴(図示せず)が設けられている。取付板1は磁性材料からなる燃料入口継手3が溶接されており、(中略)なお、この燃料入口継手3は固定鉄心3aを兼ねている。2はパイプで、このパイプ2は磁性材料からなる磁性パイプ2aと非磁性材料からなる非磁性パイプ2bとにより構成されている。磁性パイプ2aと非磁性パイプ2bとはロー付等により一体のパイプ2となっており、非磁性パイプ2bは磁気遮断のために用いられ、かつ非磁性パイプ2bは固定鉄心3aの大半を覆うように設けられている。また固定鉄心3aとパイプ2との間は前記Oリング26により両者間の油密性が確保されている。パイプ2の内部には、磁性材料からなる可動コア15が摺動自在の状態で設けられており、(中略)この噴射用通路12における流入室4からの開口部はバルブ孔13として形成されていて、非作動時において、バルブ14により閉じた状態となっている。さらに、上記噴射弁本体の外囲には、磁性材料からなる筒状のコイルケース19が配置されており、このコイルケース19の内部には、樹脂部材からなるコイルボビン25に電磁コイル21が巻回されている。またコイルケース19は、取付板1と磁性材料からなるプレート22とにより閉塞されている。そしてこのプレート22の一部は磁性パイプ2aと当接している。(中略)なお、前記電磁コイル21の巻線は合成樹脂からなるコネクタ部23に導かれて端子24に接続されており、これら端子24を介して電磁コイル21への通電がなされるようになっている。」(第2頁左下欄9行〜第3頁右上欄10行)、 (ハ)「従って、上記構成の電磁式燃料噴射弁では(中略)最低作動電圧が低くなり、かつ作動速度も向上したものとなっている。」(第3頁左下欄7行〜14行)、 (ニ)「噴射弁本体は、パイプ2、パイプ2の内部に設けられる可動コア15、パイプ2に嵌合する固定鉄心3aを兼ねる燃料入口継手3、及び、燃料入口継手3に溶接された取付板1からなっている。」(第1図参照)、 (ホ)「磁性パイプ2aは、バルブ孔13の周辺に弁座を有している。」(第1図参照) 及び第1図の記載からみて、刊行物1には 「電磁コイル21、可動コア15、固定鉄心3aを兼ねる燃料入口継手3、パイプ2を備えた内燃機関用の電磁式燃料噴射弁において、前記電磁石を支持する噴射弁本体を備えており、この噴射弁本体の構成部分であるパイプ2が非磁性パイプ2bと弁座とを備えていて、噴射弁本体が少なくとも1つの電磁コイル21によって囲われており、この電磁コイル21が端子24に結合されていて、かつ磁性材料からなるコイルケース19によって取り囲まれている、電磁式燃料噴射弁」が記載されているものと認められる。 刊行物2には、 (ヘ)「本考案はソレノイドの励磁、非励磁によりシリンダ室内のプランジャを往復動させて流出ポートを開閉制御するソレノイドバルブに関する。」(第1頁16行〜18行)、 (ト)「一方ソレノイド6は、(中略)ボビン8及び固定鉄心9を保持する断面コ字形状のヨーク10とから成っており、」(第5頁19行〜第6頁4行)、 (チ)「ソレノイドコイル6aは、ヨーク10の片側内に挿入されている。」(第1図参照)が、 また、刊行物3には、 (リ)「電磁部には固定鉄心・電磁コイル・ボビン・ヨークとを設け」(第1頁5行〜6行)、 (ヌ)「本考案は、電磁コイルの励磁・非励磁によって、通路切換部材が一方又は他方の弁座に接触して複数個の流体通路を開閉する型式の電磁弁に関するものである。」(第1頁15行〜18行)、 (ル)「電磁コイル4は、ヨーク8の片側内に挿入されている。」(第1図参照) が、それぞれ記載されている。 4.対比 本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「可動コア15」、「固定鉄心3aを兼ねる燃料入口継手3」、「パイプ2」、「非磁性パイプ2b」、「電磁コイル21」、「端子24」及び「電磁式燃料噴射弁」はそれぞれそれらの機能からみて、前者の「可動子」、「磁極」、「弁ハウジング」、「非磁化性の部分」、「マグネットコイル」、「コンタクトピン」及び「電磁燃料噴射弁」に相当する。 そして、後者の電磁式燃料噴射弁において、「電磁コイル21」は「電磁石」にも相当するものであり、また、後者の「コイルケース19」は磁性材料からなり、電磁コイル21を取り囲んでいるから、前者でいう「磁気帰路部材」の機能を発揮しているものと認められる。さらに、後者において、パイプ2、パイプ2の内部に設けられる可動コア15、パイプ2に嵌合する固定鉄心3aを兼ねる燃料入口継手3、及び、燃料入口継手3に溶接された取付板1は、一体となって「噴射弁本体」を構成し、該噴射弁本体の外囲に電磁コイル21、コイルケース19を備えているから、後者の「噴射弁本体」は、前者の「カートリッジ」に相当し、後者の「パイプ2」は、前者の「カートリッジ」の一部にも相当する。 してみれば、本願発明と刊行物1記載の発明とは、 「電磁石、可動子、磁極及び弁ハウジングを備えた内燃機関用の電磁燃料噴射弁において、前記電磁石を支持するカートリッジを備えており、このカートリッジが非磁化性の部分と弁座とを備えていて、かつ少なくとも1つのマグネットコイルによって囲われており、このマグネットコイルがコンタクトピンに結合されていて、かつ少なくとも1つの磁気帰路部材によって取り囲まれている、電磁燃料噴射弁」で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点1〉マグネットコイルに結合されるコンタクトピンの数に関して、前者では2つであるのに対して、後者ではコンタクトピンの数が明らかでない点。 〈相違点2〉:磁気帰路部材に関して、前者では、ブラケットから成っており、その片側内にマグネットコイルが挿入されているのに対して、後者では、ブラケットではなく、筒状のケースから成っている点。 5.当審の判断 以下、上記相違点1、2につき検討する。 (1)相違点1について マグネットコイルに結合されるコンタクトピンの数を幾つとするかは、当業者が適宜設定できる程度の設計事項であると認められる。したがって、刊行物1記載の発明において、コンタクトピンの数を2つとすることは、当業者が容易になしうるものと認められる。 (2)相違点2について 刊行物2記載の「ヨーク10」及び刊行物3記載の「ヨーク8」は、いずれもブラケットからなる磁気帰路部材であると認められ、しかも、マグネットコイルが磁気帰路部材の片側内に挿入されている(上記摘記事項(チ)、(ル)参照)。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2、3記載の発明とは、「電磁流体弁」という同じ技術分野に属するものである。 したがって、刊行物1記載の発明の磁気帰路部材として、刊行物2、3記載の発明の磁気帰路部材を用い、本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。 また、本願発明の作用効果は、刊行物1〜3記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものと認められる。 なお、請求人は、平成13年2月13日付け意見書の中で、本願発明は、「電磁石、磁極、磁気帰路部材としての帰路キャップ若しくはブラケット、被磁化性の部分(ケーシング)、弁座などをカートリッジとして構成」したものであり、この点は拒絶理由で引用した各刊行物には記載されていない旨主張している。 しかしながら、請求項2の「電磁石を支持するカートリッジ」、「このカートリッジが・・・少なくとも1つのマグネットコイルによって囲われており」、「このマグネットコイルが・・・少なくとも1つの磁気帰路部材によって取り囲まれており」等の記載からみて、電磁石、マグネットコイル、磁気帰路部材はカートリッジには含まれない部材と認められる(なお、本願明細書の2頁17行〜18行の「ケーシングはその内部に収容した部品と共に弁ハウジングに取り付けられるカートリッジを形成している。」、第4頁2行〜5行の「ケーシング101、磁極103、可動子106、弁座111はケーシング101内で共に1つのカートリッジを形成しており、このカートリッジはその他の部品とは別個に製作される。」の記載でも、電磁石等はカートリッジには含まれていない。)。 したがって、請求項の記載に基づかない上記請求人の主張は採用できない。 6.むすび したがって、本願発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-09 |
結審通知日 | 2001-03-21 |
審決日 | 2001-04-03 |
出願番号 | 特願平1-510902 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿部 寛、金澤 俊郎 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
飯塚 直樹 田村 嘉章 |
発明の名称 | カートリッジ型電磁燃料噴射弁 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |