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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号公然実施 特許、登録しない。 C07H |
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管理番号 | 1046008 |
審判番号 | 審判1996-14536 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1989-05-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1996-08-26 |
確定日 | 2001-09-13 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第180435号「ステビオサイドの取得法」拒絶査定に対する審判事件[平成1年5月24日出願公開、特開平1-131191]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、昭和63年7月21日(パリ条約による優先権主張1987年7月21日、欧州)の出願であって、その請求項1〜5に係る発明は、平成8年2月29日付け及び平成8年9月25日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりの次のものと認める。 「1.ステビオサイド及び、望ましくない苦味成分を含む他の成分を含有するステビア・レバウディアナ・ベルトーニの乾燥せる植物原料から抽出及び精製によりステビオサイドを取得し苦味不純物を除去する方法において、最初に、選択された適する塩基性塩の任意の存在下での、水中における室温〜約65℃の温度におけるかつ撹拌下での処理それに続く濾過又は遠心分離により抽出物を取得し、その後に、精製を、全精製工程において、溶媒として、実質的に有機溶媒を含有しない水のみを用い、 (i)抽出を塩基性塩の存在なしで行った場合に、得られた抽出物を水酸化カルシウムのような適する塩基性塩で処理し、次にその処理された抽出物を濾過又は遠心分離に付し沈殿物を除去する工程、 (ii)得られた溶液に、強酸性のイオン交換樹脂による第一溶離そして次に弱塩基性のイオン交換樹脂による第二溶離から成る選択された交互の溶離順序の処理を複数回行う工程及び (iii)さらに任意に微細濾過した後に、得られた中間体を乾燥し、それにより、望ましくない苦味成分部分を実質的に低減させた生成物を得る工程 により行うことを特徴とする方法。 2.交互の溶離順序の処理を複数回行った後に、そして任意に微細濾過し、そして乾燥させる前に、得られた濾液を、強酸性のイオン交換樹脂そして続いて強塩基性のイオン交換樹脂で処理する、請求項1に記載の方法。 3.沈殿物を形成させるために、抽出物を、酸化カルシウム、炭酸カルシウム又はその他の選択された適する塩基性塩で処理する、請求項1又は請求項2に記載の方法。 4.沈殿物を形成させるために、抽出物を、マグネシウム又はアルミニウムの塩基性塩で処理する、請求項1又は請求項2に記載の方法。 5.抽出中かつ撹拌下に、適する選択された塩基性塩を水に添加する、請求項1乃至4のいずれか1請求項に記載の方法。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である昭和50年3月15日に頒布された特開昭50-24300号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「ステビア・レバウデイアナ・ベルトーニ(原文略)の葉を水、熱水、または含水アルコールにて抽出した抽出液を常法によりイオン交換樹脂処理により精製する方法において、前記イオン交換樹脂処理前に、前記抽出液を濃縮し、その濃縮液に水酸化カルシウムを添加し不純物を結合吸着させて生成する沈殿物を除去することを特徴とするステビオサイドの抽出精製法。」(特許請求の範囲) (2)「本発明方法の一般的操作を以下に述べると、先ずステビア・レバウデイアナ・ベルトーニの乾燥葉より水、熱水、または含水アルコールで抽出した抽出液を液量が1/3〜1/30となるまで濃縮し、この濃縮液に水酸化カルシウムを加え撹拌し、生成した沈殿物をロ過して除去する。得られた水酸化カルシウム処理液を強酸性イオン交換樹脂を通し、さらに弱塩基性イオン交換樹脂を通し、イオン性の不純物や着色物質を除去する。イオン交換樹脂処理した液をさらにハチミツ状になるまで濃縮し、メタノールを添加し冷却せしめてステビオサイドの結晶を得る。」(公報第3頁左上欄) 3.対比 本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」ともいう。)と引用刊行物に記載された発明とを対比すると、両者は、ステビア・レバウデイナ・ベルトーニの乾燥せる植物原料から抽出及び精製によりステビオサイドを取得する方法において、塩基性塩の存在下での、水中における処理それに続く濾過により抽出物を取得し、得られた溶液に、強酸性のイオン交換樹脂による第一溶離そして次に弱塩基性のイオン交換樹脂による第二溶離からなる処理を行う点で一致し、一方、前者においては第一溶離及び第二溶離を複数回行うものであるのに対して、後者においては複数回行うことについてはとくに記載するところがない点(相違点1)および後者においては結晶化に際してメタノールを添加しているのに対して、前者においては有機溶媒を含有しない水のみを用いている点(相違点2)で相違する。 4.当審の判断 上記相違点について検討するにあたり、当審では、平成12年5月15日付けでステビオール配糖体(ステビオサイド)生成物の良味覚について「2種類のイオン交換樹脂カラムを用いる単一サイクルを行う場合と複数サイクルを行う場合とでどれほどの差があるのかを示すものが必要である」との審尋をしたが、発送後3ヶ月を経ても出願人からはなんの返答もないので、相違点1については、格別の効果上の差異がないものと認められる。 なお、請求人は、平成9年9月11日付の第二審判請求理由補充書において、「イオン交換樹脂カラムによる単一サイクル及びメタノール結晶化である従来の方法を用いて得られる生成物よりも、本願発明の方法により得られる生成物の方が、より多量の無機及び有機の不純物を含有しているが、より甘く、苦い/金属性の後味が少ないです。」(同書第2頁)下から8行〜下から5行)と主張するが、本願明細書においてそのような効果が確認できるのは「例2」においてのみであり、そこでは、3回連続して2種類のイオン交換樹脂カラムを用いる処理サイクルを行った後、さらに強酸性の樹脂および引き続き強塩基性の樹脂で処理しており、本願発明1とは異なる構成を採用しているものであるから、該複数サイクルを行うのみで請求人のいうような効果が得られるものとは認められない。 つぎに相違点2について検討すると、本願発明1の方法においては、メタノールを用いた結晶化による精製工程がないため、本願発明1で得られるステビオサイドのほうが、引用刊行物に記載の精製方法で得られたステビオサイドよりも、多量の無機及び有機の不純物を含有していることは、上記のとおり請求人も認めるところであるから、結局、本願発明1の精製方法は、引用刊行物における、必ずしも必須とはされていないメタノールを用いた精製工程を省略しただけで、その結果も単に純度が犠牲にされる、という当業者が容易に予想できる程度のものといわざるを得ない。しかも、メタノールを用いた精製工程がなければ、毒性のものが不純物として残留するというものではないことは、本願発明1において原料として用いられているステビアの乾燥葉は、南米において古くよりインデイアンらが甘味物質として食用に供していたこと(必要とあらば特開昭50-88100号参照)からも明らかである。 してみると、相違点2も、引用刊行物に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものである。 5.むすび したがって、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-06 |
結審通知日 | 2001-03-16 |
審決日 | 2001-03-28 |
出願番号 | 特願昭63-180435 |
審決分類 |
P
1
8・
112-
Z
(C07H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 眞壽田 順啓、種村 慈樹、内藤 伸一 |
特許庁審判長 |
脇村 善一 |
特許庁審判官 |
深津 弘 大久保 元浩 |
発明の名称 | ステビオサイドの取得法 |
代理人 | 木村 博 |
代理人 | 山崎 行造 |