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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1046023
審判番号 不服2000-256  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-03-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-11 
確定日 2001-09-06 
事件の表示 平成 3年特許願第510320号「クロスバー付き連結要素を有するヘアーカーラー」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 1月 9日国際公開、WO92/00024、平成 5年 3月11日国内公表、特表平 5-501217]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願は、国際特許出願(国際出願日 西暦1991年6月25日。パリ条約による優先権主張 西暦1990年6月27日、スイス国)であって、明細書(平成10年6月24日付けで全文が補正されたもの)、請求の範囲(平成12年2月8日付けで補正されたもの)と図面の記載によれば、
(1)「円筒本体と、ヘアーカーラーに巻いたヘアーを保持するために円筒本体の両端部の間に張架するゴムひもとから構成される」「従来のヘアーカーラー」(明細書1頁9〜11行)における「ヘアーカーラーに巻いたヘアー」の「ヘアーカーラーを回転させる・・・作用は、一方で巻かれたヘアーを緩め、他方ではゴムひもによってヘアーの根元に永続的な圧力をかけ・・・傷付きやすいヘアーを傷める危険性がある」(同1頁13〜19行)という「欠点は、数個のヘアーカーラーのゴムひもの下に半硬質のロッドを使用することによって改善することができる」が、「ゴムひもの下にこのようなロッドを取り付けるのは退屈な作業である」(同1頁22行〜2頁1行)ため、「慣用のヘアーカーラーのどちらの欠点も回避し、且つ特別な追加の操作を必要としないヘアーカーラーを設計することを目的と」(同2頁13〜15行)してなされた発明についてのものであり、
(2)その請求項1に係る発明の要旨とされる構成は、請求の範囲の記載によれば、
「ヘアーを巻きつけるための円筒形本体と、
該本体の両端部を連結するための連結要素とを有し、該連結要素の少な くとも一端は、本体の一端に取り外し可能に留めるように設計されており 、
前記連結要素は、カーラーに巻いたヘアーによって及ぼされる反動トル クに、隣接する別のカーラーとは独立して対抗するように設計された形状 であり、該形状が、頭皮に対して実質的に垂直に当接して、連結要素を横 切る方向に延長する少なくとも一つの交差方向突起を含む、ヘアーカーラ ー」
である。
そして、上記(2)の構成について
(3)「カーラーに巻いたヘアーによって及ぼされる反動トルクに、隣接する別のカーラーとは独立して対抗するように設計された形状」の「連結要素」について
「連結要素」の一例である、「クロスバー」を有する「連結要素」についての
〈i〉「このバーは、その一端を頭部に載置することにより、ヘアーの反動作用によって頭部に対して略垂直に配置される長さである」(明細書2頁末行〜3頁2行)、
〈ii〉「クロスバー11は、その一端を頭部12に載置することによって、頭部12に対して略垂直な位置に自動的に配置され、ヘアーの根元と連結要素2に圧力をかけ、よってヘアーカーラーが巻き戻るのを防止する」(明細書4頁3〜6行)
との記載によれば、「一端を頭部12に載置することにより」直接頭部自体で支持されて(「隣接する別のカーラーとは独立して」)毛髪の巻き戻り(「ヘアーの反動作用」)に対抗し、毛髪の巻き戻りによるヘアカーラーの回転(「ヘアーカーラーが巻き戻るの」)を防止する部分を「連結要素」が有することを、「カーラーに巻いたヘアーによって及ぼされる反動トルクに、隣接する別のカーラーとは独立して対抗するように設計された形状であ」るということ、
(4)「頭皮に対して実質的に垂直に当接して、連結要素を横切る方向に延長する少なくとも一つの交差方向突起」について
〈i〉図2によれば、「連結要素を横切る方向」は、「連結要素2」を取り付けた「円筒本体1」を「円筒本体1」の軸を上下方向にして「連結要素2」の側から見たときその左右の方向であり、
〈ii〉「交差方向突起」が使用時「頭部に対して略垂直に配置される長さ」(上記(3)〈i〉)のものであるため「頭皮に対して実質的に垂直に当接」すること
が認められる。
2 原査定の理由中引用された実願昭63-94401号(実開平2-15001号)のマイクロフィルム(1990年1月30日公開。以下「引例」という。原査定の理由中の「引用文献2」に同じ。)には「ロッド止めピン及びロッド」からなるヘアカーラーの考案について、
(1)「1.変形T字形のコールドパーマのロッド止めピンであって、両ほぼ先端部に対向する滑らかな微突起状の係止部(1)を有し、ロッドの巻き戻りを防ぐ、戻り止めとバネ作用を兼ねた戻止バネ部(2)と摘み易くした摘部(3)等を有するロッド止めピン(A)及び、筒状の両端に係止部(1)の係止を容易にする数本の溝、被係止溝(4)を有したロッド(B)、このロッドにロッド止めピンを係止する構成で成るコールドパーマのロッド止めピン及びロッド
2.コールドパーマのロッド止めピンの、戻止バネ部(2)を、変形U字型にさせた、請求項1記載のコールドパーマのロッド止めピン(A’)」(実用新案登録請求の範囲の欄)
との構成を有するものが記載されており、
(2)「ロッド止めピンは、戻止バネ部が直接皮膚に接しても良いように、2項記載の戻止バネ部を変形U字形にする」(明細書4頁8〜11行)こと、
(3)「ロッド止めピンの摘部を摘んで係止部の片方をロッドの両端に設けてある被係止溝の片端の溝に係止させ、もう片方の係止部をロッド対端の被係止溝に摘部の上から軽く押すと、戻止バネ部の挾力によって係止され、この時、戻止バネ部が自動的に前ロッドもしくは頭皮に着止して、毛髪を巻いたロッドの巻き戻りを防ぐ(第5、6図参照)」(明細書5頁1〜8行)こと
が記載されている。そして、上記(1)請求項2の「ロッド止めピンA’」について
(4)「ロッド止めピンA’」は「戻止バネ部の挾力によって係止され」ている(上記(3))ので、毛髪のセットが終わったときは、ばねの力に抗して取り外すものであること、
(5)第5図では「戻止バネ部2’」は、「ロッド止めピンA’」を取り付けた「ロッドB」を「ロッドB」の軸を上下方向にして「ロッド止めピンA’」の側から見たときその左の方向に突き出している様が示されていると考えられること
は当業者が理解しうることと認められる。
3 本願発明の「ヘアーカーラー」と、引例に示された 請求項2の「ロッド止めピンA’」と「ロッド(B)」とからなるヘアカーラーとを対比すると、次の一致点(1)と相違点(2)が認められる。
(1)両者はともにローラー(「円筒形本体」・「円筒本体1」、「ロッドB」)と締め具(「連結要素2」、「ロッド止めピンA’」)とからなるヘアカーラーであって、引例のものについて次の(i)〜(iii)のことが認められることを考えれば、引例に示されたヘアカーラーは本願発明の要旨とする構成のうち
「ヘアーを巻きつけるための円筒形本体と、
該本体の両端部を連結するための連結要素とを有し、該連結要素の少な くとも一端は、本体の一端に取り外し可能に留めるように設計されており 、
前記連結要素は、カーラーに巻いたヘアーによって及ぼされる反動トル クに、隣接する別のカーラーとは独立して対抗するように設計された形状 であり、該形状が、」「連結要素を横切る方向に延長する少なくとも一つ の交差方向突起を含む、ヘアーカーラー」
との要件をそなえるものと認められる。
(i)「ロッド止めピンA’」は、その両端の「係止部1’」を「ロッド(B)」の両端に留める(「係止する」)ものであって(上記2(3))取り外しできるものである(上記2(4))から、「連結要素の少なくとも一端は、本体の一端に取り外し可能に留めるように設計され」たものといいうるものであること。
(ii)「ロッド止めピンA’」は、その一部である「戻止バネ部2’」が直接頭部自体で支持されて(「戻止バネ部が自動的に」「頭皮に着止して」)毛髪の巻き戻りによるヘアカーラーの回転を防止する(「毛髪を巻いたロッドの巻き戻りを防ぐ」)ものである(上記2(3))から、「カーラーに巻いたヘアーによって及ぼされる反動トルクに、隣接する別のカーラーとは独立して対抗するように設計された形状」の「連結要素」といいうる(上記1(3))ものであること。
(iii)「戻止バネ部2’」は、「ロッド止めピンA’」を取り付けた「ロッドB」を「ロッドB」の軸を上下方向にして「ロッド止めピンA’」の側から見たときその左の方向に突き出しているものである(上記2(5))から、「連結要素を横切る方向に延長する少なくとも一つの交差方向突起」といいうる(上記1(4)〈i〉)ものであること。
(2)締め具(「連結要素2」、「ロッド止めピンA’」)のヘアカーラーの回転を防止する部分について、
本願発明では「交差方向突起」が「頭皮に対して実質的に垂直に当接」するもの、すなわち、使用時「頭部に対して略垂直に配置される長さ」のものである(上記1(4)〈ii〉)のに対し、
引例のものでは「戻止バネ部2’」がどの程度の長さに突き出すべきものか限定されていない
点で両者は構成上相違するものと認められる。
4 本願発明の容易性如何につき検討する。
(1)引例には「戻止バネ部2’」について、頭皮への当たり具合に配慮して(「戻止バネ部が直接皮膚に接しても良いように」)その形が選ばれたものであることが示されており(上記2(2))、突き出す長さについても頭皮への当たり具合、操作性等に影響することが予想されると認められる(注1)ことを考えれば、引例のものの具体化に際してその長さについても当業者が配慮するものと認められる。そして、その長さについて検討し適切な長さを選ぶことに困難性を認めるべき特段の事情も見あたらないことを考えれば、使用時「頭部に対して略垂直に配置される長さ」は当業者が容易に選びうる範囲のものと認められる。
(2)引例に示されたヘアカーラーに基づき「戻止バネ部2’」について使用時「頭部に対して略垂直に配置される長さ」のものを選ぶことにより到達することができる発明は、「戻止バネ部2’」が「頭皮に対して実質的に垂直に当接」するといいうる(上記1(4)〈ii〉)ものであって本願発明の構成要件をすべてそなえるものと認められる。そして、上記(1)の検討によれば、引例に示されたヘアカーラーに基づき本願発明の構成要件をすべてそなえるものすなわち本願発明に到達することは当業者にとって容易なことと認めることができる。

(注1) たとえば、実公昭53-9397号公報には、長さによっ ては「ヘアカラーに巻いた頭髪の巻き戻りを停止する為めの支杆の押圧 部が、頭髪の直線部であったり、・・・不適当な位置であったりする」 (1頁左欄26〜29行)ことが記載されている。

5 審判請求書の平成12年2月8日付けで補正された請求の理由中請求人は、引例について「引用文献2は、頭皮に当接する突起2’を開示しているものの、突起の頭皮に対する当接を垂直とすることは何ら開示していない。また引用文献2の図6に示される突起の頭皮に対する当接の角度は垂直からは程遠いものであ」(3頁22〜25行)ることを根拠に「本願請求項1のヘアーカーラーは、引用文献」「2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない」(5頁24・25行)と主張する。
しかし、引例の図6に示された角度で頭皮に接するのでなければヘアカーラーの回転を防止する効果を奏しないと当業者が引例の記載から理解すると認めるべき根拠は見あたらない。それゆえ、「頭皮に対する当接の角度は垂直からは程遠いもの」が図6に示されているからといって、その角度以外の角度で接する長さのものについて当業者が検討することはないということはできないし、また、「頭皮に対して実質的に垂直に当接」したのではヘアカーラーの回転を防止する効果を奏しないと当業者が考える(注2)、それゆえ、使用時「頭部に対して略垂直に配置される長さ」は、ふつうでは検討の対象とされることはないといった事情も認めることができないから、使用時「頭部に対して略垂直に配置される長さ」は当業者が容易に選びうるとの上記4(1)の判断を覆すことはできない。

(注2) たとえば実願昭47-16940号(実開昭48-931 73号)のマイクロフィルムに、締め具のタイプは異なるけれども「頭 皮に接触してヘアーカーラBの回転を防止する」「櫛刃4」(明細書2 頁末行〜3頁1行)が「頭皮に対して実質的に垂直に当接」しているも のと解しうる例が図示(第4図)されていることを考えれば、「頭皮に 対して実質的に垂直に当接」したのではヘアカーラーの回転を防止する 効果を奏しないと当業者が考えることはないものと認められる。

6 以上検討したとおり本願発明(上記1(2))は引例に記載された考案に基づいて出願前に当業者が容易に発明をすることができるものであったと認められる。したがって本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-16 
結審通知日 2001-03-27 
審決日 2001-04-11 
出願番号 特願平3-510320
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 藤本 信男
梅辻 幹男
発明の名称 クロスバー付き連結要素を有するヘアーカーラー  
代理人 酒井 一  

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