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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1046031
審判番号 審判1998-18455  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-11-25 
確定日 2001-08-16 
事件の表示 平成 8年特許願第 8751号「卵を用いた乳酸菌の発酵飲料の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 7月29日出願公開、特開平 9-191863]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成8年1月22日の特許出願であって、本件請求項1に係る発明は、平成10年7月6日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】100重量部の全卵液を均質化し、乳糖1〜10重量部、砂糖2〜20重量部、水100〜1000重量部を添加し混合した後、65〜95℃で10〜120分間加熱することによって、殺菌と卵の蛋白質の熱変性とを誘導し、ラクトバシラスアシドピルス、ビピドバクテリウムロンガム、ストレプトコカスサモピルスが1:2:1で混合された凍結乾燥の混合乳酸菌の製剤を0.001〜2重量部接種して30〜50℃で5〜24時間培養、発酵させることを特徴とする卵を用いた乳酸菌の発酵飲料の製造方法。」

2.引用例記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件の出願前に頒布された刊行物である特開平2-234655号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。
1)「全卵、卵白又は卵黄を混合した卵白、もしくはこれらに乳製品又は/及びその他の添加料を添加した混合物を原料として、該原料を水で希釈し、混合し、これを殺菌しもしくは殺菌することなく、乳酸菌を接種し、発酵せしめることを特徴とする卵乳酸菌発酵製品の製造法。」(特許請求の範囲第1項)
2)「卵白又は全卵を適度に水で希釈して混合すれば、殺菌しても凝固することなく・・・、ヨーグルトや乳酸菌飲料が得られる」(第1頁右欄14〜18行)
3)「本発明においては、卵白又は卵黄を混合した卵白に対して牛乳、脱脂粉乳、カゼインなどの乳製品やその他の添加料として、砂糖、乳糖、果糖、マルトース、グルコース、液糖、澱粉、オリゴ糖などの糖類、果汁、野菜汁、香味成分などを混合することができる。本発明における主原料である卵白には糖が殆ど含まれていないために、砂糖、乳糖、液糖、果汁、野菜汁などの糖類もしくは含糖物の添加は必要で、全糖分として約1〜5%の添加が好ましい。」(第2頁左上欄13行〜同頁右上欄3行)
4)「卵白などの原料:水の添加割合は重量で1:2〜7、好ましくは1:4〜5程度であり、この混合物は、ミキサー(3000rpm)、撹拌機、ホモゲナイザー等によって均一化される。」(第2頁右上欄69行)
5)「原料に接種する乳酸菌としては、
Lactobacillus plantarum IFO 3070
・・・
Lactobacillus acidophilus IFO 13951
など糖類発酵性乳酸菌が殆ど利用できる。
これら乳酸菌の接種は、スラントからそのまま接種してもよい・・・」(第2頁右上欄18〜同頁左下欄7行)
6)「発酵は25〜45℃、好ましくは35〜40℃程度で、12時間から5日間程度行われる。」(第2頁左下欄11〜12行)
7)「実施例1.
にわとりの卵白1kgに水3kg及び砂糖300gを添加して、ミキサーで3000rpmの混合を3分間行い、120℃の瞬間殺菌機で殺菌した。得られた殺菌原料にLactobacillus plantarum IFO 3070の牛乳培養液をスターターとして400g添加し、2日間35℃で発酵させた。得られた発酵液にいちご磨砕物300gを添加し、ゆるく混合し、飲用性ヨーグルトを得た。」(第2頁右下欄2〜10行)
8)「実施例2
にわとりの卵白1kgに卵黄150gを添加し、これに水3kg及び液糖500gを添加して、ミキサーで3000rpmの混合を1分間行い、80℃で10分間殺菌した。得られた殺菌原料にLactobacillus bulgaricus IFO 13953 の牛乳培養液をスターターとして400g添加し、1日間発酵させた。得られた発酵液はカスタードの風味をもつ今までにない美味なヨーグルトであった。」(第2頁右下欄11〜末行)

3.対比・判断
請求項1に係る発明(以下、本件発明という)と引用例記載の発明を比較すると、引用例には、全卵等に、添加料を添加した混合物を原料として、該原料を水で希釈、混合し、これを殺菌し、乳酸菌を接種して発酵させる卵を用いた乳酸菌発酵製品の製造法の発明(摘示事項1、2)が記載され、さらに、具体的には、前記引用例には、添加料として、砂糖、乳糖等を用いること(摘示事項3,7,8)、殺菌条件として、80℃、10分間殺菌する例があること(摘示事項8)、乳酸菌としてLactobacillus plantarum IFO 3070、Lactobacillus bulgricus IFO 13953を用いる例が(摘示事項7,8)、また、例示される乳酸菌群の1種に、Lactobacillus acidophilus IFO 13951が(摘示事項6)が示されている。さらに、卵原料:水の添加割合は重量で1:2〜7であること(摘示事項4,7,8)、砂糖等の添加料の配合割合については、主原料の卵に対し、全糖分として約1〜5%添加することが(摘示事項3)、発酵を25〜45℃、好ましくは35〜40℃程度で、12時間から5日間程度で行うことが、さらに実施例2では、35℃で24時間行っていることが記載され(摘示事項6,8)、また、卵乳酸菌発酵製品として、乳酸菌飲料が記載されている(摘示事項2,7)。そして、全卵を用いる飲料において、先ず全卵を均質化することは常套の手段である。
以上のことから、本件発明と引用例記載の発明とは、用いる原料の種類、各配合割合において変わるところはなく、さらに、殺菌条件、乳酸菌による発酵、及びその発酵条件も両者は一致する。
ただ、本件発明は、1)加熱により、殺菌の外に、卵の蛋白質の熱変性を誘導するという限定がされているのに対し、引用例記載のものは、そのような限定がされていない点、及び2)本件発明は、乳酸菌として、ラクトバシラスアシドピルス、ビピドバクテリウムロンガム、ストレプトコカスサモピルスなる特定の菌を選択し、それらを1:2:1という特定の配合割合で混合された凍結乾燥の混合乳酸菌の製剤を0.001〜2重量部接種するのに対して、引用例には、乳酸菌として、ラクトバシラスプランタラムおよびラクトバシラスブルガリカスをそれぞれ牛乳培養液の形で用いる実施例があり、乳酸菌群の1つにラクトバシラスアシドピルスが、例示され、前記他の2種の乳酸菌は記載されておらず、及び前記3種の配合割合、形態、および添加量については、記載されていない点で相違する。
前記相違点について検討する。
相違点1)について
本件発明および引用例記載の発明は、用いる原料の種類、それらの配合割合、処理手段(加熱)において変わるところがないのであるから、作用も同じである。結局、加熱によって、卵の蛋白質に同じように影響することは、当然である。したがって、本件発明において、「卵の蛋白質の熱変性を誘導すること」と限定しても、この点は、両者、実質的に相違するものではない。
相違点2)について
先ず、引用例には、乳酸菌の牛乳培養液ではなく、乳酸菌それ自体接種することも記載されている(摘示事項6)。一方、乳酸菌類として、本件発明において用いるようなラクトバシラスアシドピルス、ビピドバクテリウムロンガム、ストレプトコカスサモピルスは、いずれも本件出願前周知の菌であり(要すれば、特開昭53-104787号公報、特公昭57-54113号公報、特開平5-168432号公報、特開平7-313140号公報等参照)、また乳酸菌を1種又は2種以上混合して用いること(要すれば、特開平5-168432号公報第4欄29〜30行、特公昭57-54113号公報第3欄30〜35行参照)、凍結乾燥された乳酸菌類を使用することも周知であり(要すれば、特開昭53-104787号公報、特開平7-313140号公報等参照)、これら乳酸菌の原材料への添加量も当業者が適宜設定できる程度の事項である。
そうすると、本件発明において、乳酸菌として、前記の如き周知の乳酸菌を選択し、複数の乳酸菌を適宜の比率で、かつ乳酸菌類を凍結乾燥されたものを適宜量用いることは、当業者において容易に想到できる程度のことである。
なお、当審において、審尋を発し、前記3種の乳酸菌を選択し、これらを前記の比率で用いる点等について、請求人に意見、ないしその効果に関して実験成績証明書により具体的に示すよう要請したが、請求人から何の応答もなされなかった。
以上のことから、本件発明が奏する効果は、引用例記載のものから予期できる程度のものと認めざるを得ない。

4.むすび
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明、及び周知の事柄に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-02-06 
結審通知日 2001-02-23 
審決日 2001-03-07 
出願番号 特願平8-8751
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之深草 亜子  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 大高 とし子
佐伯 裕子
発明の名称 卵を用いた乳酸菌の発酵飲料の製造方法  
代理人 菅井 英雄  
代理人 青木 健二  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 白井 博樹  
代理人 韮澤 弘  
代理人 内田 亘彦  

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