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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1046085 |
審判番号 | 不服2000-6263 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-04-27 |
確定日 | 2001-09-18 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第181416号「プロジェクションテレビジョン」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 3月17日出願公開、特開平10- 73885]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年7月7日(パリ条約による優先権主張1996年7月15日、大韓民国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、 「プロジェクションテレビジョンに用いられるスクリーンにおいて、スクリーンはプロジェクションテレビジョンの輝度及び指向性を向上させるためにプロジェクタの入射光と平行に反射光を反射させ、同時に前記スクリーンの拡散特性を向上させるために拡散粒子でコーティング処理された反射セルが形成されたリトロリフレクタと、前記スクリーンのコントラストを向上させるための黒薄板とから構成され、前記反射セルは、三角錐の溝形状に形成されたことを特徴とするプロジェクションテレビジョン。」にあるものと認める。 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平4-179943号公報(以下、引用例1という)には、次の事項が記載されている。 ・「本発明は、映画、スライド、ビデオプロジェクター用など広範囲の用途に適用し得る高品位の反射スクリーンに関する。」(公報第2頁左上欄第15〜17行) ・「本発明は、再帰性に近い反射光と、散乱光とをコントロールして、スクリーンの輝度を高め、スクリーン全面に均一な輝度と鮮明度を与えた反射スクリーンを提供せんとするものである。」(公報第2頁左下欄第10〜13行) ・「まず、本発明における光主反射層の一つは、後述する凹凸を付した合成樹脂フィルムの・・金属層が合成樹脂フィルムの表面の多角錐凹部に形成された・・また、金属層が合成樹脂フィルムの裏面の多角錐凹部を有する面に・・光主反射層を構成する。」(公報第2頁左下欄第18行〜同右下欄第7行) ・「本発明のスクリーンは、前記光主反射層と光散乱層とを一体化したものである。光散乱層の一つは、光散乱粒子を含有する合成樹脂層を光主反射層の上に積層することによって形成することができる。該光散乱層は、無水硅酸、雲母等の微粒子あるいは微小薄片殊にパール顔料と呼ばれる顔料等を混入した透明合成樹脂からなるもので、一般的にコーティング法で光主反射層表面に形成される。」(公報第3頁左上欄第12〜20行) ・「次に、本発明で重要なことは光主反射層と光散乱層からなるスクリーンにおいて、光主反射層の表面にほぼ多角錐状の微小凹部が規則的に最密状態で配列している点にある。この多角錐は、それぞれ三角形の微小な面で構成され、この面で主体的に反射し、この形状を選択することによって、投射される光を再帰正反射あるいはそれに近い状態で反射させることができる。多角錐としては種々のものを選択し得るが、加工性の点から3〜8角錐、より好ましくは3、4あるいは6角錐である。例えば本発明において多角錐として正三角錐・・を選択する時、第1、2、3図の如く多角錐の底面が正三角形・・を示し、・・併し、本発明のスクリーンにおいては、反射光のスクリーンの再帰性が強すぎると、部分的なスクリーン面の輝度が異常に高くなり、その他のスクリーン面の輝度が異常に低くなることがある。この場合、光散乱層によりその再帰性をある程度散乱して、この傾向を抑えることができるが、頂角αを加減して反射光の再帰性をコントロールすることが有効である。」(公報第3頁右下欄第5行〜第4頁右上欄第1行) ・「以上、本発明によると、光主反射層の表面の多角錐状の凹部による再帰性に近い反射光を利用すると共に、光散乱粒子などによる散乱光を利用し、スクリーン上に高輝度で均一な画像を得ることができる。」(公報第5頁左上欄第12〜16行) 以上の記載事項において、「再帰性に近い反射光」及び「再帰正反射あるいはそれに近い状態で反射させることができる」との記載の「再帰性」は、入射光と平行に反射光を反射させることと同義であること、また、「併し、本発明のスクリーンにおいては、反射光のスクリーンの再帰性が強すぎると、部分的なスクリーン面の輝度が高くなり、その他のスクリーン面の輝度が以上に低くなることがある。この場合、光散乱層によりその再帰性をある程度散乱して、この傾向を抑えることができるが、頂角αを加減して反射光の再帰性をコントロールすることが有効である。」との記載は、再帰性を強くしすぎる、つまり指向性を向上させすぎることは好ましくないことを示すことは当業者には明かであることから、引用例1には、適当な程度に指向性を向上させるために、入射光と平行に反射光を反射させる構成とすることが示されていると認められる。 すると、引用例1には、 「ビデオプロジェクターに用いられるスクリーンにおいて、スクリーンはスクリーン面の輝度及び指向性を向上させるためにビデオプロジェクターの入射光と平行に反射光を反射させ、同時に光を散乱させるために光散乱粒子を含有する合成樹脂をコーティングした凹部が形成された光反射層で構成され、凹部は、三角錐の凹部に形成されたビデオプロジェクター。」が記載されていると認められる。 また、原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-75302号公報(以下、引用例2という)には、次の事項が記載されている。 ・「黒色基材層、アルミニウム顔料を含む反射層、および光拡散層を順次積層して形成されたことを特徴とする明室用反射型スクリーン。」(請求項1) ・「本発明は、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)や液晶プロジェクタなどの投影画像を見る場合に使用される反射型スクリーンに係り、さらに詳しくは明るい室内においても高コントラストな投影画像が見られる明室用反射型スクリーンに関するものである。」(【0001】) ・「本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたものであり、外来光や室内の照明に影響されることなく、明るい室内においてもプロジェクタから投影された映像を高コントラストで観賞することが可能な明室用反射型スクリーンを提供することを目的とする。」(【0005】) ・「黒色基材層1はたとえばカーボンブラックを含有する塩化ビニルシートなどを用いることができる。基材層を黒色としたのは外来光の吸収と映像のコントラスト向上のためである。」(【0013】) これらの記載事項から、引用例2には、 「液晶プロジェクタなどの投影画像を見る場合に使用される反射型スクリーン」、つまり、ビデオプロジェクタに用いられるスクリーンにおいて、外来光の吸収と映像のコントラスト向上のために、反射層に黒色基材層を設けた構成が示されていると認められる。 3.対比・判断 引用例1に記載された発明の「ビデオプロジェクター」、「光を散乱させるために」、「光散乱粒子を含有する合成樹脂をコーティングした」、「凹部」、「光反射層」、「三角錐の凹部」は、それぞれ、本願発明の「プロジェクションテレビジョン」、「スクリーンの拡散特性を向上させるため」、「拡散粒子でコーティング処理された」、「反射セル」、「リトロリフレクタ」、「三角錐の溝形状」に相当するから、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、「プロジェクションテレビジョンに用いられるスクリーンにおいて、スクリーンはプロジェクションテレビジョンの輝度及び指向性を向上させるためにプロジェクタの入射光と平行に反射光を反射させ、同時に前記スクリーンの拡散特性を向上させるために拡散粒子でコーティング処理された反射セルが形成されたリトロリフレクタから構成され、前記反射セルは、三角錐の溝形状に形成されたプロジェクションテレビジョン。」である点で一致し、本願発明はスクリーンのコントラストを向上させるための黒薄板を有するのに対して、引用例1に記載された発明はそのような構成を有しない点で相違する。 しかし、引用例1には記載されていないが、ビデオプロジェクターにおいては、外来光を除去し、映像のコントラストを向上することは、当業者に周知の技術課題であるから、引用例1に記載された発明においても、該周知の技術課題を達成するべく、光反射層に、引用例2に記載されたような黒色基材層を設けることは当業者であれば、容易に想到し得たことである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用例1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-21 |
結審通知日 | 2001-03-27 |
審決日 | 2001-04-09 |
出願番号 | 特願平9-181416 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 町田 光信、芝 哲央、越河 勉 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
綿貫 章 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | プロジェクションテレビジョン |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 片山 修平 |