• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない C04B
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない C04B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない C04B
管理番号 1046320
審判番号 訂正2000-39120  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-03 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-10-16 
確定日 2001-10-01 
事件の表示 特許第2056143号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第2056143号(平成3年2月19日出願、平成8年5月23日登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであるところ、その訂正事項は、特許請求の範囲の減縮と明りょうでない記載の釈明を目的とした次のとおりのものである。
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5〜15%としたことを特徴とするコンクリート用骨材。」を特許請求の範囲の減縮を目的として、
「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を6〜10%としたことを特徴とするコンクリート用骨材。」と訂正する。
訂正事項b:特許明細書の段落【0004】に「【課題を解決するための手段】かかる課題を解決した本発明の要旨は、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5〜15%としたことを特徴とするコンクリート用骨材にある。」とあるのを明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【課題を解決するための手段】かかる課題を解決した本発明の要旨は、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を6〜10%としたことを特徴とするコンクリート用骨材にある。」と訂正する。
訂正事項c:特許明細書の段落【0005】に「【作用】本発明のコンクリート用骨材は、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5〜15%としたものである。」とあるのを明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【作用】本発明のコンクリート用骨材は、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を6〜10%としたものである。」と訂正する。
2.訂正拒絶理由の概要
当審が上記本件訂正請求に対して通知した平成13年2月7日付け訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。
2-1.新規事項の追加について
上記訂正事項(a)〜(c)は、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率」について、その範囲を「5〜15%」から「6〜10%」に訂正するものであるが、願書に添付した明細書(特許明細書)には、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が6〜10%」である点については何ら記載されていないから、上記訂正事項(a)〜(c)は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しない。
2-2.独立特許要件違反について
本件訂正発明は、下記3-2.(2)に示す引用刊行物1と引用刊行物2〜7に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3.当審の判断
3-1.新規事項の追加について
ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を「5〜15%」から「6〜10%」と訂正することが新規事項であるか否かについて検討するに、先ずふるい目寸法0.15mm以下の通過率に関する本件特許明細書(特公平7-74088号公報参照)の記載箇所を摘示すると、次のとおりである。
(イ)「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5〜15%とした」(特許公報第3欄第18行乃至第19行、第23行乃至第24行)
(ロ)「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を7%とした」(特許公報第4欄第8行乃至第9行)
(ハ)「表1」には、「骨材のふるい分け試験表」の結果が示され、加工海砂2の「ふるい目寸法0.15」の通過率が「7%」であることが示されている。また「表2」には、加工海砂2についてふるい目寸法と通過率の粒度曲線が図示されている。
そこで、検討するに、本件特許明細書及び図面(表2)には、上述のとおり、本件発明のふるい目寸法0.15mm以下の通過率については「5〜15%」という範囲の他には唯一「7%」の数値が示されているのみであり、「6%」や「10%」という数値や「6〜10%」という数値範囲については一切記載されておらず、表2の粒度曲線にも図示されていないから、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を「5〜15%」から「6〜10%」とする訂正は、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないと云うべきである。
したがって、上記訂正事項(a)〜(c)は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しない。
審判請求人は、平成13年4月24日付け意見書において、本件発明のふるい目寸法0.15mm以下の通過率が「5〜15%」とは、その範囲に含まれる「5%」、「6%」、「7%」、「8%」、「9%」、「10%」、「11%」、「12%」、「13%」、「14%」、「15%」をまとめて表現したものであり、この明細書の記載を当業者が読めば、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を「6〜10%」の範囲内としたものが記載されていると当然に理解することができると主張している。
しかしながら、本件特許明細書には、本件発明の「5〜15%」が整数の集まりであると明記されているわけではない。むしろ、「通過率」という「割合」を示す場合には、その数値が整数に限定されるとするよりは、例えば6.5%や10.5%等小数点第1位くらいまで表示されるとする方が自然であると認められるから、整数によってだけ「6〜10%」とその上・下限値を限定する上記訂正事項は、本件特許明細書に何ら根拠がなく、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとは云えない。
また、仮に「5〜15%」が整数の集まりであるとした場合でも、本件特許明細書には、唯一「7%」という数値が記載されているのみで、下限(5%)と上限(15%)以外にその他何ら限定する根拠が記載されていないから、この「7%」という数値を基準に「5〜15%」の範囲内を区切るとすれば「6〜10%」以外に、例えば「6〜9%」、「5〜8%」、「6〜14%」等多くのケースを想定することができる。
そうすると、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を「6〜10%」の範囲内としたものが本件特許明細書の記載から当然に導くことができるとすることはできない。
さらに言及するならば、本件発明のような、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下」や「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5〜15%」という構成にみられるように、その発明の特徴部分が数値限定による臨界的意義にある場合には、その数値の臨界的意義(効果)が特許明細書に記載されている必要があることは論を待たないところである。そして、このことは、先行技術と明確に区別するために特許請求の範囲の減縮を目的として、発明の特徴的な構成を数値限定した場合でも、その数値限定の臨界的意義が特許明細書に記載されている必要があることは同様であるから、発明の特徴的な構成を限定するための事項は、特許明細書の記載から導かれるものでなければならないことは明らかである。
然るに、本件訂正事項についてみると、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を6〜10%」という訂正事項は、本件発明の特徴的な構成を数値限定するにもかかわらず、本件特許明細書や図面(表2)には、「6〜10%」の臨界的意義や効果について何ら記載されておらず、本件特許明細書の記載から到底導かれるものではないから、この訂正事項は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとは云えない。
以上のとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用することができない。
3-2.独立特許要件違反について
本件訂正請求は、上記3-1.で述べたとおり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないことが明らかであるが、本件訂正発明を下記(1)のとおりに認定したとしても、本件訂正発明は、下記(3)に示す理由により、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(1)本件訂正発明
「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の海砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を6〜10%としたことを特徴とするコンクリート用骨材。」
(2)引用刊行物の記載内容
訂正拒絶理由で引用した刊行物1乃至刊行物7には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用刊行物1:特開昭55一149164号公報
(a)「規格粒度範囲外の粗粒砂を原料として、ロッドミル等の製砂機によって、微細粒子に富んだ微細な人工砂を製造して、ロッドミル等の磨砕度の大小に対応して、微細人工砂の量を10乃至40%の割合で、粗粒砂の量を90乃至60%で調合してI級細骨材を製造する方法。」(特許請求の範囲)
(b)「コンクリート用細骨材は、土木学会規定等によって、I級、II級、III級と分かれていて、各々の粒度範囲が厳密に規定されている。従来からロッドミル等の製砂機(以下単にロッドミルと称する)によって、III級細骨材や、II級細骨材は比較的に容易に製造され得るが、I級細骨材は最も粒度範囲が厳密に規定されて居って、I級細骨材の製造は比較的に容易ではなかった。近来I級細骨材に対する需要が増大している。本発明の方法は、規格外の前記III級やII級の比較的粗粒の砂を原料として、I級細骨材に合格する微粒砂に富んだ、優良な粒度範囲の砂を能率良く、大量に生産する方法を提供する。従来から比較的粗大な原料(例えば20-0M/Mや10-5M/M等)を単純に一定時間磨砕して規格内の細骨材になす事は知られている。亦、比較的細粒な原料(例えば7-2.5M/Mや5-2.5M/M等)を単純に一定時間磨砕して規格内の細骨材になす事は知られている。此の場合には原料サイズが比較的に小さいので、比較的に能率も良い事も当然である。本発明の方法は、更に細粒の原料(約5-0M/M)の粗粒砂でIII級乃至II級品には該当するがI級細骨材とはならない粗粒砂を単純に一定時間摩砕してI級砂に仕上げる従来の方法(以下単に単純摩砕法と称する)とは異なった能率的なI級砂の製造方法を提供する。本発明の方法は、前記III級又はII級の粗粒砂を原料として、微細に細磨砕して、若干細か過ぎる程の微細砂に富んだ微細人工砂を一端製造しておいて、此の微細人工砂を再度上記の原料の粗粒砂と一定の適量割合で調合して、粒度を調整したI級細骨材を製造する(以下細磨砕調合法と称する)。細磨砕調合法に依ると、従来の単純磨砕法に比して、・・・同一の大きさのロッドミルを使用して、且つ原料粗粒砂は同じであって、・・・極めて高能率的に大量にI級細骨材を製造する事が出来た。以下本発明の方法を具体例に就いて説明すると表に示す通り。原料は5-0m/mのII級品を使用して、製砂テスト用ロッドミルを使用して磨砕した。」(1頁1欄下から7行〜2頁3欄19行)
(c)「単純磨砕法によって1分間磨砕した人工砂は生産量(φ6’×12’ロッドミルに換算した理論生産量、以下同じ)は150t/Hであるが粒度構成が不良であって、漸くIII級細骨材に該当する程度であって、問題にならなかった。単純磨砕法によって2分間磨砕した人工砂は、粒度は比較的に微細で、生産量は75t/H程度であった。単純磨砕法によって3分間磨砕した人工砂は粒度は最も微細で、I級細骨材に立派に合格するが生産量が50t/Hと比較的に少ない。」(2頁5欄1行〜13行)
(d)2頁4欄の表には、原料(A)、磨砕時間1分のもの(B)、磨砕時間2分のもの(C)、磨砕時間3分のもの(D)、調整砂(A=60%、C=40%)および調製砂(A=70%、D=30%)の粒度分布や生産量等が示されている。
上記の表は、ふるい目寸法をO.15mmとした場合の原料(A)のふるい通過分は、3.6%(100%-96.4%)、同じふるい目寸法で磨砕時間3分のもの(D)のふるい通過分は、5.8%(100%-94.2%)であることが示されている。
引用刊行物2:社団法人日本建築学会編集著作、「建築工事標準仕様書・同解説5、鉄筋コンクリート工事」丸善(株)、昭和61年9月1日第8版第1刷発行、P.128〜131、306〜308
(a)「建設省建築技術審査委員会「コンクリート細骨材塩分問題専門委員会」は、細骨材に塩分が含まれる場合、塩分が0.04%以下であれば、特別の措置を講じなくてよいという見解を示した」(第129頁下から12〜10行)
(b)「砕砂についても、その粒形はコンクリートの単位水量に大きく影響するので、できるだけ実績率の大きいものを使用する。また、砕砂は、ワーカビリチーを確保するために0.15mmのふるい通過率や洗い試験で失われる量を大きく定めているが、あまり多くなると単位水量がふえ、乾燥収縮も大きくなるので、3〜5%が適当である。」(130頁1〜4行)
(c)「使用材料および調合が不適切な場合は、流動化コンクリートのブリージングの増大、分離、空気量の不安定などが問題となる。流動化コンクリートのこれらの品質に及ぼす使用材料の影響については、特に細骨材の粒度分布で0.3mmまたは0.15mm以下の微粒分が不足する場合は、流動化に伴ってコンクリートの粘性が不足、分離しやすくなったり、ブリージングが異常に多くなったりすることがある。特に、微粒分の少ない海砂や湿式分級して石粉を落とした砕砂を用いる場合などには、この傾向が強くなると考えられるので、注意が必要である。」(「16節 流動化コンクリート」の「16.2材料」の項、307頁下から6〜1行)
引用刊行物3:「第3回(1985年)生コン技術大会 研究発表論文集」全国生コンクリート工業組合連合会及び全国生コンクリート協同組合連合会、昭和60年6月21日発行、P.195〜200
第195頁の表-1に「骨材の生産量及び生コン転換率(58年度)」が示され、細骨材としての河川砂、山陸砂、海砂、砕砂の生産量、使用量、生コン転換率がそれぞれ示されている。
引用刊行物4:社団法人日本建築学会編集著作、「コンクリートの調合設計・調合管理・品質検査指針案・同解説」丸善(株)、昭和51年2月12日第1版第1刷発行、P.111、115、117
(a)「細骨材については、川砂・陸砂のほかに山砂・海砂が多く使われている。山砂は古代に堆積された地層内の砂を採取したもので、泥分量が非常に多く、かなり風化の進んだ粒も含まれている。海砂には、塩分のほかに貝殻や藻なども含まれており、単一粒度のものが多い。これらにかわって、最近では砕砂の開発・利用が進められている。」(第111頁の「5.3.2 骨材の選定」の項第111頁下から第6〜3行)
(b)「山砂・海砂などの水洗いに際して、あまり洗いすぎると微粉分がなくなり、コンクリートのワーカビリチーに支障をきたすようになるので、その程度が問題である。」(第115頁下から12〜11行)
(c)「コンクリートをポンプ圧送する場合、骨材中の微粒分が不足するとポンパビリチーが低下し、分離や閉そくを起こしやすい。そこで「コンクリートポンプ工法施行指針案」においても、0.3mmふるい通過分が15%以上あるものが望ましいとしている。」(第117頁下から10〜8行)
引用刊行物5:土木学会コンクリート委員会編集、「昭和61年制定、コンクリート標準示方書[施工編]」社団法人土木学会、昭和61年10月第1版第1刷発行、P.18〜24)
(a)第19頁「3.4.2 粒度」の項の「表3.4.1に「細骨材の粒度の標準」として、ふるいの呼び寸法0.15mmのふるいを通るものの重量%が2〜10重量%であることが示されている。
(b)「品質が良好なコンクリートを造るためには、一般に、表3.4.1の粒度の範囲にあり、かつ、粗粒率が2.3〜3.1の間にある細骨材を用いることが望ましい。粗粒率がこの範囲を離れる細骨材を用いる場合には、2種以上の細骨材を混合し、粒度調整を行って使用するのがよい。また、表3.4.1に示す連続した2つのふるいの間の量は45%を超えてはならない。空気量が3%以上で単位セメント量が250kg/m3以上のコンクリートの場合、良質の鉱物質微粉末を用いて細粒の不足分を補う場合等には表3.4.1の0.3mmふるいおよび0.15mmふるいを通るものの重量百分率の最小値をそれぞれ5および0に減らしてよい。貧配合のコンクリートの場合や最大寸法の小さい粗骨材を用いる場合は、比較的細粒に富んだ細骨材を使用するとワーカビリチーのよいコンクリートが得られる。」(第19頁【解説】の項、19頁下から18行〜11行)
(c)「砕砂は、粒形が角ばっているばかりでなく、石粉を相当に含む場合が多い。このため、コンクリートの製造に砕砂を用いると、所要のワーカビリチーを得るために必要な単位水量の値がかなり大きくなる。砕砂の粒形は、主に原石の種類や製造時の破砕方法によって相違するものであるが、この良否がコンクリートの所要単位水量やワーカビリチーに及ぼす影響はきわめて大きい。したがって、砕砂を用いる場合には、石質が良好であることを確認すると同時に、できるだけ角ばりの程度が小さく、細長い粒や扁平な粒の少ないものを選定するのがよい。」(24頁3〜9行)
(d)第23頁に「3.4細骨材」の説明として「3.4.5海砂」の項が設けられている。
引用刊行物6:社団法人日本建築学会編集著作、「流動化コンクリート施工指針案・同解説」丸善(株)、昭和58年1月25日第1版第1刷発行、p.44〜45)
「例えば、砕石の粒形が悪い場合、粒度分布で中間粒部分や細粒部分が少ない場合などでは、流動化後のワーカビリチーが悪くなり、細骨材の微粒分(0.3mm以下または0.15mm以下)が少ないと、流動化に伴ってコンクリートの粘性が不足し、分離しやすくなったり、ブリージングが異常に多くなったりすることがある。特に微粒分の少ない海砂や湿式分級して石粉を落とした砕砂を用いる場合などにはこの傾向が強くなると考えられので、注意が必要である。」(第45頁下から17〜12行)
引用刊行物7:「第3回(1985年)生コン技術大会研究発表論文集」全国生コンクリート工業組合連合会及び全国生コンクリート協同組合連合会、昭和60年6月21日発行、p.43〜48
(a)「今日における生コンクリートの需要は、益々増大しており、それにつれて、骨材の需要も拡大され、川砂、川砂利など天然骨材が枯渇状態になっている。その結果、砕石(玉砕石)の使用も多くなり、生コンクリートのワーカビリチーが損なわれる結果となっている。したがって、これを補う方法として、配合設計において、細骨材率、単位水量の増加等の配合変更を余儀なくされており、コンクリートの耐久性等に悪影響を及ぼす要因になっている。今回の実験は、細骨材の生産において発生する微砂を混入することによって、単位水量または、細骨材率を変化させずに、コンクリートの性状改善を行うことについて検討した。」(「実験の目的」の項、43頁4行〜11行)
(b)第44頁の「実験に使用した配合及び材料」の項の「表-1」には、粒子区分0.15mm以下のものが記号A、0.074mm程度以下のものが記号Bとして示され、表-5には、単位水量が176kg/m3のベースコンクリートの配合内容が示されている。そして、「3.実験の結果」の項に「この実験は、微粒分の混入割合を変化させることによって、コンクリートのワーカビリチーが、どう変化するかを、調べたもので、その結果は、(図-1)のとおりであった。これによれば、A粒分の場合は、混入割合が7.5%〜10.0%程度、また、B粒分については、2.5%〜5.0%程度の混入割合において、コンクリートのワーカビリチーが最良となった。」(第44頁下から7〜最下行)と示されている。
(c)「今回の実験において、細骨材中の微粒分を前項に示したように、ある程度混入することにより砕石コンクリートにおけるワーカビリチーの改良を行うことができる可能性を見出したが、・・・さらに研究の必要性を痛感する。」(「まとめ」の項、48頁下から7行〜最下行)
(3)対比・判断
引用刊行物1の上記(a)には、「コンクリート用細骨材」に関し、「規格粒度範囲外の粗粒砂を原料として、ロッドミル等の製砂機によって、微細粒子に富んだ微細な人工砂を製造して、ロッドミル等の磨砕度の大小に対応して、微細人工砂の量を10乃至40%の割合で、粗粒砂の量を90乃至60%で調合してI級細骨材を製造する方法」が記載され、また上記(d)の記載によれば、該粗粒砂を磨砕した人工砂として、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下である「3.6%」の原料砂(A)を3分間磨砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が「5.8%」とした磨砕砂(D)が示されているから、引用刊行物1には、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が3.6%の砂を摩砕して、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5.8%としたことを特徴とするコンクリート用骨材。」という発明(以下、「引用刊行物1発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件訂正発明と引用刊行物1発明とを対比すると、引用刊行物1発明のふるい目寸法0.15mm以下の通過率「3.6%」は本件訂正発明の「4%以下」を満足するから、両者は、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の砂を摩砕したコンクリート用骨材」である点で一致し、次の(イ)及び(ロ)の点で相違すると云える。
(イ)本件訂正発明では、原料砂を海砂に特定しているのに対して、引用刊行物1発明では、原料砂として海砂を使用することが具体的に記載されていない点
(ロ)本件訂正発明では、摩砕してふるい目寸法0.15mm以下の通過率が6〜10%と特定されているのに対して、引用刊行物1発明では、該通過率が5.8%である点
次に、これら相違点について検討する。
(i)相違点(イ)について
引用刊行物2の上記(c)の「特に、微粒分の少ない海砂や湿式分級して石粉を落とした砕砂を用いる場合などには、この傾向が強くなると考えられるので、注意が必要である。」という記載によれば、「微粒分の少ない海砂」の使用が示唆されており、引用刊行物3にも、コンクリート用骨材としての「海砂」の生産量や使用量等が示されているから、コンクリート用骨材としての「海砂」は周知・慣用の材料であると云える。
また、この事実は、引用刊行物4の上記(a)の「細骨材については、川砂・陸砂のほかに山砂・海砂が多く使われている。」と云う記載や引用刊行物5に「細骨材3.4」の説明として「3.4.5海砂」の項が設けられていること等からも明らかであるから、コンリート用骨材として海砂を使用することは、他の河川砂、山陸砂を使用する場合と同様に、本件特許出願前に広く知られていた事実であると云える。
そして、引用刊行物1には、原料砂として河川砂、海砂、山陸砂、砕砂等の例示や海砂の使用を具体的に示唆する記載はないものの、「砂」の概念に含まれる海砂だけを殊更排除するような記載もないから、引用刊行物1発明の「砂」として、コンリート用骨材の原料として広く知られている「海砂」を選択する程度のことは当業者であれば容易に想到することができたと云うべきである。
(ii)相違点(ロ)について
引用刊行物2の上記(c)には、0.15mm以下の微粒分の不足とコンクリートの粘性やブリージングとの関係について、「・・・特に細骨材の粒度分布で0.3mmまたは0.15mm以下の微粒分が不足する場合は、流動化に伴ってコンクリートの粘性が不足、分離しやすくなったり、ブリージングが異常に多くなったりすることがある。特に、微粒分の少ない海砂・・・などには、この傾向が強くなると考えられるので、注意が必要である。」(307頁下から6ないし1行)と記載されているから、この記載によれば、細骨材として海砂を使用する場合には、0.15mm以下の微粒分を相当量含有させる必要があるという知見は本件出願前に既に知られている事項であると云える。
また、引用刊行物5の表3.4.1には、「細骨材の粒度の標準」として、0.15mm以下のものが2〜10重量%であることが示され、引用刊行物6には、上記引用刊行物2と同様の内容を示唆する記載がある。さらには引用刊行物7には、「細骨材中の微粒分がコンクリートの性状に及ぼす影響」を調べる実験結果について、「コンクリートのワーカビリチーに関しては、混入量が少なくても、また多くても、この改善はできず、適当な混入量(A粒分;7.5〜10.0%、・・・)が必要である。」(47頁下から13ないし10行)と記載されているから、これら記載によれば、細骨材中の0.15mm以下の微粒分は2〜10%が標準であり、7.5〜10.0%程度であればワーカビリチーの改善になることも既に知られている事項であると云える。
以上によれば、これら周知の事実を知り得た当業者であれば、海砂の使用にあたって海砂の微粒分の含有量やその影響等を検討することは当然の理であり、またこの検討にあたって、海砂が川砂、山砂等と同様にコンクリート用骨材の原料(細骨材)として使用されているという周知の事実に照らせば、細骨材の粒度やその影響等を参考とすることも自然の成り行きであると云える。
そうすると、既に「砂」の微粒分が「5.8%」という「コンクリート用骨材」が引用刊行物1発明として知られており、しかも、コンクリートのワーカビリチーやブリージング等の性能の観点から細骨材の粒度の標準として「0.15mm以下の粒分が2〜10%」や「7.5〜10.0%」という数値範囲も既に周知であれば、これら数値を指標として、「海砂」の微粒分について「摩砕してふるい目寸法0.15mm以下の通過率を6〜10%」と特定することは、当業者であれば容易になし得たことと云うべきである。
(4)審判請求書における請求人の主張に対して
(i)審判請求人は、審判請求書において、本件訂正発明の効果について、次の甲第8乃至甲第14号証を提示して「コンクリート打設時のワーカビリティが良好で施工性に優れ、しかも、単位水量を減らすことができて硬化後のコンクリートの耐久性を向上させることができるという、引用例(引用刊行物1)及び前記甲第2乃至7号証(引用刊行物2乃至7)からは予測することができない顕著な作用効果がある。」(審判請求書6頁6乃至9行)と主張しているから、「単位水量の減少化」の効果について、以下検討する。
甲第8号証:2000年8月31日、株式会社サンド工場長末松正作成の報告書
甲第9号証:摩砕海砂と摩砕砕砂を撮影した写真
甲第10号証:1994年1月31日、藤沢薬品工業株式会社特薬事業部筑波コンクリート研究所作成、「細骨材微粒子分がコンクリートに与える効果実験」
甲第11号証:「コンクリートなぜなぜおもしろ読本」株式会社山海堂、1997年11月25日、初版発行、58頁、59頁
甲第12号証:社団法人日本建築学会編集著作発行「建築工事標準仕様書・同解説5、鉄筋コンクリート工事」丸善株式会社、1997年6月10日第11 版第3刷発行、214、215頁。
甲第13号証:「日経トレンディ1996年(平成8年)10月号」日経ホーム出版社、28頁、29頁。
甲第14号証:小林一輔著「コンクリートが危ない」岩波新書、32〜37頁
引用刊行物2の上記(b)には、「粒形」と「単位水量」との関係に関し、「砕砂についても、その粒形はコンクリートの単位水量に大きく影響するので、できるだけ実績率の大きいものを使用する。また、砕砂は、ワーカビリチーを確保するために0.15mmのふるい通過率や洗い試験で失われる量を大きく定めているが、あまり多くなると単位水量がふえ、乾燥収縮も大きくなるので、3〜5%が適当である。」(130頁1ないし4行)と記載され、引用刊行物5の上記(c)にも、「砕砂は、粒形が角ばっているばかりでなく、石粉を相当に含む場合が多い。このため、コンクリートの製造に砕砂を用いると、所要のワーカビリチーを得るために必要な単位水量の値がかなり大きくなる。砕砂の粒形は、主に原石の種類や製造時の破砕方法によって相違するものであるが、この良否がコンクリートの所要単位水量やワーカビリチーに及ぼす影響はきわめて大きい。したがって、砕砂を用いる場合には、石質が良好であることを確認すると同時に、できるだけ角ばりの程度が小さく、細長い粒や扁平な粒の少ないものを選定するのがよい。」(24頁3ないし9行)と記載され、また引用刊行物7の上記(a)には、「・・・配合設計において、細骨材率、単位水量の増加等の配合変更を余儀なくされており、コンクリートの耐久性等に悪影響を及ぼす要因になっている。今回の実験は、・・・単位水量または、細骨材率を変化させずに、コンクリートの性状改善を行うことについて検討した。」(43頁4行ないし11行)と記載されている。
以上の記載によれば、砕砂のような粒形が角ばっている細骨材については、その粒形に依って単位水量を増加させるということは広く知られた事実であると認められ、この事実が故に、コンクリートのワーカビリティや単位水量の観点から「砕砂を用いる場合には、できるだけ角ばりの程度が小さく、細長い粒や扁平な粒の少ないものを選定するのがよい」とされていると認められる。そして、このような「粒形」と「単位水量」の関係は、砕砂に限らず細骨材として使用される川砂、山砂、海砂等にも共通して云えることであると認められるから、細骨材が「できるだけ角ばりの程度が小さい」、すなわち丸い球形に近ければ単位水量が減少するということも、上記引用刊行物2、5及び7の記載から当業者にとって容易に予測することができることと認められる。
そこで、以上の観点から、甲第8号証の報告書について検討すると、これは、「摩砕海砂」と「摩砕砕砂」との単位水量比較に関する試験報告書であり、上記0.15mmのふるい通過率が同様に高い摩砕海砂と摩砕砕砂とを比較試験した場合に、摩砕海砂の方が摩砕砕砂より単位水量が少ない結果が得られたというものであるが、摩砕海砂が摩砕砕砂よりその粒形が丸いことは当業者にとって容易に予測することができるから、甲第8号証の結果も予想外という程のものではないと云うべきである。
また、審判請求人は、甲第10号証として「細骨材微粒子分がコンクリートに与える効果実験(ハイテクサンドと一本砂の性能比較)」を提出して、海砂を破砕して作った0.15mm以下の微粒分を混入した細骨材(ハイテクサンド)が海砂の欠如した微粒分を石粉で補った細骨材(一本砂)より単位水量が少なくて済んだとの実験結果を主張しているが、甲第10号証に記載の実験条件等をみると、ハイテクサンドと一本砂の実験が同じ条件でなされているわけではなく、ふるい目通過率の条件設定等で明らかに相違するから、甲第10号証の実験結果をもってしても本件訂正発明に顕著な効果あると裏付けることはできない。 したがって、審判請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
(ii)審判請求人は、引用刊行物1には、コンクリート打設時のワーカビリティを良好にすることやコンクリートに使用する単位水量の低減化を図ることなどの着想は一切なく、またそれを示唆する記載もないから、本件訂正発明と引用刊行物1に記載の発明とを比較すると、両者は目的、構成及び効果が全く相違し、両者は別個の技術思想である旨主張している。
しかしながら、上述したとおり、コンクリート用骨材の技術分野において、ワーカビリティの改善や単位水量の減少化という技術的課題は、本件出願前既に当業者にとって周知の課題である。
また、引用刊行物1に記載の「コンクリート用細骨材」に係る発明は、その目的、構成及び効果の点で本件訂正発明とかなり共通するところがあるから、引用刊行物1にワーカビリティの改善や単位水量の減少化について直接的に明記されていないからといって全く別個の技術思想であるとすることはできない。
したがって、審判請求人の上記主張も根拠がなく採用することができない。
(5)意見書における審判請求人の主張に対して
審判請求人は、平成13年4月24日付け及び13年6月20日付け意見書と共にさらに次の甲第19号証乃至甲第29号証の3を提出して、本件訂正後の発明の進歩性について縷々主張しているから、審判請求人の主張に対し以下検討する。
甲第19号証:鑑定書(破砕方法の違いによる海砂の品質変化の証明)
甲第20号証:「商品案内」(株)エヌエムビー他1社発行(高性能AE減水剤価格表)
甲第21号証:「海砂単価表」
甲第22号証:「JISコンクリート用語JISA0203」(財)日本規格協会発行、平成5年3月15日改正、平成5年6月20日第2刷発行、第4頁
甲第23号証:「図解コンクリート用語事典」(株)山海堂発行、2000年5月20日初版第1刷、第190頁、第276頁
甲第24号証:季刊雑誌「セメント・コンクリート」No.618、1998年8月、第140頁乃至第144頁
甲第25号証:「建設省中国地方建設局温井ダムエ事事務所、発表資料:温井ダムの施工について」月刊ダム日本、1996年7月、No.621
甲第26号証:「教授松下博通のホームページ」
甲第27号証:長瀧重義監修「コンクリートの高性能化」技報堂出版(株)、1997年11月7日、第17頁乃至第23頁、第89頁乃至第101頁
甲第28号証:「加工海砂試験練り報告書」平成10年4月13日
甲第29号証の1乃至3:「第2回西日本資源開発シンポジウム(熊本)論文集」1995年11月16日・17日、熊本大学
(iii)審判請求人は、「海砂を機械にかけて微粒分を作り出すという発想は、本件特許の特許出願前には全く存在しなかったものである。」(平成13年4月24日付け意見書第6頁第24行乃至第25行)と主張している。
しかしながら、引用刊行物1の上記(b)には、「従来から比較的粗大な原料(例えば20-0M/Mや10-5M/M等)を単純に一定時間磨砕して規格内の細骨材になす事は知られている。亦、比較的細粒な原料(例えば7-2.5M/Mや5-2.5M/M等)を単純に一定時間磨砕して規格内の細骨材になす事は知られている。此の場合には原料サイズが比較的に小さいので、比較的に能率も良い事も当然である。本発明の方法は、更に細粒の原料(約5-0M/M)の粗粒砂でIII級乃至II級品には該当するがI級細骨材とはならない粗粒砂を単純に一定時間摩砕してI級砂に仕上げる従来の方法(以下単に単純摩砕法と称する)とは異なった能率的なI級砂の製造方法を提供する。」と記載されているとおり、従来から「原料砂」を機械的に摩砕して細骨材を作り出すことは周知・慣用の技術であるから、細骨材の「原料砂」の一つに含まれる「海砂」を機械にかけて摩砕するという発想が全く存在しないと云うことはできない。
(iv)審判請求人は、海砂の丸味について、「請求人の本件訂正発明は海砂の丸味を帯びた粒形に着目し、これを更に研摩又は摩砕加工してより一層丸味を帯びさせ、且つ微粉粒子を増やす技術である。」(平成13年6月20日付け意見書第3頁第2行乃至第4行)と主張している。
しかしながら、本件特許明細書には、「しかも、天然の海砂を原料としながらゴミ・有機物の混在のない0.15mm以下の微細粒度の砂成分の多いスランプ、ブリージングに優れたコンクリート用骨材を提供することにある。」(特許公報第3欄第11行乃至第14行)や「本発明のコンクリート用骨材は、ふるい目寸法0.15mm以下の通過率4%以下の海砂を摩砕してふるい目寸法0.15mm以下の通過率を5〜15%としたものである。すなわち全体的にみると細粒の含有率を高めた砂である。」(特許公報第3欄第22行乃至第26行)と記載はされているが、「更に研摩又は摩砕加工してより一層丸味を帯びさせ」ることについて、すなわち海砂の「丸味」については一切記載がないから、審判請求人の上記主張は、本件特許明細書に根拠がなく採用することができない。
(v)審判請求人は、平成13年4月24日付け及び平成13年6月20日付け意見書において、甲第19号証の「鑑定書」の結果を根拠に、「海砂の丸味」に基づいた本件訂正発明の効果についてさらに次のようにも主張している。
(a)「ハイテクサンド(本件訂正発明)は、ロッドミル製砂、原砂(海砂そのもの)に比較して、形状が丸みを帯びて粒度分布が良好となることが明らかとなった。」(平成13年4月24日付け意見書第8頁下から第7行乃至第5行、平成13年6月20日付け意見書第8頁第9行乃至第11行)
(b)「(2)にもかかわらず、摩砕度の違いにより、本件特許発明の方が粒の表面の磨きが充分になされ、硬質に変化し、そのため密度は大きくなり、吸水率は小さくなって質の良い砂となっている。
(3)又、実績率も本件特許発明の方がより大きくなっており、その結果、単位水量もかなり大きく減少している。」(平成13年6月20日付け意見書第9頁第5行乃至第10行)
(c)「以上の鑑定結果より、竪形回転式遠心砕塊装置にて破砕したハイテクサンドとロッドミルによる破砕したロッドミル製砂では、その破砕工程により品質変化が異なることが明らかとなった。つまりは、刊行物1と同じ方法で海砂を材料として使用したとしても、本件訂正発明と同様な効果が得られず、同一製品は製造できない。」(平成13年4月24日付け意見書第9頁第13行乃至第17行、平成13年6月20日付け意見書第10頁第8行乃至第13)
そこで、審判請求人のこれら主張の根拠である「鑑定書」の結果について検討すると、この「鑑定書」の鑑定事項は、「海砂をロッドミルあるいは竪形回転式遠心破塊装置により破砕した場合、その破砕装置の違いにより、破砕後の砂がコンクリート用細骨材として品質が相違することの証明」(甲第19号証第1頁)というものであり、この鑑定の品質試験に使用された砂は、破砕する前の海砂、海砂をロッドミルで破砕して製造したロッドミル製砂及び海砂を竪形回転式遠心破塊装置で破砕して製造したハイテクサンドの3種類(甲第19号証第2頁参照)である。
そして、審判請求人は、このような鑑定書の内容から、「ハイテクサンド(本件訂正発明)は、ロッドミル製砂、原砂(海砂そのもの)に比較して、形状が丸みを帯びて粒度分布が良好となることが明らかとなった。」(上記(a)の主張)や「摩砕度の違いにより、本件特許発明の方が粒の表面の磨きが充分になされ、硬質に変化し、そのため密度は大きくなり、吸水率は小さくなって質の良い砂となっている。」(上記(b)の主張)との結果を導き、これが本件訂正発明の効果であるか如く主張している。
しかしながら、本件訂正発明の海砂の摩砕に関する構成は、「ふるい目寸法0.15mm以下の通過率が4%以下の海砂を摩砕して、」というものであり、また、この「摩砕して」については、本件特許明細書には何らの説明もない。すなわち、審判請求人が鑑定書の結果に基づいて主張するような、本件訂正発明は「竪形回転式遠心破塊装置」によって摩砕すること、この装置の摩砕によって海砂が一層丸味を帯び単位水量を改善すること、さらには摩砕装置の種類やその摩砕度合いによって海砂の丸味度合いに差異があること等については、本件特許明細書には一切記載されていないから、本件訂正発明の「摩砕して」とは、「竪形回転式遠心破塊装置による摩砕」や「ロッドミルによる摩砕」のいずれでもよいことは明らかであり、ハイテクサンドとロッドミル製砂の両者を比較する「鑑定書」の結果やこの結果に基づく審判請求人の上記主張は、本件訂正発明の進歩性の判断に何ら影響を及ぼすものでないと云うべきである。
なお、「海砂の丸味」の効果についても、本件特許明細書には何ら記載されていないから、「竪形回転式遠心破塊装置による摩砕」と「海砂の丸味」との関係でその効果を主張することも当を得たものではない。
したがって、審判請求人の上記「鑑定書」の結果に依拠する主張は、いずれも採用することができない。
なお、上記甲第20号証乃至甲第29号証の3は、コンクリートの高性能化に関する文献や加工海砂の試験報告書等であり、これら証拠は上記結論に何ら影響を及ぼすものではない。
5.むすび
以上のとおり、本件審判請求に係る訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、また訂正後の発明も特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件審判請求に係る訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書の規定及び同条第3項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-07-24 
結審通知日 2001-07-30 
審決日 2001-08-16 
出願番号 特願平3-47721
審決分類 P 1 41・ 856- Z (C04B)
P 1 41・ 841- Z (C04B)
P 1 41・ 121- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 紀子  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 1996-05-23 
登録番号 特許第2056143号(P2056143)
発明の名称 コンクリ―ト用骨材  
代理人 平田 義則  
代理人 羽田野 節夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ