• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1046331
審判番号 審判1999-3857  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-11 
確定日 2001-10-22 
事件の表示 平成 3年特許願第 58420号「画像表示用メモリ」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年 9月30日出願公開、特開平 4-274287、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
この出願は、平成3年2月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年3月30日付,平成10年9月28日付,平成11年4月13日付,平成13年9月13日付手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載されたとおりの次のものである。

「データメモリと、
データメモリアクセス手段と、
表示選択情報保持手段と、
表示選択情報アクセス手段と、
画像データ入力と、
画像データ出力と、
表示選択信号入力と、
表示選択信号出力と、
同期信号入力と、
同期信号出力と、
前記同期信号入力から入力された同期信号から、表示画面上における現在の表示位置を求める表示位置予測手段と、
前記表示位置予測手段の指示に従い、前記データメモリから1つ以上の表示データを読み出す表示データ読み出し手段と、
前記表示選択信号入力から入力された同期信号に同期した表示選択信号に対して、前記表示選択情報保持手段に保持された表示選択情報の中に一致するものがあるかないかを一致比較論理により検索し、現在の表示位置に表示する表示データを前記表示データ読み出し手段によって読み出された1つ以上の表示データから選択する、あるいは、表示しないことを決定する表示データ選択手段と、
前記表示データ選択手段で選択された表示データを、前記画像データ入力から入力された同期信号に同期した画像データの所定位置に埋め込む表示データ埋め込み手段と、
前記表示データ埋め込み手段によって合成された画像データと、前記表示選択信号入力から入力された表示選択信号と、前記同期信号入力から入力された同期信号を、それぞれ、前記画像データ出力と、前記表示選択信号出力と、前記同期信号出力から同期して出力する画像データ同期転送手段と
を備えることを特徴とする画像表示用メモリ。」

2.原査定の理由
これに対し、原査定の理由の概要は、次のとおりである。

a) 請求項1の「現在の表示位置」は単に水平位置のみではなく垂直位置をも含むものと認められるが、明細書段落【0019】の「表示位置予測手段が水平同期信号を検出した場合にスタートアップカウンタ51に設定する前記負のオフセット値が調定されている」という記載からは、いかにして「表示位置予測手段」が水平位置のみならず垂直位置を求めるのか不明瞭である。したがって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できるように記載されたものではない。
b) 明細書段落【0015】には、表示位置予測手段のオフセットについて「また、表示位置予測手段5は、垂直同期信号の開始を検出すると、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間をドットクロックで割った値を負のオフセット値として与え、スタートアップカウンタ51にセットし、クロックによるスタートアップアドレスカウンタ51のインクリメントを開始する。次に、表示位置予測手段5は、スタートアップカウンタ51の値が0になると、表示データ読み出し手段6によるデータメモリ1からのセグメントの読み出しを起動する。」と説明されている。
この説明によれば、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間が長くなればなるほど負のオフセット値は増加し、スタートアップカウンタ51の値が負のオフセット値からインクリメントされて0になるまでに要する時間が長くなるものと認められる。要するに、垂直同期信号の開始時点からデータメモリ1の読み出しが起動される時点までの時間がより長くなるものと認められる。
しかし、請求項1に係る発明が、表示するデータのメモリからの読み出
しを、描画点が読み出したデータを表示するべき位置に到達するのに前もって起動するする必要があるなら、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間が長くなればなるほど、より早い時点で読み出しを起動させる必要があるはずである。
よって、表示位置予測手段に関する説明は不明瞭であるから、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できるように記載されたものではない。
(c) 請求項1の「表示データ埋め込み手段」は、発明の詳細な説明及び図面に記載の「表示データ埋め込み手段8」に相当するものであるが、この表示データ埋め込み手段8について、明細書段落【0009】には「表示データ埋め込み手段8は、表示データ選択手段7によって選択された表示データを、画像データ入力から入力された画像データの所定位置に埋め込み、画面の合成を行なう。検索の結果論理画面番号が一致する部分データメモリが無い場合には、画像データ入力から入力された画像データをそのまま出力する。」と記載されている。しかしながら、請求項1に記載される表示データ埋め込み手段8が表示位置予測手段の指示にしたがう構成については説明がない。よって、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
(d) 請求項1には「前記表示データ埋め込み手段によって合成された画像データと、前記表示選択信号入力から入力された表示選択信号と、前記同期信号入力から入力された同期信号を、それぞれ、前記画像データ出力と、前記表示選択信号出力と、前記同期信号出力に同期して出力する画像データ同期転送手段」と記載されている。「・・・を、・・・に同期して出力する」という文章構文から見て、画像データ同期転送手段は「表示データ埋め込み手段によって合成された画像データと、前記表示選択信号入力から入力された表示選択信号と、前記同期信号入力から入力された同期信号」を出力するものと認められ、この「前記表示データ埋め込み手段によって合成された画像データと、前記表示選択信号入力から入力された表示選択信号と、前記同期信号入力から入力された同期信号」は「前記画像データ出力と、前記表示選択信号出力と、前記同期信号出力に同期するものと認められる。しかし、この記載では、同期関係が不明であるので、請求項1の記載は発明の構成に欠くことの出来ない事項を記載したものではない。

3.当審の拒絶理由
当審において平成13年8月15日付で通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

「平成11年4月12日付手続補正書によって補正された、この出願の明細書段落【0015】の、『また、表示位置予測手段5は、垂直同期信号の開始を検出すると、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間をドットクロックで割った値を正のオフセット値として与え、スタートアップカウンタ51にセットし、クロックによるスタートアップアドレスカウンタ51のインクリメントを開始する。次に、表示位置予測手段5は、スタートアップカウンタ51の値が0になると、表示データ読み出し手段6によるデータメモリ1からのセグメントの読み出しを起動する。』という記載では、垂直同期信号の開始時点からデータメモリ1の読み出しが起動される時点が遅れていることとなるので、『表示するデータのメモリからの読み出しを、描画点が読み出したデータを表示するべき位置に到達するのに前もって起動する』ことができるものではなく、表示位置予測手段に関する説明は不明瞭であるので、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明を当業者が容易に実施できるように記載されたものではない。」

4.当審の判断
4-1.原査定の理由(a)について
平成11年4月12日付手続補正書で明細書段落【0015】に「従来は、画像表示装置(ディスプレイ)として残光表示管を使ったベクトル描画型のものがあったが、現在は、表示画像の品質等の点から、ほぼ、走査線型の
装置が用いられている。走査線型の画像表示装置では、まず、画面左上の開始点から描画を始め、一定の速度で水平方向右に描画を進める。描画された点の集合としての水平方向の一本の線を、ここでは走査線といい、走査線上の描画点の数を水平解像度、1つの描画点を表示するための時間をドットクロック周期という。描画点が右端に到達すると描画点は左に戻され、再度、水平方向右に描画が進められる。水平方向の描画の間、一定の速度で描画点は下方向に進むようになっていて、2本の走査線が重なりあうことはない。現状では、500〜1000本程度の走査線によって一枚の画像が構成され、最後の走査線の描画が終ると、つまり、描画点が画面右下に到達すると、描画点は左上に戻り、新しい画像の表示が開始される。ここで、一枚の画像を構成する走査線の数を垂直解像度、走査線の描画が開始される間隔を水平同期周期と呼ぶ。ある時刻を与えると、現在の表示位置、つまり、現時刻の該描画点の画面上の位置は、一枚の画像の描画の開始を示す垂直同期信号からの経過時間から得ることができる。経過時間を水平同期周期で割った商が垂直位置、その残余をさらにドットクロック周期で割ったものが水平位置となる。水平位置は走査線の開始時を示す水平同期信号からの経過時間をドットクロック周期で割っても求めることもでき、こちらの方が精度が高い。」という記載を追加し、走査線型の画像表示装置は二次元の画像を一筆書きの要領で折り返された一本の線として描画することを明らかとし、それを利用して垂直位置,水平位置が測定できることを明らかとしたので、上記「原査定の理由(a)」は解消された。

4-2.原査定の理由(b)について
平成11年4月12日付手続補正書で明細書段落【0015】の「表示位置予測手段5は、垂直同期信号の開始を検出すると、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間をドットクロックで割った値を負のオフセット値として与え、スタートアップカウンタ51にセットし、クロックによるスタートアップアドレスカウンタ51のインクリメントを開始する。」を「表示位置予測手段5は、垂直同期信号の開始を検出すると、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間をドットクロックで割った値を正のオフセット値として与え、スタートアップカウンタ51にセットし、クロックによるスタートアップアドレスカウンタ51のインクリメントを開始する。」と補正し、また、段落【0019】の「画像データ入力から入力された画像データと、表示データ選択手段から出力される表示データの画面上での位置一致するように、表示位置予測手段が最初の水平同期信号を検出した場合にスタートアップカウンタ51に設定する前記負のオフセット値が調定されている。」を「画像データ入力から入力された画像データと、表示データ選択手段から出力される表示データの画面上での位置一致するように、表示位置予測手段が最初の水平同期信号を検出した場合にスタートアップカウンタ51に設定する前記正のオフセット値が調定されている。」と補正したので、上記「原査定の理由(b)」は解消された。

4-3.原査定の理由(c)について
平成11年4月12日付手続補正書で請求項1の「前記表示位置予測手段の指示にしたがい、前記表示データ選択手段で選択された表示データを、前記画像データ入力から入力された同期信号に同期した画像データの所定位置に埋め込む表示データ埋め込み手段と、」を「前記表示データ選択手段で選択された表示データを、前記画像データ入力から入力された同期信号に同期した画像データの所定位置に埋め込む表示データ埋め込み手段と、」と補正すると共に、明細書段落【0009】【0019】に「表示データ埋め込み手段8は、表示データ選択手段7から与えられたデータの属性が有効の場合には該データを出力し、無効の場合には、前記画像データ入力から入力されたデータをそのまま出力する。」を追加したことにより、上記「原査定の理由(c)」は解消された。

4-4.原査定の理由(d)について
平成11年4月12日付手続補正書で請求項1の「表示データ埋め込み手段によって合成された画像データと、前記表示選択信号入力から入力された表示選択信号と、前記同期信号入力から入力された同期信号を、それぞれ、前記画像データ出力と、前記表示選択信号出力と、前記同期信号出力に同期して出力する画像データ同期転送手段」を「表示データ埋め込み手段によって合成された画像データと、前記表示選択信号入力から入力された表示選択信号と、前記同期信号入力から入力された同期信号を、それぞれ、前記画像データ出力と、前記表示選択信号出力と、前記同期信号出力から同期して出力する画像データ同期転送手段」と補正したことにより、上記「原査定の理由(d)」は解消された。

4-5.当審の拒絶理由について
平成13年9月13日付手続補正書で明細書段落【0015】の「また、表示位置予測手段5は、垂直同期信号の開始を検出すると、メモリの読
み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間をドットクロックで割った値を正のオフセット値として与え、スタートアップカウンタ51にセットし」を、「また、表示位置予測手段5は、垂直同期信号の開始を検出すると、垂直同期信号の開始から有効な画像が表示されるまでの時間をドットクロックで割った負の値を、メモリの読み出し時間と画像データの埋め込みに要する時間をドットクロックで割った正のオフセット値により補正した値をスタートアップカウンタ51にセットし」と補正することによって、上記「当審の拒絶理由」は解消された。

5.むすび
以上、この出願の明細書及び図面が、その記載要件を満たしていないとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-10-09 
出願番号 特願平3-58420
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上田 忠手島 聖治  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 松尾 淳一
高橋 泰史
発明の名称 画像表示用メモリ  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ