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審決分類 審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:11  G21C
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:2  G21C
管理番号 1046399
審判番号 補正2001-50023  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-04-30 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2001-02-28 
確定日 2001-10-22 
事件の表示 平成 2年特許願第247527号「燃料集合体」において、平成12年4月14日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原決定を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成2年9月19日の出願であって、平成12年2月4日付けで拒絶査定がなされ、その後拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成12年4月14日付けで手続補正がなされたところ、前置審査において、この手続補正は、平成13年1月10日付けで決定をもって却下された。
2.原決定の理由
原審における補正の却下の決定の理由は、概略、次のとおりである。
補正後の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の段落【0008】には、「各領域で外側から2層目に配置されている可燃性毒物入り燃料棒の数が等しく」と記載されている。 そして、平成12年9月21日付けの審判請求理由補充書には、「各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数が等しく」(構成B)を備えることにより、運転時における横断面の出力分布を平坦化できるという優れた作用効果を奏するものである」旨記載されていることから、平成12年4月14日付けでした手続補正は、‘冷温時に制御棒挿入位置の熱中性子束を増大しながらも、運転時における横断面の出力分布を平坦化するために、各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数を等しくする’という技術的思想に基づいた補正であると認められる。
一方、願書に最初に添付した明細書又は図面等の記載からは、‘運転時の局所出力ピーキングを改善しつつ、すなわち、運転時の横断面出力を平坦化しつつ、冷温時のみ制御棒挿入側の熱中性子束を増大する’という技術的思想は記載されているものの、そのための具体的構成として、‘各領域で所定燃料棒の重心位置を異ならせること’が記載されているにすぎず、‘各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数を等しくする’ということは、明確に記載されていない。
また、図には、各領域に可燃性毒物入り燃料棒が各々4本配置された燃料集合体の発明は記載されているものの、本数を各々4本にすることの効果について全く記載されておらず、運転時の横断面出力分布を平坦化する手段として、「各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数を等しく」するという、技術的思想は記載されておらず、また、運転時の横断面出力分布を平坦化するための手段として、各領域で2層目に配置する可燃性毒物入り燃料棒の数を等しくすることが、本願出願当時、当業者に自明の事とも認められない。
したがって、この補正は特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3.当審の判断
願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)には、
「(実施例1)
第1図は、本実施例の燃料集合体断面を示したものである。燃料集合体は9×9格子で、太径水口ツドが二本集合体中心部に配置されている。本実施例は、燃料集合体平均濃縮度が4.4w/oの高燃焼度燃料集合体に適応した場合である。
燃料ペレツトは、表1に示す21〜25を使用している。ガドリニア入り燃料棒の本数は14本で制御樺挿入側とその反対側で同じ本数である。
本実施例では制御棒側の領域(領域A)と、制御棒反対側の領域(領域B)で可燃性毒物入り燃料棒の配置を変えており、A,B領域でチヤンネルボツクスに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒31,32の重心位置とA,Bを分割する対角線との距離であるα,βにα<βの関係が成立している。さらに、本実施例では、各領域でチヤンネルボツクスのコーナ部I、IIに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒31a,32aの格子位置が領域AとBで異なっており、可燃性毒物31a,32aと対角線との距離であるγ,δに、γ<δの関係が成立している。
これにより冷温時の制御棒価値が約0.5% △k増大し、炉停止余裕を約0.2%△k改善できた。」
「(実施例2)
第9図は、本実施例の燃料集合体断面を示したものである。実施例1と同様に燃料集合体は9×9格子で、太径水口ツドが2本集合体中心部に配置されている。本実施例も、燃料集合体平均濃縮度が4.4w/o の高燃焼度燃料集合体に適応した場合である。
燃料ペレツトは、実施例1と同じ表1に示す21〜25を使用している。ガドリニア入り燃料棒の本数は15本で制御棒挿入側の方がその反応側より一本少なくしている。ガドリニアの本数を制御棒側の領域(領域A)と、制御棒反対側の領域(領域B)で変えることで、実施例1より冷温時制御棒挿入側の熱中性子束を増大する効果をさらに増大できる。
これにより冷温時の制御棒価値が約0.7%△k増大し、炉停止余裕を約0.3%△k改善できた。」
「(実施例3)
第10図は、本実施例の燃料集合体断面を示したものである。本実施例と実施例1との違いは各領域でチヤンネルボツクスのコーナ部I、IIに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒31a,32aの格子位置が領域AとBで同じになっている点である。これにより、運転時の局所出力ピーキングをさらに改善することができる。しかし、冷温時の制御棒価値の増大は約0.3△kで、実施例1よりも減少している。」
が、各実施例をそれぞれ示している第1図、第9図及び第10図とともに記載されている。
そして、本願発明の実施例を示している第1図、第9図及び第10図には、各領域A,Bの2層目に可燃性毒物入り燃料棒が4個づつ配置されていることが見て取れる。さらに、当初明細書には、各領域A,Bの2層目に配置される可燃性毒物入り燃料棒の数を等しくすることを排除する記載は何れの箇所にもこれを認めることができない。
してみると、本願の当初明細書には、「各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数を等しく」の事項は示されており、この補正事項は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものである。
また、原審の補正却下の決定の理由においては、平成12年9月21日付けの審判請求理由補充書の記載をもとに、「平成12年4月14日付けでした手続補正は、‘冷温時に制御棒挿入位置の熱中性子束を増大しながらも、運転時における横断面の出力分布を平坦化するために、各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数を等しくする’という技術的思想に基づいた補正であると認められる。」としているので、この点について検討する。
まず、当該理由補充書は、拒絶査定に対する審判の請求の理由を述べるものであって、これが本願における明細書としての効力又はこれを補足する性質を有するものではないことは明らかである。
そして、補正の適否は、まず、当初明細書の記載に基づき、当該発明の技術的課題、構成及び作用効果を検討して特許請求の範囲に記載された技術的事項を客観的に把握し、その上で、補正内容をこれと対比し、要旨の変更に当たるかどうかを認定、判断すべきであり、その判断は、上述したとおりである。
ところで、補正後の明細書には、以下の記載がある。
「本発明の目的は、高燃焼度化に伴う局所出力ピーキングの上昇を抑制しつつ、冷温時における制御棒価値を増大させ、かつ運転時における出力分布へのインパクトが小さい燃料集合体を提供することにある。」(段落【0007】)
「本発明の目的は、可燃性毒物を含まない燃料棒と可燃性毒物入り燃料棒とが9行9列以上の正方格子状に配列され、最外層の4つのコーナーには核分裂性物質濃度が最底の可
燃性毒物を含まない燃料棒が配置され、可燃性毒物入り燃料棒は外側から2層目以内の内側領域に配置され、各領域で外側から2層目(チャンネルボックスに最も近い位置)に配置されている可燃性毒物入り燃料棒の数が等しく、各領域で外側から2層目に配置されている可燃性毒物入り燃料棒の重心位置a,bを領域AとBで異ならせることで達成される。具体的には、重心位置a,bと対角線との距離をα,βとしたとき、α<βの関係を満足するように構成することで達成される。」(段落【0008】)
「〔作用〕
第1図では、高燃焼度化に伴い出力ピーキングが上昇し最大線出力密度が増大することを考慮して燃料棒の配列を従来の8×8格子から9×9格子に変更している。以下本発明の作用は9 ×9格子を例に取って説明するが・・・・・炉停止余裕を改善するためには(1)運転時と冷温時の反応度変化の低減
(2)冷温時の軸方向出力分布の平坦化
(3)制御棒価値の増大
が有効である。
本発明は、制御棒構造を変更することなく上記(3)を実現するものである。制御棒価値は、制御棒挿入位置の熱中性子束と制御材(B4C)の中性子吸収断面積の積によって決まる量である。従って制御棒構造を変えず制御棒価値を大きくするためには、制御棒挿入位置(チヤンネルボックスの外側)の熱中性子束を増大しなければならない。しかし、これはチヤンネルボツクスに面した燃料棒の出力を増大することになるので.運転時には好ましくない。すなわち、発明の目的を達成するためには冷温停止時のみ制御棒挿入位置(チヤンネルボツクスの外側)の熱中性子束を増大すれば良いことになる。本発明は、可燃性毒物であるガドリニアと制御棒の制御材であるB4Cの中性子吸収断面積の相違、特に、中性子エネルギ依存性の相違に着目したものである。」(段落【0012】〜段落【0014】)
「制御棒側の領域(領域A)と、制御棒反応側の領域(領域B)で可燃性毒物入り燃料棒の配置を変えることで、冷温時の局所出力分布を制御できることが分かった。しかもこの方法は、冷温時に比べ運転時の出力分布へのインパクトは少ないため、最大線出力を増大することはない。本発明の目的を達成する具体的構成は、第5図で説明したように、A、B領域でチャンネルボックスに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒の重心位置a,bとA,Bを分割する対角線との距離をα,βとしたとき、α<βの関係を満足するようにすることである。特に、各領域でチヤンネルボツクスのコーナ部I、IIに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒c,dの格子位置を領域AとBで異ならせることが有効である。具体的には、可燃性毒物c,dと対角線との距離をγ,δとしたとき、γ<δの関係を満足するようにすることである。」(段落【0017】)
「【発明の実施例】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
(実施例1)
第1図は、本実施例の燃料集合体断面を示したものである。燃料集合体は9×9格子で、太径水口ツドが二本集合体中心部に配置されている。本実施例は、燃料集合体平均濃縮度が4.4w/oの高燃焼度燃料集合体に適応した場合である。
燃料ペレツトは、表1に示す21〜25を使用している。ガドリニア入り燃料棒の本数は14本で制御棒挿入側とその反対側で同じ本数である。
本実施例では制御棒側の領域(領域A)と、制御棒反対側の領域(領域B)で可燃性毒物入り燃料棒の配置を変えており、A,B領域でチヤンネルボツクスに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒31,32の重心位置とA,Bを分割する対角線との距離であるα,βにα<βの関係が成立している。さらに、本実施例では、各領域でチヤンネルボツクスのコーナ部I、IIに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒31a,32aの格子位置が領域AとBで異なっており、可燃性毒物31a,32aと対角線との距離であるγ,δに、γ<δの関係が成立している。
これにより冷温時の制御棒価値が約0.5% △k増大し、炉停止余裕を約0.2%△k改善できた。・・・・・
(実施例2)
第9図は、本実施例の燃料集合体断面を示したものである。実施例1と同様に燃料集合体は9×9格子で、太径水口ツドが2本集合体中心部に配置されている。本実施例も、燃料集合体平均濃縮度が4.4w/o の高燃焼度燃料集合体に適応した場合である。
燃料ペレツトは、実施例1と同じ表1に示す21〜25を使用している。ガドリニア入り燃料棒の本数は15本で制御棒挿入側の方がその反応側より一本少なくしている。ガドリニアの本数を制御棒側の領域(領域A)と、制御棒反対側の領域(領域B)で変えることで、実施例1より冷温時制御棒挿入側の熱中性子束を増大する効果をさらに増大できる。
これにより冷温時の制御棒価値が約0.7%△k増大し、炉停止余裕を約0.3%△k改善できた。
(実施例3)
第10図は、本実施例の燃料集合体断面を示したものである。本実施例と実施例1との違いは各領域でチヤンネルボツクスのコーナ部I、IIに最も近い位置に配置されている可燃性毒物入り燃料棒31a,32aの格子位置が領域AとBで同じになっている点である。これにより、運転時の局所出力ピーキングをさらに改善することができるしかし、冷温時の制御棒価値の増大は約0.3△kで、実施例1よりも減少している。」(段落【0018】〜段落【0024】)
「【発明の効果】
本発明によれば、高燃焼度化に伴う局所出力ピーキングの上昇を抑制しつつ、冷温時における制御棒価値を増大できるので、炉停止余裕を改善できる。更に、運転時における出力分布へのインパクトが小さいので、チャンネルボックスに面した燃料棒の出力増加を抑制できる。」(段落【0028】)
補正後の明細書の記載によれば、平成12年4月14日付け手続補正書における補正事項「各領域で外側から2層目に配置されている可燃性毒物入り燃料棒の数が等しく」と本願発明の作用効果との因果関係は記載されていない。したがって、当該補正事項に基づく作用効果は明りょうでないので、原審のように当該補正事項について、「冷温時に制御棒挿入位置の熱中性子束を増大しながらも、運転時における横断面の出力分布を平坦化するために、各領域で外側から2層目に配置されている前記可燃性毒物入り燃料棒の数を等しくする」との技術的思想を把握することができず、補正却下の決定の理由のように要旨を認定することができないので、結局、明細書の要旨を変更するものとの判断をすることができない。
4.むすび
以上のとおりであるから、上記補正却下の決定の理由により上記手続補正を却下すべきものとした原決定は失当である。
 
審理終結日 2001-09-07 
結審通知日 2001-09-18 
審決日 2001-10-01 
出願番号 特願平2-247527
審決分類 P 1 7・ 11- W (G21C)
P 1 7・ 2- W (G21C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今浦 陽恵村田 尚英  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 三輪 学
山田 正文
発明の名称 燃料集合体  
代理人 作田 康夫  

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