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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1046420
審判番号 審判1997-12050  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-07-24 
確定日 2000-02-23 
事件の表示 平成 3年 特 許 願 第 48815号「通信装置」拒絶査定に対する審判事件(平成 4年 9月24日出願公開、特開平 4-268852)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年2月22日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成9年3月14日付け、及び平成9年8月22日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
なお、平成11年5月7日付け手続補正は、平成11年7月21日付けの補正の却下の決定により却下され、この決定は確定している。
「相手通信装置と通信を行う通信端末装置と、この通信端末装置と前記相手通信装置との間にあって通信信号のバッファメモリ機能を有し、前記通信端末装置と前記バッファメモリとの間の通信速度と、前記バッファメモリと前記相手端末装置との間の通信速度とが異なる通信を行う伝送装置と、電源スイッチのオン/オフに基づき前記伝送装置への電源供給を制御する電源制御部とを備え、前記電源制御部は、通信中の前記電源スイッチのオフに基づき前記伝送装置へ通信状態を問い合わせ、前記伝送装置と前記相手端末装置との間の通信終了の応答を確認するまで前記電源の供給を継続することを特徴とする通信装置。」
2.引用刊行物
これに対して、当審の拒絶の理由で引用した特開昭63-204861号公報(昭和63年8月24日出願公開。以下「引用例」という。)には、「常時データ通信端末装置の全ての部分に給電しなくてもデータの送信、受信の動作ができるようにして、累計的な消費電力を少なくするとともに耐久性を向上することができるデータ通信端末装置を得ること」(第2頁右下欄20行ないし第3頁左上欄4行)を目的とし、
「データ通信端末装置は、メイン電源スイッチ投入により前記メインCPUと前記通信処理CPUに同時に電源供給を実行し該通信処理CPUがデータの送受信処理中である場合は前記メイン電源スイッチを切っても該通信処理CPUに対する電源供給を保持し該通信処理CPUで制御される電源制御手段と、前記通信処理CPUに対する電源供給が停止しても前記データバッファメモリの内容を保持する保持手段とを具備した」(第3頁左上欄6行ないし14行)ことを問題点を解決するための手段とし、より具体的には、
(a)「(1)は種々の情報処理を行うメインCPU、(2)はメインCPU(1)で使用されるデータや新たに作成されたデータを記憶する主メモリ装置、(3)はメインCPU(1)からの情報を文字や図形として表示するディスプレイ装置」(第3頁右上欄12行ないし17行)であること、
(b)「(4)は通信処理CPUであり、この通信処理CPUはメインCPU(1)からのコマンドによりデータの送受信などの処理を行う。(5)はデータバッファメモリであり、このデータバッファメモリ(5)は通信処理CPU(4)のワークメモリとして使用したり、送受信データや送受信にともなう種々のステータス情報を記憶する」(第3頁18行ないし左下欄5行)こと、
(c)「(6)は通信処理CPU(4)の電源供給保持制御出力であり、通信処理CPU(4)が送受信処理中の時は電源供給を保持するような出力をし、送受信処理中以外では電源供給を保持しないように出力する」(第3頁左下欄6行ないし10行)こと、
(d)「(7)は電源供給保持制御出力(6)により電源をON/OFFする電源供給保持手段としてのリレー接点である。(8)は連動している接点(8a)と同(8b)よりなるメイン電源スィツであり、AC100V側の接点(8a)は電源回路(9)の通電を断続し、接点(8b)はメインCPU(1)、主メモリ(2)、CRT(3)の電源を断続する」(第3頁左下欄11行ないし18行)こと、
(e)「通信処理CPU(4)はメインCPU(1)から転送された送信ファイルをデータバッファメモリ(5)へ書き込む。送信ファイルの転送が終了すると、通信処理CPU(4)は電源供給保持制御出力(6)によってリレー接点(7)を閉じ、メイン電源スイッチ(8)をOFFしても、通信処理CPU(4)への電源の供給が停止しないようにする」(第4頁左上欄19行ないし右上欄6行)こと、
(f)「メイン電源スイッチ(8)が通信処理CPU(4)の同報処理中にOFFされると、接点(8b)は開放され、メインCPU(1)、主メイン装置(2)、CRT(3)への給電は停止する。また同時に接点(8a)も開放されるが、リレー接点(7)が閉じているため、電源回路(9)へはAC100V電源が供給され続け、電源線(12)を通じて、通信処理CPU(4)とデータバッファメモリ(5)への電源供給は保持される。通信処理CPU(4)は同報処理が終了すると、前記のように同報処理終了ステータスをデータバッファメモリ(5)に書き込み後、リレー接点(7)を開放する。リレー接点(7)が開放されると、すでにメイン電源スイッチ(8)はOFFとなっているため、電源回路(9)にはAC100Vが供給されなくなり、通信処理CPU(4)、データバッファメモリ(5)への給電は停止する」(第4頁左下欄6行ないし右上欄4行)こととした、データ通信端末装置が図面と共に記載されている。
3.対比
そこで、本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、
引用例に記載された発明における「メインCPU1」、「主メモリ2」及び「ディスプレイ装置3」は、通信処理CPU(4)及びデータバッファメモリ(5)を介して相手通信装置である送信先へ送信ファイルを送信し、また送信先からのデータを受信するものである(上記記載(a)、(b)、(e)参照、)から、本願発明における「相手通信装置と通信を行う通信端末装置」に相当し、
同じく引用例に記載された発明における「通信処理CPU(4)」と「データバッファメモリ(5)」は、メインCPU(1)と送信先との間にあって、「データバッファメモリ(5)」により送信ファイルのバッファメモリ機能を有する(上記記載(e)参照)から、本願発明における「伝送装置」とは、「この通信端末装置と前記相手通信端末装置との間にあって通信信号のバッファメモリ機能を有する伝送装置」という点で一致し、
同じく引用例に記載された発明における「電源回路(9)」と「リレー接点(7)」は、メイン電源スイッチ(8)のオン/オフに基づき通信CPU(4)及びデータバッファメモリ(5)への電源供給を制御し、通信処理CPU(4)が送受信処理中の時はメイン電源スイッチ(8)をオフしても通信処理CPU(4)及びデータバッファメモリ(5)への電源供給を保持し、その送受信処理が終了すると、通信処理CPU(4)、及びデータバッファメモリ(5)への給電を停止するものである(上記記載(c)ないし(f)参照)から、本願発明における「電源制御部」とは、「電源スイッチのオン/オフに基づき前記伝送装置への電源供給を制御する電源制御部」であって、「通信中に前記電源スイッチをオフにしても前記伝送装置と前記相手端末装置との間の通信が終了するまで前記電源の供給を継続する」ものであるという点で一致し、そして、引用例に記載された「データ通信端末装置」は、「通信装置」といえるものであるから、結局、両者は、
「相手通信装置と通信を行う通信端末装置と、この通信端末装置と前記相手通信装置との間にあって通信信号のバッファメモリ機能を有する伝送装置と、電源スイッチのオン/オフに基づき前記伝送装置への電源供給を制御する電源制御部とを備え、前記電源制御部は、通信中に前記電源スイッチをオフにしても前記伝送装置と前記相手端末装置との間の通信が終了するまで前記電源の供給を継続することを特徴とする通信装置」である点で一致し、次の▲1▼、▲2▼の点で相違する。
▲1▼本願発明の伝送装置は、「前記通信端末装置と前記バッファメモリとの間の通信速度と、前記バッファメモリと前記相手端末装置との間の通信速度とが異なる通信を行う」ものであるのに対し、引用例に記載された発明の伝送装置(通信処理CPU(4)とデータバッファメモリ(5))は、通信端末装置(メインCPU(1))とバッファメモリ(データバッファメモリ(5))との間の通信速度と、前記バッファメモリと相手端末装置(送信先)との間の通信速度の関係が明示されていない点。
▲2▼通信中に電源スイッチをオフにしても、伝送装置と相手端末装置との間の通信が終了するまで電源の供給を継続するために、電源制御部が、本願発明は、「通信中の前記電源スイッチのオフに基づき前記伝送装置へ通信状態を問い合わせ、前記伝送装置と前記相手端末装置との間の通信終了の応答を確認するまで前記電源の供給を継続する」ものであるのに対し、引用例に記載された発明は、伝送装置(通信処理CPU(4)とデータバッファメモリ(5))が送受信処理中の時にその伝送装置から出力される電源供給保持制御出力(6)によって電源の供給を継続するものである点。
4.当審の判断
上記相違点▲1▼について検討すると、データを電話回線等を介して伝送する場合、その使用し得る帯域幅などから予め通信速度が定められているのが普通であり、また、バッファメモリを介在させて通信速度を電話回線等と通信速度に合致させるようにすることも慣用されていることであるから、引用例に記載された発明のデータバッファメモリにそのような機能を持たせるようにすること、すなわち、「前記通信端末装置と前記バッファメモリとの間の通信速度と、前記バッファメモリと前記相手端末装置との間の通信速度とが異なる通信を行う」ようにすることは、当業者が適宜採用し得ることである。
次に、上記相違点▲2▼について検討すると、本願発明は、通信中の電源スイッチのオフに基づき伝送装置は通信状態を問い合わせることを要件としているが、通信中であれば電源スイッチのオフに拘わらず電源の供給が継続されるから通信中における通信状態の問い合わせば格別の技術的意味を有しておらず、電源の供給を継続するか否かの制御で意味を有するのは、結局、伝送装置と相手端末装置との間の通信が終了したか否かであると認められる。また、装置の動作状態を監視するためにその装置に問い合わせ信号を送り、その応答をみるようにすることも一般的に行われていることである(必要ならば、例えば特開昭63-79119号公報、特開昭63-275245号公報、特開昭63-284994号公報参照)から、引用例に記載されている発明のように、電源制御部(電源回路(9)とリレー接点(7))から通信状態の問い合わせを行うことなく、伝送装置(通信処理CPU(4)とデータバッファメモリ(5))からそれが送受信中の時に出力される電源供給保持制御出力(6)によって電源の供給を継続するのに代えて、上記相違点▲2▼における本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に相当し得ることである。
そして、本願発明の構成によりもたらされる効果も引用例から当業者が容易に予測し得る程度のものであり、格別のものではない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-11-25 
結審通知日 1999-12-10 
審決日 1999-12-22 
出願番号 特願平3-48815
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土居 仁士  
特許庁審判長 田邉 壽二
特許庁審判官 東 次男
関川 正志
発明の名称 通信装置  
代理人 加藤 公延  
代理人 田澤 博昭  

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