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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11C
管理番号 1046485
審判番号 審判1998-19077  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-04 
確定日 2001-02-15 
事件の表示 平成 7年特許願第 83775号「DRAMページ複写方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 2月16日出願公開、特開平 8- 45270]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年4月10日(パリ条約による優先権主張1994年4月11日、アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成11年1月4日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。
「1つのワードライン(4)によってアドレスされたメモリセルから1つのビットライン(2j+1)にデータを転送する、DRAMのデータ転送方法であって、上記ビットライン(2j+1)は、上記ワードラインおよび相互にかつ同時にアドレスされる一群のワードラインの両方によってアドレスされるメモリセルに共通であり、ビットデータを上記共通のビットラインから上記一群のワードラインによってアドレスされるメモリセルに同時に転送するようにし、上記一群のワードラインによってアドレスされたメモリセルの静電容量は、上記共通のビットラインの静電容量より小さいことを特徴とする、DRAMのデータ転送方法」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由で引用された特開平1-138694号公報(平成1年5月31日出願公開。以下、「引用例」という)には、「本発明の目的は、従来のかかる複写時間を短縮するメモリ装置を提供する」(公報第2頁左上欄第18行乃至第19行)、「第1ロウアドレス20に対応したワード線(WL1)が適当な時刻において高レベルになる。しかる後、メモリセルを構成するトランスファゲート14の電荷情報がビット線13に達した時刻にセンスイネーブル信号(SENバー)を低レベルにし、ビット線の電荷情報(電圧)を増幅する」(公報第3頁左下欄第5行乃至第11行)、「センスアンプ17が一度増幅動作を始めるとRAS(バー)クロックが高レベルになるまで増幅されたデータは失われないため、時刻t2以後の適当な時刻において第二のロウアドレス21に対応したワード線WL2が高レベルになると、蓄積されていた電荷情報は失われ、センスアンプ17が増幅した電荷情報、すなわち第一ロウアドレス20のメモリセルに蓄積されていた電荷情報に置き替わる」(公報第3頁左下欄第19行乃至同頁右下欄第7行)が記載されており、また図面第2図にはビット線13にトランスファゲートとコンデンサからなるメモリセルが複数接続され、各メモリセルにはワード線12が接続されたDRAMが記載されている。
よって、引用例には、ビット線13にワード線12が接続されたメモリセルを複数接続したメモリセルアレイを含むDRAMにおいて、複写時間を短縮する方法として、ワード線WL1を高レベルにしてワード線WL1に接続されたメモリセルに記憶されている電荷情報をビット線13に転送後、センスアンプ17によりビット線13の電荷情報を増幅させ、次にワード線WL2を高レベルにしてワード線WL2に接続されたメモリセルへビット線13の電荷情報を転送する点が記載されていると認められる。

3.対比
そこで本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例の「ワード線WL1」、「電荷情報」、「ビット線13」、「ビット線13の電荷情報」、は、それぞれ本願発明の「1つのワードライン(4)」、「データ」、「ビットライン(2j+1)」、「ビットデータ」にそれぞれ相当しており、また一般にDRAMではメモリセルの静電容量はビットラインの静電容量よりはるかに小さいことから、両者は、
「1つのワードライン(4)によってアドレスされたメモリセルから1つのビットライン(2j+1)にデータを転送する、DRAMのデータ転送方法であって、上記ビットライン(2j+1)は、上記ワードラインおよび転送先のワードラインの両方によってアドレスされるメモリセルに共通であり、ビットデータを上記共通のビットラインから転送先のワードラインによってアドレスされるメモリセルに転送するようにし、上記転送先のワードラインによってアドレスされたメモリセルの静電容量は、上記共通のビットラインの静電容量より小さいことを特徴とする、DRAMのデータ転送方法」である点で一致し、転送先のメモリセルをアドレスするワードラインに関して、本願発明はワードラインが一群であるのに対し、引用例記載の発明では1つのワードラインである点で両者は相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、何本のワードラインに接続されたメモリセルへビットデータを転送するかは必要に応じて適宜設定する設計事項であり、引用例記載の発明において複数のワードラインに接続されたメモリセルへ複写を行う場合には、転送時に該複数のワードラインを高レベルにすることにより達成できることは当業者にとって明らかであるので、引用例記載の発明において、転送先のメモリセルをアドレスするワードラインを一つでなく一群にすることは、当業者ならば容易に発明できたものである。
なお、請求人は審判請求書において、「本件発明は、まず1つのワードラインをターンオンし、データをセンシングし、その後に第1のワードラインを不能動化し、次いで、第2のワードラインを能動化してデータを2頁目にコピーすることを特徴としています」(審判請求書第5頁第20行乃至22行)と主張しているが、この主張は本願請求項1に係る発明の請求項の記載に基づかないものである。また「引用文献1の方法では複数枚のコピーを行うためには、3本以上のワードラインをオン状態に保持する必要があり、これは実際にはきわめて困難であります。これに対し、本件発明では順次にワードラインを立上げてシリアルな複写を行う方法を採用しているため、きわめて容易に複数ページの複写が可能であります」(審判請求書第5頁第28行乃至第6頁第22行)とも主張しているが、本願発明は「ビットデータを上記共通のビットラインから上記一群のワードラインによってアドレスされるメモリセルに同時に転送する」という方法であり、「順次にワードラインを立上げてシリアルな複写を行う」という方法は採用していないため、この主張も本願請求項1に係る発明の請求項の記載に基づかないものである。よって、上記請求人の主張は採用できない。

5.むすび
本願発明は引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-08-17 
結審通知日 2000-08-29 
審決日 2000-09-12 
出願番号 特願平7-83775
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須原 宏光  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 斎藤 操
飯田 清司
発明の名称 DRAMページ複写方法  
代理人 河宮 治  
代理人 青山 葆  

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