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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02D
管理番号 1046513
審判番号 不服2000-5555  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-19 
確定日 2001-11-01 
事件の表示 平成5年特許願第168838号「深層混合処理工法による軟弱地盤のオープンカット工法」拒絶査定に対する審判事件〔平成6年3月15日出願公開、特開平6-73722、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年7月8日(優先権主張(国内優先):平成4年7月10日)の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、平成12年5月16日付け手続補正書で補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
建設予定の建造物の地下構造を施工するための地下掘削工事において、
軟弱地盤の地表面から地下構造物が構築されるオープンカット領域の深度にその構造物を支えるのに必要な厚さを加えた深度まで、及び前記地下構造物の平面形状の外周に自立山留め壁として必要な壁厚を加えた領域の全面に深層混合処理工法による遮水性の地盤改良を施工し、その後、前記改良地盤について前記地下構造物に相当する部分を場内進入の重機によるオープンカット方式によりドライワークとして掘削することを特徴とする、深層混合処理工法による軟弱地盤のオープンカット工法。
【請求項2】
建設予定の建造物の地下構造を施工するための地下掘削工事において、
軟弱地盤の地表面から地下構造物が構築されるオープンカット領域の深度にその構造物を支えるのに必要な厚さを加えた深度まで、及び前記地下構造物の平面形状の外周に自立山留め壁として必要な壁厚を加えた領域の全面に深層混合処理工法による遮水性の地盤改良を施工し、前記改良地盤中に少なくとも前記地下構造物の各下底位置から支持地盤に到達する支持杭を施工し、その後、前記改良地盤について前記地下構造物に相当する部分を場内進入の重機によるオープンカット方式によりドライワークとして掘削することを特徴とする、深層混合処理工法による軟弱地盤のオープンカット工法。」

2.原査定の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1は、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭61-92220号公報(以下、「引用例1」という。)に記載された発明に基いて、また、本願発明2は、引用例1、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-339917号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開平2-74715号公報(以下、「引用例3」という。)に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例に記載の発明
引用例1は、建築物の基礎、地中梁等の地下構造物の構築工法に関するもので、
(ア)「地下構造物を構築しようとする地盤のその地下構造物よりも広い部分に地盤改良剤等を混合し硬化させて地盤改良部を形成した後掘削して、構築しようとする地下構造物と同形で地盤改良部の掘削面に囲繞された凹部を形成し、この凹部内にコンクリートを打設することを特徴とする地盤改良剤等を使用した地下構造物の構築工法。」(特許請求の範囲第1項)、
(イ)「以下には本発明の実施例について説明する。構築しようとする地下構造物は、第1図に示すように鉄筋コンクリート製の基礎1で、断面縦長矩形の直方体形をなしている。基礎1を構築するには、まず、構築しようとする地盤の基礎1の幅の2〜3倍及び高さの1.5〜2倍にわたる部分に、オーガーマシンで削孔し先端から特殊アスファルト乳剤,ベントナイト液,セメントミルク,地盤改良剤等を噴出して円柱状部分の土砂に混合させ、その円柱状部分が順次連続する状態に削孔混合して硬化させることにより、断面矩形で直方体状の地盤改良部2を形成する(第2図)。次に、地盤改良部2が十分に硬化した後、この地盤改良部2を、構築しようとする基礎1の形状に沿って掘削し、上面が開口した断面縦長矩形の溝状の凹部3を形成する(第3図)。上記凹部3の両側面及び底面はいずれも地盤改良部2の硬化した掘削面からなるので定形性を有し、コンクリート打設時に崩壊して土砂が混入するおそれがなく、従来の型枠と同様に使用できるものである。上記の如く、構築しようとする基礎1と同形に形成された凹部3内に所要の鉄筋4を配置した後コンクリート5を打設する(第3図)。かくして、基礎1が構築される。」(2頁左上欄16行ないし同頁右上欄19行)
と記載されている。
これら記載及び第1図ないし第3図の記載からみて、引用例1には、「建築物の基礎、地中梁等の地下構造物を構築するための工事において、構築しようとする地盤の地下構造物よりも広い部分に、オーガーマシンで削孔し先端から特殊アスファルト乳剤,ベントナイト液,セメントミルク,地盤改良剤等を噴出して円柱状部分の土砂に混合させ、その円柱状部分が順次連続する状態に削孔混合して硬化させることにより地盤改良部を形成した後、掘削して構築しようとする地下構造物と同形で地盤改良部の掘削面に囲繞された凹部を形成する工法。」の発明が記載されていると認められる。

引用例2には、
(ア)「以下図面を参照してこの発明の地下構造物の基礎構造の一実施例を説明する。図1は杭で支持される建物の基礎平面図であり、この図において符号1は地上の構造物を支持する杭を示す。これら杭1…は互いに前後左右に所定間隔をもって地中に打ち込まれたものであり、これら杭1…の外側には高剛性連続地中壁2が構築されている。この高剛性連続地中壁2は深層混合処理の改良体や鉄筋コンクリートを、杭1…の外側を包囲するように連結して無端状に形成した水平断面視略ロ字状の閉構造のものであり、この高剛性連続地中壁2と杭1…とにより地下構造物3が構成されている。」(段落番号【0006】)、
(イ)「次に、この発明の他の実施例を図3および図4を参照して説明する。この図は杭1…で支持される高層建物5およびその両脇に低層建物6,6がある場合の基礎を示す平面図と立面図である。この実施例では、低層建物6,6の外側に、深層混合処理の改良体や鉄筋コンクリートを低層建物6,6の幅方向に連結してなる高剛性連続地中壁7,7が構築されており、これら高剛性連続地中壁7,7と上記杭1…により、地下構造物8が構成されている。また、上記高剛性連続地中壁7は液状化層9を貫いて構築されており、上記低層建物6を支持する多数の杭1…の一部が該高剛性連続地中壁7を貫いて岩盤層10に打ち込まれている。」(段落番号【0010】)
と記載されている。

引用例3には、
(ア)「建物の地階外周部位置の地盤を、基礎底面下所要深度まで撹拌翼を有するロッドの回転により固化剤を注入しながら掘削,攪拌し、掘削土と固化剤を混合してここに外側ソイルセメント固結柱体を連続的に、地階外周部を周回して造成し、更にこの外側ソイルセメント固結柱体の内周側に並列し、建物地階の基礎底面位置の直下から所要深度までの地盤を同じく固化剤の注入と同時に掘削,攪拌し、内側ソイルセメント固結柱体を連続的に周回して造成し、地階下で並列する山留め壁を構築する自立山留め壁の構築方法。」(特許請求の範囲第1項)、
(イ)「次にこの外側柱体1の内周側、すなわち建物B側に並列し、基礎底面位置の直下から外側柱体1の根入れ部先端までの地盤を同様に固化剤の注入と同時に掘削,攪拌し、外側柱体1と同一の内側ソイルセメント固結柱体(以下内側柱体2)2を造成する・・・第2図は内側柱体2を基礎底面下に格子状に配置し、内側柱体2に建物Bの荷重を支持させた場合の施工例を示したものである」(2頁右上欄2行ないし同頁左下欄4行)
と記載されている。

4.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用例1に記載の発明とを比較すると、引用例1に記載の発明は、建築物の基礎、地中梁等の地下構造物を構築するための型枠の組立、解体作業にともなう課題の解決を目的とし、地盤改良部の掘削面に囲繞された凹部を地下構造物構築用の型枠として代用するものであり、地下水位が高い地盤、あるいは軟弱地盤などにおいて、建設予定の建造物の地下構造を施工するための地下掘削工事を、地下構造物の平面形状より広い領域の全面に深層混合処理工法を用いて遮水性の地盤改良を施工し、山留め架構のないドライワークとして掘削するオープンカット工法により行うという、本願発明1の技術思想を引用例1の発明は具備していない。
したがって、引用例1に記載の発明は、本願発明1の次に示す構成要件も備えていない。

建設予定の建造物の地下構造を施工するための地下掘削工事において、軟弱地盤の地表面から地下構造物が構築されるオープンカット領域の深度にその構造物を支えるのに必要な厚さを加えた深度まで、及び地下構造物の平面形状の外周に自立山留め壁として必要な壁厚を加えた領域の全面に地盤改良を施工すること

そして、本願発明1は上記構成を備えることにより、「山留め架構が一切必要でなく、大規模な法面掘削による根切り場はオープンスペースの大作業空間をつくれる。また、改良地盤3の遮水性が高いため、地下水位の高い地盤でも根切り場内に湧水もなく、乾燥したドライワークの掘削が行なえる。さらに、改良土の強度を調整できるので、地盤改良の根切りの形によって地盤形状を自在に地下構造物の構築に適する形に設計・施工できる。そして、前述した効果によって更に、工数の減少・工期短縮・施工費削減を可能にする。同時に、信頼性の高い液状化対策も実施できる。しかも、当該オープンカット工法において支持杭9を施工することにより、基礎地盤5の支持力が増強され、安全で信頼性の高い大重量構造物を構築できる。」(段落番号【0013】)という引用例1に記載の発明からは期待できない顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用例1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、引用例2及び3に記載の発明も上記要件を備えていない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1と比較すると引用形式では記載されていないが、本願発明1の地盤改良の施工工程の後に、「改良地盤中に少なくとも地下構造物の各下底位置から支持地盤に到達する支持杭を施工」するという工程を追加した発明であり、「(1)本願発明1について」で検討したように、本願発明1を引用例1ないし3に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない以上、さらに検討するまでもなく、本願発明2は、引用例1ないし3に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-10-23 
出願番号 特願平5-168838
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 鈴木 憲子
中田 誠
発明の名称 深層混合処理工法による軟弱地盤のオープンカット工法  
代理人 山名 正彦  
代理人 山名 正彦  

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