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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21K
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B21K
管理番号 1046653
異議申立番号 異議1999-73090  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-12 
確定日 2001-06-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2870373号「かさ歯車の製造方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2870373号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第2870373号は、平成5年9月8日に出願され、平成11年1月8日に設定登録され、平成11年8月12日に特許異議申立人渡辺正之より、平成11年9月16日に特許異議申立人武蔵精密工業株式会社より、それぞれ特許異議の申立てが本件特許請求項1に対してなされ、当審の平成12年1月21日付取消理由通知に対し、特許権者より平成12年4月17日付で特許異議意見書及び訂正請求書が、更に、当審の平成13年3月1日付取消理由通知に対し、平成13年4月16日付で特許異議意見書及び訂正請求書が提出された。
なお、上記平成12年4月17日付訂正請求書は、平成13年4月16日 に取り下げられた。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許明細書における特許請求の範囲の請求項1の次の記載
「【請求項1】両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定した成形型で歯車素材に対して鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位と歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行うことを特徴とするかさ歯車の製造方法。」
を、
「【請求項1】両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行うことを特徴とするかさ歯車の製造方法。」
と訂正する。そして、上記訂正個所は、次のア〜オのとおりである。
ア. 特許明細書の「歯車中心側にずらして」とあるのを、「歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして」と訂正する。
イ.特許明細書の「設定した成形型で」とあるのを、「設定した閉塞鍛造用の成形型で」と訂正する。
ウ. 特許明細書の「鍛造成形」(2か所)とあるのを、「閉塞鍛造成形」と訂正する。
エ. 特許明細書の「歯底部対応部位と歯車素材との間」とあるのを、「歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間」と訂正する。
オ. 特許明細書の「予備成形を行う」とあるのを、「予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行う」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落0014、0016、および0028において「歯車中心側にずらして」とあるのを、「歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落0016、0028において「ずれた位置に」とあるのを、「ずれた位置で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置に」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許明細書の段落0014、0016、および0028において「設定した成形型で」とあるのを、「設定した閉塞鍛造用の成形型で」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許明細書の段落0014(2箇所)、0016(3箇所)、および0028(3箇所)において「鍛造成形」とあるのを、「閉塞鍛造成形」と訂正する。
(6)訂正事項f
特許明細書の段落0014、0016において「歯底部対応部位と歯車素材との間」とあるのを、「歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間」と訂正する。
(7)訂正事項g
特許明細書の段落0019、0021において「歯底部対応部位12aと予備成形歯車素材15との間」とあるのを、「歯底部対応部位12aおよび上ポンチ11と予備成形歯車素材15との間」と訂正する。
(8)訂正事項h
特許明細書の段落0014、0016、および0028において「予備成形を行う」とあるのを、「予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行う」と訂正する。
(9)訂正事項i
特許明細書の段落0018において「下ポンチ14とからなる鍛造成形型で、」とあるのを、「下ポンチ14とからなる閉塞鍛造用の鍛造成形型で、」と訂正する。
(10)訂正事項j
特許明細書の段落0021(2箇所)において「成形素材」とあるのを、「予備成形歯車素材15」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a
ア. ポンチと歯形ダイスとの分割位置が「歯車中心側」であったのを「歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、この限定した事項は、特許明細書段落0007に記載されている。
イ. 「成形型」を「閉塞鍛造用の成形型」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、この限定した事項は、特許明細書段落0005および図面の図8の記載、ならびに鍛造成形型の構成を説明する段落0018および図1の記載より明らかである。
ウ. 「鍛造成形」を「閉塞鍛造成形」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、この限定した事項は、特許明細書段落0005および図面の図8の記載、ならびに鍛造成形型の構成を説明する段落0018および図面の図1の記載から明らかである。
エ. 成形型による閉塞鍛造成形の開始時に形成される所要量の空間が、「歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間」であることを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、この限定した事項は、特許明細書段落0019および図面の図1に記載されていたものである。
オ. 歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチとの間に所要量の空間が形成されるように予備成形した歯車素材を閉塞鍛造成形する際に、「空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行う」ことを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、この限定した事項は、特許明細書段落0021に記載されていたものである。
(2)訂正事項b〜i
訂正事項b〜iは、何れも特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るために訂正するものであり、、明りようでない記載の釈明を目的としている。
(3)訂正事項j
訂正事項jは、「成形素材」が「予備成形歯車素材15」であることは、特許明細書段落0018および0019の記載から明らかであり、誤記の訂正を目的としている。
上記の如く訂正事項a〜jは、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号ないし第3号の規定を満たしており、また、何れも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
3 独立特許要件の新規性進歩性についての判断
上記当審の平成12年1月21日付取消理由通知に引用された刊行物1乃至2について、独立特許要件の適否を検討する。
(1)引用刊行物
刊行物1 特開昭61-150733号公報
刊行物2 特公昭49-1390号公報
ア 刊行物1に記載された事項は、次の(ア)〜(ク)のとおりである。
(ア) 「本発明はかさ歯車を型鍛造により製造する方法に係り、特に歯形成形金型の歯型部寿命を向上させるかさ歯車の製造方法に関する。」(第1頁左下欄末行〜右下欄第2行)
(イ) 「第1図(A)、(B)、(C)は本発明の一実施例における工程図、第2図は面取り鍛造工程の要部の断面平面図。第3図は歯形成形鍛造工程の断面平面図、第4図は歯形成形鍛造時における歯型部が面取りブランクと接する状態を説明する要部の断面平面図である。」(第2頁左上欄第18行〜右上欄第3行)
(ウ) 「次にその切断ブランク1を第2図に示すようにスラグ成形金型10に装入し、パンチ14により加圧して樽状に鍛造し、それにより素材径の拡径と外径寸法の仕上げおよび面取り部4の成形を行う。このブランク成形金型10の型彫空間は、その底部に切断ブランク径と同等径以上の平坦底面11と、平坦底面11から上方外周に拡径したテーパ状内壁面12およびテーパ状内壁面12上方に続く所望径の円筒内壁面13から構成されている。またノックアウト15はその上端面が上記平坦底面11の中央部を構成している。」(第2頁右上欄第9〜19行)
(エ) 「次に、上記面取りが施されたブランク2に適当な潤滑被膜を形成し、その後該ブランク2を高周波加熱により650°〜900°Cの温度範囲に加熱し、第3図左側に示す如く、面取り部4が歯形成形金型20の歯型部21に対向するよう該ブランク2を下型8の孔内に装入して温間型鍛造を行う。この温間鍛造について詳細に説明すると、第3図左半部に示されるように、ノックアウト24とマンドレル25を孔内に配した下型23のその孔内に加熱されたブランク2を装入し、続いて第3図右半部に示されるように、歯型部21とマンドレル22を有する歯形成形金型20を下降せしめ、上下型間でブランクを鍛造することにより、かさ歯車7が形成される。」(第2頁左下欄第6〜19行)
(オ) 「この歯形8の鍛造成形において歯形成型金型20の歯型部21が初期に面取りブランク2と接する接触位置9は、第4図に示す如く、面取り部4と円筒部3との接点位置に発生したひけ5によリエッジ26の無い面である。」(第2頁右下欄第5〜9行)
(カ) 第1図(C)には、上下型間でブランクを鍛造することにより形成されたかさ歯車が示されており、該かさ歯車は、両端でピッチ円径が異なるかさ歯車
であると認められる。
(キ) 第3図には、マンドレル22と歯型部21との分割位置が歯型部のピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定されている歯形成形金型(上型)が示されている。また、上下型及びマンドレル22、25による閉塞鍛造成形の開始時には、面取りブランク2にマンドレル22の先端部が当接し、歯型部21の頂面側の歯底部対応部位とブランク2との間には所要量の空間が形成されるものと認められる。そして、該空間により歯型部21の頂面側の歯底部対応部位に対して歯車中心側及びその下部側から素材の肉を張らせて素材の閉塞鍛造を行うものと認められる。
上記(ア)〜(キ)の記載事項より刊行物1には、
両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、マンドレル22と歯型部21との分割位置を歯型部21のピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で素材に対して閉塞鍛造成形するに先立って、前記素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時にマンドレル22と素材が当接し、歯型部21の頂面側の歯底部対応部位と素材との間に所要量の空間が形成される素材の面取り成形を行い、該空間により歯型部21の頂面側の歯底部対応部位に対して歯車中心側及びその下部側から素材の肉を張らせて素材の閉塞鍛造を行うかさ歯車の製造方法。
の発明が実質上記載されているということができる。
イ 刊行物2には次の(ア)〜(キ)の事項が記載されている。
(ア) 「本発明はカサ歯車の形状を持つ型における金属ブランクの冷間変形によりカサ歯車を製造する方法に関する。」(第1欄第28〜30行)
(イ) 「冷間変形法により製造されたカサ歯車の寸法精度不足は、先細り形状の歯形に材料を圧入する時非常に大きな力が必要であり、それが或る限界荷重を超えると型の破断をもたらす、或いはこの限界荷重以下であっても型が著しく膨張してカサ歯車の精度が十分でなくなる、という事実に帰せられる。加えて、特に円錐直径の小さい部分で型が材料によって満たされないことが判明した。」(第2欄第18〜26行)
(ウ) 「本発明によれば、所要の寸法精度および型の完全充填は、少なくとも周面を球面状に彎曲させた、型軸線に対して回転対称のブランクを使用することによって獲得できる。即ち、このようなブランク形状によって、型はカサ歯車の小直径部分から充填される。従って変形力を比較的低くすることができるので、型の破壊や不要の膨張はもはや発生しない。勿論、型が適当な補強手段の中に挿入されていることが前提である。」(第2欄第30行〜第3欄第1行)
(エ) 「本発明の方法は、球形および樽形ブランクによって或いは球形および樽形に移行する截頭円錐形のブランクによっても実施することができる。しかし、多数の実験の示すところによると、樽形のブランクが特に有利である。即ち、変形出力が球形ブランクまたは球形に移行する截頭円錐形のブランクにおけるより小さく、従って型の充填状態もよい。加えて、樽形ブランクの方が球形ブランクより製造が簡単で、従って安い。更に本発明によれば、樽形ブランクの型側の面の直径を型の最小歯元円にほぼ等しく選ぶことによって、変形出力特に型底における変形出力を一層減少させることができる。」(第3欄第2〜14行)
(オ) 「特に変形工程の初期には、型底に、型と材料間の高い摩擦力が発生する。従ってそこでは型の他の範囲におけるよりも材料が早く硬化する。そのため、型底にある歯の隅が材料によって完全に充填されないということが起り得る。これはブランクの型側部分にブランク軸に同心の、例えば角錐状または截頭角錐状の凹部を設けることによって防止することができる。この凹部の寸法の選択はそれ自体臨界的なものではないが、余り小さすぎないことが必要である。ブランクの総高の約1/3の深さ、型の最小歯元円の直径にほぼ等しい基部直径のものが良好である。また、凹部の代りに或いはこれと併せて、ブランクの周面の彎曲を、型への挿入時にブランクと型底の間に材料の詰らない空間が存在するように形成することも可能である。これは特に製造するカサ歯車の歯の深さが普通の限度内にある場合に行なわれる。歯の深さが非常に大きい場合は、二つの特徴、即ちブランクと型底の間の空間並びにブランクの凹部の両方を併用する。」(第3欄第15〜34行)
(カ) 「次に図面に従って本発明を詳述する。第1図は球形ブランク1をカサ歯車2に冷間変形する場合を示している。3はパンチ、4はカサ歯車形状を持つ型、5はエジェクタである。第2図は樽形ブランク6をカサ歯車2に冷間変形する場合を示している。パンチ、型、エジェクタはそれそれ3,4 ,5で示されている。ブランク6の周面の彎曲は、ブランクを型4に挿入した時ブランク6と型底7の間に材料の詰まらない空間8が残るように選定されている。第3図も同じく樽形ブランク6をカサ歯車2に冷間変形する図であり、この場合は、ブランク6の型側の部分9に角錐状の凹部10が設けられている。更に、ブランク6の周面の彎曲は、ブランクを型4に挿入した時ブランク6と型底7の間に材料の詰らない空間8が残るように選定されている。3,5はそれぞれパンチおよびエジエクタである。」(第4欄第10〜27行)
(キ) 第1ないし3図には、エジェクタと型との分割位置を型のピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定した成形型で材料に対して密閉鍛造成形する構成が示されている。
上記(ア)〜(キ)の記載事項より刊行物2には、
両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、エジェクタ5と型4との分割位置を型4のピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定した密閉鍛造用の成形型で材料に対して密閉鍛造成形するに先だって、前記材料に対して、成形型による密閉鍛造成形の開始時に型4の頂面側の歯底部対応部位と材料との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により型4の頂面側の歯底部対応部位に対してその下部側から材料の肉を張らせて、かさ歯車の小直径部分から充填して材料の密閉鍛造成形を行うかさ歯車の製造方法。
の発明が、実質上記載されているということができる。
(2)対比・判断
本件請求項1に係る発明(前者)と刊行物1に記載された発明(後者)とを比較すると、後者のマンドレル22、歯型部21、素材、面取り成形が、それぞれ前者のポンチ、歯形ダイス、歯車素材、予備成形に相当している。そして、前者と後者とは、
「両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位と歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行うかさ歯車の製造方法。」
で一致し、次の3点で相違している。
ア. 前者のポンチと歯形ダイスとの分割位置を、鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定する事項が、後者にない点。(相違点1)
イ. 閉塞鍛造成形の開始時に、前者は、ポンチと歯車素材との間に所用の空間が形成されるのに対し、後者はポンチと歯車素材が接する点。(相違点2)
ウ. 前者は、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行うのに対し、後者は、前記空間により歯型部21の頂面側の歯底部対応部位に対して歯車中心側及びその下部側から素材の肉を張らせて素材の閉塞鍛造を行う点で相違している。(相違点3)
相違点1について検討すると、この相違点1における前者の構成、即ちポンチと歯形ダイスとの分割位置を、鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定する事項は、刊行物2にも記載されておらず、またこれを示唆する記載も認められない。そして、前者はこの構成により、歯車の中心孔を形成する場合に、この歯車の中心孔の形成と同時にバリの除去を行うことが可能になるという効果を奏するものである。
相違点2については、前者のポンチと歯車素材との間に所用の空間が形成されることは、 刊行物2にも記載されているが、前者は閉塞鍛造成形の開始時であるのに対して、刊行物2は密閉鍛造成形の開始時であって成形方法が異なっている。
相違点3については、前者は、閉塞鍛造成形において前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせるのに対して、刊行物2のものは前記空間によりかさ歯車の小直径部分から加工するものであり、この密閉鍛造成形時において、歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングは、比較的早いものと認められる。このタイミングの相違は、前者の閉塞鍛造成形と刊行物2の密閉鍛造成形の成形方法の相違によるものと考えられ、即ち、鍛造成形時における、本件特許の図1に示される前者の上下型への歯車素材の充填の進行形態と、刊行物2の第2図に示された型4への歯車素材の充填の進行形態が異なることに起因するものであると言える。そして、前者は、かさ歯車の成形において歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位において早期に型割れが生じるのを防止することが可能となるという訂正明細書記載の格別な効果を奏するものである。
上記のように、本件訂正後の請求項1に係る発明を、上記刊行物1乃至2に記載された発明であるとも、また上記刊行物1乃至2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
したがって、本件訂正後の請求項1、2に係る発明は、独立して特許を受けることができない発明とはいえない。
4 独立特許要件の記載不備についての判断
平成13年3月1日付取消理由通知において、明細書の記載不備を指摘したが、該記載不備は、前記訂正事項a、オの訂正により解消した。
5 まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項ただし書第1号乃至第3号の規定、及び同第120条の4第3項の規定により、平成6年法律第116号附則第6条の規定により準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについての判断
1 本件特許発明
上記のように本件については、特許権者の平成13年4月16日付訂正請求による訂正が認められており、本件特許発明は、上記第2の1(1)の訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。
2 特許異議申立ての概要
上記特許異議申立ての理由の概要は次の通りである。
特許異議申立人渡辺正之は、甲第1号証として特公昭49一1390号公報(前記刊行物2)を、甲第2号証として米国特許第3,731,516号明細書(刊行物3)を、それぞれ提出して、本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証に記載されているか、もしくは、甲第2号証を考慮すれば、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると主張している。また、本件特許出願の明細書の特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第5項の規定に違反していると主張している。
特許異議申立人武蔵精密工業株式会社は、甲第1号証として特開昭61-150733号公報(前記刊行物1)を提出して、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであると主張している。
3 特許異議申立ての具体的理由に対する当合議体の判断
(1)新規性進歩性
上記第2の3で検討した如く、本件訂正後の請求項1に係る発明を、上記刊行物1乃至2に記載された発明であるとも、また上記刊行物1乃至2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできないものである。そこで、つぎに刊行物3について検討する。
刊行物3には、実質的に次のア、イの記載事項がある。
ア. 「参照番号3は、ベベルギア(5)にプレス加工されるブランクを示している。このために、パンチ装置が設けられ、このパンチ装置は、外部パンチまたはパンチスリーブ8にスライド可能に受け入れられる内部パンチ4を有している。先ず、外部パンチ8が環状面23,24上に配置され、べベルギアの歯が形成される型凹部の上部から閉じられる。エジエクタ-またはカウンターパンチ6はその装置の底部に示されている。
プレス動作は、ブランク3を型のキャビティに挿入することで開始される。スリーブ8は下降されブランク3の上部を受け入れる。こうして、型のキャビテイは閉鎖される。」(第3欄第13行目〜第25行目の記載の内容)
イ. 第1図を参照すると、ポンチ(エジェクタまたはカウンターパンチ6)とダイス(ダイ2)との分割位置は、ダイスのピッチ円形が小さい頂面側の歯部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定されており、ブランク3をベベルギア5に密閉鍛造成形することが認められる。
しかし、刊行物3に記載の鍛造方法も、刊行物2と同様な密閉鍛造であつて、刊行物3には、上記第2の3(2)における相違点1及び3の前者の構成、即ち相違点1及び3に関する本件請求項1に係る発明の、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を「鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定」する構成、及び歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間の所要量の空間が「空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせ」る構成は記載されておらず、刊行物1及び2と同様に、本件訂正後の請求項1に係る発明を、上記刊行物3に記載された発明であるとも、また上記刊行物3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明を、上記刊行物1〜3に記載された発明であるとも、また上記刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
(2)記載不備について
特許異議申立人渡辺正之は、本件請求項1は、本件特許明細書の段落0028の発明の効果の欄における「歯車の中心孔を形成する場合に、この歯車の中心孔の形成と同時にバリの除去を行うことが可能になる」という効果を奏するための構成が不明であり、特許法第36条第5項の規定に違反していると主張している。
ところが、特許権者は、この点に関し上記第2の1の(1)のように「ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した」と訂正している。そして、この構成により、上記効果を奏するものと認められるので、上記特許異議申立人の主張する記載不備は解消した。
第4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
かさ歯車の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行うことを特徴とするかさ歯車の製造方法。
【請求項2】 両端でピッチ円径が異なりかつピッチ円径の大きい側の端面に背球面を有すると共に背球面側の歯底部分にウエブを形成したかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ウエブ成形部を有する成形型を用い、背球面外径とウエブ外径とを等しく成形する成形型で歯車素材の鍛造成形を行うことを特徴とするかさ歯車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を製造するのに利用されるかさ歯車の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸の間で回転伝達をおこなう歯車としては、種々のものがあるが、とくに、円錐面をピッチ面として、両端でピッチ円径が異なるかさ歯車には、すぐばかさ歯車,はすばかさ歯車,やまばかさ歯車,まがりばかさ歯車など各種のものがあり、ベベルギヤ,ディファレンシャルギヤ,ピニオンメイト,サイドギヤなどとしても用いられる。
【0003】
このようなかさ歯車は、歯形の大きさがピッチ円径の小さい側と大きい側とで異なることから、歯の製作にはかなりの困難を伴うが、従前の切削による製造工程から、生産性の良い鍛造による製造工程へと変化してきており、なかでも、精密鍛造技術に属する密閉鍛造や閉塞鍛造によって製造されることが多くなっている。
【0004】
この閉塞鍛造では、上ポンチおよび下ポンチをそなえた複動型を使用し、あらかじめ閉じられた成形型のキャビティの中に上下のポンチで充満させる方法としており、さらには、コンピュータ制御の油圧閉塞鍛造機やメカニカルプレスと油圧機構を組み合わせた専用機が開発され、その後、ダイセットに油圧閉塞機構を組み込むことにより既存の単動プレスでも閉塞鍛造が行えるようになった。
【0005】
図8は、閉塞鍛造によって両端でピッチ円径の異なるかさ歯車を製造する従来の工程を示すものであって、かさ歯車31のピッチ円径が小さい頂面側を上ポンチ32で加圧すると共に、歯形部31aを歯形ダイス33で成形し、歯形ダイス33は、かさ歯車31の頂面側の歯底部対応部位31bで型を分割したものとしていた。
【0006】
しかしながら、このような閉塞鍛造法では、図9に示すように、型の分割部分にバリ34が形成されることから、かさ歯車31の頂面側を黒皮仕様にすることができないという問題点があった。
【0007】
そこで、図10に示すように、上ポンチ41と、歯形ダイス(上型)42と、下型43と、下ポンチ44とで、歯車素材45を閉塞鍛造により加工するに際して、歯形ダイス(上型)42の分割位置45bとして、歯形ダイス(上型)42のピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位42aよりも歯車中心側にずれた位置で、かつ図11に示すように、歯形部46aを形成する鍛造加工後にかさ歯車粗成形体46に中心孔46bを形成する位置を選び、かさ歯車粗成形体46に形成されたバリ47は中心孔46bの形成時に除去されるようにすることもあった。
【0008】
一方、かさ歯車の1種であるピニオンメイトを鍛造加工により成形するに際し、とくに、図12に示すように、両端でピッチ円径が異なる歯形部51aおよびピッチ円径の大きい側の端面に形成した背球面51cのほか、歯車強度を向上させるために、歯底部分にウエブ51bを形成させたピニオンメイト51を鍛造加工により成形する場合には、図示しないディファレンシャルケースとの間での干渉を防ぐ意味から、背球面51cはウエブ51bの最大径よりも内側に設けるようにしており、歯形バック面51dは黒皮仕様としていた。
【0009】
また、このようなウエブ付ピニオンメイト51では、温間鍛造もしくは冷間鍛造によって成形される場合、背球面51c側は総削りのものとしていた。
【0010】
なお、このような鍛造加工によるかさ歯車等の成形に関しては、例えば、「自動車技術ハンドブック<第4分冊>生産・品質・整備編」1991年9月1日 第1版発行 社団法人 自動車技術会 第71頁〜第80頁『2.2 鍛造』にも説明がなされている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10および図11に示したように、歯形ダイス(上型)42の分割位置45bとして、かさ歯車粗成形体46に中心孔46bを形成する位置を選び、かさ歯車粗成形体46に形成されたバリ47は中心孔46bの形成時に除去されるようにした場合には、歯型ダイス(上型)42のうち、頂面側の歯底部対応部位42aに型割れを生じやすいという問題点があり、このような型割れを早期に生じないようにすることが課題としてあった。
【0012】
また、図12に示したように、歯車強度を向上させるために、背球面51c側の歯底部分にウエブ51bを形成したピニオンメイト51を冷間での鍛造加工によって成形し、加工工程および取り代を削減するために歯形バック面51dを黒皮仕様として背球面51cのみを総削り加工とした場合に、ウエブ51bがデッドメタル化し、図13および図14に示すように、歯形部51aの歯底部分に割れ52を生じることがあるという問題点があり、このようなワークの歯底部に割れを生じないようにすることが課題であった。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、上述した従来の課題にかんがみてなされたものであって、ベベルギヤ,ディファレンシャルギヤ,ピニオンメイト,サイドギヤなどのかさ歯車を鍛造加工によって成形する場合において、歯形ダイスの分割位置をかさ歯車の中心孔が形成される位置として、歯形ダイスの分割位置で形成されたバリをかさ歯車の中心孔の成形時に除去されるような成形型の分割構造としたときでも、歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に型割れを早期に生ずるのを防止することが可能であると共に、歯車強度を向上させるために背球面側の歯底部分にウエブを形成して歯形バック面を黒皮仕様にしかつ背球面のみを総削り加工としたときでも、ワークの歯形部の歯底部分に割れが生ずるのを防止することが可能であるかさ歯車の製造方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係わるかさ歯車の製造方法は、両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行う構成としたことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項2に係わるかさ歯車の製造方法は、両端でピッチ円径が異なりかつピッチ円径が大きい側の端面に背球面を有すると共に背球面側の歯底部分にウエブを形成したかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ウエブ成形部を有する成形型を用い、背球面外径とウエブ外径とを等しく成形する成形型で歯車素材の鍛造成形を行う構成としたことを特徴としている。
【0016】
【発明の作用】
本発明の請求項1に係わるかさ歯車の製造方法では、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形を行うに際し、この閉塞鍛造成形を行う前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂部側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行うようにしているので、成形型の分割位置で形成されるバリはかさ歯車の頂面側の歯底部よりも歯車中心側にずれた位置で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心孔に対応する位置に形成されることとなって、歯車の中心孔を形成する場合に、この歯車の中心孔の形成と同時にバリの除去を行えるようになると共に、かさ歯車の成形時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位において早期に型割れを生じるのが防止されることとなる。
【0017】
また、本発明の請求項2に係わるかさ歯車の製造方法では、歯車強度向上のために背球面側の歯底部分にウエブを形成したかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ウエブ成形部を有する成形型を用い、背球面外径とウエブ外径とを等しく成形する成形型で歯車素材の鍛造成形を行うようにしているので、加工工程および取り代削減のために歯形バック面を黒皮仕様にしかつ背球面のみを削り加工することとした場合であっても、ワークであるかさ歯車の歯形部の歯底部分に割れを生じるのが防止されることとなる。
【0018】
【実施例】
図1および図2は、本発明に係わるかさ歯車の製造方法の実施例を示すものであって、図1に示すように、上ポンチ11と、歯形ダイス(上型)12と、下型13と、下ポンチ14とからなる閉塞鍛造用の鍛造成形型で、歯車素材15を鍛造加工によりかさ歯車形状に鍛造成形するに際し、この鍛造成形を行う前に、図2に示すように、上型16と、下型17と、下ポンチ18とからなる予備成形型によって、歯車素材に対して予備成形を行うことにより、予備成形歯車素材15に成形する。
【0019】
次いで、この予備成形歯車素材15を図1に示した鍛造成形型に装入するが、このように上ポンチ11と、歯形ダイス(上型)12と、下型13と、下ポンチ14とで予備成形歯車素材15に対して鍛造成形を開始するときに、歯形ダイス(上型)12のピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位12aおよび上ポンチ11と予備成形歯車素材15との間に十分な空間Sが形成されるようにしている。
【0020】
そして、このような十分な空間Sが形成された状態で、上ポンチ11と歯形ダイス(上型)12と、下型13と、下ポンチ14とで、予備成形歯車素材15に対して鍛造加工を行うことにより、かさ歯車を成形する。
【0021】
このように、歯形ダイス(上型)12の頂面側の歯底部対応部位12aおよび上ポンチ11と予備成形歯車素材15との間に所定量の十分な空間Sを形成しておくことによって、従来型割れが生じやすかった歯底部対応部位12aに予備成形歯車素材15の肉が張るタイミングが遅くなり、かつまた、この歯底部対応部位12aでは内径側からではなく下部側から予備成形歯車素材15の肉が張るようになるため、この歯底部対応部位12aでの早期型割れを生じがたいものとすることができる。
【0022】
図3ないし図7は、本発明に係わるかさ歯車の製造方法の他の実施例を示すものである。
【0023】
この実施例におけるかさ歯車の製造方法では、背球面21c側の歯底部分に歯車強度向上のためのウエブを有するピニオンメイトを鍛造成形により製造するに際し、図3に示すように、歯形部21aを有するピニオンメイト鍛造加工用歯車素材21の背球面21cの外径とウエブ21bの外径とが等しくなるようにする。
【0024】
そして、背球面21側の仕上加工に際しては、図4に示すように、従来の背球面21cにおける球面加工の延長とすることが可能であり、また、ディファレンシャルケースとの間で干渉がある場合には、図5に示すように、背球面21cにおける球面加工は従来通りとし、その外側は逃がした加工とすることが可能である。
【0025】
図6は本発明で用いる鍛造成形型を示すものであって、上型23と、下型24と、下ポンチ25とからなり、鍛造素材27の背球面外径とウエブ外径とを等しく成形するものとなっている。
【0026】
また、図6は片押し閉塞鍛造の成形型を示しているが、図7に示すように、上ポンチ26をそなえた両押し閉塞鍛造の成形型を用いることもでき、この場合にも、鍛造素材27の背球面外径とウエブ外径とを等しく成形するものとなっている。
【0027】
したがって、鍛造素材21のウエブ21bのボリュームが増大し、図14に示したようにワークの歯底部分で割れ52を生じないウエブ付ピニオンメイト素材が冷間鍛造成形によって得ることが可能であり、歯形バック面は黒皮仕様のままとすることが可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるかさ歯車の製造方法では、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形を行うに際し、この閉塞鍛造成形を行う前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行うようにしているので、成形型の分割位置で形成されるバリはかさ歯車の頂面側の歯底部よりも歯車中心側にずれた位置で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心孔に対応する位置に形成されることとなって、歯車の中心孔を形成する場合に、この歯車の中心孔の形成と同時にバリの除去を行うことが可能になると共に、かさ歯車の成形において歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位において早期に型割れが生じるのを防止することが可能となる。
【0029】
また、本発明の請求項2に係わるかさ歯車の製造方法では、歯車強度向上のために背球面側の歯底部分にウエブを形成したかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ウエブ成形部を有する成形型を用い、背球面外径とウエブ外径とを等しく成形する成形型で歯車素材の鍛造成形を行うようにしているので、加工工程および取り代削減のために歯形バック面を黒皮仕様にしかつ背球面のみを削り加工することとした場合であっても、ワークであるかさ歯車の歯形部の歯底部分に割れが生じるのを防止することが可能になるという著しく優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例において予備成形歯車素材に鍛造加工を行う鍛造成形型の断面説明図である。
【図2】
本発明の実施例において歯車素材に予備成形を行う予備成形型の断面説明図である。
【図3】
本発明の他の実施例において歯車素材の背球面の外径とウエブの外径とを等しく成形加工する場合を示す説明図である。
【図4】
背球面側の仕上加工の一例を示す説明図である。
【図5】
背球面側の仕上加工の他の例を示す説明図である。
【図6】
本発明の他の実施例において用いた鍛造成形型の説明図である。
【図7】
本発明の他の実施例において用いることができる鍛造成形型の説明図である。
【図8】
閉塞鍛造によってかさ歯車を製造する従来の鍛造成形型を示す断面説明図である。
【図9】
図8の鍛造成形型で成形したかさ歯車粗成形体においてバリが形成された状態を示す断面説明図である。
【図10】
歯形ダイスの分割位置を歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらした鍛造成形型で鍛造成形する場合を示す断面説明図である。
【図11】
図10の鍛造成形型で成形したかさ歯車粗成形体においてバリが形成された状態を示す断面説明図である。
【図12】
歯底部分にウエブを形成したピニオンメイトの断面説明図である。
【図13】
図12に示したピニオンメイトの加工時に割れが発生しやすい部位を示す断面説明図である。
【図14】
図13の矢視A方向における底面説明図である。
【符号の説明】
11 上ポンチ(鍛造成形型)
12 歯形ダイス(鍛造成形型)
12a 歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位
13 下型(鍛造成形型)
14 下ポンチ(鍛造成形型)
15 予備成形歯車素材
16 上型(予備成形型)
17 下型(予備成形型)
18 下ポンチ(予備成形型)
S 歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位と歯車素材との間の空間
21 歯車素材
21a 歯形部
21b ウエブ
21c 背球面
23 上型(鍛造成形型)
24 下型(鍛造成形型)
25 下ポンチ(鍛造成形型)
26 上ポンチ(鍛造成形型)
 
訂正の要旨 1 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許明細書における特許請求の範囲の請求項1の次の記載
「【請求項1】両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側にずらして設定した成形型で歯車素材に対して鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位と歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行うことを特徴とするかさ歯車の製造方法。」
を、
「【請求項1】両端でピッチ円径が異なるかさ歯車を鍛造加工により製造するに際し、ポンチと歯形ダイスとの分割位置を歯形ダイスのピッチ円径が小さい頂面側の歯底部対応部位よりも歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして設定した閉塞鍛造用の成形型で歯車素材に対して閉塞鍛造成形する前に、前記歯車素材に対して、成形型による閉塞鍛造成形の開始時に歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間に所要量の空間が形成される予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行うことを特徴とするかさ歯車の製造方法。」
と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落0014、0016、および0028において「歯車中心側にずらして」とあるのを、「歯車中心側で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置にずらして」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落0016、0028において「ずれた位置に」とあるのを、「ずれた位置で且つ鍛造加工後に形成する歯車の中心穴に対応する位置に」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許明細書の段落0014、0016、および0028において「設定した成形型で」とあるのを、「設定した閉塞鍛造用の成形型で」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許明細書の段落0014(2箇所)、0016(3箇所)、および0028(3箇所)において「鍛造成形」とあるのを、「閉塞鍛造成形」と訂正する。
(6)訂正事項f
特許明細書の段落0014、0016において「歯底部対応部位と歯車素材との間」とあるのを、「歯底部対応部位およびポンチと歯車素材との間」と訂正する。
(7)訂正事項g
特許明細書の段落0019、0021において「歯底部対応部位12aと予備成形歯車素材15との間」とあるのを、「歯底部対応部位12aおよび上ポンチ11と予備成形歯車素材15との間」と訂正する。
(8)訂正事項h
特許明細書の段落0014、0016、および0028において「予備成形を行う」とあるのを、「予備成形を行い、前記空間により歯形ダイスの頂面側の歯底部対応部位に対して歯車素材の肉が張るタイミングを遅らせかつ歯底部対応部位に対してその下部側から歯車素材の肉を張らせて歯車素材の閉塞鍛造成形を行う」と訂正する。
(9)訂正事項i
特許明細書の段落0018において「下ポンチ14とからなる鍛造成形型で、」とあるのを、「下ポンチ14とからなる閉塞鍛造用の鍛造成形型で、」と訂正する。
(10)訂正事項j
特許明細書の段落0021(2箇所)において「成形素材」とあるのを、「予備成形歯車素材15」と訂正する。
異議決定日 2001-05-25 
出願番号 特願平5-223433
審決分類 P 1 651・ 534- YA (B21K)
P 1 651・ 121- YA (B21K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川端 修  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 播 博
三原 彰英
登録日 1999-01-08 
登録番号 特許第2870373号(P2870373)
権利者 日産自動車株式会社
発明の名称 かさ歯車の製造方法  
代理人 的場 基憲  
代理人 的場 基憲  

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