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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1046734 |
異議申立番号 | 異議1999-73589 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1990-12-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-09-22 |
確定日 | 2001-06-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2874187号「液晶ディスプレイ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2874187号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続の経緯 特許2874187号の請求項1に係る発明は、平成1年5月24日に出願され、平成11年1月14日に特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人セイコーエプソン株式会社により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間である平成12年6月16日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由通知がなされたものである。 [2]訂正の適否についての判断 1.特許権者が求める訂正 訂正事項a 特許請求の範囲を特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的として以下のように訂正することを求めるものものである。 【請求項1】 垂直方向に平行に配設された複数の第1の信号線と、水平方向に平行に配設された複数の第2の信号線とが設けられ、これらの第1、第2の信号線の各交点にそれぞれ選択素子を介して液晶セルが設けられてなる液晶ディスプレイ装置において、 上記第1の信号線に対応するシフトレジスタが設けられ、 入力信号からクロック信号が分離されて上記シフトレジスタに供給され、 上記シフトレジスタの出力信号にて上記入力信号がサンプリングされて上記第1の信号線に供給されると共に、 上記シフトレジスタを駆動する上記クロック信号の位相を調整する手段と、 最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる上記入力信号による表示画像が最良なるように上記クロック信号の位相を制御することができるようにした手段とを設けたことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。 訂正事項b、c、d、h 誤記の訂正を目的として、特許公報2頁4欄12行の「シューティング」を「ジェーディング」に、3頁5欄9行の「セルがC11」を「セルC11」に、3頁5欄9行「設けられ」を「が設けられ」に、3頁5欄40行の「からを」を「からの」に、訂正することを求めるものである。 訂正事項e、f、g、i 明瞭でない記載の釈明を目的として、特許公報3頁5欄19行の「が設けられ、」を「と、最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる」に、3頁5欄20行の「調整」を「制御」に、3頁5欄21行の「したこと」を「した手段とを設けたこと」に、3頁6欄11行の「解像度の」を「解像度または解像度検出のための」に、訂正することを求めるものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項aは、特許請求の範囲を特許明細書に記載された事項の範囲内において限定しかつ明瞭化したものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 訂正事項bないしiは、誤記の訂正又は不明瞭な記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3.独立特許要件 (1)引用刊行物 当審が平成12年7月24日付けで通知した訂正拒絶理由通知で引用した刊行物1(実願昭61-129717号(実開昭63-35099号)のマイクロフィルム、取消理由通知に引用した刊行物1、審査段階で引用された引用文献1)には以下の事項が記載されている。 「[従来の技術] 従来の液晶ディスプレイ装置は、第2図に示されるように、アクティブマトリクス液晶10を駆動するためのサンプルホールドアレイ12に入力されるクロック信号13は、TV映像信号14を入力するときも、またビデオRAM20からコンピュータ映像信号16を入力するときも、切替えスイッチ17を介して同一のPLL(フェーズロックドループ)回路18から供給されており、コンピュータ映像を発生させる場合のビデオRAM20又はシフトレジスタ22の映像データ送出用クロックタイミングと、PLL18からのクロック出力タイミングとは完全に一致していなかった。 このようにすることにより、従来は回路の簡易化を行っていた。 [考案が解決しようとする問題点] 従来の問題点 しかしながら、前述したマトリクスタイプの液晶ディスプレイ装置、特にTFT(薄膜トランジスタ)を用いたアクティブマトリクスタイプのディスプレイ装置において、アクティブマトリクス液晶10のX軸方向すなわち水平方向の液晶データのサンプリングが、コンピュータ映像の同期信号からのトリガスタートによる固定周波数クロック、あるいはPLL回路18からのクロックによっていたため、コンピュータ映像等の精密な表示を行おうとした場合、液晶ディスプレイのドットとコンピュータ映像のドットとが完全に一致せず、意図した正確な映像を発生させることができなかった。」(2頁3行ないし3頁15行) 同訂正拒絶理由で引用した刊行物2(特開昭57-41078号公報、取消理由通知書に引用した刊行物2、異議申立人が提出した甲第1号証)には以下の事項が記載されている。 「第1図はX方向にn列、Y方向にm行の画素をもつ液晶パネル-101を駆動するテレビジョンを示している。液晶パネルはmn個のスイッチングトランジスタ-102、蓄積用のコンデンサ-103、液晶電極-104が図のように接続され行ドライバ-105、列ドライバ-106に接続されている。各列は図のようにD1、D2、・・Dn、各行はGI、G2、・・Gmと名を付し以後列G1のように呼ぶことにする。」(第1頁右下欄第11行目ないし第18行目) 「列ドライバ106はn段のシフトレジスタ-107、n個のサンプルアンドホールド回路-108、及びn個の増幅器-109により構成されている。」(第1頁右下欄第19行目ないし第2頁左上欄第2行目) 「サンプルアンドホールド回路-108の各段は対応する各段のシフトレジス夕の出力により制御され該出力パルスの立下がりにより映像信号の電圧値をサンプルし次のサンプル時まで(1Hの間)ホールドする。」(第2頁左下欄13行目ないし第17行目) 「第5図は本発明によるマトリクステレビジョン同期回路のブロック図である。501は同期分離回路でテレビジョンのビデオ信号から複合同期信号を分離する。該出力は周波数分離回路により水平同期信号、垂直同期信号に分離される。502は水平同期信号をとり出す分離回路で・・・」(第3頁左下欄第15行目ないし第20行目) 「504は位相比較器でVCO-506で発生するパルス列を分周回路507により(T4十T5)/τで分周したパルスの前縁と、水平同期信号分離回路-502により得られる水平同期信号の前縁とを位相比較する。505は出力に含まれる高周波成分を除去し該出力はVCO-506の制御端子に印加される。VCO-506は周期τで発振し、この出力はシフトクロック信号として使われると同時に分周して得られる水平同期信号の原振となる。」(第3頁右下欄第19行目ないし第4頁左上欄第9行目) 「509はシフトクロック信号としてドライバ群をドライブできるようにレベル、位相等を調整するシフトクロック信号の出力回路である。」(第4頁左上欄第10行目ないし第13行目) 同訂正拒絶理由で引用した刊行物3(実願昭56-25900号(実開昭57-141469号)のマイクロフィルム)には以下の事項が記載されている。 「この考案は、テストパターン発生器を使いその映像を被試験CRT表示装置に入力し、CRTの画面を観測者が視認し、テストパターンの例えばくさびの切れ込み具合を判断してCRT表示装置の解像度を測定する装置に関するものである。」(1頁16行ないし2頁1行) (2)対比 訂正請求書の請求項1に係る発明(以下、「訂正請求発明」という。)と刊行物2に記載された発明(以下、「刊行物2発明」という。)とを比較すると、 両者は、 「垂直方向に平行に配設された複数の第1の信号線と、水平方向に平行に配設された複数の第2の信号線とが設けられ、これらの第1、第2の信号線の各交点にそれぞれ選択素子を介して液晶セルが設けられてなる液晶ディスプレイ装置において、 上記第1の信号線に対応するシフトレジスタが設けられ、 入力信号からクロック信号が分離されて上記シフトレジスタに供給され、 上記シフトレジスタの出力信号にて上記入力信号がサンプリングされて上記第1の信号線に供給されると共に、 上記シフトレジスタを駆動する上記クロック信号の位相を調整する手段と、 を設けた液晶ディスプレイ装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点 訂正請求発明においては、 「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる上記入力信号による表示画像が最良なるように上記クロック信号の位相を制御することができるようにした手段」 を設けているのに対して、 刊行物2においては、 「シフトクロック信号としてドライバ群をドライブできるようにレベル、位相等を調整するシフトクロック信号の出力回路509」 を設けている点。 (3)判断 上記訂正拒絶理由通知の指定期間内である平成12年9月25日に特許権者は特許異議意見書(訂正拒絶)を提出し、以下のように主張している。 『・・・異議申立人が指摘する刊行物2のシフトクロック信号の出力回路509は、刊行物2中の「ドライバ群をドライブできるように」という記載からも明らかなように「ドライバ群(第1図のシフトレジスタ107)をドライブできるように」しているものであり、出力回路511から出力されるシフトデータ信号との間で、シフトレジスタ107を確実に動作させるためにレベルや位相を調整することを目的としているものです。これは、例えばシフトレジスタ107の動作が不安定になるなどの恐れのあるものを回避するための処理であります。 (3)これに対して本願の訂正発明では「ドライバ群をドライブできるように」することは発明の対象外であります。即ち本願の訂正発明のシフトレジスタ2は、スタート信号(刊行物2のシフトデータ信号に相当する)とクロック信号の供給によって確実に動作することを前提としているものです。このことは本願の訂正発明の各図面において、そのスタート信号の入力部分に刊行物2の出力回路511に相当する回路等が設けられていないことからも明らかなものであります。』(3頁下から2行目ないし4頁14行) そこで、平成13年1月22日付けで異議申立人に対して、特許異議意見書及び特許異議意見書(訂正拒絶)の副本並びに取消理由通知書及び訂正拒絶理由通知書のコピーを送付し、審尋を行った。その指定期間内である平成13年4月2日に異議申立人は回答書を提出し、以下のように主張している。 『・・・本願発明は、「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御する」ものではなく、「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御することができるようにした手段を有する」ものである。 つまり、結果的に「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御することができる」回路が刊行物に記載さえされていれば、刊行物に記載されているその回路の目的にかかわらず、その刊行物は証拠となりえるものである。 そして、刊行物2は、シフトクロック信号の位相を制御することができるので、当然、「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御することができる」回路となっている。 ・・・ よって、本願発明は、刊行物1や3を用いるまでもなく、刊行物2に基づいて容易に想到できるものである。 しかも、刊行物1には、その10頁第9行目〜14行目に、「コンピュータ映像のドットタイミングとアクティブマトリクス液晶のサンプリングドットタイミングとが完全に一致するため、ドット粗さによる表示の不正確や不鮮明さのない精密な映像の表示が可能となる。」と記載されている。 これは、「サンプリングクロックの位相を、映像信号と合うように調整すれば、映像表示が最良となる」ことを示しているに他ならない。 従って、万が一、刊行物2のみに基づいて本願発明が容易に想到できなかったとしても、サンプリングクロックの位相を調整できる構成が記載されている刊行物2と、サンプリングクロックの位相を映像信号と合うように調整すれば、画像表示が最良となることが記載されている刊行物1とに基づいて、本願発明は容易に想到できたものである。』(3頁5行ないし4頁7行) 上記のように異議申立人は、特許権者が行った刊行物2の技術内容に関する具体的な主張に反論せず、『刊行物2は、シフトクロック信号の位相を制御することができるので、当然、「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御することができる」回路となっている。』と主張しているだけであり、異議申立人は刊行物2の「シフトクロック信号としてドライバ群をドライブできるようにレベル、位相等を調整するシフトクロック信号の出力回路509」が実際に「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御することができる」回路であることを証明していない。そして、刊行物2の出力回路509がこのような回路であることが刊行物2の記載から、「当然」、明らかであるということはできない。 したがって、刊行物2の「シフトクロック信号としてドライバ群をドライブできるようにレベル、位相等を調整するシフトクロック信号の出力回路509」が「最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる入力信号による画像表示が最良となるようにクロック信号の位相を制御することができる」回路であるかどうか不明であるから、刊行物2のみに基づいて当業者が訂正請求発明を容易に発明できたということはできない。また、刊行物1ないし3に基づいて当業者が訂正請求発明を容易に発明できたということもできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は平成6年改正特許法附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法(平成5年法)126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 [3]特許異議の申立について 1.本件発明 特許2874187号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2.申立ての理由の概要 特許異議申立人セイコーエプソン株式会社は、本件発明の特許は、特開昭57-41078号公報(甲第1号証、訂正拒絶理由に引用した刊行物2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。 3.判断 上記「[2]訂正の適否についての判断」「3.独立特許要件」に記載したように、本件発明の特許は、特開昭57-41078号公報(甲第1号証、訂正拒絶理由に引用した刊行物2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものということはできないから、特許法29条2項に違反してなされたものということはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 液晶ディスプレイ装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 垂直方向に平行に配設された複数の第1の信号線と、水平方向に平行に配設された複数の第2の信号線とが設けられ、これらの第1、第2の信号線の各交点にそれぞれ選択素子を介して液晶セルが設けられてなる液晶ディスプレイ装置において、 上記第1の信号線に対応するシフトレジスタが設けられ、 入力信号からクロック信号が分離されて上記シフトレジスタに供給され、 上記シフトレジスタの出力信号にて上記入力信号がサンプリングされて上記第1の信号線に供給されると共に、 上記シフトレジスタを駆動する上記クロック信号の位相を調整する手段と、 最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる上記入力信号による表示画像が最良となるように上記クロック信号の位相を制御することができるようにした手段とを設けたことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、例えば液晶表示素子をX-Yマトリクス状に配置して画像の表示を行う液晶ディスプレイ装置に関する。 〔発明の概要〕 本発明は液晶ディスプレイ装置に関し、入力信号のサンプリングに用いるシフトレジスタの駆動クロック信号の位相を調整する手段を設けることにより、特にコンピュータ等からの画像信号の表示が良好に行われるようにしたものである。 〔従来の技術〕 例えば液晶を用いてテレビ画像を表示することが提案(特開昭59-220793号公報等参照)されている。 すなわち第5図において、(1)はテレビの映像信号が供給される入力端子で、この入力端子(1)からの信号がそれぞれ例えばNチャンネルFETからなるスイッチング素子M1,M2・・・Mmを通じて垂直(Y軸)方向のラインL1,L2・・・Lmに供給される。なおmは水平(X軸)方向の画素数に相当する数である。さらにm段のシフトレジスタ(2)が設けられ、このシフトレジスタ(2)に水平同期信号に相当する水平スタート信号HSと水平周波数のm倍の水平クロック信号ΦHが供給され、このシフトレジスタ(2)の各出力端子からのクロック信号ΦHによって順次走査される駆動パルス信号φH1,φH2・・・φHmがスイッチング素子M1〜Mmの各制御端子に供給される。なおシフトレジスタ(2)には低電位(VSS)と高電位(VDD)が供給され、この2つの電位の駆動パルスが形成される。 また各ラインL1〜Lmにそれぞれ例えばNチャンネルFETからなるスイッチング素子M11,M21・・・Mn1,M12,M22・・・Mn2,・・・M1m,M2m・・・Mnmの一端が接続される。なおnは水平走査線数に相当する数である。このスイッチング素子M11〜Mnmの他端がそれぞれ液晶セルC11,C21・・・Cnmを通じてターゲット端子(3)に接続される。 さらにn段のシフトレジスタ(4)が設けられ、このシフトレジスタ(4)に垂直同期信号に相当する垂直スタート信号VSと水平周波数の垂直クロック信号ΦVが供給され、このシフトレジスタ(4)の各出力端子からのクロック信号ΦVによって順次走査される駆動パルス信号φV1,φV2・・・φVnが、水平(X軸)方向のゲート線G1,G2・・・Gnを通じてスイッチング素子M11〜MnmのX軸方向の各列(M11〜M1m),(M21〜M2m)・・・(Mn1〜Mnm)ごとの制御端子にそれぞれ供給される。なお、シフトレジスタ(4)にもシフトレジスタ(2)と同様にVSSとVDDが供給される。 すなわちこの回路において、シフトレジスタ(2),(4)には第6図A,Bに示すようなスタート信号HS,VSとクロック信号ΦH,ΦVが供給される。そしてシフトレジスタ(2)からは同図Cに示すように各画素期間ごとにφH1〜φHmが出力され、シフトレジスタ(4)からは同図Dに示すように1水平期間ごとにφV1〜φVnが出力される。さらに入力端子(1)には同図Eに示すような信号が供給される。 そしてφV1,φH1が出力されているときは、スイッチング素子M1とM11〜M1mがオンされ、入力端子(1)→M1→M11→C11→ターゲット端子(3)の電流路が形成されて液晶セルC11に入力端子(1)に供給された信号とターゲット端子(3)との電位差が供給される。このためこのセルC11の容量分に、1番目の画素の信号による電位差に相当する電荷がサンプルホールドされる。この電荷量に対応して液晶の光透過率が変化される。これと同様のことがセルC12〜Cnmについて順次行われ、さらに次のフィールドの信号が供給された時点で各セルC11〜Cnmの電荷量が書き換えられる。 このようにして、映像信号の各画素に対応して液晶セルC11〜Cnmの光透過率が変化され、これが順次繰り返されてテレビ画像の表示が行われる。 さらに液晶で表示を行う場合には、一般にその信頼性、寿命を長くするため交流駆動が用いられる。例えばテレビ画像の表示においては、1フィールドまたは1フレームごとに映像信号を反転させた信号を入力端子(1)に供給する。また液晶ディスプレイ装置においては表示の垂直方向のシェーディング等を防止する目的で信号を1水平期間ごとに反転することが行われている。すなわち入力端子(1)には第6図Eに示すように1水平期間ごとに反転されると共に1フィールドまたは1フレームごとに反転された信号が供給される。 〔発明が解決しようとする課題〕 ところが上述の装置において、例えばコンピュータからの画像信号を表示する場合に、コンピュータで形成される画像は1画素ごとに形成された画素間の相換性が無いために、これを表示する場合の解像度が問題になる。 すなわちコンピュータで形成される画像信号の水平画素数は、通常使用されている機種において640画素等に定められており、この水平画素数の液晶ディスプレイ装置を製作することは可能である。しかしながら例えば第7図Aに示すように1画素ごとに白/黒に変化される画像信号が入力された場合に、スイッチング素子M1〜Mmに供給される駆動パルス信号φH1〜φHmが同図Bに示すようであれば各液晶セルC11〜Cnmでは同図Cに示すように表示が行われて充分な解像度が得られるものの、駆動パルス信号φH1〜φHmが同図Dに示すようであったときには、各液晶セルC11〜Cnmは同図Eに示すように全て白黒の中間の灰色に表示されてしまい、解像度は0になってしまう。 これに対して、液晶ディスプレイ装置の水平画素数を増やし、画素信号の水平画素数の2倍以上とすれば常に充分な解像度を得ることができるか、このためにはディスプレイ装置を製作する工作精度を極めて高くする必要が生じ製品の価格上昇を招く。またシフトレジスタ(2)のクロック周波数が2倍以上となり、このようにクロック周波数を高くすると消費電力が極めて増大してしまうおそれがある。 なお従来コンピュータに接続される液晶ディスプレイでは駆動パルス信号φH1〜φHmもコンピュータで発生されるクロック信号に基づいて形成されることから上述のような問題は生じない。これに対し本願の対象とするテレビ画像を表示する液晶ディスプレイ装置では供給される画像信号の同期信号から逓倍してクロック信号を形成するため、上述のような画素との位相を合せることが困難となるものである。 この出願はこのような点に鑑みてなされたものである。 〔課題を解決するための手段〕 本発明は、垂直方向に平行に配設された複数の第1の信号線L1,L2・・・Lmと、水平方向に平行に配設された複数の第2の信号線G1,G2・・・Gnとが設けられ、これらの第1、第2の信号線の各交点にそれぞれ選択素子M11,M12・・・Mnmを介して液晶セルC11,C12・・・Cnmが設けられてなる液晶ディスプレイ装置において、上記第1の信号線に対応するシフトレジスタ(2)が設けられ、入力信号(端子(1))からクロック信号が分離(同期分離回路(5)、クロック発生回路(6))されて上記シフトレジスタに供給され、上記シフトレジスタの出力信号(駆動パルス信号φH1〜φHm)にて上記入力信号がサンプリング(スイッチング素子M1〜Mm)されて上記第1の信号線に供給されると共に、上記シフトレジスタを駆動する上記クロック信号ΦHの位相を調整する手段(遅延手段(7a)〜(7d),マルチプレクサ(8))と、最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる上記入力信号による表示画像が最良となるように上記クロック信号の位相を制御することができるようにした手段(切換制御端子(10))とを設けたことを特徴とする液晶ディスプレイ装置である。 〔作用〕 これによれば、調整手段にてクロック信号の位相が調整されることによって、画素との位相を合せることができ、コンピュータ等からの画像信号の表示を良好に行うことができる。 〔実施例〕 第1図において、入力端子(1)に供給される画像信号が同期分離回路(5)に供給されて水平・垂直の同期信号が分離され、上述のシフトレジスタ(2),(4)に供給されるスタート信号HS,VS及び垂直クロック信号ΦVが形成される。さらにこの回路(5)で分離された水平同期信号Hがクロック発生回路(6)に供給されてm倍に逓倍された信号が形成される。この逓倍信号がそれぞれ水平クロック信号ΦHの半周期の1/5に相当する遅延時間τの遅延手段(7a),(7b),(7c),(7d)の直列回路に供給され、これらの遅延手段(7a)〜(7d)のそれぞれ入出力端の信号がマルチプレクサ(8)に供給される。そしてこのマルチプレクサ(8)からの信号がバッファアンプ(9)を通じてシフトレジスタ(2)のクロック信号ΦHの入力端に供給される。以下は従来の装置と同様にされる。 従ってこの装置において、遅延手段(7a)〜(7d)の入出力端からはそれぞれ第2図Aに示すように1順次位相の変化された信号が得られ、これらの信号の一つがマルチプレクサ(8)で選択されることによって、同図Bに示すような入力画像信号の位相に充分近接した信号が選択される。すなわちこれによってクロック信号が最適の位相に調整され、この調整されたクロック信号ΦHをシフトレジスタ(2)に供給することができる。 こうしてこの装置によれば、調整手段にてクロック信号の位相が調整されることによって、画素との位相を合せることができ、コンピュータ等からの画像信号の表示を良好に行うことができるものである。 なお上述の装置においてシフトレジスタ(2)から出力される駆動パルス信号φH1〜φHmは、クロック信号ΦHの反転ごとに発生されるものである。 またマルチプレクサ(8)での信号の選択は、例えば入力端子(1)に1画素ごとに白/黒に変化される最高解像度または解像度検出のためのテスト画像信号を供給し、これによる表示画像を視認しながら切換制御端子(10)を通じて順次マルチプレクサ(8)を切換る制御信号を供給し、表示画像が最良となる状態で制御信号を固定することによって行うことがでできる。 さらに第3図は他の例を示し、この例は上述のクロック信号の位相調整を自動的に行うことができるようにしたものである。なおこの実施例はいわゆる線順次型の駆動を行う場合で、入力端子(1)からの画像信号がスイッチング素子Ma1〜Mamでサンプリングされ、バッファアンプBa1〜Bamでホールドされた後、例えば水平ブランキングパルスHBLKでオンされるスイッチング素子Mb1〜Mbmで同時化されてバッファアンプBb1〜Bbmを通じて信号ラインL1〜Lmに供給されている。この場合でも本質的な動作は第1の実施例と同様にされるものである。 すなわち図において、信号ラインL1〜Lmに第2のスイッチング素子MX1〜MXmの一端が接続され、これらの素子MX1〜MXmの制御端子にそれぞれシフトレジスタ(11)の出力端子が接続される。またシフトレジスタ(11)には後述するスタート信号XSとクロック信号ΦXが供給される。そしてスイッチング素子MX1〜MXmの他端が互いに接続され、この接続点の信号が取出される。 この取出された信号がバッファアンプ(12)、直流化回路(13)を通じて比較回路(14)に供給され、例えば端子(15)からの基準電位と比較されて、この比較出力がカウンタ(16)に供給される。このカウント値がラッチ回路(17)を通じて位相調整手段(18)の制御端子に供給される。ここで位相調整手段(18)は上述した遅延手段(7a)〜(7d)とマルチプレクサ(8)でもよいが、自動化の場合にはさらに段階数を多くしたり、可変遅延線を用いることもできる。その他の構成は第1の実施例と同様にされる。 この装置において入力端子(1)に例えば第4図Aに示すような最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる画像信号が供給されると共に、シフトレジスタ(2)から同図Bに示すような駆動パルス信号φH1〜φHmが出力され、同図Cに示すような水平ブランキングパルスHBLKが供給されることによって、信号ラインL1〜Lmに上述の画像信号がサンプリングされて供給される。 そしてこの状態でシフトレジスタ(11)には例えば水平同期信号に相当するスタート信号XSとクロック信号ΦHの2倍の周期のクロック信号ΦXが供給されることにより、シフトレジスタ(11)からは同図Dに示すようなパルス信号φX1〜φXmが出力される。これによってスイッチング素子MX1〜MXmの他端の接続点には同図Eに示すような信号が取出される。 ここでこの取出される信号は、駆動パルス信号φH1〜φHmの位相が画素に一致しているときはE1に示すように高レベルになるが、位相がずれているときはE2のように低レベルになる。そこでこの信号を例えば整流平滑して直流化することによって位相のずれに相当するレベル信号が得られる。従ってこの信号を用いて位相の自動調整を行うことができる。 すなわち例えば位相調整回路(18)が上述の遅延手段(7a)〜(7d)とマルチプレクサ(8)の構成で位相が5段階に調整される場合には、カウンタ(16)が1〜5のリングカウンタとされ、直流化された信号レベルが基準レベル以下のときに比較化(14)が出力してカウンタ(16)が“1”増加するようにされる。これによって直流化された信号レベルが基準レベル以下のときにカウンタ(16)が“1”ずつ増加され、マルチプレクサ(8)での選択が順次切換られる。そして信号レベルが基準レベル以上になると比較回路(14)からは出力が得られなくなり、カウンタ(16)は不動となってマルチプレクサ(8)の選択が固定される。 従って例えば5回の調整期間の間で信号レベルが基準レベル以上になると以後カウンタ(16)が不動にされ、位相調整されたクロック信号がシフトレジスタ(2)に供給される。なお調整期間の終了後はカウンタ(16)のカウント値がラッチ回路(17)にラッチされて、以後の誤動作等が生じないようにされる。また位相調整回路(18)での段階数はさらに多くしても、カウンタ(16)のカウント数を同様に多くすることで応用することができる。 あるいは位相調整回路(18)を例えば電圧制御型の可変遅延線とした場合には、カウンタ(16)がアップダウンカウンタとされると共に端子(15)に前回の信号レベルが保持されて供給され、信号レベルが前回の値より大のときカウンタ(16)が“1”増加され、信号レベルが前回の値より小のときカウンタ(16)が“1”減少されるようにされる。そしてこのカウンタ(16)のカウント値が例えばD/A変換されて可変遅延線の制御端子に供給される。 これによれば信号レベルが最大になるようにクロック信号の位相を調整することができる。なおこの場合も調整期間の終了後はカウンタ(16)の値がラッチ回路(17)でラッチされ、このラッチされた値がD/A変換されて可変遅延線に供給されるようにされる。 こうしてこの例によればクロック信号の位相調整を自動化することができる。 なお上述の自動調整は各垂直ブランキング期間ごとに繰り返し行われるようにしてもよい。 〔発明の効果〕 この発明によれば、調整手段にてクロック信号の位相が調整されることによって、画素との位相を合せることができ、コンピュータ等からの画像信号の表示を良好に行うことができるようになった。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の一例の構成図、第2図はその説明のための図、第3図は他の例の構成図、第4図はその説明のための図、第5図〜第7図は従来の装置の説明のための図である。 L1〜Lmは垂直信号線、G1〜Gnはゲート線、M11〜Mnm,M1〜Mmはスイッチング素子、C11〜Cnmは液晶セル、(1)は入力端子、(2)(4)はシフトレジスタ、(5)は同期分離回路、(6)クロック発生回路、(7a)〜(7d)は遅延手段、(8)はマルチプレクサである。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ▲1▼ 訂正事項a 特許請求の範囲に係る記載 「垂直方向に平行に配設された複数の第1の信号線と、水平方向に平行に配設された複数の第2の信号線とが設けられ、これらの第1、第2の信号線の各交点にそれぞれ選択素子を介して液晶セルが設けられてなる液晶ディスプレイ装置において、 上記第1の信号線に対応するシフトレジスタが設けられ、 入力信号からクロック信号が分離されて上記シフトレジスタに供給され、 上記シフトレジスタの出力信号にて上記入力信号がサンプリングされて上記第1の信号線に供給されると共に、 上記シフトレジスタを駆動する上記クロック信号の位相を調整する手段が設けられ、 上記入力信号による表示画像が最良となるように上記クロック信号の位相を調整することができるようにしたことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。」を、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、 「垂直方向に平行に配設された複数の第1の信号線と、水平方向に平行に配設された複数の第2の信号線とが設けられ、これらの第1、第2の信号線の各交点にそれぞれ選択素子を介して液晶セルが設けられてなる液晶ディスプレイ装置において、 上記第1の信号線に対応するシフトレジスタが設けられ、 入力信号からクロック信号が分離されて上記シフトレジスタに供給され、 上記シフトレジスタの出力信号にて上記入力信号がサンプリングされて上記第1の信号線に供給されると共に、 上記シフトレジスタを駆動する上記クロック信号の位相を調整する手段と、 最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる上記入力信号による表示画像が最良となるように上記クロック信号の位相を制御することができるようにした手段とを設けたことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。」に訂正する。 ▲2▼ 訂正事項b 特許明細書(特許公報)第2頁第4欄12行「シューティング」とあるを、誤記の訂正を目的として、 「シェーディング」に訂正する。 ▲3▼ 訂正事項c 特許明細書第3頁第5欄8行「セルがC11」とあるを、誤記の訂正を目的として、 「セルC11」に訂正する。 ▲4▼ 訂正事項d 特許明細書第3頁第5欄9行「設けられ」とあるを、誤記の訂正を目的として、 「が設けられ」に訂正する。 ▲5▼ 訂正事項e 特許明細書第3頁第5欄19行「が設けられ、」とあるを、明りょうでない記載の釈明を目的として、 「と、最高解像度または解像度検出のためのテスト信号となる」に訂正する。 ▲6▼ 訂正事項f 特許明細書第3頁第5欄20行「調整」とあるを、明りょうでない記載の釈明を目的として、 「制御」に訂正する。 ▲7▼ 訂正事項g 特許明細書第3頁第5欄21行「したこと」とあるを、明りょうでない記載の釈明を目的として、 「した手段とを設けたこと」に訂正する。 ▲8▼ 訂正事項h 特許明細書第3頁第5欄40行「からを」とあるを、誤記の訂正を目的として、 「からの」に訂正する。 ▲9▼ 訂正事項i 特許明細書第3頁第6欄11行「解像度の」とあるを、明りょうでない記載の釈明を目的として、 「解像度または解像度検出のための」に訂正する。 ▲10▼ 訂正事項g 特許明細書第3頁第6欄44行「解像度の」とあるを、明りょうでない記載の釈明を目的として、 「解像度または解像度検出のためのテスト信号となる」に訂正する。 |
異議決定日 | 2001-05-17 |
出願番号 | 特願平1-130473 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H04N)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田村 征一 |
特許庁審判長 |
井上 雅夫 |
特許庁審判官 |
小林 秀美 橋本 恵一 |
登録日 | 1999-01-14 |
登録番号 | 特許第2874187号(P2874187) |
権利者 | ソニー株式会社 |
発明の名称 | 液晶ディスプレイ装置 |
代理人 | 松隈 秀盛 |
代理人 | 須澤 修 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 鈴木 喜三郎 |
代理人 | 松隈 秀盛 |