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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1046758 |
異議申立番号 | 異議2000-71805 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-05-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-04-28 |
確定日 | 2001-06-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2970796号「化粧シート」の請求項1〜5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2970796号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 |
理由 |
A.手続きの経緯 本件特許第2970796号に係る発明は、平成5年11月25日に特許出願され、平成11年8月27日にその特許の設定登録がなされたが、その後、株式会社ディスクより特許異議の申立てがなされ、平成12年8月17日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年10月25日に訂正請求がなされたものである。 B.訂正の適否についての判断 1、訂正の目的及び内容 (1)特許請求の範囲の減縮を目的として、 特許請求の範囲の記載を、 「【請求項1】互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて積層してなることを特徴とする化粧シート。 【請求項2】前記基材シートはポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項3】前記アクリル系樹脂シートはポリメタクリル酸メチル樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項4】表面にワイピング、トップコート等の表面加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。」と訂正する。 (2)不明瞭な記載の釈明を目的として、明細書の段落【0006】の記載を、 「【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明の化粧シートは、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて積層してなることを特徴としている。」と訂正する。 (3)誤記の訂正を目的として、明細書の段落【0029】の記載を、 「【0029】 ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂(熱可塑性エラストマーEPR含有)からなる厚さ120μmの基材シート(112.0℃及び144.6℃の二つの融点を有している)の表面にコロナ放電処理を施した後、通常の二液硬化型のウレタン系印刷インキを用いて150線のべタ版にてべタ印刷を行い、その上に通常の一液硬化型のウレタン系印刷インキを用いて柄の印刷を行なった。なお、かかる印刷工程はオンラインで行ない、乾燥を40〜60℃で行なった。」と訂正する。 2、訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否 上記(1)の訂正は、訂正前の特許請求の範囲請求項1における「基材シート」に対して、さらに「少なくとも異なる二つの融点を有する」という限定を付加し、請求項2を削除し、請求項項番号を整理するものでありるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書には、「基材シート1の材質としては、上述のようにポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、その出来た基材シート1が少なくとも異なる二つの融点を有するものであれば、ポリオレフィン系樹脂の組み合わせは任意である。」と記載(明細書段落【0015】)されているから、当該訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記(2)の訂正は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 上記(3)の訂正は、本件明細書段落【0013】の「例えば上記ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなる基材シートの場合、両者の混合割合によって多少は異なるが、概ね、100℃〜120℃と140℃〜150℃の二つの融点を有している。基材シート1は積層時にその異なる二つの融点の間の温度で上記アクリル系樹脂シート4と積層される。」との記載からみて、実施例におけるポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなる基材シートの融点を「112.0℃及び114.6℃」としているのは上記記載と整合しておらず、この「114.6℃」という記載を、上記記載と矛盾のない「144.6℃」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものであるといえる。 そして、(2)及び(3)の訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3、むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 C.特許異議の申立についての判断 1、特許異議申立の理由の概要 特許異議申立人 株式会社ディスク(以下、「申立人」という)は、甲第1号証〜甲第7号証を提出し、訂正前の本件請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜5に係る特許は取り消されるべきである旨の主張をしている。 2、本件各発明 本件各発明は、訂正された明細書の上記特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認める。(以下、【請求項1】記載の発明を「本件訂正発明1」といい、【請求項2】記載の発明以下の発明を順次「本件訂正発明2」などという) 3、申立人の提出した甲号証の記載事項 甲第1号証:特開昭63-272547号公報 a.「1.エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴムの部分架橋物と必要に応じて含まれるポリオレフィン系樹脂とを含む熱可塑性エラストマーからなる成形物の表面上に、飽和ポリエステルおよび塩素化ポリオレフィンから選ばれた少なくとも1種の化合物を含むプライマー層を設け、このプライマー層上に、飽和ポリエステル、アクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニルおよびイソシアネート樹脂から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むトップコート層(ただしプライマー層が飽和ポリエステルのみからなる場合には、トップコート層は少なくともアクリル酸エステル樹脂を含む)を設けてなることを特徴とする熱可塑性エラストマー成形物。」(特許請求の範囲第1項) b.「本発明は、自動車内装シートなどとして用いられる熱可塑性エラストマー成形物に(中略)関する。」(2頁右上欄6〜9行) c.「下記の各成分を用いて、下記のようにして熱可塑性エラストマーを製造した。 (A成分)エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン3元共重合体ゴム(中略) (B成分)アイソタクチックポリプロピレン樹脂(中略)よりなる混合物」(第10頁右下欄下から4行〜11頁右上欄11行) d.「次いでポリ塩化ビニル5重量部、ポリアクリル酸エステル5重量部、無水珪酸3重量部、メチルエチルケトン87重量部よりなるトップコート層形成用塗布液を100メッシュグラビアロールにて1回塗布した。」(第11頁左下欄1〜5行) 甲第2号証:化学大辞典8 化学大辞典編集委員会 共立出版株式会社 1962年2月28日発行 e.「表II ポリエチレンの性質 軟化点など」(第742頁) 甲第3号証:成型加工技術者のための プラスチック物性入門[第2版] 廣恵章利他1名著 日刊工業新聞社 昭和58年10月31日発行 f.「表4・3 おもな熱可塑性プラスチックの熱的性質 ポリエチレン(低密度)などの融点」(第148頁) 甲第4号証:特開平3-169547号公報 g.「(1)複数の材料層からなる積層体において、少なくとも一つの材料層を軟質ポリプロピレンを主体として形成したことを特徴とする積層体。」(特許請求の範囲第1項) h.「本発明は、各種製品の外装および内層材料(中略)として好適な積層体に関する。」(第1頁左下欄下から2行〜右下欄1行) i.「本明細書において「軟質ポリプロピレン」とは、以下の(1)〜(4)に記載のホモ重合体、または共重合体、更にはそれら重合体を含有する組成物のいずれかを意味する。」(右上欄1〜4行) j.「「他の材料層」を構成する熱可塑性樹脂層としては、製造すべき積層体の用途により適宜選定すればよく、特に制限はない。例えば(中略)アクリル樹脂(中略)をあげることができる。」(第10頁右下欄10行〜右下欄17行) k.「第二の方法は、予め軟質PPフィルム(延伸あるいは未延伸のもの)と熱可塑性樹脂のフィルム(延伸あるいは未延伸のもの)を別々に作成しておき、これらをラミネートする方法である。(中略)なお、ラミネートの際のプレスロール温度は40 〜100℃程度とし、また加工速度は50〜150m/分が適当である。」(第12頁右上欄14行〜右上欄5行) 甲第5号証:特開昭63-194949号公報 l.「(1)シート基材上に、印刷層、透明樹脂層およびアクリル樹脂層を順に積層してあることを特徴とする化粧シート。 (2)アクリル樹脂層がアクリル樹脂フイルムで形成されていること特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化粧材。 (3)透明樹脂層がポリオレフィン樹脂層であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化粧シート。 (4)アクリル樹脂層の上面に更に別の印刷層を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の化粧シート。 (5)印刷層は艶調整層を介してアクリル樹脂層上に形成される特許請求の範囲第4項記載の化粧シート。」(特許請求の範囲) m.「シート基材としては、例えば、薄葉紙、樹脂混抄紙、樹脂含浸紙などの紙質基材、合成樹脂性基材、金属、不織布などを用いることができ」(第2頁右下欄8〜11行) n.「アクリル樹脂層4は、アクリル樹脂の塗料を用いて塗布および乾燥することによっても形成できるが、別の方法で予め成膜したアクリル樹脂フイルムを適用する方が性状が優れているので、アクリルフイルムを使用するのがよい。」(第3頁右上欄下から3行〜右上欄2行) 甲第6号証:特表平4-504384号公報 o.「1.少なくとも1枚の上シート(21)を充填可塑化した下シート(23)に付与し、前記シート間に装飾を挿入し、全体はプロピレン重合体から誘導した材料から主として成ることを特徴とする床又は壁被覆を得る方法。」(特許請求の範囲に第1項) 甲第7号証:特開平2-128843号公報 p.「(1)基材上に、隠蔽ベタ印刷層、絵柄印刷層、透明な合成樹脂層およびツヤ調整層を順に積層し、エンボスを施してなることを特徴とする化粧材。 (2)透明な合成樹脂層とツヤ調整層との間に、第二の絵柄印刷層および第二の透明な合成樹脂層を設けた請求項1の化粧材。 (3)透明な合成樹脂層または第二の透明な合成樹脂層の材料としてフッ素樹脂またはアクリル樹脂を用いた請求項1または2の化粧材。」(特許請求の範囲第1〜3項) 4、対比・判断 (1)本件訂正発明1に対して 本件訂正発明1(前者)と上記甲各号証の発明(後者)とを対比すると、前者においては、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを積層するに当たり、積層温度が「前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲」とした点を発明の要件(以下、この要件を「本件積層温度要件」という)とするものであるのに対して、後者においてはいずれも「本件積層温度要件」を備えるものではない点で相違している。 すなわち、甲第1号証の発明は、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートを採用するものであると推認できるけれども、基材シート上に設けるアクリル系樹脂層は、塗布によって形成するもの(上記dの記載参照)であって、前者の「本件積層温度要件」を備えるものではないし、示唆するものでもない。 甲第2号証及び甲第3号証には、ポリオレフィン系樹脂の融点などが記載されているに過ぎない。 甲第4号証の発明は、軟質ポリプロピレンの層を有する積層体における軟質ポリプロピレンは、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有するものであると推認できるけれども、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂のフィルムとのラミネート温度に関して単に「40〜100℃程度」と記載されている(上記kの記載参照)だけであって、前者の「本件積層温度要件」を示唆するものではない。 甲第5号証及び甲第7号証には、化粧シートの表面にアクリル系樹脂フィルムを積層する点については記載されているものの、積層温度を「前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲」とするという「本件積層温度要件」について触れるところはなく、示唆する記載もない。 甲第6号証の発明は、そもそもアクリル系樹脂シートを積層するものではない。 そして、本件訂正発明1は、本件特許請求の範囲請求項1記載の要件を具備することにより、積層の際に基材シートが半溶融の状態になるため、十分な接着強度が得られ、しかもシート切れの起こらない連続ラミネートが可能となる(本件特許明細書段落【0026】)などの効果を奏し得ているものと認められる。 したがって、本件訂正発明は、甲第1号証〜甲第7号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (2)本件訂正発明2〜4に対して 本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1に対して、さらに技術的限定を附加したものであるから、「本件訂正発明1に対して」に記載した上記理由と同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 5、むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 化粧シート (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて積層してなることを特徴とする化粧シート。 【請求項2】 前記基材シートはポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項3】 前記アクリル系樹脂シートはポリメタクリル酸メチル樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項4】 表面にワイピング、トップコート等の表面加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は塩ビ代替化粧シートに関するものであり、詳しくは燃焼時に有害物質の発生がなく、かつ建材用途として現在の塩ビ化粧シートに優る性能を有する非塩ビ化粧シートに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来の非塩ビ化粧シートとしては、例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(以下「PMMA」と略記する。)シートに柄印刷を施したものがあるが、PMMAシートは切れやすいのでグラビア印刷には向かず、また表面に柄印刷を行っただけでは意匠的にも劣っている。そこで、意匠性を上げるため例えばエンボスを施すとなると、PMMAシートは明確な融点が一つであるためエンボス温度の許容性が小さく、融点以下だとエンボスが十分入らず、融点以上だとシート切れの問題が起こるので結局のところエンボスを施すことが困難である。また、PMMAシートのみでは折り曲げ性、耐溶剤性等の物性面が劣るため、化粧シートのVカット、ラッピング等の加工面でも劣っている。 【0003】 そこで、このPMMAシートの物性面、加工面等を改良するべく、ポリプロピレン樹脂シートの上にPMMA等のアクリル系樹脂シートを積層した構造の化粧シートが提案されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記ポリプロピレン樹脂シートとアクリル系樹脂シートの積層シートは、積層時の温度がポリプロピレン樹脂シートの融点以下だと密着不良となり、融点以上だとシート状態を維持できなくなり、積層工程でテンションがかかる為、シート切れの問題が起こる。 【0005】 本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、燃焼時に有害物質の発生がなく、かつ建材用途として現在の塩ビ化粧シートに優る性能を有し、しかも製造の容易な化粧シートを提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明の化粧シートは、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて積層してなることを特徴としている。 【0007】 また、本発明の化粧シートは、前記基材シートがポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなることを特徴としている。 【0008】 また、本発明の化粧シートは、前記アクリル系樹脂シートがポリメタクリル酸メチル樹脂からなることを特徴としている。 【0009】 さらに、本発明の化粧シートは、表面にワイピング、トップコート等の表面加工を施したことを特徴としている。 【0010】 以下、本発明をさらに詳細に説明する。 【0011】 図1は本発明の化粧シートの一実施例の構成を示す断面図である。 【0012】 本実施例の化粧シート7は、図1に示すように、基材シート1の上にベタ印刷層2および柄印刷層3を設け、その上にアクリル系樹脂シート4を積層し、表面には意匠性を上げるためにワイピングインキ5によってワイピングを施すとともに、さらに表面保護のための保護層としてトップコート層6を設けたものである。 【0013】 本発明に使用する上記基材シート1は互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなるもので、具体的には、例えばポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂などが挙げられる。このような互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなる基材シート1は少なくとも異なる二つの融点を有している。例えば上記ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなる基材シートの場合、両者の混合割合によって多少は異なるが、概ね、100℃〜120℃と140℃〜150℃の二つの融点を有している。基材シート1は積層時にその異なる二つの融点の間の温度で上記アクリル系樹脂シート4と積層される。 【0014】 基材シート1が例えば上記ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなる場合、両者の混合割合については本発明では特に限定されるわけではないが、上記ポリプロピレンの割合が多い、つまりポリプロピレンが50重量%以上である方が積層時にシート状態を良好に維持できるので特に好ましい。 【0015】 基材シート1の材質としては、上述のようにポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、その出来た基材シート1が少なくとも異なる二つの融点を有するものであれば、ポリオレフィン系樹脂の組み合わせば任意である。なお、前述のように、基材シート1はその異なる二つの融点間の温度でアクリル系樹脂シート4と積層されるので、基材シート1の有する二つの融点間の温度範囲がアクリル系樹脂シート4との積層に適当な温度範囲であることが必要である。 【0016】 基材シート1は、互いに融点の異なる二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂に可塑剤等の適当な添加剤を加えてシート状に成形して得られるが、可塑剤としてエチレン-プロピレンゴム(EPR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)等の熱可塑性エラストマーを加えることによって、出来た基材シート1の折り曲げによる白化をなくすことが出来るので特に好ましい。 【0017】 ところで、基材シート1の厚さは本発明では特に限定されるわけではないが、一般に60〜200μm程度の厚さが適当である。 【0018】 なお、上記基材シート1の表面には、印刷適性を持たせるため、適当なコロナ放電処理を施すことが望ましい。 【0019】 上記基材シート1の上には上記ベタ印刷層2および柄印刷層3を設ける。このベタ印刷層2は基材シート1とアクリル系樹脂シート4を積層する際のプライマー層としての役目を果たすものであり、必須ではないが、このような層を適宜設けることが望ましい。ベタ印刷層2は、例えばウレタン系印刷インキを用いて約2μmの厚さにベタ印刷することにより形成する。また、柄印刷層3は、例えば酢酸ビニル/アクリル系あるいはウレタン系の印刷インキを用いて、グラビア印刷により所望の絵柄を形成する。なお、上記基材シート1は、シートの柔軟度の温度依存性が従来の塩ビシートなどと比べて低いため、従来は使用出来なかった乾燥性の悪い水性インキなども使用することが可能である。 【0020】 上記ベタ印刷層2および柄印刷層3の上には上記アクリル系樹脂シート4を積層する。このアクリル系樹脂シート4は、一般的にオレフィン系樹脂シートは耐候性に乏しいため、建材用途の化粧シートとして十分な耐候性を持たせるために設けたもので、アクリル系樹脂シート4の材質としては例えば前記PMMAなどが用いられる。このアクリル系樹脂シート4の厚さについても本発明では特に限定されるものではないが、加工性等を考慮して通常50〜200μm程度の厚さが適当である。また、特にPMMAシートなどは従来の透明塩ビシートと比べて透明性が高いため、意匠面においても有利である。 【0021】 上記アクリル系樹脂シート4は積層時の温度が前記基材シート1の有する異なる二つの融点間の温度範囲にて前記基材シート1と積層される。このようにして基材シート1とアクリル系樹脂シート4の積層を行うと、例えば基材シート1が前述のポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなる場合、基材シート1のポリエチレン成分は積層時に溶融するが、ポリプロピレン成分はシート状態を維持することにより、基材シート1が言わば半溶融した状態となり、剥離強度も2Kg/インチ以上で且つシート切れの起こらない連続ラミネート(積層)が行える。 【0022】 また、前述したように、上記アクリル系樹脂シート4の表面には、さらに、意匠性の向上、表面の保護などを目的として、ワイピング、トップコート等の仕上げ表面加工を施することができる。 【0023】 ワイピングを施す方法の一例を説明すると、まず上記アクリル系樹脂シート4の表面に所望のエンボス模様を付与し、次いで全面にワイピングインキを塗布し、ワイピングインキが固化する前にスキージやバレルあるいは乾布にて表面の凸部にあるワイピングインキを除去し、残った凹部のワイピングインキ5を乾燥固化させる。ワイピングインキ5としてはウレタン系のもの等を使用するのが望ましい。 【0024】一方、トップコート層6にはウレタン系樹脂などを使用するのが望ましい。 【0025】 本実施例の化粧シート7の製造方法は、まず予め基材シート1の表面にベタ印刷層2を設け、その上に柄印刷層3を設けてから、この印刷済みの基材シート1とアクリル系樹脂シート4を所定の温度(すなわち基材シート1の有する異なる二つの融点の間の温度)にて熱ラミネートにより積層する。次いで、仕上げに、表面にワイピングインキ5を用いてワイピングを施すとともにトップコート層6を設ける。こうして化粧シート7が出来上がる。 【0026】 【作用】 本発明の化粧シートは、少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートとアクリル系樹脂シートとを積層してなるが、基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて基材シートとアクリル系樹脂シートの積層を行うと、基材シートの融点の低い成分は積層時に溶融し、融点の高い成分はシート状態を維持することにより、基材シートが半溶融の状態となるため、十分な接着強度が得られ、しかもシート切れの起こらない連続ラミネートが可能となる。 【0027】 また、本発明の化粧シートは、燃焼時に塩素ガス等の有害物質を発生しない構成であり、しかも折り曲げ性、耐候性、耐溶剤性等の物性面や、Vカット、ラッピング等の加工面で優れた性能を有し、さらに、広範な種類の印刷インキが使用可能で、上層のアクリル系樹脂シートの透明性も高いため意匠面でも優れ、従来の塩ビ化粧シートに優る性能を有する。 【0028】 【実施例】 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 【0029】 ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂(熱可塑性エラストマーEPR含有)からなる厚さ120μmの基材シート(112.0℃及び144.6℃の二つの融点を有している)の表面にコロナ放電処理を施した後、通常の二液硬化型のウレタン系印刷インキを用いて150線のベタ版にてベタ印刷を行い、その上に通常の一液硬化型のウレタン系印刷インキを用いて柄の印刷を行なった。なお、かかる印刷工程はオンラインで行ない、乾燥を40〜60℃で行なった。 【0030】 次に、上記の印刷済の基材シートと厚さ50μmのPMMAシート(三菱レイヨン(株)製、HBS-001)との積層をラミネート温度120℃にて熱ラミネートにより行なうと同時に上記PMMAシートの表面に木目調のエンボスを施し、その後ウレタン系ワイピングインキ(東洋インキ製造(株)製 URW)を用いてワイピングを行ない、さらに表面保護のため、ウレタン系トップコート(東洋インキ製造(株)製 URV-153)を用いてトップコートを行ない、本発明の化粧シートを得た。 【0031】 【発明の効果】 以上、詳細に説明したように、本発明の化粧シートによれば、少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートとアクリル系樹脂シートとを積層してなるため、基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて基材シートとアクリル系樹脂シートの積層を行なうと、基材シートが積層時に半溶融の状態となるので、十分な接着強度が得られ、しかもシート切れの起こらない連続ラミネートが可能となり、製造が容易である。 【0032】 また、本発明の化粧シートは、燃焼時に塩素ガス等の有害物質を発生しない構成であり、しかも折り曲げ性、耐候性、耐溶剤性等の物性面や、Vカット、ラッピング等の加工面、さらには意匠面でも優れた性能を有し、従来の塩ビ化粧シートに優る性能を有するので、建材用途として塩ビ化粧シートに代わる非塩ビ化粧シートとして使用可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の化粧シートの一実施例の構成を示す断面図である。 【符号の説明】 1 基材シート 2 ベタ印刷層 3 柄印刷層 4 アクリル系樹脂シート 5 ワイピングインキ 6 トップコート 7 化粧シート |
訂正の要旨 |
特許第2970796号発明の明細書中、 1.特許請求の範囲の記載を、 「【請求項1】互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて積層してなることを特徴とする化粧シート。 【請求項2】前記基材シートはポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項3】前記アクリル系樹脂シートはポリメタクリル酸メチル樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 【請求項4】表面にワイピング、トップコート等の表面加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。」と訂正する。 2.明細書の段落【0006】の記載を、 「【0006】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明の化粧シートは、互いに融点の異なる少なくとも二種以上のポリオレフィン系の混合樹脂からなり、かつ、少なくとも異なる二つの融点を有する基材シートの上に柄印刷層を設け、その上にアクリル系樹脂シートを前記基材シートの有する異なる二つの融点間の温度範囲にて積層してなることを特徴としている。」と訂正する。 3.明細書の段落【0029】の記載を、 「【0029】 ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂(熱可塑性エラストマーEPR含有)からなる厚さ120μmの基材シート(112.0℃及び144.6℃の二つの融点を有している)の表面にコロナ放電処理を施した後、通常の二液硬化型のウレタン系印刷インキを用いて150線のベタ版にてベタ印刷を行い、その上に通常の一液硬化型のウレタン系印刷インキを用いて柄の印刷を行なった。なお、かかる印刷工程はオンラインで行ない、乾燥を40〜60℃で行なった。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-06-04 |
出願番号 | 特願平5-318925 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 芦原 ゆりか |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
喜納 稔 仁木 由美子 |
登録日 | 1999-08-27 |
登録番号 | 特許第2970796号(P2970796) |
権利者 | 凸版印刷株式会社 |
発明の名称 | 化粧シート |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 白井 博樹 |
代理人 | 蛭川 昌信 |