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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1046886
異議申立番号 異議2000-72692  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-01-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-11 
確定日 2001-09-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第2997075号「スパッタリング用シリサイドターゲット」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2997075号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第2997075号(平成3年2月5日出願、平成11年10月29日設定登録)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「(a)シリコン/金属のモル比が2を超えるスパッタリング用シリサイドターゲットにおいて、(b)20μm以上の粗粒を排除した原料シリコン粉と金属とを合成して金属シリサイド粉を合成し、(c)そして該金属シリサイド粉を1000℃以上1380℃以下の温度でホットプレスすることにより製造した、(d)該シリサイドターゲットのスパッタ面に現れる10μm以上の粗大シリコン相の存在量が10ケ/mm2以下であることを特徴とする(e)スパッタリング用シリサイドターゲット。」
2.申立ての理由の概要
特許異議申立人高橋喜美夫は、請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開昭64-39374号公報)、甲第2号証(特開昭61-141674号公報)及び甲第3号証(特開昭63-219580号公報)の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきでものである旨主張する。
3.甲各号証記載の発明
(i)甲第1号証(特開昭64-39374号公報)には以下の記載がある。、
・「合成されたシリサイド原料粉2種以上を準備し、これを分析してそれぞれのシリサイドを構成する元素のモル比を正確に求め、次にこれらを混合して-100メッシュ粒度の原料合成シリサイド粉をシリサイドを構成する元素の目標モル比に調整した後、ホットプレスすることを特徴とするシリサイドターゲットの製造方法。」(第1頁左下欄第4〜10行、以下、「記載イ」という)
・ホットプレスのプレス温度が1300〜1400℃の範囲である旨の記載(第4頁左上欄第5〜11行、以下、「記載ロ」という)
・「(1)原料シリサイド粉を細かくすること、(2)充分にホットプレスを行い、焼結を進行させること、(3)添加シリコン粉の代わりにシリサイド粉を使用すること、及び、(4)モル比の調整に、目標とするモル比の前後のシリサイド粉を使用すること、により凝集シリコンが排除され、スパッタに際してのパーティクルの発生が激減しうる。」(第4頁左下欄第4〜12行、以下「記載ハ」という)
・「シリコン粉は凝集性が強く、シリサイド粉との混合時に凝集しがちであり、その際凝集シリコン粒の内部にシリサイド粒を取込みやすい。」(第4頁左下欄第17〜20行、以下、「記載ニ」という)
・「本発明により、こうした大きな凝集シリコンは排除される。第1図は、本発明のターゲットの組織を示す。大きな凝集シリコンは一切存在しない。」(第4頁右下欄第11〜13行、以下、「記載ホ」という)
・「実施例 5N(99.999wt%)のW粉13.9Kgと5N(99.999wt%)のSi粉6.1KgをV型ミキサーで混合し、合成炉でタングステンシリサイド(WSi2.90)の合成を行った。・・・この原料粉を分析してモル比を正確に測定したところx=2.83(WSi2.83)であった。WSi2.80のシリサイドターゲット製品を作製するべく、添加タングステンシリサイド粉WSi2.75を別に用意した。これを目標とする成分元素のモル比WSix(x=2.80)となるように・・・混合し、カーボン製ダイスに装入し、ホットプレスを行った。ホットプレスは1150℃から予荷重をかけ、1380℃でプレスし、プレス時間は30分とし、その後1時間ホールドした。プレス後、プレス品を取出し、機械加工によってスパッタ用ターゲットに仕上げた。このターゲットをスパッタしたところ、発生したパーテイクルの数は十数個/6inウエハーであった。これは、非常に秀れた結果である。製品ターゲットはWSi2.80と目標通りであった。」(第5頁右上欄第13行〜左下欄末行、以下、「記載ヘ」という)
(ii)甲第2号証(特開昭61-141674号公報)には以下の記載がある。
・「所定純度のタングステン粉末及びシリコン粉末を選択し、両粉末を混合した後・・・反応、合金化させた後、前記ペレットを粉砕し、ホットプレスを行う・・・タングステンシリサイド合金焼結体の製造方法。(第1頁左下欄第9〜16行、以下「記載ト」という)」
・「[実施例]・・・得られたタングステン粉を篩分した所、粒径1.8μmのタングステン粉が得られた。・・・得られたシリコン粉は粒径2.5μmのものであった。次に、タングステン粉800gにシリコン粉317gをミキサー内で混合し・・・粒径2μmのシリサイド合金粉が得られた。得られた粉末の内1100gを・・・ホットプレス内をアルゴンで置換し、約100kg/cm2のプレス圧を加えた状態で1400℃、20分以上・・・保持し焼結し・・・最終ターゲットとした。」(第3頁右下欄第3行〜第4頁右上欄第8行、以下「記載チ」という)
(iii)甲第3号証(特開昭63-219580号公報)には以下の記載がある。
・「「実施例1」・・・次に、9Nの純度で最大粒径が20μmのSi粉末4440gと、5N以上の超高純度で最大粒径が15μmのW粉末10560gを混合し・・・仮焼体を得た。仮焼体は・・・表面吸着ガスおよび水分を放出した。次いで加熱温度1180℃×3hr、圧力1000 atomの条件で熱間静水圧プレスで焼結し・・・超高純度のターゲットを得た。」(第4頁左上欄第6行〜右上欄第9行、以下、「記載リ」という)
・「また実施例1と比較例のターゲットの組織を示すため、それぞれの顕微鏡組織写真(倍率600倍)を第1a図、第2図に示したが、それらから本実施例のものは比較例に比べて組織が細かいことがわかる。第1b図は、第1a図を説明するための模式図であり、WSi2の粒径が15μm以下であり、遊離Siの粒径が20μm以下であることがわかる。」(第5頁左上欄第3〜10行、以下、「記載ヌ」という)
・「焼結方法は、常圧焼結あるいはホットプレスよりも熱間静水圧プレスの方が高密度、均質変形をさせる上で効果的であり、高温、高圧力ほど高密度なターゲットが得られるが、1150℃以下の加熱では、99%以上の高密度のターゲットは得られない。また1200℃以上に加熱すれば圧密用封止缶(材質は圧力用鋼管)とSiが反応するためあるいは組織が粗大化するために、熱間静水圧プレスによる加熱温度範囲は1150〜1200℃が望ましい。」(第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第5行、以下、「記載ル」という)
(iv)対比・判断
そこで、本件発明と甲第1号証記載のシリサイドターゲットとを対比するると、シリサイドを合成した後、ホットプレスで焼結して、シリコン/金属のモル比が2を越え、パーティクルの発生を抑制したシリサイドターゲット得ること及びその際のプレス温度が重複する点で一致するが、甲第1号証には、(1)本件発明の構成(b)で規定される原料シリコンの許容最大粒径、及び、(2)構成(d)で規定される、スパッタ面に現れる10μm以上の粗大シリコン相の存在量についての記載がない点で相違する。
申立人は、本件発明の構成(b)は甲第2号証に記載されていると主張するが、甲第2号証の「記載チ」には、粒径2.5μmのシリコン粉を用いて甲第1号証の方法と同様、ホットプレスで焼結し、シリサイドターゲットを製造することが記載されているものの、上記のシリコン粉の許容最大粒径の記載は認められず、本件発明の構成(d)に相当するスパッタ面の粗大シリコンの存在量についても示唆する記載がない。
本件発明と甲第3号証記載の発明とを対比すると、甲第3号証の「記載リ」には、許容最大粒径20μmのシリコンを使用してシリサイドを合成した後、1180℃で加圧焼結してターゲットを製造することが記載されているが、(3)ターゲットの焼結手段として、本件発明ではホットプレスを採用するのに対し、甲第3号証の「記載リ」の実施例では、熱間静水圧プレスを採用する点、(4)ターゲットのスパッタ面の粗大シリコン相即ち粗大遊離シリコンについては、本件発明が10μm以上の粗大シリコン相の存在量を10ケ/mm2 以下であると規定するのに対し、甲第3号証では、実施例1で遊離シリコンの粒径が20μm以下であると記載するに止まり、10μm以上の粗大シリコン相の存在量については具体的な値を示していない点で相違する。
上記相違点(3)については、上記「記載ル」から、効率を無視すれば、熱間静水圧プレスに代えてホットプレスを採用することが、当業者にとって容易であるとしても、上記相違点(4)については、甲第3号証の「記載ヌ」によると、実施例のスパッタ面の遊離シリコンは粒径が20μm以下であり、スパッタ経過後のスパッタ面の突起は第3表によると相当に少ないことが認められるものの、第1a図を見ても、10μm以上の遊離シリコンの存在量が10ケ/mm2以下であることを確認することはできない。そして、甲第3号証のその他の記載を見てもこれを窺わせるものはない。
そして、本件発明は、上記構成(b)及び(d)を採用することにより、明細書記載の作用効果を得るものである。
したがって、本件発明は、甲第1ないし3号証記載の発明に基づいて当業者は容易に発明をすることができたとはいえない。
(V)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明について特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-06 
出願番号 特願平3-35287
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小川 進  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 1999-10-29 
登録番号 特許第2997075号(P2997075)
権利者 株式会社ジャパンエナジー
発明の名称 スパッタリング用シリサイドターゲット  

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