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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1046940
異議申立番号 異議2001-71780  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-22 
確定日 2001-10-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第3120960号「複層ガラス板およびその支持構造」の請求項1、4及び5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3120960号の請求項1、4及び5に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件発明
本件特許第3120960号の請求項1、4及び5項に係る発明(平成7年9月26日出願、平成12年10月20日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1、4及び5項に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】対向する二枚のガラス板の外周部をスペーサー枠材を介し接着後、シーリング材にて密封する複層ガラス板において、該複層ガラス板の四隅コーナー部で前記スペーサー枠材の内側に設けた穿孔部に、筒状部とその外周中央部に円盤状部を固着してなるガラス穿孔部の密封保持金具を、対向する二枚のガラス板の穿孔部の内面にブチルゴム等のシール材を介して、あるいはパッキンとその外周にシール材を介して円盤状部を密着挟持し、前記ガラス穿孔部の密封保持金具の筒状部外周部と前記穿孔部間をシール部材で充填密封し接着したことを特徴とする複層ガラス板。
【請求項4】前記密封保持金具の筒状部の内側片端部若しくは両端部に止水用Oリング取付用の切欠部を設けたことを特徴とする前記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複層ガラス板。
【請求項5】前記複層ガラス板のそれぞれのガラス板は、強化ガラス板、半強化ガラス板、未強化ガラス板、あるいはこれらのガラスに飛散防止膜を貼着したガラス板、または薄膜層をコーティングしたガラス板、さらにこれらのガラス板を組み合わせて中間膜、樹脂注入等で接着した合わせガラス板であることを特徴とした前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複層ガラス板。」

〔2〕特許異議の申立ての理由
特許異議申立人旭硝子株式会社は、甲第1号証及び甲第2号証を提出して、本件請求項1、4及び5に係る発明は、甲第1号証記載の発明並びに常套手段であるシール材の充填技術又は甲第2号証記載の周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1、4及び5に係る発明についての特許は取り消されるべきである旨主張している。

甲第1号証:実願昭56-47295号(実開昭57-159984号) のマイクロフィルム
甲第2号証:特開昭61-191786号公報

〔3〕特許異議の申立てについての判断
1.甲各号証の記載事項
甲第1号証には、複層ガラス板に関して、
「第1図は本考案による複層ガラス板の一実施例を……示している。この複層ガラス板1においては,対の板状ガラス2,2を枠形のスペーサ3を介して相対向させ,対の板状ガラス2,2間に密閉空間4を形成している。……さらに第2図をも参照して,対の板状ガラス2,2の相対向する位置に貫通孔5,5を形成し、これらの貫通孔5,5間に,ポリプロピレン又は硬質ゴム等よりなる筒状パッキン6を嵌合装着してある。この筒状パッキン6は軸方向途中部分の外周面に,対の板状ガラス2,2間に挟まれるフランジ部7を一体に有している。このフランジ部7は軸方向両端面にそれぞれリング状にのびた溝8,8を有している。これらの溝8には多硫化ゴムよりなるシール材9が充填されている。……板状ガラス2,2とフランジ部7との間にシール材9が介在することにより,密閉空間4への空気の侵入は防止される。こうして複層ガラス板1には幾箇所かに,筒状パッキン6の内面にて規定される組付用孔11が形成される。したがってその組付用孔11にピン等12を挿通させることにより,複層ガラス板1の組み付けを容易に行うことができるようになる。」(明細書2頁11行〜4頁1行)
の記載がある。
以上の記載並びに第1図及び第2図からみて、甲第1号証には、
「対向する二枚の板状ガラスの外周部を枠形のスペーサを介し接着し密閉空間を形成する複層ガラス板において、複層ガラス板の四隅コーナー部で枠形のスペーサの内側に設けた貫通孔穿設部に、筒状部とその外周中央部にフランジ部を設けたポリプロピレン又は硬質ゴム等よりなる筒状パッキンを、対向する二枚の板状ガラスの貫通孔穿設部の内面に溝に充填された多硫化ゴムよりなるシール材を介してフランジ部を密着挟持した複層ガラス板」
なる発明が記載されているものと認められる。

甲第2号証には、
a「1.外ガラス板(2)及び内ガラス板(3)を周辺シール(4,5)により相互離間させてなる密封二重ガラス張りユニットにおいて、前記周辺シール内にあって密封式二重ガラス張りユニットの外周縁を塞ぐことなく該ユニットを取付けるための少なくとも1個の取付位置(6)を設定し、該取付位置(6)に取付構造(8,12,16)を一方のガラス板へ取付けて設け、これによりユニットのシールを損なうことなくユニットが風の負荷により撓み得るよう構成したことを特徴とする密封式二重ガラス張りユニット。」(特許請求の範囲)、
b「周辺シールはガラス板2,3の周縁から内方に離間させた間隔フレーム4で構成する。なお、ガラス張りユニット1はシリコンシール材5で密封する。」(4頁右上欄18行〜左下欄1行)、
c「第2図の例では、ボルト8のヘッド10を対応形状のステンレス鋼ワッシャ11内に嵌合させ、このワッシャは……ブッシュ12内に係止する。……ブッシュ12によりボルト8を外ガラス板2の孔13に貫通支持し、……ブッシュ12の外周に雄ねじを形成し、これを金属ボス16の中心孔15に形成した雌ねじに螺合する。……ボス16をほぼ円筒形とし、その外端面に環状溝17を形成し、これに……封止Oリング18を嵌着する。」(4頁右下欄4〜20行)、
d「ボス16及び孔20間の隙間にシール材24を充填する。」(5頁右下欄2〜3行)、
e「第6図は構成を簡単にした本発明の例を示し、本例では各取付構造を内ガラス板3のみに取着する。そして前記のボスを用いず、ボルト8を内ガラス板の孔20に挿通するだけとする。孔20にはボルトの挿通に先立ち、ブチルゴム製のシール材56を設ける。」(6頁右下欄4〜9行)
の記載がある。

2.対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「板状ガラス」、「枠形のスペーサ」、「密閉空間を形成する」、「貫通孔穿設部」及び「フランジ部」は、それぞれその機能に照らし、本件請求項1に係る発明の「ガラス板」、「スペーサー枠材」、「密封する」、「穿孔部」及び「円盤状部」に相当し、甲第1号証記載の発明の「筒状パッキン」と本件請求項1に係る発明「密封保持金具」は、ガラス穿孔部の密封保持具である点で共通するから、両者は、
「対向する二枚のガラス板の外周部をスペーサー枠材を介し接着し密封する複層ガラス板において、該複層ガラス板の四隅コーナー部で前記スペーサー枠材の内側に設けた穿孔部に、筒状部とその外周中央部に円盤状部を固着してなるガラス穿孔部の密封保持具を、対向する二枚のガラス板の穿孔部の内面にブチルゴム等のシール材を介して、円盤状部を密着挟持した複層ガラス板」
である点で共通するものの、以下の点で相違する。
相違点1
本件請求項1に係る発明では、対向する二枚のガラス板の外周部をスペーサー枠材を介し接着後、シーリング材にて密封するのに対し、甲第1号証記載の発明では、どのようにして密封するのか不明である。
相違点2
密封保持具が、本件請求項1に係る発明では、密封保持金具であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、ポリプロピレン又は硬質ゴム等よりなる筒状パッキンである。
相違点3
本件請求項1に係る発明では、密封保持金具の筒状部外周部と前記穿孔部間をシール部材で充填密封し接着したのに対し、甲第1号証記載の発明では、そのような構成を具備していない。
そこで上記相違点について検討する。
相違点1について
対向する二枚のガラス板の外周部にスペーサーを設け、密封した二重ガラス板において、対向する二枚のガラス板の外周部をシーリング材により密封するのは、甲第2号証に記載され(bの記載参照。)ており、相違点1における本件請求項1に係る発明の構成とすることは、甲第2号証に記載の技術事項に基いて当業者が容易になし得たことである。
相違点2及び3について
甲第2号証には、密封式二重ガラス張りユニットにおいて、ボルトと内ガラス板の孔との間にブチルゴム製のシール材を設けることは記載されている(eの記載参照。)が、本件請求項1に係る発明の相違点2及び3の構成については、何ら記載されていないし、示唆もされていない。
なお、特許異議申立人は、異議申立書において、「一般的に、各種技術分野において複数の部材間にシール材を充填することは極めて当たり前な常套手段である。また、甲第2号証にも『孔20にはボルトの挿通に先立ち、ブチルゴム製のシール材56を設ける』と記載されている通り、この事項は本件特許出願前周知の事項である。」(7頁4〜8行)と述べているが、そのことから直ちに当業者が本件請求項1に係る発明の相違点2及び3の構成を導き出すことができたとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)本件請求項4に係る発明について
本件請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1項に係る発明において、「前記密封保持金具の筒状部の内側片端部若しくは両端部に止水用Oリング取付用の切欠部を設けた」との構成を付加したものであるところ、本件請求項1に係る発明は、上記(1)に記載したように、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない以上、本件請求項4に係る発明についても、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(3)本件請求項5に係る発明について
本件請求項5に係る発明は、請求項1乃至4の何れか1項に係る発明において、「前記複層ガラス板のそれぞれのガラス板は、強化ガラス板、半強化ガラス板、未強化ガラス板、あるいはこれらのガラスに飛散防止膜を貼着したガラス板、または薄膜層をコーティングしたガラス板、さらにこれらのガラス板を組み合わせて中間膜、樹脂注入等で接着した合わせガラス板である」との構成を付加したものであるところ、本件請求項1に係る発明は、上記(1)に記載したように、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない以上、本件請求項5に係る発明についても、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1、4及び5に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、4及び5に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-20 
出願番号 特願平7-248080
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
登録日 2000-10-20 
登録番号 特許第3120960号(P3120960)
権利者 セントラル硝子株式会社
発明の名称 複層ガラス板およびその支持構造  

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