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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E02D |
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管理番号 | 1046955 |
異議申立番号 | 異議1999-71557 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-04-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-22 |
確定日 | 2001-10-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2813878号「土壌の汚染処理方法」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2813878号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続きの経緯 本件特許第2813878号の請求項1及び2に係る発明は、平成8年9月27日に出願され、平成10年8月14日にその特許権の設定登録がなされ、その後、孝祐株式会社より請求項1及び2(全請求項)に係る発明の特許について特許異議申立がなされ、当審において請求項1及び2に係る発明に対して取消通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年5月17日に訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由が通知されたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 特許権者の求める特許請求の範囲に関しての訂正の内容は、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載を次のように訂正しようとするものである。 【請求項1】 現地発生土に、土に対して50〜85重量%の生石灰と生石灰に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、現地発生土に含む重金属類を珪酸塩とすることを特徴とした土壌の汚染処理方法。 【請求項2】 現地発生土に、土に対して50〜85重量%の生石灰と生石灰に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、生成する珪酸カルシウムゲルに、現地発生土に含む油類を吸着させたことを特徴とする土壌の汚染処理方法。 2.訂正拒絶理由通知(平成13年2月28日付け) 当審では、刊行物として 特開平8ー24900号公報、公開日 平成8年1月30日=異議申立人提出の甲第2号証(以下「甲第2号証刊行物」という) 特開平5-23699号公報、=異議申立人提出の甲第1号証(以下「甲第1号証刊行物」という) を引用し、 本件訂正明細書の特許請求の範囲請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証刊行物、甲第2号証刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、この訂正は平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので当該訂正は認められないという訂正拒絶理由を通知した。 3.各刊行物記載の発明 甲第2号証刊行物には、汚水・汚泥処理剤及びそれを用いた汚水や汚泥の処理方法に関して、 「45wt部〜85wt部の酸化カルシウムと、15wt部〜55wt部のケイ酸ナトリウムと、を含有することを特徴とする汚水・汚泥処理剤。」(特許請求の範囲の請求項1)と記載され、 「スラリー状又はスラッジ状若しくは乾燥状のヘドロやその他の土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物100wt部に請求項1乃至3の内いずれか1に記載の汚水・汚泥処理剤を50〜250wt部加え攪拌する工程と、次いで、水を泥状物の水分濃度に応じて汚水・汚泥処理剤100wt部に対し20〜100wt部を加え攪拌する工程と、を備えたことを特徴とする汚水や汚泥の処理方法。」(特許請求の範囲の請求項7)と記載され、 「本発明は有害金属等の土壌の汚染物質や油性物質を含有する廃水やヘドロ等の廃泥を処理する汚水・汚泥処理剤及びそれを用いた汚水や汚泥の処理方法に関する。」(公報2頁左欄42〜45行)と記載され、 「この構成によって、以下のような作用を生じる。すなわち、 a.酸化カルシウムに水を加えることにより次式のように極めて高温の水和熱を得ることができる. CaO+H2O→Ca(OH)2+15.2Kcal この水和反応熱によって泥状物の処理系の温度を上昇させ、流動性を増し、水酸化カルシウムとケイ酸ナトリウムの反応生成物で水に不溶性のケイ酸ナトリウムゲルや、ケイ酸カルシウムゲル、ケイ酸ナトリウムカルシウムゲル等その他の反応生成物に油性物質や有害金属を包接させ固定化することができる。また、油性物質は生物学的処理になじみ易くすることができる。 b.カドミウム,六価クロム等の有害金属塩類を含んだ泥状物に、酸化カルシウムや生石灰,ケイ酸ナトリウムを添加した後、水を混入して、水和反応の熱によって系の温度を上昇させて流動性を増し、この結果有害金属塩類と消和物やケイ酸ナトリウム等その他の反応物が容易に包接もしくは反応し、水に不溶性の有害金属珪酸塩や包接物を生成することによって有害金属等を固定化することができる。」(公報4頁左欄22〜42行)と記載され、 「この場合、生成した水酸化カルシウムはケイ酸ソーダと反応し、表面積の大きい水に不溶のケイ酸カルシウムゲル等を生成する。油類は新しく生成したケイ酸カルシウムゲルに容易に吸着・包接され固定化される。また、油類に多価金属である重金属の塩類が含有されている場合は、これらの重金属塩類はケイ酸ソ-ダと反応し、水に不溶の重金属珪酸塩等を生成して固定化される。」(公報4頁右欄9〜15行)と記載されている。 そして、前記請求項1に記載の「酸化カルシウム」は「生石灰」のことであり、 また、請求項7は、「・・・土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物100wt部に請求項1乃至3の内いずれか1に記載の汚水・汚泥処理剤を50〜250wt部加え攪拌する・・・」という記載から、請求項7には、「・・・土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物100wt部に請求項1に記載の汚水・汚泥処理剤を100wt部加え攪拌する・・・」ということが記載されている。 したがって、前記記載を含む明細書の記載からみて、甲第2号証刊行物には、次の(a)及び(b)のような発明が記載されているものと認められる。 (a)土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物に、泥状物100wt部に対して汚水・汚泥処理剤として45〜85wt部の生石灰と、15〜55wt部のケイ酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、泥状物に含む重金属類を珪酸塩とすることを特徴とした土壌の汚染処理方法。 (b)土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物に、泥状物100wt部に対して汚水・汚泥処理剤として45〜85wt部の生石灰と、15〜55wt部のケイ酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、生成する珪酸カルシウムゲルに、泥状物に含む油類を吸着させたことを特徴とする土壌の汚染処理方法。 また甲第1号刊行物には、産業廃棄物の処理方法及びその処理剤に関して、 「本実施例では、産業廃棄物の汚泥中に、90〜95%の生石灰、5〜10%の珪酸塩(シリカ)を添加するとともに、産業廃棄物に対して40%の水を混入するようにしている。」(公報3頁右欄24〜27行)という記載がある。 4.対比、判断 (1)訂正明細書の請求項1に係る発明について 本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)と、甲第2号証刊行物の(a)に記載の発明とを対比すると、甲第2号証刊行物の(a)の発明の 「土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物」、「泥状物」、及び「ケイ酸ナトリウム」は、それぞれ本件訂正発明1の「現地発生土」、「土」、及び「珪酸ナトリウム」に対応し、本件訂正発明1の「土に対して50〜85重量%の生石灰」は、甲第2号証刊行物の(a)の発明の「泥状物100wt部に対して45〜85wt部の生石灰」に包含され、本件訂正発明1の「土に対して約40重量%の水」は、甲第2号証刊行物の(a)の発明の「泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水」に包含されるから、両発明は、 「現地発生土に、土に対して50〜85重量%の生石灰と生石灰に対して所要の重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、現地発生土に含む重金属類を珪酸塩とすることを特徴とした土壌の汚染処理方法。」 の点で構成が一致しており、 珪酸ナトリウムの添加量が、本件訂正発明1では、生石灰に対して5〜10重量%であるのに対して、甲第2号証刊行物の(a)の発明では、泥状物100wt部に対して15〜55wt部である点で相違しているものと認められる。 そこで、この相違点を検討する。 本件訂正発明1は、土に対して50〜85重量%の生石灰と、その生石灰に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムを添加するということであるから、珪酸ナトリウムの添加量は、土に対して2.5〜8.5重量%の珪酸ナトリウムを添加するということである。 ここで、前記甲第1号証刊行物の記載をみると、甲第1号証刊行物には、産業廃棄物の汚泥中に、90〜95%の生石灰、5〜10%の珪酸塩(シリカ)を添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させるということが記載されており、これは汚泥(本件訂正発明1では土。)に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムを添加するということを意味するものである。 そうすると、本件訂正発明1の、土に対して添加する珪酸ナトリウムの量 (2.5〜8.5重量%)のうち、5〜8.5重量%の添加量は生石灰が90〜95%という条件のもとではあるが、一応甲第1号証刊行物に記載されているし、甲第1、2号証刊行物に記載のない2.5〜5重量%の数値範囲については、実験の繰り返しの中から最適なものを選択して得られるものと認められる。 そして、本件訂正発明1の作用効果は、甲第1、2号証刊行物に記載の発明、及び実験によって得られる数値範囲から予測しうる範囲のものである。 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲第2号証刊行物に記載の発明に、甲第1号証刊行物に記載の発明及び実験によって得られる数値範囲を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (2)訂正明細書の請求項2に係る発明について 本件訂正明細書の請求項2に係る発明(以下、「本件訂正発明2」という。)と、甲第2号証刊行物の(b)に記載の発明とを対比すると、甲第2号証刊行物の(b)の発明の 「土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物」、「泥状物」、及び「珪酸ナトリウム」は、それぞれ本件訂正発明2の「現地発生土」、「土」、及び「ケイ酸ナトリウム」に対応し、本件訂正発明2の「土に対して50〜85重量%の生石灰」は、甲第2号証刊行物の(b)の発明の「泥状物100wt部に対して45〜85wt部の生石灰」に包含され、本件訂正発明2の「土に対して約40重量%の水」は、甲第2号証刊行物の(b)の発明の「泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水」に包含されるから、両発明は、 「現地発生土に、土に対して50〜85重量%の生石灰と生石灰に対して所要の重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、生成する珪酸カルシウムゲルに、現地発生土に含む油類を吸着させたことを特徴とする土壌の汚染処理方法。」 の点で構成が一致しており、 珪酸ナトリウムの添加量が、本件訂正発明2では、生石灰に対して5〜10重量%であるのに対して、甲第2号証刊行物の(b)の発明では、泥状物100wt部に対して15〜55wt部である点で相違しているものと認められる。 そこで、この相違点を検討するに、この相違点は、前記「4.(1)訂正明細書の請求項1に係る発明について」で述べたように、一応甲第1号証刊行物に記載されており、また、甲第1号証刊行物に記載のない数値範囲も実験の繰り返しの中から最適なものを選択して得られるものと認められる。 そして、本件訂正発明2の作用効果は、甲第1、2号証刊行物に記載の発明、及び実験によって得られる数値範囲から予測しうる範囲のものである。 以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、甲第2号証刊行物に記載の発明に、甲第1号証刊行物に記載の発明及び実験によって得られる数値範囲を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 5.むすび 以上のとおり、本件訂正発明1及び訂正発明2は、甲第2号証刊行物に記載の発明に、甲第1号証刊行物に記載の発明及び実験によって得られる数値範囲を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、前記訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.特許異議申立についての判断 1.本件発明 本件特許第2813878号の請求項1及び2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 現地発生土に、土に対して50〜100重量%の生石灰と生石灰に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、現地発生土に含む重金属類を珪酸塩とすることを特徴とした土壌の汚染処理方法。 【請求項2】 現地発生土に、土に対して50〜100重量%の生石灰と生石灰に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、生成する珪酸カルシウムゲルに、現地発生土に含む油類を吸着させたことを特徴とする土壌の汚染処理方法。 2.取消理由通知 当審では刊行物として、 甲第1号証刊行物、甲第2号証刊行物を引用して、 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、甲第1、2号証刊行物に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきであるという取消理由を通知した。 3.各刊行物に記載の発明 甲第2号証刊行物には、汚水・汚泥処理剤及びそれを用いた汚水や汚泥の処理方法に関して、 「45wt部〜85wt部の酸化カルシウムと、15wt部〜55wt部のケイ酸ナトリウムと、を含有することを特徴とする汚水・汚泥処理剤。」(特許請求の範囲の請求項1)と記載され、 「55wt部〜90wt部の生石灰と、10〜50wt部のケイ酸ナトリウムと、を含有することを特徴とする汚水・汚泥処理剤」(特許請求の範囲の請求項2)と記載され、 「スラリー状又はスラッジ状若しくは乾燥状のヘドロやその他の土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物100wt部に請求項1乃至3の内いずれか1に記載の汚水・汚泥処理剤を50〜250wt部加え攪拌する工程と、次いで、水を泥状物の水分濃度に応じて汚水・汚泥処理剤100wt部に対し20〜100wt部を加え攪拌する工程と、を備えたことを特徴とする汚水や汚泥の処理方法。」(特許請求の範囲の請求項7)と記載され、 「本発明は有害金属等の土壌の汚染物質や油性物質を含有する廃水やヘドロ等の廃泥を処理する汚水・汚泥処理剤及びそれを用いた汚水や汚泥の処理方法に関する。」(公報2頁左欄42〜45行)と記載され、 「この構成によって、以下のような作用を生じる。すなわち、 a.酸化カルシウムに水を加えることにより次式のように極めて高温の水和熱を得ることができる. CaO+H2O→Ca(OH)2+15.2Kcal この水和反応熱によって泥状物の処理系の温度を上昇させ、流動性を増し、水酸化カルシウムとケイ酸ナトリウムの反応生成物で水に不溶性のケイ酸ナトリウムゲルや、ケイ酸カルシウムゲル、ケイ酸ナトリウムカルシウムゲル等その他の反応生成物に油性物質や有害金属を包接させ固定化することができる。また、油性物質は生物学的処理になじみ易くすることができる。 b.カドミウム,六価クロム等の有害金属塩類を含んだ泥状物に、酸化カルシウムや生石灰,ケイ酸ナトリウムを添加した後、水を混入して、水和反応の熱によって系の温度を上昇させて流動性を増し、この結果有害金属塩類と消和物やケイ酸ナトリウム等その他の反応物が容易に包接もしくは反応し、水に不溶性の有害金属珪酸塩や包接物を生成することによって有害金属等を固定化することができる。」(公報4頁左欄22〜42行)と記載され、 「この場合、生成した水酸化カルシウムはケイ酸ソーダと反応し、表面積の大きい水に不溶のケイ酸カルシウムゲル等を生成する。油類は新しく生成したケイ酸カルシウムゲルに容易に吸着・包接され固定化される。また、油類に多価金属である重金属の塩類が含有されている場合は、これらの重金属塩類はケイ酸ソ-ダと反応し、水に不溶の重金属珪酸塩等を生成して固定化される。」(公報4頁右欄9〜15行)と記載されている。 そして、前記請求項1に記載の「酸化カルシウム」は「生石灰」のことであり、 また、請求項7は、「・・・土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物100wt部に請求項1乃至3の内いずれか1に記載の汚水・汚泥処理剤を50〜250wt部加え攪拌する・・・」という記載から、請求項7には、「・・・土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物100wt部に請求項1に記載の汚水・汚泥処理剤を100wt部加え攪拌する・・・」ということが記載されている。 したがって、前記記載を含む明細書の記載からみて、甲第2号証刊行物には、次の(a)及び(b)のような発明が記載されているものと認められる。 (a)土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物に、泥状物100wt部に対して汚水・汚泥処理剤として45〜85wt部の生石灰と、15〜55wt部のケイ酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、泥状物に含む重金属類を珪酸塩とすることを特徴とした土壌の汚染処理方法。 (b)土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物に、泥状物100wt部に対して汚水・汚泥処理剤として45〜85wt部の生石灰と、15〜55wt部のケイ酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、生成する珪酸カルシウムゲルに、泥状物に含む油類を吸着させたことを特徴とする土壌の汚染処理方法。 同じく甲第1号証刊行物には、産業廃棄物の処理方法及びその処理剤に関して、 「本実施例では、産業廃棄物の汚泥中に、90〜95%の生石灰、5〜10%の珪酸塩(シリカ)を添加するとともに、産業廃棄物に対して40%の水を混入するようにしている。」(公報3頁右欄24〜27行)という記載がある。 4.対比、判断 (1)明細書の請求項1に係る発明について 本件明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、甲第 2号証刊行物の(a)に記載の発明とを対比すると、甲第2号証刊行物の(a)の発明の「土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物」、「泥状物」、及び「ケイ酸ナトリウム」は、それぞれ本件発明1の「現地発生土」、「土」、及び「珪酸ナトリウム」に対応し、本件発明1の「土に対して50〜100重量%の生石灰」は、甲第2号証刊行物の(a)の発明の「泥状物100wt部に対して45〜85wt部の生石灰」に一部包含され、本件発明1の「土に対して約40重量%の水」は、甲第2号証刊行物の(a)の発明の「泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水」に包含されるから、両発明は、 「現地発生土に、土に対して50〜85重量%の生石灰と生石灰に対して所要の重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、現地発生土に含む重金属類を珪酸塩とすることを特徴とした土壌の汚染処理方法。」 の点で構成が一致しており、 (イ)石灰石の混合割合が土に対して甲第2号証刊行物の(a)の発明では85wt部までであるのに対し本件発明1では85重量%をこえて100重量%までである点、 (ロ)珪酸ナトリウムの土に対して添加量が、本件発明1では、生石灰に対して5〜10重量%であるのに対して、甲第2号証刊行物の(a)の発明では、15〜55wt部である点で相違しているものと認められる。 そこで、この相違点を検討する。 本件発明1は、土に対して50〜100重量%の生石灰と、その生石灰に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムを添加するということであるから、珪酸ナトリウムの添加量は、土に対して2.5〜10重量%の珪酸ナトリウムを添加するということである。 そこで上記相違点(イ)について検討すると、土に対しての混合する生石灰の量に関して、50〜85重量%は、甲第2号証刊行物に記載され、また甲第1号証刊行物の記載をみると、甲第1号証刊行物には汚泥に対して90〜95%を混入するとの記載があり、これらを参酌すると、甲第1、2号証刊行物に記載のない95〜100重量%の数値範囲は実験の繰り返しの中から適切なものを選択して得られるものと認められる。 次に相違点(ロ)について検討すると、甲第1号証刊行物には、産業廃棄物の汚泥中に、90〜95%の生石灰、5〜10%の珪酸塩(シリカ)を添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させるということが記載されており、これは汚泥(本件発明1では土。)に対して5〜10重量%の珪酸ナトリウムを添加するということを意味するものである。そうすると、本件発明1の、土に対して添加する珪酸ナトリウムの量(2.5〜10重量%)のうち、5〜10重量%の添加量は生石灰が90〜95%という条件のもとではあるが、一応甲第1号証刊行物に記載されているし、甲第1、2号証刊行物に記載のない2.5〜5重量%の数値範囲については、同じく実験の繰り返しの中から最適なものを選択して得られるものと認められる。 そして、本件発明1の作用効果は、甲第1、2号証刊行物に記載の発明、及び実験によって得られる数値範囲から予測しうる範囲のものである。 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第2号証刊行物に記載の発明に、甲第1号証刊行物に記載の発明及び実験によって得られる数値範囲を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (2)明細書の請求項2に係る発明について 本件明細書の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)と、甲第 2号証刊行物の(b)に記載の発明とを対比すると、甲第2号証刊行物の(b)の発明の 「土壌汚染物質や油性物質を含む泥状物」、「泥状物」、及び「珪酸ナトリウム」は、それぞれ本件発明2の「現地発生土」、「土」、及び「ケイ酸ナトリウム」に対応し、本件発明2の「土に対して50〜100重量%の生石灰」は、甲第2号証刊行物の(b)の発明の「泥状物100wt部に対して45〜85wt部の生石灰」に一部包含され、本件発明2の「土に対して約40重量%の水」は、甲第2号証刊行物の(b)の発明の「泥状物100wt部に対して20〜100wt部の水」に包含されるから、両発明は、 「現地発生土に、土に対して50〜85重量%の生石灰と生石灰に対して所要の重量%の珪酸ナトリウムとを添加混合した後、この混合系に土に対して約40重量%の水を注入して生石灰の水和反応を喚起させ、生成する珪酸カルシウムゲルに、現地発生土に含む油類を吸着させたことを特徴とする土壌の汚染処理方法。」 の点で構成が一致しており、 (イ)石灰石の混合割合が土に対して甲第2号証刊行物の(a)の発明では85wt部までであるのに対し本件発明2では85重量%をこえて100重量%までである点、 (ロ)珪酸ナトリウムの土に対して添加量が、本件発明2では、生石灰に対して5〜10重量%であるのに対して、甲第2号証刊行物の(a)の発明では、15〜55wt部である点で相違しているものと認められる。 そこで、この相違点を検討するに、この相違点は、前記「4.(1)訂正明細書の請求項2に係る発明について」で述べたように、一応甲第1、2号証刊行物に記載されており、また、甲第1、2号証刊行物に記載のない数値範囲も実験の繰り返しの中から最適なものを選択して得られるものと認められる。 そして、本件発明2の作用効果は、甲第1、2号証刊行物に記載の発明、及び実験によって得られる数値範囲から予測しうる範囲のものである。 以上のとおりであるから、本件発明2は、甲第2号証刊行物に記載の発明に、甲第1号証刊行物に記載の発明及び実験によって得られる数値範囲を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 5.むすび 以上のとおり、本件発明1及び発明2は、甲第2号証刊行物に記載の発明に、甲第1号証刊行物に記載の発明及び実験によって得られる数値範囲を適用して当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって本件発明1及び2についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-08-21 |
出願番号 | 特願平8-255740 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(E02D)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 深田 高義 |
特許庁審判長 |
佐田 洋一郎 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 鈴木 公子 |
登録日 | 1998-08-14 |
登録番号 | 特許第2813878号(P2813878) |
権利者 | 佐藤 文彦 株式会社テクノサンライズ |
発明の名称 | 土壌の汚染処理方法 |
代理人 | 久保 司 |
代理人 | 久保 司 |
代理人 | 松尾 憲一郎 |