• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1047734
審判番号 不服2000-2114  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-02-18 
確定日 2001-10-15 
事件の表示 平成9年特許願第329045号「湯口、湯道、堰等の不要製品の折断装置の配置構造」拒絶査定に対する審判事件[平成11年6月15日出願公開、特開平11-156218]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成9年11月28日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「湯口、湯道、堰等の不要製品を折断装置に順次送り込む送込み装置と、この送込み装置に連設して刃物台に千鳥状に配置し、かつ刃物台より突出して設けた半截截頭円錐形の刃物を有する固定刃物装置と、この固定刃物装置の半截截頭円錐形の刃物と嵌め合い関係となる刃物台に千鳥状に配置し、かつ刃物台より突出して設けた半截截頭円錐形の刃物を有する揺動刃物装置とでなる前記不要製品を折断する折断装置と、この折断装置に連設した当該折断装置で折断した鋳造用再原料を排出する排出装置とを前記鋳造工場に配置し、前記送込み装置と折断装置と排出装置とを前記鋳造工場に一連に配置したことで、工場の無人化、作業の効率化及び安全性を達成し、かつ工場のスペースの有効利用、鋳造作業の効率化、搬送の容易化、等が可能となったことを特徴とする湯口、湯道、堰等の不要製品の折断装置の配置構造。」

2.刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された特開平6-182238号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
(イ)「本発明は、油圧及び自然落下を利用して不要となった不揃いでなる鋳造用の堰、湯道、不良製品等を破砕・折断して、細分化し、鋳造用再原料として最適なものを生成(製造)する破砕・折断方法に関する。」(第1欄31行〜35行)、
(ロ)「本発明の方法に使用する破砕・折断装置の一例を、図面に基づいて説明する。・・・当該フレーム1には・・・細分化済み不要製品排出用(鋳造用再原料排出用)のコンベア3が・・・設けられている。」(第5欄18行〜23行)、
(ハ)「固定刃物装置4は、次の主要部材で構成されている。即ち、・・・刃物取付板41に着脱自在に設けられる刃物台42に千鳥状に配備され、かつ下方に向って順次突出状に設けられる山形状の刃物42a・・・で構成されている。・・・そして、山形状の刃物42a・・・の傾斜面42a’・・・は破砕・折断された細分化された不要製品を、確実に自然落下させるために設けられている。・・・また前記千鳥状に配備された山形状の刃物42a間には、後述する揺動側刃物の山形状の刃物が嵌め合い嵌合されるための隙間Aが形成されているとともに、この隙間Aに後述する揺動側刃物の山形状の刃物が嵌合された場合、細分化された不要製品が落下する僅かな隙間A1(可変できる。)が形成される。」(第5欄25行〜43行)、
(ニ)「揺動刃物装置6は、次の主要部材で構成されている。即ち、・・・揺動板61に着脱自在に設けられている刃物台62に千鳥状に配備され、かつ下方に向って順次突出状に設けられる山形状の刃物62aと、で構成されている。・・・そして、山形状の刃物62aの傾斜面62a’は破砕・折断された細分化された不要製品を、確実に自然落下させるために設けられており、かつ山形状の刃物62aは先細形状となっている。」(第6欄7行〜16行)、
(ホ)「11は不揃いでなる不要製品搬送用のコンベア、12はホッパーをそれぞれ示しており、原則として、間欠運転を介して、ホッパー12内に、前記不揃いでなる不要製品を送り込む方式となっている。」(第6欄40行〜43行)
と記載され、
また、第3図及び第4図には、
(ヘ)「四角錐台形状である山形状の刃物42a、62a」
が記載されている。
これらの記載及び第1〜4図の記載からみて、刊行物1には、
「湯道、堰等の不要製品を破砕・折断装置に順次送り込む搬送用のコンベア11と、この搬送用のコンベア11に連設して刃物台42に千鳥状に配置し、かつ刃物台42より突出して設けた四角錐台形状の刃物42aを有する固定刃物装置4と、この固定刃物装置4の四角錐台形状の刃物42aと嵌め合い関係となる刃物台62に千鳥状に配置し、かつ刃物台62より突出して設けた四角錐台形状の刃物62aを有する揺動刃物装置6とでなる前記不要製品を破砕・折断する破砕・折断装置と、この破砕・折断装置に連設した当該破砕・折断装置で破砕・折断した鋳造用再原料を排出する不要製品排出用(鋳造用再原料排出用)のコンベア3とを一連に配置した、鋳造用の湯道、堰等の不要製品を破砕・折断して、細分化し、鋳造用再原料として最適なものを生成(製造)する破砕・折断装置の配置構造」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前国内で頒布された特開平3-21352号公報(以下、「刊行物2」という。なお、拒絶査定では、「特開昭3-21352号公報」と記載されているが、該記載は「特開平3-21352号公報」の誤記と認める。)には、
(ト)「本発明は、特に鋳造物(鋳鉄,アルミ鋳物等)の破砕を容易に行うことのできる破砕機に関する。」(第1頁左下欄18行〜19行)、
(チ)「第3図及び第4図は側壁3及び側壁5に錐台突起を設けた場合の実施例を示している。第3図の例では、錐台突起として、四角錐台突1(「突起」の誤記と認める。)12a,12b・・・,13a,13b・・・を採用している。・・・また、錐台突起として、第4図に示すような円錐台突起14a,14b・・・,15a,15b・・・を用いてもよい。」(第3頁右上欄7行〜18行)、
(リ)「突起が錐台突起である場合には、破砕片が自然に落下して突起に引っ掛かることがないので、破砕作業を極めて円滑に進めることができる。」(第4頁左上欄8行〜10行)
と記載されている。

3.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、それぞれの作用、機能からみて、後者の「湯道、堰等の不要製品」は前者の「湯口、湯道、堰等の不要製品」に、後者の「破砕・折断」及び「破砕・折断装置」は前者の「折断」及び「折断装置」に、後者の「搬送用のコンベア11」及び「不要製品排出用(鋳造用再原料排出用)のコンベア3」は前者の「送込み装置」及び「排出装置」に、後者の「刃物台42」、「刃物42a」及び「固定刃物装置4」は前者の「固定刃物装置の刃物台」、「固定刃物装置の刃物」及び「固定刃物装置」に、後者の「刃物台62」、「刃物62a」及び「揺動刃物装置6」は前者の「揺動刃物装置の刃物台」、「揺動刃物装置の刃物」及び「揺動刃物装置」に相当する。
そして、前者の刃物形状である「半截截頭円錐形」は山形状の一態様であるから(本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0018】では、半截截頭円錐形の刃物42aを「山形状の刃物42a」と記載している。)、前者の「半截截頭円錐形」は、後者の刃物形状である「四角錐台形状」と「山形状」という点において共通する。
してみると、両者は、
「湯口、湯道、堰等の不要製品を折断装置に順次送り込む送込み装置と、この送込み装置に連設して刃物台に千鳥状に配置し、かつ刃物台より突出して設けた山形状の刃物を有する固定刃物装置と、この固定刃物装置の山形状の刃物と嵌め合い関係となる刃物台に千鳥状に配置し、かつ刃物台より突出して設けた山形状の刃物を有する揺動刃物装置とでなる前記不要製品を折断する折断装置と、この折断装置に連設した当該折断装置で折断した鋳造用再原料を排出する排出装置とを一連に配置した、湯口、湯道、堰等の不要製品の折断装置の配置構造」で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】刃物の山形状が、前者では半截截頭円錐形であるのに対して、後者では四角錐台形状である点。
【相違点2】送込み装置、折断装置及び排出装置の配置場所を、前者では、鋳造工場とし、工場の無人化、作業の効率化及び安全性を達成し、かつ工場のスペースの有効利用、鋳造作業の効率化、搬送の容易化、等を可能としているのに対して、後者では、配置場所が明らかではない点。

4.当審の判断
【相違点1について】
破砕・折断装置の刃物の山形状が、四角錐台形状又は円錐台形状であれば、破砕ないしは折断された鋳造物片が刃物に引っ掛かることなく確実かつ自然に落下することは、刊行物2に記載されている(上記の摘記事項(ト)〜(リ)参照。)
ところで、半截截頭円錐形は、四角錐台形状及び円錐台形状と同じく山形状の一態様であって、上面及び側面を円錐台形状と共通にし、下面を四角錐台形状と同じく平面状としたといいうるものである。
そして、刊行物2記載の発明は、「鋳造物の破砕・折断装置」という、刊行物1記載の発明と同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明の刃物の山形形状を、刊行物2記載の発明の刃物形状も考慮して、半截截頭円錐形とすることは、当業者が容易になし得ることであると認められる。
なお、請求人は、刃物形状を半截截頭円錐形とすることで、「鋳造用再原料が刃物に残ることなく確実かつ自然状態で落下することができる」と主張している。そこで、この点につき検討するに、本願明細書の段落【0014】には、「半截截頭円錐形の刃物42aの曲面状の傾斜面42a’は、・・・折断された鋳造用再原料が、確実かつ自然状態で落下するに適した傾斜を有する。」と、また、段落【0015】には、「半截截頭円錐形の刃物52a・・・には、・・・折断された鋳造用再原料・・・が、確実かつ自然状態で落下できるように曲面状の傾斜面52a’・・・を有する。」と記載されている。ところで、刊行物2記載の円錐台形状の刃物も、側面から上面にかけて、本願発明の半截截頭円錐形の刃物と同様の曲面状の傾斜面を有するものであり、しかも、鋳造物片の落下性が優れていることが判明している。したがって、刃物形状を半截截頭円錐形とすることで、刊行物2記載の刃物に比して、鋳造用再原料の落下性の点で格別の作用効果を奏しているとは認めることができない。
【相違点2について】
刊行物1記載の発明において、折断装置の対象物である「湯道、堰等の不要製品」は、鋳造工場で発生するものであり、また、折断装置で折断処理された折断片は、鋳造工場で利用される鋳造用再原料である。
そして、不要製品の処理をその発生現場で、また、原料の前処理を原料の利用現場で行えば、搬送の効率化及び無人化、スペース等の面でメリットのあることは、当業者にとって自明の事項である(例えば、不要製品の処理をその発生現場で行うことは、実願昭59-173551号(実開昭61-89451号)のマイクロフィルムの第2頁12行〜15行、実願昭55-75394号(実開昭56-176052号)のマイクロフィルムの第2頁8行〜13行参照)。
してみると、刊行物1記載の発明において、送込み装置、折断装置及び排出装置の配置場所を、鋳造工場とし、工場の無人化、作業の効率化及び安全性を達成し、かつ工場のスペースの有効利用、鋳造作業の効率化、搬送の容易化、等を可能とすることは、当業者が容易になし得ることといわざるを得ない。

そして、本願発明の作用効果は、【相違点1について】、【相違点2について】でも述べたように、刊行物1〜2記載の発明等から予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1〜2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-17 
結審通知日 2001-08-22 
審決日 2001-09-05 
出願番号 特願平9-329045
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 和美黒石 孝志  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 田村 嘉章
栗田 雅弘
発明の名称 湯口、湯道、堰等の不要製品の折断装置の配置構造  
代理人 竹中 一宣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ