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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F42D
管理番号 1047772
審判番号 不服2000-5996  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-04-26 
確定日 2001-10-05 
事件の表示 平成 2年特許願第293102号「2自由面への穿孔発破における装薬量決定方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 6月11日出願公開、特開平 4-165299]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、平成2年10月30日付で特許出願されたものであって、その特許請求の範囲における請求項1乃至3に係る発明は、平成9年10月29日付、平成13年6月25日付で各手続補正された明細書からみて、
(請求項1)1つの自由面に開口部をもち、かつ、他の自由面に対して最短破壊距離Wを保って略平行に所定の穿孔長hに穿った孔において、前記最短破壊距離Wと込物長Eを略等しく設定し、破壊岩盤量Vの価をV=W2hによって算出し、発破係数をcとした場合に装薬量Lの価をL=cW2hにより算出する、ことを特徴とする2自由面への穿孔発破における装薬量決定方法。
(請求項2)斉発穿孔発破の場合に、穿孔間隔長Fを前記最短破壊距離W及び込物長Eと略等しく設定する請求項1記載の2自由面への穿孔発破における装薬量決定方法。
(請求項3)発破係数をそれぞれの岩盤種類に対応する範囲内に設定した請求項1記載の2自由面への穿孔発破における安全最多装薬量決定方法。」
にあるものと認める。
なお、請求項1には、「装薬量Lの価をL cW2h」と記載されているが、前記明細書第6頁第8行の式(5)の記載からみて、「装薬量Lの価をL=cW2h」の誤記と認められる。また請求項1には、「2自由目」と記載されているが、前記明細書第3頁第3行の「2つの自由面」の記載からみて、「2自由面」の誤記と認められる。そこで、本願の請求項1に係る発明を上記のように認定した。
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」、請求項2に係る発明を「本願発明2」、請求項3に係る発明を「本願発明3」という。)

2.引用例とその記載事項
これに対して、当審における、平成13年4月12日付けで通知した拒絶の理由で引用した本願の出願前の昭和55年12月25日に頒布された「佐藤忠五郎、福山郁生、若園吉一著、『爆破-全訂2版-』、2版、鹿島出版会」(以下「引用例1」という。)の210〜211頁には、
(ア)「3-6ベンチカット
・・・
3-6-1 装薬量の計算
図3-44に示すようなベンチカット工法の場合の装薬量の計算式は次式で表わされる。
L=C・W2・H ・・・(3.1)
あるいは
L=C・W・S・H ・・・(3.2)
L:装薬量(kg)
C:抗力係数(岩石係数)
W:自由面までの最小抵抗線(m)
S:穿孔間隔(m)
H:ベンチの高さ(m)
この場合の抗力係数Cの値は、岩質、・・・岩石の破砕の程度などによって一定の値を示すことは非常に困難であるが、一般にC=0.30〜0.35程度である。」
(イ)図3-44 ベンチカット工法断面図には、
”1つの自由面に開口部をもち、かつ他の自由面に対して最小抵抗線Wを保って略平行に所定の穿孔深さhに穿った孔を有したもの及び穿孔深さhがベンチ高さHに略一致するもの”
が記載されているものと認められる。
すると、上記引用例1には、
”1つの自由面に開口部をもち、かつ、他の自由面に対して最小抵抗線Wを保って略平行に所定の穿孔深さhに穿った孔において、抗力係数(岩石係数)をCとした場合に装薬量Lの価をL=CW2hにより算出する2自由面の穿孔発破における装薬量決定方法”
が記載されているものと認められる。
また、同じく本願の出願前の平成1年5月15日に頒布された「社団法人工業火薬協会編、『新・発破ハンドブック』、初版、株式会社山海堂」(以下、「引用例2」という。)には、
(ウ)ベンチカット発破の設計において、「孔間隔は・・・標準的には最小抵抗線の1.25倍が標準とされているが、普通は、0.8倍から1.4倍までとられている.」(185頁第21行〜第22行)
(エ)「(g)込め物長
込も物長は、発破孔の装薬量と孔径によって自ずから決まってくるが、発破効果等から、最低、最小抵抗線の長さはなくてはならない.」(185頁第29行〜第32行)
と記載されている。

3.発明の対比
ここで、本願発明1と上記引用例1に記載された発明を対比すると、上記引用例1に記載された発明の「最小抵抗線W」「穿孔深さh」「抗力係数(岩石係数)C」がそれぞれ本願発明1の「最短破壊距離W」「穿孔長h」「発破係数c」に相当する。
そうすると、両発明は、「1つの自由面に開口部を持ち、かつ、他の自由面に対して最短破壊距離Wを保って略平行に所定の穿孔長hに穿った孔において、発破係数をcとした場合に装薬量Lの価ををL=cW2hにより算出する2自由面への穿孔発破における装薬量決定方法」の点で一致し、以下の2点で相違する。
(1)本願発明1では「最短破壊距離Wと込物長Eを略等しく設定し」たのに対して、上記引用例1には、そのような記載がない点。
(2)本願発明1では、「破壊岩盤量Vの価をV=W2hによって算出し」たのに対して、上記引用例1では装薬量の計算課程においてW2hが算出されてはいるものの、そのW2hを破壊岩盤量として明記していない点。

4.相違点に対する当審の判断
4.1.本願発明1について
そこで上記相違点について検討する。
まず、相違点(1)については、上記引用例2に「込め物長は、・・・発破効果等から、最低、最小抵抗線の長さはなくてはならない。」と記載されていることから、込物長を最短破壊距離と略等しくすることは上記引用例2に記載された事項に基づいて当業者が適宜なし得る程度の設計的事項にすぎないものと認められる。
また、相違点(2)については、上記引用例1に記載されたものにおいても、Wは自由面までの最小抵抗線すなわち最短破壊距離であり、上記(イ)で記載したように、hは穿孔深さすなわち穿孔長であるから、上記引用例1に記載された発明においてもW2hは、本願発明1でいう破壊岩盤量Vに相当するものである。相違点(2)は「破壊岩盤量」との明記があるか否かの差にすぎず実質的な差異はない。
そして、上記引用例1に記載された発明に上記引用例2に記載された発明を適用して、本願発明1を構成することは、両引用例がいずれもベンチカット発破の設計に関するものであることから、当業者が容易になし得たものである。
更に、本願発明1の奏する効果は、上記引用例1,2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって格別のものとはいえない。

4.2.本願発明2について
穿孔間隔長を最短破壊距離と略等しくする事は、上記引用例2の上記(ウ)の記載により示唆されているものであり、穿孔間隔長を本願発明2のように選定することは、当業者が適宜採用しうる程度の設計的事項にすぎないものと認める。

4.3.本願発明3について
抗力係数(岩石係数)の値が岩質によることが、上記(ア)に示すように上記引用例1に記載されていることから、抗力係数に相当する発破係数をそれぞれの岩盤種類に対応する範囲内とすることは、当業者が適宜なし得たものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1乃至3は、いずれも、本願出願前に頒布された上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1乃至3については、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2001-07-23 
結審通知日 2001-07-31 
審決日 2001-08-15 
出願番号 特願平2-293102
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 康明川村 健一  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 刈間 宏信
藤井 昇
発明の名称 2自由面への穿孔発破における装薬量決定方法  
代理人 右田 登志男  
代理人 千且 和也  

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