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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22B |
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管理番号 | 1047855 |
審判番号 | 不服2000-6067 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-04-27 |
確定日 | 2001-10-18 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第229484号「伝熱管および伝熱管における摩耗度の判定方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 3月17日出願公開、特開平10- 73204]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年8月30日の出願であって、その請求項1及び請求項2に係る発明(以下、「本願第1発明」、「本願第2発明」という。)は、平成11年10月22日付け及び平成12年2月18日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 管体の外周面に肉盛溶接を施すとともに、この肉盛溶接部の表面を、凸部の減り具合を観察して摩耗度を判定し得るように凹凸状に形成したことを特徴とする伝熱管。 【請求項2】 管体の外周面に、その表面が凹凸状に形成された肉盛溶接部を形成した伝熱管の摩耗度を判定する方法であって、上記肉盛溶接部の凸部の減り具合を観察して、摩耗度を判定することを特徴とする伝熱管における摩耗度の判定方法。」 なお、平成12年5月26日付けの手続補正は、平成13年8月14日付けで補正の却下の決定がなされた。 2.引用例記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-140948号(実開昭64-46604号)のマイクロフィルム(以下、これを「引用例1」という。)には、 「硬質材料を管表面に螺旋状にプラズマ粉体肉盛溶接して、表面に螺旋状の山谷を有する硬質合金層を形成したことを特徴とする伝熱管。」(明細書第1頁の実用新案登録請求の範囲)、 「例えば第5図に示すような流動床ボイラ10においては、対流部伝熱管11は排ガス中に含まれる固体粒子によりエロージョンを生じ」(同第1頁15行〜17行)ること、 「第1図において、1は伝熱管であり、その管表面には硬質材料を螺旋状にプラズマ粉体肉盛溶接して、表面に螺旋状の山谷を有する硬質合金層2が形成されている。」(同第3頁5行〜8行)こと、 「伝熱管の表面に外層として形成したプラズマ粉体肉盛溶接の硬質合金層が、使用雰囲気とエロ-ジョンに対する抵抗力を有するため、固体粒子によるエロ-ジョンが問題となる部分に使用すれば、寿命の大巾な延長が期待される。」(同第5頁8行〜13行)こと、が図面とともに記載されている。 上記の記載からして、引用例1には、「管体の外周面に肉盛溶接を施すとともに、この肉盛溶接部の表面を凹凸状に形成した伝熱管であって、該表面が凹凸状に形成された肉盛溶接部は、伝熱管を保護するものである伝熱管」の発明が記載されている。 同じく 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平4-33785号(実開平5-90105号)のマイクロフィルム(なお、これは実願平4-33785号(実開平5-90105号)のCD-ROMの誤記である。以下、これを「引用例2」という。)には、 「しかしながら、前述の流動層ボイラ層内管では、激しく動く流動媒体5が層内伝熱管7に衝突するので、摩耗・腐食によって層内伝熱管7の肉厚が減少する現象が発生する場合があり、……従って定期点検時に層内伝熱管7の肉厚を測定して該層内伝熱管7の余寿命を管理しなければならず、多大の手数と時間を要するという問題があった。」(段落【0006】)こと、 「本考案は、流動層ボイラの流動層内に設けた層内伝熱管の管肉内に、層内伝熱管延設方向に沿って電流回路を埋設し、且つ前記電流回路の火炉外部引き出し部分に表示計器を接続した構成としている。」(段落【0008】)こと、 「従って、本考案では、層内伝熱管が流動媒体の衝突によって腐食・摩耗などを起こし、層内伝熱管の管肉が損耗すると電流回路が露出し、該電流回路が切断すると電流に異常が起こり、表示計器がその異常を表示する。」(段落【0009】)こと、が図面とともに記載されている。 3.本願第1発明について (対比) 本願第1発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本願第1発明の凹凸状の肉盛溶接部は、当該明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、伝熱管を摩耗に対して保護するものでもあり、上記両者は、「管体の外周面に肉盛溶接を施すとともに、この肉盛溶接部の表面を、凹凸状に形成した伝熱管」、及び「該表面を凹凸状に形成した肉盛溶接部が、伝熱管の摩耗に対して保護する」点で一致するが、本願第1発明では、凹凸状に形成した肉盛溶接部の凸部の減り具合を目視により観察して、摩耗度を判定するのに対し、引用例1記載のものでは、この点について記載がない点で相違している。 (判断) そこで、上記相違点について以下検討する。 引用例2には、上記の記載からして、本願第1発明の属する技術分野と同じ技術分野に属する流動層ボイラにおいて、高温・腐食性ガスの環境下で使用される伝熱管は、摩耗を生じ、その減り具合を観察し伝熱管の摩耗の程度を把握する必要があると言う本願第1発明の課題が示され、これら課題は新規なものではない。 ただ、本願第1発明は、管体の外周面に形成した凹凸状の肉盛溶接部の凸部の減り具合を目視により観察して、摩耗度を判定するものであるのに対し、引用例2記載の発明では、上記のように、それとは異なる方法により伝熱管の摩耗度を見ている。 しかしながら、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-104585号(実開昭63-13243号)のマイクロフィルムには、「一方の籾摺ロ-ル3は他方の籾摺ロ-ル3に較べ早く摩耗する。そこで左右交換して使用するが、その目印となる入替交換用目印4をゴム層部2の側部5に形成する。入替交換用目印4の位置はゴム層部2の厚みの中間位置に形成する。」(明細書第3頁3行〜8行)と記載されているように、減り具合を目視により観察して、摩耗度を判定することは知られており、しかも自動車等のタイヤの摩耗度の確認などにみられるように、摩耗度を、摩耗の生ずる個所の減り具合を目視により観察して判定することは従来普通におこなわれている周知の事項である。してみると、引用例1に記載の伝熱管において、その管体の外周面に形成した凹凸状の肉盛溶接部の減り具合を目視により観察して、摩耗度を判定すると言う本願第1発明程度のことは、引用例2の記載事項並びに上記周知の事項を勘案すれば、容易になし得たことである。 さらに、管体の外周面に形成した凹凸状の肉盛溶接部の減り具合を目視により観察するに際し、観察される個所は、凹部か凸部であり、凸部の方が凹部よりも目視により観察し易ければ、凸部の方を目視により観察すればよいだけのことであり、本願第1発明における「凸部の減り具合を目視により観察する」の点は極普通に採用される事項と認められる。 そして、本願第1発明が奏する作用、効果は、引用例1及び引用例2の記載、並びに上記周知の事項から容易に予測できたものであって、格別のものとは認められない。 したがって、本願第1発明は、引用例1及び引用例2記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.本願第2発明について 本願第2発明は、本願第1発明における伝熱管を用いた摩耗度の判定方法に相当する。 そこで、本願第2発明と引用例1記載の発明とを対比すると、上記両者は、「管体の外周面に、その表面が凹凸状に形成された肉盛溶接部を形成した伝熱管を用い、該凹凸状の肉盛溶接部が、伝熱管の摩耗に対して保護する」点で一致するが、本願第2発明は、伝熱管の摩耗度を判定する方法であって、肉盛溶接部の凸部の減り具合を観察して、摩耗度を判定するのに対し、引用例1記載のものでは、摩耗度の判定について記載がない点で相違している。 そこで、上記相違点について検討するに、この相違点における本願第2発明の構成を採用することは、上記「3.本願第1発明について」における「(判断)」の項に記載した理由と同じ理由により引用例2の記載並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易になし得たことである。 そして、本願第2発明が奏する作用、効果は、引用例1及び引用例2の記載、並びに上記周知の事項から容易に予測できたものであって、格別のものとは認められない。 したがって、本願第2発明は、引用例1及び引用例2記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願第1発明及び本願第2発明は、いずれも引用例1及び引用例2記載の発明、並びに上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-08-14 |
結審通知日 | 2001-08-21 |
審決日 | 2001-09-04 |
出願番号 | 特願平8-229484 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F22B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史、豊島 唯、永石 哲也 |
特許庁審判長 |
滝本 静雄 |
特許庁審判官 |
澤井 智毅 長浜 義憲 |
発明の名称 | 伝熱管および伝熱管における摩耗度の判定方法 |
代理人 | 森本 義弘 |