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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D |
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管理番号 | 1048062 |
審判番号 | 審判1999-11674 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-07-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-07-15 |
確定日 | 2001-10-25 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 2060号「無排土式の回転圧入杭」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 7月11日出願公開、特開平 7-173832]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、出願日が平成3年3月1日である実願平3ー10732号を平成7年1月10日に特許出願に変更したものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成11年3月5日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「【請求項1】 円筒状管体(2) の端部開口を円形の蓋板(3) で閉塞して成る管杭であって、前記蓋板(3) が前記杭の先端面(4) を形成し、該先端面(4) は杭の軸心に対して直交する面とされ、前記管体(2) の先端部の外周面に螺旋状の翼(5) が固定され、且つ軸心廻りに回転されながら地盤に圧入される無排土式の回転圧入杭において、前記先端面(4) 上に、回転中心(O) を通る該先端面(4) 上の線分(B) と平行で且つ該線分(B) の回転方向(A) 前方側に位置するように板状の爪(6) を固定し、該爪(6) は、前記線分(B) から該爪(6) の厚み程度離間して配置されており、且つ、該爪(6) の内端は前記回転中心(O) の近傍に位置し、該爪(6) の外端は前記管体(2) の外周面より外方で且つ前記翼(4) よりも径小に突出していることを特徴とする無排土式の回転圧入杭。」 2.引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、実願昭63-103347号(実開平2-26634号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、 a「本考案は、……無排土で施工のできる多翼鋼管摩擦杭を提供しようとするものである。」(明細書3頁8〜15行)、 b「第1〜3図において、1は鋼管製の杭本体で、その下端に底板2が設けられて杭本体の下端は閉じられたものとなっている。そして、杭本体1の下端部には、底板2より下方に突出する掘削刃3と杭本体1の側面に突出して傾斜した掘削刃4とが設けられている。また、杭本体1の外周には、その下端部から上方に向けて、ほぼ等間隔をおき、ほぼ一巻きにわたり連続して形成した螺旋翼5a〜5cが複数突設されている。」(同6頁1〜10行)、 c「本考案鋼管杭の埋設にあたっては、第4図のように、杭本体1の上端部に図示を省略した回動押込み駆動装置を取付け、その駆動によって、杭本体1を回動しながら地中に押込んで行くのである。それにより、下端の掘削刃3,4の作用で杭先端部の土砂bは、掘削、軟化して流動化し、杭の沈降が容易となる。そして、杭本体1の外周面に突設した……螺旋翼5aが掘削した土砂b及び地盤Aに喰い込み、土の組成を反力として回転推進し、流動化した土砂bを杭側面に押しのけ、圧縮しながら、鋼管杭を地中にネジリ込んで行く」(同7頁7〜18行)、 d「本考案の鋼管杭では、螺旋翼5a〜5cの回転推進によって杭の沈降が行われることになるので、杭の埋設は無排土で行われ、」(同8頁8〜10行) の記載がある。 以上の記載及び第1図〜第4図の記載からみて、引用例には、 「杭本体1の端部開口を円形の底板2で閉塞してなる鋼管杭であって、前記底板2が前記杭の先端面を形成し、該先端面は杭の軸心に対して直交する面とされ、前記杭本体1の先端部の外周面に螺旋状の螺旋翼5aが固定され、且つ軸心廻りに回転されながら地盤に圧入される無排土式の回転圧入杭において、前記先端面上に掘削刃4を固定した無排土式の回転圧入杭」 が記載されていると認められる。 3.対比・判断 (1)本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「杭本体1」、「底板2」、「鋼管杭」及び「螺旋翼5a」は、それぞれその機能に照らし本願発明の「円筒状管体」、「蓋板」、「管杭」及び「翼」に相当する。そして、引用例記載の発明の「掘削刃4」は、第1図〜第4図参照すると、板状をなし、底板2上に下方に突出する状態で固定されており、その底板2から下方に突出する部分の掘削刃3に当接する屈曲角部(第2図)は回転中心の近傍に位置し、同じく底板2から下方に突出する部分の外端は杭本体1の外周面より外方で且つ螺旋翼5aよりも径小に突出しているものと理解できる。また、第2図を参照すると、二つの掘削刃4の上記屈曲角部から外端に至る底板2から下方に突出する部分が、回転中心を通る底板2上の線分と平行で、且つ該線分の回転方向前方側に該線分から離間して配置されていることが理解でき、掘削刃4の屈曲角部から外端に至る底板2から下方に突出する部分は、掘削刃として機能していることは明らかであるから、引用例記載の発明の「掘削刃4の屈曲角部から外端に至る底板2から下方に突出する部分」及び「屈曲角部」は、それぞれ本願発明の「爪」及び爪の「内端」に相当するといえる。そうすると、両者は、 「円筒状管体の端部開口を円形の蓋板で閉塞して成る管杭であって、前記蓋板が前記杭の先端面を形成し、該先端面は杭の軸心に対して直交する面とされ、前記管体の先端部の外周面に螺旋状の翼が固定され、且つ軸心廻りに回転されながら地盤に圧入される無排土式の回転圧入杭において、回転中心を通る該先端面上の線分と平行で且つ該線分の回転方向前方側に位置するように板状の爪を固定し、該爪は、前記線分から離間して配置されており、且つ、該爪の内端は前記回転中心の近傍に位置し、該爪の外端は前記管体の外周面より外方で且つ前記翼よりも径小に突出している無排土式の回転圧入杭」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点 本願発明では、爪は前記線分から爪の厚み程度離間しているのに対し、引用例記載の発明では、爪は前記線分からどの程度離間しているのか不明である。 そこで上記相違点について検討する。 爪を回転中心を通る先端面上の線分からどの程度離間させるかは、回転圧入杭の先端面に該線分と平行に且つ該線分から離間して設ける爪は、その設ける位置が該線分から離れるに従って、回転する掘削刃としての働きが低下し、また、中心部の掘削に寄与しなくなることを考慮して、当業者が適宜決め得る設計的事項である。 なお、審判請求人は、「回転圧入杭実験報告書」を提出すると共に、審判請求理由補充書において、「本願発明の爪をどの程度離間させるかは、単なる設計的事項でないことを立証する。即ち、本願発明による優れた作用効果を立証することにより、前記事項は、単なる設計的事項でないことを主張する。……本願発明の構成を採用した実施品1,2と、他の構成を採用した比較品1,2に基づき、圧入試験を行った。この実施品と比較品の相違点は、「爪」の取付位置を変えただけであり、他の構成は同じとしたものである。実験結果によれば、圧入時間は、実施品のほうが比較品よりも短いことが判明した。」(6頁5〜14行)と述べている。しかしながら、上記「回転圧入杭実験報告書」によると、比較品1,2は、爪が、回転中心を通る線分の回転方向後方側に配置されており、本願発明のように、回転中心を通る線分の回転方向前方側に離間して配置されたものではなく、上記「回転圧入杭実験報告書」をみても、審判請求人の主張は採用できない。 そして、本願発明が奏する効果も、引用例記載の発明から当業者が予測できたものであり、格別顕著なものとは認められない。 したがって、本願発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-08-16 |
結審通知日 | 2001-08-28 |
審決日 | 2001-09-10 |
出願番号 | 特願平7-2060 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 市野 要助、石井 良和、向後 晋一、深田 高義 |
特許庁審判長 |
幸長 保次郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 中田 誠 |
発明の名称 | 無排土式の回転圧入杭 |
代理人 | 安田 敏雄 |