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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1048175
審判番号 不服2001-11350  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-03 
確定日 2001-11-27 
事件の表示 平成 5年特許願第 80583号「熱可塑性樹脂組成物」拒絶査定に対する審判事件〔平成 6年10月11日出願公開、特開平 6-287436、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願は、平成5年4月7日の出願であって、その請求項1乃至5に係る発明は、平成13年7月3日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「(A)結晶性熱可塑性樹脂および(B)ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる混合物100重量部、並びに(C)下記式(1)で表わされるアミド化合物0.1〜15重量部からなり、(A)結晶性熱可塑性樹脂が連続相を形成し、(B)ポリフェニレンエーテル系樹脂が分散相を形成してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
C17H35-CONH-(CH2)2-NHOC-(CH2)8-CONH-(CH2)2-NHOC-C17H35 (1)」
2.これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物(以下、「引用刊行物1」、「引用刊行物2」、「引用刊行物3」という。)には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)引用刊行物1:特開平04-183747号公報
「A)ポリフェニレンエーテル5〜75重量%
B)ポリアミド 25〜95重量%
C)ゴム状重合体 0〜30重量%
よりなる樹脂成分A)、B)、C)の合計量100重量部に対して、
D)炭素数26〜32の脂肪族カルボン酸の金属塩0.05〜2重量部及び
E)高級脂肪酸ビスアミド化合物を0.05〜2重量部
含有してなり、かつ、B)成分が連続相を、A)成分およびC)成分が 分散相を形成して成ることを特徴とする樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明組成物において(D)炭素数26〜32の脂肪族カルボン酸の金属塩と(E)高級脂肪酸ビスアミド化合物を併用添加することにより、(D)成分だけ、または(E)成分だけを添加した場合に比して、以下の効果が得られる。即ち、以下の比較例に示す通り、(D)成分だけを添加した場合には、成形流動性は改善されるが、フローマークは改良されず耐熱性が劣る。(D)成分の添加量を増すとフローマークはむしろ悪化し、耐熱性が大幅に低下する。また、(E)成分だけを添加した場合には、成型品の表面白化現象があまり改良されない。これに比して、本発明においては、成形流動性、耐熱性に加えて、フローマーク、白化等の表面外観が著しく改善される。」(4頁左上欄下から4行〜4頁右上欄11行)
(2)引用刊行物2:特開平03-153793号公報
「カルボン酸とジアミンを反応させてカルボン酸アマイド系ワックスを製造する方法において、カルボン酸として高級脂肪酸モノカルボン酸及び多塩基酸の混合物を使用することを特徴とする高軟化点ワックスの製造方法」(特許請求の範囲)
「加工温度の高いエンジニアリングプラスチックに従来の高級脂肪酸ビスアマイドを滑剤又は離型剤等として用いると、加工時に発煙したり、或いは変色してプラスチック成型品を着色する原因となり、又は樹脂そのものの熱安定性を害する等の問題点を生ぜしめる。このため上述した欠点をなくし、高い加工温度にも耐えられる高軟化点を有するワックスが求められている。従って本発明の目的は加工温度の高いエンジニアリングプラスチック等の加工時に発煙せず、もしくは発煙し難く、着色もしくは変色の少ない高軟化点を有するワックスを提供することにある。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄8行)
上記高軟化点ワックスを、例えば、ステアリン酸とセバシン酸の混合物とエチレンジアミンとを表1に示す割合で用いて反応させ、製造すること。 (実施例1〜5)
(3)引用刊行物3:特開平04-339861号公報
「【請求項1】 (A)ポリフェニレンサルファイド 36〜59重量部、
(B)ポリフェニレンエーテル 6〜19重量部、
(C)ポリアミド 11〜29重量部、
(D)水素化共役ジエン化合物/芳香族モノビニル化合物ブロック共重合体 11〜24重量部、および
(E)カルボン酸基および酸無水物基よりなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する変性ポリオレフィン 1〜14重量部
を含み、かつ
(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計100 重量部に対して(F)相溶化剤 0.01〜10重量部、
および
(G)粒状または板状無機充填剤 0.1重量部以上5重量部未満を含む樹脂組成物において、
(C)ポリアミドが、ナイロン‐6およびナイロン-12の共重合体であり、かつポリフェニレンサルファイドが連続相を形成し、該連続相中にポリアミドが分散し、該ポリアミド分散相中にポリフェニレンエーテルおよび大部分の無機充填剤が分散していることを特徴とするポリフェニレンサルファイド系樹脂組成物。」(特許請求の範囲第1項)
「【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、PPS/PPE/ポリアミド系樹脂組成物において、寸法精度と耐衝撃性に特に優れ、かつ耐熱性および外観がすべて良好であるところの樹脂組成物を提供することを目的とする。」(段落【0009】)
「本発明の樹脂組成物にはさらに、その物性を損なわない限りにおいて樹脂の混合時、成形時に他の樹脂、および添加剤、例えば顔料、染料、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、滑剤、離型剤、結晶、可塑剤、流動性改良剤、耐電防止剤を添加することができる。」(段落【0041】)
3.(1)本願発明は、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂に対し、第3成分として式(1)で表される特定のアミド化合物を配合することにより、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とからなる樹脂組成物が本来有している特長を損なうことなく流動性が改良され、しかも高温に曝されたときにブリード物が発生しない樹脂組成物を提供するものである。
引用刊行物1記載の発明では、樹脂成分A)、B)、C)に対し、D)炭素数26〜32の脂肪族カルボン酸の金属塩とE)高級脂肪酸ビスアミド化合物を併用添加することにより、D)成分だけ、E)成分だけを添加した場合に比して、成形流動性、耐熱性に加えて、フローマーク、白化などの表面外観を著しく改善するものであり、D)成分だけを添加した場合には成形流動性は改良されるが、フローマークは改良されず耐熱性が劣り、E)成分だけを添加した場合には成型品の表面白化現象があまり改良されない。
そうすると、引用刊行物1には、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂に対し、第3成分として式(1)で表される特定のアミド化合物を配合することにより、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とからなる樹脂組成物が本来有している特長を損なうことなく流動性が改良され、しかも高温に曝されたときにブリード物が発生しない樹脂組成物を提供することは、記載されていない。そして、引用刊行物1記載の発明では、成形流動性を改善する成分は主にD)成分であり、併用添加されるD)成分とE)成分の作用効果は、本願発明の特定のアミド化合物の作用効果と相違している。
したがって、引用刊行物1記載の発明で、併用添加されるD)成分とE)成分とを、本願発明の特定のアミド化合物に変更することは、当業者が容易に想到し得ない。
引用刊行物2には、ステアリン酸とセバシン酸の混合物とエチレンジアミンとを反応させて製造される高軟化点ワックス、すなわち本願発明の(C)成分に相当するアミド化合物が記載されている。また、この高軟化点ワックスは、従来加工温度の高いエンジニアリングプラスチックに従来滑剤又は離型剤として配合されてきた高級脂肪酸ビスアマイド自体の改良品であって、この高軟化点ワックスを使用することによりエンジニアリングプラスチックの加工時の発煙・変色を抑制できることは記載されている。しかし、この高軟化点ワックスを添加することにより、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とからなる樹脂組成物が本来有している特長を損なうことなく流動性が改良され、しかも高温に曝されたときにブリード物が発生しない樹脂組成物を提供することは、記載されていない。
引用刊行物3には、ポリフェニレンサルイド/ポリフェニレンエーテル/ポリアミド系樹脂組成物において滑剤、離型剤、流動性改良剤を添加できることは記載されているものの、これら添加剤として使用する具体的な化合物は記載されていない。しかも、本願発明で使用する特定のアミド化合物がこれら添加剤として一般的とは言えない。また、引用刊行物3には、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とからなる樹脂組成物が本来有している特長を損なうことなく、樹脂組成物の流動性が改良され、しかも高温に曝されたときにブリード物が発生しないことは、記載されておらず、示唆もされていない。
したがって、引用刊行物2,引用刊行物3の記載から、引用刊行物1記載のD)成分とE)成分に換えて、結晶性熱可塑性樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とからなる樹脂組成物が本来有している特長を損なうことなく流動性を改良し、しかも高温に曝されたときにブリード物が発生しない樹脂組成物を提供するために、引用刊行物2記載の高軟化点ワックスを使用することも、当業者が容易に想到し得ない。

ゆえに、本願発明は、引用刊行物1,引用刊行物2,引用刊行物3に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
(2)請求項2〜5に係る発明は、請求項1に係る発明を引用するもであるから、請求項1に係る発明と同様の理由により、引用刊行物1,引用刊行物2,引用刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
4.以上のとおり、本願請求項1〜5に係る発明は引用刊行物1,引用刊行物2,引用刊行物3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-11-13 
出願番号 特願平5-80583
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中川 淳子小野寺 務佐々木 秀次  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 石井 あき子
佐野 整博
発明の名称 熱可塑性樹脂組成物  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
代理人 神野 直美  

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