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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01R |
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管理番号 | 1048246 |
審判番号 | 不服2000-11083 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-07-19 |
確定日 | 2001-11-08 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第122771号「径方向微分型SQUID磁束計」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年11月29日出願公開、特開平 8-313609]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、「径方向微分型SQUID磁束計」に関するものである。 本願は、平成7年5月22日に特許出願されたものであって、平成10年4月7日に拒絶理由が通知され、これに対して平成10年6月8日付けで意見書及び手続補正書を提出した。その後、平成11年3月16日に、この手続補正は新規事項を追加するものである旨の最後の拒絶理由が通知され、これに対して平成11年5月14日付けで手続補正書を提出したが、平成12年6月20日にこの手続補正が却下されると共に拒絶査定された。これに対して、平成12年7月19日に拒絶査定不服の審判を請求すると共に手続補正書を提出した。 そして、平成12年7月19日付手続補正も、「請求項の削除」「特許請求の範囲の減縮」「誤記の訂正」「明りょうでない記載の釈明」の何れを目的とするものでもないとして却下されている。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 「平成10年6月8日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 記 a.請求項1-4において「前記分割ループが…径方向微分形検出コイルを形成し、」なる点。」 3.平成10年6月8日付け手続補正書による補正の内容 平成10年6月8日付手続補正書による手続補正の内容は、特許請求の範囲を次のように補正するものである。 【請求項1】 2個のジョセフソン接合と、前記ジョセフソン接合と超伝導ループを形成するワッシャーコイル(SQUIDループ)と、前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)と磁気結合された帰還変調コイルを有する超伝導量子干渉素子を用いた磁束計において、 前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)は、複数の分割ループで構成され、並列接続した並列マルチループ構造を持ち、 前記分割ループが、半径がro,ri(ro>ri)の2つの同心円で囲まれた領域を、中心角θo=2π/mでm分割された部分のうち、その一部分からなるループOと、前記ループOと面積が等しく、かつ、前記2つの同心円と中心位置が等しく、かつ、半径ri,中心角θi={(ro/ri)2-1}θoを持つ扇形のループIとで構成され、 前記ループOと前記ループIは、互いに逆向きに巻かれ、前記半径riの同心円上の一点で結合され、 前記分割ループの始点A、および、終点Bは、前記2つの同心円の中心位置に位置し、 始点Aは始点Aどうし、終点Bは終点Bどうしを固定して、m個の分割ループをθoずつシフトさせながら同一平面上に配置することにより、有効面積が等しくなるように設計された、半径ro,ターン数1の外円と半径ri,ターン数ni(=(ro/ri)2)の内円からなる同心円ループを互いに逆向きに結合されることによって形成される径方向微分形検出コイルを形成し、 等価的に、径方向微分形検出コイルの機能を有する前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)を直接磁場を検出する磁場検出部として用いたことを特徴とした径方向微分形超伝導量子干渉素子磁束計。 【請求項2】 2個のジョセフソン接合と、前記ジョセフソン接合と超伝導ループを形成するワッシャーコイル(SQUIDループ)と、前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)と磁気結合された帰還変調コイルを有する超伝導量子干渉素子を用いた磁束計において、 前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)が、複数の分割ループで構成され、並列接続した並列マルチループ構造を持ち、 前記分割ループが、重心の位置が等しく、相似比n1/2:1(n>1)の相似形の2つの多角形で囲まれた領域を、重心の位置から中心角θo=2π/mでm分割された部分のうち、その一部分からなるループOと、前記相似形の2つの多角形のうちの小さい多角形を、前記ループOと面積が等しくなるように、重心位置を中心に中心角θi=(n-1)θoで切り出した部分からなるループIとで構成され、 前記ループOと前記ループIは、互いに逆向きに巻かれ、前記相似形の2つの多角形のうちの小さい多角形の外周上の一点で結合され、 前記分割ループの始点A、および、終点Bは、前記相似形の2つの多角形の重心位置に位置し、 始点Aは始点Aどうし、終点Bは終点Bどうしを固定して、m個の分割ループをθoずつシフトさせながら同一平面上に配置することにより、有効面積が等しくなるように設計された、それぞれターン数1とターン数nの相似形の多角形ループを互いに逆向きに結合されることによって形成される径方向微分形検出コイルを形成し、 等価的に、径方向微分形検出コイルの機能を有する前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)を直接磁場を検出する磁場検出部として用いたことを特徴とした径方向微分形超伝導量子干渉素子磁束計。 【請求項3】 2個のジョセフソン接合と、前記ジョセフソン接合と超伝導ループを形成するワッシャーコイル(SQUIDループ)と、前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)と磁気結合された入力コイル、および、帰還変調コイルを有する超伝導量子干渉素子を用いた磁束計において、 磁場検出部として、前記超伝導量子干渉素子と同一基板上に集積された検出コイルを備え、 検出コイルは、複数の分割ループで構成され、並列接続した並列マルチループ構造を持ち、 前記分割ループが、半径がro,ri(ro>ri)の2つの同心円で囲まれた領域を、中心角θo=2π/mでm分割された部分のうち、その一部分からなるループOと、前記ループOと面積が等しく、かつ、前記2つの同心円と中心位置が等しく、かつ、半径ri,中心角θi={(ro/ri)2-1}θoを持つ扇形のループIとで構成され、 前記ループOと前記ループIは、互いに逆向きに巻かれ、前記半径riの同心円上の一点で結合され、 前記分割ループの始点A、および、終点Bは、前記2つの同心円の中心位置に位置し、 始点Aは始点Aどうし、終点Bは終点Bどうしを固定して、m個の分割ループをθoずつシフトさせながら同一平面上に配置することにより、有効面積が等しくなるように設計された、半径ro,ターン数1の外円と半径ri,ターン数ni(=(ro/ri)2)の内円からなる同心円ループを互いに逆向きに結合されることによって形成される径方向微分形検出コイルを形成し、 等価的に、径方向微分形検出コイルの機能を有する前記検出コイルを入力コイルと接続することにより、前記ワッシャーコイルに検出磁束を伝達することを特徴とした径方向微分形超伝導量子干渉素子磁束計。 【請求項4】 2個のジョセフソン接合と、前記ジョセフソン接合と超伝導ループを形成するワッシャーコイル(SQUIDループ)と、前記ワッシャーコイル(SQUIDループ)と磁気結合された入力コイル、および、帰還変調コイルを有する超伝導量子干渉素子を用いた磁束計において、 磁場検出部として、前記超伝導量子干渉素子と同一基板上に集積された検出コイルを備え、 検出コイルは、複数の分割ループで構成され、並列接続した並列マルチループ構造を持ち、 前記分割ループが、重心の位置が等しく、相似比n1/2:1(n>1)の相似形の2つの多角形で囲まれた領域を、重心の位置から中心角θo=2π/mでm分割された部分のうち、その一部分からなるループOと、前記相似形の2つの多角形のうちの小さい多角形を、前記ループOと面積が等しくなるように、重心位置を中心に中心角θi=(n-1)θoで切り出した部分からなるループIとで構成され、 前記ループOと前記ループIは、互いに逆向きに巻かれ、前記相似形の2つの多角形のうちの小さい多角形の外周上の一点で結合され、 前記分割ループの始点A、および、終点Bは、前記相似形の2つの多角形の重心位置に位置し、 始点Aは始点Aどうし、終点Bは終点Bどうしを固定して、m個の分割ループをθoずつシフトさせながら同一平面上に配置することにより、有効面積が等しくなるように設計された、それぞれターン数1とターン数nの相似形の多角形ループを互いに逆向きに結合されることによって形成される径方向微分形検出コイルを形成し、 等価的に、径方向微分形検出コイルの機能を有する前記検出コイルを入力コイルと接続することにより、前記ワッシャーコイルに検出磁束を伝達することを特徴とした径方向微分形超伝導量子干渉素子磁束計。 4.出願当初の明細書又は図面の記載事項 願書に最初に添付した明細書又は図面には、平成10年6月8日付手続補正書で補正された特許請求の範囲に関連する事項として、次の事項が記載されている。 ア.段落【0020】に「図4に本発明の第3実施例を示す径方向微分型SQUID磁束計の構成図を示す。第3実施例も4つのループを並列接続したマルチループ構造をもつ。マルチループを構成するそれぞれのループは図5に示すよう半径r1 の扇型ループと半径r2 の円形ループからなる。それらの面積πr12/4とπr22は等しく設計され、逆向きに直列接続されている。図5のループを90度ずつずらして4組配置することにより、図4に示すように半径r1 の扇型4つで半径r1 の円を形成し、半径r2 の円4つで半径r2 の円を4巻き形成することとなり、第1実施例のワッシャーコイルと同等の形状が得られる。」と記載すると共に、図4及び図5には、図5に示される半径r1で中心角90度の扇形ループと半径r2の円形ループ(中心角360度)を逆向きに直列接続したループを、図4に示されるように、90度ずつずらして4組配置することにより、半径r1 の扇型4つで半径r1 の円を形成すると共に、半径r2 の円4つで半径r2 の円を4巻き形成したワッシャーコイルが記載されている。 イ.段落【0026】に「図9は1辺a1 の正方形1巻きと1辺a2 の正方形1巻きからなるループを4つ並列接続したもので、この場合、a1 =a2 となる。」と記載すると共に、図9に、1辺a1の正方形1巻と1辺a2の正方形1巻きとを中心をずらして逆向きに直列接続したループを、1辺a1のループを90度ずつずらして4組配置することにより、1辺が2a1の正方形1巻を形成すると共に、1辺がa2の正方形4巻を形成したワッシャーコイルが記載されている。 5.当審の判断 出願当初の明細書又は図面には上記4.アの事項が記載されているが、平成10年6月8日付手続補正書請求項1及び3に記載された「前記分割ループが、半径がro,ri(ro>ri)の2つの同心円で囲まれた領域を、中心角θo=2π/mでm分割された部分のうち、その一部分からなるループOと、前記ループOと面積が等しく、かつ、前記2つの同心円と中心位置が等しく、かつ、半径ri,中心角θi={(ro/ri)2-1}θoを持つ扇形のループIとで構成され、前記ループOと前記ループIは、互いに逆向きに巻かれ、前記半径riの同心円上の一点で結合され、前記分割ループの始点A、および、終点Bは、前記2つの同心円の中心位置に位置し、始点Aは始点Aどうし、終点Bは終点Bどうしを固定して、m個の分割ループをθoずつシフトさせながら同一平面上に配置することにより、有効面積が等しくなるように設計された、半径ro,ターン数1の外円と半径ri,ターン数ni(=(ro/ri)2)の内円からなる同心円ループを互いに逆向きに結合されることによって形成される径方向微分形検出コイルを形成し、」という一般化された構成は記載されていない。 また、出願当初の明細書又は図面には上記4.イの事項が記載されているが、平成10年6月8日付手続補正書請求項2及び4に記載された「前記分割ループが、重心の位置が等しく、相似比n1/2:1(n>1)の相似形の2つの多角形で囲まれた領域を、重心の位置から中心角θo=2π/mでm分割された部分のうち、その一部分からなるループOと、前記相似形の2つの多角形のうちの小さい多角形を、前記ループOと面積が等しくなるように、重心位置を中心に中心角θi=(n-1)θoで切り出した部分からなるループIとで構成され、前記ループOと前記ループIは、互いに逆向きに巻かれ、前記相似形の2つの多角形のうちの小さい多角形の外周上の一点で結合され、前記分割ループの始点A、および、終点Bは、前記相似形の2つの多角形の重心位置に位置し、始点Aは始点Aどうし、終点Bは終点Bどうしを固定して、m個の分割ループをθoずつシフトさせながら同一平面上に配置することにより、有効面積が等しくなるように設計された、それぞれターン数1とターン数nの相似形の多角形ループを互いに逆向きに結合されることによって形成される径方向微分形検出コイルを形成し、」という一般化された構成は記載されていない。 したがって、平成10年6月8日付手続補正書請求項1〜4に記載された上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではない。 6.むすび 以上のとおりであるから、平成10年6月8日付手続補正書による補正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-08-29 |
結審通知日 | 2001-09-04 |
審決日 | 2001-09-21 |
出願番号 | 特願平7-122771 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(G01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中塚 直樹 |
特許庁審判長 |
高瀬 浩一 |
特許庁審判官 |
高橋 泰史 松尾 淳一 |
発明の名称 | 径方向微分型SQUID磁束計 |
代理人 | 坂上 正明 |