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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25J |
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管理番号 | 1048286 |
審判番号 | 不服2000-8137 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-12-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-06-01 |
確定日 | 2001-10-25 |
事件の表示 | 平成4年特許願第508989号「グリッパ機構」拒絶査定に対する審判事件[平成4年11月26日国際公開、WO92/20496、平成 6年12月22日国内公表、特表平6-511435]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯、本願発明 本願は、1992(平成4)年5月7日(パリ条約による優先主張外国庁受理1991年5月15日、ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1乃至14に係る発明の構成に欠くことができない事項は、平成9年9月12日付け、平成11年4月30日付け及び平成12年6月1日付け手続補正により補正された明細書並びに平成9年9月12日付けで補正された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載されたとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)の構成に欠くことができない事項はつぎのとおりである。 「【請求項1】一端が第1のリンク(3)に作用しかつ他端が摺動ロッド(1)上にピボット結合されたクランク(2)と、摺動ロッド(1)上で案内されかつ第1のリンク(3)に当接するスライダ(4)とを有する作動ユニットとしての少なくとも1つのスライダ/クランク機構(1,2,3,4)を含む動的多要素強制案内機構(1,2,3,4,5,6)のカップラとして摺動軸の回りに揺動可能な少なくとも1つの可動グリッパフィンガ(6)を有し、ここで第2のリンク(5)が第1のリンク(3)から摺動軸の方向にオフセットされてスライダ(4)上に支持されかつ案内機構の両方のリンク(3,5)がグリッパフィンガ(6)に作用し、摺動ロッド(1)はグリッパフィンガ(6)が運動中でも摺動軸の方向に運動を行わないところのマニピュレータ用のグリッパ機構において: 摺動ロッド(1)はその中心から離してケージのように配置された3以上のロッド(7)で構成されたことを特徴とするグリッパ機構。」 (なお、平成12年8月14日付け手続補正書の「ゲージ」及び「揺動軸」は明らかに夫々「ケージ」及び「摺動軸」の誤りであるのでこのように認定した。) 2 刊行物記載の発明 これに対し、原査定の拒絶理由において引用された、本願出願前日本国内において頒布された刊行物である実願昭51-123470号のマイクロフィルム(実開昭53-42375号)以下「刊行物1」という。)には次のことが記載されている。 (a)(第2頁第8行〜同頁第11行): 「そこで、本考案は径の大きな物品でも径の小さな物品でも容易につかむことができ、しかもつかんだとき、物品の芯が移動しないマシンハンドを提案するものである。」 (b)(第2頁第17〜第3頁14行): 「1は図示しない工業用ロボットのアームの先端に固定したピストンロッドであり、鍔状のピストン2を備える。3はピストン2と嵌合し、ピストン2上を摺動するシリンダであり、ピストン2の両側に2つの油室A・Bを持つ。4,5はピストンロッド1内を通って油室A・Bにそれぞれ連通する油道の開口端である。この開口端4・5は図示しない油圧源あるいは油タンクに接続する。6,7はピストンロッド1の回りに対称的に配置したパンタグラフ機構である。このパンダグラフ機構は、シリンダ3の筒面、この筒面に回動自在に固定したリンク8,9、このリンク8,9の先端に連結したリンク10により平行四辺形に構成される。11はピストンロッド1に対し平行に配置したリンク10の一端を伸ばして設けたフィンガである。12はリンク9の中心に連結したリンクであり、ピストンロッド1の先端に固定したリンク13と連結する。」 (c)(第4頁第3〜同頁8行): 「次にこのように構成したものの動作を説明する。まず開口端5を油圧源に接続し、油室Bに油を供給する。するとシリンダ3は図上左に移動する。シリンダ3の移動により、パンタグラフ機構6、7がリンク12に引っ張られると、フィンガ11は閉じる。」 そして、第1図に示されるとおり、フィンガー(11)と一体のリンク(10)をパンタグラフ機構の平行四辺形に構成しており、フィンガーが、シリンダ(3)の摺動により軸回りに揺動可能にされているから、刊行物1記載の発明も、パラレルリンク機構の一部として摺動軸の回りに揺動可能な少なくとも1つのフィンガー(11)を有しているといえる。 そうすると、上記(a)〜(c)の記載事項からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 【刊行物1記載の発明】 一端が第1のリンク(9)に作用しかつ他端がピストンロッド(1)に固定したリンク(13)上にピボット連結されたリンク(12)と、ピストンロッド(1)上で案内されかつリンク(9)に当接するシリンダー(3)とを有する作動ユニットとしての少なくとも1つのスライダ/クランク機構を含むパラレルリンク機構の一部として摺動軸の回りに揺動可能な少なくとも1つのフィンガー(11)を有し、第2のリンク(8)が第1のリンク(9)から摺動軸の方向に離間して(即ちオフセットされて)シリンダ(3)上に支持されかつ案内機構の両方のリンク(8,9)がフィンガ(11)に作用し、ピストンロッド(1)はフィンガ(11)が運動中でも摺動軸の方向に運動を行わないところのマニピュレータ用のグリッパ機構において、中心に配置された一本のピストンロッドが摺動ロッドとして作用するグリッパ機構。 3 対比 そこで、本願発明1(前者)と刊行物1記載の発明(後者)を対比する。 後者の「第1のリンク(9)」は、前者の「第1のリンク(3)」に相当し以下同様に「リンク(12)」は「クランク(2)」に、「シリンダー(3)」は「スライダ(4)」に、「パラレルリンク機構」は「動的多要素強制案内機構」に、「パラレルリンク機構の一部として摺動軸の回りに揺動可能な少なくとも1つのフィンガー(11)」は「動的多要素強制案内機構のカップラとして摺動軸の回りに揺動可能な少なくとも1つの可動グリッパフィンガ(6)」に夫々相当することは明らかである。 そして、前者の「摺動ロッド(1)」も後者の「ピストンロッド(1)」も、その機能から見て「摺動部材」と呼べるから、両者には次の一致点および相違点があるといえる。 一致点: 一端が第1のリンクに作用しかつ他端が摺動部材上にピボット結合されたクランクと、摺動部材上で案内されかつ第1のリンクに当接するスライダとを有する作動ユニットとしての少なくとも1つのスライダ/クランク機構を含む動的多要素強制案内機構のカップラとして摺動軸の回りに揺動可能な少なくとも1つの可動グリッパフィンガを有し、ここで第2のリンクが第1のリンクから摺動軸の方向にオフセットされてスライダ上に支持されかつ案内機構の両方のリンクがグリッパフィンガに作用し、摺動部材はグリッパフィンガが運動中でも摺動軸の方向に運動を行わないところのマニピュレータ用のグリッパ機構。 相違点 摺動部材が、前者においては「その中心から離してケージのように配置された3以上のロッドで構成され」ている摺動ロッドであるのに対して、後者においては「中心に配置された一本のピストンロッド」である点。 4 当審の判断 そこで、これらの相違点について検討する。 (1)相違点について 一般に、移動部材を摺動部材によって案内する場合に、撓みや捻りに対する強度を確保するために、摺動部材をその中心から離して複数の摺動ロッドをケージのように配置する事は、本願出願前において周知の技術である。 刊行物1記載の発明においても、撓みや捻りに対する強度を確保するために、中心に配置された案内部材としてのピストンロッドの代わりに、中心から離して3以上のロッドをケージのように配置して本願発明1の相違点における構成のようにすることは当業者ならば容易に想到できたことである。 また、本願発明1が奏する効果を総合的に見ても、刊行物1記載の発明と周知技術が夫々奏する効果の総和以上の効果を奏するとも認められない。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、本願出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明及び本願出願前に周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の発明につき検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-05-15 |
結審通知日 | 2001-05-22 |
審決日 | 2001-06-05 |
出願番号 | 特願平4-508989 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B25J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 正章、八木 誠、谷治 和文、高田 元樹 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
鈴木 孝幸 播 博 |
発明の名称 | グリッパ機構 |
代理人 | 小島 高城郎 |